4: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2014/11/25(火) 20:31:45.50 ID:tQslcSvIO
呼んでない、とジュウは思ったが、この手の問答はこの一年で嫌という程交わしており、それを口にすればどうなるかは明白なので、心の中に留めておいた。
再度ジュウは嘆息してから元の進路に向き直り、歩き始めた。
そうすると、一定の距離をあけて、まるで侍女か従者かのように着いてくる少女。
この少女の名前は堕花雨といい、先程の発言からもわかるように、筋金入りの電波である。
なんでも、前世のジュウは王、雨はその騎士として、剣や魔法が乱舞する世界を駆け回ったのだという。
ジュウにはそんな記憶など全く無いのだが、雨曰く、そのうち思い出すとのこと。
その暁には再び剣を取り、共に世界を巡る――という妄言を、雨は真剣な顔で語る。
尤もその真剣な表情は、鼻の頭あたりまで長く伸びた前髪のせいで、だいぶ読みにくくなっているのだが。
しかし、その見た目やジュウに対する言動からは想像もつかないほどの優等生であり、まさしく文武両道。
進学クラスに在籍し、その中でも成績はトップクラスである堕花雨は、身体能力に関してもずば抜けている。
例えば豪雨の中、校舎の壁の縁をつたって窓から隣の教室へ移動したり、工事現場の足場を利用してマンションの9階まで登ってきたりと(その破天荒ぶりを除けば)、誰もが感嘆することだろう。
対するジュウは身体能力に関しては喧嘩と母親による虐待――もとい手解きによって無類の打たれ強さだが、勉強の方はからっきしである。
やる気が無いだけで授業には律儀に出席してはいるものの、内容を聞いていなければわかるわけもない。
その髪は金色に染め上げられており、見た目は不良を絵に描いたような出で立ちをしている。
しかしジュウは、煙草も吸わないし薬もヤらない、喧嘩も自分からふっかけるようなことはしないなど、不良としては三流である。
そもそもが生きやすいからという理由で不良の真似事を始めたこともあり、ましてや最近は度々雨に勉強を教えてもらったりしているので、そのキャラは着々と崩壊しつつある。
雨と出会ってからの自分は、どこかおかしい。
しかもそれを悪くないと思う自分がいるのも確かで、ジュウは複雑な気分で前髪をガシガシと掻いた。
そうすると、ふとした疑問が湧いてきて、ジュウは再び足を止め、肩越しに雨に話しかける。
「そういえば、今日は進学クラスは居残りとか言ってなかったか?」
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