390: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/21(金) 19:52:29.29 ID:gxCPCOG4O
しかし、真九郎だってここで引き下がるわけにはいかない。
あの義肢と、少年の口から出た《星噛》という単語。
それはドラッグに浸っている程度の連中が知っていていい名前ではないのだ。
裏社会の闇のさらにその奥。
そういうところに堕ちた連中のみが関わる名前だ。
そのためには、どこの誰が《星噛》の名前を使っているのか、或いはこの件に《星噛》が関与しているのか知る必要がある。
真九郎は銀子に歩み寄って、その肩に手を伸ばす。
「理由を……いやそんなことより俺が知りたいのは――」
「――左腕、まだ痛むんでしょ」
届く前に、左手が止まる。
銀子の言う痛みで止まったわけではない。
図星を突かれて動揺したわけでもない。
ただ恐怖が、真九郎の動きを止めた。
この左腕が彼女を壊してしまったら――そう考えるだけで、全身が竦む。
「ねえ、真九郎。いい加減揉め事処理屋なんか辞めて、ウチで働きなさい」
銀子の言葉で我に返る。
見遣ると、銀子はメガネを外して真九郎を見つめていた。
「もう、危ないことしなくていいじゃない。ウチに来て、一緒に暮らしてよ」
昔みたいに――という言葉は、憐れみと悲しみと懇願を含んでいた。
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