347: ◆yyODYISLaQDh[sage]
2017/02/23(木) 21:00:03.28 ID:V014Qou/O
雨の声で現実に引き戻される。
見遣れば、雨は顔を俯けたままバッグの持ち手を強く握りしめている。
思えば、このバッグも初めて見るものだ。
雨と言えば基本的にいつも制服姿で、バックも通学カバンぐらいしか見たことはなかった。
華美な装飾も無く落ち着いた色のバッグは、今日の服装も相まって雨によく似合っていた。
そんなバッグの中から、なにかの包みを取り出す雨。
それはまるで、弁当の包みのような。
「わ、私はやめた方が良いと言ったのですが、雪姫がどうしてもと無理矢理……その、す、捨ててしまっても構いませんので……」
「え」
「そ、それでは失礼します」
その包みを押し付けるようにしてジュウに渡すと、雨はそのまま顔を上げることなく足早に出て行ってしまった。
ジュウは呆然として、何かを言う暇も、言葉も無かった。
暫く閉まったドアの向こう側を見つめてから、包みに視線を移す。
広げてみると、タッパーに入れられたサンドウィッチが顔を出した。
そのうちの一つをつまんで口に運ぶ。
「……料理にも目覚めたのか?」
切れ目がデコボコのサンドウィッチは、意外にも美味かった。
〜〜〜〜〜
507Res/213.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20