柔沢ジュウ「雨か」 堕花雨「お呼びですか?」
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298: ◆yyODYISLaQDh[saga]
2016/10/14(金) 22:20:35.32 ID:J8WJ1/+kO
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大きな窓に映る自身の姿を見て、やはり自分にはこういう格好は似合わないな、と真九郎は思った。
こういう派手な格好をするには、圧倒的に顔に貫禄が足りないのだ。
オールバックに整えた髪を乱さない程度に頭を軽く掻く。
もう成人式もとっくに終えたというのに、未だに高校生に間違われることもある。
真九郎は後ろを通った屈強な身体つきをしているガードマンを見て、その威圧感に嘆息した。
こんな自分だからこそこなせる仕事もあるのだから一概に悪いとはいえないが、いずれは九鳳院の近衛隊隊長である騎馬大作ぐらいの雰囲気は手に入れたいものだ。
もう一度、窓に映った自分の格好を眺めてみる。
比較的地味ではあるが、パーティ用のそこそこ高級なスーツに、オールバックに整えた黒髪。
真九郎は今夜、とあるパーティー会場に来ていた。
非合法な会合とか、なにかの組織が催すようなものではなく、国内外の大手企業や財閥の代表が集う、懇親会みたいなものだと聞いている。
真九郎はガードマンとして雇われてはいるが、全身黒尽くめのガードとは違い、綺羅びやかな格好をして他の参加者たちに混じり、怪しい人物がいないか目を光らせている。
今回のパーティーには九鳳院は参加していないものの、雇い主は以前九鳳院の伝手で雇ってもらった某グループ企業の会長であり、つまりは真九郎のリピーターだ。
リピーターの存在は仕事としては喜ばしいことだが、噂によると彼には衆道の気があるらしく、真九郎としては微妙な心情である。

「あら、お見かけしない顔ですわね。どちらからいらしたのかしら」

「こんばんはマダム。私、こういう者です」

参加者の夫人らしき女性に声を掛けられた真九郎は、慣れた手つきで名刺を差し出す。
女性は名刺を眺め、失礼ながら存じ上げませんね、などと愛想笑いを返してくる。
それもそのはず、真九郎がたった今差し出したのは、偽の名刺だった。



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