593: ◆S0mvz1PntgQY[saga]
2016/09/20(火) 04:49:34.90 ID:hFhRzfxk0
「流石に今回は許してよ。まあ、ほら。このステージはね、私の夢なのよ」
「夢」
その言葉は、礼子さんにとったら、どんなに重いだろうか。
「無茶苦茶なオファーもあって、でもお金とコネが欲しくてガンガンやってさ」
木場さんとアメリカを仕事で駆け回り、帰国するやジューシーパーティの社長として旗印となった人。
「会社作ってからも、いーっぱい色んな仕事して。私だけじゃなく、みんなにも色んな仕事してもらって。泣かれたこともあったなあ」
色んな願いや想いを背負ったり選んだり、たくさんの人と出会って別れてぶつかり合って、たくさんの取捨選択を繰り返して。
「でも、泣いたり怒ったり、そういうのをしたりされたりして、それでも私が振り続けた旗の下、やっとこのハコを埋めるに至ったわけよ」
プロジェクト:シンデレラガールズが興る前から走ってきた人にとって、その“夢”は、どんなに重いだろうか。アタシは何も言えない。
「まだまだ、たくさんの夢があるし、それがどうなるかは解らないけどね」
顔を上げて、モニターを見据える礼子さんの目は、とても穏やかだ。
「でも、今、カタチになったこの夢のひとつを、フワッとした感じで終わらせたくないのよ」
みんなの視線が集まる中、礼子さんは改めて視線を自分の膝に落として、そっと、テーピングでガチガチになったそれを撫でる。
「どうせ夢を見るなら、全部投げ出して、全身全霊で夢を見たい」
衣装さんが、テーピングを隠すための黒タイツを履かせると、膝の古傷は、まるきり無いものとして姿を隠す。本当は、そんなことないのに。
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