男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」
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903: ◆3Jh764FmrU[saga]
2021/09/07(火) 04:49:46.36 ID:8g1Ib9ct0


< ヒュッッ……ゴォッン!!


 視界が暗転した。

 全身を何かに打って、何が起きたかも認識出来ぬまま。

 俺は遠くで鳴り響く轟音を聞いていた。


男(ッ……!!)


 呼吸を忘れていた自分に気付き、それから喉の奥から鉄臭い何かを思い切り吐き出す。

 不意に視界に映った自身の右腕を目で追えば、鋼の剣が砕けている。

 俺は降り注ぐ雨粒に溺れる様に――胸の奥で鋭い痛みを感じながら急いで立ち上がろうとした。

 だが、足が動かない。


男(……あ)ゴポォッ
          ビチャッ…ビシャァッ!


 無かった。

 俺の左足は、膝から下が。

 俺の右足は、太腿の辺りから捻れて背中の下敷きになっていた。

 ぺたぺたと手探りにそれら事実を確認した俺は、次に胸元を貫く木片に気付いた。

 どうにも気付けば、折れた鋼の剣を握っていた俺の手は震えていた様だった。


ダークトロル「一発で壊れちまったなァ……虫ケラァ?」

< ズシィン・・・!

ダークトロル「こっちに来て最初に闘り合った相手がお前で良かったぜェ」

ダークトロル「本物の『虫ケラ』だってよく分かったからなァ! グフハハハハ!!」


 土砂の山に倒れている俺を見下ろす黒き巨人。

 俺は化け物の手に先程まで無かった、長大な棍棒を見つける。

 それから何が起きたのかうっすらと察しがついた、恐らく俺はあの棍棒を投擲されたのだ。

 メラミを吹き消す様な怪物の膂力で投げ放たれた巨大な石の塊は、容易く俺を破壊して見せたのだろう。

 目が見えない。

 感じるのはダークトロルの笑い声による振動と、痛む手足を打つ雨粒だけだった。



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