忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」
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◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]
2014/12/05(金) 01:53:58.78 ID:5/HVdI+M0
(あぁ……やっと、少し慣れてきた、かも)
相次ぐお客様の対応に追われてとても疲れたけれど、それ以上に充実感がある。
何だ、私も意外と出来るものだ。
(後はこのまま、何も起こらずに終われば――)
そう、私がゆっくりと呼吸をしていると、
「あ、あの! これ俺のメアド、なんですけど……」
「――へ?」
唐突な異変に、私の口からつい、呆けた声が出てしまった。
何があったの?
「……私、ですか?」
「はい! あの……凄く、可愛いですっ」
緊張しきった男子の声に対し、当惑気味な「女子」の声がする。
その声は、私がいつも近くで聞いていて、ついさっき私を精一杯励ましてくれたものだった。
私は頭をクラクラとさせながら「現場」へと視線を転じる。
何やら、面倒事が起きているようだった。
クラス中の視線が、当人たちに集まっているように感じられる。
メモのようなものを渡す私たちと同い年くらいの男子は、
顔を真っ赤に染めながらメイド服に身を包んだ相手を褒め称えている。
刈り上げたヘアスタイルから見るに、どこかの運動部員かしら? この学校の生徒じゃないみたいだけれど……。
もう一人の方はこの位置からではよく見えなかったので、私は静かに移動した。
果たして、そんな彼と相対しているのは――
「……シノ!?」
愕然とした。
メモに目を落とすお相手は、いつも一緒にいる大切な友達だった。
「――そう、ですか。私に」
「はい! メチャ可愛くて……付き合って、くれませんか?」
「……」
シノはペコペコと頭を下げる男子を静かに見つめている。
いつのことだったろう。
私たちは、カレンが男子に告白されている場面を覗き見してしまったことがある。
その時は、私の好きな少女漫画のワンシーンみたいだ、と感じた。
そうだ、と私の中に、ある意味で理不尽な思いが湧く。
ここは共学で、こういったイベントがあるのは構わない。きっと、他のクラスか上級生の教室でも、似たようなことがあったりもするのだろう。
でも――と、私はそこで思う。
でも、よりによって、どうしてシノなんだ、と。
ある意味、八つ当たりなのかもしれない。
私の視線にある見覚えのない男子生徒は、きっと一生懸命なのだろう。
その懇願の様子からすると、決して軽い気持ちではないことがありありと分かった。
だから――私の胸も、キュッとしてしまう。
どうして……どうして、シノなの?
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