らき☆すたSSスレ 〜そろそろ二期の噂はでないのかね〜
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76:ひよりの旅 111/112[saga sage]
2013/02/11(月) 21:41:35.81 ID:W145K4B60
 数週間後……
まつりさんとまなぶ。まなぶは自分の能力を活かして通訳の仕事をしている。全世界を股に掛けて飛び回る……わけではなく、日本に来る外国人の通訳として働いている。
なんでもまつりさんが日本を出るのが好きじゃなかったらしい。彼らは何時も行動を共にしている。この時点で彼等の仲の良さがうかがい知ることが出来る。
実家の近くに住まいは在るけど在宅しているのは月に数日程度。二人を捕まえるのには一苦労した。
私は二人に会うために漫画の取材と言う事で約束をした。
ひより「すみません、お忙しい所を……」
まつり「別に構わないよ、それにしても久しぶりね、十年ぶりかしら……もしかしてコンの話し……もう亡くなって九年目かな……懐かしい……
    あ、感傷に浸っている場合じゃないね、何処まで話したか忘れた、どこまで話したっけ?」
ひより「コンの記憶が戻ってすすむさんが引取りに来るところまでですが……」
まつり「あ、あぁ、思い出した、よく覚えているね、そういえばボイスレコーダーで記録していたのを思い出した、今日は持ってきていないの?」
ひより「あれは帰って編集するのが思いのほか時間がかかるのですよ、だから最近はネタ帳に書くようにしています」
まつり「へぇ〜プロになると色々大変ね……」
私は周りを見渡した。
ひより「あの、旦那さん、まなぶさんは……」
まつり「彼なら買い物に行った、直ぐに帰ってくると思うけど……何か用なの」
彼には事前に何を話すかを伝えてある。それでも居ないと言う事は……二人で話してくれと言う事か……。
ひより「いいえ、用はありません、話しを続けましょうか」
まつり「でもね〜もう田村さんに全て話してしまったような気がして……もう取り立てて話すような出来事はないように思えるのだけど……」
ひより「本当ですか、亡くなった時の話とかはないのですか?」
まつりさんは暫く考え込んだ。
まつり「すすむさんから急に亡くなったと連絡が入った……」
その先をなかなか言おうとしない。
ひより「それだけですか……」
まつり「葬式をした訳でもない、すすむさんの所に行ったわけでもない……たった二年間育てただけだったから……ペットのと死なんてそんなものじゃないの……」
ひより「そうでしょうか、みなみの飼っていたチェリー、私の実家でも犬を飼っていましたけど、亡くなった時の喪失感は身内が死んだ時の様に……」
まつり「そう、そうなる筈、僅か二年でも柊家の一員として育てたつもりだった……それなのに、なぜか悲しくなかった、どうしてか分からない、
    失ったはずなのに、悲しくも淋しくもなかった……私って血も涙もないのかしら……」
まつりさんは理解していないだけで感じている。もう話しても大丈夫。そう確信した。
まつり「きっと子供が出来ないのはコンの呪いでもかかっているかもしれない……」
子供が出来ないって……まさかまなぶは人間になっていない……どうして……やっぱりお稲荷さんのままの方が長生きできるから……心底まつりさんを愛していない。
いや、人間になる事だけが愛じゃない……そんなのは分かっている。だけど……何故……
まつりさんのなんとも言えない表情を見て気付いた。
まなぶが人間にならないのは私のせいだ。私が告白して……でも私は未だに失恋を断ち切れていないから……だからまなぶが人間に成り切れない……
呪っているのは私だ……私は自分だけでなく二人の時間を止めてしまっていた。
その呪いを解くのは私でしか出来ない……ゆたか、つかさ先輩……そう言う事だったのか。
ひより「コンは亡くなっていませんよ」
まつり「私の心の中に生きているって言いたいの……そんなのは気休め……」
ひより「いいえ、コンは生きています、そして貴女の側にいつもいますよ」
まつり「え……な、何が言いたいの……」
ひより「思い出してください、まなぶさんと初めて会った時の事を、もうまつりさんは知っているはずです……心の奥底に封じてしまった記憶」
まつり「初めて会った時……記憶……」
まつりさんはじっと一点をみつめている。思い出そうとしている。
まつり「……あれは夢……夢だった……そんな事がある筈ない……おとぎ話じゃあるまいし……」
ひより「夢ではありません、まなぶさんが教えてくれますよ、もう真実を見ても倒れないですよね、そして今度ご家族に聞いてください、つかさ先輩、かがみさん、いのりさんのお話を」
まつり「つかさ、かがみ、姉さん……いったい何があると言うの……」
ひより「素晴らしい話ですよ……」
私は立ち上がった。
ひより「私の取材は終わりです、ありがとうございました」
私は礼をして部屋を出ようとした。
まつり「待って、……田村さん、もしかして貴女はまなぶを……」
まつりさんはそこで言うのを止めた。
ひより「もう十年も前ですよ、いままで私は何をしていたんでしょうね」
まつり「田村さん……」
ひより「止まっていた時間を動かしにきました……」
私は微笑んだ。
まつり「……ありがとう……」
私は礼をして部屋を出た。




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