このスレッドは1000レスを超えています。もう書き込みはできません。次スレを建ててください
社畜兄と義妹 高校編
- 57 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/14(土) 22:18:45.40 ID:PGwF6gI0o
- 振り返ると、教室の入口に担任の姿。
横からスルリと現れる少女。
担任がオレの席を示すと、白いワンピースの上にデニムジャケットを羽織った細身のシルエットが無造作に近付いてくる。
教室中が注視してるというのに、まるでこの世に自分とオレしかいないかの様に、視線をフィックスしたまま距離を詰めてくる。コイツ、少女型ターミネーターが入ってるんじゃないだろうな。
オレ「え、ちょ、な…」
義妹「お弁当、持って来ました」
オレ「お、おべ、おべべべ…?」
義妹「母からの言伝もあります。今朝は慣れない台所で勝手がわからず、間に合いませんでした。ごめんなさい。でも、明日からは登校時間に間に合う様に作るから、良かったら召し上がってください、とのことです」
オレ「あ…ありがと」
義妹「ちなみに、私も少し手伝いました。心して食べてください」
オレ「はひ」
スッと差し出される包み。気組みで完全に遅れを取って素直に受け取ってしまったオレを尻目に、用事は済んだとばかりにさっさと踵を返す義妹。
肩甲骨付近で揃えた髪を翻して悠々と去って行くその後姿には、もはや孤高の潔さすら漂う。
同級生A「おいおい、オレ達に内緒で彼女か? 何歳だよ、あのコ?」
同級生B「ムッツリ! せんせー! ムッツリがいまーす!!」
同級生C「それなんてエr…」
同級生D「せんせー! あのコ送っていくから早退させてー!」
担任「お巡りさんこの人です」
千葉「おい、さっきの聞こえてたんじゃねーか? ションベン…」
野次を飛ばす同級生を尻目に、目の前の千葉だけが突然オロオロし始めている。コイツは昔からこういうヤツだ。クソ、憎めんだろーが。
オレ「お前、放課後、弓道場来いよ。いま、的場(的が立て掛けてある場所のことね)に立ちたい気分だろ?」
オレに義理の妹が出来たことが、学校中に一瞬で広まった。
- 58 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/14(土) 22:19:44.16 ID:PGwF6gI0o
- イマイチ射(弓を引く行為、くらいの意味です)に身が入らないままに、部活が終わった。的紙を張ったり、安土(的を固定する土の斜面)を整えてる一、二年生の挨拶に応えながら、さっさと帰路につく。しかし、早く帰宅したいのかというと、そうでもない。
目を閉じて、昼休みの映像を再生する。新鮮な記憶なので、解像度が高い。少女の動かない表情の下を読み取ろうとするが、失敗。当たり前だ。彼女に関する基礎データの蓄積が致命的に不足している。
薄暗くなった山道をチンタラ走るバスに揺られて帰ってくると、さらなる絶望感がオレを打ちのめした。もはや、防具なしの顔面を竹刀でブっ叩かれた状態に近い。
家の敷地に差し掛かると、夕餉の匂いが漂ってきた。義母が用意してくれてるのだろう。空きっ腹を歯を食いしばって抑え込みながら、玄関への最短距離を進む。
縁側の横を通った時、正座して洗濯物を畳んでいる義妹の後姿が目に入った。彼女の横には、几帳面に畳まれた洗濯物が積まれている。昨日の引越し作業で使ったタオルの山、Tシャツ、ジーンズ、あと、親父のランニングとか、オレの下着とか。
途端に昼休みのことが思い出される。謝るべきか、何事もなかった様にしらばっくれるか。
いや、そもそもオレのセリフを聞き取っていないという可能性もあって、オレとしてはそれに賭けたいところだ。その細い背中を見ながら苦い逡巡に陥る。
オレ「え!? ちょ、ちょ、ちょ!」
義妹「ちょ?」
- 59 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/14(土) 22:22:13.23 ID:PGwF6gI0o
- 奇妙な声を発しながら縁側に突然現れたオレを義妹が認識。不思議そうにこちらを見上げる。
意外に正座が様になってるな、この子… などという観測は後にしよう。
オレ「あ、いや、そのオレのパン… 洗濯物って…?」
義妹「今朝洗った物です。良く乾いてたから、畳んでます」
オレ「あ、あぁ。そうだよね。的確な判断だね」
義妹「夕飯はお義父さんを待ってからになるみたいです。お風呂、兄さんに先に入ってもらうのが、効率良いと私は思うのですが… やはり一番風呂は家長に入ってもらうべきか、母と決めかねてました」
オレ「に、兄さんって誰のこ… いや、うちにそういう決まりはないよ。日々の生活に関しては、効率重視。親父、風呂テキトーだし。昔は、家の前の川に降りて行ってバシャバシャやって済ませる日もあった。暑い日限定だけど」
妹のただでさえ大きな瞳が、オレをロックオンしたままさらに縦幅を拡大する。数秒の沈黙。
この子なりに驚いているらしいと気付く。
あ、クスッて笑った。
義妹「そんなに綺麗なんですか、あの川」
オレ「あぁ、都会の川にはメダカとかゲンゴロウいないんだってね。夏には鮎も釣れるよ」
義妹「家の前で? 鮎が?」
オレ「塩焼きして、そのまま食卓へ」
顎に手を当てながらまだ何か考えてるらしい義妹に「とにかくお風呂、先に頂きます」とだけ告げて、その場を離脱。
玄関で靴を脱いでたら途端に空腹感が戻ってきた。身体は明らかに、風呂より先に晩飯を要求している。風呂場で倒れないだろうな、オレ…
- 60 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/14(土) 22:22:47.84 ID:PGwF6gI0o
- 以上、高校編 第一章的なもの、終わりです。
- 61 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/14(土) 22:25:16.59 ID:PGwF6gI0o
- >>55
以下、お約束のブツです。
高校編しか読んでない人だと、義妹のイメージ崩れる可能性大かと…
オレ「義妹さん、今夜は月が綺麗ですね」
義妹「…え? どうして急にデスマス調?」
オレ「いや、そんなのいいから。ほら、見て見て。今夜は月が綺麗ですね」
義妹「えっと、いわゆる朧月ですね。どちらか言うとちょっと怖いっていうか… 綺麗とは少し違うかな」
オレ「いいですか、奥さん。大事なことだから三回言いますよ。今夜は月が綺麗ですね」
義妹「え、ちょ、お、おくさん? そんな急に…」
オレ「夏目漱石が英語教師してたのは知ってる?」
義妹「…は? 漱石? 「坊っちゃん」の主役が先生役でしたよね?」
オレ「そう。坊っちゃんの主人公は数学の先生だけどね」
義妹「…で?」
オレ「ある日、授業中に生徒が"I love you"を"我汝ヲ愛ス"って訳したんだって」
義妹「旧仮名遣いっていうんですか、途端に渋い響きになりますね」
オレ「そしたら漱石が「日本人はそんな直接的な愛情表現をしない。今夜は月が綺麗ですね、程度に訳しておきなさい」って言ったんだって」
義妹「わ、当時の日本人は奥ゆかしかったって話ですか? なんか素敵。うん、そういうの好きかも」
オレ「これが今夜のオレの婉曲的文豪告白。では、改めまして、コホン…今夜は月が綺麗ですね」
義妹「わぁ… ヤバいかも、コレ」
オレ「お、婉曲的アプローチ、珍しく高評価?」
義妹「エヘ。お月様、綺麗ですよー 今宵は月を愛でながら致しますか?」
オレ「え… 奥ゆかしさはどこへ?」
- 62 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/14(土) 22:42:09.98 ID:xqD049/Io
- 毎晩告白してんの?wwラブラブだなぁww
- 63 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/14(土) 22:47:08.32 ID:EWDYFvSUo
- パー速のスレ見てるとよく思うんだけどスレに出てくる人ってたまに月が綺麗ですねの意味知らない人多いねww
- 64 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/15(日) 01:54:05.97 ID:O3ItLJrWo
- やばい
臭いwwww
- 65 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/15(日) 04:51:34.40 ID:J7xZ3/WKo
- そのうち義妹が言ってくるだろうから
私死んでもいいわ
とでも返すといいよww
- 66 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 06:28:13.31 ID:Bk7N9adHo
- おはうぃ。じゃ、第二章的なもの、始まり。しかし、日曜の朝イチ恥ずかしい気分のオレはどーすればいい?
>>62
まだ9ヶ月ですから。世界中がアハハウフフの対象ッスw
>>63
スマン。オレもついこの前まで知らなかったんだ。日本でいわゆる理系に分類される人達はほとんど知らないのでは…?
>>64
なんかスマンw 他人のアハハウフフなんてこんなもんだろ?
>>65
把握した。こんなスレがあるのか。で、>>61の書き込みが猛烈に恥ずかしくなってきたんだが、どーすればいいんだ?
- 67 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/15(日) 06:30:15.31 ID:mG2FE+T0o
- おはうぃ
義妹も恥ずかしくさせとけ
- 68 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 06:30:17.75 ID:Bk7N9adHo
- 親父「…というわけだ。明日の日曜、儂と義母は終日留守にする。後の事は一任するから、オレ、義妹に町を案内してやれ」
オレ「マジでか。義妹もスカイラインに一緒に乗せ…」
義妹「わかりました。問題ありません」
都会から来た中三女子って、日曜になにするんだ? ウィンドウショッピング? 歩き疲れたらスタバ? 町には生活必需品を扱うよろず屋が一軒だけ。しかも、何も買わずに立ち去れる雰囲気じゃない。
ただちに、オレは脳内ぴあ町内版を走査した。
映画館…そんなものない
ボーリングとかビリヤードみたいな遊戯施設…じぃちゃん、ばぁちゃん用のゲートボール場ならある
本屋…こぢんまりとした図書館があるが、これもジィさんバァさんの憩いの場と化している
ショッピングモール…オレが通う高校がある隣町まで行けば、ジャスコがある。ただし、バスで山道を走ること往復2時間
小洒落たカフェ…定食屋「千葉」にセルフサービスのコーヒー(ただし、千葉一家と共用)があるだけ。いや、役所と公民館に自販機コーナーがあったか
「いっそのこと隣町まで出るべきか? いや、ただでさえ少ないバスの本数が土日ダイヤだとさらに減るし…」
居間のちゃぶ台で頭を抱えてるオレの頭上から、寛大なリクエストが降ってきた。
義妹「明日なのですが、兄さんのお気に入りの場所に案内してくれませんか。この町限定で」
この子、ちょっと低いけどよく通る澄んだ声してるんだなと、この時に初めて気付いた。
- 69 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 06:42:51.00 ID:Bk7N9adHo
- >>67
今朝はまだ寝てる。珍しい。オレ一人だけ恥ずかしい。
- 70 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 06:50:49.55 ID:Bk7N9adHo
- オレのテンションの低さを全否定するかの様に、日曜の朝は快晴。神様にまで早く出掛けろと、尻を叩かれてる気分だ。
両親が乗ったスカイラインのテールを門のところで見送って、オレは空を見上げながら必死に何気ないトーンを装って告げた。
オレ「さー、行くか。オレ達も用意しよう」
義妹「私はもう出掛けられますが」
オレ「…え、そーなの? ちょっと待ってて。着替えてくるから」
引き出しの中で最も着用回数が少ないTシャツの上に、今日の為に漂白しておいた白いボタンダウンシャツを羽織る。ボトムのリーバイスは少しクタッとなっているが目を瞑る。
オレ「ゴメン。お待たせ」
ヒップポケットに財布をねじ込みながら、義妹に近付く。門のところで女郎蜘蛛の巣を光に透かして観察していた彼女が振り返り、オレが斜め掛けにしたバッグに視線を止める。
「どうしてそんなに大きな荷物が必要なのですか」という声が聞こえてくる前に、マイ自転車を押してスタスタと門を出るオレ。
後ろから何も言わずに、素直についてくる義妹の気配。よしよし、これはかなり兄貴っぽいんじゃないか? ナイス、オレ。
門を出て、家の前の橋を渡る。鳶が上空で特徴的な鳴き声を上げながら旋回している。川魚を狙っているのだろう。「凄い! あの鳥、大きい!」とか言ってる義妹。それ、全然凄くない。いくらでもいるから、この辺。
川を背中にして、そのまま緩やかな坂を登り始める。三昧(さんまい はかばかしいのことね。ちなみに、土葬)がある交差点も素通りして、そのままどんどん山の方へ。
当然、なにしゃべったらいいのかわからないから、自転車を押して黙々と歩く。聞こえるのは自転車の駆動系が立てる音だけ。
20分後。目的の場所を視界に捉えたので、後ろをついてくる妹を振り返って指で示す。コクリと頷く妹の首筋に、汗が薄く光っている。
- 71 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 06:57:08.04 ID:Bk7N9adHo
- 義妹「わー すごーい! 気持ちいー!」
素直な反応を見せて、境内の真ん中へ小走り移動していく義妹。意外だ。オレも鳥居の脇にマイ自転車を置いて、ゆっくりと境内に足を踏み入れる。ジャリジャリ。
山を少し上がっただけなのにひんやりした風が吹き抜けて、鎮守の森からサワサワと葉ずれの音が落ちてくる。掃き清められた地面には、既にいくつかの足跡。早朝参拝に訪れた人がいるのだろう。
子どもの頃は、ここに来れば必ず誰か遊び相手が見つかった。いつから足が遠退いたのか、自問しても明確な時期は特定出来ない。
ここから振り返ると、町の大半部分を眼下に収めることが出来る。谷の合間を流れる川。その両岸に大半の人家と施設が密集していて、あとは田んぼ、畑、ビニールハウスがほとんど。当時のオレには見慣れた景色だったが、都会しか知らない義妹にとっては、お宮に上がっただけで一望出来る町というのは驚きだったらしい。悪かったな、田舎で。
初めて見る年齢相応の義妹の表情に気を良くしたオレは、いつの間にか横に立って同じ景色を見ている義妹に町のレイアウトを説明する。
オレ「アレが役場。親父の職場。斜め向かいが公民館。あそこに50mくらいの商店街っぽいのがあって、普段の買い物はそこで済ませて…」
フンフンと頷きながら、オレが指差す方を視線で追う義妹。なんだ。意外に素直な生き物なのかも知れないな、コイツ。
神社の何がそんなに面白いのかわからないが、義妹は物珍しそうにあちこちに視線を動かしながら、境内の奥へずんずん進んでいく。
オレ「夏祭にはこの辺に夜店が立って…って、あれ? どこ行った?」
義妹「うきゃっ!!」
- 72 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 07:04:24.53 ID:Bk7N9adHo
- あ、間違えた。>>70の三昧の説明は、
誤 はかばかしい
正 墓場
です。スマホの変換候補が…言い訳はやめとく。ゴメン。
- 73 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/15(日) 08:10:02.46 ID:UKEqEhpro
- おはよー
朝早くから乙です。
本編も楽しみにしてるよ
- 74 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/15(日) 10:21:40.19 ID:caaV7+n9o
- >>71
義妹「お兄さん。あのクスの木! 大きいねえ」
オレ「きっと、ずーっとずーっと昔から、ここに立っていたんだね。昔々は、木と人は仲よしだったんだよ」
- 75 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/15(日) 11:37:13.70 ID:aRd4A2OYO
- いくつか質問が。
1. 仕事辞めたのに、なんでそんなに早起きなの?
2. この文章、結構な分量あると思うんだけど、まさか全部スマホで書いてるの?
3. 貴方の文章って地の文は丁寧に淡々としてる一方で、会話が軽快な掛け合いみたいでそのギャップが面白いんだけど、どこかで練習したの?
4. ジャスコ好き?
- 76 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/15(日) 14:43:50.63 ID:O/iUTyG3o
- >>75
質問していいよね
1.友達いる?
2.キモいっていわれない?
3.どこで日本語習ったの?
4.ヨーカドー好き?
- 77 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 22:28:05.65 ID:Bk7N9adHo
- >>73
そういうの素直に嬉しい。さんきゅ。
>>74
ちょw オレの氏神様の境内で勝手にトトロごっこさせないでww あんなデカいクスノキ生えてないからwww
>>75
1. 理由は二つ。田舎の朝早い生活リズムで育ったことと、オセアニア市場が動き出すから。
2. ノートPCで80%書き上げて、残り20%はスマホで。外出先の隙間時間とか、家でゴロゴロしながら仕上げて、切りの良いとこまで出来上がったらアップって感じ。
3. 練習したことはないです。分量が膨らみがちなので、もっとスッキリ書きたい。どうやったら巧くなるんですかね、文章って。
4. 世界展開のカリスマ総合セレクトショップですよ? 好きってか、田舎者にとってはもはやリスペクト? でも、この数年後にイオン傘下に入って、国内からジャスコ消滅しちゃったんだよね…
- 78 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 22:28:28.61 ID:Bk7N9adHo
- さっき飲物買いに出たら、あちこち水溜りだらけ。記録的豪雨らしいですね、台風18号。
本編の続きを一つと、リアルタイムのやり取りを一つ貼って寝ます。おやすみ。
- 79 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 22:29:43.58 ID:Bk7N9adHo
- 静謐なる聖域に奇声が響き渡り、驚いた小鳥が頭上でパタパタと羽音を立てる。
何事かとあたりを見渡すと「わ、わ、わ」と声を漏らしながら、必死の形相でこちらへ走ってくる義妹が見えた。そのままオレの背後に回り、シャツの裾を掴んで隠れる。
オレ「え、どしたの?」
義妹「へ、へへび、へびびび」
背後から義妹の震える指先が上がり、そちらを見ると長くて太い枝…ではなく、緑っぽい蛇。日差しを受けてテラテラ輝く身体を石畳の上に横たえながら、頭部だけを低くもたげてこちらの様子を窺っている。心地良い陽だまりスポットを放棄してでも逃げるべき状況か、こちらの出方を窺ってるのだろう。
オレ「あぁ、アイツね。大丈夫だよ。こちらが何もしなければ、攻撃してこない」
義妹「アイツって、ヘビと友達なんですか!?」
オレ「いや、顔見知り程度だけど。模様で大体わかる。あそこでたまに日向ぼっこしてるのを見る」
義妹「あんな大きくて太いヘビ、動物園でしか見たことありません。5メートルくらいありました」
オレ「いや、せいぜい2メートルちょっとじゃない? まぁ、あそこまで育ってるのはこのへんでもあまり見ないかな」
義妹「と、とりあえず離れましょうよ。追っ掛けてこないかな?」
その発想に、思わず小さな笑いが漏れてしまう。ああいう大きい種類のヘビはからかったり、間違って踏ん付けたりしない限り、安全な生き物だ。ネズミも取ってくれる。
むしろ人里で見掛ける生き物の中では、猪や熊の方がずっと危ない。どこかのバァちゃんが猪に突進されて骨を折ったとか、ジィちゃんが熊と闘って追っ払ったみたいな話は、毎年何件か耳にする。
鳥居付近まで戻ってきた。ヘビから離れると義妹は途端に落ち着きを取り戻したらしく、両腕を広げて「あー!」とか言ってる。いや、ほぼ叫んでるに近い声量だ。やめろ。宮司さんが出てくるだろ。
義妹「ね! 次はどこ連れて行ってくれるんですか?」
オレ「これでおしまい。あとは家でゴロゴロする」
義妹「えーー!!」
オレ「ウソ。乗って」
鳥居の脇に停めてあったマイ自転車に跨り、バッグからタオルを取り出して荷台に敷くと、義妹に合図。
彼女は後ろで荷台に跨って左手でオレの腰をガッチリホールド、右手で荷台の端の掴み方を数パターン試してから「これでヨシ」と呟いた。
- 80 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/15(日) 22:31:13.51 ID:Bk7N9adHo
- オレ「もう5年も経つんだ」
義妹「え?」
オレ「リーマン破綻。9.11も衝撃的だったけど、9.15も金融の世界に関わる者にとっては忘れられない日になった」
義妹「そっか。もうそんなになるんだ」
オレ「投資銀行なんて仰々しい名前使ってても、内部から見れば大半はちょっと優秀なだけの凡人の集まりだった。オレも含めて」
義妹「…辞める踏ん切りがよくつきましたね」
オレ「飽きた。その一言に尽きる。色んな国から集まった肌の色の違う猿が、小難しい金融知識で理論武装して権力争い。血を吐きながら勝ち上がっても、得られるのは猿山のトップって肩書と一生使い切れない金だけ。とてもじゃないがペイしない」
義妹「どうするんですか、これから」
オレ「親孝行でもしようかな」
義妹「わかんない。なに企んでるんですか」
オレ「そのクリスピーサンドくれたら教えたげる」
義妹「ダメです。コレは譲れません。交渉不成立」
オレ「おかしいな。ネゴスキルが鈍ってるのかな、オレ」
義妹「フフ。いまの兄さんには腑抜けって言葉がぴったりですよ」
オレ「む。失敬な。でも、その通りだ」
義妹「もうしばらく腑抜けててください。女はサプライズが好きなんです。後のお楽しみに置いときたい」
オレ「何でもお見通しか。家族を驚かすのって難しいね」
- 81 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/15(日) 23:11:10.16 ID:jgNCd1Rqo
- 見てるよー
- 82 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 01:58:23.41 ID:AeiKoLE3o
- 乙です
リアルタイムの方も気になるので
こっちもお願いします
ほんわかした義妹さんのようで
うらやましいですわ
- 83 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 :2013/09/16(月) 06:32:00.59 ID:Ey+h7ShQo
- おはよん。
>>81
さんきゅ。
>>82
ほ、ほんわか!? >>80だけ読むとそういう印象にならないこともない…かな?
- 84 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/16(月) 06:32:30.32 ID:Ey+h7ShQo
- 義妹「私の推理が正しければ、さっき登ってきた道をいまから下るんですね、コレで?」
オレ「その通り。そのためにわざわざ押して上がってきたんだから。つかまった?」
義妹「ゆ、ゆっくりですよ。あくまで、ゆっくりと!」
両脚で地面を蹴ってマイ自転車をスタートさせる。最初の数メートルこそフラついたものの、緩やかな傾斜の助力を得た愛機は徐々にスピードに乗っていく。
オレはこの浮翌遊感が堪らなく好きだ。曲がりくねった道を身体を傾けて、向かい風の抵抗をはらみながら滑空してい…
義妹「無理! もー無理! 背中がフワフワしてる! ダメ! ダメだってー!!」
オレ「わっ、ちょ、あぶな、引っ張ったら危ないって」
リアシートがやたらと賑やかしい。必死にしがみついてくるから、余計にハンドルがブレる。この素敵な浮翌遊感は万人と共有出来るものではないらしい。
仕方なく、しぶしぶハンドブレーキと足ブレーキを併用してお楽しみを中断する。ズルズルズル。舞い上がる砂埃。
義妹「え、なんで足擦ってるんですか。そこのレバー、もっと握りましょうよ。ほら、ギュッて」
オレ「あー いや、コレね、あんまり効かないんだよね。足を突っ張る方がよく止まるくらい。ブレーキパッドの摩耗とワイヤーの弛緩が原因だね。ただ、あんまりやると靴の底が減るから足ブレーキは極力使いたくない」
義妹「…そんな乗り物にいま乗ってるんですね、私。次の目的地まで、あとどれくらい?」
オレ「ん。いま、山の上のお宮から渓谷の河原まで降りてくとこだから。まだしばらく掛かるよ」
ヒュー…ズルズルズル…を繰り返すオレ。後ろで絶望に打ちひしがれているらしい義妹を乗せて、いつもより控え目ペースで下り坂を楽しむ。
- 85 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 06:53:14.92 ID:KwBlbYkho
- おっす
(二人乗りよくない)
- 86 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/16(月) 16:54:54.43 ID:Ey+h7ShQo
- >>85
おっす
(ごめんなさい)
思いの外、現在の私と義妹のやり取りへの需要が高いみたいですね。
では、今後は朝に本編を、夜にはその日あったリアルタイムのエピソードをアップすることにしましょうか。
と言っても、過去の出来事からピックアップして書く高校編と違って、いまの私の日常に他人様に聞かせる程のエピソードがそんなにポコポコ都合良く発生する訳もなく。
実際、今日は義妹はも不在なので、今のところ極めて平穏な一日です。ってことで、こんな日は正月以降にあった出来事から何かピックアップして乗せることにします。
今夜は、少し前にあった仕事ネタになる予定です。また後で。
- 87 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/16(月) 22:24:35.00 ID:Ey+h7ShQo
- 義妹「おかえりなさい。わ、スーツ姿、ちょっと久し振り。今日の仕事って何でしたっけ?」
オレ「妙な仕事だったよ。春をひさいできた」
義妹「春をひさ… 何してきたんですか?」
オレ「コーヒー飲みたい」
義妹「座っててください」
鞄から今日の資料一式を取り出し、バインダーに綴じてラックへ放り込む。もう使うことはないだろう。
ジャケットを椅子の背に掛けて、ネクタイを緩めながらどかっと腰を降ろす。こういう仕事のモチベーション低下作用は半端ない。
義妹「お待たせしました。濃い目にしときましたよ」
オレ「ん。美味しい」
義妹「…で?」
オレ「あ、やっぱり話さないとダメ?」
義妹「コーヒー返してもらいますよ」
オレ「…この前、食事した人、覚えてるよね。そこそこ大きな会社の専務さん」
義妹「はい。ダンディな方でした」
オレ「食事の翌日、あの人から仕事の依頼があった」
義妹「え、あれってそういう趣旨の席だったんですか。どんな仕事?」
オレ「あの人の会社、営業利益はぼちぼちプラスなんだけど経常利益ではマイナスに転じる。原因は創業社長の息子の投機癖。会社の金でギャンブルしてる」
義妹「そんなこと出来るんですか」
オレ「創業一族が役員に名前を連ねる組織ではよくある話。財務活動の営業外費用が嵩んで本業の利益を食い潰してた。あの専務さんはメインバンクに呼び出されて、これを何とかしないと融資条件を引き締めるって言われた」
義妹「えーっと、損益計算書の話ですよね。何となくわかります。でも、どうしてそれが兄さんに関係するんですか?」
オレ「昔、お世話になったことがあったから、退職挨拶のメール送ったんだよ。そしたら、一つ相談に乗って欲しいって。オレに求められたロールは、外資系投資銀行出身でいまはフリーだから所属組織に縛られず金融商品を公正に評価出来るコンサルタント」
義妹「なんかすごーく胡散臭いです」
オレ「事前に受け取った資料は、そのオレなんか比べ物にならないくらい胡散臭い金融商品のオンパレード。専門家としてオレは取締役会の席でそれをクソ味噌にぶった切った…と言っても、ありのままの時価評価額を伝えただけなんだけど。こんな20代の若造の話を役員のオッサンどもが雁首揃えてご静聴。その後、別室で小切手受け取って帰ってきた」
義妹「わ、結構な金額ですよ、コレ」
オレ「いまのオレの一時間の値段らしい。安く見られたものだね」
義妹「でも、どうしてこう…お金のこと担当してる役員というか、CFO?みたいな人が説明しなかったんですか?」
オレ「社長の息子がいわゆるCFO的ポジションなんだよ。凄い顔で睨んでた。あの専務は社長の息子に改心を促す気なんてない。追い出す気かもね」
義妹「なんか社会に出るのが不安になってきました、私」
オレ「心配しなくていい。こんなのまだまだ序の口だから」
義妹「うげげ。春が待ち遠しいですねぇ…」
- 88 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/16(月) 22:26:52.52 ID:Ey+h7ShQo
- 22:15の米国指標は予想を微妙に下回ってきました。ドル円98.70付近… 微妙…
義妹も就職を控えて、最近は純粋なウフアハイチャコラではなくこういう仕事絡みの質疑応答的やり取り比率が高くなってきてます。
しかし、需要あるのかな、これ。社会人じゃない人が読んでもチンプンカンプンなんじゃね?
いや、スレに社畜って文言入ってるから見てくれてる人も社会人層だろうしオケか、とか思いつつ今夜はコーヒー飲んで寝ます。おやすみ。
- 89 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 22:30:25.05 ID:7NeLQ6Gyo
- 私は大学生だから全然大丈夫だよん
おやすみなさい
- 90 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 23:29:43.94 ID:v4+CAEC4o
- 需要あるよーもっと細かいネタでもいいぞー
おやすみ
- 91 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/17(火) 04:00:13.69 ID:kTuLn4Wpo
- あ、籍入れたのか
遅ればせながらおめでとう
- 92 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/17(火) 05:01:57.06 ID:uPu8sR09o
- 目覚ましより先に起きてしまった。
コーヒー淹れよう…
>>89
おや。社会人じゃない人が〜の箇所は私の失言でした。謝ります。
しかし、最近の義妹とはこういうやり取りが多いのです。新しいキャリアをスタートさせる不安からか、彼女なりに色んな情報を求めてるんだと思う。例えそれがオレみたいな標準偏差から乖離した経歴の人間の口から出るものであっても。
身内はともかく、会ったこともない学生にとって価値ある話とかオレに出来るんだろうか… なんかプレッシャー感じてきたw
>>90
おぉ、ここにも需要が。ありがと。でも、あまり具体的に書くと関係者に迷惑掛かるかもなので、これ以上のディテールは勘弁。
>>91
…え? あれ? 参照 >>35
あ、それから。こんなタイトルのスレとトリつけといて今更感ありまくりなんだけど、私は自分が「社畜」だったとは今も全く思ってません。
この文言を使っているのは、正月の時に別スレ立ててくれた人への私なりの礼儀です。外銀のフロントに自分を「社畜」だと捉えている人なんていない。全員が「狼」です。ミドルやバックは割りと普通の業種で報酬も控え目だったりするので、いるだろうだけど。
あの環境に飛び込まなければ得られなかった知識、経験、能力、そして報酬を私は自らの意思で求め、幸運なことにそれらを手に入れた。最後のは民主党が敗れて以降のアベノミクスに繋がる一連の上昇気流に、組織における私のキャリアの終盤が重なったのが大きいけど。稼いだ者が正義の世界。
私が心血注いだこの数年間のディールはペイするものだった、と個人的に結論付けています。
では、本編を一つ。
- 93 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/17(火) 05:02:59.17 ID:uPu8sR09o
- オレ「流石にまだ早かったかな」
義妹「唇、震えてますよ」
オレ「オレとしたことが、判断を誤った」
義妹「誤判断と思われる行動がこの一週間で何回あったか、私が知る範囲で良ければ教えてあげましょうか?」
普段よりも多用した足ブレーキのせいで熱を持った足の裏を、浅瀬に浸して冷やす。
頭上から注ぐ春の光が、水面をランダムに輝かせている。日本屈指の清流指定を受けている河川。ここはそのさらに上流にあたる。かなり深い部分でも、底に沈む石の模様まで鮮明に見通せる。
子どもの頃によく遊んだ河原が見えてくると、重力との戦いに惨敗して荷台で投げやりになっていた義妹がようやく明るい声を上げた。
ポイポイと放り投げられるスニーカーと靴下。浅瀬に向かって走り始めようとした義妹の顔が途端に歪む。当たり前だ。この辺りの石はまだまだ角が取れていない。下手すれば足を切る。
見ればわかるだろうに…という言葉を呑み込みながら、義妹の為に持参したサンダルをバッグから取り出す。それを認めて、パッと輝く義妹の顔。
手を伸ばしながら無造作に足を踏み出し、またすぐに眉を顰める。オレを見る彼女の表情に、初めて懇願の色が滲む。苦笑いしながら、義妹に近付いてサンダルを手渡す。
河原を埋め尽くす鋭角の石と、足の裏の痛みをリンクさせる経験が彼女には欠けている。さっきのヘビにしたって同じ。異なる環境で育つのがどういうことなのか、オレはようやく理解し始めていた。
ここで暮らしていくにあたって、彼女に欠けてそうな経験をリストアップするが、多過ぎてすぐに諦める。アンカウンタブル。
義妹「あの、物凄く気持ち良い場所ですけど、さっきから身体の震えが止まりません」
オレ「オレのお気に入りの場所なんだけど、流石にまだ水が冷たかったか。引き揚げよう」
義妹「暖かくなったら、また来たいです」
滞在時間15分。当初の綿密な計画には既に綻びが見られるが、オレの脳内OSには土地勘という最強アプリがインストールされている。
- 94 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/17(火) 07:20:13.93 ID:qYqppyJP0
- ワロタ
- 95 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/17(火) 09:57:43.41 ID:D7C2jtGno
- 良いエピソードだ
- 96 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/17(火) 12:03:18.52 ID:rl+R0cXho
- >>92
特定した。
- 97 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/17(火) 17:27:32.02 ID:c+1A6JHUo
- 最初はトトロのパクリかと思ってたのにだんだん面白くなってきた。なぁ、この前みたいな激しい感情のやり取りねーの? ああいうの読みたいんだけど?
- 98 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/17(火) 18:21:55.74 ID:uPu8sR09o
- 今日は朝早くにリアルタイムのやり取りがあったので、早めに乗せます。
弓道ネタでわからない用語多いと思うから、注釈つけた。
コーヒー淹れよかな。
>>94
>>95
オレの失敗談だけ高評価とかw
>>96
あぁ、町の人とか読んだら一発でわかるだろうなと思ってた。「あの家の小倅か」って感じで。
同僚とはプライベートの話なんてほとんどしなかったし、仕事関係じゃないよね。考えられるとしたら町民、高校、大学あたり? 誰だかわかんないけど、番号知ってたら携帯鳴らして。
>>97
んー 高校編はないかなぁ。お互いにまだ遠慮もあったし。くだらないことで口喧嘩とかはよくあったけど。
大学入ってからはかなり衝突もあったけど、いまは高校編で手一杯。
- 99 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/17(火) 18:23:30.57 ID:uPu8sR09o
- 義妹「今朝の日経、もう読みました?」
オレ「あぁ、春秋(注1)の掴みが弓道関係だったね」
(注1)日経の春秋とは一面左下部に掲載されるコラム。今朝の日経朝刊が手元にある人は目を落としてみてください。
手元にない人の為に説明。弓道で用いる矢の末端には「筈」と呼ばれる円筒形の小さな部品がついてます。「はず」と読み、「こんなはずじゃなかった」とかの「はず」の語源らしい。この部品には幅数mmの溝が切ってあって、ここに弓の弦をつがえます。これがキッチリはまらないとちゃんと飛ばない。
法科大学院修了生の司法試験合格率が奮わないことと絡めて、そもそも最初の設計が間違っていたのだ、いつまで「はず」の合わないまま矢を射続けるのか、と問い掛ける内容でした。
義妹「あー 久し振りに弓引きたくなってきたなぁ」
オレ「引けばいい」
義妹「あ、何ですか、その冷たい言い方」
オレ「…そーか。電車乗れば割りと近くにあるよ、弓道場」
義妹「え!? そーなの?」
オレ「…いいかも知れない。オレも久し振りに的に向かってみたいかも」
義妹「ね、行こ行こ!」
オレ「急にテンション上がったね」
義妹「だって! 弓ですよ、弓! いざ!」
オレ「道着も弓具もないよ」
義妹「私が実家帰った時に、兄さんの分も取ってきます!」
オレ「張り切り過ぎ。でも、何年も弓触ってない人が行っても、いきなり的前(まとまえ 注2)は立たせて貰えないんでしょ、フツー」
義妹「そっか… 危ないですもんね」
オレ「それに、学生時代の弓も引けないと思うよ、重過ぎて」
義妹「ってことは…?」
オレ「新入部員と同じ。まずはゴム(注3)で八節(はっせつ 注4)、次にやっと軽い弓。板前さん(いたまえさん 注5)で巻藁(まきわら 注6)」
義妹「ぷぷぷ」
オレ「…なに、その笑い」
義妹「伝説の落(おち 注7)が! ゴム!」
オレ「む。基本を侮るな。あ、義妹だって最強の大前(おおまえ 注8)とか呼ばれてたし」
義妹「うわー 恥ずかし。ヤバいですね」
オレ「若い時のこと思い出して恥ずかしいってことは、良い青春過ごしたってことだと思う、たぶん」
義妹「きっと貸出用の道具ありますよね。まずは見学行きましょうよ、伝説の落」
オレ「だからやめろって、最強の大前」
(注2)そのまま的の前、道場において弓を構える位置のこと。
(注3)太幅ゴムを輪っかにしたもの。誰でも最初はこれを弓に見立てて型の練習をする。
(注4)弓を引く基本動作、8つの動作に分かれてるから八節
(注5)袴を穿かずに道着の上だけで練習すること。練習時間があまり取れない時(昼休み練習とか)に許される軽装。板前さんっぽいからこんな呼び方してたけど、うちの学校以外では通じないかも。
(注6)藁を円筒状に束ねたもの。直径50cm前後。最初はいきなり的に矢を射るのではなく、これに向かって練習する。
(注7)試合などでは4人とか5人が並んで、前から順番に矢を射る。その順番が一番最後の人のこと。前の人が的に中(あた)らなくても、とりあえずこの人が最後に中てれば、イヤな流れを止めて先頭に良い流れを繋げる。よって、必中が期待される。うちの学校では、副将のポジションだった。つまり、オレ。
(注8)落とは違って、一番最初に矢を射る人。試合の流れを作る重要なポジション。中らないと恥ずかしい。ってか、許されない。うちの学校では、主将のポジションだった。つまり、義妹。
- 100 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/17(火) 21:37:29.12 ID:XZqVyG2U0
- 4人立の記述があるってことは大学でもやってた?
高校の頃は4人立の記憶がない…
- 101 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/18(水) 05:14:03.60 ID:WSiKpheYo
- おはよー
>>100
おぉ、弓引き発見。オレのテキトーな説明、そんなに精読しないでw
大学でも引いてたよ。だから四段持ってる。弓引いてる人って、左手を見ればすぐにわかるよね。虎口と天紋筋。
ってか、前も思ったんだけどここってホントに色んな人が見てる。今夜こそ「はぁ? ナニコレわけわかんね」みたいな反応返ってくるかと思ってたのに。
では、本編です。
- 102 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/18(水) 05:15:16.09 ID:WSiKpheYo
- 義妹「あ、ここ、母から話を聞いて来てみたいと思ってた」
オレ「あぁ、身体冷えたからね」
義妹「へー なんか情緒溢れるっていうか、ひなびてるっていうか…秘湯って感じですね」
オレ「この町唯一の観光資源だよ。知名度低いからあまりお客さん来ないけど、一応泊まれるようにもなってる」
義妹「お湯、白くてヌルヌルするって聞きました」
オレ「親父はなぜかあまりこの温泉来ないから、ホラ」
義妹「わ、無料入浴券?」
町民には一定枚数の無料入浴券が配布される。
オレは親父の分も貰えるから、入浴料を払ったことはない。
オレ「あ、一つだけ注意点が」
義妹「はい?」
オレ「ここ、露天風呂あるんだけど」
義妹「わ、良いですね、露天風呂!」
オレ「女湯は男湯よりも高い位置に作られてて、基本的に男湯からは覗けない構造になってます」
義妹「ふむふむ」
オレ「ただ、浴槽の端っこで立ちあがると男湯から丸見えになる場所があります。川に面した方ね」
義妹「え… ダメじゃないですか」
オレ「それを楽しみに温泉来てる地元のオジィちゃんもいます。注意されたし」
義妹「なるほど。それは有益な情報です」
受付のオバちゃん(当然、ご近所さん)に入浴券を渡す。
「あら、オレ君の新しい家族だね?」というオバちゃんに丁寧に挨拶する義妹。
男湯の前でカバンからタオルと手拭いを取り出して、義妹に渡す。自分の分が用意されてたことを知った義妹が「フフッ」と小さく笑う。
- 103 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/18(水) 08:53:29.66 ID:MFPnjn4po
- おはよ。アンタ、こんなのマッタリしたのも書けるんだな。全く違うテイストだが、毎日楽しみにしてる。
- 104 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/18(水) 16:47:43.89 ID:rmSGDwU3o
- ここは主がひたすら長文垂れ流す静かなスレだな。
- 105 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/18(水) 17:18:39.97 ID:WUZOyJSAo
- いま義妹は何してる?
- 106 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/18(水) 18:46:29.90 ID:7QidzvvAo
- なんか俺らも地元の観光紹介されてる気分になるスレだな
- 107 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/18(水) 21:56:23.14 ID:WSiKpheYo
- >>103
いまのオレがマターリした状態にあるっていうのもあるが、何よりも当時のオレの周囲全てがマターリしてたんだ。
>>104
そーだね。フツーはもうちょい賑やかなものなのか。自分でスレ立てるの初めてだからわかんね。まぁ、落ち着いて書けるのは助かる。
>>105
ベッドでゴロゴロしながら本読んでる。と言っても、Kindleだが。オレがダウンロードした葉室 麟。兄妹揃って時代小説好きになったのは、やはり親父の影響か。
>>106
この日の趣旨は義妹に町を見せることだったからさ。もうちょいしたらこの日の描写終わって、学校通い出すから。
- 108 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/18(水) 22:01:02.48 ID:WSiKpheYo
- 義妹「スーパー行ったら野菜が凄い高いんです。思わず買い控えてしまいました」
オレ「台風の影響か」
義妹「日本中凄い被害ですね。雨漏りくらいで済んで良かったです、実家」
オレ「ん。川に面してるからね。昔は床下浸水したこともあったらしいけど、護岸工事してからは大丈夫になった」
義妹「お義父さん、あの工事のせいで川に降りにくくなったって怒ってましたね」
オレ「あぁ、暑い夜、好きな時に降りて行って水浴びできなくなったからでしょ」
義妹「…いつから義父さんと兄さんの家を実家って呼ぶ様になったんだろ、私」
オレ「あそこは君の実家だよ」
義妹「いつか、帰りたいとか思いますか?」
オレ「そうだね。都会に出て、なおさらそう思う。子供にあの町の記憶をプレゼントしたい」
義妹「…え?」
オレ「子育てはあの環境でって、最近思うんだ。都市だけじゃなくて、ああいう場所もあるんだっていう評価軸を持たせてやりたい。中学までしかないから、高校進学のタイミングで寮に入れるか、家族で引っ越すことになるだろうけど」
義妹「それって…」
オレ「あんなに安全で、善意に満ちてて、長閑な場所なんて、この日本ですら珍しいと思う。だからこそ、子供の頃くらいはそこで呑気に過ごさせてやりたい。その後、どうするかは子供が勝手に決めればいい」
ペッチン…
オレ「…え? なんでいま叩かれたの、オレ?」
- 109 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/18(水) 22:07:55.07 ID:WSiKpheYo
- ってことで、今夜のリアルタイムやり取りは以上。
炭酸水ウマー。おやすみ。
- 110 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/18(水) 22:25:36.27 ID:JD6rd7OEo
- ( ゚д゚)
( #°д°)
- 111 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/18(水) 22:29:40.29 ID:WTIMOghj0
- 今夜もマッタリ読ませてもらった。おやすみー
俺も地元は田舎だったから子供ができたら友達と川や山で遊んだ思い出を作るのがいいんじゃないかと思うときがあるなぁ
>>101
一応伊勢で引ける日を夢見て学生弓道やってたからこの時期に弓の話題があるとね…
秋の風でいまだに押手とか勝手の肘とかが疼くわww
- 112 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/18(水) 23:32:54.13 ID:pRsA25D2o
- 思わず笑みがこぼれるね。
いいな、って思う。
- 113 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/19(木) 03:59:32.02 ID:Cmda1IVOo
- わからなくて文句言う人はここあまりいないと思う
ただ解説は非常にありがたい
弓道高校のときやってたから大前とかなつかしい単語だったww
うちは板前じゃなく寿司屋スタイル言われてたけど似たようなもんだな
- 114 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/19(木) 05:43:28.58 ID:ZqNB3U/Ho
- みんな、おはうぃ。なんか急に人が増えた? 「フツーはもうちょい賑やかなものなのか」とか書いたから、気を遣ってくれたのか? かたじけない。
>>110
えっと、なんか腹立ててるならスマン。
>>111
まぁ、恐ろしく閉鎖的だったり、人間関係も間違いなく面倒だし、良い面ばかりでもないけどね。それでも「自然の中に人間がお邪魔して暮らしてる」みたいな田舎特有の感覚は得難いと思って。(これはオレのとこが僻地だからっていうのもあるけど)
オレは「弓手(ゆんで)」「妻手(めて)」って呼ぶよ。用語のバラつきは地域と指導者にも寄るよね。打ち起こしは正面? 斜面?
手頃な太さの棒状の物を左手に握ると、反射的に手の内作ってしまうオレガイル…
>>112
ありがと。読んだ人にそういう気持ちになってもらえると、オレもここに書く意義を見出せる。
>>113
おぉ、二人目の弓引き発見。「用語説明の方が本文より長くないか?」とか思いながら書いた甲斐があったw 寿司屋か。なるほど。参拝の仕方にも各校の特色が出るよね。
では、本日の本編です。この第二章的なものも、今週末あたりに終わりそうな見込み。
- 115 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/19(木) 05:49:09.13 ID:ZqNB3U/Ho
- 男湯ののれんをくぐった瞬間に、どっと疲れが襲ってきた。世の中の兄貴というのは、こんなタスクを涼しい顔して毎日こなしているというのか。尊敬するわ。
脱衣場でシャツとジーンズを脱ごうとするが、冷えた指先が細かい作業を拒む。お陰で近所のジィさんの世間話にガッツリ付き合わされながら、ノロノロと服を籠に入れていく。
備え付けのシャンプーと石鹸で素早く身体を洗って、浴槽に身体を沈める。白濁した湯が、冷えた身体にジワッと浸透してくる様な錯覚。
思わず長い吐息が洩れる。これだけでもこの国に生まれた元を十分に取ってると言えるだろう。日本人で良かった。
露天風呂への引き戸をカラカラと開く。春の日中とはいえ、山間の空気はまだ冷たい。
浴槽に素早く身体を沈め、浴壁の手頃な大きさの岩を枕にして山向うの空を眺める。ぼーっと。浮翌力に任せてたゆたう俺の身体からは「ぷかぷか」という擬態語が聞こえてきそうだ。
あー 疲れたなぁー
和弓を引く時には普段使ってない筋肉を使うらしいけど、今日のオレも普段使ってない心の筋肉を酷使したぞ、たぶん。
朧雲が描くパターンを視線で無為にたどりながら、顔をゆっくり左へ倒し…
視界の隅に、何かがサッと隠れるのが映った。それも複数。兄貴というのは入浴中も息が抜けないものなのか。
そちらに向かって「先に出てるからー!」と声を張り上げると、白い手がヒラヒラするのが見えた。
- 116 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/19(木) 06:19:39.43 ID:IJFN4U6+o
- おはよー
朝早くから乙です。
いつも楽しみにしてるよ
- 117 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/19(木) 08:45:14.22 ID:+J0CQ5pMo
- どこかで見たタイトルだと思ったら656だと? しかも、初々しい中学生なのに義妹はちゃんと義妹じゃねーか。
朝から仕事が手につかねー ふざけんなよおい続けろください。
- 118 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/19(木) 19:13:54.48 ID:ZqNB3U/Ho
- 日経夕刊、消費税8%決定と米国の緩和縮小見送りのコンボですね。
今夜は米国置き去りにして欧州リスクオンですかそうですか…
>>116
そちらこそ、朝からありがと。
>>117
ここはいつでも読めるから、仕事してオケw
今日は平穏な一日だった。すなわち、話のネタがない。
ってことで、少し前の話。書き上がったから載せます。
- 119 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/19(木) 19:14:41.37 ID:ZqNB3U/Ho
- 義妹「兄さん、デスクの上のアレ、新しいタブレット端末?」
オレ「買った。前から購入検討してたんだ」
義妹「触ってもいいですか?」
オレ「どぞ」
義妹「あれ、Windowsなんですね」
オレ「そ。Microsoft Surfaceってモデルだよ。Windows 8 Proが入ってるから、いままでのWindows機でできたことは、基本的に全部できる」
義妹「へー 良いですねぇ、お金の心配から解放されてる人は? …って、あれ? え? デスクの下に置いてたパソコン…」
オレ「アレは手放したよ。足元がスッキリひろびろ」
義妹「…え?」
オレ「これからは2台のバックアップ用ノートPCとそのタブレットでやってく。それぞれに拡張ディスプレイ繋いで6画面トレード環境の出来上がり。安くなったもんだね。もはや液晶モニターにCPUが付属してる感覚…」
義妹「ええええーー!? あの中に私の卒論とか入ってたのに!!」
オレ「あぁ、内蔵ハードディスクなら…ほら、そこに取り出して置いてある。後でケースに入れてデータ抜くから大丈夫。その後、PCショップに持ち込んで、ドリルで穴開け処理してもらって廃棄」
義妹「…訳がわからないんですけど。つまり、その銀色の弁当箱みたいな中に私の卒論の最新版が入ってるってことですよね?」
オレ「そだよ」
義妹「じゃ、なんで上にコーヒーカップが乗ってるんですか?」
オレ「えっと、それは慣れというか、バラす作業してたら手頃な置き場所がなかったというか… 基板と接続端子さえ濡れなければ多少こぼれても大丈夫だと思うよ?」
バッチン!
義妹「その素晴らしいタブレット端末で、私の卒論データ取り出して。いますぐ!」
オレ「最近あまりキツく叩かれてなかったのになぁ…」
- 120 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/19(木) 20:02:53.21 ID:ZPaSds9po
- あれからもう半年以上経つんだな。
ネタの貯蓄は十分か、義妹王?
- 121 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 00:06:49.08 ID:ujbBLWGz0
- 今日もお疲れ〜万が一HDD壊れてたらどうやったことやらww
>>114
用語は確かに地域や指導者に依存するねー。
指導された時の言葉が残るというか…
斜面を考慮に入れるとは斜面引き?
うちは基本的には正面だけど、斜面の流派でもあるから人によってまちまちだったかな。
俺は体作りこみたい時とか状態確認するのに斜面で練習もしてたけど、試合はほとんど正面だった。
斜面の体が絞られる?感覚は気持ちがいい…
- 122 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/20(金) 05:31:47.64 ID:NVZMk/o4o
- おっは。
>>120
ネタは9ヶ月分の貯蓄がタンマリあるんだが、そのセリフへの上手い返し方がネット調べてもわからない。義妹王ってなんだw
>>121
おつかれー。オレは正面オンリーです。
初めて試合で斜面見た時は「なにアレ、カッケぇ!」ってビビったわ。見様見真似でやったこともあるけど、射が崩れそうな感じして辞めといた。不器用なんでw
斜面の「身体が絞られる」って感覚はわからんわ。師範が「均等に身体を開いていく正面に比べて、斜面は心臓への負担が大きい」って言ってた。ホントかよwって感じだけど。
しかし、何のスレかわからなくなってきたなw もうちょいしたら義妹が弓に興味持ち始めて、オレがちょびっと手ほどきする話とかあるんだけど、いい加減なこと書けねぇw
では、本編です。
- 123 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/20(金) 05:32:59.81 ID:NVZMk/o4o
- オレ「おばぁちゃん、もしオレが同じことしたら、お巡りさん呼ばれるんだからね」
おばぁ「アンタ、まぁ、何言うてはるの。そないに見たいんならな、なんぼでも見せたるさかい、今度ウチ来んさいな」
オレ「いえ、遠慮します」
おばぁ「…ちょっとアンタ、おばぁの遺言や思て、よう聞きんさいよ。ソレな、はよ使う相手見つけな。20歳過ぎたらね、どんどん萎んでしまうんよ? ウチの死んだじぃさんなんかもう小指の先くらいに…」
義妹「そうなんですか!?」
オレ「そこの共犯者、老人の誇張された話を間に受けるな」
(注 上記のおばぁちゃんのしゃべり方は、ローカル感を出す為にテキトーに書いた方言です。特定の地方を示唆するものではないので、悪しからず)
この後、定食屋「千葉」ではない方の食事処(味は「千葉」と似たり寄ったり)で昼食を取り、商店街と町の施設を案内。
家路に着く頃には、空が茜色に染まっていた。山へ帰ってゆくカラスの鳴き声を聞きながら、家の前の橋を二人で渡る。
義妹「兄さんに露天風呂のレイアウトを説明された時、ふと思い付いたことがあったんです。それを確かめたくって、あのおばぁさんに尋ねてみたらこっちこっちって手招きされて…」
オレ「そんなことだろうと思った」
義妹「おばぁさんの老後の楽しみだそうです。どうか寛大なご采配を…」
オレ「君は見たのか」
義妹「良い身体してますね。肩幅っていうか、上半身が特に。弓引いてるからですか?」
オレ「じっくり見過ぎだろ。やっぱり許さない」
義妹「あ、ケチ。じゃ、こうしましょう」
ピタリと立ち止まる義妹。
口角がクッと上がった。
オレ「…なに?」
義妹「あのションベンくせぇガキが誰に似てようと興味ねーんだよ」
- 124 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 07:44:42.39 ID:3XWQLTXho
- ( ゚д゚)
- 125 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/20(金) 08:56:19.01 ID:p9hMF2mbO
- ( ゚д゚)
- 126 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/20(金) 12:16:06.93 ID:QEuNp/aHo
- ( ゚д゚)
- 127 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 15:00:11.78 ID:hsMvA/vrP
- ( ゚д゚)
- 128 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/20(金) 15:18:11.39 ID:xTc+Py7iO
- ( ゚д゚)
- 129 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 16:19:21.66 ID:WnGIpl46o
- ( ゚д゚)
- 130 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 18:39:26.33 ID:g6ZhFoQrO
- ( ゚д゚)
- 131 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 19:13:19.36 ID:4+l90myKo
- >>123の最後の会話のやりとり見てて、よく今も会話のリードを握ってるなあと感心する
書き込まれたレスから自分なりに考えたから実際もそうとまでは限らんけどね
- 132 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/20(金) 20:33:26.45 ID:dUJYvdF+0
- これ根に持ってるのか?
- 133 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/20(金) 20:55:58.24 ID:NVZMk/o4o
- >>124
〜
>>130
何かしゃべってwww
>>131
しゃべってくれて、ありがとw
会話のリードを…っていうのは、オレとの会話時に義妹が主導権を握ってるって解釈でオケ? 違う?
まぁ、ぶっちゃけ単純な頭の良さでは義妹の方が上なんだよ。かなわない。オレのアドバンテージは数年長く生きてることによる経験の多さと、蛮勇に限りなく近いチャレンジスピリッツくらい。これは義妹にはない。ただし、諸刃の剣なんだけど、それは前回の話。
>>132
ノーコメントってことで。
空気読まずに夕方のやり取り載せときます。
- 134 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/20(金) 20:56:44.62 ID:NVZMk/o4o
- 義妹「あ、兄さん、ホラ! 土竜返し!(もぐらがえし 彼岸花をオレの町の年寄りはこう呼ぶ。根っからの農村だ)」
オレ「あぁ、今年ももうそんな季節か」
義妹「思い出すなぁ。田んぼとか三昧(さんまい 墓場のこと)にいっぱい生えてて綺麗だったなぁ」
オレ「ん。毒があるからモグラ除けになるんだね。でも、この前の雨で墓地も大変だったんじゃないかな(注)」
義妹「初めて目にした時、流石にカルチャーショックでしたよ。土葬って」
オレ「だろうね。土が崩れたらフツーに出てくるからね。当たり前だけど」
義妹「何て言うか、死が突然目の前に現れた感じがした」
オレ「この前まで隣に住んでた人だったりするもんな」
義妹「そーですよー 都会育ちには異文化でした」
オレ「…小学校行く前だったかな。台風の後に三昧の側を通ったら、白いのがあちこちに見えてたんだ。それを年上の子供達が橋の欄干の上に並べてね、みんなで遠くから石投げて遊んだ」
義妹「…えええええ!?」
オレ「近所のおばぁちゃんに見つかってね、あの時は怒られたなぁ」
義妹「なんて罰当たりな。当たり前ですよ」
オレ「土竜返し見ると思い出すんだよ。最近は火葬も増えてきたみたいだけど」
義妹「それ、ついでに手も合わせて拝んでおいた方が良いと思いますよ…」
(注)オレが生まれた町では土葬の風習がありました。墓場へ行くとアーモンド型に盛った土が並ぶエリアがあって、そこは最近亡くなった人がそのまま眠ってる。で、数年経過したら掘り出して、骨壷に入れて墓に納める。
だから、大雨が降った後はその土が崩れて、白い物が地表に…
- 135 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/20(金) 20:57:40.29 ID:NVZMk/o4o
- http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4513598.jpg
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4513600.jpg
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4513603.jpg
撮ってみた。最後の一枚、ナウシカにこんなシーンがあったような…
おやすみ。
- 136 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 21:03:37.76 ID:b1FfiVl2o
- きれいだなあ
- 137 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/20(金) 22:12:04.63 ID:4+l90myKo
- >>133
会話の主導権自体はお兄さんのほうだと思ってる
ただ123の最後みたいな仕返しの仕方を若年ながらに知っていた義妹さんによく丸め込まれたりしてなくて
今もなおそうであるってのは兄の威厳を保ててるんだろうなあって感じただけです
- 138 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/21(土) 05:09:41.22 ID:/AMpjuOWo
- おはうぃ。
>>137
え、そーなの? 意外。威厳とかそういう意識はほとんどないかなぁ。ってか、男と女になった時点で、そんなのなくなってるんじゃないかな。
では、本編。ヤマ場ですよ。
- 139 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/21(土) 05:10:37.83 ID:/AMpjuOWo
- スッと背筋が冷たくなり、オレは思わず義妹の顔から目線を外してしまう。
義妹「おかしいなぁ。同年代では落ち着いて見られる方なのになぁ」
オレ「いや、あれは…」
義妹「本心でないことぐらい、私だってわかってます。でも、あの時はホント腹が立った。引っ叩いて、お弁当投げつけて帰ってやろうかって真剣に考えた」
教室に入ってきた時の妙な迫力は、そのせいだったのか。いまならわかる。この性格だとやりかねない。
オレ「謝る。悪かった」
義妹「素直でよろしい。じゃ、これでおあいこってことにしてあげる」
オレ「ふぅー…」
義妹「あ、なんですか、その溜息?」
オレ「いや、なんか気が抜けないっていうか、スゴいのが妹になったなぁって、つい…」
義妹は空に視線を向ける。彼女の視線の先を追うと、既に細い月が山の上に掛かっている。いや、この町ではどの方角を向いても、どうせ山しか見えないんだけど。
橋の上を湿気を含んだ川風が吹き抜ける。しばらく月を見つめながら揺らいでいた視線が、再びオレを見据える。その瞳には、昼間はしゃいでいた時の年相応の無邪気さとは打って変わって、怜悧な鋭さが宿っていた。
義妹「私が妹だと…イヤなんですか」
- 140 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/21(土) 05:53:28.57 ID:fYq+RYzNo
- おはよー
早く続きお願いします
- 141 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/21(土) 08:19:31.36 ID:QkUf3CiBo
- >>139
千葉「そんなことはない。むしろ嫁に来ないか?」
- 142 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/21(土) 12:24:25.32 ID:EAEMrDqno
- まだかな
- 143 :以下、新鯖からお送りいたします :2013/09/21(土) 13:28:22.83 ID:rKVLMQbiO
- ここの主は早朝と夜しか来ないスタンスなんだろ。
つ >>86
今週末に二章終わるって言ってたし、明朝でこのシーン終わりか。wktkしながら一日過ごすさ。
- 144 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/21(土) 22:33:56.07 ID:/AMpjuOWo
- >>140
>>142
ちょっと待ってね。仕上げ中だから。
>>141
ちょw 千葉自重ww
>>142
いま書いてるんだけど、あと1回では終わらなかった。もう1日掛かります。祝日だし許して。
以下、仕事辞めてすぐの頃のやり取りってゆーか、議論的なもの。いまの私の状態が多少なりともわかってもらえるかと。
では、おやすみー
- 145 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/21(土) 22:38:05.90 ID:/AMpjuOWo
- 義妹「さっきヘンな電話ありましたよ。なんか凄い訛りのある英語で。えーっと、こういうスペルの名前の人。なんて発音するんですか、コレ。あと、FAXも届いてます」
オレ「あぁ、了解」
義妹「チラッと見たら、会社の登記書類みたいだったけど…」
オレ「そだよ」
義妹「何しようとしてるんですか」
オレ「内緒」
義妹「えーっ もう私に隠し事しないって約束した!」
オレ「まぁ、見たままだよ。投資会社を作ろうと… って、もう登記完了したのか。仕事早いな」
義妹「これって噂に聞く租税回避地にペーパーカンパニー作って脱税ってヤツなのでは…」
オレ「脱税なんて知恵のない馬鹿がやることだよ。これは節税」
義妹「ある日、突然お巡りさんがやって来て、書類やパソコンを根こそぎダンボール箱に…とかなりませんか?」
オレ「あれは警官じゃなくて国税専門官。悪質な脱税とか資金洗浄してたら摘発されるだろうけど。オレは自分で稼いだ収益から報酬を得て、残った利益から法律に則ってちゃんと税金を納めるよ」
義妹「それなら、良いけど…」
オレ「ただし、税法が定める以上に税金を払ってやる気もないけど。1円でもイヤだ」
義妹「…兄さんって、ひょっとしてお金大好きなんですか」
オレ「いや、金はただの数字だよ。好きも嫌いもない。義妹はどう思ってるの、金について」
義妹「んー 生きていくのに必要なのはわかりますが、あんまり大きな額は怖いというか…」
オレ「金の本質は、言うまでもなく価値だよ。この世の大抵のモノやサービスと交換できて、人生の可能性と選択肢を増やしてくれる。それで幸せが保証されるわけではないけど、金で回避出来る不幸の数も決して少なくない」
義妹「でも、兄さんはもう十分に稼いだと思いますけど。まだやるんですか」
オレ「一人で生きていくなら十分かもね。でも、オレだけじゃなくて、君や両親、これからの家族の人生も考慮すると必ずしも十分とは言えない。これまでのオレは自分だけの為に闘ってきた。次のステージでは既存のステークホルダーと将来のステークホルダーの為に闘う。だから、利益を少しでも多く内部留保する為に支払税額は抑えたい」
義妹「んー 前みたいにボロボロになるのはイヤですよ? それに母はともかくとして、お義父さんは退職を控えた公務員だし、私ももうすぐ働き始めます。兄さんにそんなに稼いでもらう必要ないと思う」
オレ「あぁ、だから少なくとも今年中はもう働かない。流石に休養が必要だと自分でも感じる。来年に向けてポジションを仕込みながら、勘を鈍らせない程度には相場に関わるけど」
義妹「ホントに大丈夫? 無理しない?」
オレ「義妹にはオレのブレーキになって欲しい。ブレイカーでもいい」
義妹「わ、そーゆーことですか。了解です。でも、具体的にはどーやって?」
オレ「基本的には一緒にいてくれるだけでいい。君の存在はオレにとって抑止力になる」
義妹「ふむふむ」
オレ「あと、男の猛る感情を静める古典的な手法もある。女性ならではの」
義妹「ふむふ… なんか話が突然卑近になったけど?」
オレ「他の人には頼めない」
義妹「承知。望むところです」
- 146 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/22(日) 05:22:05.79 ID:6KgGy0Kxo
- おはよ。
では、本編です。
このシーンはあと1回で終わり。
- 147 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/22(日) 05:23:36.06 ID:6KgGy0Kxo
- シンプルな問い掛けなのに、彼女の口からポツリと出た言葉を咀嚼するのに数秒掛かってしまう。
オレ「待った。誰もそんなことは言ってない」
義妹「じゃあ、どうして? 今日まで私は貴方を「兄さん」と呼ぶようにしてきました。私なりに既成事実を作ろうという努力です。気付いてますよね?」
オレ「…あぁ」
義妹「でも、貴方はそれを受け入れようとしてくれない」
オレ「オレと君が一緒に暮らすようになって、まだ1週間しか…」
義妹「その1週間をあと50回繰り返す頃には、きっと貴方はこの町にいません」
オレ「そんな大袈裟な…」
義妹「大袈裟なんかじゃない。私達は二人とも進学を控えた受験生です。お義父さんとの時間はこれからたくさんあるけど、貴方と私の時間は短い。いま、ちゃんと兄妹にならないまま別れたら、私達はきっとこの先ずっと家族なのか他人なのか、よくわからない中途半端な関係のまま。そんなのはイヤです。貴方とそんな関係になるのはイヤなんです」
確かに親父には家を出ると公言していた。だけど、オレは目先の勉強と部活ばかりに意識を向けて、その後の具体的なイメージを描くことを避けていた。
言葉を切ったまま、彼女はオレを睨んだまま。川風が長い髪をなぶっているが、整える気もないらしい。半身を夕陽が淡い紫色に染める。陰になった方の瞳が微かに濡れた輝き放つ。
義妹「私が父を亡くしたこと、知ってますよね。どうしようもない人だった。でも、それでもたった一人の大好きな父だった。あの日以来、父のことを思わない日はない。でも、今日は…少しの間だったけれど、父のことを忘れている自分がいた。こんなにはしゃいだのは久しぶり。ホントに楽しかった」
フッと頬を緩めた瞬間、目尻に留まっていた最初の雫が重力に負けて滴り落ちる。その透明度が、足下を流れる雪融け水を連想させる。
義妹なりにこの一週間溜め込んだ思いがあったのだろう。夕暮れを浴びながらそれを一気に放出しようとする彼女の迫力を前にして、オレは無防備なまま突っ立っている。
義妹「まだあります。これは言わないでおくつもりだったけど」
彼女が数歩、オレとの距離を詰めてくる。近い。ほぼ真下から見上げられてる状態。川の音と、彼女の呼吸しか聞こえない。オレのシャツの袖をつかむと、キッと睨み上げてくる。
その唇からほとんど囁く様な早口が迸った。
義妹「兄さん見てると腹が立つのよ」
- 148 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/09/22(日) 08:59:16.39 ID:3duFPkeWo
- ぉぅ…
- 149 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2013/09/22(日) 12:22:13.39 ID:NEvpdYfDo
- こわい
- 150 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2013/09/22(日) 12:34:09.35 ID:lOSsXxvNO
- なんだこれ。高校編はまさかの鬱展開なのか。
- 151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) :2013/09/22(日) 16:02:49.82 ID:DH4yMGeGo
- こわ。頭良い子って、たまにこういうタイプいるよね。
- 152 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/22(日) 18:59:28.77 ID:6KgGy0Kxo
- >>148
ぅぃ…
>>149
>>151
こういう時はかなり怖い子です。
>>150
鬱展開ではないはず。
最近のやり取り一つアップ。
一緒に暮らし始めて、しばらく経った頃。
- 153 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/22(日) 19:01:37.28 ID:6KgGy0Kxo
- オレ「ん… 何してるの…」
義妹「あ、やっと起きた」
オレ「いま…何時…?」
義妹「時間なんか気にしたら、噛み切るから」
オレ「…ワインの匂いがするよ。飲んでるの? いつから…いや、どうしてそこに?」
義妹「あ、こっち見るの禁止。原因は兄さんにあります」
オレ「覚えがない」
義妹「これが物的証拠」
オレ「…それはいわゆる拡大解釈とか既成事実と呼ばれるヤツでは」
義妹「まさかいまさら文句ですか。女に恥をかかせるなんて、見損なった」
オレ「オレが文句言える余地って、この状況で残されてるの?」
義妹「兄さんの為に一体何人振ったと思ってるんですか。私が相手なのにそもそも文句言うとかあり得ない」
オレ「凄い自信だね」
義妹「履歴と努力に裏付けられた自己評価です」
オレ「それ、少しずつ巧くなってる」
義妹「むか。一つ言っときますけど」
オレ「二つ以上になるともう我慢出来ない」
義妹「兄さんの遺伝子を残す相手は、この私です。他の選択肢はあり得ないし、絶対に認めない」
オレ「傲慢な直球。でも、アルコールの勢いを借りるのは感心しない」
義妹「本心には変わりありません。少なくとも、二人。男の子と女の子がいい。私とその子達を愛することが、兄さんを破滅から遠ざけます」
オレ「…そんなこと考えてたの」
義妹「自己破滅型の男に対して女が取り得る、最も有効な戦略かと。いますぐじゃなくていい。でも、中期計画で。約束するなら、楽にしてあげます」
オレ「必達目標、確認」
義妹「…なんか、あっさり過ぎて信じられない。目先の欲望に負けてないという証拠は?」
オレ「相場の神に誓う」
義妹「それなら、いいでしょう。お好きにしてください」
オレ「寝起きでセーブ出来ない」
義妹「用意は出来てます」
オレ「後ろ、自分でひらいて」
義妹「叩いて欲しい。いっぱい」
- 154 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2013/09/22(日) 19:09:54.67 ID:0w4MIziBo
- 何したんだよ…
- 155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2013/09/22(日) 19:13:45.86 ID:Vdc3p0fdo
- なんかこの二人ってずーっと脳味噌と理屈だけで恋愛してる感じするよなー…って、読んでたらそんなこと全くなかった件。
直接的表現一切ないのにこのエロさかよ。
- 156 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2013/09/22(日) 19:19:39.24 ID:v3k4ttz6o
- 義妹に愛されてるねー
高校時代からどんな経緯で今に至るのか
楽しみだ
1233.19 KB Speed:0.2
↑
VIP Service
パー速VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
スポンサードリンク
Check
荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)