【学マス】星南「ことねで抜いてしまったわ……」【ことせな】

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1 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:47:22.85 ID:SmTJaUgf0

星南「ことね……今日も可愛かったわよ……」

ことねぬい「…………」

星南「貴女のことを想わなかった日なんて無い。真剣に貴女をプロデュースしたいと思っているの」

ことねぬい「…………」

星南「貴女と出会う度、魅力が増している気がするわ」

ことねぬい「…………」


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2 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:48:22.67 ID:SmTJaUgf0

星南「貴女の顔、声、肢体、仕草、表情……。その全てが、私を……」

ことねぬい「…………」

星南「ことね…………ん」

ことねぬい「…………」

星南「ことね、ことね、ことね、ことね」

ことねぬい「…………」

星南「ことねっ！」

ことねぬい「…………」

3 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:48:50.71 ID:SmTJaUgf0

星南「〜〜！！」

ことねぬい「…………」

星南「はぁ、はぁ、はぁはぁー……」

ことねぬい「…………」

星南「ことね…………」

4 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:49:49.52 ID:SmTJaUgf0

星南「……！？」

星南「私、今、一体ナニを…………！？」

星南「（中指の不快感が、私の邪な心の証拠……）」

星南「……私、プロデューサー失格ね」


…………

5 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:50:39.38 ID:SmTJaUgf0

——翌日、初星学園レッスン室前——


ことね「レッスン終ーわりっ。着替えて少し休んだらバイトだー」

麻央「ことね」

ことね「麻央寮長！」

麻央「レッスンがある日もバイト……大変じゃないかい？」

ことね「いやー、アイドルとして売れるのが1番だってわかってはいるんですケド……」

6 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:51:36.64 ID:SmTJaUgf0

麻央「アイドルとして売れる、か。そうだね……」

麻央「例えば、ことねが一年の友達と話している時の感じ、出してみたらどうかな？」

ことね「え゛、見てたん……ですか？」

麻央「勿論さ」

ことね「うぐ……でもぉ、あれは可愛く無いしぃ」

麻央「ギャップがあって良いじゃないか」

7 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:53:18.49 ID:SmTJaUgf0

ことね「あたしのは、アイドルファンが喜ぶものではないというか……」

麻央「それは、君が一人で考えたことだろう？」

ことね「まあ、そですケド」

麻央「そうだね……ボクが最近方針転換したのは知ってるかな？」

ことね「勿論です！　ちゃんと可愛さを押し出すようになりましたよね」

8 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:53:56.73 ID:SmTJaUgf0

麻央「ちゃんと？」

ことね「あ、やべ」

麻央「いいんだ、やっとボクは可愛いボクを受け入れられるようになってきたところだ」

麻央「ボクも、一人で考えていた頃は、カッコイイボクしかあり得ないと思っていた」

9 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:54:47.21 ID:SmTJaUgf0

麻央「でも、プロデューサーに言われて可愛さも押し出した今のボクは……謙遜せずに言えば、成功している」

ことね「…………」ｺﾞｸ

麻央「ボクの言う通りにしろということじゃなくてね。ことねも、プロデューサーが居たら……今の状況が改善されるんじゃないか？」

10 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:55:33.00 ID:SmTJaUgf0

ことね「そりゃあ、居たらいーなーとは思いますケド、スカウトされてもいないですしぃ…… 」

麻央「良さそうな人に自分から売り込んだらいいじゃないか」

ことね「ぇえー？」

麻央「プロデューサー科の学生でまだ担当が居ない人や、掛け持ちの余裕がある人は居ると聞いている」

11 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:56:16.58 ID:SmTJaUgf0

ことね「急に言われても……」

麻央「初対面の年上に話しかけることになるけど、君なら問題無いだろう？」

ことね「うーん……」

学P「ここに居ましたか、麻央さん」

麻央「プロデューサー！」

12 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:57:04.75 ID:SmTJaUgf0

ことね「（この人が、ずっと燻っていた麻央ちゃん先輩を数ヶ月で売れっ子にした敏腕プロデューサー……）」

学P「後輩の藤田さんとお話ししていたんですね。お邪魔でしたか？」

麻央「丁度終わったところさ」

学P「では、迫るN.I.Aの打ち合わせをしましょう。構いませんか？」

13 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:58:03.45 ID:SmTJaUgf0

麻央「いいよ、行こうか。……じゃあね、ことね。プロデューサーのこと、考えてみても損は無いハズだよ。勿論、ボクのプロデューサー以外でね」

ことね「あはは……そスね」

学P「では藤田さん、失礼します」

ことね「は、はい。どうも……」

ことね「…………」

ことね「プロデューサー、かぁ……」

14 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:59:13.06 ID:SmTJaUgf0

〜〜〜〜〜

星南「ことね、私のモノになりなさい！」

〜〜〜〜〜

ことね「（もし、本当に、トップアイドルと遜色無い実力と経験を持ってるような人が、あたしのプロデューサーになってくれたら……）」

ことね「ってぇ、なんで会長が真っ先に思い付くんだぁー！」

15 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 19:59:52.16 ID:SmTJaUgf0

ことね「（今のあたしじゃライバルには程遠いしぃ、いっそ会長のスカウトを本気にしてみる……？）」

ことね「（いや、いやいやいや！）」

ことね「（アレは劣等生のあたしをからかう冗談！　でなけりゃ気まぐれか道楽！ ……本気には、できない…………）」

16 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/09(日) 20:00:17.83 ID:SmTJaUgf0

ことね「（だって、"一番星"があたしなんかをスカウトする理由が見つからない。それに……憧れてる人からの好意がもし嘘だったら、あたしは、きっと、耐えられない）」

ことね「……はぁ」

…………

17 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/11(火) 19:19:42.30 ID:6sriXWEk0

——初星学園、生徒会室——

星南「…………はぁ」

莉波「落ち込んでる？」

燕「腑抜けているな」

佑芽「ことねちゃん、かな？」

美鈴「おそらくそうでしょう」

千奈「星南お姉さま……」

18 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/11(火) 19:20:26.43 ID:6sriXWEk0

星南「……皆、今日は一つ言うことがあるわ」

星南「私はことねのスカウトを……あ、諦める、わ……」

燕「正気に戻った……訳ではなさそうだな」

佑芽「会長……」

美鈴「……ふわ。二人とも、長くなりそうですし……私はお昼寝してきますね」

19 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/11(火) 19:20:57.12 ID:6sriXWEk0

千奈「待ってください秦谷さんっ」

佑芽「会長、本気で落ち込んでるっぽいんだよ？」

美鈴「どうでもいいことです」

佑芽「確かにあたし達には影響無いかもだけどさぁー」

美鈴「いえ、影響はあります」

佑芽「え？」

20 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/11(火) 19:21:40.24 ID:6sriXWEk0

美鈴「スカウトの成功は、生徒会入りを意味するでしょう？」

佑芽「ほんとだ！　じゃあことねちゃんと一緒に生徒会のお仕事してたかも……しれなかったんだ」

千奈「秦谷さんは、藤田さんのことをどう思っているのですか？」

美鈴「嫌いです」ｷﾞﾘ

千奈・佑芽「「！？」」ｿﾞｱｯ

21 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/11(火) 19:22:20.24 ID:6sriXWEk0

美鈴「なので、藤田ことねさんが生徒会入りしなかったという点では喜ばしいですね」

佑芽「な、なるほど…….」

千奈「他の点は？」

美鈴「藤田ことねさんが生徒会入りしないならば……これまで通り、友だ……クラスメイトとしてまりちゃんと多くの時間を過ごすでしょう」

22 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/11(火) 19:24:56.42 ID:6sriXWEk0

美鈴「…………それは、とても、恨めしい」ｷﾞﾘ

千奈「わ、わたくし、何回か月村さんのお世話になってますわーっ！？」

佑芽「あたしも、お姉ちゃん繋がりで……」

美鈴「ああ、いえいえ、お二人は私のお友達なので別にいいですよ。勿論、篠澤さんもです」

千奈「よ、良かったですわー」ﾎｯ

23 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/11(火) 19:26:25.19 ID:6sriXWEk0

美鈴「話を戻しますと……藤田ことねさんがもしスカウトを受けていたら、まりちゃんと過ごす時間は大幅に減ったことでしょう」

千奈「そんなに減るでしょうか？　わたくし達も生徒会に入っていますが、篠澤さんとの時間が減ったとは……」

佑芽「いーや、会長とことねちゃんの場合なら減るね！」

美鈴「ええ、あの二人がくっつく訳ですからね。スカウトが嘘ということではないでしょうが、半ば建前かも知れません」

佑芽「そうだねっ」

24 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/11(火) 19:26:56.68 ID:6sriXWEk0

千奈「……えっと、え……くっつく？　建前？？？？」

佑芽「…………」

美鈴「…………」

佑芽「……やめよっかこの話。そのままの千奈ちゃんでいてね！」

美鈴「そうですね。倉本さんはそのままの方が魅力的ですよ。……そもそも憶測な上に下世話な話ですし」

千奈「どういうことですのー！？」

25 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/12(水) 01:24:34.96 ID:ty5fl0ZS0

——初星学園、校門付近——


莉波「ことねちゃん、ちょっといいかしら」

ことね「莉波先輩。悪いですケド、これからバイトなんでぇ」

ことね「（今日は3年の先輩によく会う日だナー）」

莉波「じゃあ単刀直入に聞くけど……会長と、何かあった？」

26 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/12(水) 01:25:39.27 ID:ty5fl0ZS0

ことね「や、それがあ……あたしのことプロデュースしたいって言い寄られててぇ……」

莉波「ううん、それは知ってるの」

ことね「（いや知ってるんかーい！）」

莉波「昨日か今日、会長の様子がおかしいとかなかった？」

ことね「昨日はある意味いつも通りでぇ、今日は——」

ことね「（あれ、このところ毎日エンカウントしてたのに、今日はまだ会ってない？）」

ことね「——会ってないです」

27 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/12(水) 01:26:56.04 ID:ty5fl0ZS0

莉波「ええと……ことねちゃんから何か言っちゃったりとかは……」

ことね「昨日は逃げちゃったりしましたがぁ、それもいつも通りなハズで……」

莉波「そう、なの？」

ことね「はい……」

莉波「（ことねちゃんじゃ、ない？　いや、ことねちゃん関連ではあるだろうけど、ことねちゃん自体ではない？うーん……今の私にはもう他に思いつかないなぁ……）」

28 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/12(水) 01:27:26.16 ID:ty5fl0ZS0

莉波「……わかったわ。引き止めてごめんね？」

ことね「いえいえそんな」

莉波「ありがと、じゃあね！」

ことね「はいー…………。会長、何かあったのかな……」

ことね「……いやいやいや、あたしが"一番星"の心配なんて恐れ多いって！　さ、バイトバイト！」

29 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/17(月) 00:05:51.09 ID:pUDLadog0

——夜、初星学園寮入口——

ことね「ふー、今日も疲れたー」

星南「………………」

ことね「（げ、今日は会わずに済むと思ってたのに待ち伏せかよぉ！）」

ことね「（……いや、会長がわざわざあたしを待ってるなんて自意識過剰かも！　軽く挨拶してそそくさと……）」

30 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/17(月) 00:06:48.01 ID:pUDLadog0

ことね「お、お疲れ様でーす」

星南「ことね、待っていたわ」

ことね「（あたしだったー！）」

星南「今日ばかりは偶然じゃないわ。貴女に、言わなくてはならないことがあるの」

ことね「（しかもいつも通りじゃねーか！心配して損したー！）」

31 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/17(月) 00:09:35.43 ID:pUDLadog0

星南「……本当は、立ち話でするような話ではないけれど、腰を落ち着けるような場所まで連れて行く方がきっと迷惑よね」

ことね「（あれ、ちょっと様子がおかしい？）」

星南「ことね、貴女のプロデュースを——」

ことね「（と見せかけていつものアレだったー！）」

32 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/17(月) 00:12:51.84 ID:pUDLadog0

星南「——あ、諦めることに、した、わ」

ことね「…………へ？」

星南「……要件はそれだけよ。今まで振り回してしまってごめんなさい。さよなら、ことね」

ことね「え？ ……はい？」

ことね「（なんで、いきなり……）……ハッ、もう居ない！？」

ことね「あの人はいつもいつも説明不足でこっちの話を聞かないで自分の言いたいことだけ言う……！」

33 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/17(月) 00:13:39.39 ID:pUDLadog0

ことね「（それに、なんだよ諦めるってぇ……。十王会長が、一番星が、星南ちゃんが、何かを諦めるなんてこと、あってもいいのかよぉ……）」

ことね「（まぁでも、これでもう……多分、あたしが会長に変な絡まれることは無くなる。これ以上……あたしの星南ちゃんが崩れずに済む）」

ことね「（明日も明後日ガッコだし、気にしないようにして今日はもう休む……かぁ）」

34 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/20(木) 04:51:02.77 ID:E4XzdXSu0

——十王星南自室——

星南「はぁ…………」

星南「（伝えた。……伝えてしまった）」

星南「（これでもう、私がことねをスカウトする理由は無い）」

星南「（……ことねに会う、理由が無い）」

星南「（明日からは、ただの他人……）」

35 ： ◆vVOjebR9BA [saga]：2025/03/20(木) 04:52:02.03 ID:E4XzdXSu0

星南「（……いや、もしかしたら、ことねにとってはずっとそうだったのかも）」

星南「（祭壇……これを見たら、どうしても思い出してしまう）」

星南「（写真立ては伏せて、ぬいぐるみは仕舞いましょう）」

星南「ことね…………」

星南「（……いや、もう、ことねのことは考えないようにしなきゃ）」

星南「……………………ことね」