階層都市/狭間の都【SF ファンタジー オリジナル】

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1 ：不定期更新 ◆1qS/J7BvDg [sage saga]：2025/02/25(火) 13:22:21.98 ID:IO02oMWk0

　地上世界


　シェルター都市に引きこもる地底人どもは
　"かつて故郷だった地獄"と

　結界都市に引きこもる帝国人どもは
　"穢れた採掘地"と

　そんな感じで好きに呼びながら しかし完全に関係を断つことはできないでいる オレの庭

　いやオレ達のだ
　オレ達の…庭 だった

　変異マナによる重篤な汚染
　時空間異常でどこにでも現れるワームホール
　変異生物に暴走機械

　昨日砂漠だった場所が次の日には樹海になったり 廃墟の街になってたり

　よく晴れたお天道様の下 物理法則がお亡くなりになってる大地で


　今のオレは 機動兵器―—メックを駆って人を襲っていた



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1740457341

2 ：不定期更新 ◆1qS/J7BvDg [sage saga]：2025/02/25(火) 13:23:16.67 ID:IO02oMWk0

漁り屋『この クソガキ…やめろ！！！！』


　四足獣型メック"アコサドール"の両前脚で中破した人型メックを押さえ付け 狼の口めいた顎部クラッシャーが人型の頭部センサーユニットを噛み砕いた

　緩衝液で満たされたコックピットに 敵機からの接触通信でノイズ混じりの悲鳴が届く
　うるっせーな神経接続なんだぞ死ねバカ


漁り屋『誰か！誰か助けてくれ！』

「質問は同じね」

漁り屋『誰かッ―—』

「誰もいねえってんだよもう見たろ死ぬの聞けよタコ」
「死ぬか？」adjust torque


　煤塗れの真っ黒い機械の狼が獲物を貪るように迫る
　クラッシャーに人型機の筐体たる胴部を咥えさせゆ〜っくり締める ギギギ〜っとな


「経験ねーから知んないけど圧死は相当辛いらしいぜ」
「他の護衛がえーと」


　首回して視界を巡らせる 希釈エーテル製の緩衝液は機外の情報を網膜投影してくれる
　今オレが押し倒してる人型と同型のメックがバラエティ豊かな死にざまで辺りに点々と転がり
　少し離れた場所ではタンカー型の陸上船が黒煙を吐き出す大穴を横っ腹に開けて擱座していた

　オレが三分で全部やった


「爆死 焼死 溶死 でお前が"ぷちっ"と逝きゃサイクルヒット達成だ！やったね」

漁り屋『在り得ねえ 機賊(レイダー)の兵隊が使うようなザコ犬メックでこんな―—』

漁り屋『よせ…』

「挨拶が派手だっただけで簡単な会話だろーがよ オレの 質問に 答えろ」
「どこに やった」


　さらにクラッシャーを閉じる
　隔壁の軋みが通信に乗り 歪んだ装甲の隙間から緩衝液が漏出を始めた

　緩衝液は外気と反応して血のように赤く変色し すぐにジェル化してそれ以上の"出血"を防ぐ
　これで野郎の半分死んでる愛機は神経同調率を格段に落とした 鳴りまくってるだろう色んなアラームの中に一等深刻なやつがも一つ増えれば…
　そろそろ頭が冷えるはずなんだけど

3 ：不定期更新 ◆1qS/J7BvDg [sage saga]：2025/02/25(火) 13:24:11.12 ID:IO02oMWk0

漁り屋『ポーターだ…』

「ポーターね」


　意味は そのまんま運び屋だ
　この場合は…職業 社会階級 そして所属集団を指す ポーターギルド

　"拾った金をどこへやりましたか？"と聞いたら"財布に入れました"と返ってきたのが今のやり取りだ
　クラッシャーをまた閉じると 落穂拾いのクソ野郎は悲鳴を上げた


漁り屋『待て 待て 待て―—』

「スカベンジャーからポーターへ ありふれたサプライチェーンの出発点だなそれで？」

漁り屋『階層都市だ！階層都市のポーターギルド！地上でコンボイをやってる奴に売った！"錆指"って呼ばれてる！』

「……」


　クズ野郎は 今の世界の中心と言ってもいい都市国家の名前を出した
　地底人の地下都市同盟(ユナイテッドシェルターズ) 帝国人の変異マナ採掘領　その境界線で両方の技術+αが合わさって興った"奇跡の交易都市"
　直接入ったことはない が 地上で生きてるならあそこにいる奴と関わったことの無い人間はいないだろう

　階層都市
　またの名を 狭間の都


漁り屋『スキルチップも丸ごと！一切 一切手は付けてねぇ！誓って本当だ！』

「階層都市 ポーターギルドの"錆指"だな」

漁り屋『そうだ！な 話しただろ メックもこんなんじゃ抵抗だってできねぇ』ﾒｷﾞ

漁り屋『だからっ―—うあ あああああぁああ』ｷﾞ ｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞgggggg


　アコサドールに餌をやって機首を巡らせる コックピットがあるのは胴体だがメインカメラは顔にあたる部分にあるからだ
　この機械仕掛けのワン公がいくら機賊御用達の荒っぽい現地量産機とはいえ ぶん回したり噛みついたり機銃撃ったりする武装プラットフォームたる獣型の頭部にコックピット置くだなんてそんなバカな設計にはなっちゃいない 流石に

　神経接続を解除 緩衝液をタンクに戻し オレは筐体の横腹にあるハッチを開けて機外に出た
　緩衝液は不活性化した状態なら秒で揮発する
　ピチッとしたメックスーツが焦げ臭い乾いた空気と地上の砂粒に触れた

　オンボロのPDAを起動する 前に 真っ暗な画面にオレが一瞬映った

　低い上背 痩せっぽちの体 女みたいな顔
　総白髪のボサロン毛でテキトーにやった三つ編みが変異マナを孕んだ風に攫われて揺れている


白髪「ちッ…」

4 ： ◆1qS/J7BvDg [sage saga]：2025/02/25(火) 13:24:39.76 ID:IO02oMWk0

白髪「おい エビー」


　GPSに座標を打ち込みながら 相棒に話しかけた
　間髪入れず オレの頭の横に 無数の0と1で構成された人魂みたいな光の玉が浮かび上がる
　人間の女を模したような甲高い声の人工音声が鳴った


海老≪名前を変えませんか？≫

白髪「おはよ このまま座標まで走らしとけ」shot R.MANA antibody syringe

海老≪「名前を変えませんか」は私の挨拶ではありませんと何度言えば≫

海老≪幸運な"AI憑き"としてはぐれAIとのコミュニケーションを円滑なものとするのは 延いては自身の生存率にも関わる重要な要素です≫

海老≪そもそも座標のセットくらい私に任せればいいのに 戦闘補助すらろくにさせず やれ音楽を流せだの スケジュールの管理だの 時間になったら起こせだの U.S.の普及型人工AIのような雑多な扱いだ 遺憾です まったくもって≫

海老≪テル あなたは本当に―—≫

白髪「zzz」sham sleep

海老≪何故機内で寝ない もう長い付き合いですが抗体を打ってまで汚染の進む機外での昼寝に拘るのは未だに理解できません これからもそうでしょう≫sigh

海老≪これも毎度のことですが？機長としての義務ですから警告は怠りません 落ちても知りませんからね≫auto pilot

白髪「そんなヘマしねえだろ」


　メックと陸上船のありふれた墓場と化したサバンナを 黒い巨大な狼が走り去った
　目指すは階層都市
　用向きはやっちゃいけねえ買い物をやったクソ野郎"錆指"への表敬訪問

　それから―—そのために会っとかなきゃいけねえオッサンがいる 顔出さねーとだな


　絶対に取り戻してみせる
　待ってろよ…

5 ： ◆1qS/J7BvDg [sage saga]：2025/02/25(火) 17:47:26.74 ID:IO02oMWk0

あっヤバイこっちじゃない
一旦中止！