何度でも戻ってくる場所

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4 :URAAKA [sage saga]:2024/11/14(木) 19:22:30.55 ID:wnkKP7FO0
>>3 「もしも、時間が逆行したら」
5 :URAAKA [sage saga]:2024/11/14(木) 23:18:47.12 ID:wnkKP7FO0
3
僕は、人を笑わせることが得意だった。みんなの前で、何かしら面白いことを言ったり、やったりすれば、すぐに笑顔が見られた。最初はその笑顔が嬉しくて、もっともっと面白いことをしようと思った。笑わせて、みんなが喜んでくれる。それが僕の役割で、僕の取り柄だった。

でも、時間が経つにつれて、同じことじゃ飽きられてしまうのがわかってきた。だから、もっと過激に、もっと衝撃的に。段々と、それがエスカレートしていった。最初はちょっとした冗談だった。それが、段々と許される範囲を越えていって、最後には本当に取り返しのつかないところまで行ってしまった。

あの時、僕は何をしていたんだろう。みんなが笑うのを見て、嬉しいと思っていた。でも、いつの間にかそれが義務みたいになってしまって、みんなの期待に応えなければいけないというプレッシャーがどんどん強くなっていった。

そして、僕は気づいた。どんなに頑張っても、みんなとの距離は縮まらないどころか、むしろ遠くなっていくばかりだってことに。僕のネタはもはや「笑いのため」ではなくなっていた。みんなの前で笑わせるために、自分を犠牲にしているだけだった。

でも、それをやめられなかった。それが僕の「取り柄」だから。何度も、自分を無理にでも奮い立たせて、笑わせることで、みんなの目を楽しませて、そんな自分に満足しようとした。けれど、空虚な笑顔が僕を取り巻いていくばかりで、その場所にはもう意味がなくなっていた。

結局、あの場所は僕にとって「戻りたい場所」だった。それだけしか残らなかった。それが、僕にとっての全てだった。

「人は同じ場所に戻りたくなるものだ。」
6 :URAAKA [sage saga]:2024/11/14(木) 23:20:51.59 ID:wnkKP7FO0
4
「人は同じ場所に戻りたくなるものだ。」

その言葉が胸に突き刺さった。戻りたくなるのは、何もかもが最初からうまくいっていたと思いたいから。でも、僕が戻りたい場所にはもう誰もいない。みんながいたと思っていたその場所は、実は僕が作り上げた幻想だったのかもしれない。

今、ここに来て気づいた。どれだけ戻りたくても、もうそこには何も残っていない。やり直すべきは、過去の選択でもなく、あの場所に戻ることでもない。ただ、自分を許し、前に進むことなんだ。過去の自分を認めることで、初めて新しい場所に進むことができるんだと。

そこで、店主の言葉が頭に響く。

「君が悔いているのは、過去の選択だけじゃない。君はその時、自分自身を見捨てたんだ。でも――今ここで、もう一度自分を選び直すことだってできるんだよ。」

ああ、そうだ。僕は、あの場所に戻ることが正しいと思っていた。でも、もう戻る必要はない。過去を背負いながら、前に進むために今、ここにいるんだ。

「ありがとう。」

その一言で、心が少し軽くなった気がした。

店主は静かに微笑んで、何も言わなかった。それだけで、全てが伝わってくる気がした。過去はもう取り戻せないけれど、今、ここからやり直すことはできる。僕が進むべき道が、きっと見つかると信じて。

店を出るとき、ふと気づいた。あの場所は、もう僕のものではない。でも、それを受け入れることで、きっと新しい場所が見えてくるのだろう。
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