【ブルアカ】キサキとかいう生徒について

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/09/28(土) 22:56:39.40 ID:zmZjuACE0
その子はベッドに横たわっていた。

「ああ、すまぬな…先生。来てくれたか」

身動ぎをして、呻くように声を上げる。
やや掠れたその声は風邪でも引いているかのようで、病気のお見舞いに来ているような気分になった。

「楽にしててね」

先生は優しくそう言うと、来客用の椅子を自分で運んだ。

「出迎えもできず、礼を失してしまったのう…」

身を起こしてベッドが軋む。
布団をつまみながら、ベッドに座ったままキサキは笑顔を先生に向けた。
その表情は成熟していて、華奢で小さな体躯からはまるで不釣り合いなものだった。

「世話になっている先生にはせめて、失礼のないよう振る舞いたかったのじゃが」

「いいっこなしだよ。せめて私には気を張らないでいい」

「そうじゃったな…なんとも落ち着かない」

小さな手が、ぎゅっと布団の裾を掴む。

「先生のことは信用しておるが…裸を見せておるような気分じゃ」

「え、えっと」

「くふふ、冗談じゃ。それより先生、今日呼んだ理由じゃが」

そう言いさしてキサキは黙り込み、先生のことをただ見つめた。
小さな手で、自分の隣をぽんぽんと叩く。
先生は少し逡巡した後、椅子から立ち上がってベッドの端に座った。その間の距離をキサキがにじり寄る。

「うむ」

先生の腕に手を添えて、耳元へ近づく。

「それで、本題じゃが…」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1727531798
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/09/28(土) 22:58:50.91 ID:zmZjuACE0
「近くない?」

「内密の話じゃからの」

「キサキの部屋なら誰にも聞かれることはないんじゃ…」

「誰が聞き耳を立てておるかわからぬからのう…日々の用心を欠かすようであれば門主は務まらぬよ」

「そ、そうなんだね…」

「うむ…ふーっ…」

「うわぁっ!!キサキ!なにを…」

「…すまぬ。出来心じゃ…先生ならゆるしてくれるかと思っての。後生じゃから戻ってきてくりゃれ」

「はぁ…心臓が保たないからやめてね…」

「謝罪を、ここに」

先生がベッドに身を降ろすと、キサキがまた腕に触れる。

「先生には嫌われとうない」

「こんなことで嫌うわけないよ…」

「ほう?そうさな、たしかに先生が生徒のことを嫌う想像はできんのう…?」

「先生だからね…」

「だが逆に特別好かれることも想像がつかん。先生は平等じゃからの」

「みんな好きだよ…は、嘘くさいか」

「そうじゃのう」

「あの…キサキ?」

もはやキサキは先生に寄りかかっていた。
肩に白い指が這い、上半身がくっついて先生の腕を温めていた。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/09/28(土) 23:00:23.09 ID:zmZjuACE0
キサキの唇が先生の耳元で動く。

「ああ、あれは気に入ってくれたかの?前に、他校の制服姿で撮って、送ってあげたじゃろ?」

「大事に保存してるけど…」

「くれぐれも他の者にはみられぬように。先生にだけ、じゃからな」

「可愛かったよ」

「…ふむ。不思議じゃな」

「何が?」

「さして服装に関心はなかった。じゃがこうも先生に褒められると…他の服も着てみたくなる」

「着てくれるの?」

「また、妾のために選んでくれるかえ?」

「私でいいなら」

「ふふ…あのとき、買ってくれた制服は言われた通り、先生のことを考えながら着ておるよ」

「…ちょくちょく着てはいるの?」

「誰に見せるでもないがの。ほれ、先生に褒められて、妾も調子にのってしまって…一人で着て、姿見の前で立って…くふふ。妾らしくないのう?」

「実際、めちゃくちゃ可愛いからね」

「…また送ったら、喜んでくれるかえ?」

「それはもう、めちゃくちゃ嬉しいけど」

「それなら、また今度に」

「やったー!」

「先生と遊んでまわった日のことを思い出して、ちょくちょく着ておるのじゃ」

「…また遊びに行こうね」

「うむ」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/09/28(土) 23:01:45.75 ID:zmZjuACE0
「…それで、今日私を呼んだ本題なんだけど」

「そうじゃったな。内密の話じゃ…」

キサキはさらに先生の耳にくっつくほどに近づいて、小さな声で言った。

「さみしくなっての…」

「…えっ?」

「門主という立場は難儀なものじゃのう。先生にはもう、事情がわかると思うが」

「あっ、えっ、まあ…うん」

「先生なら、これまでの会話だけでも察してくれていたやもしれぬな?妾の真意に」

「ん?」

「言葉にすることは簡単じゃが、細心の注意を払わねばならん。人の口を経るごとに、その重みは増していく。ましてや、妾ほどの立場ともなると、一挙手一投足を注目されておる」

「はぁ…」

「なれば、うかうかと弱音一つこぼすこともできぬ。だからといって、誰もおらぬ私室で独り言をこぼしたとて、かえって毒になりかねん」

「はい…」

「大事なことじゃ。そうは思わんか?忙しくて返信が滞りがちな先生?」

「うっ…ごめん」

「冗談じゃ…が、さて、妾の真意を聞いた其方は、何をしてくれるかのう?」

喋るたびに熱い吐息が耳にかかる。
部屋は香薬で満たされていて、体の奥にまで染み渡っていくようだった。キサキが常用している香りだ。
キサキが先生の腕を抱きしめ、華奢で柔らかな体の重みが伝わってきていた。

「先生は妾のことを大事にしてくれるからのう…」

「うん…そうだね…」

「楽しみじゃ」

ベッドがきしむ。
キサキが手をついて、体を乗り出していた。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/09/28(土) 23:06:43.01 ID:zmZjuACE0
「…気がのらぬか?どれ」

からかうように言うと、キサキはベッドに膝をついた。

「キサキ…」

「初めてではなかろ?」

先生の膝へ手をかけて、ニヤリと笑みを浮かべると、そのまま顔をそこへうずめる。

「…」

そうして、先生に膝枕をしてもらったキサキは、控えめに目をしょぼしょぼとさせていた。

「近頃、よく眠れてなくてのう…すまぬが、先生、また頼めるか?」

「いつもお疲れ様、キサキ」

「こんな甘えた姿、皆には見せられぬな…」

可愛くあくびを漏らすと、先生に頭を撫でてもらいながら、うとうとしはじめた。
スリットからのぞかせる脚をもぞもぞと動かす。

「…眠ったら、てきとうに運んでくれ。呼びつけておいて、悪いが」

「うん。わかった」

「…せっかく、先生に来てもらったというのに、寝て時間を浪費するのは損じゃの」

「また、当番に来てよ」

「…うむ…先生といると、目まぐるしくて、楽しいことばかりでな。たくさんのことを教えてくれる」

「それならよかった」

「やはり、先生は、手元に置いておきたい…それが、山海経のためにも、なる」

「私はみんなの先生だからねぇ」

「妾がおねだりしても、だめかえ?何でも、してあげられるが」

含みのある目つきで先生を見上げる。やけに甘ったるい声だった。

「今なら、何をされても許すというのはどうじゃ?」

甘ったるい匂いが鼻につく。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/09/28(土) 23:08:07.22 ID:zmZjuACE0
「…前も同じようなこと言ってなかった?」

「うむ。そうかもしれんの」

「前と同じように、繰り返すよ」

「そうか」

ごろりと身じろぎをして、先生から視線を外した。

「…また先生におんぶしてもらいたいのう」

「話がころころ変わるねぇ…誰もいないところだったら、いいよ」

「ふふ…ほんに先生は優しいのう…ますます側にいてほしくなる…」

「いつでも呼んでね」

「…」

じきにキサキは寝息を立てた。
先生はちゃんと寝入ったことを確認してから、キサキをお姫様抱っこで、頭を枕で敷いて横たえさせた。

「軽いな…」

布団をかけながら、先生は独り言をいった。
あどけない寝顔を眺めて、頭を撫でて、静かに部屋を出ていった。

「…またの、先生」

そうつぶやきながら、キサキは寝返りをうって、また寝息を立てた。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/09/28(土) 23:09:48.60 ID:zmZjuACE0
終わり
サ・ソ・イ・受ケ・・・・・・・・
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/09/28(土) 23:10:56.94 ID:zmZjuACE0
374774
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/29(日) 03:23:36.16 ID:HjSwsPdjo
おつおつ
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/10(木) 20:31:09.17 ID:q9387gR90
乙…
もっとブルアカss増えてほしい
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/11/07(木) 01:38:03.76 ID:PKNqOcsvo
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196
8.39 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)