他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
【安価コンマ】オリウマ娘と共に Part2
Check
Tweet
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/12(土) 13:22:38.38 ID:wr/0og+Q0
万一負けてもトレーナーに慰めて貰えるぜ
キャラはあるにはある
286 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/12(土) 21:02:29.92 ID:tOAnJqPx0
結構キャラ作ってる人いる感じですね、じゃあまあ普通に募集しようと思います。
ありがとうございましたー。
★
11月。チャンピオンズカップまで残り一か月。
――ライバル、ステラライムとの決戦に向けてトレーナーとして何ができるか――トレーニング以外にも何かパピヨンにしてやれるんじゃないかと考える。
パピヨン「お兄さん揺れないで、座りにくいから」
『……パピヨン、ちょっとパソコンが見えないんだけど』
パピヨン「えー、今はお休みしようよお休み。アタシ今スマホ見てるから、もう少し待って」
……当然のように自分の膝の上に座り、スマホをいじってるパピヨン。パピヨンの後頭部でパソコンの画面は隠れ、何も見えない。
『今からキミのために色々と仕事しようと思ってたんだけど』
パピヨン「トレーニング以外で何かできないか〜みたいな?さっき言ってた気がするけど、アタシはこれが今一番嬉しいけど?」
そう言って、嬉しそうにニヤニヤ笑いながら頭を自分にこすりつけてくる。いや、まあそう言ってくれるのは嬉しいんだけど……。
パピヨン「別にさぼりたいわけじゃないよ?お兄さんが頑張って仕事してるのも、色々トレーニングの論文とか見てるのも知ってるけど――でも、アタシがこうやって休んでるときは、お兄さんも休んで欲しいな〜……なんて」
だって、レースの時に体壊して入院しちゃいました!とか……笑えないからさ。
『……パピヨン』
パピヨン「だから今日くらいはお休みしよ?ね、今日一日くらい大丈夫だって――勿論、トレーニングとかレースの研究もアタシ頑張るからさ」
――――レースまで残り一か月。頑張りすぎだとパピヨンに言われ、とりあえず今日は色々とお休みすることになった。
――だいぶパピヨンに甘くなったし、自分にも甘くなった気がする――けどまあ、問題ないというなら、問題ないだろう。
287 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/12(土) 21:06:29.91 ID:tOAnJqPx0
チャンピオンズカップ前イベントラスト:自由安価下2まで
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/12(土) 22:18:36.56 ID:AIy7wzgDo
シルフィに勝ってくるから宣言しとく
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/12(土) 23:34:42.35 ID:DD6ExtiUo
ここでライム陣営の様子を見たい
290 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/13(日) 00:01:23.79 ID:CSIuROC1o
お疲れ様です。
ごめんなさいちょっと寝ます…ありがとうございました。
291 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/13(日) 23:46:42.53 ID:CSIuROC10
パピヨン「シルフィーって来週のG1出るんだよね。エリザベス女王杯」
自室。勉強机に向かって何か本を読んでいるシルフィーに話題を振る。
シルフィー「あ、は、はい!お、覚えていてくれたんですね……」
パピヨン「そりゃアタシだってルームメイトのレースくらい把握してるって。現地には行けないけど、テレビで応援してるね〜」
おりゃおりゃ、とシルフィーの頬っぺたを後ろからムニムニと触ってマッサージ。や、止めてくださいよぉ……!涙目で言われてしまってので止めてあげる、ムニムニ。
シルフィー「今年はG1にまだ挑戦していませんでしたので、エリザベス女王杯が今年初のG1レースとなるんです……ですから、み、見ていてくださいね……パピヨンさん」
パピヨン「――――うん、勿論見るよ。シルフィーが勝つところ、だってシルフィーもずっと頑張ってたもんね」
頑張ったから勝てるなんて甘い世界じゃない、けどそれでも――頑張った人には勝って欲しいし、仲が良い人ならなおさらだ。
パピヨン「んじゃ、今月来月でG1勝利部屋にしちゃおうここ!今月はシルフィーで、来月はアタシ!」
シルフィー「……!ふふ、パピヨンさんそれ良いですね……凄い話題になっちゃいそうで」
パピヨン「でしょ〜?」
292 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/13(日) 23:47:35.52 ID:CSIuROC10
パピヨン「じゃ、来月のアタシのチャンピオンズカップ、テレビで応援しててね」
――勝ってくるから。ステラライムに。シルフィー相手に宣言して、約束する。
シルフィー「……はい、見てますよパピヨンさん」
パピヨン「ぷぷ、ほんとかな〜?実はライムの方応援しちゃうとかない〜?」
シルフィー「なっ……!や、止めてください!そりゃ、ライムさんも……友達ですけど!」
パピヨン「ぷはは!冗談冗談、いやまあ別にライムを応援してもいいよ?勝つのはアタシだけど」
シルフィー「むぅ……なんか意地悪です。じゃ、じゃあ良いです!私も……ぱ、パピヨンさんの応援とかいらないですから!」
――あ!シルフィーもそういうこと言うんだ!
パピヨン「なにおー!?すっごいシルフィーのこと応援するけど!?当日は横断幕とか作っちゃうし!」
シルフィー「わ、私は……お、応援歌とか作っちゃいますけど!」
ぎゃーぎゃー!わーわー!
――――とかこんなことを言い合って、最後はバカみたいに笑いあってお互いに眠った。
うん、シルフィーとはこういうことが結構できるからいいよね〜。
……ちゃんと、勝たないとな。あーあ、ここでも約束しちゃった……けど、それも全部全部背負っていこう。
293 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/13(日) 23:51:28.47 ID:CSIuROC10
グリーンシルフィー、久しぶりのG1エリザベス女王杯:コンマ直下
1-3 1着!
4-5 2着……
6-7 3着……
8 掲示板……
9 あちゃぁ
0 おおっと
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/14(月) 00:00:43.38 ID:oqZj7N8Oo
ヌッ
295 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 00:34:06.57 ID:Nw/DCeu3o
やっぱりなかなかレース結果が振るわないっすねぇ
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/14(月) 01:13:13.60 ID:hpECAwbIo
ここのコンマ神ここっ! てときにしかデレないの徹底してるよな…
297 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 02:47:27.59 ID:Nw/DCeu30
エリザベス女王杯当日。トレーナー室のテレビで中継を見て、シルフィーを応援していたけど――。
パピヨン「あ"ぁ"ぁ"〜〜〜……!!!」
『……スパートのタイミングが少し遅かったな。あと近くに居た4番のウマ娘……あの子の位置取りを考えると――いたっ!』
パピヨン「冷静に分析しないで!」
――5着。そりゃ、レース展開とかタイミングとかが重要なのは分かるけど。あんなずっと頑張ってたシルフィーが……いや、分かってる、分かってるけど……。
パピヨン「…………ますます負けられないじゃん」
『……?』
パピヨン「約束してたの!シルフィーがエリザベス女王杯勝って、来月のチャンピオンズカップでアタシも勝つ!それで二か月連続G1勝利コンビ!って!」
『あ、あぁ……そんな約束してたのか。そっか……じゃあ、せめてな』
パピヨン「……うぅ〜!シルフィー、大丈夫かな……後で電話しよ」
負けちゃったシルフィーの分まで、次のレース頑張らないと……絶対勝つ!ぞー!
パピヨン「あ、帰ってきたシルフィーが落ち込んでたら……尻尾の手入れと、ハグと……あ、じゃあウマ耳のマッサージも気持ちよかったし……」
『……尽くすの好きだな、キミは』
298 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 02:57:11.98 ID:Nw/DCeu30
お疲れ様でした、今日はこれで終わりです。ありがとうございました。
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/14(月) 04:29:41.43 ID:hpECAwbIo
おつー
その感想はお兄さんよくパピヨン見てるなあやっぱり
果たしてVSライムは……!
300 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 20:29:09.87 ID:Nw/DCeu30
ライム「――――今だ、ここ……!」
最終コーナーを回り最終直線に入ろうとしたタイミングで一気にスパートをかける――!脚に力を入れ、地面を蹴り飛ばし前に突き進む――タイムは!
ライトレ「よし、タイムに狂いはないぞライム。いったん休憩の後もう一度だ!」
ライム「っはい!」
駆け足でトレーナーさんの元に向かい、ボトルとタオルを受け取る。11月のもう冬に足を踏み入れたこの時期に、むわむわと汗が乾き、私の体から蒸気が昇る。
――チャンピオンズカップのための練習。逃げるウマ娘とのレースでも自分のペースを忘れないため体内時計をしっかり整える練習。
そして最後、絶対に相手を差せるタイミングでスパートをかける――逃げを許さない、先頭の景色なんて見させない。
ライトレ「……ライム、調子の方は大丈夫か?脚に違和感とかはないか?」
ライム「はい!トレーナーさん、大丈夫です!特に違和感はなく、問題なくトレーニングできてます!」
ライトレ「なら良かった……ライムの年内最後となるG1レースだからな、トレーナーとしては怪我無く安全に走ってほしいんだ」
――優しそうな笑みを浮かべながら、私にそう語るトレーナーさん。
ライトレ「……それにライムにとっては、シルヴァーパピヨン……彼女との対決になるわけだしな」
ライム「はい、パピヨンさんに対してのリベンジで――この3年間の区切りとして、私は――世界に羽ばたくあの蝶を、捕まえなければいけないんです」
――きっと、パピヨンさんもおんなじことを考えているはずです。なんて自分で言うけれど、なんだか恥ずかしい。
301 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 20:30:20.27 ID:Nw/DCeu30
ライトレ「――――ドバイゴールデンシャヒーンでの彼女のレースは見事だった、しかしそれは――彼女の適正に合っていたから」
世界の土が、1200mという距離が彼女の脚にハマっていた。だからこそあんなにも素晴らしいレースができた……しかし、彼女の脚はそれ以上の距離に対応していない。
――ずっと前からそう思っている、今も変わらずそう考える。なのに――――。
ライトレ「適性を無視した走りはトレーナーか担当ウマ娘のエゴで、そんな走りは脚にダメージを溜める――というのに、今の彼女からは……」
ライム「そんな適正も跳ね返して脅威になりえる存在――ですよね?」
ライトレ「………………」
何とも言えない表情で私を見た後、こくりと頷いたトレーナーさん!ふふっ、なんだかちょっと誇らしいです!
ライム「パピヨンさんはちゃんとマイル戦も勝っていますし、この間のエルムステークスも1700mで去年とで連覇していますし……それでも認めてませんでしたよね?」
ライトレ「……いや、今はちゃんと考えを改めている。適性に合った走りをするべきで、適性に合っていないレースには出るべきではないとは今も思っているが……シルヴァーパピヨンにとってはそれが少し違っていた」
真面目な表情になって、トレーナーさんがパピヨンさんのことを語り始める
ライトレ「そう、シルヴァーパピヨン――彼女はマイルじゃなくて長めの短距離を走っていたんだ。彼女のスピードとパワーが長い短距離も走れるだけの適性を生み出した……そう考えている」
ライム「…………長めの短距離?」
ライトレ「そうだ、長めの短距離だ。1700mも1800mも……彼女にとっては短距離に分類されるんだ」
……う〜ん。う〜ん……。
ライム「…………そうですね!確かにちょっと長い短距離かもしれませんね!」
ライトレ「ああ、やはりそうだよな。トレーナーになってから結構な経験を積んだが、まだまだ自分も――」
トレーナーさんって、なんかこういうところあるんですよねぇ……真面目な方なんですけど。
――――待っていてくださいねパピヨンさん。どちらが最強か、知らしめてあげますから。
302 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 20:31:53.24 ID:Nw/DCeu30
とりあえずこれだけ。書けたら今日中にチャンピオンズカップ結果コンマ判定まで。
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/14(月) 20:40:17.96 ID:hpECAwbIo
まあ有馬はマイルとも言われますし………
304 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 23:19:20.94 ID:Nw/DCeu30
――中京レース場、ダート1800m、G1"チャンピオンズカップ"
寒空のレース場に最高峰のダートウマ娘が集う。出走ウマ娘を見ても、ダートで名を挙げた強者ばかりのそのレースに……彼女は参加できるだけの実力があった。
『最後に確認をしよう』
今回のレースに逃げウマ娘はシルヴァーパピヨンしかいない。つまりパピヨンが今回のレース展開を操作すると言っても過言ではない。
キミの走りで後方のウマ娘はペースを変えるかもしれない、それによってスタミナをぐちゃぐちゃにかき混ぜて最後逃げ切れる――そんな作戦もありえたかもしれない。
が――しかし。
『……キミにはそんな作戦必要ないだろう』
ただただ脚を動かして、腕を振り、全力を出し切る。最後の最後まで気力を振り絞り、スタミナ全てを使い切って――駆け抜ける。それがシルヴァーパピヨンのレースだし。それ以外にシルヴァーパピヨンのレースは存在しない。
自分が憧れた走りがそれで、見惚れた走りはそれ以外にあり得なかった。
『パピヨン……?』
レース場控室でこうして確認をしているが、パピヨンからの返事が一つもない。何か不調かと不安になったが――どうやら問題はなさそうだった。
パピヨン「ん……ごめんお兄さん。ちょっと集中してた、ちゃんと話は聞いてたから大丈夫だよ」
――――目を瞑って、瞑想をしていたパピヨン。勝負服の背中にプリントされた溶けた銀色の蝶が、まるで彼女の滾る熱によって溶けてしまっている――そんな風に見えてしまう。
……膝下のダメージソックスも、ピンヒールブーツも、どんな意図でデザインしたのか分からない面積のインナーも、いつも身に着けているパピヨンマスクも、そして一枚のパーカーも。彼女を表すには十分すぎる勝負服だった。
――どんなに傷を負っても、どれだけ不安定な適性で、周囲をハラハラさせるその性格も、己の本質を隠す小さな仮面も、燃えるレースへの情熱も――全部全部、シルヴァーパピヨンというウマ娘の要素そのものだった。
……いや、多分考えすぎだと思う。パピヨンはそこまで考えてデザインしていないはずだ。
305 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 23:19:57.40 ID:Nw/DCeu30
パピヨン「……ねえ、お兄さん」
『ん、どうした――』
パピヨンが静かに立ち上がって、何も言わずにスタスタとこちらに向かって歩いてきて……ぎゅっ、と抱き着いてきた。
自分の胸に顔を埋め、静かに抱きしめる力を強めてくる。
『……』
パピヨン「…………ん、ありがと。最後に充電したかったんだ〜……えへ」
埋めていた顔を上げて、上目遣いでにや〜っと笑う。すりすりと尻尾が脚に絡みついてきて擽ったい。彼女がこうやって尻尾を脚に絡ませてくるときは大抵、甘えたかったり心がちょっと不安定だったりするときだ。最近気づいたことだが。
『……不安か、やっぱり』
パピヨン「……そりゃね、色んな人と約束しちゃったから」
ステラライムとはどちらがダート最強か決めると約束し、ブラックマンティスとは最強となって立ちはだかると約束を、そしてグリーンシルフィーの分まで今回のレースを走り、勝利をすると約束をして。
沢山の約束があった、つまりそれだけパピヨンには――期待をされている。約束を果たしてほしいと、色んなウマ娘の想いが乗りかかっている。
パピヨン「沢山走って色んな人からそういうの貰ってるから、ちょっとは慣れたっちゃ慣れたけど……まだまだ怖いし、不安なんだよね」
『……ああ、そうだな』
パピヨン「勿論、そういうのからはもう逃げないって決めたけど……逃げないために、ちょっとだけ。お兄さんのことを補充したいな〜って、お兄さんパワーをアタシに吸わせろ〜って感じで」
なんなんだお兄さんパワーって、とは思いながら……要するにハグをして心を落ち着かせてレースに行きたいということだろう。
…………自分の両腕を、彼女の背中に回す。
306 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 23:20:31.13 ID:Nw/DCeu30
パピヨン「ひゃぁ!?お、お兄さん……?」
『もっと沢山充電しよう、それでキミが落ち着けるなら幾らでも。それでしっかりと……満足する走りを皆に届けよう』
パピヨン「…………えへ、お兄さんってアタシに甘いよね。そういうところ、アタシ大好きだよ」
『……自分もキミのそうやって素直に伝えてくれるところ、好きだぞ』
パピヨン「…………!??!?!??!?!?」
しまった……言い過ぎたか。レース前にこれはちょっとまずいな。
パピヨン「はっ…………は、はーい!はいはいはい!もうお兄さんパワー終わり終わり!これ以上は……あ、溢れちゃうから!もったいないもったいない!!!」
『……ん、そうか』
顔を真っ赤にしてパピヨンが離れてしまった……離れるときにちょっとお腹をパンチされたな、痛くはなかったが。
パピヨン「じゃ、じゃあ行ってくるから!!!お兄さん……応援しててね!」
逃げるように控室から出ていこうとするパピヨン――ダメだ、まだ言っていないことがある。
『パピヨン!』
パピヨン「ちょ、ちょっとなにお兄さん!ア、アタシいま恥ずかしいんだけど……!顔も熱いし――」
307 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 23:21:15.65 ID:Nw/DCeu30
『――――頑張れ!キミは、キミらしい走りをしてくればいい!』
とても楽しそうに走るキミの姿に――自分も、皆も期待してるよ!と、叫ぶ。
パピヨン「…………!」
……一瞬の、沈黙。そしてパピヨンは、嬉しそうに笑って。
パピヨン「あーあ、そんなこと言われたら――背負うしかないじゃん!お兄さん!」
――――オッケー任せておいて!アタシはアタシらしく走るから!行ってきます!
ああ、行ってらっしゃい――!その言葉が、パピヨンの耳に届いているかは分からないけれど、この想いはきっとパピヨンに届いているだろうと確信は――あった。
308 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 23:21:48.80 ID:Nw/DCeu30
"砂上の戦いを求める猛者が集う!ダート王決定戦、チャンピオンズカップ!"
"今日の主役はもちろんこのウマ娘!一番人気シルヴァーパピヨン!ドバイゴールデンシャヒーンでは見事な逃げ切り勝ちを決め、前走エルムステークスでは連覇も決めております。蝶のように舞う華麗な逃げはこの日本でもその力を証明できるか!"
"そしてこの人気は少々不満か。二番人気、去年チャンピオンズカップ覇者にしてレコードホルダー!ステラライム!流星のごとくその走りは逃げる蝶を打ち抜くか!そしてチャンピオンズカップ連覇を果たすことはできるか――!"
パピヨン「…………会えたね、ライム」
ライム「そうですね……パピヨンさん。会いたかったですよ」
わぁあああああああああ……!!!と観客の歓声が聞こえてくる、アタシとライムが向かい合って何か喋っているんだ、何か宣戦布告とかしてるんだろうと盛り上がってるんだろうなぁ……。
……でも、そういうのって全部全部前にやっちゃってるからなぁ。
パピヨン「ん、今更何か言うつもりはないけど――宜しくね。そっちも別に何か言いたいこととかないでしょ?」
ライム「ええ、話したいことも語りたいことも、全部あの日夏合宿の夜に話しましたから」
――――ライムの後ろから隠しきれないオーラみたいなものが見える。今すぐ走りたい、今すぐアタシと競いたいという思いが――いや、隠し切れないじゃなくて隠してないんだ。これ。
……嬉しいじゃん。だったらアタシも――相応に応えてあげるから。
パピヨン「……っし、じゃあちゃっちゃと決めちゃおうか。どっちがダート最強か――!」
ライム「――お互いがお互いのリベンジのために。証明しましょう、パピヨンさん!」
"どのウマ娘も気合十分!良い表情をしております!"
"――各ウマ娘ゲートイン完了、出走準備整いました!"
パピヨン「…………っ!」
――よし、頑張ろう。ゆっくり息を吸って、吐いて――心を、落ち着かせて。
――――あとは、ゴールの向こうだけを見つめよう。
"さあ今ゲートが開きG1チャンピオンズカップ!スタートいたしました!!!"
309 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 23:23:11.33 ID:Nw/DCeu30
結果は:コンマ直下
1 自由に、楽しく、奔放に――逃げる、ただそれだけで
2-4 "砂上の銀の蝶"
5-7 "青の流星"
8-9 煌めく流星は瞬いて、誰もが目を奪われて――。
0 おおっと
310 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/14(月) 23:23:38.08 ID:l8R9W6/Yo
いざ勝負
311 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/14(月) 23:33:27.06 ID:Nw/DCeu3o
お疲れさまでした!今日は終わりです!ありがとうございました!
ステラライムが強すぎる!最後の最後まで!!!
312 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/15(火) 01:00:52.27 ID:wiSxMGOpo
乙
このスポ根爽やか魔王最後まで堂々高い壁だったな
でもライムいなかったらパピヨン海外挑戦なんてならなかったと思うしいいライバルよなー
313 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/15(火) 12:19:13.31 ID:9o76oXEAo
ドバイ前国内ライム:厳しい国内ダート適正と距離適性+バカつよライム=どうやって勝つんですか?(現場猫)
ドバイゴールデンシャヒーン:適正ヨシ!距離ヨシ!相手は強いけどここまで来れたなら勝ちの目は十分ある実質ラストバトル
ドバイ後チャンピオンズカップ:今だから改めて分かる初期ライムの強さ(ここまで鍛えたパピヨンでほぼ互角の)、イベントマッチ
ゲームだとこんな感じかなぁ
立派だ、よく頑張ったよ
幻視する実馬正史は多分ドバイ走ってない、子が国外砂でめっちゃ活躍して、パピヨンも走れたなら……を言われただろうし、そのアンサーを見れるシナリオは大変人気なのですね(早口)
314 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/17(木) 02:16:31.93 ID:GphOy83Z0
――砂を蹴り飛ばす。その体全部を使って、ただひたすらに全力に前を往く。
目の前には誰もいない、自分一人だけが独占しているこの景色が――どうしようもないくらいに、キラキラ輝いて……綺麗だった。
"最終コーナー!先頭は依然としてシルヴァーパピヨンが突き進む!3バ身ほど離れた位置に5番!そしてその後ろをステラライムが追う!そして2番、11番――!""
パピヨン「――――!」
は、はは、ははは――!と、笑いが止まらない。何か自分の中のネジがぶっ飛んでしまったんじゃないかとも思うが、きっとこれは正常だ。
――いや、正常なんかじゃない。こんな大舞台で笑いながら走るウマ娘なんて――きっとイカれている。
楽しくて楽しくてしょうがない。自由に走れるこのレースが、ライバルと競うこのレースが、色んな期待を背負って駆けるこのレースが――今のアタシには最高の時間だった。
――――ずっとずっと、この時間が続いてほしいとアタシは願う。
ライム「――――は、はははは!!!」
"さあ最終直線先頭はシルヴァーパピヨン!そしてその後ろからは――上がってきた上がってきたー!ステラライムが5番を交わし一気に先頭を狙いに行く!
"世界王者か!国内王者か!二人の王者の一騎打ち!シルヴァーパピヨン逃げる!ステラライム追走!残り――あと400m!"
――観客から、今日一番の歓声が沸き上がる――より一層、神経を集中させる。
315 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/17(木) 02:17:24.47 ID:GphOy83Z0
パピヨン「っ……ぁあああああああああああああああ!!!!!」
叫ぶ、自分の力全てを出し切るために。スピードもスタミナも全て限界を超えて出し切って、最後に出せるものは――ギリギリの根性だけだった。
負けたくない、絶対に勝ちたいという想い。ステラライムに絶対に負けないという想い一つで――駆ける。駆ける。駆ける!
ライム「やぁあああああああああああああ!!!!!」
後ろから近づいてくるステラライムの声。先頭は、先頭はアタシのものだ……!絶対に奪わせてたまるものか……!
心臓が爆発しそう、息が苦しい、今にもぶっ倒れそうな体を、根性で動かして――全力で突き進む。
――ずっと続いてほしいと願ったレースにも終わりがくるものだ。
パピヨン「あ"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」
ライム「っ―――ぁああああああああああああああああああ!!!!!」
――――青いウマ娘が、一瞬だけアタシと並ぶ。そして、瞬き一つする間に――アタシの視界が、一瞬だけ青く瞬いた。
"――ステラライム!ステラライム先頭!ステラライム先頭!ぐんぐんぐんぐん突き放す!これはシルヴァーパピヨン追いつけないか!?"
パピヨン「――――っ」
誰もいない景色に――青い星が流れてくる。
――ああ、くそ、くそっ……!なんで、こんな、こんなにさぁ……!
――――悔しいなぁ……!悔しいなぁ!
――――楽しいなぁ……っ!
316 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/17(木) 02:19:04.42 ID:GphOy83Z0
"――――ゴーーーール!一着ステラライム!二着シルヴァーパピヨン!ステラライム、見事チャンピオンズカップ連覇達成!国内王者はやはり強かった!!!"
パピヨン「はっ……はっ、はぁ……っ」
ゆっくりとゆっくりとスピードを落としていき――ゆっくりと、地面に倒れこむ。
前からべしゃぁと倒れる。全身砂まみれになって、寝返りをうち、空を見上げる――ダメだ、もう動けないや。全部全部使い果たして、完全燃焼……だなぁ。
……誰かの足音が、聞こえてくる。
パピヨン「ぉぇ……はぁ。はぁ……どしたの、王者様?」
いつもなら観客に向かって感謝の気持ちを伝えているはずのライムが――敗者のアタシを、見下ろしてくる。
ライム「――――今日は私がリベンジさせていただきました」
誰がどう見ても私の勝ちで、ダート最強は私だと証明されました――ですよね、パピヨンさん?と、語ってくる。
パピヨン「…………」
ライム「悔しいですよね、今すぐここで騒ぎたいくらいですよね?だったら――私は何時でも、貴女を待ち受けますから」
王者として、貴女の挑戦を待ちますと――ステラライムは、眩しい笑顔で、言いやがった。
…………。
パピヨン「はぁあああああああああ!!!んもームカつく!!!くそ、くそくそくそ!ライムさぁ――強すぎ!!!」
脚をじたばたと動かす!G1の舞台がなんだ!観客がなんだ!ムカつくものはムカつくし――悔しい悔しい悔しい!
パピヨン「絶対リベンジするから!――最強の椅子温めておいてよ!」
ライム「――――ええ、もちろんですよ。パピヨンさん」
それでこそ――私の最高のライバルです。
アタシのその宣言を、ライムはとても嬉しそうな表情で――受け止めた。
317 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/17(木) 02:19:48.35 ID:GphOy83Z0
――――――――――――――――
――――――――
――――
――
『――お疲れ様、パピヨン』
パピヨン「ん……ごめん、負けちゃった」
戻って来て早々、彼女の口から出たのは謝罪だった。
彼女らしくないとは思いつつ、それだけ彼女にとってこのレースが大きかったのか……それが伝わってくる。
『……とてもいいレースだった。確かに負けてしまったけれど……キミならこの負けを糧にできるだろう?このままライムに負けて終われるウマ娘じゃないのは、自分がよく知っている』
パピヨン「それはそうだけど!違うじゃん!ほら、ほらもっとアタシが喜ぶことして!」
滅茶苦茶怒られてしまった。
――パピヨンが喜ぶこと。尻尾の手入れを最初に思い浮かべたが――今のパピヨンと、自分ならきっと……。
『…………パピヨン』
そして自分は、最高の愛バに対して――大きく腕を広げて。
おいで。と、そう言ってあげる。
パピヨン「――――っ!!!」
『…………ぐえっ』
――突っ込んでくるパピヨンの力が強すぎて思わず声が漏れるが――倒れないよう堪えて、優しく抱きしめる。
――――悔しい悔しい悔しい!絶対次は勝つ!負けない負けない負けなーーーーい!!!
パピヨンの悔しい思いが響く。どんどん声が震えて、涙声になる……顔は見れないけど、頭をなでなでと撫でてあげる。
…………次は勝とう。キミと自分で、二人一緒ならどこへだって――手が届くはずだから。
318 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/17(木) 02:20:37.52 ID:GphOy83Z0
――――全ての目標を達成しました!
319 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/17(木) 02:22:33.28 ID:GphOy83Z0
安価無し、今日はこれで終わりです。ありがとうございました。
次クリスマスイベ、温泉イベ、そして最後の育成終了イベントです。どこかで安価挟みたいけど、なにかあるかなぁ……。
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/17(木) 12:17:09.01 ID:04EI4xQNo
おつおつ
青春よきかな…!
321 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/17(木) 20:26:46.89 ID:GphOy83Z0
クリスマスイベ、悩んでます
1 【貴方】宅、パピヨン突撃
2 クリスマスデート編
3 風邪を引いた【貴方】を看病してくれるパピヨン
4 それ以外
どれが良いですか。安価とかじゃないのでいいなーってやつください。
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/17(木) 21:43:14.82 ID:e0QNQ3Fpo
寮の皆でクリスマス前の忘年会、からの2への戦略会議へ
323 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/17(木) 22:35:55.38 ID:fifyN/8Wo
>>322
これに一票
324 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/18(金) 12:16:16.73 ID:aO1TTeFAO
これ作戦会議どっちがやるんだ…?パピヨンといつものメンツかな?
恋愛大好き娘の知恵が合わさるのか…?
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/18(金) 12:33:09.50 ID:P0Md6c9jo
イツメンだと思った
そうなると彼女らにトレーナーとの事が露呈する流れになるが……まあ時間の問題だったな!
326 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/18(金) 20:23:40.11 ID:aO1TTeFAO
何歩も先に進んだパピヨンを見ていつメンはなにを思うのか……
これは負けられないと幼馴染み君にもうアタックするステラライム……震え上がるシルフィーとマンティ……?
327 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/24(木) 23:15:26.73 ID:/gRpbJuM0
お久しぶりです。
そろそろ再開します。明日明後日とか。
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/24(木) 23:43:19.79 ID:rwD8TKy+o
おかえりー
329 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/26(土) 22:55:00.12 ID:YfXsexqa0
パピヨン「――――マンティ〜〜〜!!!」
マンティ「うひゃ!?ぱ、パピヨンしゃん……っ!?ちょ、わっ、わぁ……!」
――チャンピオンズカップを終えて。世間はクリスマス前ということでそれらの話題で持ちきりだったり、有馬記念とかのレースで大騒ぎだけど――少なくとも今この場所では違った。
パピヨン「お帰り〜〜〜!!!すっごい久しぶりな感じがする〜〜〜!」
そう、ついにマンティがトレセン学園に帰ってきた……!長い長い病院生活から、脚をちゃんと治して――戻ってきた!
ライム「マンティさんお疲れさまでした!無事に治ったようでよかったです……!」
シルフィー「お、おかえりなさいマンティさん…………!」
マンティ「あ、あのぉ……!う、嬉しっ、嬉しいんですけどぉ……!ひゃぅぁ、ぱ、ぱぴよんしゃんがぁ…………!」
ライム「……パピヨンさん、そろそろ離れましょうか。凄い困ってますよ」
パピヨン「やーん。マンティ……」
流石に抱き着いてむぎゅむぎゅするのはダメだった見たい。マンティの顔が真っ赤で今にも爆発しちゃいそうだもんね……失敗失敗。
でも、それだけ嬉しいってこと!
マンティ「ひゃぁ…………はっ!す、すみっませんっ!ちょっとぼーっとしちゃいました……!で、でも!脚は治ったんですけど、もう少しちゃんと走るリハビリとか練習も必要なので…………」
パピヨン「ん、良いの良いの!またマンティと走れるのが分かったんだから!――――ぷぷぷ、早く追いつかないと、待ちくたびれちゃうからね?」
マンティ「――はい、待っていてくださいね。パピヨンさん」
――――あーあ、これライムに勝ってから言いたかったなぁ!んもー!
330 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/26(土) 22:55:31.28 ID:YfXsexqa0
マンティ「……と、ところで今は何を……?ちょっと騒がしいような……?」
シルフィー「あ、そういえばマンティさんは知らないんですっけ?えっとですね――」
――クリスマスパーティーにはまだ早い、しかし現に美浦寮に所属するウマ娘たちは騒がしい。
色んなところに飾り付けがあり、寮の広間には様々な料理が並べられている。
ライム「今年はだいぶ早いですよね、クリスマス前に……」
――ヒシアマ姐さん主催で毎年行われている恒例の、忘年会だ!
331 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/26(土) 23:02:02.02 ID:YfXsexqa0
――――――――――――――――
――――――――
――――
――
今年は特に特に盛り上がった一年だった。それはきっとみんながそう思う――そんな一年だったと、忘年会の中、振り返る。
……ドバイゴールデンシャヒーンの勝利、エルムステークス連覇、そして――チャンピオンズカップでのステラライムとの対決。
記録にも残る、記憶にも残る――少なくともアタシはこの年のことを忘れることはない、絶対にない。
パピヨン「……えへ」
それに……お兄さんとも……えへ。
…………えへへっ。
シルフィー「…………パピヨンさんがずっとニヤニヤしてますよ」
ライム「あの、やっぱり……」
マンティ「…………パピヨンさん、やっぱり……うぅ」
……なんかめっちゃ見られてるんだけど。なに、そんなうわぁ……みたいな!
パピヨン「ちょっとそっちの三人!何見てんの!」
ライム「あ、いえいえパピヨンさん!私たちはそんな――――いえ、ここはもうはっきりと訊いちゃいましょう」
シルフィー「えっ、ら、ライムさん…………!」
ライム「パピヨンさん!貴女――と、トレーナーさんとその……な、なったんですか、そういう……仲に?」
真剣な表情で、興味津々そうな表情で、ライムがアタシとお兄さんとの仲を訊ねてくる。
もしここではっきりそうだと言ってしまったら……多分お兄さんが困るだろうなぁ。うん、別に言ってもいいけどここはお兄さんのためにもはっきりと…………。
パピヨン「え〜〜〜?えっ、そっ、そんな…………お兄さんと恋人とか…………そ、そんなわけないじゃん!で、でもぉ……そ、そっかぁ、そんな風に見えちゃうんだアタシたち……お兄さんの恋人みたいな……ふふっ」
マンティ「ぱ、パピヨンさぁん…………!」
332 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/26(土) 23:35:43.84 ID:YfXsexqa0
パピヨン「えへっ、それでさ、お兄さんがさぁ…………」
お兄さんとアタシが付き合ってることがバレちゃった……❤けどバレちゃったならしょうがないよね〜?
じゃあ隠す必要もないし、この三人は興味津々みたいだし……色々教えてあげちゃお〜。
あの日の告白のことも、お兄さんの返事も、そして今日までやった色んなことを!
パピヨン「凄い優しくて、良い匂いして……体つきとかも、すごい男の人って感じでぇ……❤」
シルフィー「ほ、ほほぉ……ほぉ……!」
マンティ「ふぇぇ……そ、そんな……パ、パピヨンさん凄い…………うわぁ……」
ライム「……今までの態度が一気に変わりましたね」
パピヨン「べ、別に変わってなんてないけど?ライムもさ〜、自分からアタックアタックしないと〜……幼馴染くんとか逃げられちゃ――痛い!抓らないで手の甲!」
ライム「パピヨンさん!!!」
興味津々に色々聞いてくるシルフィー、顔真っ赤ではわはわしてるマンティ、そしてなんとも素直じゃなさそうなライム。
ライムちょっとムスーっとしてるけど……耳がちゃんとこっち向いてるんだもんな〜!興味津々恋愛脳ウマ娘の一角のむっつりさんめ〜!
シルフィー「じゃ、じゃあ……!クリスマスにも……デートとかするんですか!?」
パピヨン「もちろん!きっとお兄さんから誘ってくれるだろうし……すっごい楽しみ!」
シルフィー「……あれ、パピヨンさんから誘うんじゃないんですか?」
パピヨン「だってクリスマスだよ〜?お兄さんからきっと誘ってくれるって!お兄さん優しいし……多分すっごいデート考えてくれてるよ!」
333 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/26(土) 23:55:20.47 ID:YfXsexqa0
ライム「…………それ、大丈夫ですか?」
パピヨン「は?なに、お兄さんとアタシの仲疑ってるのライム?」
ライム「別にそういうわけじゃないですけど……その、さっきのパピヨンさんの話だと…………まだ正式な恋人ではないんですよね?」
いや、もうほとんど恋人みたいなものだけど……ま、まあ。一応、トレセン卒業まで回答は未定ってことで…………。
でも!いや、そんなのほぼ恋人決定でしょ!?じゃあもう恋人!両想い!
ライム「……トレーナーさん、クリスマス忙しいんじゃないですか?年末ですし、恋人……いえ、パピヨンさんまだトレセン生ですし、世間的には……」
パピヨン「…………ぇ」
…………お、お兄さん考えてない?いや、いや、でもお兄さんとアタシは……で、でも……ぇ。
パピヨン「…………」
ライム「パ、パピヨンさん!?ち、ちがっ……す、推測!推測ですから!」
マンティ「パ、パピヨンさん!き、きっと考えていますよ!パ、パピヨンさんの……トレーナーさん、良い人ですから!」
シルフィー「じゃ、じゃあいっそのことデートのことこっちから誘っちゃうとか!」
パピヨン「そ、そそ、そう!いや、でもお兄さんがぁ……さ、誘ってくれる…………」
マンティ「と、トレーナーさんにデートを誘ってもらうため……デートまでの作戦会議しましょう!そ、それならどうでしょうか!?」
……ぐすっ。デートしたい…………じゃあ、お兄さんに色々……うぅ。
ライム「わ、私も手伝いますから……す、すみませんパピヨンさん……」
334 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/27(日) 00:08:28.04 ID:BqXiCNkd0
――――デートまでの作戦会議。
こんなことしなくてもお兄さんはデート……誘ってくれるはずだけど。でも、やっぱり、デートは絶対したいし……。
パピヨン「お、お兄さん、普通にデート誘って大丈夫かな……?め、迷惑じゃ……」
ライム「自分から告白してるのにいまさら何言ってるんですか……大丈夫ですって。ほら、お菓子食べて落ち着いてください」
パピヨン「……ありがと」
シルフィー「デートと言えば色々ありますよね。クリスマスですから、イルミネーションを見に行ったりとか……あ、レストランで一緒にご飯とか……!」
マンティ「お、お家デートとかもあります、よね……!聖夜に、二人っきりで…………!」
ライム「シルフィーさんとマンティさんはなんだかいつも以上にやる気ですね?」
……い、いえ。私も、ちょっと……興味はありますし、ドキドキもしますけど…………こ、こほん!
パピヨン「……お兄さん忙しいし、クリスマスもお仕事とかしてたし……」
ライム「パピヨンさん!ちょっと、いきなり弱気になるの止めましょう!?普段通りで行きましょう普段通りで!」
…………うぅ、なんか、一気に不安になってきちゃった……おにいさぁん……。
335 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/27(日) 00:14:30.35 ID:BqXiCNkd0
クリスマスデート作戦会議編
まずデート場所は……:安価直下
1 イルミネーション!
2 家デート!
3 その他(自由安価)
336 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/27(日) 00:16:34.68 ID:VAb4Hrhlo
1
337 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/27(日) 00:38:51.66 ID:BqXiCNkd0
お兄さんとイルミネーションを見たい!
どうやってデートまで持っていこう……:安価直下
1 それとなーくデートのこと匂わせてみるとか……
2 素直にデートしたいって言えばいいんじゃ……
3 その他(自由安価)
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/27(日) 03:22:11.60 ID:N7XM2gzEo
2
339 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/28(月) 00:19:18.11 ID:6JVayfYH0
『……そういえば今日はクリスマスか』
――クリスマス。年に一度の聖夜ということで世間は盛り上がり、一般的には彼女とデートをしたり家族と過ごしたり……というのが一般的だろう。
しかし、自分はトレセン学園のトレーナーだ。自分にそんなことをする余裕は…………ない。
『いつも以上に仕事が多いな……』
担当ウマ娘の取材依頼に撮影依頼、学園の必要書類の提出に、トレーニングメニューの見直しや研究……やることで言ったら盛りだくさんだ。
…………それに。
『……他の担当、か』
わが学園の理事長である"秋川やよい"理事長から依然このような相談を受けた。
端的に言えば――シルヴァーパピヨン以外のウマ娘を担当するつもりはないか、と。
学園の中にはチームを持ち複数のウマ娘を担当しているトレーナーもいる、しかしそれは経験豊富なトレーナーが行うものだが――おそらく、パピヨンを海外のG1で勝利に導いた実績を考慮されてのものだろう。
――あと、あのパピヨンと二人三脚で三年間無事にやっていけた対応力、も評価されているらしい……まあ、それは光栄なものだ。天晴ッ!とかかれた扇子がとても目立っていたことを思い出す。
『…………』
…………新米トレーナーの自分が、シルヴァーパピヨン以外のウマ娘も担当する。となると、当然パピヨンに割ける時間も減ってしまうだろう。
――はぁ。とため息をついてコーヒーに口を付ける。トレセン学園の来たばかりのころはコーヒーなんて飲めなかったら、今では燃料を補給するみたいに飲めてしまうのだから、恐ろしいものだ。
『パピヨンは、どう思うかな』
もし、自分が他のウマ娘も担当するという話をパピヨンにしたらどうなるか、そう考えていると――トレーナー室の扉が開いた。
340 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/28(月) 00:26:03.78 ID:6JVayfYH0
パピヨン「…………お、お兄さん?」
『ん……どうした、パピヨン』
トレーナー室に入ってきたのはパピヨンだった。なにやら緊張した様子で、自分と目線が合わない――今日はトレーニングも何も休みだから、特に何も連絡はしていないんだが――。
パピヨン「い、今大丈夫!?ちょ、ちょっと、おっ……お願い、があるん、だけど……」
『キミのお願いなら大丈夫さ、どうしたんだ?』
……耳がピコピコとせわしなく動いている。顔が赤く「えっと、あの……そのぉ……」と、中々お願い事が出てこない。こういう時のパピヨンは――――あっ。
そうか、さっき思い出したばかりだった――今日は、クリスマスで…………。
パピヨン「…………で、デート!……したいんだけど。今日、クリスマスだから……お、お兄さんが忙しくなかったら――ひゃっ!?」
『悪いパピヨン!そうだ、そうだよな……きっと、こういうのは自分から言うべきだった』
当然パピヨンと自分はそういう仲じゃない、それはあの夏祭りの日に宣言したしパピヨンも分かっている……はずだ。
けど、だからといって……そんな仲の女の子に、こんな思いをさせるわけにはいかないだろう。
彼女の手を握って、言う。
『――デートしようパピヨン。当日になってからで申し訳ないけど……もしキミが自分と過ごしてくれるなら』
パピヨン「…………っ!ぷっ……ぷはは!なにそれ、お兄さんさぁ……えへ。こんな日にお兄さんと一緒に過ごしてくれる女の子とか……アタシ以外にいないんだからね?」
感謝してよね、お兄さん?と、彼女は満面の笑みでそう言った。嬉しそうに尻尾がブンブンと揺れていて……思わず、こっちも笑ってしまった。
341 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/28(月) 00:52:36.44 ID:6JVayfYH0
昨日はすみません、途中で寝てしまってました。
安価もなしでこれだけです。お疲れさまでした。おやすみなさい。
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/28(月) 03:00:09.00 ID:1TB7dIWWo
おつ
甲斐性、甲斐性だよお兄さん
343 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/29(火) 01:49:09.61 ID:D4BrmwKA0
パピヨン「…………〜♪」
トレセン学園から少し歩くとカップルであろう男女がちらほらと見えるようになってきた。
……傍から見るとこっちもそういう風に見えているのだろうか。と、自分の腕にぎゅううっと密着して離れないパピヨンを見る。
黒いゴスロリチックの、全体的にもこもこふわふわとしたコートを羽織り耳当てを装備した完全防寒仕様のパピヨン。その見た目がなんだか羊みたいで可愛らしい。きっと触り心地も良いのだろう。
パピヨン「ほら、お兄さん!もっともっと近づかないと寒いよ〜?」
『……歩きにくいって。ほら、手は繋いであげるからもう少し離れて』
パピヨン「え〜?んー、もうちょっとこうしてる!」
…………今日のパピヨンには何も言えないな、と自分の中でパピヨンを受け入れる。つくづくパピヨンに甘いと思うが、もうこれが平常運転になってしまっているのだからしょうがない。
『まったく、転んでも知らないからな?』
パピヨン「だって転びそうになったらお兄さんが支えてくれるでしょ?」
『……まあ、それはそうだけど』
パピヨン「じゃあ問題ないじゃーん!えへへ、お兄さん暖かいでしょ?」
……自分の腕に抱きつく力がまた強くなった。もう何を言っても離れないだろうなぁ……。
パピヨン「……❤」
じぃ〜……っと、上目づかいで見つめられている。ほんの少しだけ目を細めて、まるで自分を誘惑するみたいに、クリスマスの街並みを歩きながら――パピヨンはなにも言わずにただただ見つめて、自分の反応を楽しんでいた。
344 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/29(火) 01:49:34.17 ID:D4BrmwKA0
――――――――――――――――
――――――――
――――
――
パピヨン「わっ……すごー……!」
『……本当だな、いや凄いな』
軽く食事を済ませて目的地であるイルミネーションが見れるスポットに向かうと――それはまさに圧巻だった。
木々に飾り付けられたLEDが、白く青く輝ききらきらと街を照らす。まるで雪が降っているように見えて、自分も目を奪われる。
――イルミネーションなんてまともに見たことはなかった、この時期のテレビでたまに見るくらいだったが……自分の目で見ると、やっぱり……凄いな。
『こんな綺麗に彩られるものなんだな、パピヨン……パピヨン?』
パピヨン「……わぁ…………!」
ちらりと、横にいるパピヨンに視線を向ける――イルミネーションにも負けないくらい、きらきらとした瞳をまっすぐ向けて、見つめている年相応の横顔に思わず……息を呑む。
――――あの日告白されたとき、自分の表情を好きになったと……パピヨンは言っていたが。なるほど。
……うん、分かるな。分かってしまうな、恥ずかしいけど。
パピヨン「……ぁ、ちょ、ちょっとなにお兄さん!アタシじゃなくて、イルミネーション見てよ!」
『あ、いや悪い悪い、ちょっと見惚れちゃってたよ……』
パピヨン「へっ?」
『イルミネーションとか実際に見るとこんなに凄いんだな。やっぱりキミと一緒じゃなかったらこの光景も一生見ることは――パピヨン?』
パピヨン「…………〜〜〜っっっ!!!ほんっと、お兄さんさぁ…………!ばか、ばかばかばか…………!」
ぽこぽこわき腹のところを殴られてしまう。な、なんでだ……いたっ、痛いっ!痛い!
345 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/29(火) 01:50:18.59 ID:D4BrmwKA0
パピヨン「お兄さんもうアタシにそういうこと言うの禁止!…………いや、ダメ、やっぱりダメ!もっと言って欲しい……」
『どっちなんだそれは』
そもそもそういうこととは一体?何を言ったんだ自分は?
パピヨン「う〜…………お兄さんのそういうところが、まあ好きだけどさぁ……」
『……こら、他の人もいるんだからそういうことは言わない』
一応自分とパピヨンはごくごく普通の一般的なトレーナーとウマ娘。そんな……軽率に好きとか言ったら、どこで拡散されてしまうか分からない。
パピヨン「…………じゃあ二人っきりだったらいいの?」
『…………』
……なんだかこっちも恥ずかしくなってくる。顔が熱くなっていくのを感じながら、何も言わず縦に首を振ると、パピヨンはとても嬉しそうににや〜っと笑う。
パピヨン「……お兄さん、大好き❤」
『……ああこら!パピヨン!』
パピヨン「えへ〜……❤好き、好き好き、だーいすき!」
無邪気に笑いながら好意を伝えてくるパピヨン。少し前のパピヨンでは絶対に考えられない……が、これまでの道のりがパピヨンをこうさせたのだと、自分は理解している。
――変わらないなんてできっこない、自分もパピヨンもずっと変わり続けていく。この関係も、この時間も、この気持ちも……。
パピヨン「ほらほら、お兄さんも何か言ってみたらどう〜?ぷぷ、返事はアタシが卒業したらなんだっけ〜?お兄さんヘタレだし、当日になったら何も言えなくなっちゃいそ〜!」
346 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/29(火) 02:03:40.00 ID:D4BrmwKA0
『……むっ』
――明らかにパピヨンが煽りのモードに入った。言葉の節々から愛情は感じるが、自分をちょっと小ばかにしたような……そんな喋り方。
パピヨン「ほらほら、お兄さんもアタシのこと好きでしょ?じゃあ言っちゃいなって〜!自分の気持ちも素直に伝えられない〜……よわよわお兄さん〜?」
…………そして気づく。にやにやと笑っているが……明らかに顔が赤くなっていることを。冬の寒さでは言い訳出来ないような、頬の赤み。
……どうしてあげよう。このあまりにも可愛い担当ウマ娘を。
どうしてやろう。クリスマスに:安価直下
1 …………何も言えない。敗け。パピヨンが凄い調子に乗る。
2 誰にも聞こえないように、耳元でそっと。
3 その他行動(自由安価)
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/29(火) 08:41:23.47 ID:yUR1W9xyo
2
348 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/30(水) 01:23:32.96 ID:oP30TQ3I0
パピヨン「どうどう?今のうちにちゃんと好き〜って伝えておかないと、アタシがどっかに行っちゃう――――」
止まらないパピヨン。だと言うのなら――しっかりと伝えてあげよう。
『――――俺もキミのことが好きだよ。パピヨン』
そっと彼女の耳元で、誰にも聞こえない小さな声で囁いて。
紛れもない本心を、この特別な夜なのだから――伝えるべきだ。
パピヨン「――へぇぁ?」
その瞬間、パピヨンの顔が真っ赤に染めあがり。組んでいた腕を放して……ゆっくりよたよたと後方に下がる。
――まるで想像していなかったかのように自分を見つめ、言葉にならない声を漏らして。
パピヨン「なっ、はっ、ぇ……?ぁ、お、お兄さん、だって……それは――」
『……ああ、勿論卒業したらキミにはしっかりと想いを伝えるよ』
今の言葉よりももっと凄い言葉を、強い想いを、キミに知ってもらうから。
――――と、俺はパピヨンの綺麗な髪の毛を撫でながら、言った。
パピヨン「――――」
ぷひゅっ。とパピヨンの口から空気が漏れた音が聞こえ、ぱたんと自分の胸の中に顔を埋める。
『……覚悟しておいてくれよ。何倍も凄いからな、きっと。ちゃんと伝えてもらえるか不安みたいだから――今のうちにキミには言っておくよ』
パピヨン「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってぇ……ムリ、ムリムリムリ……っ!」
青白いイルミネーションの光に、紅潮したパピヨンの顔が目立つ。クリスマスの寒さも気にならなくなって、自分もなんだが恥ずかしくなってきたが――顔は、背けなかった。
349 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/30(水) 01:24:01.72 ID:oP30TQ3I0
――――シルヴァーパピヨン以外のウマ娘も担当して欲しい、理事長にお願いされた言葉を思い出す。
理事長には申し訳ないが……今回は断らさせていただこう。
パピヨン「…………お兄さん、こんなんとか知らなかったんだけど。なに、あれぇ……言う感じのタイプ、じゃないえしょぉ……」
『……キミとずっと一緒に居たらあんなことも言えるようになるさ』
別に他のウマ娘以外担当したくないわけじゃない、シルヴァーパピヨンが引退したら一緒にトレーナーを辞めるつもりも、今のところない。
ただ、シルヴァーパピヨンがレースを走り続ける限り――自分は、その走りに夢中になっていたい。
……それにきっとパピヨンもそれは嫌がるだろう。
『……ははっ、顔が赤いな』
パピヨン「はっ!?いや、ちがっ……さ、寒いから!寒いから赤くなってるだけ!お兄さん!おーにーいーさーんー!」
――今日この聖夜を、自分は一生忘れないだろう。
350 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/30(水) 01:27:01.17 ID:oP30TQ3I0
こんな時間に更新で終わりです。おやすみなさい。
次、温泉旅行イベントです。
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/30(水) 07:32:16.86 ID:eo7Hdsi3o
ニヤニヤニヤニヤ
ごちそうさまです!
352 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/10/30(水) 21:15:34.11 ID:oP30TQ3Io
パピヨンがそろそろ終わることに耐えきれ無くなってきました。ずっとだらだらイチャついて欲しいです、コイツら。
想定してたIFとかそういうのは沢山ありますが、それはまあ書かない方が良いですよねとは思います。骨折してメンタルぐちゃぐちゃパピヨンとか、ライムの前でヒスっちゃってライムにぶちギレられるパピヨンとか…
今日深夜ちょっとだけ投下して、来週には完結予定です。よろしくお願いします。
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/30(水) 23:14:27.43 ID:eo7Hdsi3o
正史=今の物語が一番優れているからこそifルートが輝くのだ……
じゃあ海を渡って逃さないと追いかけてきた魔王と決戦とか、告白を突き放されてズタズタになったパピヨンは妄想で愉しむことにするから
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/31(木) 02:10:38.15 ID:cDb3R0Ha0
もっとマンティやシルフィとレースでバチバチするの見たかったけどこればかりはコンマのお導きだからしゃーない
355 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 03:37:18.22 ID:lcqyPAtO0
シルヴァーパピヨンと共に駆け抜けたトゥインクル・リリーズでの3年間――彼女は色々なものを背負い抱えてここまで来た。
期待も想いも、信頼も本音も。全部全部投げ出さずに抱えたパピヨンの軌跡に……色々な人が魅了されていった。勿論、自分もその一人だ。
『…………』
机の引き出しを開けてそれを取り出す、去年商店街の福引で見事引き当てた温泉旅行券。3年間見事に戦い抜いた彼女、その一区切りの今の時期ならば……これも使えるだろう。
『実は期限も結構ギリギリだしな』
そう言えばパピヨンはいったい誰と温泉旅行に行くんだろうか。確かあの日は……友達を誘っていくんだったか。それとも親と水入らずの休養を……うーん、あまり覚えていない。
しょうがない、とりあえずこの温泉旅行券だけパピヨンに渡してあとは彼女に任せるか。レースもしばらくは入れていないし、いつでも練習休みは取れるスケジュールだ。
パピヨンが休んでいる間、自分も色々と休憩でもしようか……もちろん仕事は沢山あるが、少し休むくらいの時間はあるだろう。
『そろそろ練習だし来ると思うんだが――』
パピヨン「お兄さんどうも〜、あーさむさむ……」
とか噂してたら早速パピヨンが入ってきた、もう自分の家みたいに遠慮なくソファに腰を掛けて当然のようにお菓子を食べ始めたその姿は、今では何も珍しくない。
『パピヨンパピヨン、ちょっと話があるんだがいいか?』
パピヨン「え〜?んもー、なになに?」
寒そうにしながらこっちに近づいてくるパピヨン。そして、自分はその温泉旅行券をパピヨンに見せて…………。
356 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 03:38:42.35 ID:lcqyPAtO0
――――――――――――――――
――――――――
――――
――
パピヨン「あ〜着いた〜!結構長かったね〜!」
『…………』
――温泉旅行の話をした次の日、自分とパピヨンは温泉旅館の前まで来ていた。
パピヨン「ほらほら早く部屋に行こ!荷物置いて、温泉街見て回ろ!」
『……あ、ああ』
手をぐいぐいと引っ張られて、パピヨンに引きずられるがまま旅館内に入る。
昨日パピヨンに温泉旅行の話をしたとき、誰と一緒に行くのかを訊ねた。ペアの旅行券なのだから一人で行くわけにもいかない。友人……ライムやシルフィーにマンティ、それかあの仲が良い親のどちらかと行くものだと――しかし。
パピヨン『――――お兄さんとに決まってるじゃん、むしろそれ以外にある?』
……と、断言されてしまっては何も言えなかった。パピヨンに告白されてからというもの、こういったところをストレートに伝えられてしまうので、少し恥ずかしい。
…………いや少し考えれば分かったことだ。パピヨンが一緒に温泉に行く相手に自分を指名することなんて。3年間二人三脚で共に歩み、クリスマスデートをして、あの告白に答えをハッキリすると誓い――ほとんど、トレーナーと担当ウマ娘という関係を越えている。
いや、温泉とかクリスマスデート自体は他のトレーナーも行ったことがあるという話は聞いたことがある。なんでも有名なトレーナーは毎回温泉旅行に行っているとか――。
パピヨン「……一緒に温泉とか入っちゃう?」
『……入るわけないだろ』
え〜、でもお兄さんも一緒に温泉入りたいでしょ?一応混浴とかもあるらしいよ?と、ニヤニヤと笑いながらこっちを見てくる。随分と慣れてきたつもりだが、今でも少しビックリしてしまう。
……というか混浴なんてあるのかこの温泉旅館。
パピヨン「ぷぷ、あーあ。お兄さんのお背中とか流してあげたかったのにな〜。お兄さんもったいなーい」
357 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 03:40:32.92 ID:lcqyPAtO0
――――温泉街を歩き、人気のある観光名所を巡り、そして旅館での料理に舌鼓を打つ。そして……。
『……ふぅ』
温泉に肩まで浸かり、体の芯までポカポカと温まる。今までの疲れがじんわりと溶けていく、そんな風に思えてしまう。
……これが温泉の効能って奴だろうか。トレーナーの間でも湯治でウマ娘のケアをするなんてのは聞かない話ではない。
『というか、本当に混浴あるんだなここ……』
時間帯で温泉が混浴に切り替わるらしい……今時あるのかそんな温泉が。いやまあ、今の時間から混浴の時間まではだいぶあるし関係ないか。
『……それにしても気持ちいいな』
体が温泉の温かさで、溶けて混ざり合っていく。はぁ、時間さえ忘れてしまいそうだ……。
混浴温泉:コンマ直下
コンマ5以上でパピヨン行ったー!
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/02(土) 06:02:08.83 ID:2lDoRVCUo
ヌッ
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/02(土) 11:42:04.99 ID:UrdJ1j5bo
ヘタれたー!
360 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 14:05:36.18 ID:lcqyPAtO0
パピヨン「あっ、あっ…………あ〜!お兄さん長かったね!温泉そんなに良かった?」
『ああ、良い温泉だったよ……ふぅ、時間を忘れて堪能しちゃったな』
もっと早くに上がるつもりだったんだが。温泉……良いものだな、少しハマってしまうかもしれない。
パピヨン「も、もしかして〜。混浴で女の人が入ってくるの期待してたとか?実はちょっとだけ混浴の時間になっちゃってたもんね?」
『はは、確かにな。時間的には混浴になってたが誰も入ってこなくて助かったよ』
……まあ今時混浴の温泉に女性が入ってくるなんて滅多にない気がするけど。それでも可能性があるならちょっと怖いしな。
『……というかパピヨンまだ温泉入ってなかったんだな。早く入ってきたらどうだ?』
パピヨン「わっ、分かってるって!あ、あ〜あ〜温泉楽しみだな〜!」
わざとらしくそう言うとパピヨンは自分から逃げるように小走りで温泉に向かっていった。どうやらもう着替えの準備はしていたみたいで、ちょうど温泉に行くというタイミングで自分が戻ってきたんだろう。
『さて…………』
―――ーもう一度部屋をぐるりと見渡す。ペアのチケットということで……部屋が一つしかもらえなかった。一つの部屋に、布団が二つ。
……気持ち布団同士の距離が近い気がする。少し離しておこう。
361 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 14:06:28.75 ID:lcqyPAtO0
パピヨン「……あっ、きもちっ……」
思わず声が出ちゃった……確かに、お兄さんがあんなに幸せそうに言うくらいだし、本当に気持ちいな……。
…………それにしても。
パピヨン「……もっと早く行けばよかったぁ……」
混浴ぎりぎりの時間前待って、それでお兄さんと……お、温泉に入るつもりだったのに。適当に時間間違えちゃったとか言い訳して、お兄さんに……色々してあげたかったのに。
でも最後にちょっとビビちゃって本当に大丈夫かなとか考えちゃったせいで!お兄さん戻ってきちゃったぁ……うぅ。ヘマしちゃったぁ……。
パピヨン「あ〜!今頃お兄さんと一緒に温泉でそれっぽい雰囲気になる予定だったのに〜……!」
――けどまだ大丈夫、まだプランはある。いくらお兄さんがアタシの気持ちを受け入れたうえで、のらりくらりと躱すのなら……逃げられないようにするだけだ。
お兄さんはアタシを傷つけない。お兄さんは、アタシを傷つけられない。
だから今日……いや今夜!アタシは……き、キス。キス、するぞ!
パピヨン「……〜〜っっっ!!!」
やばい、想像するだけで顔から火が出そう。ばしゃばしゃと手のひらで温泉を叩いて気を紛らわす。キス、口づけ。頬っぺたにちゅーじゃなくて、唇と唇で……だ、大丈夫。大丈夫、アタシなら……行ける。
…………でも、お兄さんはどう思うかな。無理やり唇奪うとか、お兄さん……い、嫌がるかな……ダメだよね……。
パピヨン「いや!大丈夫!アタシは負けない!大丈夫!」
そもそもお兄さんが悪い!クリスマスにアタシに好きとか言っといて!沢山アタシに優しくして!全部全部甘やかしてくれ!好きになるに決まってるじゃん!!!
――そう、アタシをこんな気持ちにさせてるお兄さんに教えて上げるんだ!こんなことばっかりしてたら……いつかこうなるぞって!
パピヨン「…………よし、頑張ろう!」
温泉の準備してる時に、ほんのちょっとお布団の距離も近くしておいたし!こんなチャンス、滅多にないもん!
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/02(土) 14:14:49.47 ID:+IJUCGXCO
キスだけでええのかおーん?!
363 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 15:35:56.21 ID:lcqyPAtO0
――――――――――――――――
――――――――
――――
――
『よし、じゃあ明かり消すぞ』
パピヨン「あ、うん!オッケー!」
温泉から上がり、浴衣に着替えた自分とパピヨン。ちょこんとお布団の上に座っているパピヨンがなんだか小動物みたいで、可愛らしい。
……まだ体がぽかぽかするな。流石温泉だ、そういう効能があるんだろう。
天井の明かりからぶら下がっている紐を引っ張って明かりを消す。別に気温が下がったわけじゃないのに、これだけでほんのりと冷えたような感覚がする。
部屋の縁側にある大きな窓から差し込んだ月明かりだけが、今この部屋をうっすらと照らしている。その月明かりで見えるパピヨンの顔が……なんだかとても、綺麗に見えた。
パピヨン「お、お休み……お兄さん」
『ああ、お休みパピヨン。ふぁぁ……よく眠れそうだな、今日は』
パピヨン「…………」
364 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 15:38:17.82 ID:lcqyPAtO0
『…………』
……ぼんやりと意識が残っている。眠っているような起きているような……気持ちのいい夢をずっと見ている、そんな感覚。
……パピヨンはもう眠ってしまっているのだろうか。背を向けて眠ってしまったせいで、様子を見ることが出来ない。
まあ、早く眠ってしまおう……そう思った、瞬間。
『…………ん』
ゴソゴソと、布団の中に誰かが入り込んでくる。今この状況で、布団に入ってくるのなんて……一人しかいない。
『……ぱぴ、よん?』
パピヨン「ひぁ。お、おにい、さん……」
びくっ。と自分の背中にくっついてきたパピヨンから可愛い声が聞こえてくる。自分が起きているとは思っていなかった……もしかしたら、自分が眠っていると判断したからこうやって布団の中に入り込んできたのかもしれない。
パピヨン「…………ちょ、ちょっと。さ、寂しくなっちゃって……ごめん、起こしちゃって」
『……良いよ。そんな謝らなくて』
背中からパピヨンの温もりを感じる。一つの布団の中でこうやって密着するなんて良くないことだが……今日くらいは、目を瞑ろう。
……ボソッと、パピヨンが口を開く。
パピヨン「…………ごめん、お兄さん」
『え―――ー』
瞬間、自分の体がぐるんと回転して仰向けに、そして……それに覆いかぶさるように、パピヨンが自分の上に跨った。
見えていた天井の景色にパピヨンが映りこむ。少しだけ開けた浴衣と、ほんのりと汗ばんだパピヨンの顔が。
365 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 15:40:16.49 ID:lcqyPAtO0
『…………パピヨン』
パピヨン「ねえ、アタシお兄さんのこと……大好きだよ。前にも言ったけど、今までも沢山伝えてきたけど……今も変わらず、大好きだよ」
ずしっ……と、パピヨンの体重が掛かる。
パピヨン「お兄さんさ、アタシをからかいすぎだよ。ずっとずっとアタシに優しくして、卒業後に気持ちを伝えるなんて言って……クリスマスに好きとか言っちゃって」
彼女の顔が近づいてくる、いつもは四つに纏めている青みがかった銀色の髪の毛が、宝石みたいにきらきらと輝いて。ふんわりと、彼女の匂いが鼻をくすぐる。
思わず――見惚れてしまう。
パピヨン「頭を撫でてくれて、手を握りしめてくれて、優しく抱きしめてくれて……そんなことされたらさ、お兄さん……こうなっちゃうんだよ?」
お兄さんが悪いんだよ?なんて言いたげな表情、だけど……こっちまで聞こえてくる、彼女の心臓の音が。
小さく震えている、彼女の手が。
『……落ち着いてくれ、パピヨン』
パピヨン「お、落ち着いてるよ。アタシはずっと……ずっと落ち着いてる」
キスがしたい、お兄さんと一緒になりたい、お兄さんに……アタシのことをもっともっと知ってほしい。ずっと前から思ってたアタシの気持ち、勢いでやってるわけじゃ……ないんだよ?
『……』
パピヨン「お兄さん……抵抗、しないんだね。跨って、お兄さんを押さえてるのに」
『……万が一、キミを傷つけるわけにはいかないからな』
パピヨン「……っ!」
366 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 15:46:04.69 ID:lcqyPAtO0
パピヨン「お兄さん……っ!ほんと、そういうところが……っ!」
『……キミが大事だからな』
自分の本心を隠さず伝えると、どんどんとパピヨンがヒートアップしていく。彼女の中の何かを、刺激してしまっている……。
パピヨン「ふーっ……お兄さん。アタシの……お願い、訊いてくれる?」
『……ああ』
パピヨン「――――キス、してもいい?」
真剣な表情で、お願いをしてくる。彼女の心臓の音が嫌でも聞こえてくる。この状況だ、ムリやりにでも奪うことだって出来るはずなのに、わざわざこうやってお願いしてくるというのは……。
…………やっぱり優しいな、キミは。
『――――パピヨン』
コンマ判定:コンマ直下
1-3 ……今はこれで我慢してくれ。
4-6 ……寝ている間にされたことなら、自分は気が付かないだろうな
7-9 …………おいで、パピヨン。
0 ――――。
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/02(土) 16:21:31.42 ID:JULCxunCo
踏み切ってージャンプー!
368 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 17:17:36.15 ID:lcqyPAtO0
『……悪いな』
俺はまた、キミにこんな思いをさせてしまって……でも、今はこれで我慢してくれ。
そう囁いて、俺はパピヨンの顔に唇をそっと近づけて――――。
パピヨン「ひぅ……!?」
――可愛らしいその頬っぺたに唇をくっ付けた。ちゅっ、と小さなリップ音が鳴って、突然のキスに……パピヨンは理解できていないようだった。
パピヨン「へっ……?あっ、ぇ、ふぇ…………?」
口をパクパクを開いて、俺の顔を見つめて……明らかに狼狽えている。きっと、パピヨンの方からキスをするつもりだったのに、俺からキスをされて……ぽかーんと、固まってしまっている。
パピヨン「…………い、いやいや。ダメ、違う、違うって。ア、アタ、アタシは……!」
『……今はこれだけだ。キミがしたいことも、して貰いたいことも…………全部全部、卒業したらな』
パピヨン「……〜〜〜っっっ!!!」
パピヨンは俺が言ったこの言葉に、何か言おうとして……そして、ぺたりと顔を胸に埋めた。
うううぅううう〜〜〜…………!と、うめく声が、聞こえてくる。
パピヨン「バカ、バカ、バカ!お兄さんズル、ズルだよぉ……!卑怯者ぉ……!」
『……反省してるよ』
パピヨン「そんな、そんなこと、言われたら…………我慢、するしか、ないじゃん…………!」
『キミは優しいから、俺のこんなお願いも訊いてくれると思ったんだ……だってキミは……無理やり奪わないだろ?』
パピヨン「…………そっちが勝手にキスしたくせにぃ……!」
『……嫌だったか?』
……何も答えず、パピヨンは自分の胸に顔を埋めながらぎゅうっと抱きしめてくる。
369 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 17:29:48.55 ID:lcqyPAtO0
パピヨン「……じゃあ今日は一緒に寝て、一緒のお布団で」
『……それは』
パピヨン「これくらいしてくれなきゃ、お兄さんのあることないこと言い触らすから」
『……それはまずいなぁ』
――ゆっくりとパピヨンは顔を上げ、自分の体から降りて……横に寝そべった。
パピヨン「ん」
『……ありがとうな』
自分の腕を枕にして、彼女は満足そうに鼻を鳴らす。
パピヨン「…………卒業したら覚悟しておいてよね、お兄さん」
『……ふふっ、それをキミが言うか?』
――――ああ、未来が怖い。何をされてしまうんだろうか。それを考えるだけで……思わず、笑ってしまいそうだった。
キミを愛する。告白させた責任も、今日こんなことになってしまった責任も全部取る。だから――だから。
今この瞬間、悪いお兄さんでいることを……許してくれ。パピヨン。
パピヨン「…………うん。いいよ、許してあげる」
だって――お兄さんは、こんな我儘なアタシを、ずっと許してくれてるんだもん――――えへへっ。
370 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 17:30:46.39 ID:lcqyPAtO0
――――シルヴァーパピヨンとの間に、かけがえのない絆を感じたひとときだった……。
371 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 17:34:36.56 ID:lcqyPAtO0
一旦休憩。続きは深夜くらいか明日に。
シルヴァーパピヨン最終イベントです。
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/02(土) 17:42:12.09 ID:UrdJ1j5bo
おつおつー
相変わらず鉄壁のお兄さん理性
でもちょっと、いやかなりデレてない?デレてるでしょ
373 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 23:59:06.51 ID:lcqyPAtO0
――スタートダッシュでハナを握り、その小さな体を懸命に動かして、最後の直線までスタミナ全てを燃やし尽くして走りぬく。それが、シルヴァーパピヨンというウマ娘のレースだった。
作戦は要らない、ただただ駆ける。余計な雑念はすべて吹っ飛ばして、必死に前を往く――見る人が見ればその走りは愚かで、合っていない適性も走るスプリンターであると、笑い飛ばすだろう。
ダートの短距離しか走れないウマ娘で。
それより長い距離はスタミナを使い切ってしまう、後先の考えられないウマ娘だと。
しかし、だからこそ彼女の走りは記憶に残る。ある者はその走りに勇気をもらい、ある者は何があるか分からない未来を、信じて生きていこうと願うことが出来た。
――テレビでも中継されたその海の向こうの走りは、様々なウマ娘を焼き尽くして――。
――――美しい蝶の舞を見るように、魅了されて。
374 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/02(土) 23:59:38.35 ID:lcqyPAtO0
パピヨン「…………」
『…………』
手に馴染ませたオイルを全体に塗り広げていく、輝きにムラができないように全体に均一にオイルが浸透するように。櫛も使い毛も整えて……確認する。
あの日クリスマスに見たイルミネーションのように、彼女の尻尾は今……輝いていた。
『どうかなパピヨン』
パピヨン「ん〜……」
師匠は確認するように尻尾を軽く振る。ゆらゆらと横に揺らしたかと思えば、いきなり力強くブンブンと尻尾を振ってみたり。自分で尻尾を触ってみて触り心地も確認して……暫くすると。
パピヨン「……ん〜!90点上げちゃお!残りの10点も頑張って取れるように精進してね弟子〜?」
『あぁ〜……惜しいなぁ。……因みにどこがマイナス10点だったんだ?』
パピヨン「根っこのところがちょっと硬い気がする。もう少し力入れて櫛とか入れてもいいと思うよ?お兄さんの手つき、優しいけどちょっと弱いもん」
ぷぷぷ、とにやにや笑いながら尻尾でぺちぺちと叩いてくる彼女は、自分のウマ娘尻尾手入れの師匠だった。彼女を担当するようになってからの3年間で、最初は全然だった腕前も今では中々のものであると自負できるくらいには上手くなっていた。
自分がパピヨンの尻尾の手入れをするという情報は彼女の友達から漏れたりしているらしくて、たまに自分に尻尾の手入れをお願いするウマ娘が出てくることもあったが……大体はパピヨンが何処からともなく現れて、代わりにやってくれていた。
つまり、自分の腕前はパピヨンと同等か――いや、まあそこまで自惚れるわけではないが、嬉しいものだ。
パピヨン「お兄さんの腕前で他のウマ娘に手入れさせるなんで恥ずかしいからね、まだまだアタシの尻尾で練習させてあげないと〜……ね?」
……この調子じゃ自分がパピヨン以外のウマ娘に尻尾手入れをするのは当分先だな。
375 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/03(日) 00:00:31.43 ID:2/VoYCQc0
『キミの後輩?』
尻尾の手入れを終えて、今後のレース展開やトレーニング方針について話し合っていると急にパピヨンがそんな話をし始めた。
パピヨン「そうそう、前に話さなかったっけ。○○ちゃんって言うんだけど、トレセン学園無事に入学できたんだって」
ほら、この子この子。とパピヨンがスマホで写真を見せてくれると、ぎこちない笑顔でこっちにピースをしているウマ娘がいた……あ。そうだ、だいぶ前にパピヨンが話していた、ファン感謝祭の……。
『へえ、よかったじゃないか。もしかしてパピヨンが走りとか見てあげたのか?』
パピヨン「いや?アタシがやったのは尻尾手入れの道具相談とか、入学試験の勉強とかそういうの?レースの相談は……されてないなぁ」
『えっ……あ、そうなのか』
パピヨン「んま、アタシも問題ないと思ってたし?というか、そろそろ約束の時間だから行ってくるね?」
そう言うと彼女はどこかに行こうとする、今日は練習休みだというのにジャージに着替えていたのは……もしかして。
『……ふふっ。そうか、じゃあ自分も行こうかな。キミが言う後輩がどんな子なのかも気になるしな』
パピヨン「うーわ、お兄さんキモっ……新入生に会えるとわかってすぐにニヤニヤして……だからアタシ以外の担当ウマ娘居ないんじゃないの?」
……それをキミに言われるとなんだかモヤモヤするな。
パピヨン「……あーあ、○○ちゃんにアタシのお兄さんがキモいのバレちゃうじゃん。○○ちゃんはアタシのことをカッコいい先輩だ〜って思ってくれてるのに」
『キミなぁ……』
376 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/03(日) 00:01:30.70 ID:2/VoYCQc0
――――――――――――――――
――――――――
――――
――
後輩ウマ娘「――は、初めましてパピヨンさんのトレーナーさん!わ、私○○って言います!ま、前のファン感謝祭でパピヨンさんと連絡先を交換しまして、その……!あの!」
練習用コースに向かうとパピヨンが見せてくれた写真の彼女がいた。パピヨンと同じくらいの背丈で……いや、少しだけ○〇さんの方が大きいか?
『初めまして○○さん。パピヨンからキミのことは訊いているよ……だから一旦落ち着いて」
ガチガチに緊張している彼女に優しく声をかける。「は、はい!」と大きな返事をして、大きな深呼吸をする。
後輩ウマ娘「ぱ、パピヨンさんの走りをテレビで見てから、パピヨンさんの走りにずっと憧れていて……それで私、トレセン学園にまで来てしまって……!」
『……へえ、それは凄いな。トレセン学園に入学だなんて、それは凄い頑張ったんだろう?』
やはりまだどこか落ち着いていない彼女。その体をじーっと見る……なるほど、確かに入学したてのウマ娘としては中々に鍛えられていた、特にトモの筋肉は初めて会った時のパピヨンのそれを髣髴とさせるような……。
パピヨン「うわ、○○ちゃんを舐めまわすように見てる……○○ちゃん、こういう時はちゃんとキモいって言ってあげないとダメだよ?そうしないとお兄さん犯罪者になっちゃうから」
『いやいや、自分はだな……』
後輩ウマ娘「き、キモいです!パピヨンさんのトレーナーさん!!!」
『えっ』
――パピヨンがにやにやと笑ってみている。まさか何か吹き込んだのか……?
パピヨン「は〜、可愛いなぁ○○ちゃん。後で一緒に駅前のパフェ食べに行こうね、お兄さんのお金で」
あ、違うな。ただ初めてできた後輩が可愛くて仕方ないんだ。それで後輩を甘やかすもんだし、自分のことも色々と言っているだろうから……はぁ。
……まあ、○○さんなら問題ないだろう。良い子だろうし。
後輩ウマ娘「ご、ごめんなさい!と、トレーナーさんを犯罪者にはしたくなくて……!』
377 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/03(日) 00:02:30.59 ID:2/VoYCQc0
後輩ウマ娘「――――わ、私パピヨンさんに言われて楽しく走れるようになったんです。勝った時はもちろん、負けた時も……も、もちろん負けたら悔しいですけど!どうすればもっと早く走れるのかとか、色々と考えられるようになって……ウジウジすることが少なくなったと言いますか」
――負けが続いて、走ることが楽しくなくなった……けどそんなときにパピヨンの走りを見て、それが彼女の希望になった。
パピヨン「……えへへ、やっぱり恥ずかしいな正面から言われると」
後輩ウマ娘「パピヨンさんがいなかったら、きっとアタシは……今この場に居ませんでしたから」
きらきらと輝くその瞳で、真っ直ぐとパピヨンを見つめる――きっと昔のパピヨンならここで変に茶化したり、煽ったりするのだろうけど……今のパピヨンは違った。
その好意をきちんと受け止めて、返してあげられる。優しい後輩想いなウマ娘だった。
後輩ウマ娘「――で、その、お願いなんですけど……ぱ、パピヨンさん!わ、私と……走ってくれませんか!」
パピヨン「――――えっ」
後輩ウマ娘「トレセン学園に入学出来たら……さ、最初はパピヨンさんと走りたいなって!ずっと思っていまして……だ、ダメです、か?」
申し訳なさそうな表情の彼女を見て、自分はパピヨンをちらりと見る。驚いたような表情、そして――すぐにその表情はスプリンターとしてのものになって。
パピヨン「――いいよ、コースは?」
後輩ウマ娘「あ、ありがとうございます!コースは……ダートの1,200m左回りで、お願いします!」
パピヨン「!」
――――ダート1,200m左回り。それは、彼女があの世界で一着となったレースの……。
パピヨン「ぷっ……ぷはははは!え、○○ちゃんさぁ……言うじゃん。でもアタシ、○○ちゃんボコボコにしたくないしなぁ」
後輩ウマ娘「わ、私を。ただのウマ娘だと思うと……い、痛い目見ますよ!」
パピヨン「――――へぇ。成長したね」
そして、二人のダートスプリンターは……コースに向かって歩いていき……さて、自分は計測係をしなくてはな。
378 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/03(日) 00:02:57.49 ID:2/VoYCQc0
――――レースの結果は当然のようにパピヨンの圧勝だった。短距離レースの着差とは思えないほどの――圧勝。
パピヨンの走りは何も変わらない、ただただ全力で先頭を走る――それだけだった。それだけが作戦なのだ。
後輩ウマ娘「はっ……はっ、はぁ……!っ……!」
膝に手を置いて、必死に息を整えている彼女に対して。パピヨンは……。
パピヨン「――っ。はぁ、はぁ……!うぷっ……お、お兄さん!お兄さんドリンク!二人分ね!」
――地面に横になっていた。スタミナを全て使い切ったんだろう、もう立つのも暫くは難しいだろう。○○さんの分も含めて二つドリンクを持っていく。
『……お疲れ様パピヨン。○○さんも良い走りだったよ』
後輩ウマ娘「はぁ、はぁ……!あ、ありがとう、ございます……!」
パピヨン「ん、ありがとー……おぇ」
きっとこれもパピヨンなりのファンサービスだったのだろうか……いや、違う。
シルヴァーパピヨンは誰が相手でも自分の全力を出す、スタミナ全てを使い切って1,200m先のゴールまで駆ける――なぜならそれが一番、楽しいのだから。
パピヨン「ねえ、○○ちゃん――今日はアタシがボコボコにしちゃったけどさぁ……待ってるね」
後輩ウマ娘「へ……?」
パピヨン「○○ちゃんが正式なレースに出て、ダートのG1とかに出場出来たらその時は――アタシがそこでまた戦ってあげる。それってきっと……めっちゃくちゃに楽しいよね!」
後輩ウマ娘「!」
パピヨン「――ぷはは、アタシはまだまだ現役だからね。衰えなんて、感じさせないから」
後輩ウマ娘「は――はい!私、私……!すぐにそこまでたどり着きますから!それで、私はパピヨンさんに教えてもらった……楽しい走りで!貴女と走るために!!!」
379 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/03(日) 00:03:39.61 ID:2/VoYCQc0
――――シルヴァーパピヨンの走りに焼かれたウマ娘は多い。華麗に舞う蝶の美しさに魅了されて近づいたウマ娘は、目に見えない灼熱の炎に燃やし尽くされてしまうのだ。
全身全霊、完全燃焼、全力投球。
あるいはそれを運命と呼ぶのかもしれない。パピヨンとともに走ったライバルたちもまた、そんな灼熱の炎に焼かれた者ばかりだった。
彼女は駆ける。"楽しい"気持ちを忘れずに、"魔王"か"砂上の銀の蝶"とか大層な肩書も身に着けて、どんな期待も約束もプレッシャーも抱えて――――ただただ、その一瞬に命を懸けて。
だから彼女は――どこまでも人々を魅了した。何もかもを燃やし尽くす、その銀色の炎で。
――人々の頭のフィルムに、その激動のレースを焼き付けて。
380 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/03(日) 00:04:23.47 ID:2/VoYCQc0
パピヨン「――――期待してるね、ずっとずっとアタシは――前で待ってるから!」
381 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/03(日) 00:06:45.19 ID:2/VoYCQc0
お疲れ様でした、これにてシルヴァーパピヨン育成完了となります。
とても長い間付き合ってくださった皆さん、本当の本当にありがとうございました。
しっかりと書くことが出来て、とても満足しています!
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/03(日) 00:14:23.21 ID:3cdqDGujo
ブラボー…!ブラボー!!
めっちゃ綺麗に書ききってて凄い!
次世代に繋がっていく描写好きだぁ
383 :
◆b0/EDFEyC136
[saga]:2024/11/03(日) 00:53:44.51 ID:2/VoYCQc0
次育成キャラについてのお知らせです。一応もう一人はオリウマ娘を育成するつもりです。
明日の夜19:00くらいに次スレを建ててやる予定なので考えている人はその時間くらい来てくださると嬉しいです。
シルヴァーパピヨンがダートウマ娘だったので次の子は芝適性の子にするつもりです。距離適性は安価かコンマか、それで最後にキャラ募集をしてスタートです。
ではよろしくお願いいたします。本当に付き合ってくださりありがとうございます、おやすみなさい。
何か質問とかもあったら何でも大丈夫です。
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/03(日) 01:59:28.00 ID:gRP06ZXqO
おつかれー
楽しかったよー
次スレも参加するよ
パピヨンはいる時空で考えて良い?
270.51 KB
Speed:2.6
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)