【安価コンマ】オリウマ娘と共に Part2

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177 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/15(日) 02:54:31.50 ID:elBstn6D0
パピヨン「………………っ」

心臓のバクバクが抑えきれない、最悪な展開を考えるだけでも涙があふれてしまいそうで、何かが崩れてしまいそうで。

だけど、だけど――一度自覚しちゃったこの気持ちを隠してこのままお兄さんと一緒に過ごすだなんて――アタシには無理だし、そもそも隠せない。

お兄さんが好き。お兄さんの顔も、声も、体も、性格も、匂いも、厳しいところも優しいところも、甘いところもチョロいところも全部全部――好きで好きでたまらない。

パピヨン「……告白は……うん、まだ……まだ止めよう」

夏合宿中に告白は、ちょっと他の人に見られたりしたら怖いし……レース前に振られたりしたら、メンタルボロボロで多分やばいし……。

――――札幌、そこでなら二人きりだし。多分……大丈夫なはず。

パピヨン「……ぅ、ぅうぅうぅ〜〜〜……っ!!!」

――覚悟を決めろアタシ!お兄さんはアタシのこと大好き!だからきっと――悪い方向には進まない。

担当契約解除とか、お兄さんがアタシのこと嫌いになるとか。そんなことには……ならない。ここではっきりと、断言する。

……普段通りのアタシで行け。我儘で自分勝手、だから自分の気持ちにも素直でありたいし、お兄さんの気持ちも――欲しい。アタシのものにしたい。

パピヨン「どれもこれも全部お兄さんが悪いんだからね……!」

担当ウマ娘のこの気持ちくらい受け止めてよねお兄さん……!ゆ、勇気、振り絞るんだからなぁ……!

――責任取ってよね。アタシをこんなにさせた責任を。

178 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/15(日) 03:02:01.54 ID:elBstn6D0
今日はこれだけ、こんな時間にしかできないので全然進まなくて申し訳ないです。お疲れさまでした、おやすみなさい。

女子中学生の担当ウマ娘をこんな気持ちにさせるお兄さん許せねぇですよ……。

そろそろ時間に余裕出てくるんじゃないかなって感じがするので、やる時間早めるかもです。22時とか……。明日はできないですけど。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/15(日) 04:27:30.64 ID:5N/PyEZ5o
乙でした
お兄さん罪なお方だ…… 
180 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/20(金) 02:50:01.54 ID:cI5zJ7Tp0
『……なんだか併走トレーニングの依頼が沢山来るな』

シルヴァーパピヨンと併走をしたい、一緒に走らせてほしいというお願いが他のトレーナー陣、ウマ娘から殺到している。

理由は明白である。パピヨンの頭に戴冠されたドバイの冠。そんなウマ娘が誕生したとなれば、併走トレーニングで力を付けたい――まあ、その気持ちも理解できる。

『トレーナーの自分としては受けてもいいが、最優先はパピヨンの――あ、いた。おーいパピヨン!』

パピヨン「ひぅぁ!?」

そう考えていたところ、ちょうどいいタイミングでパピヨンが視界に映る。いつも通り声をかけてみると、パピヨンはビクっ!と大きく体を震わせて、変な声を出して、こちらを向いた。

……今絶対に見つかりたくない相手に見つかってしまった、そんな表情だった。

パピヨン「おっ……お、お兄さんじゃーん。ど、どしたの〜?あ、アタシいま忙しいんだけど〜……」

『いや、忙しいって……まあいいか。実はキミと併走したいっていうお願いが沢山来ていてな、もしパピヨンが大丈夫そうなら受けようと思うんだが――』

パピヨン「へ、へいそぉ?ふ、ふーん……ま、まあ、別にいいけど……」

……目が合わない。それになんだか顔が赤いし、声が震えている。

おかしい……夏合宿初日はこんな様子ではなかったはずだ。もしや……。

『悪いパピヨン、ちょっと額触るぞ』

パピヨン「ぴゃっ!?」

額に手のひらをくっつけて熱を測る。ひどい熱……とは言わないが、ちょっと熱いかもしれない。まさか熱中症……!?

『悪いパピヨン!すぐに日陰で休むぞ!』

パピヨン「ぁ、へっ?!ちょ、お、お兄さん急展開過ぎるって……!!ひあ!?」

パピヨンを持ち上げて急いで宿舎に戻る。担当ウマ娘の体調も管理出来ないなんて、トレーナーとして失格だ……!

181 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/20(金) 03:00:44.78 ID:cI5zJ7Tp0
パピヨン「………………」

『ほら、お水。あとこれで首筋を冷たくして』

宿舎の保健室でパピヨンにスポドリと保冷剤を渡す。気まずそうにしながらスポドリと自分を見比べてから、パピヨンはちびちびと水分補給をし始めた。

……どうやら大事にはなっていないらしい。意識もはっきりしているし、本当に熱があっただけのようだ。

『……悪かった、キミの体調にも気づけなくて』

パピヨン「い、いやっ。お、お兄さんは悪くないし……そ、そもそも、別に熱中症とかじゃ――」

「……キミは優しいな。けど今回は自分の責任だ、何かあってからじゃ手遅れだしな」

思えば自分はパピヨンの我儘に甘えていたのかもしれない。何か違和感があればすべて言ってくれる、嫌なことも不調も全部教えてくれるはずだと――今までのパピヨンへの信頼が、自分の甘えになってしまっていたのだ。

……最初から気付いている。パピヨンは責任感がとても強くて、頑張り屋なウマ娘だ――だから、きっとパピヨンはこうやって抱えてしまうこともあると。

「キミのことをすべて分かってこそのトレーナーだ。だから今日はゆっくり休んでくれ」

パピヨン「い、いやいや!い、いーよいーよ!ほんと、ちょっと……あ、暑かっただけだから!それよりほら、なんか併走とか言ってなかった?じゃあやろうよ併走!アタシ張り切っちゃつめたぁ!?」

頬っぺたにもう一つ持っていた保冷剤を押し当てる。

「ダメだ、今日はしっかりと休もう。やる気があるのは嬉しいが……今日は自分の言うことを聞いてくれないか?」

パピヨン「…………ぅ、しょ、しょうがないなぁ……!アタシがお兄さんの我儘を聞いてあげるとか、滅茶苦茶レアだからね?」

「はは、ありがとうパピヨン――じゃあキミの我儘を一つかなえてあげるよ。うん、何でも言ってくれ」

パピヨン「――」

……まずい、またパピヨンの顔が固まってどんどん赤くなってきた!
182 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/20(金) 03:14:24.69 ID:cI5zJ7Tp0
パピヨンの我儘。:自由安価直下

これだけです。次更新土日予定です。おやすみなさい。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/20(金) 11:04:28.64 ID:oRf3qgTG0
ずっと私を見ていて
184 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/23(月) 23:18:21.13 ID:vFuKj4tL0
パピヨン「…………じゃあ、じゃあさ」

――ずっとアタシだけ見ていて。今日はずっと、一緒にいて。

と、パピヨンは恥ずかしそうに照れくさそうに、小さな声で言った。

『……それだけでいいのか?』

パピヨン「は、はぁ!?お、お兄さんなにそれ!あ、アタシ結構勇気出したんだからね!?」

『あ、いや悪い。そんなバカにするつもりじゃなかったんだが……いや、なんでもない』

もっとキミらしい我儘を言われると考えていたところに、ずっとキミだけを見ていてほしいなんて言われるとは思わなかった。だから思わずそんなことを言ってしまった。

……ずいぶんと可愛らしい我儘だった。というか、そんなことをわざわざ言わなくても自分はそのつもりだった

パピヨン「…………なに、その眼」

『何でもないよ、ほら今日は休んで、明日からまた調子を見て頑張ろう』

ジトーっとした目を向ける彼女に、にこりと微笑み返す。

外からセミのうるさい鳴き声がジージーと聞こえてくる。エアコンの効いたこの保健室、パピヨンと自分だけがいる場所で、目を離さないように見つめている。

パピヨン「…………そ、そんなに見ないで。ほんと、キモいから」

『……キミが見ていてほしいといったんだろう』

パピヨン「う、うるさいなぁ!ほら!休んでほしいならなんか面白い話して!あと飲み物とアイス!」

『……はいはい』

彼女の熱が収まるまで、保健室のベッドの上に寝っ転がった彼女と何かをおしゃべりし続けた。

…………いつの間にかスヤスヤと眠ってしまった彼女からも、目を離さなかった。

185 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/23(月) 23:21:49.98 ID:vFuKj4tL0
パピヨン「――――ふぁぁあ。ん、ねむ……」

『おはよう、パピヨン』

パピヨン「ん、おはようおにーさん…………んぇぁ!?」

寝ぼけ眼をこすりながら体を起こすパピヨンにおはようの挨拶をすると、彼女は普通に返事をした後、勢いよく自分から距離を取った。

パピヨン「な、なんでいるの!?!?」

『……キミ、寝る前のことあんまり覚えないタイプだろう。キミが言ったんだろ、ずっとアタシを見ていてって』

パピヨン「い、いや覚えてるけど!?だ、だから、いやでも、ずっと寝てたアタシを見てるとか……」

『いや、約束したんだから当然だろう。キミがそうして欲しいと言ったんだから」

もし急に具合が悪くなりだしたりしたら大変だ、そう伝えると彼女は信じられない表情でこちらを見た後、何かあきらめたように溜息を吐いた。

『ど、どうした!?』

パピヨン「いや、別に〜……お兄さんさ、ほんっと……アタシのこと好きすぎない?」

『……?そりゃそうだろ、キミのトレーナーなんだから』

パピヨン「…………はいはい。んーお腹空いた!お兄さんご飯!」

『ああ、今持ってくるよ。宿舎の方にお願いしてキミ用のご飯をちょっと作ってもらったんだ』

立ち上がって保健室から出ようとすると、「待って!」とパピヨンに呼び止められる。

パピヨン「アタシから目を離さないで!まだこれ続いてるから!」

『いや、だが……ああ、じゃあ一緒に行こうかパピヨン。もう立ち上がれるか?」

パピヨン「ん、余裕余裕〜」

……そしてパピヨンと一緒に部屋を出た。道中、彼女の尻尾がすりすりと自分の足に絡みついてきたのが、くすぐったくて何とも言えなかった。
186 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/23(月) 23:39:56.13 ID:vFuKj4tL0
パピヨン「あ"〜……!お兄さん暑い!疲れた!」

『……まだ練習を始めたばかりなんだが』

パピヨン「あー!そんなこといって!ほら水分とスイカ!」

――あの日以降、なんだかパピヨンに遠慮がなくなった。

パピヨン「何その眼。ほらほら、アタシの体調が悪くならないようにしっかり見てしっかり休ませてね〜?」

『キミなぁ、そんな調子で次のレース――』

パピヨン「じゃあ、次のレースアタシ負けちゃう?」

『…………』

パピヨン「……えへ、正直なお兄さん。負けるとこなんて想像しないし、そもそも勝たせるようにするのがお兄さんだもんね?』

大丈夫大丈夫、ほんとちょっと休んだら練習頑張るから、ね?

『……はあ、分かってるよ。ほら、スイカと飲み物』

パピヨン「ん、ありがとー♪」

――エルムステークスまであと少し、追い込みの時期だ!
187 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/23(月) 23:51:00.43 ID:vFuKj4tL0
シニア夏合宿!エルムステークス前:安価直下

1 ライムと夜の砂浜練習
2 自由安価



土日できなくてごめんなさい。今日はこれだけです。

お疲れさまでした。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/24(火) 00:46:20.10 ID:Omoyrs+DO
1
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/24(火) 12:45:28.23 ID:Ik9SHPLVO
そろそろパピヨンの話終わりそうですけど終わったら次のウマ娘に行く感じですか?
それともこれでスレおしまいですか?
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/24(火) 16:59:17.74 ID:/JpF1c5Xo
関係線が少しは進展した…のか?
おつー
191 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:05:26.10 ID:4sxshuEX0
ライム「すみません、急にこんな時間に呼び出したりしてしまって……」

パピヨン「ほんとだよー。アタシそろそろ寝る準備とかしようかなーって考えてたのに」

夜の砂浜はなんだかとてもジメーっとしていて気持ちが悪かった。というのにアタシを呼び出した張本人であるステラライムは申し訳なさそうにしながら、けどなんだか嬉しそうにしながらアタシの方を向いていた。

ライム「……実は断られちゃうかもと思ったんですけど、来てくれてよかったです。本当にすみません、けど……ありがとうございます。パピヨンさん」

パピヨン「絶対にすみませんって思ってる顔じゃないでしょ。はぁ……んま、来ちゃったアタシもアタシなんだけどさ」

ライム「パピヨンさん、優しいですもんね!」

パピヨン「帰る、暑いし」

ライム「わー!わーっ!?ま、待ってくださいパピヨンさん!折角ですから!折角会いに来てくれたんですから!ちょっと走りましょうよ!パピヨンさん!」

帰る!このウマ娘アタシになら何してもいいとか考えてる!

もう寝る!!!
192 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:06:01.66 ID:4sxshuEX0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

ライム「ふっ、ふっ……はぁ。やっぱりパピヨンさんは優しいですね」

パピヨン「うっさい。静かに走って」

あまりにも五月蠅かったから少しだけライムと走ることにした、といっても寝る前の簡単な運動みたいなもので、トレーニングとは言えないものだった。

真横から嬉しそうなライムの視線を感じる……ええい見るな見るな!

ライム「ふふっ……はは」

パピヨン「…………」

海の音、風の音、砂浜を駆ける音。

この音に加えてお互いの呼吸が聞こえてくる。何も喋ってはいないはずなのに、なんだか言葉を交わすよりも相手のことを知ることができている気がする。

――思えば、ドバイに行くちょっと前の日もこんな風に走ったっけ。いや、あの時はもっと本番って感じだったっけ。

ライム「………………ドバイのレースを見たとき、私。実はちょっとだけ泣いちゃったんですよ」

パピヨン「へっ?」

急に何を言い出すんだろうこの人は、しかしライムは続けて話す。

ライム「あまりにも綺麗で、あまりにも清々しくて、あまりにも……楽しそうで。あの日の貴女の走りを見た瞬間、体全身にゾクゾクと鳥肌が立って、なぜだか涙が零れてしまって」

と言ってすぐにその涙は止まったんです。そのおかげでシルフィーさんにはバレませんでしたけど……と、ライムは語る。

……少し、速くなる。

ライム「よく美術品を見たり、オーケストラを聞いて泣いてしまうというじゃないですか。多分、あの時のパピヨンさんの走りは……それと同じなんです」

パピヨン「な、なになに?いきなりそんな……ほ、褒めてるんだよね?」

勿論です!本当にすごくて、感動して――。

193 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:06:44.39 ID:4sxshuEX0


ライム「――――そんな貴方を追い越せたらどれだけ気持ちがいいでしょうか、パピヨンさん」


パピヨン「…………!」

――また、速くなる。負けないように、こちらも脚を速くする。

ライム「ドバイの地で勝利を勝ち取ったパピヨンさん、私たちの世代で最強のダートウマ娘なんて言われるようになったパピヨンさん、そしてそんな姿を魔王とか銀の蝶とか言われるパピヨンさん」

貴女は強い、そんなの誰だって知っています。私も――当然知っています。だからこそ、だからこそ私は……!

ライム「最高のライバルとして、"世代最強のダートウマ娘"として、私は貴方を――ねじ伏せたい……!」

――速くなる。どんどんどんどん、加速する……!準備運動なわけがない、もうこれは模擬レースの域に――!

全身全霊で脚を動かす、前を往くライムに負けないよう必死に走る!

――――笑い声が、聞こえてくる。

ライム「パピヨンさん――私待っていますよ!チャンピオンズカップで!私はあの日のリベンジを!パピヨンさんは――いえ、言わないでも大丈夫ですよね!」

パピヨン「――――っ!ほんっと!ライムってそういうとこあるよね!!!ライムにリベンジしたいことなんて――こっちは数えきれないくらいあるのに!」

良いよ、乗った!チャンピオンズカップ――どっちが最強か!決めようよライム!

こっちは約束してんだ!最強になって待ち受けるって――だったら一番の障壁を、今ここで――打ち壊す!

ライム「ああ、やっぱりパピヨンさんは――ほんっとうに!最高ですね!私、この世代で、貴女と一緒に走ることができて――本当に良かったです!」

まるで星のように眩しい笑顔――そう感じさせる声だった。

真夏の夜、砂浜に輝く一番星。ずっとずっとアタシを照らしてくれた、眩い星を――アタシは、集大成として撃ち落さなければならない。

ああ、なんて最高なんだろう。と、アタシも嬉しくなって、笑った。
194 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:07:43.14 ID:4sxshuEX0



――――最終目標が12月後半"チャンピオンズカップ"に決定した!


195 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:12:49.49 ID:4sxshuEX0
>>189
悩み中です。最近あんまりできてないので、新しい子続けられるかなぁと思う気持ちとそれはそれとして新しい子を書きたい気持ちがあります。


今日はこれだけ、安価なしです。おやすみなさい。

次、エルムステークスです。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/25(水) 01:59:05.21 ID:LMnxh7fio
乙乙
これこれ、この純粋にパピヨンを倒すと向かってきてくれるライムも好きだ!
実馬でも2強どちらが好きか論争起きそう
197 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/27(金) 00:16:05.06 ID:OA3BgWtT0
『去年に比べるとずいぶん人が多いな……』

去年以上の観客数、その理由はといえば……もちろんパピヨンだよなぁ。

エルムステークス連覇を賭けたレース、そしてなによりドバイゴールデンシャヒーン優勝後の初国内レース。一目その走りを見ておきたいと札幌まで足を運ぶ観客が多かった。

――グッズやらなにやらもシルヴァーパピヨンのものが多かった。まさかここまで影響力があるとは、想像していなかった……とは言えないが、それにしても多い。

『……大丈夫かパピヨン?国内での復帰戦、観客数も注目も今までよりも――パピヨン?』

パピヨン「…………へっ!??!な、なに!?」

振り向いてパピヨンを見ると、なんだか心ここにあらず、という感じだった。

自分が声をかけるまで意識がレースとは違う別のどこかに行っていたような……なんだかレースの緊張とは違った緊張もしていそうだし。

『……何を考えているのか自分には分からないが、今はレースに集中だパピヨン。体調もコンディションもばっちりだろう?』

パピヨン「あ、あったりまえでしょ!今のアタシが観客の人数とか、注目だとか人気とかでグラグラ揺さぶられるウマ娘じゃないの、お兄さんも知ってるでしょ?」

と、堂々と胸を張って応える。

――なら大丈夫だ。夏合宿中の練習でも、脚や走りに問題なし。あとはただ――そんなパピヨンのことを信じて待つだけだ。

『よし、じゃあ行ってこいパピヨン!――そして、楽しく走ってこい!』

パピヨン「おっけ、任せてよ!ダート最強のアタシの走りを――手のひらクルクルの観客たちに見せつけてやるから」
198 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/27(金) 00:17:22.07 ID:OA3BgWtT0
――――G3エルムステークス。一番人気シルヴァーパピヨン。

いつも以上の視線。観客席からも、この地下バ道からも、そしてもちろんパドックの上からも。

アタシをマークするウマ娘も多いけど――まあ、変わらない。

パピヨン「………………っし」

ちょっと控室では別のこと考えてたけど……それはちょっと置いといて。レースに気持ちを切り替える。

――全部全部圧倒して、アタシが逃げ切る。

ただそれだけ、それだけで十分。

パピヨン「…………見ててねお兄さん」
199 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/27(金) 00:20:42.15 ID:OA3BgWtT0
エルムステークス、結果は?:コンマ直下
1-3 圧勝圧勝!
4-7 一着だ連覇だ!
8-9 ずこーっ
0 おおっと
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/27(金) 00:46:36.26 ID:NWnnZdado
ぬん
201 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/27(金) 00:51:15.61 ID:OA3BgWtT0
結果!連覇だ連覇!

おやすみなさい。
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/27(金) 00:53:31.40 ID:AP0pNWU9o
おつ
流石にライバルが、憧れてくれる者がいる中でここは落とせねえよなぁ!
連覇おめでとうパピヨン!
203 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/30(月) 22:45:31.38 ID:zwE3mDPH0
――シルヴァーパピヨン先頭だ!逃げる逃げる!ドバイで見せたその走りは日本国内でも健在か!後続とは4バ身ノリード!

――シルヴァーパピヨン逃げ切ったー!そして2着に8番、3着に4番!シルヴァーパピヨンエルムステークス見事連覇!

――――わぁあああああああ!っと、歓声が上がる。

パピヨン「ふぅううう……はぁ。ほんっと、何この歓声」

――けど悪い気はしない。ずっとずっと応援してくれてるファンがいることを知ってるから、アタシの走りを待ってるライバルがいるから。

そっか、そっか……うん。だったら――。

パピヨン「――――ほんっと!バカみたいだよねー!そんな嬉しそうに声出して!ずっとずっと!アタシのことなんて見向きもしなかったくせに!」

アタシはずっと凄かったの!デビューしてから今に至るまで!気持ちよく走ってるだけなのに――こんな風に盛り上がって!

パピヨン「――けどね!」

そんなバカみたいなファンの皆が、ミーハーですぐに手のひら返して見向きもしなくなるようなファンの皆だけど――――アタシのことを応援してくれて、ありがとー!!!


アタシは勝手に走るから!皆も自分勝手にこれからも応援してね!


――精いっぱいの、感謝の気持ち。ちょっとは、伝えてもいいよね。

また湧き上がる歓声。より一層高ぶった感情がぶわーっとこっちに向かってくる。うわっ、うわ〜……!

パピヨン「……気持ちわるーい、ぞ!」

204 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/30(月) 22:49:04.77 ID:zwE3mDPH0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『お疲れ様パピヨン。エルムステークス連覇おめで――!』

パピヨン「あー疲れた!お兄さんマッサージ!あと尻尾の手入れ!」

控室に戻って来て早々、パピヨンはそのままソファに直行し、脚をこちら向けてくる。

……揉めということだろうか。

パピヨン「は〜……あ。いやっ、ちがっ……ご、ごめんごめん!冗談!」

『えっ』

まあ脚のマッサージくらいトレーナーとしての務めだろうと手を伸ばすと、パピヨンはやってしまった!といった表情で脚を引っ込めてしまった。

……自分から脚を差し出したのに?

『……だ、大丈夫か?その、脚の調子とか』

パピヨン「だ、大丈夫大丈夫!んもー全然平気!あ、尻尾の手入れは……お、お願いするけど。脚はいいや!』

『そ、そうか。それならいいんだが……』

205 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/30(月) 22:49:38.62 ID:zwE3mDPH0
――――あ、危ない!!!いつもの感じでマッサージとか頼んじゃった!

今日はだめ!今日はだめ!ア、アタシは今日覚悟してきてるんだから……!脚のマッサージいきなりとか、ちょっと印象悪いよね、うん。そうそう。

パピヨン「………………」

『なあパピヨン。くすぐったかったり変な感じがしたりしないか?』

――今日一晩ホテルに泊って、明日帰る!だからその間に――――!

『――パピヨン?』

パピヨン「ふひゃぁあ!?」

『わっ!ご、ごめんパピヨン!そんなに驚くとは……』

み、耳元で喋らないで!し、心臓飛び出ちゃうかと思った……!

パピヨン「お、驚かせないでよおお兄さん!あ、も、もー!尻尾もっと手入れして!ほらほら、ウイニングライブまでまだ時間あるから!」

――ど、ドキドキしてるのバレてないよね?アタシいつも通りだよね?

――――お、落ち着けアタシ、落ち着け。だ、大丈夫、大丈夫だから……!
206 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/30(月) 22:57:03.26 ID:zwE3mDPH0
ウイニングライブ終了後!パピヨンと【貴方】は――。:安価直下

1 ホテル
2 夏祭り
3 その他(自由安価)
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/30(月) 23:26:05.81 ID:Is5uIwvDO
2
208 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 00:34:18.44 ID:nqvApMSj0
『そういえば』

――アタシの尻尾の手入れを続けながら、お兄さんは口を開いた。

『実は今日近くでお祭りやってるみたいなんだ、もしパピヨンが良かったら……今日一緒に行かないか?』

パピヨン「えっ!?」

な、夏祭り!?お、お兄さんから誘って!?

……で、デート!?こ、これそういうことだよね!?

パピヨン「え、え〜?もしかしてお兄さん、それデートのつもり〜?」

『こら、揶揄うなパピヨン。ほら、去年楽しみにしてたじゃないか夏祭り、だからちょっと調べてな』

パピヨン「ぷ、ぷぷぷ!お兄さんってば、そんなにアタシと夏祭り満喫したいんだ〜……しょうがないなぁ、お兄さんの思い出に残る楽しいデートにしようね?」

『……ああそうだな。楽しい夏祭りにしよう』

――――ど、どうしようどうしよう!えっ、えっ!夏祭りデート……!や、やっぱりお兄さんアタシのこと好きすぎでしょ……!

うっ、うぅ〜〜〜!!!絶対あの色ボケ三姉妹に影響されてる……!アタシの頭の中こんなにピンク色になるとかぁ……!

パピヨン「…………❤」

『……尻尾がすごい揺れてるな』

な、夏祭りで告白とか……も、もしかしてお兄さんからしてくれるとか!?お兄さんもそのつもりとか!?

……『そういえば』

――アタシの尻尾の手入れを続けながら、お兄さんは口を開いた。

『実は今日近くでお祭りやってるみたいなんだ、もしパピヨンが良かったら……今日一緒に行かないか?』

パピヨン「えっ!?」

な、夏祭り!?お、お兄さんから誘って!?

……で、デート!?こ、これそういうことだよね!?

パピヨン「え、え〜?もしかしてお兄さん、それデートのつもり〜?」

『こら、揶揄うなパピヨン。ほら、去年楽しみにしてたじゃないか夏祭り、だからちょっと調べてな』

パピヨン「ぷ、ぷぷぷ!お兄さんってば、そんなにアタシと夏祭り満喫したいんだ〜……しょうがないなぁ、お兄さんの思い出に残る楽しいデートにしようね?」

『……ああそうだな。楽しい夏祭りにしよう』

――――ど、どうしようどうしよう!えっ、えっ!夏祭りデート……!や、やっぱりお兄さんアタシのこと好きすぎでしょ……!

うっ、うぅ〜〜〜!!!絶対あの色ボケ三姉妹に影響されてる……!アタシの頭の中こんなにピンク色になるとかぁ……!

パピヨン「……えへ❤」

『……尻尾がすごい揺れてるな』

な、夏祭りで告白とか……も、もしかしてお兄さんからしてくれるとか!?お兄さんもそのつもりとか!?

……❤
209 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 00:36:13.14 ID:nqvApMSj0
おやすみなさい。お疲れさまでした。

なんか桃色脳内過ぎるなぁって思いましたが、素直になったらパピヨンはこうなるかって思いながら書いてます。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/01(火) 01:02:56.53 ID:nRqXYkvGo
おつおつー
ウマ娘の脳内はいくら桃色でもよい、みんな知ってるね
211 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 22:13:11.17 ID:nqvApMSj0
パピヨン「ちょっとお兄さん!早く早く!」

『こらこら走るな走るな』

――ウイニングライブが終わってからすぐにパピヨンと一緒に夏祭りが行われる場所へと向かう。

全く、本来ならレース直後は休ませるべきなんだろうが――パピヨンのあんな顔を見てしまったら、行くしかないだろう。もともと行くつもりではあったが……せめて次の日とかの予定だった。

尻尾がフリフリと揺れる、年相応の声を響かせ嬉しそうに駆けていく少女。目を輝かせ、普段の悪態をついた言動なんて忘れてしまうくらい純粋な担当ウマ娘。

『……もうそんなに喜んでくれたのなら、こっちとしても嬉しいよ』

パピヨン「お兄さんだって!こんなかわいいアタシとデートとか〜、一生分の幸せでしょ〜?」

いつもの煽り……のようであるが、全然こちらをバカにしたような意図を感じない。

……本当に嬉しいんだな、今日夏祭りに来れたことが。

「お、おいあれ。もしかしてエルムステークスの……」

「あ!ほんとだ、えっサインとか――」

『むっ……』

――――ざわざわと周りの人が騒ぎ始める。そりゃ、今日重賞を連覇したばかりのウマ娘、海外G1を制したこともあって話題性としても抜群。そんな彼女が何の対策もしないでこんな場所に居たら、こうもなる。

パピヨン「あ、どうも〜。もしかしてアタシの――きゃっ!?あ、ちょっと、お兄さん……!?」

どうしたものかと一瞬考えて――パピヨンの手を力強く握りしめ、その場から逃げるように人ごみの中に入っていった。

212 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 22:14:02.95 ID:nqvApMSj0
パピヨン「…………ねえ、これは?」

人から隠れるように木の裏に隠れ、パピヨンに先ほど購入したそれを渡す。

『ほら、お面だよ。これでちょっと今日はお忍びといこう』

可愛らしいくデフォルメされた狐のお面。それをパピヨンにつけてもらって、少しでも顔を隠そうという魂胆だ。

……まあ、それでもバレるときはバレそうだが……なにもしないよりかはマシだろう。

パピヨン「……お兄さんありがと。でもさ、別にアタシは気にしてないよ?ほら、アタシファンサとかも全然できるようになったし――」

『キミにとってデートなんだろう?今日は』

パピヨン「えっ」

デートだというなら、二人きりで楽しむべきだろう。キミと自分だけで楽しむべきで……そのつもりでパピヨンも夏祭りに来たはずだ。

『だったら他の人には邪魔されない方が良いと思ったんだが……ダメだったか?』

パピヨン「――――」

……まずい、固まってしまった。もしかして気持ち悪いことをしてしまったか……どれもこれも勝手にパピヨンの気持ちを考えてみたいな風に言って、自分勝手だったか――。

パピヨン「ぷぷ……♪うわ、うわ〜……!お兄さんそれ……凄いね?」

『パピヨン?』

パピヨン「うん、アタシもおんなじ気持ち!じゃ、早く行こ!」

今度はパピヨンに手を引かれ、夏祭りに戻っていく。

狐のお面に隠れた彼女の顔が、なんだかとっても嬉しそうに、輝いていた。
213 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 22:21:33.57 ID:nqvApMSj0
夏祭り!何かイベント――:自由安価直下
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/01(火) 22:41:35.04 ID:QaoxPPXH0
射的とか金魚救いとかなんでもいいけど真剣な顔→悔しがる顔→無邪気に喜ぶ顔のコンボに思わず見惚れる
215 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 23:56:52.07 ID:nqvApMSj0
ごめんなさい終わりです。おやすみなさい……。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/02(水) 01:27:10.53 ID:ZER39uvGo
おつおつ
どっちだ……?
217 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/03(木) 00:24:58.36 ID:Tu5vfEY7o
次に告白安価とかお兄さん反応安価とか色々やるつもりなんですけど

これパピヨンどう転んでも凄いことなりそうでヒリヒリしてきました。無事に終われるのかなこれお兄さん
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/03(木) 00:58:37.41 ID:xZJLcd/qo
ある意味レースよりドキドキする
見届けるぜパピヨン…!
219 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 22:36:21.53 ID:XYKyijZC0
パピヨン「あ、お兄さん射的射的!射的やりたい!」

パピヨンが指をさす方を見ると、そこにはお菓子が景品となって台に並べられた射的。なるほど、確かに夏祭りといえばの代表格だ。

『分かったよ、ほらお金あげるからやってきな』

パピヨン「ありがとーお兄さん!ねえおじさん!射的一回!」

渡した百円玉をパピヨンが受け取り、それが射的屋の店主に払われる。店主から渡された射的銃を見て、きらきらと目を輝かせながら尻尾を振る。

……やっぱりこういうところは年相応なんだよな。

パピヨン「よぉし、じゃあ何狙っちゃおうかな〜。んー……よし、決めた」

しっかりと両手で銃を構え、コルクが入った銃口をお菓子に向ける。狙いが何かわからないが、パピヨンの瞳にはそのターゲットだけが映っている。

『…………』

――まるでレース前のような真剣な表情。そして、ぱぁんと音が鳴ってコルクが跳んでいき――。

パピヨン「あー!外れた!ちょっとおじさん!コルクも一個頂戴!え、ダメ?う〜……お兄さん!もっかい!」

『……あ、ああ。分かった分かった、もう一回だけな』

真剣な表情から一転、悔しそうな表情へ。コロコロと変わる表情を見てしまってパピヨンへの反応が遅れる。

自分でもスムーズすぎるくらいに百円玉をもう一つ渡し、パピヨンがまたチャレンジする。

パピヨン「ん、ありがと!よ〜し、集中集中……」

また表情が変わる。普段からパピヨンの真剣な表情は見ているつもりだが、こうやって改めて見ていると……やはりそのギャップに驚いてしまう。

少女の顔から、競争者への顔へ。パピヨンの静かな呼吸音が、こんなにも大きく聞こえてくる。

パピヨン「――――っ!」

ぱぁん。と、コルクが跳んで……そして、それにぶつかったお菓子の箱が棚から落ちる。

パピヨン「わっ……!やった!やったお兄さん見た見た!?すっごい綺麗に落ちてったよ!?アタシ射的の才能あるかも!」
220 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 22:37:27.89 ID:XYKyijZC0
自分の手を握って、嬉しそうな明るい表情でぴょこぴょこ飛び跳ねるパピヨン。いつもの見慣れたパピヨン、けど……さっき見たあの表情を思い出すと。

『…………ああ、見てたよちゃんと。凄いじゃないか』

パピヨン「でっしょ〜!ふふん、じゃあそんなお兄さんにはさっきとったお菓子をちょっと分けてあげよ〜」

ルンルン気分で店主さんから落とした景品のお菓子をもらい、自分に見せる。

……缶に入ったキャンディだった。他のお菓子と比べるとそこそこな重さがあるだろうに、本当に当たり所が良かったんだな。

パピヨン「缶に入った飴って珍しくない?だからなんか欲しくなっちゃったんだ〜、はいお兄さんに一粒!」

小さな掌に転がったキャンディ一粒を自分に手渡してくれる。

『……ああ、ありがとうパピヨン』

パピヨン「味わって舐めてよね〜?噛んだりしちゃダメなんだからね?」

――思えばパピヨンは相応に表情が豊かな子だ。明るい表情も、悲しい表情も、真剣な表情も……担当になってからより一層、それが顔に出ているウマ娘だ。

――――一緒にいて楽しいと言えば、きっと事実だろう。だからこそ改めて……その彼女の表情を見つめてしまった、自分は。

『……あっまいなこれ』

……暫くはあの表情が離れなさそうだ。
221 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 22:52:46.58 ID:XYKyijZC0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『そろそろ花火の時間だな』

パピヨン「えっ!花火まであるの!?」

狐のお面をかぶったパピヨンが嬉しそうな声でそう聞いてくる。右手には溶けかかったかき氷、そして左手には水風船。誰がどう見ても夏祭りを満喫している、そう思えた。

パピヨン「うっわ〜!どうしよどうしよ!ねえ今から場所取りに行く!?いい場所で花火見たいよね!?」

『いや、どうだろうな……最初から場所を取ってる人に取られてる気もするし……そもそも、ここの夏祭りならどこから見ても――』

パピヨン「むっ……じゃあそうだなぁ……』

自分の言葉に納得したのか、パピヨンがむむむと何か考えながら溶けたかき氷をストローで啜る。

パピヨン「…………えっと、じゃあさ」

……お、お兄さんと二人っきりで花火見たいな。ここ、人も多いし……で、デートなんでしょ?お兄さん。

恥ずかしそうにしながら、小さな声でパピヨンはそう言った。

『……その通りだな』

キミからデートだと言い出したんだろう、というツッコミはしないでおく。とにかく二人きりで花火が見たいというなら……叶えてあげるのが自分の役割だろう。
222 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 23:24:00.11 ID:XYKyijZC0
パピヨン「……よく見つけるねお兄さん」

『……人があんまりこなさそうな場所を見つけようと思ったら、案外すぐにな』

見つけた場所は夏祭り会場の裏手の部分、出店からはそこそこ離れているので人も中々来ないのだろう。

……その分、花火も少し小さくなってしまうだろうが。

『ほら、そこに座りな。ハンカチ敷くから』

パピヨン「え、あ、うん。ありがとお兄さん」

地べたにそのまま座らせるのもあれだろうと、せめてハンカチの上に。近くに何か腰を掛けれそうなものがあればよかったのだが……。

パピヨン「……あ、始まった!うわ、ちっちゃ〜!」

『……ごめんな、事前に場所を取っておけばよかったな』

パピヨン「あ、んもー違う違う!そんなしょんぼりしないでよお兄さん!全然気にしてないから!」

――遠くに花火が見える。音はだいぶ響いてくるが、その大きさはかなり小さかった。

……でも、久しぶりに花火なんて見た。この年になってから夏祭りになんて行く機会もなかったし、一人で行くつもりにもなれなかった。

『パピヨン、ありがとうな。キミがいなかったら……今日花火なんて見れなかったよ』

パピヨン「……えへ、そっかぁ。じゃあ、今日は一緒にありがとう、だね」

『――――そうだな』

彼女の隣に腰を下ろす。今日はなんだかとても疲れた……花火を見ながら、休憩しよう。

パピヨン「………………」
223 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 23:33:30.34 ID:XYKyijZC0
パピヨンの恋愛強さ:コンマ直下

コンマが高いほど滅茶苦茶告白までスムーズに、低いほど恋愛弱者すぎる。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/04(金) 23:36:49.81 ID:LtIfVSkQo
ヌッ
225 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 00:49:43.94 ID:vHOD/oG80
パピヨン「…………ねえ、お兄さん」

『ん、どうしたパピヨン……――』

パピヨンが、じーっとこちらを見つめてくる。花火ではなく自分を、目と目を合わせて、視線を逸らさず真っ直ぐと。

――レース前のような真剣さ、何か決心をしたようなその表情に。思わず息を呑む。

ドーン、ドーン……と花火の大きな音が。しかし、それも今は気にならない。


パピヨン「アタシ、今から大事な話があるんだけど――聞いてくれる?」


『…………もちろん、キミの話ならいくらでも』


――聞こう、彼女の話を。他ならぬシルヴァーパピヨンの話を。

226 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 00:55:11.65 ID:vHOD/oG80
パピヨン「初めて会った日のこと覚えてる?あの日、模擬レースでアタシが……6着くらいで終わっちゃった奴」

『ああ勿論覚えてるよ。あの日キミが模擬レースに出ていなかったら、もしあの日自分がレースを見に行かなかったら……自分とパピヨンは出会えなかったから』

どんな時でもあの日のレースは思い出せる。それだけ、自分の脳に焼き付いて離れない――魅了されてしまったシルヴァーパピヨンの走りを。

パピヨン「うん、本当にね……担当トレーナーとウマ娘の出会いはそんな奇跡の積み重なりだーって、誰かが言ってたけど本当にそう。アタシはね、そういうのあんまり信じてなかったけど……信じれるようになったよ」

『…………』

パピヨン「お兄さんがアタシのトレーナーだったから――アタシは今こうして走ってて、ライバルができて、色んなレースに出て、海も越えちゃって。勝って負けて、泣いて笑って、それでそれで……もっともっと走りたいなって思えて」

だからきっと、お兄さんがトレーナーじゃなかったらアタシは……トレセン止めちゃってたかもね。なんて、笑いながら語るパピヨン。

パピヨン「だから、さ――アタシ、いつからかずっと思っちゃってたんだけど――お兄さん以外がトレーナーとか考えられないなーって」

『――――そんな風に、思ってくれたのか?こんな新人の……トレーナーで、後悔はしていないか?』

パピヨン「……ぷはは!そんな風に思ってたら――ここまで来れてないよ、お兄さん」

――思わず、視界が滲む。

そうか、そうか――キミは、そんな風に思っていてくれたのか……パピヨン。

227 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 00:58:00.04 ID:vHOD/oG80
パピヨン「だからね……お兄さん」

ほんの一瞬だけ考えた後、パピヨンは真剣な表情から――――いつもの変わらない表情に戻って。

パピヨン「アタシはお兄さん以外のトレーナーなんて嫌、考えられないし考えたくない。そう思ってたら…………まず表情が好きになっちゃった」

『……え』

パピヨン「アタシのトレーニングメニューを考えてる時の真剣な表情とか、アタシの我儘をなんだかんだ聞いてくれる時の表情、真面目だけど結構ノリが良くて一緒にふざけてくれる時の表情も」

――ずっとずっとアタシのことを応援してくれて、アタシが間違えても失敗しても見捨てないでくれて。どんなアタシでも……受け入れてくれた。

パピヨン「お兄さんはトレーナーだから当たり前、だなんて片付けるのかもしれないけど――これ、普通に考えてヤバすぎるからね?」

『……そう、なのかも、しれないな』

パピヨン「うん。だから――――責任取ってよね、お兄さん」

そういうと、パピヨンは顔を赤くしながら――とても嬉しそうに、笑顔で。まるでようやく我慢しなくて済む、みたいな表情で。



――――お兄さんのことが大好きです。こんな我儘なウマ娘ですけど……付き合って、ください。


228 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 01:08:25.20 ID:vHOD/oG80
『――――』

パピヨン「………………」

――パピヨンは何も言わない。自分からの答えを待つように、願うようにこちらを見つめている。

…………好きという感情を向けられたことが、そもそも告白をされたことも――初めてで。思わず固まってしまう。

『……自分、は』

答えを出さないわけないはいかない、先延ばしにすることも許されない。それは彼女のこの想いを踏みにじることになる。

……パピヨンは担当ウマ娘で、自分はそのトレーナーで。

好きとか、付き合うとか、そんな関係は…………。

パピヨン「…………っ」

『…………パピヨン』


自分は、パピヨンの、ことを――――。



【貴方】は:コンマ直下

1-3 …………その想いには応えられない
4-7 ……"今は"応えることができない
8-0 ――言葉より行動で。断る理由なんて、どこにも…………。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 01:26:23.05 ID:i/apwZKPo
パピヨンがこんなにはっきり言えたんだお兄さんもたのむ………!
230 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 02:26:57.35 ID:vHOD/oG80
『…………申し訳ないけど、今はキミの想いに応えることは……出来ない』

パピヨン「…………っ。そっ……か、うん。そう、だよね」

自分の言葉を聞いて、パピヨンはぐしゃりを顔を一瞬だけ歪ませた後、また何でもないいつも通りみたいな表情で、笑った。

――違う、違う。待ってくれ、まだ話は……!

『パピヨン』

パピヨン「…………そうだよね、そうだよね!普通に考えてお兄さんがアタシと……なんてあるわけないよね!告白する前から考えてたけど、でもやっぱ……やっぱりさぁ……!ぐずっ……ぅ、ぅぁ……!」

『パピヨン、まだ話は終わってないんだ……パピヨン!』

パピヨン「ふぇぁ!?」

瞳に涙をにじませて、プルプルと震えて自分から目を逸らそうとするパピヨン――その肩をつかんで、無理やり目線を合わせる。

顔がぐちゃぐちゃで、今何が起こっているのか分かっていないパピヨンに――ちゃんと伝える。

『――今は、と言ったんだ。今すぐにキミの想いに応えることはできないと、自分は言ったんだ』

パピヨン「…………おに、いさん?」

『……自分とキミは、トレーナーと担当ウマ娘で、そういう関係は――まだ早いと、この担当の関係は、これ以上の関係になってはいけないと、自分はずっと……ずっと思っている』

パピヨン「…………っ」

『でも……でもだ!"俺"は――だからといって……気持ちをごまかしたりは、したくない』

体が熱い、心臓がドクンドクンと激しく痛い。この鼓動がパピヨンに聞かれたりなんかしたら――一生モノのネタにされてしまうだろう。

ただただ伝える、俺の本音を。トレーナーとしてではなく――――として。

『……もし、もしもキミがトレセン学園を卒業して。それでもまだキミの気持ちが……変わらなかったら』

パピヨン「ぁ……っ、うそ、うそぉ……!そんな、お兄さん……っ!」



『――――その時、改めてキミの気持ちに応えさせてほしい……パピヨン』



231 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 02:28:25.32 ID:vHOD/oG80
パピヨン「ぁ――ぁああぁあああぁあああああぁ……っっっ!!!」

――壊れたダムのように、パピヨンの目から涙があふれて零れる。パピヨンは抑えきれなくなってしまったように、胸の中に飛び込んできて……。

パピヨン「ばか、ばか、ばかぁ!お兄さんのバカ!勘違い、するじゃん!勘違いしちゃったじゃん!!!」

『……悪かった』

パピヨン「絶対に許さない、絶対に許さないから!もう一生、お兄さんは……アタシの我儘に付き合って、付き合ってもらうんだからぁ……!ぐす、うぁ、あああぁああぁぁ〜〜〜っっっ!!!」

『…………』

泣きじゃくる彼女の頭を、優しく撫でる。とてもよく手入れされた銀色の髪が、指の間を通り気持ちがいい。

パピヨン「もっと撫でてぇ!ぅぁ、ずびっ……うわぁあああああああぁん……!」

『…………なあ、パピヨン』

彼女に言われるがまま、頭を撫で続ける。

『キミは俺以外のトレーナーなんて考えられない、そう言っていたが……自分も同じだよ』

あの日、自覚した自分の本心。それがパピヨンと同じ想いだったことに――胸が高鳴り、嬉しくて嬉しくて堪らなかった。

『……俺だって、パピヨンのトレーナーが俺意外だなんて考えられない。キミのトレーナーの役割なんて、誰にも渡してやるもんか』

――――いつの間にか花火はもう止まっていて、だんだんと夏祭りの片づけが始まろうとしていた。

泣きじゃくっていたパピヨンはいつの間にか泣き止んでいて、そのまま一緒に今日のホテルへと戻っていった。

――お互いに手だけ繋いで、同じ歩幅で歩く。特に何も会話はなかったが……なんだかそれがお互いに、とても嬉しかった。
232 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 02:30:06.33 ID:vHOD/oG80
それじゃあ今日はこれでおしまいです、お疲れさまでした。

とりあえず安全に終わってよかったです。告白までお付き合いいただきありがとございました。
233 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 02:32:28.80 ID:vHOD/oG80
――――今後のパピヨンの様子は?:コンマ直下

コンマが高いほどべったり甘々いちゃいちゃ、低いほどいつも通り。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 03:22:26.86 ID:4pG5Qq+r0
ほい
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 08:51:47.10 ID:i/apwZKPo
おつ
これ絶対シル・ライ・マンティに気付かれるやつ〜
やっぱりお兄さんのバランス感覚素晴らしいよ、ここでパピヨンが恋愛よわよわ発動してたらまた違ったかも
236 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 15:00:30.19 ID:vHOD/oG80
コンマが高いので隙あらばイチャイチャしに行きます。無意識にも意識してでも。

今のパピヨンは攻めがとんでもなく強いです。守りは変わらないです。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 15:30:19.06 ID:RNIBnxwmo
大胆な告白と闘争心はウマ娘の特権
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 17:24:53.07 ID:XDgU+Seio
意識しても攻めが継続できれば最強…ってコト!?
239 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 01:46:21.21 ID:WWIxNlds0
――――エルムステークスを勝利し、飛行機に乗り夏合宿に合流する。

もっと札幌を観光したりゆっくりしてもよかったのだが、パピヨンの次の次走予定を聞けばその考えもどこかに行ってしまった。

『……チャンピオンズカップか』

12月に中京レース場で行われる1800mのマイル戦。今のパピヨンのスタミナであれば走り切ることは可能だろうが――勿論、チャンピオンズカップといえば彼女がいる。

――――ステラライム。去年のチャンピオンズカップでのレコード覇者。思えばあのレースからステラライムがダート最強だと言われるようになった。

『……連覇を狙いに行くだろう。ステラライムの適正的にはばっちりだからな』

――教科書のお手本のような完璧な先行策。前でレースを走り、最終コーナー最終直線で一気に外から抜き去っていく。それが、彼女の走りだ。非の打ち所がない、綺麗な走り――でも。

『だからと言って負けるつもりはない、パピヨンだってこのレースを選んだのは……彼女にリベンジをするためだろう』

チャンピオンズカップでうちの担当ウマ娘を勝利させるためにも、どちらが最強かをハッキリさせるためにも――気合を入れよう。自分は、パピヨンの担当トレーナーなんだから。
240 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 01:54:05.44 ID:WWIxNlds0
『――――ところで、だ。いつまで引っ付いてるつもりだ、パピヨン』

パピヨン「えぇ〜?お兄さん難しそうな顔してるから、アタシが癒してあげようと思って〜?」

……ニヤニヤ笑いながら、パピヨンは押し付けるみたいに自分の後頭部にそれを当ててくる。

『……年頃の女の子がそんなことしない方が良いぞ』

パピヨン「でもお兄さんアタシのこと好きでしょ?じゃあ良いじゃーん♪ほらほら、むぎゅむぎゅ」

――――この前の札幌でのあの出来事から。パピヨンはなんというか……こう、一層絡んでくるようになった。

人目を気にしてか人前ではやらないが、二人きりになると我慢してたぶんを解き放つみたいに、密着してきたりからかってきたり。

『…………とにかくダメだ。ほら、離れた離れた』

パピヨン「あ〜!もしかして照れてる?照れてるでしょ!ふふーん、お兄さんアタシ以外に彼女とか居たこといないもんね〜!」

そう言いながら頬っぺたをふにふにと触ってくる。はあ、あんなふうに答えてしまった責任か……こんなことトレセン学園の他のトレーナーなどに聞かれたら……。

…………案外大丈夫か?いや、けど流石に未成年だしな……。

『……そろそろトレーニングするから。準備してくれ』

パピヨン「ぷはは、んも〜しょうがないなぁ。じゃあ準備してくるね!お兄さん!」

……こういうところは素直で助かった。いや、まさかパピヨンがあんな……いや、でも。分からないでもないのか……?
241 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 02:05:16.16 ID:WWIxNlds0
シニア夏合宿最終日:安価直下

1 恋愛脳ウマ娘3人、ザワつく
2 自由安価


おやすみなさい!
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 05:06:27.06 ID:mxpb6tVwo
1

おつおつ
お兄さんの理性あんまり変わってなくて草
パピヨンは意識しても大胆になってすぐバレる…と
243 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 17:14:22.18 ID:WWIxNlds0
ライム「シルフィーさんどうしましたか?急に呼び出したりして……」

――夏合宿もあと少しというある日。シルフィーさんにLANEで連絡を受けて待ち合わせ場所に向かいました。何かレースごとで相談でしょうか……?

シルフィー「す、すみませんライムさん……その、実はちょっとお話したいことが……あ、マンティさんも呼んでます」

マンティ『――あ、こ、こんばんはライムさん』

シルフィーさんが持っているスマホの画面にはマンティさんの顔が映っていて、私が来たのを確認すると慣れない笑顔で笑ってくれました。

ライム「マンティさん!マンティさんも呼ばれてたなんて……あ、その脚は大丈夫なんですか?」

マンティ『は、はいぃ。そろそろトレセンに復帰しても大丈夫とお医者さんにも言われましてぇ……そ、その。リハビリの成果が想定よりも早く出たみたいで……』

ライム「本当ですか!?じゃあもうレースにも……?」

マンティ『い、いえいえ!トレセン学園で、またもう少しトレーニングを重ねてからになりますけど…………はい。それが終われば、レースにも……』

ライム「――――!」

――マンティさんがレースに戻ってくる。ようやく、ようやくトレセン学園で……彼女と!これはパピヨンさんにも知らせてあげましょう……!

……あれ、そういえばパピヨンさんがいませんね……?

ライム「シルフィーさん。パピヨンさんは呼んでいないんですか?」

シルフィー「そう!そうなんですよライムさん!今日はその……パピヨンさんについてお話がありまして」

244 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 17:15:16.24 ID:WWIxNlds0
マンティ『……?パピヨンさん、ですか?な、なにか……あったんですか?』

シルフィー「そ、そうなんですよマンティさん……!ライムさんならわかりますよね?その……エルムステークスから帰ってきたパピヨンさんが……な、なんだかその……!」

ライム「あー……」

手をせわしなく動かして何かを伝えようとしてくるシルフィーさん。ええ、ええ分かります。分かりますよシルフィーさん……!

ライム「…………パピヨンさん、何かありましたよね。絶対」

マンティ『へっ?』

そう、エルムステークス連覇を見事に決めて帰ってきたパピヨンさんは……なんだか変わっていた。

何が変わったか?というと……ちょっと、具体的には指摘できません。けど確実に……確実に何かが変わった!そう断言できます!

マンティ『な、何があったんでしょうか……?レースはいつも通りのパピヨンさんの……いえ、今までよりももっと早く……な、なってましたけど』

シルフィー「なんというか……ちょっと余裕が出てきたというか。甘く……?なったと言いますか」

ライム「…………誰かに訊いてみますか?」

シルフィー「……そうしましょうか!」

というわけで誰かに訊いてみましょう。パピヨンさんに何があったのか……!


どうしましょう……:安価直下
1 パピヨンさんに直接訊きましょう!
2 パピヨンさんのトレーナーさんに!
3 ……おやあれはパピヨンさんとそのトレーナーさん……。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 17:28:35.97 ID:lsnWqxpDO
2
246 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 18:20:23.32 ID:WWIxNlds0
『ん、やあシルフィーにライム……それにマンティまで?どうしたんだ?』

パピヨンさんのことを一番近くで見ているトレーナーさんなら、きっと何があったか知っているでしょう!

シルフィー「こんばんはパピヨンさんのトレーナーさん!すみませんちょっとお聞きしたいんですけど……」

こうして私たちの疑問を訊ねてみます。エルムステークスの後、帰ってきたパピヨンさんの様子がなんだかおかしい気がする……と。

…………!なんだかトレーナーさんの表情が硬くなったような気がします!これはなにか知っていそうです!

ライム「もし何かご存じでしたら教えていただけませんか?実はそれが気になって気になって……」

マンティ『わ、私もお願いします!さ、札幌で何かあったんですか!?』

『…………そう、だね。うーんパピヨンに何があったか……』


トレーナーさんの回答:安価直下
1 『…………いや?特に何もなかったよ?』
2 『……パピヨンとちょっと、色々と約束をしたというか……ええと』
3 『……ふふ、何があったと思う?』
4 自由安価
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 19:04:27.31 ID:mxpb6tVwo
2
248 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 20:11:42.79 ID:WWIxNlds0
『……パピヨンとちょっと、色々と約束をしたというか……ええと』

シルフィー「色々と……!」

マンティ『や、約束……!?』

『そ、そうなんだ。こう……ご褒美……みたいな……』

ライム「ご褒美っていったい何なんですか!」

――気まずそうに目線を逸らすトレーナーさん……こ、これ絶対ご褒美じゃないです!しかしこのまま押せばきっと――!

パピヨン「――ねえ、ちょっとなにお兄さんに集まってるの」

――が、その目論見はどうやらダメになってしまいそうでした。

ライム「あ……ぱ、パピヨンさん……」

パピヨン「ライムにシルフィーに……あ、マンティも。三人でお兄さんに用事?」

ムスっとした顔のパピヨンさんが、私たちからトレーナーさんを守るように横に移動しました。

……流れるように彼の脚に尻尾がするすると絡みつきました。

パピヨン「…………」

マンティ『そ、そんな用事ってわけじゃなくて……う、うぅ……』

シルフィー「ちょっとお話がしたかっただけなんです!そんなパピヨンさんを怒らせるみたいなつもりじゃ……」

パピヨン「……別に怒ってないんですけど」

――――これはいけません。三人そう思ったみたいで、トレーナーさんに謝罪をした後そそくさとその場を立ち去りました。

――――ぜ、絶対パピヨンさんとトレーナーさんで何かあったやつです……!それにトレーナーさん、すっごいパピヨンさんの匂いが染み付いてました……!

……な、何があったんですか……!?ま、まさかそういう……え、えっ……!?
249 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 20:22:08.20 ID:WWIxNlds0
『……助かったよパピヨン……パピヨン?』

パピヨン「………………」

……パピヨンが腕にくっついて離れない。

パピヨン「ライムもシルフィーもマンティも集まってお兄さんと喋ってて……ちょっと、モヤモヤしちゃった」

『えっ?』

パピヨン「アタシのお兄さんなのに……あの三人がそんなことするわけないのは分かってるけど、でも……」

『……ごめんな、心配させちゃって。でも大丈夫だから』

彼女の頭を撫でる。ぁぅ、と小さな声が漏れて、気持ちよさそうになでなでを受け入れている。

パピヨン「…………やっぱり大々的に公表した方が良いと思うんだけど」

『だからまだ自分とキミはそういうのじゃないって……あの、パピヨンさん、力が……力が強い!』

パピヨン「…………♪」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 20:27:25.54 ID:mxpb6tVwo
独占欲!
251 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 21:03:02.70 ID:WWIxNlds0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

パピヨン「――っやぁああああああああああ!!!」

夏合宿を終え、パピヨンの走りにはますます磨きがかかっていた。存分に鍛え上げられた足腰は力強く、小さな体躯からは想像もできない瞬発力。

――あとはこの走りを持続できるかどうか。そしてどれだけ――パピヨンに気持ちよく走ってもらえるか。

『よし、じゃああと一本走ったら休憩にしよう。パピヨン』

パピヨン「ふぅううう……ん、オッケー!」

その返事とともにパピヨンはまた勢いよく駆けて往く。手元のストップウォッチを見ると……うん、やはり明らかに速くなっている。

『…………』

……もっともっと頑張ろう。あの日、想いを告白してくれた彼女に呆れられないように、精一杯尽くそう。

…………九月だというのにまだまだ蒸し暑い。12月までまだまだ時間はあるが――油断すると一瞬だ。
252 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 21:10:05.10 ID:WWIxNlds0
チャンピオンズカップ前イベント1:自由安価下2まで。




ちょっと離席します。パピヨンのイベントも残り数回です。早いような長いようなそんな気分ですね。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 23:00:11.76 ID:mxpb6tVwo
マンティと会って話す
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 23:07:31.43 ID:Io45ylbw0
世間のライム-パピヨン強さ論争を眺めるトレーナー
255 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 23:31:58.56 ID:WWIxNlds0
ありがとうございました。すみません寝ます。
256 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 23:37:02.04 ID:WWIxNlds0
お疲れさまでした。

お兄さんは告白されてからできるだけ意識しないようにしようと必死です。今まで担当ウマ娘とトレーナーだった関係が変わっちゃったので。
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/07(月) 01:25:42.11 ID:3hDTIP3Qo
おつ
パピヨンと立場逆転かな?お兄さん
258 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/07(月) 12:00:54.85 ID:Rde5myqmO
『トレセン卒業まではこっちも我慢しなくちゃ…パピヨン自分のこと好きだったのか…』

パピヨン「お兄さんとほぼ両想いだしもう今まで我慢してたこと全部やっちゃお!お兄さんも嬉しいもんね!好き!」

立場が逆転してんですよね。
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/10/08(火) 04:59:43.17 ID:IbmTnT040

      提  供


   ボートレースからつ


 
260 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 00:03:00.09 ID:Gr51D2Pw0
パピヨン「えっ!マンティそろそろトレセンに戻ってくるの!?」

マンティ「は、はい……!お医者さんからももう大丈夫だと言われまして……あ、歩くのももう一人でも、へっちゃらなんです!」

――病室のベッドの上で、マンティは誇らしげに力こぶを作って見せた。普段のマンティならしないような仕草に、ちょっと笑っちゃう。

そっか、そっかぁ……マンティ。復帰するんだぁ……。

パピヨン「じゃあ、早くても来年とか?マンティがレースに戻ってくるの」

マンティ「そう、ですね。もう少し早くトレセンに戻れていたら12月のレースに出走できるくらいにはなっていたかもしれませんけど……う、うぅ……」

悲しそうに俯くマンティ。ああ、そっかなるほどね。

パピヨン「今年のチャンピオンズカップ。アタシとライムが出走するもんね。マンティ、出たかったんだ?」

マンティ「…………はぃ。その……一度は、G1の舞台を三人で……走れたらと思っていたんですけど……」

……またなんかネガティブになってる。意味わかんない。けど――。

パピヨン「こらこらなーに言ってるの!アタシとライムとマンティがもうG1で一緒になる機会はないみたいな言い方しちゃって」

――ずっとずっと、ずーっと走り続けてたら。絶対何時かは同じ舞台で競い合う。ならその時までアタシは――。

パピヨン「――言ったでしょ。アタシは、マンティの憧れも吹き飛ばしちゃうくらい最強のウマ娘であり続ける。そしてそれにマンティが挑む」

マンティ「!」

パピヨン「これ、去年の約束。ちゃんと覚えてるから、今日までリハビリ頑張ったんでしょ?」

261 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 00:06:13.96 ID:Gr51D2Pw0
マンティ「は、はぃ……はい!ご、ごめんなしゃい!」

パピヨン「んま、アタシとしても一緒に走りたいって気持ちはあるし、ライムの方にも頑張ってもらわないと……今度のレースでボコボコにしちゃって引退とかしちゃったらどうしよ」

いや、まあないだろうけど。それくらい圧倒的な勝利で分からせちゃう気持ちはあるし?

マンティ「……ふふっ。パピヨンさんは、変わらないですね」

パピヨン「とーぜん!アタシは何時だって変わらない!」

ピースサインでアピールなんかしちゃって。それに「おー……」とパチパチ拍手の音。

……と、なんだ自慢げに言っちゃったけど。アタシだって変わる、トレセン学園に入学してから今に至るまでアタシが変わらなかったことなんてない。

どれもこれも全部お兄さんのせいで、お兄さんのおかげ。

パピヨン「…………じゃあアタシ次のレース頑張るからね。チャンピオンズカップ、応援してね〜?」

マンティ「そ、それはもちろんです!あ、いやでもライムさんのことも……ど、どうしましょう……!ふえぇ……」

パピヨン「あー分かってる分かってる。勿論ライムも応援してあげてね?」

アタシだけ応援独り占めとかちょっとズルだしね?
262 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 00:32:19.37 ID:Gr51D2Pw0
『…………』

トレーナーの業務の一環として担当ウマ娘が世間一般的にどのように思われているかの調査がある。これは担当ウマ娘へ危害を加えるような発言などがないかのチェックの一環として行われているもので、殆どがエゴサーチのようなものになっている。

――雑誌やテレビでは、少し早いがチャンピオンズカップの話題がちらほらと出ている。時期的にはスプリンターズステークス、少し先の菊花賞や秋華賞、天皇賞秋の話題が多いだろうに。

"――国外を制したウマ娘と国内現役最強のウマ娘、ダート二大ウマ娘激突!!"そんなタイトルの記事が目に滑り込んでくる。

シルヴァーパピヨン、そしてステラライム。どちらが勝つのか――そしてどちらが強いのか。そんなレースにおいて鉄板のような話題が今世間をにぎわせていた。

SNSなどを眺めてみてもどちらかを応援してるような書き込みや、どっちも応援しているという書き込みなど……勿論、ファンが多くなれば多くなるほどアンチというものも切っても切り離せない存在ではあるが……。

『まあ、それも当然だよな』

――では、今現在パピヨンとライム、どちらが世間的に優勢かというと――。


どっちに今軍配が:コンマ直下
コンマが高いほどパピヨン優勢、低いほどライム優勢。真ん中で同じくらい。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/09(水) 00:54:18.71 ID:KqjBN7hDO
はい
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/09(水) 07:33:25.29 ID:Hq49Sn3ho
海外G1の威光や!
265 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 18:38:34.55 ID:Gr51D2Pw0
ごめんなさい昨日寝落ちしてそのまま外出てました……再開します。



「シルヴァーパピヨンでしょ今回は。あのドバイのレースを見たら確信できる」

「パピヨンちゃんならきっと国内G1も勝てる!!」

「もうあの逃げにはステラライムも流石に無理でしょ」

――どうやら今の段階ではパピヨンの方が優勢だったみたいだ。SNSの書き込みを見て見るとやはりその要因にはドバイでのG1勝利……それが影響しているようだった。

だがその一方で「流石にステラライム相手にこの距離はスタミナ切れるでしょ」「海外の砂が合っていただけで日本で勝てるわけじゃない」という意見も見える。

……勿論言っていることの意味は分かる。パピヨンは生粋のスプリンター。初めて会ったあの日からスタミナには悩まされ続け、ステラライムと戦うときはいつも最後の最後で躱されている。

『……でも、だ』

それが事実だとしても――自分はそれに勝てるようにトレーニングを考えたつもりだし、自分の考えにパピヨンは乗ってくれている。

――――最高のライバル"青の流星"ステラライム。

ぜひ見てくれ。その流れる星よりも先に瞬く――蝶の羽ばたきを。そしてその頃にはもう、どちらが最強かなんて議論するまでもないだろう。
266 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 18:40:36.93 ID:Gr51D2Pw0
パピヨン「お、に、い、さ、ん!」

放課後。トレーナー室にパピヨンが突撃してくる。勢いよく開かれた扉から駆け足でこちらに向かってきて、ニコニコした可愛らしい表情をこちらに見せつけてくる。

パピヨン「今日のアタシ、いつもと違います!何が違うでしょうか!」

『突然だないきなり』

さあ当ててみて当ててみて!と、その場でくるりと一回転……いや、パっと見だと何が変わっているのか何もわからないんだけど……。

パピヨン「…………じー」

『……』

…………ちらりと、尻尾を見る。

『尻尾に使ってるシャンプー……じゃないな、オイルがいつもと違う?新しい奴か?』

パピヨン「えっ!?なんでわかるの!?キモーい!!!」

『キミなぁ……』

折角当てたのに何でそう言われなくちゃいけないんだ。

パピヨン「好きなブランドの最新作なんだー、尻尾の艶とか毛並みもいつもよりちょっと違うでしょ?あとほら、匂いも違うし」

と、言いながらすりすり脚に尻尾をこすりつけてくる。まあ、確かにこうして近くで見ると結構違うな……匂いも甘いというより、スッキリした匂いだ。

パピヨン「…………えへ、お兄さんこんなところまで気づいちゃうんだ……❤アタシのこと大好き過ぎるでしょ〜❤」

……ニヤニヤこっちを見てくる瞳から逃げるように、視線を逸らす。
267 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 18:57:04.15 ID:Gr51D2Pw0
以前募集して書くと言った小ネタですけどちょっとムリそうなのでここで消化させてください……全部書けなくて申し訳ないです。



チャンピオンズカップ前イベント2:安価下2まで。

1 パピヨンが【貴方】にウマ耳マッサージされる話
2 パピヨンがお兄さんが買った抱き枕に嫉妬する話
3 煽りすぎてちょっと分からせられるパピヨンの話
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/09(水) 19:08:53.21 ID:2j+n/QXuo
1
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/09(水) 19:23:20.62 ID:KqjBN7hDO
2
270 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:14:39.97 ID:XYThoUOX0
パピヨン「かり、かり、かり……かりかり、かきかきかき……」

パピヨン「ぷぷ、お兄さんほんっとすぐ情けない声出ちゃうね〜?もうアタシ以外の耳かきじゃ満足できないよわよわざこざこのお耳になっちゃったね〜?」

パピヨン「……将来はお兄さんのお耳はぜーんぶアタシがお掃除してあげちゃうからね❤」

パピヨン「こら、動かないでお兄さん!あ、もうっ……!」

パピヨン「――ふ〜っ……❤」

パピヨン「はーい、アタシのお耳ふーふーでお兄さん黙らせちゃいま―す❤はいはい、もうちょっとで終わるから、我慢我慢だよ、お兄さん?」
271 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:15:24.21 ID:XYThoUOX0
『…………』

何時からだろう、月に数回パピヨンに耳掃除をしてもらうようになったのは。

パピヨンから数回耳かきをさせろとお願いされて、言われるがまま耳を貸し……それが習慣化されているこの状況。不健全だと思ったことは――勿論ある。

しかし、事実気持ちが良いし睡眠も取れる。耳かき後のパピヨンの機嫌がすこぶる良いのもあって――止めようと言い出す機会が中々ない。

『……よし』

読んでいた本を閉じる。実は以前からパピヨンに対して何かお返しができないかと考えていたところこの本と出会った。

……自分が満足させてあげられるだろうか。パピヨンが嫌な気持ちになったらどうしようかと考えることもあったが――まあ、パピヨンなら許してくれるだろう。

――――ウマ娘にとって耳というのはとても重要な部分だ。感情表現や周囲の警戒、レース中も走る音一つで位置をキープしたりなど、用途は多岐に渡る。

――つまり、それだけ凝っているということだ。

272 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:15:53.84 ID:XYThoUOX0
パピヨン「へっ?お兄さんがマッサージしてくれるの?」

『ああ、この前も自分の耳を掃除してくれたしそのお礼と思ってくれ。これでも色々と勉強したんだぞ?』

パピヨン「あー、確かにウマ耳って結構疲れとか溜まってるっていうよね?だからマッサージで揉み解そう〜ってこと?」

ちょっと前に友達がお店でやってもらったって言ってたかも。と、ぼんやりパピヨンが喋る。

……まあ、そういう専用のお店ほどではないが、そこそこいい線行くんじゃないかと自負している。

パピヨン「アタシも一時期極めよう!って思ってた時はあったけど、自分でやってもなんかよく分かんないし、尻尾のお手入れする方が気分も上がるから結局全然なんだよね〜……へ〜、お兄さんアタシのお耳マッサージしてくれるんだ?」

ニヤニヤと上目遣いで見つめてくるパピヨン。へ〜?ふ〜ん?と、まるでバカにするみたいな表情で。

パピヨン「もしかして〜普段アタシに耳かきでよわよわにされてるから仕返しってこと〜?ぷ、ぷぷぷ!お兄さんのそういうところ、良くないと思うな〜?」

『……別にそんな意図はないさ。いつもキミに手入れさせてばかりだと、不公平だと思ってな』

パピヨン「ぷっ、ぷはは!うんうんそうだね〜!お兄さんばっかり気持ちよくなってちゃアタシが損だもんね〜?でも〜……アタシそんな気持ちよくなるかな?」

アタシがウマ耳マッサージあんまやんなくなっちゃったのも、自分でやってあんまり気持ちよくなかったからなんだよね。なんかくすぐったいだけって感じ。

……そ、そうだったのか。じゃあパピヨンにはマッサージ効果がないのかもしれないな……。

パピヨン「でも、お兄さんがせっかく覚えてくれたなら、一回くらいやらせてあげよっかな〜。はい、じゃあどうぞ!」

そう言って、パピヨンは自分の膝の上にちょこんと座り。右耳に何時も付けている銀色のパピヨンマスクを外す。

……ふわふわとしていそうな銀色のウマ耳が目の前にある。心を落ち着かせて、まずは右耳から――。

パピヨン「お兄さんはアタシになっさけなーい声を出させて楽しみたいのかもしれないけど、ちょっとくすぐったいだけでそんな声なんてひゃんっ!?」

273 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:16:36.27 ID:XYThoUOX0
『!?』

パピヨン「へっ……?やっ、ぇ……?」

――右耳の根元の部分を優しく触った瞬間、パピヨンの体がビクン!と揺れ、可愛らしい声がトレーナー室に響いた。

なっ、ぱ、パピヨン……?

『だ、大丈夫かパピヨン!?い、痛くなかったか!?』

パピヨン「ち、ちがっ……!こ、これはその、ちょっとびっくりしただけだから!ほ、ほら続けて続けて!」

……ほ、本当に大丈夫なんだろうか。しかし、パピヨンが大丈夫だというなら大丈夫か……?

……気を取り直して右耳を触る。

パピヨン「んっ……」

耳の根元を親指で軽くぐりぐりと押してあげる。円を描くように揉み解すと、モジモジとパピヨンの体が動き甘い声が漏れてくる。

耳の根元を揉み解した後、次は耳全体を刺激させていく。親指と人差し指を使ってぎゅっ、ぎゅっ……と左右から耳を押しつぶす。

パピヨン「ふっ、くぁ……!ひぅぁ……!」

あとはそうだ、確か……。

『……声、我慢しなくていいからなパピヨン。パピヨンの耳、ふわふわしてて気持ちが良いな』

パピヨン「ひゃぁ!?み、耳元で喋んないでぇ……!ひぅ……!」

いつも自分にしてくれているみたいにパピヨンの耳元で囁いてあげる、うん。だいぶいい感じだ。

274 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:17:14.67 ID:XYThoUOX0
――右耳の先っちょをつまんで、真上に軽く伸ばして伸ばして……ぺたんと折り畳み潰す。

パピヨン「んっ、んぁ、ふぁ……ぃ……っ!」

――ぎゅーっ、ぺたん。ぎゅーっ……ぺたん。気持ちいいか?

パピヨンの耳全体がぽかぽかとあったかくなってくる。次は軽く爪を立ててこしょこしょと擽ってみたりする。

――こしょこしょ、こしょこしょこしょ。

パピヨン「ぁああぁあぁあぁ〜〜〜っっっ❤❤❤」

ふにゃふにゃの声と一緒にパピヨンの体重が自分の胸にかかってくる。よし、問題なさそうだな。

次は左耳だ。先ほどと同じように解して押して潰して擽って……とにかく耳を揉みくちゃにしてあげよう。

パピヨン「ぁ……!やっ、それ、やだっ……っ!ぃ……んっ」

パピヨン「にゃ……ぁ……❤ふぃ……んっんぅ、ひゃぁ……!」

もみもみ、ぎゅっぎゅっ……ぺたんぺたん。

かりかり、こしょこしょ、ぽしょぽしょ…………。

――――ふーっ。

パピヨン「っっっ!?!??!?!❤❤❤」

275 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:17:45.43 ID:XYThoUOX0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『……よし、終わりだパピヨン!…………パピヨン?』

マッサージが終わりパピヨンに声をかけるが、反応がない。

パピヨン「…………っ、ぁ……?」

眠ってしまっていたか……?と思い不安になったが、どうやら意識はあるようだった。

……完全に自分に体重を預け、目元も口元もとろんと蕩け切ったパピヨン。口からは少し涎も垂れてしまっていた。

近くのティッシュ箱からティッシュをつかみ、パピヨンの口元を拭ってあげる。

パピヨン「………………」

『……大丈夫か?パピヨン?おーい……?』

――――結局、パピヨンの意識がはっきりしたのは十分ほど経ってからだった。

意識を取り戻したパピヨンは顔を真っ赤にしながら何か大きな声で怒り、ぷんすことトレーナー室を飛び出してしまった。

……もしかして嫌だったか、と不安になったが……。

パピヨン「………………お、お兄さん。その、あの……あ、あのさぁ……」

――――後日、モジモジと恥ずかしそうにしながらもう一度マッサージをして欲しいとお願いされて。その不安も吹き飛んでしまった。
276 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:19:39.91 ID:XYThoUOX0
凄い時間かかっちゃいましたけど今日はこれで終わりです。お疲れさまでした。

次更新は抱き枕に嫉妬する話です。


パピヨンの耳はもう後戻りできない。
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