瑞鶴「シャッフルクエスト」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:25:24.58 ID:wIRZwWrO0
【艦これ】触ってねえよテキサスクローバーホールド極めるぞ -残穢-
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1609594020/

武蔵がチャリで来た 〜チャリで来とらんやないかいサマータイムイェイイェイウォウウォウ〜
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1652011145/

加賀「乳首相撲です」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429706128/

【艦これ】ウンコマン あるいは(提督がもたらす予期せぬ奇跡)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431856590/

時雨「流れ星に願い事」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464825792/

【艦これ】居酒屋たくちゃん〜提督のクソ長い夜〜
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1468896662/

磯風「蒸発した……?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1477871266/

【艦これ】加古ちゃん空を飛ぶ、めっちゃ長く飛ぶ、すごい
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1479816994/

鈴谷「うわ不思議の国こわい、キモい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484788439/

【艦これ】ヒトミとイヨの恰好がスケベなので
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493211800/

【艦これ】ウキウキ!!首相の鎮守府訪問!!のようです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511697940/

時雨「静岡グレーゾーン連盟」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1518501606/

【艦これ】鎮守府微震!!五歳児と化した提督!!パワフル全開ですよみさえさーん!!
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546267221/

夕立「ボ、ボコフェス連れてってっぽい!!!!!!!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1566821566/

熊野「裏世界ハンティング」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1574681916/

叢雲「地獄の鎮守府」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1597493549/

【艦これ】出張!!艦娘専門店のようです
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1601813278/

カンムス観察バラエティモニタリング
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1676189252/#google_vignette


エンド・オブ・ジャパンのようです ※連載中のコラボ作品(◆vVnRDWXUNzh3作)
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1657376096/



艦これ×天華百剣 編

川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!!
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494169295/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520554882/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第二章【天華百剣】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528764244/

『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 幕間
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531108177/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第三章【天華百剣】
https://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1537917602/

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1552399367/

【艦これ】『Last one week & Epilogue』【天華百剣】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1554717008/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1719671124
2 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:28:54.66 ID:wIRZwWrO0
ジャンルの好みは分かれるにしても、ゲームが嫌いって奴ぁ見たことがねえ
ゲーム機を持っていなくても、スマホ一つありゃ基本無料で幾らでも楽しむことが出来る


( T)「うわ全然水着シロコでねえわ」


ガチャってのはつくづくアコギな商売だ。下手すりゃゲーム機買った方が安いまである。なーにがちょっと時間もらうねだちょっとどころじゃ無い量の石が持ってかれとるんじゃこっちは


瑞鶴「提督さん!!こんなの出てきたんだけど!!」

( T)「瑞鶴ちゃん水着シロコが出てこないんだけど」


今しがた扉蹴飛ばして入室した五航戦の瑞鶴なんかゲーム好きの筆頭だ。ずっとイカばっかしてる。トライストリンガー使うのは早々に諦めていた
さて、『こんなの』と勇んで持ち込んだのは、ヤニに染まったスーファミみてーな色したヘルメット型ゴーグルデバイスだ
今はVRだのなんだのと没入型のゲーム機が台頭しているが、それにしては少々古臭く感じる


( T)「何それ?バーチャルボーイ?」

瑞鶴「バーチャル……?」

( T)「世界初の立体ゲーム機だけど?」

瑞鶴「へぇ〜、おじさんはそういう認識になるんだ」

( T)「お前は?」

瑞鶴「ナーヴギアかな」

( T)「ナーヴ……?」

瑞鶴「SAOだけど?」

( T)「竿……?」

瑞鶴「オタクの癖にソードアートオンライン未履修なの?」

( T)「ああ……なんか、名前だけ聞いたことあるわ」

瑞鶴「オタクの癖に……」


オタクが何でもかんでもアニメ観てると思うな
3 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:30:06.64 ID:wIRZwWrO0
しかしバーチャルボーイと言ってみたものの、形状は似て非なるものだ
ナーヴ某とやらがどんな見た目なのかは知らんが、わかりやすく例えるならば地球防衛軍のヘルメットと言ったところか


瑞鶴「これが四つ出てきたんだ」

( T)「そんなに」


受け取ってみると、安っぽいプラの質感に反してズシリとくる重みを感じる
軽く観察してみたが、ソフトなどの挿入口は見当たらないものの、電源ケーブルの挿入口はある
ゴーグル部はVR機器と同じくヘッドマウントディスプレイとなっており、耳元にはスピーカーが内蔵されている
映像を視聴するだけなら十分な機能だが、ゲームをするにはもう一つ必要なものが足りていない


( T)「コントローラーは?」

瑞鶴「それがさぁ、いっくら探しても見つかんなかったんだよね」

( T)「ふーん……」


まぁ、廃村になってしばらく経った場所だ。こういうジャンク品の一つや二つ珍しくはない
大抵はゴミだが、稀にお宝や曰く付きの品が出て来ては一騒動巻き起こす
『こんなの』も、その類であるかもしれない。何かヒントというか、安全な物である確信が欲しい


瑞鶴「あ、でも説明書はあったよ」

( T)「それをはよ出せや」

瑞鶴「表紙だけ」

( T)「中身????????え????????」


瑞鶴が取り出した小汚い紙切れを受け取ると、英字のタイトルと、製造年らしき『since 1988』の文字


( T)「えー、『Dr.Wondertainment…………」



( T)「捨てよう」

瑞鶴「即決!?」



ダメなやつだこれ
4 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:30:39.85 ID:wIRZwWrO0





【瑞鶴「シャッフルクエスト」】





( T)「燃えないゴミに出す」

瑞鶴「待ってってば!!こんな面白そうなオモチャを一回も遊ばないで捨てようっての!?」

( T)「うん」

瑞鶴「うん!?」
5 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:32:49.99 ID:wIRZwWrO0
( T)「ええか瑞鶴。世の中にはな、手ぇ出したらアカンもんが三つある。一つ目はヤミ金、二つ目はクスリ、三つ目がワンダーテインメント博士製のオモチャや」

瑞鶴「ヤクザのシノギに並ぶほどヤバいオモチャなの……?」

( T)「大阪のマル暴が手ぇ出されへん分余計にヤバい。と言うわけで捨てます」

瑞鶴「待ってぇ〜〜〜〜〜〜…………」


プルートゥ戦前のアトム1.6倍の力(体感)でTシャツの襟を引っ張られる。縫い目が耐えきれずビリビリ破けておっぱい丸出しになった


(#T)「やめろや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

瑞鶴「一回だけ!!一回だけ遊ばせてよぉ〜!!」

(#T)「そうやってクスリから抜け出せなくなるって保健の授業で習うやろが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

瑞鶴「ゲームなら健康被害ないでしょ!?提督さんだってタバコ吸ってんじゃん!!」

(#T)「健康被害だけで済むんならヤクザ案件に並べねえんだよ!!!!!!!Dクラス職員になりてえのか!!!!!!?????」

瑞鶴「何それ!?」

(#T)「使い捨ての消耗品軍団(エクスペンダブルズ)だよ!!!!!!!!!」


遂にベルトまで掴み始めた。バックルがぶっ壊れてズボンが破かれパンツ丸出しになった


(#T)「やめろや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

瑞鶴「じゃあ考え直してよ!!オバケが関わってんなら提督さんが何とかしてくれるでしょ!?」

(#T)「そんな単純に済むんだったら財団で管理なんてしてねーんだよ!!!!!!!!!オブジェクトクラスKeterだったらどうすんだよ!!!!!!!!!」

瑞鶴「それが何なのかわかんないけど筋肉で解決してよ!!!!!!」

(#T)「だかっ……パンツはやめろ!!!!!!!!!!!!」
6 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:34:57.57 ID:wIRZwWrO0
このままだと執務室でスッポンポンどころか最終的に皮も筋肉も剥がれされて内臓ボロンしてしまう
既にもう手遅れな気がしないでもないが、とりあえず一旦落ち着いて話をしよう


( T)「ハァ……あのな、お前もここに来て長いだろ?ここがどういう場所かもちゃんとわかってるだろ?」

瑞鶴「わかってるわかってる」

( T)「こういう得体の知れないモンってのは得てして、トラブルを、巻き起こす、原因に、なる。わかるかねミス・グレンジャー?」

瑞鶴「スネイプ先生?」

( T)「ゲームならSwitchプレステハイエンドPC、なんならVR機器まで揃ってるだろうが」

瑞鶴「ありがとうございまーす」

( T)「捨てて良いな?」

瑞鶴「ダメ」


この子はホンマにもぉ〜……


瑞鶴「せっかく見つけたんだからせめて起動するかくらい確かめようよぉ〜!!」

(;T)「触らぬ神に祟りなしっつーだろうが……タダでさえイフリート入り七輪やら物語に引き込む生きた本やらエイリアン化する10センチ砲ちゃんやらパズズ像やら総理大臣やら厄介セールスクソ女やら貞子やら巫剣やらが舞い込んでくるのに、わざわざトラブルの種を芽吹かせんでもよぉ……」


自分で言っててなんか可笑しくない?って思っちゃうくらい色々あった。世界ふしぎ発見の可能性がある


瑞鶴「たまには我儘叶えさせてよぉ〜……この前だって霰に付き合ってあげたんでしょぉ〜……」


それを言われると弱い


(;T)「……」


いやでもSCP常連のオモチャかぁ〜…………
7 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:36:20.30 ID:wIRZwWrO0
瑞鶴「お願い!!この通り!!」


パンと両手を合わせ拝まれるが、幾らなんでもリスクがデカい
そりゃ、過去には熊野と秋月を裏世界に連れてったこともあるが、『対処法』ってのをちゃんと用意した上での同行だった
過去の事件だって、問題が起こってしまったので仕方なく対応したに過ぎない
だが今回は、『わざわざ薮を突きにいく』ようなものだ。そこから飛び出すのが必ずしも蛇だけとは限らない
勿論、何も起こらない可能性だってある。この場所でそう考えるのは、楽観が過ぎるがな


瑞鶴「……」

(;T)「……あー、わーったわーった!!一回だけだぞ!!」


結局、オヤツを前にじっと堪える子犬みてーな目に当てられて根負けしてしまった
いつか身を滅ぼすと知っていても、どうしても甘やかすのをやめらんねえんだ。すまねえ叢雲、あと頼む


瑞鶴「やりぃ!!さっすが提督さん!!話がわかるぅ!!」

(;T)「遺書だけ……書いとけ……」

瑞鶴「わかった!!」


さっきから何もわかってねえよこいつ


瑞鶴「じゃあ後でね!!五十鈴と初月も呼んでおくから!!」

(;T)そ「おいちょっ待て!!!!!!!!!!人数増えるのは聞いてn」
8 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:37:34.12 ID:wIRZwWrO0
〜お夜〜 デンデン!!!!!!!!!!!!


場所は娯楽室。ド田舎にあるこの場所で退屈しないように大枚叩いて色々と遊び道具を揃えてある
どうして経費で落とせないんだろう。福利厚生だろ。ダーツライブの筐体くらいポンと買うてくれや
遺書を書きながら待ってたら、寝巻き姿の五十鈴と初月がお菓子と飲み物を手に訪れた


( T)「……話、聞いてる?」

五十鈴「テンションひっく」

初月「面白そうなオモチャを見つけたとしか聞いてないが」

( T)「もう一つ質問いいかな?ワンダーテインメント博士って知ってる?」

五十鈴「いいえ。初月、アンタは?」

初月「僕も知らないな」


ダメだ危機意識を煽れない


( T)「なんかあったら……ごめん……」

五十鈴「やだ何怖いんだけど……」

初月「ゲームをやるんだろう?そんな不安がるような代物なのか?」

( T)「うん……」

初月「どうする五十鈴?最悪、瑞鶴をシバくのも視野に入れとくべきと思うが」

五十鈴「そうね。きっとそこのゲロ甘おじ様は押し切られたんでしょうし、いざとなったらシバきましょうか」


悪い方に思い切りの良いメンバーじゃなくて本当に助かる


( T)「一応……遺書だけ書いてくれる?」

五十鈴「ゲームするのにそこまで覚悟求められるの初めてよ……」

初月「お前はどうして危険なのをわかってて断固として止めないんだ?」

( T)「止めたもん……」

初月「頼りがないなぁ」


何も言い返せねえ。涙出てきた
9 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:38:59.88 ID:wIRZwWrO0
瑞鶴「お待たせみんなァゲームをやるぞォォ!!世界経済をォォぶっ壊ァァ〜す!!!!!!!」


件のゲームギアを引っ提げ、主役が遅れて登場する。テンション上がりすぎて大きな赤ちゃん(商人)みたいになってた


( T)「フフッ」


笑っちゃった


五十鈴「あのね瑞k 瑞鶴「はいこれ被って!!」


付け入る隙もない。有無をも言わさずギアを被せられる俺たち。流れる汗もそのままにする可能性がある


五十鈴「何すん……あら凄いじゃないこれ」


解像度の低いヘッドマウントディスプレイには、ドット調のタイトルが映し出され、耳元のヘッドホンからはなんか壮大な感じの……ドラゴンのクエストっぽい……BGMが流れる
4Kディスプレイ越しのゲームとはまた違ったレトロかつ新鮮な体験に、五十鈴の出鼻はすぐさま挫かれてしまった。俺が言うのもなんだけどチョロすぎんか???????


初月「なんだ。どんな拷問器具かと思ったら、本当にただの面白そうなオモチャじゃないか」

(;T)「グ、グムー……」


グムーが出た  ※超人だから
しかし杞憂で終わるならそれに越した事は無いのも事実。今のところ、なんか妖気的なサムシングも感じないし、ワンダーテインメント博士を騙るジョークグッズである可能性の方が遥かに高い筈だ。そうであれ。頼む


五十鈴「『シャッフルクエスト』……ふーん。聞いたことないタイトルね」

瑞鶴「ねー。どんなゲームなんだろね」

初月「瑞鶴、コントローラーは無いのか?」

瑞鶴「無いよ?」

初月「なら何も出来ないじゃないか……」
10 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:40:29.92 ID:wIRZwWrO0
( T)「……あれ?」


ちょっと待てなんかおかしくないか?このデバイス、『どこから電源を引いている?』
いやまぁ、プラグ繋がなくても乾電池や何やらで動くゲーム機かもしれんし……


( T)「瑞鶴、お前これ充電とかした?」

瑞鶴「え?コードなんか見あたんなかったけど?ジプシーデンジャーと同じ原理で動いてんじゃないの?」

( T)「アカン」


原子力発電を搭載してるヘルメット被るくらいなら怪異の方が遥かにマシだが、異常は確定した。すぐにでもゴミ箱にぶち込むか地層処分しなければならない
ヘルメットに手をかけた瞬間、顎下から頸にかけてバンドの様なものが勢い良く巻き付き、固定されてしまった


(;T)「ああ……」


ダメだこれは今回もガッツリ巻き込まれる奴や。抵抗を止め、しんどくない体勢で次の展開を待つことにした。あったかいカフェオレとか飲みたい


五十鈴「嘘でしょ脱げないじゃない!!瑞鶴!!どうなってんのよ!!」

瑞鶴「わかんない!!説明書無かったし!!」

初月「説明書が無い物をぶっつけ本番で試そうとしたのか!?」


おーおー小娘共が慌てとるわ
11 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:40:58.82 ID:wIRZwWrO0
( T)「……あれ?」


ちょっと待てなんかおかしくないか?このデバイス、『どこから電源を引いている?』
いやまぁ、プラグ繋がなくても乾電池や何やらで動くゲーム機かもしれんし……


( T)「瑞鶴、お前これ充電とかした?」

瑞鶴「え?コードなんか見あたんなかったけど?ジプシーデンジャーと同じ原理で動いてんじゃないの?」

( T)「アカン」


原子力発電を搭載してるヘルメット被るくらいなら怪異の方が遥かにマシだが、異常は確定した。すぐにでもゴミ箱にぶち込むか地層処分しなければならない
ヘルメットに手をかけた瞬間、顎下から頸にかけてバンドの様なものが勢い良く巻き付き、固定されてしまった


(;T)「ああ……」


ダメだこれは今回もガッツリ巻き込まれる奴や。抵抗を止め、しんどくない体勢で次の展開を待つことにした。あったかいカフェオレとか飲みたい


五十鈴「嘘でしょ脱げないじゃない!!瑞鶴!!どうなってんのよ!!」

瑞鶴「わかんない!!説明書無かったし!!」

初月「説明書が無い物をぶっつけ本番で試そうとしたのか!?」


おーおー小娘共が慌てとるわ
12 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:48:49.92 ID:wIRZwWrO0
( T)「んー?」


ゲーム画面は独りでにタイトル画面からキャラクター選択画面へと移る
『ブレイブ』『グラディエーター』『ハンター』『ウィザード』の四種類。前衛後衛それぞれ2体ずつと見た
しかし操作手段が無いのにこの画面を見せられても手の出しようが無い。これ一生脱げないかもしれない。ちょっと涙出てきた。だって女の子だもん


( T)そ「あれ!?」


なんて絶望していたら、なんと一気に三つの枠が埋まった。いつの間にかギャーギャーうるさかった小娘の声が聞こえなくなってる
静かになったというより、耳に届く音がゲーム音に限定されたかのように、『その他』の雑音が完全にシャットアウトされている
残った一枠もすぐさま埋まった。手足の感覚が無い。立っているのか座っているのかすら定かで無い
呼吸の方法が思い出せない。声の出し方がわからない。瞼を閉じても暗闇に逃げられない
ゲーム画面は、コーヒーにクリームを入れてかき混ぜたかのように、グルグルと渦巻きを描き出し


「」


俺の意識は、渦中へと吸い込まれていった―――――
13 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:49:56.35 ID:wIRZwWrO0
―――――
―――



「おっきてー!!起きるぴょん!!」


腹の上で小動物か何かが跳ねて喚いている。語尾にぴょんなんて付ける奴はウチじゃ一人しかいない
瞼を開いて先ず目に付いたのは、随分と開けっぴろげな天井から覗く青空
隕石でも落ちた直後なのだろうか。大小様々な木片がパラパラと降ってくる


「起きた!?」

「うおっ!?」


このワンアクションで大きなショックが三つあった。一つは、子犬サイズにまで縮んだ卯月が、腹から顔面に向かって飛びついてきた事。いやこれホンマに卯月やろか?
変わったのは身長だけではない。頭上に伸びる二つの長い耳。全身はフカフカの体毛で覆われ、そして何故かタキシードを着用している。何て呼ぶのこれ……獣化?とにかく、ウサギ人間って感じになってる。ムカデとか武器とかセイウチとかじゃなくて良かった
二つは、ちょっと寝てる間に娯楽室から知らん廃墟に移動してた事。先程まで視界を塞いでたヘルメットはどこへやら。天井から吹き抜ける風や傷んだ床の質感は、夢にしちゃヤケにハッキリと感じられる

そしてこの二つがぶっ飛ぶほど驚いたのが三つ目


「なん……なん……???????」


三十越えたオッサンから発せられるモノじゃ断じてない中性的な声
身体は細く小さく縮んでいるが、胸や尻は控えめに『主張』をしている。そしてチンチンが無い。え!!!!!!!?????チンチンが無い!!!!!!!!???????


「あ、うわ……」


顔に触れると、いつものマスクの代わりに、火傷どころか小さなニキビすらない滑らかな肌の感触
そのまま手を頭に移動させると、犬の耳のように跳ね返った髪に触れた


「嘘だろオイ……」


辺りを見まわし、テメーの姿を確認できる物が無いかを探す。すると卯月(兎)は


「どーぞ!!生まれ変わった姿をご覧あれぴょん!!」


肩に下げるピンク色のポシェットから、どこでもドアくらいの質量の姿鏡を取り出し、設置した。鏡に写し出された『今の俺』は―――――


初月「」


めちゃくちゃ可愛くなってた
14 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:50:27.85 ID:wIRZwWrO0
初月「マジかよオイ……」


声も顔もスタイルも、そっくりそのまま初月だ。違う点は『中身』と、見慣れない黒いローブととんがり帽子を身につけてる所か
すぐ側には、身の丈ほどある『杖』が落ちている。直径5センチ程度の太さで、樫のような硬さとズシリとくる重みがある。鈍器として優秀かもしれない


初月「あん……ところでウサギの嬢ちゃん?」

「……」


卯月(兎)は、先程とは打って変わって無表情で穴の空いた天井を見上げている
なんか嫌な予感がしたんで大きく二歩下がった。すると、間も無く頭上から『火の玉』が三つ、手持ち花火のような燃焼音を伴って落ちてくる


初月「まさか……」


そのうちの一つは結構デカかった


「プレイヤー様の御来訪だぴょん!!」

初月「こんな……なんかプリコネの入りみたいな感じで降ってくんの……?」


ならコッコロちゃんを派遣して欲しかった。火の玉は、恐らく俺が空けたであろう穴から廃墟内に着弾


(;T)「うう……」

五十鈴「ぐ……」

瑞鶴「っ〜……」


初月「うわ客観的に自分見るのキチィ!!!!!!!!!!!」

「おっきてー!!起きるぴょん!!」


俺の困惑を他所に、卯月(兎)はそれぞれの腹で腹ンポリンを始める


「オラァ!!!!!!!」


俺の身体の時だけ顔面に蹴りを入れてた。それってぇ!!!!!!!!男性蔑視ですよねぇ!!!!!!!!
15 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:51:40.31 ID:wIRZwWrO0
(;T)「いっっっっっったぁ……あれ?」

五十鈴「何が起こっ……え?」

瑞鶴「何なの一体……は?」


起こされた三人は目を丸くしてそれぞれの姿を見て、そして姿鏡で自身の姿を確認し


「「「入れ替わってるーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!??????」」」


なんか前前前世から誰か探してるみたいな叫び声を上げた
16 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:52:57.93 ID:wIRZwWrO0
―――――
―――



初月「こうだな」


五十鈴→瑞鶴
初月→五十鈴
俺→初月
瑞鶴→俺


『シャッフルクエスト』。互いの人格を入れ替え、別人となってファンタジー世界を冒険する『超没入型RPG』らしい
クリア条件は、ラスボスにあたる魔王的存在の撃破。クリアするまで現実世界には戻れない
加えて、致命傷を三回受けるとゲームオーバーとなり、永遠にこのゲーム世界を彷徨い続ける事となる。エグ過ぎ


「そんじゃー!!張り切っていってらっしゃーい!!」


そこまで早口で捲し立てた卯月(畜生)は、文字通り脱兎の如くどっか行った。何の質問にも答えてくれなかった


初月(乳首)「早い話がジュマンジってワケ」

五十鈴(初月)「なるほどな……つまり、グリードアイランドに入ったようなモノか」

瑞鶴(五十鈴)「あるいは、.hackのThe Worldかしら」

(;T)(瑞鶴)「こんなSAOやだ……戻して……戻してよぉ……」


全員違うタイトルで喩えてんじゃねーか


初月「せやから言うたやろ瑞鶴。危ないもんには触れずに捨ててたらお前もオッサンの姿にならんで済んだんや」

(;T)「だってこんなんなるとは思わないじゃん!!私ゲームしたかっただけなのに、なんでこんな仕打ち受けないとダメなの!?」

初月「お前のその発言で誰よりも深く傷ついてる奴がいるって自覚ある??????」

瑞鶴「シュールな光景ね……」

五十鈴「五十鈴のこれ……凄いな……」

瑞鶴「胸で遊ばないでもらえる?」
17 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:53:43.72 ID:wIRZwWrO0
宇宙最強部隊である地獄の血みどろマッスル鎮守府ことギニュー特戦隊の面々と言えども、所詮は小娘だ。行ってらっしゃいと言われて即座によっしゃほな一発かましたろかとはならない
卯月(畜生)はマジ最低限の説明しかしなかったので、どこに向かえばいいのか、どうやって攻略すればいいのかは、これから手探りで見つけて行くしかない


初月「とりあえず、ステータスの把握……」


目の前にホログラムなウインドウが勝手に開いた。よく見るやつ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!


初月「都合が良くて助かる」

瑞鶴「展開が巻きね」

初月「巻きとか言うな」

五十鈴「僕は巻きなら納豆巻がいいな」

初月「好き勝手に喋るのやめて?????」


ステータス画面には、『ウィザード』という職業名と、ライフ残数を表すハートマークが三つ。MPは青色のバーで表示されている
下部には使える魔法一覧と、服や杖など、身につけている装備品の名前が並ぶ


初月「わかりやすい」

五十鈴「レベルなんかの数値は一切無いんだな。となると、レベリングは不要なゲームなのかも知れない」

瑞鶴「そうね。使える魔法もある程度は揃ってるみたいだし、ロールプレイがメインなんでしょ」


ゲーマーは考察が早いな
18 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:54:39.82 ID:wIRZwWrO0
初月「他になんか情報はっと……」


試しに『ウィザード』の職業名をタップしてみる。すると、新しいタブが開き、具体的な説明が映し出された


初月「ウィザード。魔法を駆使する後衛職業。攻撃、防御、強化、弱体など、多種多様の活躍が可能。状況に応じて、最適格な判断を下せるプレイヤー向けのタイプ……」

瑞鶴「叢雲呼んでくるべきだったわね……」

初月「あのな、俺これでも提……でも初月もオッサンより叢雲に入られた方が良かったか……」

五十鈴「い、いや、気にしてないし気にするな。お前なら変な事しないってわかってるから」

初月「正気か??????」

五十鈴「信頼を疑う方がどうかしてるぞ?」

初月「ごめんね……」

瑞鶴「私は正直おじさまに身体乗っ取られるのイヤだからめちゃくちゃ安心してるけどね」

初月「それわざわざ言う必要あったか????????え???????」


信頼も不気味だし正直も傷つくし人生って儘ならんって感じだった


瑞鶴「考えてもみなさいよ。身体を中年異性に乗っ取られるより、同性の同僚に任せた方が安心じゃない?それに、乗り移ったのが頑丈なおじさまなら、多少無茶して大怪我しても罪悪感なんて湧かないワケだし、一番の当たりは瑞鶴かもよ?」

初月「おじさんだって一生懸命生きてんだぞ」

(;T)「じゃあ代わって!!」

瑞鶴「絶っっっっっっっっっっ対にイヤ」

初月「よし、もう入れ替わりについて言及するのは止そう。今のでお前以外が傷ついた。特に俺が」


一理あるが、最後ので台無しだった
19 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:55:20.70 ID:wIRZwWrO0
それぞれの職業はこんな感じだ


五十鈴(初月) 職業:ブレイブ 武器:ソード 特殊スキル:必殺技
剣技と必殺技を駆使する万能型の前衛
必殺技の瞬間火力はトップクラス。逆境を覆し道を切り開く


いす……初月の姿も、寝巻き姿からRPGの勇者のような出立ちに変化している
宝石をあしらった額当てに、革で作られた肩当てとベルト。そして腰には勇者の剣だ
ただ、胸元と脚の露出が気持ち多めだ。でもまぁいつもとあんま変わらんか…………


瑞鶴(五十鈴) 職業:ハンター 武器:コンポジット・ボウ 特殊スキル:イーグルアイ
弓による遠距離攻撃、鳥類との視野共有で索敵を得意とする後衛
状況把握や援護射撃など、サポート能力に優れる


ハンターと言うだけあって、華やかさよりも迷彩性能を重視した深緑色の外套に身を包んでいる
装備に至っては空母艦娘ならお馴染みの弓と、腰の矢筒に収まった矢だ。これで中身が本人のままだったなら、現実と遜色無いほどの活躍が出来ただろうがーーーーー


( T)(瑞鶴) 職業:グラディエーター 武器:無し 特殊スキル:無し
マッスル!!!!!!!!!!!!タフ!!!!!!!!!!!そして脳筋!!!!!!!!!
一切合切を暴力でぶち壊す暴れん坊!!!!!!!!!敵にしても味方にしても厄介なオッサン!!!!!!!!!!早々にかつ出来る限り無惨に死ね!!!!!!!!!


元の身体の持ち主も、現実よりゲーム世界の方が厳しいとは夢にも思わなかったであろう
弓に明るい瑞鶴は今、拳一つで渡り歩けと無茶な要求をされたのだから
20 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:56:25.86 ID:wIRZwWrO0
(;T)そ「私の説明だけ雑な上に装備もスキルも無いしそのうえ無惨に死ねとか書かれてんだけど!!!!!!!!???????」

初月「なんでゲームにすら厄介おじさん扱いされなきゃならないの?」

五十鈴「ううん……少々、酷ではあるな……」

瑞鶴「捨てようとか言ってたからじゃないの?」


チクショウ身に覚えがあり過ぎる


瑞鶴「確認も済んだし、サッサと移動しましょ。弓矢を試してみないと」

初月「俺も魔法がどういうモンか見てみてえ。なんかいい的ねえかな」

五十鈴「ほら提t……瑞鶴。不貞腐れてないで行くぞ。元気を出せ」

(;T)「ううう……良いわよねアンタらは……私、殴る蹴るしか出来ないんだから……」

初月「格闘の成績がクソほど悪いんだからゲームの世界でくらい殴る蹴るしたらどうだ?」

(#T)「キィイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!」


テメーの姿でヒスられんのマジでキチィ……
21 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:57:32.22 ID:wIRZwWrO0
五十鈴(瑞鶴の姿)に続いて、初月(五十鈴の姿)と俺(初月の姿)の二人がかりで不貞腐れた瑞鶴(オッサンの姿)を廃墟から引きずり出す。ややこしい
なんで膨れっ面の自分を宥めながら引っ張らなアカンのやろか。拷問では?


初月「重てえなクソ……ん?」


外に出ると、そこは草原の真っ只中。所々に木々がポツポツと立ち、遠くでは豚に羽が生えたような生き物が草を食んでいる。ハッピーがたくさんブゥって感じ
そして俺らより先に外に出た五十鈴は―――――


「ヒャッハー!!上モノが三人もいやがるぜ!!」

「ヒィーヒヒヒ!!大人しくしてりゃあ可愛がってやるからよぉ!!」

「オッサンは臭いからぶっ殺しちまえ!!」


あからさまなチンピラと対峙していた。臭いってなんだ殺すぞ


五十鈴「瑞……五十鈴、そいつらは?」

瑞鶴「さぁ?チュートリアル用のザコなんじゃない?会話しようとしてもずっとこんな調子だし」


ひーふーみー……十人くらい?まぁまぁ多いな
顔は……北斗の某に出てきそうなモヒカン顔で統一されているが、装備品はそれぞれ違う
剣や槍は勿論、弓や魔法の杖を持ってる連中も見受けられる。三回致命傷を喰らえばお陀仏な設定で、この人数差は結構ピンチでは?


瑞鶴「それじゃあ早速、腕試しと……」

初月「ボンバーダァァァァアアアアーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」

瑞鶴「え?」


アイサツ無しのアンブッシュは一回までなら有効。古事記にもそう書いてある
杖先から放出された爆破魔法は、チンピラを五人くらいまとめて吹き飛ばした


「「「「「グワーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」


爆発四散せずに遠くに飛んでいったのを見るに、お子様でも安心して遊べそうだ


瑞鶴「ちょっと提督!!私の初陣の邪魔しないで!!」

初月「わり」

( T)「ドス効いた大声出す初月やだなぁ…………」

五十鈴「呪文を叫ぶ必要があるのか?」

初月「薩摩が出ちゃった」
22 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:58:08.08 ID:wIRZwWrO0
瑞鶴「さぁ、仕切り直し……」

初月「ボンバーダァアアアアアアァアァアアアアアアッッッッッッッッッッイ!!!!!!!!!!!」

瑞鶴「ちょっとぉ!?」


「「「「「グワーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!??????」」」」」


どデカい爆発エフェクトと共に残りのチンピラも空へと消えていった。バイバイキンである


初月「へへ、魔法っておもしろ」

瑞鶴「な、ん、で!!一人で全員やっつけちゃうのよぉ!!」

初月「つい」

瑞鶴「可愛くなったからって好き勝手し過ぎじゃない!?」

初月「せやろか」

( T)「そのおじさん元からそんな感じだよ……」
23 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:58:41.42 ID:wIRZwWrO0
五十鈴「魔力消費はどうだ?あれだけの威力だ。相応に減ってるんじゃないか?」

初月「どれどれ」


ステータス画面を開いて確認すると、青色のバーが半分程度まで減っていた


初月「めちゃくちゃ減ってんじゃねーか!!!!!!!!」

五十鈴「燃費が悪いな……魔法はここぞって時まで温存すべきだな」

瑞鶴「それと、MP回復は時間経過なのかアイテム消費方式なのかも気になるところね。身体に変化はないの?」

初月「特にねえな。つーかわざわざステータス画面開かなきゃ確認出来ねえのかよめんどくせえなクソUIじゃねーか」

( T)「言葉遣い汚い初月やだなぁ…………」

初月「俺も内股で座り込んでメソメソするテメーの姿見るのやだよ」
24 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/29(土) 23:59:38.06 ID:wIRZwWrO0
五十鈴「しかし提督。最初のNPCを全員吹き飛ばしたのはマズかったんじゃないか?」

瑞鶴「そーよ!!とっ捕まえて色々吐かせられたかもしれないじゃない!!」

初月「でもぉ……」

瑞鶴「くっ……ガワが良いから怒るに怒れない……」


可愛いって得だな


( T)「ねぇみんな!!アレ!!」


瑞鶴が指差す先には、鞍を載せたカバのような生き物が二頭、砂煙を上げながらやって来る
蹄の音は無く、代わりにエンジンとモーター音が聞こえてくる


初月「車……?いや、生き物か……?」


鼻息荒く近づいてきた動物は、脚の代わりにタイヤが四つ。四足歩行動物ならぬ、四輪走行動物とでも言おうか。車輪カバはゆっくりと速度を落とし、俺らの目の前で停止した


瑞鶴「何この冒涜的な動物……?」

五十鈴「さっきの盗賊はこれに乗ってきたのだろうか?」
25 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:00:12.11 ID:acICW3jd0
体長は4メートル、体高は俺の身長より頭一つ小さいくらいか。鞍はそれぞれ五人分用意されており、生き物の頸には手綱の代わりにバイクハンドルが備わっている


初月「ご親切にアッシーと……」


腹部に備え付けられてるバッグを漁ると、金属音を鳴らす汚く小さい革袋と、巻かれた古い紙が出てきた


初月「小遣いに地図か。至れり尽くせりだな」

( T)「こっちには薬品の瓶が入ってたよ。提督さん、飲む?」

初月「今回その役割お前だが??????」

(;T)「ハズレ過ぎるこの身体……」


地図を広げると、上下でコントラストが明暗に別れていた
大陸の上半分は黒を基調とした『陰界』。下半分は明るい『陽界』と、わざわざ日本語で明記してある。異世界語とかじゃなくてよかった
その陽界の左下辺りに、赤いマーカーが点滅している。どうやら、現在地を表しているようだ


初月「何々〜……『ハジマリハジマリ平原』……」

瑞鶴「何言ってんの?」

初月「この辺の地方がそんな名前らしい」

( T)「バリオモロ島と同じレベルじゃない」

初月「なんそれ?」

( T)「メイドインワリオ」

初月「へぇ……フフッ、おもろい名前。とりあえず、一番近い……あー……『メスガキ王国』にぃ……」

五十鈴「メスガキ王国」

瑞鶴「ホントにそんな名前なんでしょうね……?」

初月「本当にそう書いてあるもんほら!!」


地図を受け取った五十鈴はマジマジと見つめ、一度目を擦り、再度見つめて―――――


瑞鶴「うん……ここが一番手っ取り早いのなら、仕方ないんじゃない……?」


憔悴した様子で地図を丸めた
26 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:02:27.21 ID:acICW3jd0
( T)「良いじゃんメスガキ!!そういうの好きだよ!!」

瑞鶴「知らないわよ……」

五十鈴「急に元気になったな」

初月「ハァー……ま、名前だけかもしれんし、行って必要な情報だけパッと集めようぜ」

瑞鶴「そうね……ところで、これ誰が運転する?」


カバ車輪は大きく欠伸をして、『早くしろ』と言いたげに身体を振った


( T)「やりたいやりたい!!提督さん、いいでしょ!?」

初月「好きにせぇや……」

瑞鶴「じゃ、私は初月とこっちに乗るから」

初月「えっ」


五十鈴と初月はカバ車に颯爽と乗り込み、スムーズに発進させた


( T)「提督さーん、何してんの?早く行くよー!!」

初月「あ、ああ……」

( T)「えーっと、アクセルは……」


30秒後、俺はハズレくじを押し付けられたと身をもって思い知った
27 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:03:12.27 ID:acICW3jd0
―――――
―――



五十鈴「だ、大丈夫か?」

初月「…………」

瑞鶴「ごめん……そこまで酷い運転するとは思ってなくて……」


前後上下左右に激しく揺られるカバ体にしがみついて三十分。高い城壁に囲われた『メスガキ王国』とやらに到着した
いくら舗装されていない道とはいえ、どうやったら車輪走行であんな異次元の揺れ方するんだよ


( T)「三半規管器官弱いんじゃない?」

初月「スゾ…………」

五十鈴「杖を下ろすんだ提督。魔力が無駄になるし恐らく死なないぞ」

瑞鶴「瑞鶴、アンタもう運転禁止」


当の運転手はケロッとしているのがまた腹立たしい
そういやこいつゲーム好きだけど上手くはねえんだ。レースゲームも壊滅的なんだわ


( T)「さ、早く入国しようよ!!楽しみだなぁ。可愛い女の子がいっぱいいる国!!」

瑞鶴「ちょっと待ちなさいよ!!勝手に行かないでくれる!?」


流石に盗賊の乗り物で王国まで近づくのは誤解を招く恐れがある為、カバ車とは泣く泣く別れを告げた
瑞鶴が乗り回したカバ車のグッタリした様子を思い出すだけで心苦しい。それなのにどうしてあいつだけあんな元気なんだ


初月「俺に構うな……行くぞ……」

五十鈴「無理するな。少し休んでからでも……」

初月「一刻も早くクリアしてこのクソゲーとあいつの背骨をバキ折ってやる……」

瑞鶴「瑞鶴!!!!!!早く謝らないと戻ってから酷いわよ!!!!!!!」


<ごめーん!!


謝ってもやる
28 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:04:04.54 ID:acICW3jd0
「え〜?入国には一人99999G必要なのしらないのぉ〜?」

「キャハハ!!田舎者ってだっさーい!!」


名は体を表すと言うが、国名になってるだけあって、出迎えた門番から早速メスガキ節を頂戴した
ただし、瑞鶴が期待したような小さくて可愛い女の子ではなく


(;T)「は……話と違うじゃん!!!!!!」


甲冑に身を包む、汚い髭面のオッサンの口から発せられたモノだったが


初月「名前がメスガキってだけで、メスガキで構成された国とは書いてねえからなぁ」

(;T)「チクショウ!!ゲームの中でくらい夢見せてくれたっていいじゃん!!」


咽び泣きながら地面を拳で叩く瑞鶴。俺の姿で無様を晒さないでほしい


五十鈴「気味が悪いな……本当に入らなきゃダメか?」

瑞鶴「そもそも、これっぽっちで全員入れるの?」


五十鈴はなんか小さい革袋略してちいかわを手で弾ませる。悲しくなるほどささやかな金属音が鳴った
よほど食い詰めていたのか。それとも稼いだ先から使ってしまうのか。入ってたのは小汚い銅貨がたったの四枚だ。シケてんな


「「ざぁこざぁこ❤経済弱者❤お財布スカスカ❤」」


んなカンストしたみてーな金額どうやって稼げってんだよ
29 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:04:44.02 ID:acICW3jd0
初月「入れなくても良い気がしてきた……」

瑞鶴「一度引くわよ。金策も視野に入れて作戦会議しないと」

五十鈴「本当にお金払ってまで入らなきゃダメなのか……?」


メスガキおじさん兵士の煽りを背に受けながら、ちょっと離れた所まで戻る。タチの悪い悪夢を見た気分だ


(;T)「艤装が使えたらあそこに爆撃してやるのに……」

初月「何でもかんでも艦載機で解決しようとするな」

五十鈴「五十鈴、金策のアテはあるのか?」

瑞鶴「バカね。あんな連中に払うお金なんて一銭もないに決まってるじゃない」


五十鈴は人差し指を空へと向けた。俺らの頭上では、鳥の番がクルクルと旋回している


瑞鶴「あの子達の目を借りて城壁周りを探ってたら、裏口らしき場所を見つけたの。行って確かめてみない?」

初月「視界共有か。便利なもんだな」

( T)「私だって普段は偵察機使って索敵出来るし……」

五十鈴「いつもありがとう。瑞鶴」

(*T)「なにもうやだ照れるじゃない!!」


拗ねたり照れたり忙しい奴だな。俺の姿でクネクネするな
30 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:05:25.64 ID:acICW3jd0
城門を右手に三十分ほど歩き、五十鈴が見つけた裏口とやらの場所に辿り着く
そこには入口となる門も扉もなく、ただ石造りの城壁が聳え立っているだけのように見えるが―――――


瑞鶴「うん、やっぱりここだけ材質が違う」

五十鈴「本当だ。色は似てるがこれは……木材だな」


初月に続いて城壁に触れてみると、滑らかな石壁とは明らかに違う、ささくれ立った木の感触がする。ここで間違いないだろう
問題は、これをどうしたら裏口として機能するのかだ。開けゴマとでも唱えろってか?


( T)「なんだっけあれ……アリババと数万人の盗賊だっけ?なんか呪文あったよね?」

初月「数万もいたらそりゃもう桓騎軍だろ……」

( T)そ「あっ、そうそう。ピリカピリララ ポポリナペペルト」

初月「おジャ魔女な」

瑞鶴「マハリクマハリタ?」

初月「ヤンバラヤンヤンヤンじゃなくてな」

五十鈴「テクマクマヤコンテクマクマヤコン……」

初月「ひみつのアッコちゃんでも無くて」


( T) 瑞鶴 五十鈴「「「おお〜」」」


初月「試すのやめな??????」
31 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:07:38.61 ID:acICW3jd0
そう言えば、おジャ魔女で思い出したが、使えそうな魔法があったはずだ
ステータス画面を開き、魔法一覧を確認する。二つほど候補が見つかった


初月「『解錠』か『看破』だな」

( T)「提督ばっかり活躍してズルくない?」

初月「はいはいズルいズルい。開けゴラァ!!!!!!!!!!!」

瑞鶴「ゴラァて」


気合い入れて解錠魔法を城壁に向けて放つと


初月「ウッ」


間髪入れずに跳ね返って来た魔法が腹に直撃し、もんどり打った


五十鈴「提督!!大丈夫か!?」

初月「カッハッ……イキデキナイ……」


視界がグルグルと回る中、頭上に『ライフゲージ』が出現する
三つあるハートの内、一つが消失した。今ので一回死んだらしい。死亡判定厳しくね?


初月「ッ、ゲホッゴホッ……ハァッ!!クソが……」


消失と同時に、体調も元に戻る。リスポーンってこんな感じなのか


瑞鶴「セキュリティはしっかりしてるみたいね……」

( T)「魔法だからってなんでもかんでもまかり通るワケじゃないんだねー」

初月「良い勉強になったよ。そんじゃ、城門に戻るか」

( T)「え?お金どうすんの?」

初月「馬鹿だなぁ瑞鶴。これから滅ぶ国に金が必要か?」

( T)そ「はちゃめちゃにキレてる!?」

五十鈴「落ち着け。それだと瑞鶴と同レベルだぞ」

( T)「初月?私のこと馬鹿にしてない?」

瑞鶴「ちょっとアンタたち。こっち来て」
32 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:08:07.32 ID:acICW3jd0
( T)「ねぇ五十鈴、私あんな野蛮じゃないよねぇ?」

瑞鶴「知んないわよそんな事。それよりこれ」


魔法に反応してか、それともゲームからの計らいか。壁には先程まで無かった文章が浮き上がっていた


『この先、偉大な魔法使いの秘密の部屋。言の葉を炎の杯へと捧げよ。さすれば道は開かれん』


瑞鶴「で、わかる人?」

( T)「わかんない」

瑞鶴「考えるそぶりくらい見せてほしいわ……」

五十鈴「炎の杯……何かの揶揄だろうか?それらしい物は見かけなかったが……」

初月「ゴキブリゴソゴソ豆板!!」

五十鈴「提督?」


壁<やるじゃん


五十鈴「え?」


『カチャン』と鍵の開く音と共に、木製の扉が現れる。簡単なクイズだったな


初月「よし。行くぞ」

(;T)「待って待って解説してよ。何その悍ましい合言葉?」

初月「あー?『秘密の部屋』と炎の杯……『炎のゴブレット』でハリポタ。偉大な魔法使いはダンブルドア。偉大な魔法使いの部屋。つまりホグワーツ校長室の合言葉がキーワード。最初はレモンキャンディかと思ったが、『炎の杯に捧げよ』って指定があることから、優先度は炎のゴブレットでの校長室の合言葉。つまり『ゴキブリゴソゴソ豆板』だ。簡単だろ?」

瑞鶴「難解よ」

(;T)「そんなのほぼ勘じゃない!!」

五十鈴「求められる知識が限定的過ぎやしないか……?」


文句はゲーム製作者に言って
33 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:08:45.66 ID:acICW3jd0
初月「さーて、鬼が出るか蛇が出……」


扉を慎重に開けて、中を覗き込むと


「動くな……」


鼻先に、槍の穂先が突きつけられた


初月「……」

「小娘だ……」

「めちゃくちゃ可愛いぞ……」

「男であって欲しい」

「ヘヘッ、直接確かめてみたらいいじゃねえか」

「黙ってろ馬鹿共!!」


ランタンの乏しい光源が照らす倉庫のような部屋に、無精髭を生やした荒くれ者が六人。内一人は性癖マイノリティだった。ポリコレに配慮してる昨今のディズニーか??????ストレンジワールドに出演したらどうだ??????


初月「……」

初月「お邪魔しました」


俺は扉をそっと閉じて見なかった事にしようとしたが


「入って」


ここには居ないはずの聞き覚えのある女の声と、背中に押し当てられた刃物の感触が、後退を許さなかった
声の出所と髪を揺らす吐息の位置からして、そこそこタッパがある。初月の身体も小柄では無いので、女性にしては高身長だ
女のツラを見たであろう槍男は、控えめに一礼した。女首領か。気苦労が多そう
34 : ◆L6OaR8HKlk [sage saga]:2024/06/30(日) 00:09:18.79 ID:acICW3jd0
「おかえりなさいませ、ボス」

「退いて」

「失礼を」


初月の目線だと余計にデカく見える荒くれ者は、槍を収めて大きく退がる
刃物で奥へと進むように促され、ゆっくりと足を踏み入れた
教室ほどの広さがある室内。壁際には樽が並び、隅には干からびた死体が転がっている。成仏してクレメンス


初月「出来ればツレも一緒に連れて来て欲しいんだがね」

「心配しなくてもまとめて始末してあげるわよ」

初月「恐いねえ……」


漏れなく全員、背後を取られたらしい。そうだよな秘密の裏口を余所者が使ったら口封じするわな
誰も気配を感じなかったのは、ゲーム特有のスポーンからか。流石に無から突然現れちゃ気づきようもねえわ


瑞鶴「ごめん、迂闊だったわ」

「誰が口を開けと言ったァ!?」

瑞鶴「ッ!?」

(;T)「五十鈴!!」


ゴッと鈍い打撃音が響き、荒くれ者共がやんやと囃し立てる。五十鈴は不幸にも、とびきり手の早いクズに捕まっちまったらしい


「貴女」

初月「あ?」

「腕に覚えがありそうね?」

初月「確かめてみるか?ここにいる全員、瞬く間に皆殺しにしてみせるぜ」


始末するならとっとと殺ってるはずだ。裏口を見つけた余所者を生かしておく必要が無い
『慰み者』扱いするにしても、『余計な大男』まで生かしておく必要も同じく無い
それに、『魔法使いから杖を取り上げない』のは、致命的なミスだ。この世界の住人なら、プレイヤーである俺らよりも魔法に造詣が深いはず
後ろを取られようとも、振り返りもせず反撃に出れる。魔法はそれほどに、理不尽で利便性のある手段だ


「おーおー、大きく出るじゃねえかおチビちゃん!!」

「是非ともシゴいてもらいたいもんだなぁ!!えぇ!?」


囃し立てる荒くれ者共にそこまでの知性があるようには見えない。女を「ボス」と呼んだ槍男だけは、どこか緊張した面持ちで佇んでいる
槍男はアイコンタクトでボスと通じ合ったのか、荒くれ者に気付かれぬよう、小さく首を縦に振る
ボスはローブの襟を掴み、グイと引き寄せる。そして耳元で囁いた


「光源、最大出力」


ご要望とあらば


初月「ルーモスマキシマァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


薩摩が出た
106.30 KB Speed:0.8   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)