【進撃の巨人】俺「安価で巨人を駆逐する」 二匹目

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/05/01(水) 21:08:53.38 ID:iiJDb4My0
進撃の巨人安価コンマスレ


前スレ
【進撃の巨人】俺「安価で巨人を駆逐する」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714194866/


巻き戻し制限有り
コンマゾロ目は全てスーパークリティカル扱い
コンマの連取り無し(選択肢等を間に挟んだ場合有効、単発末尾Oが取った連続で取った場合は確認する時有り)
ストーリー中の選択肢取った後の変更は原則的に無し
俺の初期設定(ウォールローゼ北部の領民、クリスタとは極めて仲が良い)
好感度数値化システム無し


現在は少年期(訓練兵時代)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1714565332
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/05/01(水) 21:16:34.38 ID:sVUFIHo10
「よくぞ参られた、異界の勇者……」



 ド――――――――ン!



 ゴテゴテと着飾った厚化粧の女が、芝居っ気たっぷりに始めた話をぶった切るように爆発音が響いた。

 俺達から百メートルほど離れた場所に生えていた巨木が、燃え上がりながらメキメキと音を立てて倒れていく。



 クラスメイトだけでなく、俺達を取り囲んでいる兵士達までもが、ポカーンと口を開いて倒れる巨木を見守っていた。



 ズダダダダダダダ──ン!



 更に直径五十センチぐらいある火球が立て続けに撃ち込まれ、倒れていく巨木を粉々に吹き飛ばした。



「うひゃひゃひゃ……サイゾーのやつ、飛ばしてやがる」



 火球を放ち、ドヤ顔で中二ポーズを決めているのは桂木才蔵かつらぎさいぞう、普段は教室ではあまり目立たないオタ[ピザ]だが、今は奴にとって独壇場と言える状況なのだろう。

 放課後のショートホームルームが始まるのを教室で待っていた俺達は、いわゆる異世界召喚に巻き込まれたようだ。



 突然、高校の教室の床が複雑な文様を描いて光り出し、目の前の景色が一変した。

 見たことのない草原、周りを取り囲む鎧を身に着け槍を携えた兵士、そして派手な衣装を身に着けたおばさん。



 クラスメイトの殆どがパニックに陥る中でも、オタクは冷静に事態を把握していた訳だ。

 元の世界から召喚された時に、俺達には魔法と言語能力が与えられていた。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/05/01(水) 21:17:14.65 ID:sVUFIHo10
 サイゾーには、たぶん火属性の魔法が与えられたのだろう。

 それを素早く理解し、実際に使ってみせるあたり、普段から繰り返している妄想は伊達じゃない。



 そして俺は、このカオスと呼ぶべき状況を前後、左右、上下、全周を囲むVRスクリーンのようなものを通して見物している。

 ここは俺、黒井善人くろいよしひとに与えられた魔法、アイテムボックスの内側だ。



 アイテムボックスの中からは、外の様子が見られるし音も聞こえるが、こちらの姿は外からは見えないようだ。

 たぶん別次元の空間なのだろうが、容量は掃除用具を入れるロッカー程度で、両腕を広げる余裕も無く立っているのがやっとの状態だ。



 俺もまたサイゾーと同様に、教室の床が光り出した時点で事態を予想し、魔法を把握した直後にアイテムボックスの中に身を隠した。

 なにゆえに姿を隠したのかと言えば、オタクの常識として異世界召喚には大きく分けて二つのパターンが存在するからだ。



 一つは、強力なチート能力を得て、好き勝手な生き方を楽しめるイージーモード。

 もう一つは、思い通りに生きるどころか、現地の人間に酷使されるハードモード。



 どちらのパターンか判断できるまで、身を隠す術があるならば隠れていた方が安全だ。

 話を中断された厚化粧のおばさんの苦々にがにがしげな表情を見る限り、素早く隠れたのは正解だったような気がする。



「まだまだ改良の余地はあるけど、最初にしてはまあまあかな?」



 巨木を粉々にし終えたサイゾーが、腕組みをしながら言い放った。

 軽く謙遜しているような口振りだが、低い鼻の穴が自慢げにヒクヒクしている。



「うぉぉぉ……なんだあれ!」

「おぉぅ、風出た、風ぇ!」

「冷たっ! ちょっと、水かけないでよ!」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/05/01(水) 21:17:43.31 ID:sVUFIHo10
 サイゾーが魔法を使ったのを見て、クラスメイトたちも自分達に与えられた魔法を試し始め、一旦静まった空気がまた大騒ぎになった。



「静まれ、静まれ! 女王アルフェーリア様の御前であるぞ、静まれ!」



 隊長格と思われる大柄な鎧の男が怒鳴りつけて、周囲を取り囲んだ兵士が盾を打ち鳴らして黙らせたが、クラスメイト達は不満げな表情を浮かべている。

 クラスメイト達が話をやめたのを確認して、厚化粧の女王が改めて口を開いた。



「よくぞ参られた異界の勇者達よ……」

「てゆっかー、さっさと元の世界に帰してよ、おばさん」



 典型的な黒ギャルのクラスメイト、白川清夏しらかわきよかに再び話の腰を折られて女王の顔が引き攣った。



「お、おばさん……」

「貴様、アルフェーリア様に向ってなんて無礼な!」

「まぁまぁ! お互い冷静に、まずは話を聞きましょう!」



 白川に掴み掛かろうとした隊長の前にサイゾーが割って入ったが、そもそも最初に話の腰を折ったのは、こいつなんだよな。



「とりあえず、どういう状況なのか分からないと判断の下しようが無いし、いきなり争ってもお互いの利益になりませんよね?」

「くっ……」



 サイゾーが右手をピストルの形にして突き付けると、隊長と思われる男は慌てて距離を取った。

 なるほど、交渉を有利に進めるために、わざわざ力を見せつけたという訳だ。

 というか、サイゾーの奴、主役を張る気満々という感じだな。



 俺は最初から目立つつもりも無いし、ちょっと遊んで、ちょっと美味しい思いをしたらさっさと東京に戻りたいと思っている。

 まぁ、異世界を満喫するなら、サイゾーぐらい悪目立ちした方が面白いのだろうが、俺はここから高みの見物をさせてもらうつもりだ。



 サイゾーが中心となって女王から話を聞くと、どうやら俺達は邪竜を討伐するための勇者として召喚されたそうだ。

 そして予想していた通り、一人に一種類の魔法と現地の者よりも強い魔翌力が与えられるらしい。



 そして、勇者としての勤めを果たし終えると、送還のためのゲートを開けるようになる……という話だが、果たしてどこまで信用して良いものやら。

 とりあえず、邪竜の討伐に参加するしないの判断は後回しにして、各々に与えられた魔法と魔翌力値の診断が行われる事になった。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/05/01(水) 21:18:33.46 ID:sVUFIHo10
 クラスの誰がどんな魔法を手に入れたのか、今後の対策を立てる上で把握しておきたいが、聞き取りと魔翌力測定が行われる場所まで少し距離がある。

 話を盗み聞きするには少し遠い。目立たないように、後ろの方で身を隠したのが裏目に出たようだ。



 一旦アイテムボックスから外に出れば簡単に移動できるが、それでは俺の存在に気付かれてしまう。

 現状クラスの連中は、いい感じに俺がいなくなっているのに気付いていない。



 元々、教室では目立たないように振る舞っていたから、気付かれなくても悲しくもない……悲しくなんかないやい。

 せっかく、せっかく気付かれていないのだから、アイテムボックスに入ったまま移動したい。



 容量的にかなり狭いアイテムボックスだが、更に左右の幅を狭め、前後の幅を広げてみる。

 これで、なんとか一歩踏み出すスペースが確保出来た。



 前の壁ギリギリまで移動して、後ろのスペースを減らし、また前方にスペースを作り一歩踏み出す。

 これを繰り返して、魔翌力の測定場所まで近付いた。



 ちなみに、アイテムボックスに入ったままだと、障害物もすり抜けられる。

 人間にぶつかると、中身が透けて見えてグロいのだが、避けて歩く余裕が無かったので突き抜けて来た。



「2300メーテだと……化け物か」



 メーテというのが魔翌力を示す単位のようで、こちらの世界の成人男性の平均値が150メーテ程度、200メーテだと高い部類に認定されるようだ。

 それと比較すると、サイゾーの魔翌力値は10倍以上、化け物視されるのも無理はない。



 その他のクラスメイトも、軒並み1000メーテ以上の数値を叩き出し、測定を担当した兵士は計測器が壊れたかと疑ったほどだ。

 俺も測ってみたかったが、数字云々よりも実際に使えるか否かの方が重要だろう。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/05/01(水) 21:19:17.71 ID:sVUFIHo10
 クラスメイト達が手にした魔法は様々で、火、風、水、土などのポピュラーなものから、清掃とか調理といった生活関連の魔法を得た者もいた。

 そして、全員の測定が終わったところで、また騒動が発生した。



「それでは、これより魔法の暴走を防ぐ首輪を配る。魔法の扱いに慣れるまでは、事故を防ぐためにこの首輪を付けて……」

「ちょっと待った! それは本当に魔法の暴走を防ぐ首輪なんですか?」



 赤い石が嵌った銀色の首輪を掲げた隊長に、サイゾーが待ったを掛けた。



「ど、どういう意味だ? 我々が騙しているとでも言うつもりか?」

「魔法の暴走を防ぐということは、その首輪を嵌めていると自由に魔法が使えなくなる……そうですね?」

「その通りだ。でなければ、魔法の暴走を防げないだろう」

「その首輪、どうやって外すんですか?」

「そ、それは……」

「ちょっと女王様に嵌めてみせて下さいよ」

「なんだと貴様! 無礼な事をぬかすな!」

「なんで、魔法の暴走を防ぐ首輪を着けるのが無礼にあたるんです?」

「そ、そんなもの……」

「それ、奴隷が嵌める魔道具なんでしょ?」

「ぐぅ……」



 言葉に詰まった隊長の態度が、サイゾーの推理の正しさを証明していた。

 まぁ、オタクにとってはお約束の展開だから、分かって当然だけどね。



「勝手に呼び出した挙句、奴隷扱いして扱き使おうって魂胆ですか? 随分な扱いをしてくれますねぇ」

「ふざけんな! なにが異界の勇者だ、くそババア!」

「邪竜の討伐とかも嘘じゃねぇのか!」

「さっさと元の世界に帰しなさいよ!」



 騙されて奴隷にされそうになったと知って、クラスメイト達が一斉に騒ぎ始めた。

 常人の5倍、10倍の魔翌力を持っている者達だと分かったので、兵士達も槍を構えて本気モードだ。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/05/01(水) 21:19:47.11 ID:sVUFIHo10
 一触即発の状況は、突然頭上で弾けた巨大な火球によって打ち消された。

 火球を打ち上げたのは、勿論サイゾーだ。



「はいはい、みんな落ち着いて。まだ奴隷にされた訳でもないし、帰れると決まった訳でもないから冷静にいきましょう」



 確かにサイゾーの主張は正しいのだが、芝居がかったオタ[ピザ]はイラっとする。

 てか、イケメンとかヤンキーは奴隷にされちまえば良かったのに、割って入るの早過ぎじゃねぇの?



「まずは、我々を騙そうとした事に対して、女王様より謝罪をしていただきたい」

「なんだと、貴様!」

「貴方が僕の息の根を完全に止めるのと、僕が女王様に全力の魔法を撃ち込むのと、どちらが速いと思います?」

「貴様……」

「良い。下がれゴルディ……」



 奥歯がぶっ壊れるんじゃないかと思うほど歯を食いしばっていたゴルディと呼ばれた兵士は、女王の命令に従って後ろへ下がった。



「そなた達を謀たばかるような真似をして申し訳なかった。ただ、あまりの魔翌力の高さを恐れてのことゆえ許されよ」



 女王は腰を折って深々と頭を下げ、兵士達は悔しさを噛みしめながら俯いた。



「なるほど、いつ暴発するか分からない魔翌力の塊を恐れるのは理解出来ます。ですが、このような扱いは到底許容できません。今後は、嘘偽りの無い情報と客人として相応の待遇を提供すると約束して下さいますか?」

「約束しよう」



 サイゾーの要求を女王は迷う素振りも見せずに承諾した。

 良いタイミングとみたのだろう、サイゾーは質問を重ねた。



「では、改めて伺います。我々が元の世界に戻る方法はあるのですか?」

「先程も申した通り、勇者としての役割を果たせば、送還のゲートが開かれる」

「では、邪竜を討伐すれば全員が元の世界に戻れるのですね?」

「その通りだ」

「元の世界に戻った後も、この魔法は使えるのですか?」

「それは分からない。帰ってしまった勇者とは連絡を取り合う術が無い」

「もし、もし邪竜を倒す前に命を落としてしまった場合はどうなります?」

「志半ばにして命を落とした勇者の遺体は、元の世界へと送還される」

「邪竜を討伐して元の世界に戻る時、報酬は持ち帰れますか?」

「勇者としての使命を果たした後、帰還までは10日ほどの猶予がある。その間に報酬を用意して、共にゲートを潜れば持ち帰れるはずだ」



 淡々と答える女王の言葉に嘘は無さそうにも見えるが、厚化粧の裏の顔までは分からない……と言うよりも疑っておいた方が良いだろう。

 サイゾーは腕組みをして暫く考えた後で、キッパリと宣言した。



「いいでしょう。僕は貴方達に協力して邪竜を討伐します」



 異世界を満喫する気満々のサイゾーとすれば当然の決断なのだろうが、勇者気取りのオタ[ピザ]のドヤ顔には、やっぱりイラっとさせられた。
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