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塩見周子「抱きしめてほしくなる」
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1 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:23:05.53 ID:2zoH+TIh0
(その夜はひどいどしゃ降りで)
(テレビ局の楽屋でも雨音が聞こえてくるほどだった)
ザーー…
塩見周子「……すっごいなー」
周子「傘あったっけ。役に立たんか」カチャカチャ
周子「んー、ま、片付けこんなもんかな」
周子「よし」パタン
ガチャ
周子「おまたせー」バタン
デレP(以下P)「うん、お疲れさま」
周子「いやほんと、何時まで働かせるんって感じ」
P「すまん、いける時間ギリギリまで入れたから」
周子「ま、もちろんお仕事ですからねー。きちんとやるけど」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1710908584
2 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:25:40.56 ID:2zoH+TIh0
コツ コツ
周子「あとなんかある?」
P「これで終わり。明日は休みだから、ゆっくりしてくれ」
周子「Pさんのこと」
P「ああ、俺もあがり。明日は久しぶりに全休だな」
周子「お、Pさんも」
P「いくらなんでも、休みくらいはあるよ」
周子「そっかぁ」
P「まぁ、ほとんど寝てるだろうけど」
周子「あはは、わかるわ」
周子「じゃあ、この後は?」
P「今日? ……まぁ夕飯、いや夜食だな。食べて帰るだけ」
周子「ほーうほう」
P「いくか?」
周子「んー、そうねーっ……」ノビー
3 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:26:48.00 ID:2zoH+TIh0
周子「お寿司なのかステーキなのかは気になるところですなぁ」
P「たかる気満々かい。グレード低けりゃそれでもいいんだけどさ……」
周子「お、マジ、いいの?」
P「ラーメンの方が優しいけどな」
周子「この時間のラーメン、罪だね」
P「たまらんな」
P「さて、あと問題は」コツ コツ
ウィーーン ビュォッ
周子「おわ、風つよ」
ザーーーーー
P「これはー……」
周子「うーん。ダメそうやねー」
P「傘さしても、ってくらいだな」
周子「ゲリラ豪雨なら、ちょっと待つっていう手もある?」
P「そうだな…… ちょっと調べるか」
4 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:27:36.85 ID:2zoH+TIh0
P「うわ」
周子「どしたの」
P「落雷で電車が止まったって」
周子「あーあ、あかんやん」
P「……雨雲レーダーだと、あと15分くらいであがりそう」
周子「なら、それからご飯食べて駅行って」
P「終電までに動くかな」
周子「あー……」
P「とりあえずタクシー呼ぶつもりなんだが…… 配車も待ちそうだ」
周子「まぁ、みんな考えることは同じよね」
5 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:28:21.09 ID:2zoH+TIh0
周子「ん、てことは、アタシら帰れない?」
P「いや、バスとか地下鉄あるし」
周子「東京の交通は強いねぇ」
P「だなぁ…… あ、バスは遅れてるって」
周子「なんで」
P「道路冠水。ほら、渋谷って谷だから」
周子「凛ちゃんは谷やった」
P「渋谷さんは谷じゃない」
6 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:28:52.04 ID:2zoH+TIh0
P「仕方ない、雨が弱くなったら、ひとまず駅まで歩こう」
周子「えー。大事なアイドル歩かせるんー?」
P「原宿駅までだから」
周子「え、そっち?」
P「そっちの方が近い。地下鉄も通ってるし、帰れないってことは無いだろう。道で拾えればタクシーも乗れる」
周子「あーあ、帰るころには翌日になってそうねぇ」
P「まぁ、明日はゆっくり……あ、すまん、朝から予定あったか?」
周子「なんもー。何時に帰ってもええよ」
ザーーーーー
周子「帰れるなら」
P「んー……」
7 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:29:26.92 ID:2zoH+TIh0
P「今はもう待つより他ないか。何食べる?」
周子「ラーメン拉麺らーめん」
P「……助かるよ。そっちのソファで待とう。外も見えるし」
周子「ん」
バフッ
周子「Pさん明日はどうすんの」
P「えー。起きて飯食って、洗濯して飯食って寝る」
周子「有意義やなぁ」
P「そうだろう」
周子「皮肉も通じひんのかーい」
P「そういう周子は?」
周子「そーねー。夕方まで寝てからー」
P「有意義過ぎる」
周子「んふふふ」
8 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:30:10.76 ID:2zoH+TIh0
−−−
周子「――え?。じゃあ、Pさんも割とやんちゃだったんやねぇ」
P「別に法に触れたことはないって……」
周子「そんで、普通に大学出て普通に就職した?」
P「まぁ、そうなるな」
周子「ふぅん」
P「なんだよ」
周子「ううん」
9 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:30:42.62 ID:2zoH+TIh0
P「ん……やっと弱まってきたかな」
周子「お。これくらいなら行けそうね」
P「じゃあ、行くか」
周子「……」
P「……周子?」
周子「ねぇ」
周子「Pさんは明日、お休みって言ったよね」
P「ん?」
P「……言ってない」
周子「うわっ、この人さらりと嘘つきよる」
10 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:31:22.15 ID:2zoH+TIh0
周子「つまり、あたしが何言いたいかわかったってことよね?」
P「わかってない、知らない、さっさと飯いくぞ」
ウイーーン コツコツ…
P「もう小降りだな」
周子「ご飯は行くけど。その後でさ」
P「まっすぐ帰る」
周子「そんなこと言わずに」
P「……言わずに、何したいって」
周子「やっぱりわかってるんじゃーん」
P「……」
周子「んふふ、それでね。シューコちゃんと夜遊びしない?」
P「言い方がアウトだからしない」
周子「大丈夫、言い方だけだから」
P「だからってセーフにはならない話だろう」
周子「ん?大丈夫じゃない? 18は超えてるわけだし、固いこと言わんで」
P「言う案件だよ」
周子「あっ、知ってる、これPさんが根負けするパターン」
P「プロデュース業の根性なめんな」
周子「ほんなら、アイドルの根性見したる」
P「出会った時の周子に聞かせたい言葉だ」
周子「いけずー」
11 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:31:59.85 ID:2zoH+TIh0
周子「別にヘンなコトしようってわけじゃないんよ?」
周子「ダーツしたり、カラオケ行ったりしてさ、一晩遊ぼうよー。一夜を共にしちゃおうよー」
P「だから……」
周子「あたし、そういう夜遊びしたことないからさ」
周子「大学生みたいな遊び方」
P「去年まで高校生だったんだから、そりゃあ」
周子「ならそろそろ、遊び方を知るべきやと思わん?」
P「徹夜で遊ぶと、休日潰れるぞ」
周子「まぁ、遊んだ分は確実にね」
周子「でも、潰す価値があるっていうか」
周子「休日のお昼にできたとしても、仕事終わりの夜にやるからこそ意味があると言いますか」
P「……だろうな」
周子「Pさんが一緒の方が助かるんだけどなぁ」
周子「着いてきてくれないなら、一人で行くしかないね」
P「それ脅迫だからな」
12 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:32:29.62 ID:2zoH+TIh0
P「……はぁ」
P「よし分かった」
周子「お?」
P「始発まで付き合ってやる」
周子「お、お、なんだかんだ言って、ちゃんと付き合ってくれるんだからーもー」バシバシ
P「いたい。茶化すならなし」
周子「わわ、ごめんてー」
−−−
周子「中盛り」
P「大盛り、ライス」
周子「うわ、えぐぅ」
P「スープを味わってこそラーメンだと思うわけだよ」
周子「ふむ…… ……あたしも」
P「マストレさん5回」
周子「やめときまーす」
P「共犯のよしみだ、俺のライスでよければ分けてやろう」
周子「わーい」
13 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:33:01.15 ID:2zoH+TIh0
ズーー ズルズル
周子「そんでさ、なにする?」
P「ん?」
周子「このあとー」
周子「徹夜の定番はカラオケって気がするけど」
P「……定番だけど、アイドルとサシは勘弁してくれ」
周子「えー。Pさんの歌声も気になるけどなぁ」
P「そんな面白いもんでもない」
周子「映画、レイトショーは?」
P「絶対寝るだろ」
周子「間違いないわ。時間潰しなら漫喫とか?」
P「それもちょっとな……」
周子「んー…… あっ、ねぇどっか夜景見えるところとかない?」
P「夜景?」
周子「ちょっとロマンティックにさ。なかなか見る機会ないでしょ?」
P「夜景ね…… あー、この時間ならまだやってるか」
周子「お?」
P「まぁ、朝まで時間潰すんだ」
P「遊べるところ、回ってみるか」
14 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:33:34.67 ID:2zoH+TIh0
−−−
チン ウィーーン
周子「おー……」
P「さすがにあまり人がいないな」
周子「何ここ。シアター?」
P「そっちはもう終わってる。ここのロビーが穴場で」
コツコツ…
周子「わ」
P「ちょっとした夜景が見下ろせるんだ」
周子「おー……」
周子「え、ここ無料なん」
P「いいだろう。基本的に用がないと来ないからな」
15 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:34:17.62 ID:2zoH+TIh0
周子「あっちのビルは展望台ないん?」
P「オフィスビルは無理だな。展望台のあるところ、46階のが渋谷にはあるんだけど」
周子「えー、そっちいこうよ」
P「もうやってないんだなー」
周子「んー」
P「あと、2,500円」
周子「うっそ……ペア料金?」
P「おひとり様」
周子「……ま、ここでええわ」
P「助かるよ」
16 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:34:48.04 ID:2zoH+TIh0
周子「はい、それじゃぁ」
ぽん
P「ん、スマホ?」
周子「この辺かなー。よろしゅー」
P「カメラね。OK」
カシャッ カシャッ
P「適当に撮っても」
カシャッ カシャッ
P「絵になるな」
周子「ま、本職ですので」
P「はは、言うようになったな」
周子「じゃあ本職に訊くけど、SNSアップは?」
P「俺が窓に反射してなければ」
周子「はーい」
カシャッ カシャッ
17 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:35:24.16 ID:2zoH+TIh0
P「こんなもんか」
周子「うん、いいね?」
周子「ほいっ、それじゃあPさん、屈んで?」
P「うん? え、おい」
周子「いぇーい」
カシャッ
周子「ピースくらいしてよー」
P「せんよ。なぁ、その写真は」
周子「わかってるって。SNSに出したらりあむちゃん」
P「いくら何でも代名詞にするのは可哀想だろう」
18 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:37:13.45 ID:2zoH+TIh0
P「さて、リクエストには応えたものの、0時で閉まるんだよな結局」
周子「あー」
P「妙案はあるかい」
周子「ん?…… そだ、ダーツ行こうよ。ダーツ」
P「あぁ、それいいな」
周子「よーし、それじゃぁお店は?」
P「バーはダメだぞ」
周子「……なるほど、それは成人したら行こうってことやね」
P「うわ、しまった」
周子「ふふーん。今日はそんな背伸びしませーん」ゴソゴソ
周子「こいつが火を吹くぜ」
カシャカシャ
P「マイ、矢?」
周子「周子ちゃんカスタム〜。バレルを軽めにね」
19 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:37:56.33 ID:2zoH+TIh0
――アミューズメント施設
P「3時間くらいでいいか」
周子「うぃー。へ?、深夜料金か」
P「週末料金も追加だ」
周子「朝までここで遊ぶのは?」
P「……その体力が残っている気がしない」
周子「まぁ、そうね」
P「終わったら終わったとき考えよう」
周子「ほいほい。あ、自分の分は出すよ。おかげさまで、貰うものは貰ってますし」
P「どっちでもいいけど、そうだな。じゃあ自分の分は自分で」
周子「ていうかあたしが誘ったんだから、全部出しても」
P「さすがにそれはいかん。なんかこう、変な気分になる」
周子「え?? なんかちょっと、やらしくない?」
P「そういう意味じゃない」
20 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:38:34.98 ID:2zoH+TIh0
P「ルールはとりあえずカウントダウンかな」
周子「よーし」
ピコン ピコン ピピッ
P「あ、やばい普通に上手い……」
周子「まずはどれだけ減らせるかだもんね」
P「よーしいいだろう」グイッ
周子「おっ……」
周子(……ネクタイ外すの、なんかエロいな……)
ピコン ピコン ピッ
P「よーし、まぐれブル」
周子「やるやん、と…… あっ」
カチン
P「お、外した」
周子「……外したんはそっちやちゅうに」
P「え?」
周子「知らなーい」
ピコン
21 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:39:05.63 ID:2zoH+TIh0
P「結局全敗かー……」
周子「あはは、まぁさすがにね」
周子「そういやここって他のもできるん?」
P「ああ、時間パックだからいろいろできるぞ」
周子「じゃあPさんはどれがいい?」
P「んー、そうだな」キョロキョロ
P「あれとか」
周子「お、ビリヤードできるの」
P「別に上手いわけじゃないよ。ダーツよりはマシだろうってだけ」
周子「いい勝負できるかもね」
ゴト コンコン コン
P「9ボール、ルールは分かるよな」
周子「何となくは」
22 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:39:46.38 ID:2zoH+TIh0
P「それじゃ、こっちからで」
ガッ カーーン
周子「おー、力強い。えーと、1は……」
P「これだな」
周子「あー……入る気はしなけど、さて……」グイ
P(……あ)
カッ カン コン ゴトッ
周子「あはは、違うの落ちたわ」
P「あ、おう」
周子「ん?」
P「いや……1ゲームだけでいいよな」
周子「はぁ。いいけど、どして」
P「いや、別に」
周子「じーー」
P「……」
23 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:40:19.84 ID:2zoH+TIh0
周子「こういう時は凝視するとええって聞いた」
P「……あー ……あまり前屈みになるな」
周子「?」チラ
周子「……おっと」
周子「ふーん、そういうこと……」
P「この選択は俺が悪かった」
周子「やーん、Pさんったら、やらしーんだ」
P「そんなに胸元緩い服だとは……いや」
周子「くっくく、墓穴掘ってはるわ。めずらしー」
P「……」
カッ コン
周子「んー、ほんなら」
ゴトン
周子「見物料は、次の場所を奢りで」
24 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:40:51.53 ID:2zoH+TIh0
――喫茶店
周子「うひー、投げまくったー」
ドサッ
周子「あっつ」
P「あまり変装を解くなよ」
周子「お、なんかスパイものみたいじゃない?」
P「どうだろう……」
周子「しかし、こんな深夜でもやってる喫茶店あるんやねぇ」
P「日本でも有数の繁華街だからな」
周子「そりゃあるか。んー、薄暗くていい雰囲気…… おぉ、メニューにお酒ある」
P「夜だけ販売とかだったかな」
周子「ほー。こんなところ知ってるなんて、やっぱり遊び人やったん?」
P「ゆっくりしたいって言ったのそっちだったよなぁ。さっき探しただけ」
周子「あはは……ふぁ……」
25 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:41:23.97 ID:2zoH+TIh0
周子「……さすがに眠気きはじめたわ」
P「始発までは……あと2時間くらいか」
周子「そろそろ徹夜を後悔する時間だよね」
P「だな」
周子「眠気覚ましは何がええ?」
P「俺はコーヒー……のリキュール」
周子「うわっ、飲む気なん」
P「オフに何飲んだっていいだろ」
周子「それはそうだけど…… コーヒーかぁ」
P「カフェラテにでもしておいたら」
周子「目ぇ覚める?」
P「まぁ、ある程度は。……じゃあカプチーノとか」
周子「お?」
P「エスプレッソにクリーム入れたやつ」
周子「あー。それ行ってみよ」
26 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:42:07.19 ID:2zoH+TIh0
カチャ
P「ふー」
周子「……うん、飲める」
P「それは良かった」
周子「ねぇ、大学生ってこんな感じなのかな」
P「あー……こんなに頑張ってまで遊びはしないだろうけど」
P「遊んでも、本分を全うしないなら留年だな」
周子「あはは、そらそうや」
P「……ん、悪くない」ゴク
周子「Pさーん、いつかあれ行ってみたい」
P「うん?」
周子「なんだっけ、ほら水タバコ吸うとこ」
P「シーシャってやつか。……んふっ」
周子「え、なに」
P「似合いすぎだろって」
周子「でしょー? 我ながらそう思うもん」
27 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:42:37.68 ID:2zoH+TIh0
P「あとは誰が似合うと思う?」
周子「楓さんとか瑞樹さんとか」
P「黙って吸ってくれれば、かな。……数年後の話だけど、俺としてはライラさん」
周子「えー、それは反則やわ」
P「『ミントアイスフレーバーが美味しいのでございますねー』」
周子「あはははは、そんなんあるん?」
P「知らんよ。行ったことないし」
周子「あはは、じゃあ一緒に行こうよ。いける年になったら」
P「まぁ、いいんじゃないか」
周子「……」ズ…
カチャ
周子「Pさんはそればっかりだね」
P「え?」
28 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:43:08.17 ID:2zoH+TIh0
周子「あたしが提案して、それをダメか、いいんじゃないって言うだけ」
P「そうか?」
周子「ま、平気で嘘つきはるもんなぁ」
P「人聞き悪いなぁ」
周子「カラオケとか漫喫は選ばなかった」
P「……」
周子「あたしがバレるような、人が大勢集まるところ……クラブにもしていない」
周子「バーは、まぁ、もうちょっと待つけども」
P「……悪いな。行けるところは、もともと限られていたんだよ」
周子「そうかもしれへん」
周子「でも」
周子「二人きりになる場所も選ばなかった」
P「……」
ポツ ポツ ザザ…
29 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:43:40.66 ID:2zoH+TIh0
周子「これは絶対わざとやろ」
P「……」ゴク カチャ
P「そうだな」
周子「あたしは……こどもなん?」
P「大人でもない」
周子「……いけずやわー、本当に」グデー
P「意地悪で言ってんじゃない」
周子「わぁってるけどー、そうだとしてもー」
周子「……守る対象なんでしょ」
P「仕事上、そりゃ」
周子「それだけ?」
P「……」
周子「今日付き合ってくれたのは、気まぐれ?」
P「それは周子が手段を選ばなかったからだろ」
周子「あたしは」
周子「気まぐれじゃない」
ザザ ザ
30 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:44:13.72 ID:2zoH+TIh0
周子「あーあ、やっぱり歌えるとこが良かった」
P「うん?」
周子「カラオケでもー、なんだっけパブ? スナック? みたいな」
P「無茶言うなって」
周子「歌いたい」
周子「あたしの歌」
周子「そうすれば」
周子「もっと伝えられるのに」
ザァーーー…
31 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:44:48.22 ID:2zoH+TIh0
周子「『真夜中に合図して』」
周子「『飛び回る蝶のように』」
周子「……飛び出したら、追いかけてきてくれる?」
P「……」
周子「そして冷えないように、どこか暖かいところに連れ込んでー」
P「そこまで計算してたら追いかけない」
周子「じゃあ今のなしで」
P「……」
周子「『ギュッて、抱きしめて欲しくなる』……」
P「……」
32 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:45:19.17 ID:2zoH+TIh0
P「抱きしめたりとか、例えばキスしたりとか」
P「そういうのは付き合っている人とやればいい」
周子「それアイドルにゆうー?」
P「俺はそういうのはしないけど」
P「追いかけて捕まえるなら」
P「いつだろうと、どこだろうと探すよ」
P「塩見周子を」
周子「……」
周子「あー、あたしって単純」ケラケラ
周子「こんなめんどいこと言うといてよ」
周子「そんなかんたんな言葉ひとつでさ……」
周子「……やっぱし嬉しんやもんね」
33 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:45:51.85 ID:2zoH+TIh0
――5時
周子「……始発ってまぁだぁー?」
P「まだぁ…… 30分くらいなら駅で待つのもあり」
周子「ん…… タクシー動いてるっしょー……」
P「ここまできてそれかい」
周子「あの、あれ、駅までだけ」
P「徒歩2分なら自分の足で歩けシンデレラ」
周子「……歩くー」
P「じゃあ、まあ、行くか」
34 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:46:29.08 ID:2zoH+TIh0
ピッ ピピ
P「カードで」
ピー
周子「お、晴れとる」フラー
カラン
P「レシートを。……どうも」
カラン パタン
P「ふー」
P「周子」
P「……周子?」
P「え……」
35 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:47:06.46 ID:2zoH+TIh0
P「周子!」タタッ
周子「ほい」
P「えっ」
周子「……」
P「……」
周子「すぐそこにおったけど」
P「……いや」
P「ちょっと陰になって見えなくて」
周子「んー、んふふ」
P「……」
36 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:47:40.84 ID:2zoH+TIh0
周子「逃げたりしいひんよ」
周子「それとも」
周子「蝶みたいに見えた?」
P「それは…… ……あるかも」
周子「捕まえようとしてくれた」
周子「でも抱きしめてはくれない」
周子「それがPさんの愛なんだね」
P「愛って……」
周子「愛じゃなかったら?」
P「……責任、とか」
周子「そ。そこが逃げ場かぁ」
P「……随分と、自信があるようで」
周子「これでも器用に生きている方なんよ」
37 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:48:15.40 ID:2zoH+TIh0
周子「もしあたしがアイドルじゃなかったら――」
周子「今日で何か変わっていたと思う?」
P「何かって?」
周子「Pさんとあたしの関係」
P「……」
P「そもそも会ってないんじゃないか」
周子「そうか、それもあるか」
周子「じゃあ会っていたとして」
P「たらればを重ねたらなんでもありになっていくぞ」
周子「つまり、変わっていた可能性もあると」
P「……あるんじゃないか」
38 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:48:46.95 ID:2zoH+TIh0
周子「抱きしめてって言ったら、抱きしめてくれる可能性かぁ」
P「ただ……周子とは、こういう形でしか出会えていないし」
P「こうでしか出会えなかったかもしれない」
周子「じゃあ、この状況を受け入れるしかないって?」
P「今はそうかもしれない。でも……」
周子「……でも?」
P「……」
周子「……」
P「この出会い方だったとしても」
P「いくらでも変わっていくだろ」
周子「……」
P「周子の人生が変わったように」
周子「ん……」
周子「そやね」
39 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:49:19.15 ID:2zoH+TIh0
――駅改札
周子「あーあ、徹夜して引き出せたの、こんくらいかぁ」
周子「もーちょっと素直になってもバチ当たらんよ」
P「すま…… 謝るのは違うな」
周子「んふふ……」
周子「今日はPさんのつよーい責任感に免じて、無事に帰してもらうか」
P「無事に帰ってくれ」
周子「それとも、これから……」
P「もう寝ろ」
周子「くく…… 担当アイドルにこんなんもって、大変やね」
P「自覚してるからたち悪い」
周子「ね」
P「その口塞ぐぞ」
周子「どうぞー?」ンーー
40 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:49:51.40 ID:2zoH+TIh0
P「……」
周子「んー、これは奏ちゃんの特権かな?」
P「スルーされるところまで含めてな」
周子「あははは」
ピ ガシャッ
周子「――ねぇ。いつか答えてくれるなら」
周子「そしたらその時は」
周子「抱きしめて、ええよ」
コツ コツ コツ…
(その蝶はすぐに雑踏に紛れた)
(去り際の笑顔は)
(白昼夢を夜にみた気分にして)
P「……眩し」
(そんな、どしゃ降りの雨があがった朝)
おわり
41 :
◆WO7BVrJPw2
[saga]:2024/03/20(水) 13:51:21.80 ID:2zoH+TIh0
お読み頂きありがとうございました。
周子ソロ2曲目をテーマに書きました。
https://www.youtube.com/watch?v=6nmRVM2loNY
年明けくらいには書き終っていたんだけど、ドミナント周子が来たので投下です。おめでとう。
周子と夜遊びをしたいだけの人生だった……
過去の周子SS、よければこちらもどうぞ。
塩見周子「どっちがいーい?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1559372967/
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/03/25(月) 22:58:51.19 ID:It3VIV4Mo
おつおつ、面白かったよ
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/03/27(水) 21:20:03.17 ID:VUGOYIavO
おつ。よかったわ。
またそのうち書いてくれ。
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