【安価コンマ】オリウマ娘と共に

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798 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/05(金) 00:30:54.20 ID:WdAq/ul40
『――カペラステークスに行くか』

パピヨン「えっ!?JBCスプリントとチャンピオンズカップは!?』

勿論リベンジの為にその二つのG1に出走するのも良い。パピヨンが出走したいというのなら勿論出走登録をする――しかし。

『ただ闇雲に、ライバルと同じレースを出ているだけではきっと……ダメだと思うんだ』

沢山レースに出て、レースに慣れる。そしてどんどん実力を付けて――それでようやく、リベンジに挑める。

『だから次はキミが力を付けるために走る。そして来年――分からせてやろう。キミというウマ娘の真価って奴を』

ステラライムにも、ブラックマンティスにも、他のウマ娘にも。キミを応援してくれているファンにも、キミに期待していない観客にも――度肝を抜いてやろう。

『……そういうの、大好きだろ』

パピヨン「――――ぷ、ぷは、ぷはは!お兄さんってそういうこと言うんだ!?ぷふはははは!ちょっと意外かも、お兄さんもそう言う年相応っぽいところあるんだ!?」

『……年早々って、別にいいだろう。普通だ普通』

パピヨン「だってお兄さん、いっつもムスっとしてるし〜?――でも、うん。良いね、お兄さん。それ、サイコー」

ぷはは、と笑いながらパピヨンは【貴方】に向けてサムズアップ。

パピヨン「アタシの走りを見た全ての人間に――期待させちゃうような、そんなレース。期待してない人間に、不意打ちで度肝を抜いて分からせる。うん、それっぽい。良い目標かもね?」

『ああ、その意気だパピヨン!やってやろう!

――ということで、次の目標はカペラステークス。着実に経験を積んでいこう。
799 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/05(金) 00:55:18.23 ID:WdAq/ul40
カペラステークス前イベント:安価下2まで
1 パピヨンのヒミツ
2 パピヨン、ライムと彼氏の為に――食べる。
3 グリーンシルフィー、ダートの可能性
4 自由安価



これだけです。お疲れさまでした、おやすみなさい。

海外に行く条件として、「ステラライム、ブラックマンティス、グリーンシルフィーの誰かにレースで勝つ」を設定させてもらいます。

もし勝てて海外旅行行きたいなってなったら、考えてみてください。勝てるかはコンマ次第で。
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/05(金) 01:03:01.61 ID:P9RwrKGDo
なんかわからなくて惹かれる2で
おつおつ
ライバルに勝っていざ!海外!してぇ!
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/05(金) 01:19:26.55 ID:O4fCA+7DO
3
802 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/05(金) 23:38:43.46 ID:WdAq/ul40
ライム「――お願いしますパピヨンさん!わ、私の料理の感想を教えてください!」

ある日の放課後、アタシはライムにそうお願いされて食堂の席に座っていた。周りにはちらほら生徒がいるけど、ちょっとお喋りをしていたりとかが主で、ご飯を食べる!みたいな雰囲気の子は誰もいなかった。

パピヨン「ねえ、なんでアタシなわけ?シルフィーとか、マンティとか……あ、ほら。食べるの大好きな葦毛のウマ娘とか日本総大将とか呼んでさ」

ライム「それも考えましたけど、出来るなら私。食べて満足して貰いたいんです……そ、その人たちの胃袋を満足に満たすとか出来ません!」

何とも言えない責任感。こういうところがライムらしいなぁと思う、いやそれの被害を受けているのはアタシなんだけど。

パピヨン「というか、ライムなんでいきなりこんな?料理に目覚めたとか?」

ライム「あ、いや、えっと、そのぉ……」

――あれあれ急に顔が真っ赤になったぞ?おやおやおやぁ……?

ライム「……ら、来月はクリスマスじゃないですか?ですからその、あの。パピヨンさんにも話したとは思うんですけど、○○くんに……」

パピヨン「あ、なるほどね。彼氏君に料理作ってあげたいんだ、クリスマスの」

ライム「で、ですから!そういう関係じゃないですから!パピヨンさん!」

手をぶんぶん振って否定するその姿、怪しい。怪しいぞぉライム〜?ニヤニヤと笑ってからかってやる。

――成程、はいはい。つまりアタシを彼氏君に提供できる料理かの判断材料にしたいわけね?というか練習台と。

……………………。

パピヨン「………んま、別にいいけど。ほら、作ってきなよ料理。食べてあげるから」

ライム「――!す、すみません!ありがとうございます!で、ではある程度準備は出来ているのでちゃちゃっと作ってきますね!」

ぱぁっと、明るい笑みを浮かべてライムはキッチンへと走って行ってしまった。はぁ、嫌な笑顔。彼氏君にそんな美味しいものを作ってあげたいの?

ケーキとか作ってあーんとかするつもり?はぁ、アタシの方が今は長く付き合ってると思うけどなぁ。

…………ぽっと出の彼氏君め。いや、ぽっと出はアタシか。なーんて。思いながら頬杖をついて料理を待つ。
803 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/05(金) 23:39:27.91 ID:WdAq/ul40
照り焼きのチキン、クリスマスリースみたいなサラダ、ブッシュドノエル――その他にも結構な量の料理。というか全体的に……豪華。

パピヨン「……というか、あと茶色くない?お肉多いね――あ、いいから。理由はなんとなくわかるから」

まあ男の子ってお肉好きだもんね、アタシも好きだけどさ。チキンとか。

ライム「あ、あはは……す、すみません。でも、無理して全部食べて貰わなくても大丈夫ですから!ちょっと張り切って作ってしまったなぁと思いましたので――」

パピヨン「は?残す?冗談でしょライム」

――全部平らげるから、ありえないんですけど。

コンマ6以上で太り気味。

コンマ直下
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/05(金) 23:57:05.35 ID:O4fCA+7DO
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/06(土) 00:55:30.52 ID:ESpiw8sOo
ちょいちょいしっとりしかけてるなw、一息つけるといいのですが
806 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 18:13:58.87 ID:kNx0CHnD0
ごめんなさい、寝落ちしてました。いつもより早い時間ですけどちょっとやります。



パピヨン「…………ふぅ、ご馳走様」

ライム「ほ、本当に全部食べちゃいましたね!?で、でも沢山食べてくれて、アタシ嬉しいです!あ、ありがとうございます!」

――苦しい。お腹がもうパンパン、ちょっと見栄貼っちゃったかも……。

ライム「そ、それで感想を教えてもらっても……」

パピヨン「……一応言っておくけどこんな量、絶対彼氏君食べきれないからね」

まあ作り過ぎちゃったって言ってるからそこは大丈夫だと思うけど。ライムって張り切りがちだしねぇ。

……全部美味しかったけど、料理で気になったところとかをいくつか教えてあげる。

ライム「なるほど……ありがとうございます!」

パピヨン「アタシの好みで結構言ってるから、彼氏君が好きな味付けになるかは分かんないけどね。……
というか、さっきの質問だけど」

ライム「はい?」

パピヨン「マンティとかシルフィーがいない理由!そっちは教えてくれてないでしょ?」

――まあ、別にどんな理由でも良いけど。アタシが暇そうだったとか、そんな感じ?

ライム「パ、パピヨンさんが……一番はっきり感想を教えてくれそうだったので」

パピヨン「……別にそんな事無いと思うけど」

ライム「パピヨンさんが美味しいって思う料理になれば、○○くんも美味しいって思ってくれるんじゃないかなって、なんとなくそう思ったので……なのでまずはパピヨンさんの為に料理を作りたくて」

パピヨン「…………」

ライム「あ、あはは、すみません。私もなんでパピヨンさんだけ呼んだのか、上手く言語化できなくて……


パピヨン「……ふ〜ん、ま。別に何でも……いいけど、まあ、また何か作ったら呼んでよ。お兄さんにも沢山食べて身体を作れって前言われたし、都合がいいから」

ライム「え、本当ですか!?あ、ありがとうございます!」

パピヨン「…………」

――まあ、今この瞬間だけはアタシがライムを独占してるし、ちょっと気分が良いかも。
807 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 18:27:58.10 ID:kNx0CHnD0
――秋華賞が終わってトレーナーさんが言った事は、「暫くは休憩しましょう」でした。

桜花賞7着、オークス1着、秋華賞3着――かつての親友と約束したトリプルティアラ、結局は一つしか冠は取れませんでした。

弟くんも秋華賞が終わってすぐ電話で、お疲れさまと励ましてくれて。とても――嬉しかったはずなんです。けど、私にはどうにも――喜べなくて。

シルフィー「…………」

トレーナーさんもきっとそんな私の気持ちが分かるんでしょう。ですから、一旦レースからは離れて来年からまた再始動――そういうつもりで言ったんでしょう。暫くは休憩しましょうと。

――――本当にそれでいいのか、という気持ちが私の中に沸々と沸き上がります。

トリプルティアラはもう取れません。というか桜花賞に惨敗した時点でその夢は無くなってしまいました。では、今後のレースは?アタシはまだまだ走れます、選手としてこれからも走ると考えたとき――ふと、もう一つの選択肢が浮かび上がりました。
808 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 18:28:29.57 ID:kNx0CHnD0
シルトレ「――ダートですか?」

シルフィー「はい、芝からダートに転向して結果を残したウマ娘や、芝もダートも両方走れるウマ娘……その両方がいるのですから、可能性はあると思うんです」

シルトレ「…………そうですか」

きっと私のお友達にダートで走る子が多いから――その選択肢に気づけたのかもしれません。でも、だからと言ってダートを軽視しているわけではありません。

私でもダートなら輝けるかも――そんな考え、同室のパピヨンさんを見て言えるなら、とんでもないおバカさんです。

シルトレ「まあ、一度確認してみましょうか。トリプルティアラという夢を聴いて、私は芝での走りにばかり注目していましたが、可能性はあります」

シルフィー「は、はい!あ、ありがとうございます!」


結果は?:コンマ直下
1-5 芝を走ろう
6 まあ走れなくはないけど
8 普通に走れてはいます
9 両方いけます!
0 ――なんで芝を走って?
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/06(土) 18:41:00.43 ID:Q+P4YrvDO
はい
810 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 19:30:23.42 ID:kNx0CHnD0
シルトレ「…………はい、お疲れさまです」

シルフィー「は、はぁ、はぁ……はぁ、はぁ」

全然走れませんでした。脚が思うように動かず、蹴っても蹴っても前に進まない。

――やはりそう現実は上手くいきません。ダートを走ってみると、パピヨンさんにライムさん、マンティさんの凄さが分かります。

シルトレ「ダートも芝も走れるという才能は稀有な物ですから、気を落とさないでくださいシルフィー」

シルフィー「はぅ」

……あ、頭を撫でられてしまいました。よしよしと優しい手つきで撫でられて……は、恥ずかしいです。

シルトレ「……焦らず行きましょうシルフィー。ゆっくりと準備をして――来年こそ勝負をしましょう。だって貴女は私が信じたウマ娘なんですから」

シルフィー「トレーナーさん……は、はぃ。あ、ありがとうございます……」

――本当は年明けから次走の話をしたい、という話でしたが。トレーナーさんと共にトレーナー室で次走の話をすることになりました。

目標を決め、しっかりと努力をして、またG1の大舞台で勝利を収めたら――きっとあの子も喜んでくれますよね?
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/06(土) 19:48:01.15 ID:ESpiw8sOo
アグネスのやべーやつや産駒から見た余なり両刀はなかなか難しい
812 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 19:55:14.21 ID:kNx0CHnD0
――JBCスプリント、大井で開催されるダート短距離G1。東京盃でパピヨンと戦い、勝利したらブラックマンティスも当然出走するレース。

『現地で見に行かなくてよかったのか?』

パピヨン「別にいいでしょ、テレビで見れるんだし。あ〜でも確かに、現地でボロボロに負けたマンティをちょっと煽れないのは寂しいかも?」

ぷーくすくす、と笑うパピヨン。しかし【貴方】はパピヨンがそんなことをするウマ娘ではないことをとてもよく知っている。

素直になれないのなら無理やりにでも連れて行くべきだったかもしれない。いや、まあ……それはそれで後が怖いか。

――本日の一番人気、3番ブラックマンティス。東京盃で見せたあの直線一気を見せることが出来るか。

パピヨン「うわ、しかも一番人気じゃん。これってアタシって超強いウマ娘に勝ったからってことだよね?」

『……ああ、そうだな』

あの末脚を見て、ファンになった人も多いだろうに――一番人気という圧があっても、テレビ越しに見るブラックマンティスは何も変わっていなかった。

――堂々としている。その視線はただただ己の勝利だけを見つめていた。

マンティ「く、くは、はははは――!この俺様の勝利の踏み台として、お前らを使ってやる、だから光栄に思え――はははははっ!」

パピヨン「うわ、絶好調……ほんっと、凄いなぁマンティ」

あのキャラ後でどうしてんだろ。絶対恥ずかしいよね。……【貴方】は話を振られても苦笑いをすることしか出来なかった。

――大井レース場にスピード自慢のウマ娘が揃いました、ダートレースのスピード決戦JBCスプリント。今宵はどのウマ娘がダートスプリンターの栄光を手にするか。

――さあ各ウマ娘ゲートイン完了。出走準備整いました。

――――スタートいたしました!

JBCスプリントが、始まった。

813 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 19:56:59.59 ID:kNx0CHnD0
ブラックマンティスは――:コンマ直下
1-4 一着!!!
5-6 二着!
7 三着
8-9 ダメだった……
0 おおっと
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/06(土) 20:45:22.20 ID:ESpiw8sOo
!!!
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/06(土) 20:47:24.34 ID:ESpiw8sOo
マンティごめん……
816 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 21:25:03.50 ID:kNx0CHnD0
はじめての「おおっと」です。こういうことをやります。



おおっと――:コンマ直下
1-3 掲示板には"レコード"の文字
4-5 誰も狩人には追い付けない
6-7 脚を挫いて……。
8-9 故障発生
0 ――
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/06(土) 21:46:59.88 ID:Q+P4YrvDO
どうなるか
818 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 22:55:02.30 ID:kNx0CHnD0
――各ウマ娘出遅れることなく進んでいきます。先頭には逃げ宣言6番、その後ろにすーっと並んで9番、2番のウマ娘が並び先行集団、そして最後方にはブラックマンティス。

ブラックマンティスの何時もの展開。最後方、殿から他のウマ娘の様子を伺い、最終コーナー最終直線で一気に大外からごぼう抜き――これが、ブラックマンティスの戦い方だ。

その戦いを二回経験したパピヨンにとって、それは異様なプレッシャーを感じる走りだった。後ろから「何か」が来る。何か恐ろしい存在がぐんぐんと迫ってくる――恐怖以外の何物でもない走り。

パピヨン「やっぱいつも通りの展開だよね、結局マンティが全部差し切るか、差し切らないかの展開」

『……随分とマンティに肩入れしているな。友達だからか?』

パピヨン「はぁ〜?なにお兄さんそれ、キモいんだけど〜?……そりゃ、友達ってのもあるけど」

アタシに勝ったんだし、他の短距離で負けて欲しくなんかないって思うくらい、普通でしょ。

【貴方】からぷいっとそっぽを向いて、パピヨンはまたテレビを見る。

マンティ「――――は!」

――さあ、最終コーナーを曲がり最後の直線!未だ先頭は6番!後続との差は3バ身ほど!しかしここで大外から迫るウマ娘!3番ブラックマンティスが先頭を狙っている!

パピヨン「お、いけいけ〜!」

『随分と気の抜けた応援だな……』

狩人が足にググっと、力を入れ一気に前を往く。スパートをかけた鋭い切れ味の末脚は、そのまま前方のウマ娘を差し切って――――。
819 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 22:56:42.23 ID:kNx0CHnD0


マンティ「――――っ!」


パピヨン「ぁ……?」

『――――!』

その瞬間。マンティの顔が酷く歪み、二人の顔から――一気に血の気が引いた。

――ブラックマンティス来ない!スーッと後方に下がっていく!これは故障発生か!?

故障発生。その言葉がパピヨン頭の中で繰り返される。しかし中々意味が理解できない。理解が追い付かない。

故障。故障、故障――スパートの時に脚を挫いた?いやでも、あれくらいマンティなら別に――――え、こしょう?もう、レースが出来ないとか――マンティが。マンティが?

『――おいパピヨン、パピヨン!』

パピヨン「へっ!?ぁ、お、お兄さん――?」

『落ち着いて、今キミ顔が凄いことになってたぞ。まずは大きく鼻からゆっくり吸って、口から吐いて――』

アタマがまだ混乱してる、お兄さんに言われるがままに深呼吸をするけど、なんだか変わったのか変わらなかったのか、よく分からない。

――一着は見事に逃げ切りました6番!JBCスプリントを制し、栄冠を手に入れました!初のG1タイトル!

――しかし、心配なのはブラックマンティス。今救急車に運ばれていきました、何事も泣ければよいのですが――――。

パピヨン「――――」

テレビで逃げウマ娘が一番にゴールをした、実況が聴こえてくる。けど、そんなのは全然……どうでもよくて……。

――ぷるるるる。と鳴るスマホの音にも、気が付けないまま。JBCスプリントは幕を閉じた。
820 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 23:28:50.53 ID:kNx0CHnD0
マンティ「――――あ、パピヨンさんに、皆……」

ライム「マンティさん……!」

――後日、アタシといつもの仲間でマンティのお見舞いに行くことにした。病院のベッドの上で、患者衣を着ているマンティをみて……アタシは、また血の気が引いていく感じがした。

…………右足に巻かれたギプスから、目が離せない。

シルフィー「マンティさぁん……!うぅ、うぁあぁ……!」

マンティ「ひぁ!?ちょ、シルフィーさん……ライムさんも!?」

二人が涙目でマンティに抱き着きに行く、それを顔を赤くしながらマンティは抱き着かれている。

……ヘルプミー!な、目をこちらに向けられるけど、アタシには何も……はぁ。

パピヨン「……気持ちは分かるけど、マンティは怪我人だしそこまでにしておきなよ」

ライム「あっ、ごめっ、ごめんなさい……私、ちょっと、全然考えられてなくて……」

シルフィー「ぐすっ……ごめ、ごめんねマンティさん……だ、大丈夫?」

マンティ「だ、大丈夫。全然大丈夫ですからぁ……」

――へたっぴな笑顔で大丈夫というマンティ。けど全然大丈夫そうには――見えない。

マンティ「……全知半年の骨折、らしいです。スパートで力を入れ過ぎて折れちゃったのかもって、お医者さんが……」

――――半年?半年も、このままで……マンティは、走れないの?

マンティ「リハビリとかを頑張ればもっと早く治るかもしれない……けど、安静の為、半年は必要と」
821 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 23:30:26.39 ID:kNx0CHnD0
ライム「――」

シルフィー「は、半年、も……」

マンティ「だ、大丈夫です!半年頑張って休んで、リハビリもすれば――また走れるようになりますから!」

ぎゅっと拳を握って、大丈夫とアピールをするマンティ。さっきから、そんなアピールが多くて、主張が激しい。

――あーだめだ。ずっと頭が、ふわふわしてる。

パピヨン「……し、しっかり、休んでね。アタシ……待ってるから」

マンティ「――――はい。わ、私も、またパピヨンさんと走りたい、ですから――」

ライム「う、うぅぁあ……!わ、わたし、も、マンティと走りたいよ"ぉ……!」

ああまたライムが抱き着いて、服に涙とか鼻水が……。

シルフィー「…………ぐすっ、今はしっかり休養してくださいね。また今度お見舞いに来ますから……」

――――こうして、お見舞いが終わった。最後にギプスにメッセージでも書こう!ということで、早く治ってねみたいなメッセージを書いて……終わった。
822 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/06(土) 23:35:28.46 ID:kNx0CHnD0
――――:コンマ直下

コンマ3以上で。
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/06(土) 23:40:48.26 ID:xWxG7hcRo
なに怖いよ……
824 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/07(日) 00:03:35.48 ID:5wtNQhHU0
パピヨン「――――忘れ物しちゃった、はぁやらかした」

帰り道の途中、マンティの病室に忘れ物したことに気がついてアタシ一人病院に戻ってきちゃった。

……忘れ物だけ取って、早く帰ろ。なんだか今、マンティの顔とかちゃんと見れない気がする。というかさっき会った時も……全然話せなかった。

病院に入って、受付のお姉さんに話して、マンティの病室に向かう。なんとなく静かで、病院の匂いって感じの匂いがする。

パピヨン「……あれ」

……マンティの病室に誰かいる、そっとドアの窓から顔を覗かせて……見るとそれはマンティのトレーナーさんだった。和服で、アタシくらい身長のちっちゃな、妙に威厳のあるトレーナーさん。

マンティ「――――!――!」

マントレ「――」

マンティ「――っ!……っ!」

……声は聞こえない、けど何か話していることは分かる。何か言い争ってる……?

…………マンティが泣いていることも、分かる。ぼろぼろ大粒の涙が零れ落ちて、患者衣に小さな水玉を作る。

パピヨン「……っ」

アタシたちが来た時、全然泣いてなかった。アタシたちが泣いてばかりで――きっと、マンティは我慢してたんだ。今にも泣いてしまいそうなのを、堪えて。アタシたちに心配させまいと――大丈夫なアピールまでして。

――――いけないものを見てしまった気分。トイレにでも行って少し時間を潰してから、また来よう。
825 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/07(日) 00:32:22.80 ID:5wtNQhHU0
マンティ「――あ、パ、パピヨンさん……!ど、どうかしましたか?」

パピヨン「実は忘れ物しちゃって取りに来たんだ〜ごめんね、いきなり来ちゃって」

病室にはもうマンティしかいなくて、トレーナーさんの姿はなかった。アタシ的には嬉しいけど、何処行っちゃったんだろ……。

……不思議そうな顔をしているマンティ。その眼もとは、隠せないくらい真っ赤だった。トレーナーさんが戻ってくるかどうかも分からない、ほんとさっさと帰らないと……。

パピヨン「ん、あったあった……」

マンティ「…………」

忘れ物は見つかった、だからもう帰った方が良い。アタシはただの……友達だ。ブラックマンティスの同期で、同じレースも走った、ただそれだけの。

さっきのアタシみたいに、トレーナーさんが外で待ってるかもしれない!本当は大事な話があるのにアタシがいるせいで話せない……そう、きっとそう!だから、早く帰らないと――。

マンティ「……じ、実は私。ずっと……パピヨンさんに、憧れてたんです」

パピヨン「へっ?」

いきなりマンティが話し始める。どしたの突然、と思わなくもないけど……え、アタシに憧れ?

マンティ「私がこの学園に来たのは……お家の期待に応えるためなんです。私がもし結果を出せば、それだけでお家の威厳に繋がりますから」

――――期待に応えるために走る。期待、という言葉はアタシには――とても聞き覚えのあるものだった。

マンティ「入学した時はもうすぐに走るのも辞めちゃいそうなほど、辛くて……でもそんなとき、パピヨンさんの走りを見たんです。最初の模擬レースで楽しそうに先頭を往く、貴女の走りを」

とても気持ちよさそうに走るその姿を見て、私は――思い出しました。初めて走り始めたときに感じた風の気持ちよさを。

――そうだ、私は、この風が好きで走り始めたんだって。
826 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/07(日) 00:51:52.09 ID:5wtNQhHU0
パピヨン「――――」

ねえ、待って。待ってよ。そんな――肩の荷が取れたみたいな顔で自分語りしないで。自分だけで気持ちよくならないでよ。

マンティ「だから、この前の東京盃でパピヨンさんに勝った時は凄い嬉しくて!あ、でも抜くときにちょっと……あ、あんなことを言ってしまって……!ほ、本当にごめんなさい!けど、憧れてたあの走りを間近に見れてとても嬉しかったんです!」

風を感じれました、初心を思い出せました。家族の期待じゃなくて、私が走りたいから走る――そのレースが、どれだけ楽しいのかを思い出せました。

待って、ストップ。止めて――そんな話、聞きたくない。口を閉じて、閉じてよ――!

マンティ「ですから、こんな風に脚がなっちゃう前にパピヨンさんと走れて私は――――

パピヨン「は――――?」

――こんな風に脚がなっちゃう前に?アタシと走れて――良かったって?

――ふざけんな、ふざけんなふざけんな!



パピヨン「――――ふざけないでよ!!!!!」


827 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/07(日) 01:03:09.59 ID:5wtNQhHU0
マンティ「ひゃぁ!?パ、パピヨンさん!?」

パピヨン「何その言い方、何その雰囲気!?まるで――もう走れないみたいな、もうアタシと走れないみたいな!何気持ちよく自分語りしてるの!」

――身を乗り出して叫ぶ。ああもうムカつく!全部全部、全部イライラする!

パピヨン「――これからもアタシとマンティは走るんだよ!?その話し方、勝ち逃げのつもり!?」

マンティ「ぇ、いや、ちがっ……!そ、そんなつもりじゃ……!」

パピヨン「そんなつもりだよ!なーにが、憧れのパピヨンさんだ!憧れ憧れって、そんなウマ娘じゃないしアタシは!」

――アタシはアンタのライバルなんだけど!?だから一抜けとか許さないから――骨折でちょっとメンタル落ち込んでるのかもしれないけど、そんなの許さないから!

思いっきり叫ぶ、思ってること全部言う。友達だけど、ライバル!だから、これからもずっとずっと走るの!

マンティ「――――で、でも半年、半年も走れないんですよ!?リハビリも、とても大変らしいですし、今まで見たいに走れるかどうかも、分からないんですよ!?」

パピヨン「はぁ!?なにそれ、意味わかんないんだけど!」

マンティ「私はもうトゥインクルシリーズで、貴女と――同じレースには出られないかもしれないんです!半年の怪我は、そういうものなんです!お医者さんも、トレーナーさんも……そう言ってるんですよ!?」

――全治半年、完全に治るまで半年かかる。そこからトレーニングも含めたらまともに走れるようになるのは一年前後くらい。それまで時間をかけても、今くらい走れるようになるか――もっと時間がかかるのかもしれない。

真っ赤な目から涙をぼろぼろこぼしながら、マンティも叫ぶ。なんだ、そんな大きな声出せるんじゃん……!

マンティ「わたっ、私だって……!走りたいですよ……!もっともっと、パピヨンさんとも、ライムさんとも……シルフィーさんとだって……!走りたいですよぉ……!」

パピヨン「じゃあそうすればいいじゃん!もっと我が儘になろうよ!お医者さんに言われたから、トレーナーさんに言われたから……!?関係ないじゃん!?」
828 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/07(日) 01:08:34.14 ID:5wtNQhHU0

マンティ「う、うぁ、う"ぅ"ぅぁぁぁぅあぁ……!」

パピヨン「マンティは諦めないでリハビリ頑張る!アタシも頑張る!――マンティが勝負したくなるくらい、憧れなくなるくらいアタシが強くなって――一年後に立ちはだかるから!それに挑んで!」

――マンティにふさわしい相手になるために、走れないなんて思えなくなるくらい強くなって。待ち受ける。ゲームのラスボスみたいな、魔王みたいな、そんなウマ娘になる。

パピヨン「――絶対戻ってきてよ。待ってるから!アタシも滅茶苦茶頑張るからさ……!ぐすっ、期待して待っててよ!アタシもマンティに期待してるから!」

アタシもなんだかボロボロ涙が出てきて、溢れて止まらない。

――結局最後の方はお互いに何言ってるのか分かんなくなっちゃって。泣いて、怒って――最後にちょっと笑って、それは終わった。

頑張ろうね――なんて言い残して病室を飛び出し、病院から出る。ウマ娘専用の道路を、走って走って。スタミナが無くなっても走って走って――走りまくって。
829 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/07(日) 01:16:33.50 ID:5wtNQhHU0
パピヨン「お兄さん!!!」

『うわぁあ!?パ、パピヨン……?」

トレーナー室。バァンと勢いよく扉を開けると情けないお兄さんの姿が。こっちは色々やってきたばかりだというのに、呑気だと呆れてしまう。

パピヨン「――――ねえ、お願いがあるんだけど!」

――マンティにああ言ってしまった、期待させてしまっている。ならそれには全力でアタシが応えないといけない。

ラスボス?魔王?ようは――マンティが憧れてたアタシよりも圧倒的に強いアタシになって、最強のダートウマ娘になる。

その手段、その方法を――前に、聞いた気がする。



パピヨン「――――海外のダート!G1!獲るよ!」



思うのは簡単だ、これだって勢いだ。お兄さんには呆れられる、考え直せと言われるかもしれない。計画と違うとか――でもそんなの、アタシの我が儘で全部吹き飛ばしてあげる。

――――だって、アタシのトレーナーなんだよ。お兄さんは?これくらい、何も言わず受け入れて欲しいな。
830 : ◆OX0aJKbZO.0H [saga]:2024/07/07(日) 01:20:02.37 ID:5wtNQhHU0
今日はこれで終わりです、時間がかかりましたがありがとうございました。

マンティが骨折して、あーだこーだと進めたらこうなりました。マンティが憧れられないくらい圧倒的に強いウマ娘になって、また戦いましょう。

カペラステークス、そしてチャンピオンズカップ。クリスマス、大晦日、くじ引き――海を越えて。イベントは盛りだくさんです。
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/07/07(日) 02:32:38.72 ID:f+39JrSoo
おつ!
アオハルだなぁ……!
マンティのキャラ設定改めて確認したけどそうだね、これパピヨンに重矢印向いて然るべきやつやん
マジ勝たないといけんなあ!
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