剣聖が鍛冶屋を営むようです

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 17:56:58.92 ID:rQid436VO
このスレは剣聖と呼ばれる冒険者が鍛冶屋を経営するスレになります。安価、コンマを利用する安価スレになりますのでご了承ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1708765018
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 17:57:43.12 ID:Il1pPmGCO
遠い昔。生命力と魔力に満ちた大地が広がっていた時代。
ある神がヒトと呼ばれる種族を創った。それは後に人間と呼ばれた。
ある魔神も対抗し、同じくヒトを創った。それは後に魔族と呼ばれた。

神と魔神の仲はすこぶる悪く、些細なことで争い、憎み合っていた。
光、即ち生命を司る神と、闇、即ち死を司る魔神。
正反対の存在である二柱がお互いを忌み嫌うのは必然であり、そんな彼らが生み出した人類と魔族が対立するのも道理と言えよう。

お互いがお互いを見下し、罵り合う。そんな日々が続いたらどうなるかは言うまでもない。
当然のように戦争が始まり、大地が赫く染まるほどの血が流された。

どちらが真に優れたヒトか。どちらかが滅べば解るはずだと。
繰り返される侮蔑と嘲笑の果てに辿り着いた、優劣を決める手段。
それが絶滅戦争であり、そこに和解の選択肢は一切存在していなかった。

はずなのだが。どちらかが滅ぶまで終わらない戦争が、二人の犠牲によって、止まった。

人間の王子と魔族の姫君。決して交わるはずのない二人はお互いに惹かれ、そして結ばれることのない世界の不条理に嘆き、命を落とした。

何故二人が死んだのか。その顛末については定かではない。世界各地の伝承によって全く異なるのだ。
だが、その地域の風習に合わせ、先人の過ちを今を生きる子供たちに伝える。
その役割こそは不変であり先人の遺した教えを胸に、同じ過ちを繰り返さないように手を尽くす。

悲劇の主役たる王子の名は『アダム』。そして、姫君の名は『イヴ』。
この名前は、破滅に向かっていた世界に一石を投じ変革を為そうとした英雄として語り継がれている。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 17:58:39.50 ID:417Cx3zYO
そして、現代に至る。人魔が手を取り共に歩む時代。
悲恋に終わった王子らが何よりも求め、手に入れることができなかった安穏とした世界。
そこにヒトは生きている。

ドラゴンを一刀のもとに斬り伏せた青年は、臓腑に溜まった息をゆっくりと吐く。
そのまま刃にこびり付いた血を拭い、長剣を鞘に納める。
王都有数の職人が手掛けた一振りなだけあって手に馴染む素晴らしい逸品だと、心中で謝辞を述べた。

これをプレゼントしてくれたギルドの職員には感謝している。
愛用していたS5に比べると幾分と性能…というより適性が違うので最高のパフォーマンスは発揮できていないが、普段使いには問題ない。
寧ろ代替品として使うには充分なくらいだ。

使い物にならなくなったS5を見て、親父は何と思うのだろうか。
そこまでの激戦を生き延びたのか、と感慨深く思うのか。
それとも、武器を粗末に扱いやがって野郎ぶっ殺してやる、と地獄で中指を立てているのだろうか。
ふと物思いに耽るも、彼の心情を知る機会など全く無かったのでどう思っているのかさっぱり分からない。

そんな無駄な時間は、馬車の運転手の声で中断された。

「ありがとうございます旅の方。まさかこんな場所で煉獄竜と遭遇するとは…」

乗客と愛馬を連れて避難していた運転手は、戦闘が終わったのを把握し戻ってきた。
手には氷魔法で冷却されたジュースが握られている。
せめてもの礼なのだろう。ありがたく頂戴しておいた。

少し前に季節外れの大雪で、火山近辺が凍りついたと聞いている。おそらくはそれで棲家を追われた逸れなのだろう。
人里近くで【煉獄竜プルガトルス】が目撃されることは滅多にないことだ。異常気象により発生したイレギュラーと見るのが妥当なところだ。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 17:59:15.23 ID:iDj+Sx/LO
プルガトルスと交戦したのは、目的地である商業都市【コンスティア】を目視できる渓流地帯だ。
溶岩が流れ、熱気が立ち込める灼熱を好むプルガトルスが、このような場所に移り住む話なぞ聞いたことがない。

まあ、なんにせよ。死人が出ずに済んでよかった。本当によかった。
安堵のため息を漏らし、ジュースを一息に飲み干した。
優しい甘さとシュワシュワした炭酸が心地よい、爽やかな味だ。

「…しかし、プルガトルスをこんなあっさりと、しかも単騎で仕留めるとは随分と腕が立つようで。さぞ名のある冒険者なのでしょうな」

否定はしない。諸々の功績を評価され、特例上位クラスに認定された側としては、自身が無名だと宣うことはできなかった。
上位クラス、A級冒険者はそれなりの数いるのだが、特例上位クラス、S級冒険者ともなるとそうはいかない。

一国に二人いるかどうか、という程度に稀有な存在だ。
救国の英雄と呼ばれるほどの傑物でなければ土俵に上がれないのだから、さもあらんと言ったところだが。

かく言う自分も、それだけの名声を持っていることは自覚している。
今に至るまでに多すぎる物を喪ったが、後悔はしていない。
あの時の自分では変えられない運命をいくら嘆こうが意味はないのだから当たり前だ。
それに、その過去があったから今があるのだ。
今の自分を誇りに思っている以上、喪失に苦しんだ凄絶な過去も捨ててはならない大切なものである。

さて。そんな会話をしている間に、偶然同じ馬車を利用していた魔法使いが水魔法と風魔法を巧みに操り、プルガトルスによってグズグズに融解していた道路を整備する。
魔法使いがもの凄く頑張ったので、死んだ道路が最低限の機能を取り戻した。

荷物の点検を終えた運転手は乗客を再度乗せ、馬車を動かす。
移動を再開したのを確認し、ステラは満足気に口笛を吹きプルガトルスの死体を牽引する。
ギルドに引き渡せば相応の金銭に換金される。退屈だった道中での暇潰しの成果としては上々と言えるだろう。
コンスティアでの活動資金はかなり蓄えているが、労せずして資金を増やせたのだからホクホク顔になるのも仕方のないことである。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 17:59:55.60 ID:m27i/Y6WO
「おい。そこのあんた。あんただよおい。おーーい」

どこからともなく聞こえていた声が自分に向けられていることに気付き、口笛を中断して馬車を見上げる。
馬車から身を乗り出している商人は、ヒラヒラと手を振っていた。こちらも軽く会釈して答えておく。

「いくらなんでも上機嫌すぎだろ。ここまで大声出さないと気が付かないかね。…まあ、いいや。お前さんはコンスティアで何をする予定だい?入り用の物があれば安く売ってやろうと思ってな」

それはありがたいが、何故値引きしてくれるのだろうか。
気になったステラは問うも、あっけらかんとした様子で商人が答える。

「そりゃ、煉獄竜を仕留めた礼だよ。速攻で囮役になった上にキッチリ仕留めてくれたおかげで、こっちの商品の損害はゼロだ。出会した時は死ぬのだって覚悟してたんだから、これくらいするのは当たり前だろ?」

なるほど、得心がいった。であれば、利用しない手はない。
が、コンスティアに移住するにあたって何が必要になるか把握できていないので、ひとまず今は保留してもらうことにした。

「ほう、コンスティアに引っ越すのか。となると、商いにでも手を出すつもりかい?…いや、お前さんほどの実力者なら冒険者でもやっていけるか」

商人の最初の見立て通り、ステラは商売をしにここまで来た。とは言っても、商売に関するノウハウや大それた野望などといったものは何もない。
強いて商売を始める理由を言うなら、荼毘に付した親父たちの跡継ぎのため、と言うところか。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:00:25.86 ID:93RaqKjJO
「ふむ。何やら込み入った事情がありそうだな。ここから先は訊かないでおくよ」

既に割り切ったことなので多少踏み込まれても気にしないのだが、商人の気遣いに感謝の言葉を返しておく。
商人と世間話をしていると、コンスティアの入り口である関所に到達した。

高さ23m、幅4mととんでもないスケールの大門であり、コンスティアの外郭を取り囲む石壁を繋いでいる。
同型の大門が南北に設置されており、東西には水路と歩行者用の小関所が設置されている。そちらは依頼を受けた冒険者専用の通路として開放されているようだ。

コンスティア全体の構造としては、平民、貧民の住む外郭区、商業施設が建ち並ぶ内郭区、そして、貴族や王族が住まい、執務を執り行う中枢区、と大別される。
中枢区に聳え立つ【コンスティア城】は荘厳な佇まいをしているが一般開放されている区画もあり、国民でもある程度立ち入りが自由だったりと、ここに暮らす以上関わる機会は何度かあるだろう。国王も大らかな人物だと聞いている。

大陸最大の国土を誇る大国【ケルローネ】。その首都たるコンスティア。ここでの暮らしが楽しみでならないステラは、朗らかに笑いプルガトルスの頭を撫でた。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:01:17.83 ID:4clhkh6FO
関所で軽く審査を受けたステラは、ギルド職員にプルガトルスの処理を押し付けようと画策する。こんな重い荷物はさっさと手放すに限るのだ。
しかし、事がそう恙なく進むことはなく。ステラは目の前の光景にげんなりとしていた。

「ロードレア様ー!サインくださいー!!!」
「馬鹿お前抜け駆けすんな、順番待ちがいるんだぞ!」
「め、【滅龍の剣聖ステラ・ロードレア】ですわ…!まさか本物とご対面できるだなんて!結婚を前提としてお付きあべし!?」
「なぁに粉掛けようとしてんのよ!?そーいうのはアタシの役割でしょ!??ってかアンタそんなキャラじゃないでしょうが!!!」
「皆さんお静かに!おーしーずーかーにー!!!!!!」

プルガトルスの解体を依頼した際に普通に名乗ってしまったのが不味かった。
普段は適当な名前を使っているのだが、単独でプルガトルスを仕留めたことを怪しまれたので渋々本名を伝えた結果がこれである。
こういう時のために仮の身分を作っておけばよかった、と後悔するも後の祭り。
こんな大騒ぎでは換金どころの話ではない。ので、ちょっと野次馬連中には静かにしてもらうことにした。

冷めた表情のステラは加速魔法を発動し、長剣を鞘ごと振り回す。
秒間十六連打の兜割りが馬鹿騒ぎをしていた冒険者たちの脳天にお見舞いされ、爽快な打撃音がギルド中に響き渡る。
音を言葉にするならゴギガガガギゴゴンゴンゴン、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴカカカ、といったところか。

時間にして僅か三秒足らず。ギルド内の冒険者数十名を鎮圧するまでに要した時間だ。当然だが、誰一人として怪我人は出していない。
ちょっと記憶が飛んだりタンコブができたりする人は続出するだろうが、その程度は冒険者ならよくあることだ。
怪我の内に入らないから大丈夫だろう。たぶん。そういうことにしておこう。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:01:56.07 ID:wuspat3CO
ギルド内で発生した珍事はさておき、プルガトルスの換金を済ませたステラは、新居を購入するために不動産屋を訪れていた。
防犯の観点も鑑みて、店舗と自宅は併設する予定である。どうせ自分の荷物はそこまで無いのだから、多少狭かろうが問題は無いだろう。

「いらっしゃいませー!うちの物件はどれもオススメでございますですよー!!」

受付でニコニコと笑っている店員の身長はおそらく1m未満。
額に生えた小さな角と、背中から生えている蝙蝠の羽。以上の特徴から、この店員はインプの魔族だと思われる。
どこからどう見てもちんちくりんのお子ちゃまだが、これで立派な大人である。インプとはそういう魔族だ。

「本日はどのような物件をお探しですか?うちは(敷金礼金が無いから)安い!(契約まで)速い!(契約を取れたら飯が)美味い!をモットーにしておりますので、きっとご満足いただけますよ!」

どこぞの大衆食堂のようなキャッチコピーに苦笑しつつ、要望と予算を伝える。
安い速いまではまだ分かる。美味いについては意味が分からない。
美味い契約だということなのだろうか。それとも、成約時に何か美味しいご飯でももらえるのだろうか。
どちらにせよ意味が分からないことに変わりはないが。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:02:47.83 ID:843Pa2IsO
「ふむふむ。店開きをしたくて物件探しをしている…と。お住まいはどちらに…あ、お店に住む予定なんですね。ちなみにどういったお店を開くご予定で?…なるほど鍛冶屋ですか。となると設備を整える必要もありますね。お客様に伝手はおありです?」

首を横に振って答える。コンスティアに来たのは今回が初めてだ。友人や仕事仲間がここに住んでいるとは聞いていない。

「かしこまりました!早速物件を下見に行きましょうか!予算の方も充分余裕があるみたいなので、時間がありましたら職人さんと話し合いの席を設けますよ」

随分と話が速い。速い安い美味いをモットーにしているだけはある。
色々と便宜を図ってくれるのはこちらとしても嬉しい話なので彼女の言葉に甘えることにしよう。
なあに。資金はたんまりとある。何か問題があれば札束でぶん殴れば良いのだ。
古来よりお金の暴力は全てを解決すると言われている。
それを言った本人は人の心お金では買えないことを見落としていたので愛の力を前に呆気なく沈んだが、大抵の問題はこれで解決するのは事実である。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:03:39.43 ID:W219Lw0MO
店員に連れられ内郭区を歩くこと数分。人混みで溢れた大通りに繋がる脇道に二人はいた。
大通りほどの交通量は無いが、この脇道の交通量も中々のものである。人知れない名店があったりするのだろうか。

しかし、移動中にパンの焼ける良い匂いがしていたので空腹感が強まってしまった。
時計を見ると時刻は午後二時。昼飯には少し遅いが、食事をしてもいい時間だろう。物件探しが終わったら軽食でもつまむとしよう。

「着きましたよお客様!こちらの物件はお客様の要望にピッタリだと思うのですがいかがでしょう?」

そんなことを考えていると目的地に到着した。周囲は精肉店や魔法書店などさまざまなお店で固められている。
その中で一軒、【入居者募集中!】と書かれた看板が立てられている店がある。
外観は思いの外綺麗であり、店員の許可を得て中を拝見してみるがこちらも不潔感は無い。

「こちらは半年前に新築した鍛冶屋だったんですが、店主さんが趣味の採掘に向かったっきり音信不通となりまして。親族からの要望もあり引き払ってもらいました。一応、私が定期的に掃除をしているのでそんなに汚れてはないはずです」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:04:10.34 ID:sXZOOHcXO
なるほど。つまりは事故物件か。ステラの率直な感想に、店員は気まずそうに目を逸らした。

「…まーそういうことになりますかね?ここでお亡くなりになったわけじゃないのでそこまで言われたくはないと言いますか…。それに、遺体は見つかってないのでどこかで生きながらえてるかもしれませんし?」

困り顔で笑う店員を尻目に、内部の設備を確認する。金床や炉、鞴といった設備は完備されている。
店は二階建てになっており、二階に上がってみるとそちらはキッチンやベランダ、寝室や浴室と必要なものは一通り揃っていた。
空き部屋も一つあったので、何かしらに利用できそうだ。

「それで…えと、お客様のご希望通り、こちらを一年借用する場合は賃料として3000万コル必要になります。事故などで物件が損壊した場合はさらに料金をいただく予定ですが構いませんか?」

大丈夫だ、問題ない。ステラはペンで誓約書に名前を記入した。契約内容にはしっかり目を通しているので無問題である。

「やった、契約ゲット…!」

小さくガッツポーズをする店員に苦笑いしながら、使われた痕跡の少ない金床を撫でる。
オススメされた物件が鍛冶屋だったとは何の偶然か。親父たちの加護でもあったのだろうか。
不慮の事故により店仕舞いとなり、その役目を果たせなかった哀れな金床たち。
彼らが再び使われる日は、近い。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:05:12.43 ID:FlPArUl3O
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13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:05:48.70 ID:FlPArUl3O
先払いで賃貸料を支払ったステラは、速い安い美味いのキャッチコピーの意味を身をもって思い知らされていた。
こんな大きな買い物が即日契約で終わるなど正直普通とは思えない。先払いで即金払いしたのが余程効いたのだろうか。

そんなことを思いながら、肉汁たっぷりハンバーガーを頬張る。店員はさっさと帰ってしまったので、腹を満たすために食べ歩きの最中である。
商品が全て売り切れたのだろう。気になっていたパン屋は既に閉店していた。
名前は【どらごんべーかりー】。女性が書いたような文字に可愛らしいデコレーションがされている看板が特徴だ。
徹底的にディフォルメされたドラゴンが火を吹いてパンを作っているような絵が目を引く。これだけ見ればドラゴンにも愛嬌はあるのだが。

ステラはドラゴンが嫌いだ。とても嫌いだ。冗談抜きで大っっっっっっっ嫌いなのだ。
その理由は家族を皆殺しにされ、故郷を焼け野原にされたからという単純明快にして至極当然なもの。これで好きになれるわけがない。もしいたらその人間は気が狂っている。
とはいえ、ドラゴンは全て滅ぼすべきというほど蛮族極まる暴論を振りかざしているわけでもない。
人類に与するドラゴンがいるのも把握している。何なら雪山で遭難した時に助けてもらったことがある。
人類に害なす存在だったなら問答無用でぶち殺すだけ。ただそれだけの話だ。

ちなみに、故郷を焼き尽くしたドラゴンは他ならぬステラの手によって命を絶たれている。
S級冒険者として認定されたのも、その功績が評価されたからだ。ステラの全身に刻まれた火傷の痕も、件のドラゴンが原因である。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:06:24.00 ID:FlPArUl3O
軽食を済ませたステラはゴミ箱に包み紙を放り込み、気ままに内郭区を散策する。
これから世話になる街だ。何があるか知っておくに越したことはない、と。

とりあえずは一年、この街で商売をして今後の展望を考える予定だ。
軌道に乗るならそれで良し。乗らずに店を畳まざるを得ない状況になったなら、親孝行はここまでだと冒険者稼業に専念する。
元々跡を継ぐとは言っていなかったのだ。姉や妹が後継者になる様子もなかった。一時の夢を見せてあげるだけありがたく思え、と誰にでもなく呟く。

跡継ぎを強制した覚えはない。勝手に人を悪魔みたいに言ったり地獄に落とすな、とゲンコツを受けた気がした。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:06:56.06 ID:WmvWQbwLO
雑貨店でカレンダーを購入したステラは、五月一日に星印を付ける。
この日が開店予定日であり、それまでに人員と商品を用意しなければならない。本日は四月七日だ。
まだ三週間も猶予はあるが、はっきり言ってステラは鍛造のことなど何一つ解らない。
家のことなど考えず、冒険者になることしか考えていなかったのだから当たり前だ。初等教育を終えた瞬間に故郷を飛び出したのが懐かしい。

他の人に話したら鍛冶屋の息子のくせに、と思われるかもしれないが、それほどまでに跡を継ぐのが嫌だった。より正確に言うなら、故郷に留まるのが嫌だったのだ。
誰が好き好んで和やかな風景だけが取り柄の田舎町に死ぬまで居なきゃならんのだ。俺は冒険者になって楽しんでやるぜ。と宣言してボコボコにされたのは一生忘れない。

ともかく、鍛冶屋を営むには何もかもが足りない現状、最優先事項は人員を集めることだろう。
物があっても人がいなければ何もできないのだ。人がいるなら何かしらをすることはできる。
幸い、金はまだそれなりの予算が残っている。改築費が不要になって助かった。

とはいえ、材料や従業員の給料にも充てることを考えれば、あまり贅沢はできないのだが。最悪依頼を受ければどうにかなるが、それは最終手段だ。
不動産屋に賃貸料を支払い、残った予算はおよそ600万コル。
数人を雇うには充分な予算だが、改築が必要になっていたらこの予算がどれだけ逼迫していたか。考えただけで頭が痛くなる。
ここからさらに材料費や給料で捻出しなければならないのだから尚更だ。

もっと見通しはきっちりしておくべきだったとほんの少し反省したステラは、カレンダーを壁に飾る。
窓から差し込む光が、ステラを明るく照らした。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:12:50.18 ID:sImIWBpFO
ということでプロローグ終了です。次回で店員を雇った後に、店主活動を開始します。
それに伴い、店員を数名募集します。採用する人数は後の安価にもよりますが、最大四人です。
雇用時の費用などは後々決めますが、通常枠が10〜20万コル、エリート枠が20〜40万コルと思ってください。
通常枠のキャラクターに特に制限はありませんが、ズブの素人であることだけは固定となります。エリート枠は逆にそれなり以上の腕利き固定です。

エリート枠は専門教育や実務経験を積んでいるため、相応の能力を持ちます。
通常枠はそういったものがないので本人の地力のみの判定になります。
技術力の判定は投稿されたレスのコンマ二桁です。エリート枠はそれに+40されます。
技術力は今後武器を製作する際に利用します。

募集は明日の正午まで締切となります。質問等あれば書き込んでください。不定期になりますが回答します。

テンプレ

【名前】
【種族】
【性別】
【魔法属性】
【概要】
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/24(土) 18:13:54.27 ID:V2Xv7cn0O
主人公紹介

【名前】ステラ・ロードレア
【種族】人間
【性別】男性
【魔法属性】身体強化魔法
【概要】
【滅龍の剣聖】の異名を持つ現役の特例上位クラス(S級)冒険者。
初等教育を修了したと同時に故郷を逃走。冒険者として名を挙げるも、家族と故郷をドラゴンの大群によって喪うこととなる。

彼も故郷を滅ぼした業火に身を焼かれており、全身の火傷痕はその名残。一応、負傷した時からはだいぶ回復しているらしい。
本人の性格はまあまあマトモ。しかし、S級冒険者は皆大なり小なり狂っていることで有名であり、ステラもまた例外ではない。

何をトチ狂ったのか、コンスティアで鍛冶屋を出店することになった。
親孝行のためだと本人は弁解しているが、既に手遅れなこと、所詮ただの自己満足であることは理解している。
が、それでも。形だけでも親孝行はしておきたかった。
自らを産み育ててくれたお礼をできずに、死に別れてしまったから。
自らを愛してくれたお礼を、自分なりにしたかったから。


【名前】ステラ専用ショートソード・スペシャル
【武器種】直剣
【攻撃力】不明
【耐久力】不明
【特殊能力】ステラの魔法性能強化
【概要】
ステラの父【スミス・ロードレア】が愛する馬鹿息子のためだけに、全身全霊を込めて鍛えた一振り。通称S5。
スミスが若かりし頃に入手した神器【不朽の双剣・アエテルヌス】を再鋳造し、直剣として無理矢理鍛え直しているため神器としての格を失い、ただ凄くタフで斬れ味のいい剣となってしまったが、それでも相当に優秀な武器だった。

母親は【再錬の剣】という無難な名前を提案したが、いつになくスミスがごり押ししてきた結果、このようなクソダサネーミングの剣になる。なお当の本人は至って真面目。

ステラと共に【龍帝撃滅戦】で獅子奮迅の活躍を見せるも、武器としての役目を終える。
ぶっきらぼうだった父の不器用な愛に気づいた時にはもう、何もかもが遅かった。
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