くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」

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302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:31:29.57 ID:Lds9YMgP0
くーちゃんの肌に

ぽろぽろとハナちゃんの涙が伝います。

とてもしょっぱくて、チョコで甘くなった口の中には

ちょうどよかったです。

だからハナちゃんが泣いてるのは、全然悪い気分じゃなかったですよ。大丈夫です。

そこから、ハナちゃんはこんなことを言ってくれました。

今でもよく覚えてます。
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:34:58.89 ID:Lds9YMgP0
ハナ「天野さん、天野さん、ごめんなさい」
   トンネルなんてわからないの。
   トンネルなんてよくわかんなかったし、
   どういうことなのか全然わかんないの! 
   植物の声も聞こえてないし、聞き届けたわけでもないの。
   描いちゃったの。
   描きたかったの。
   描いたら、近づけると思ったの。
   天野さんはね、すごく素敵なの。
   天野さんのインタビュー、全部読んだ。
   テレビの録画も全部見た。
   本当に本当に、すごくかっこよかった! 
   私の知らない世界。感じられない世界。
   
   私はふつうの人だから。天野さんみたいにすごくないから!
   
    学校に行けなくなって、それでも天野さんみたいな素敵な人がいるなら
    学校行けそうだって思って、
            それで天野さんの学校に転校したの! 



   天野さんと同じ学校なら、生きていけそうだって思ったの! 


               天野さんの世界を絵にして、
 
                              そしたら天野さんに

少しでも近づけるんじゃないかって、




ずっと描いてた! 


天野さんが見てるトンネルってこんなのかなって、

  きっと天野さん気に入ってくれるって! 

 でも見せる勇気なくて。いつか見てもらえるんじゃないかって
 
、ずっとずっと描いてて、
                  そしたら、たまたま見てくれて、

  すごくうれしくて。まさか一緒に旅までしてくれるなんて思ってなかった!


 すごくうれしかったの! 



世界で一番幸せだった! 



私も、天野さんと一緒に、トンネルの向こう側に行きたかった。



もっともっと面白い世界が見れて、わたしだってすごい素敵な人間になれるんじゃないかって。

みんなとうまくやれない私でも、



幸せになれるって思った! 

それで死ねるんなら、それでよかった!

 でも、だめ! だめ! だめなの! 

えっと、
   えっと、
       えっと

 だって、
         だって、

                  ここまで、わたし、



                         わたし、」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:35:53.41 ID:Lds9YMgP0
そこからハナちゃん、ずっと泣いてました。

なにがどう、だめなのか、それをくーちゃんは聞きたかったですけど、

きっとハナちゃんには泣く時間が必要でしたし、

くーちゃんもいつの間にか泣いてたので、

二人ともそういう気分だったんです。

くーちゃんたち、ふたりとも泣き虫ですね。

305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:37:59.52 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(けっきょく、げんじつのせかいです)

くーちゃん(ゴール、ちかかったんですけどね)

くーちゃん(このまま目、閉じれば、きっと戻れます)

くーちゃん(くーちゃんの、いきたかった、ゴールです)

くーちゃん(げんじつなんかより、おおくすさんとの沼、よいなと思ってたんですけど)

くーちゃん(でも、なんだか)

くーちゃん(ハナちゃんとの時間が終わるの、さみしいですね)
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:39:09.29 ID:Lds9YMgP0
お母さんの顔が浮かびました。

あんなに必死でくーちゃんが行くのを止めてて。

きっと、くーちゃんにとってのハナちゃんみたいに、

ほんとにくーちゃんを大切にしてくれてたんだなと、今更ながら思いました。

校長先生の顔が浮かびました。

くーちゃんの大切にしてたことを、一番最初にわかってくれて。

誰かに分かってもらえることの幸せを知りました。

おいしゃさんの顔もうかびました。

なんだかんだ、ずっと話を聞いてくれました。

お仕事とはいえ、すごいこととおもいます。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:39:51.92 ID:Lds9YMgP0
鹿のお兄さんの顔が浮かびました。

自信をもって何かを続けること

それが何につながるか、そんな大層なことを考えるのは横に置いておいて

ただ続けること。

きっとそれが大切だって、伝えてくれました。

ほんとに、素敵な人です。

海の男の顔が浮かびました。

くーちゃんも誰かに大切にされてることを、思い出させてくれました。

あのときくーちゃん、反発したですけど、今なら、なんとなくわかります。

海の男も、くーちゃんを大切にしてくれてただけだったです。

そして、誰かの手の温もりを思い出しました。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:42:40.93 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(あれ、さいごの、だれのことでしょう)

くーちゃん(顔も思い出せません)

くーちゃん(でも、そのぬくもりがあったから)

くーちゃん(くーちゃんは、くーちゃんな気がします)

くーちゃん(沼の底にいったら、おわかれです)

くーちゃん(みんなと、おわかれです。もうあえなくなります)

くーちゃん(大楠さんの孤独、癒したいと思ってたんですけどね)

くーちゃん(もしかしたら、くーちゃん)

くーちゃん(とても、はくじょうな人間かもです)

くーちゃん(ごめんなさい、大楠さん)

くーちゃん(大楠さんのいた沼より)

くーちゃん(ハナちゃんの涙で溺れてしまう方が、気持ちよさそうです)
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:43:38.16 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん「ハナちゃん」

ハナ「……天野さん?」

くーちゃん「ちがいます」

くーちゃん「くーちゃんです。ハナちゃん」

くーちゃん「それが、くーちゃんの名前です」

くーちゃん「くーちゃんの世界一かわいい名前です。

ハナ「くーちゃん、くーちゃん」
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:44:24.36 ID:Lds9YMgP0
何度も何かを確かめるように、ハナちゃんはくーちゃんの名前を呼びました。

呼ぶたびに、ハナちゃんの両腕が、くーちゃんを強く、強く、

ぎゅうううっと、抱きしめてくれます。

くーちゃんはハナちゃんが大好きでしたが、

どうやらハナちゃんもくーちゃんのこと、好きだったみたいです。誰かにこんなにも好かれるなんて思ってませんでした。嘘ばかりついて、くーちゃんは自分のことを嫌いになりそうだったですけど。どうやらハナちゃんだけは何があってもくーちゃんのこと、嫌いにならなさそうです。

くーちゃんという変な人間も、そんなに捨てたもんじゃないなって、思えました。

それに






大好きな子に名前を呼んでもらえるの、最高の気分です。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:45:06.96 ID:Lds9YMgP0
また明日ノシ

だいぶ冒険も終盤です。

みなさんしばらくお付き合いください。
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:15:13.46 ID:DcOEz2F40
海の男「なに寝転んでんだクソガキども」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「びちょびちょですね」

海の男「そりゃ、泳いできたからな」

くーちゃん「さすがです、海の男」

海の男「まず謝れクソガキ」

ハナ「…ごめんなさい」

くーちゃん「たしかに、この件の過失はハナちゃんです」

海の男「ちょっとはお前も悪びれろ」
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:24:46.37 ID:DcOEz2F40
海の男「で、トンネルは見つかったのか?」

パンパン

くーちゃん(大楠さんに、合掌してます)

くーちゃん(てっきりさっさと連れ戻されるかと思いました)

くーちゃん「はい、みつかりました」

くーちゃん「この島の、大楠さんのトンネルです」

くーちゃん「海の男の言う通りでした」
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:25:27.53 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「とても長い間、さみしがってました」

くーちゃん「ただ、そこに生えてただけなのに、いろいろ勘違いされて」

くーちゃん「持ち上げられて、勝手に絶望されて、もううんざりしてる感じがしました」

海の男「お前のトンネルに入る力ってのは、眉唾じゃねえみたいだな」

海の男「お前の言う通りだよ」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:27:14.85 ID:DcOEz2F40
海の男「大昔は、この島にも人がいた」

海の男「この大楠も、御神木として崇められた」

海の男「たくさんの人が崇拝したよ。だけどな」

海の男「土砂崩れで、木の半分や、島民の家やらが埋まっちまった」

海の男「言われちまったよ。大楠の祟りだってな」

くーちゃん「そんなのありえません」

くーちゃん「祟りなんて、起こせるものじゃないです」

海の男「神様ってのは祟りを起こすらしいぞ」

くーちゃん「そんなの神様じゃありません」

海の男「ああ」

海の男「俺もそう思うよ」
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:38:37.76 ID:DcOEz2F40
海の男「で、だ」

海の男「満足したか?」

くーちゃん「微妙です」

くーちゃん「もう1回いってきます」

海の男「」

ハナ「いやいやいやいやいや!」

ハナ「く、くーちゃんだめ! まじで死んじゃう!」

ハナ「呼吸とまってたんだよ!」

海の男「どこまでもやべえやつだなお前」

くーちゃん「だいじょうぶです」

くーちゃん「ちゃんと戻ってきますから」

317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:39:04.41 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「あとハナちゃん」

くーちゃん「ちょっと雰囲気変わりましたね」

ハナ「え、そう?」

くーちゃん「では」

くーちゃん「いってきます」

くーちゃんはそう言うと、大楠さんの幹に再び近寄り、目を閉じます。

現実の世界の音と空気が遠くなり、またさみしい風と冷たい香りが漂い始めます。

くーちゃんは、さっきまでいたトンネルに降りてゆきました。
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:46:18.66 ID:DcOEz2F40
くーちゃん(…しずかですね)

くーちゃん(あ、でも、そんなにさむくないです)

くーちゃん(あったかいです)

くーちゃん(沼も、こんなに近くなかったです)

くーちゃん(それに)

くーちゃん(ずいぶんと小さくなりました)
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:47:26.56 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「大楠さん。呼んでくれてうれしかったです」

くーちゃん「でもくーちゃん、もう少しあっち側、います」

大楠さんは何も言いません

引き留めても来ませんし、応援もしてません。

でもそれでよいんです。

くーちゃん「でも、約束します」

くーちゃん「また来ます」
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:48:36.53 ID:DcOEz2F40
このトンネルでは、何も聞こえません。

他のトンネルなら、不思議な音がたくさん響いてて、メロディになってることが多いんです。

トンネルの植物さんが歌いたいから、きっとそんな音が流れてたんです。

だからきっと大楠さんは、歌いたい気分じゃなかったんでしょう。

でもくーちゃんは、歌いたくてたまりませんでした。

歌わないと、頭の中の何かがはじけ飛びそうだったので。

だから歌いました。

くーちゃんの感じた音を、言葉を、口にして。

大楠さんは、相変わらず何も言いません。

でも、それでよいんじゃないかって思いました。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:49:23.27 ID:DcOEz2F40
気が付けばくーちゃんは、トンネルから現実に戻ってました。

沼の香り、さみしい風は、もうありません。

お日さまの光、気持ちよかったです。

そして、歌の続きを寝そべったまま歌います。

空に溶けてくみたいに、歌は、高く高く響き渡ります。

それがくーちゃんの耳から全身に広がっていって、とても気持ちよかったです。

嘘の歌は嫌いでしたが、誰かのための歌なら、好きになれそうだなって。そう思いました。

ハナちゃんも海の男もそんなくーちゃんの歌を、じっくり聴いてくれました。

322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:50:23.28 ID:DcOEz2F40
すると、ハナちゃんは、地面に落ちている枝を、突然手に持ちました。

そして、湿った土を、絵具みたいにつけて、

地面に置かれたトンネルの絵に、枝をふれさせて、

そのまま何かを描き始めました。

丸、三角、不思議に枝分かれした線、ぐるぐるうずまき、

何、描いてるのか、今一つピンときません。

それはくーちゃんだったのでしょうか。

それとも大楠さんだったのでしょうか。

それとも、ハナちゃん自身だったのでしょうか。

きっと、ハナちゃんにしかわかりませんし、言葉にするのは何か違うから、絵にしたんでしょう。

ずっとずっと見てたくなりました。

別に本人に確認したわけじゃないですけど、

ハナちゃんは、最高の絵描きさんになる。

そう思いました。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:52:28.37 ID:DcOEz2F40
海の男「ほら、お前らロクなもん食ってねえんだろ」

海の男「これでも食え」ごそごそ

くーちゃん「おにぎり」

くーちゃん「手作りですか?」

海の男「ああ、海の男特性おにぎりだ」

むぐむぐ

くーちゃん「ちょっと塩が多いです」

海の男「文句言うんじゃねえよクソガキ」

ハナ「」にこにこ もぐもぐ

くーちゃん「ハナちゃん、ほっぺたついてるです」

ハナ「えへへ」

海の男「…お気楽な奴らだ」
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:56:15.86 ID:DcOEz2F40


海の男「ったく、砂浜にこんな雑に乗り上げやがって…」

海の男「運転できるんなら上陸の仕方も勉強しとけ」

ズザザザザ

ハナ「ごめんなさい…操縦してるとこしか、見たことなくて」

カーカー

海の男「だまれクソガラス!」

くーちゃん「海の男、カラスさんのことば、わかるですか?」

海の男「ああ、海の男だからな」

くーちゃん「いみわかりません」

海の男「おまえさんのトンネルの力とおなじだよ」
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:59:54.75 ID:DcOEz2F40
海上

くーちゃん(…さすがに、ちょっとつかれましたね)

ハナ「眠いの? くーちゃん」

くーちゃん「かもしれません」

くーちゃん「くーちゃん、食べてないだけじゃなかったです。夜、眠ってなかったです」

ハナ「ちゃんと寝なきゃだめだよ」

くーちゃん(大楠さんの前で、たくさん喋ってから)

くーちゃん(ハナちゃん、別人みたいに、喋ってます)

くーちゃん(でも、明日には無口なハナちゃんに戻ってしまう可能性、ありますね)
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:01:04.03 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「ハナちゃん」

ハナ「なに? くーちゃん」

くーちゃん「しゃべりたいこと、あります」

ハナ「なに?」

くーちゃん「ハナちゃん、素敵な人です」

ハナ「…え?」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:02:04.45 ID:DcOEz2F40
ハナ「ど、どうしたの、急に」

くーちゃん「無口なハナちゃん、素敵です。絵を描くハナちゃん、素敵です」

ハナ「えへへ、ありがとう」

くーちゃん「だから、学校に行けなくなるほど、ハナちゃん、つらい思いをしてたのだとしたら」

くーちゃん「なんだか、くーちゃん、悲しくなりました」

くーちゃん「くーちゃんには友達がいません」

くーちゃん「普通のフリをしてるとき、遊んでくれる人はいました」

くーちゃん「でも、それは友達じゃなかったです」

くーちゃん「だって、その時のくーちゃんを、くーちゃんは好きじゃなかったですから。
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:03:10.38 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「くーちゃん、学校、嫌いです」

くーちゃん「みんな、楽しいと思えるお話、遠足、修学旅行」

くーちゃん「お休みに遊ぶ、全部全部、くーちゃん、楽しめません」

くーちゃん「楽しいフリする、うんざりする時間でした」

ハナ「うん」

ハナちゃんは、そっとくーちゃんの手を握ってくれました。

とても暖かかったです。

ほんのりチョコレートの香りがしました。

329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:04:35.03 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「学校に行けなくなったハナちゃん、きっと間違ってないです」

くーちゃん「何があったのか知りませんけど、ハナちゃんがそうしたの、きっと間違ってないです」

ハナ「うん」

くーちゃん「えっと、だから、なんだって、話なんですけど」

くーちゃん「くーちゃんと、巻き込まれたハナちゃん」

くーちゃん「警察とか、先生とか、家族に、とても怒られます」

くーちゃん「学校、また通うことなります」

くーちゃん「それはくーちゃんにとっても、ハナちゃんにとっても」

くーちゃん「あまり楽しい時間じゃないとか、思ったですけど」

くーちゃん「でも、くーちゃんは」

ハナ「私ね」
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:38:46.78 ID:DcOEz2F40
ハナ「私、くーちゃんとなら」

ハナ「一緒に遠足とか、修学旅行とか、文化祭とか、お休みの日に、一緒に遊んだりとか」

ハナ「すっごく、楽しい気がする」

船のエンジンの音、カラスの鳴き声、海のばしゃばしゃとゆう音が混じります。

とてもきれいな音でした。

もしかしたらハナちゃんには、その音に色がついて見えるのでしょうか。

とてもキラキラした目で、空や海を見つめてました。

そのハナちゃんの笑顔が眩しくて、まるで太陽みたいでした。
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:39:38.09 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「ハナちゃん、くーちゃんのこと」


くーちゃん「素敵とか、すごいとか言ってましたけど」

くーちゃん「少なくとも、ハナちゃん、くーちゃんの何倍も素敵と思います」

くーちゃんがそう言うと、ハナちゃんはいつもみたいに顔を赤くして、うつむきました。

やっぱりハナちゃんは、こうでなくっちゃです。

TRACK13 旅の終わり
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:42:42.86 ID:DcOEz2F40
また明日ノシ
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/15(木) 21:16:16.96 ID:fmHj17xDO
おつ
大人になったらどんな感じになってるんだろう
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/15(木) 21:25:29.05 ID:QuHQtw7lo
おつおつ
百合ですねっっっ!!
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:17:09.45 ID:Ppk08Rtz0


くーちゃん「結構警察来てますね…」

海の男「まあ、それだけのことしたんだからな」

ハナ「…あ」

ハナ「おかあさん」

くーちゃん「くーちゃんのお母さんも来てます」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:19:29.57 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん(ハナちゃん、もうおかあさんのところ走っていきました)

くーちゃん(海の男とも何か話してますね)

くーちゃん(やさしそうな、家族です)

ガバッ

くーちゃん「…おかあさん、くるしいです」

お母さん「…ねえ、くーちゃん」

お母さん「…痛かった? 腕」

くーちゃん「だいじょぶです、お母さん。もう全然いたくないです」

くーちゃん「腕のことより、くーちゃんは喋りたいこと、あります」
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:21:05.99 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「大げさかもしれませんが、くーちゃん、人生で最高の旅、しました」

ぎゅっ

くーちゃん(汗の香りがします。海みたいです)

くーちゃん(くーちゃんの好きな香りです)

くーちゃん「それで、思ったです」

くーちゃん「いろいろ嫌なこともありましたけど、やっぱりくーちゃん、お母さん大好きです」

くーちゃん「お母さん、心配かけたくなくて、色々頑張ってました」

くーちゃん「でも、くーちゃん、もう嘘、嫌です」

お母さん「…そう」

お母さん「…わかったわ」

くーちゃん「しんぱいかけて、ごめんなさい。おかあさん」
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:23:10.10 ID:Ppk08Rtz0
お母さん「心配かけたのは、わたしだけじゃないわよ」

くーちゃん「誰ですか?」

?「心当たりは、ありませんか?」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「校長先生」

校長先生「山に行くとは聞いていましたが、大冒険に出るとは聞いていませんでしたよ」

339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:24:18.79 ID:Ppk08Rtz0
校長先生「まあ、なにはともあれ、長旅お疲れさまでした」

くーちゃん「おこらないですか?」

校長先生「それは別の人の仕事です」

校長先生「あとでたっぷり、怒られてください」

くーちゃん「わかりました」

くーちゃん「ところで校長先生」

校長先生「はい、なんでしょう」

くーちゃん「しゃべりたいこと、あります」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:27:57.47 ID:Ppk08Rtz0
校長先生「はい、どうぞ」

くーちゃん「ハナちゃんは、島にある大楠さんの言葉、聴こえたわけじゃありません」

くーちゃん「でも、島の大楠さんのトンネル、ハナちゃんの絵、そっくりでした」

くーちゃん「呼んでいることも、伝わってきたです。なぜでしょう」

校長先生「ふむ」

校長先生「校長先生の意見よりも」

校長先生「この旅を続けたあなたの方が、いい答えをもってそうです」

校長先生「先に、あなたのお話を聞かせてもらえませんか? くーちゃん」

くーちゃん(くーちゃんとよんでくれました)

くーちゃん(うれしいです)
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:31:49.01 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「多分なんですけど、たまたま、同じだったから、呼ばれたと感じただけだと思います」

校長先生「同じ?」

くーちゃん「ハナちゃんも、大楠さんも。くーちゃんも」

くーちゃん「みんなつぶされそうで、誰かに来てほしかったのかもしれません」

校長先生「なるほど。続けてください」

くーちゃん「きっと、くーちゃん、ハナちゃん、大楠さん、似た者同士です」

くーちゃん「似た者同士、集まるんです」

くーちゃん「類は友を呼んだ。ただそれだけの話じゃないでしょか」

校長先生「ふふふ」

校長先生「素敵な答えですね、くーちゃん」

くーちゃん「あたりまえです。くーちゃんの頭脳は、天才的なのです」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:33:02.40 ID:Ppk08Rtz0
お母さん「くーちゃん、そろそろ行くわよ」

お母さん「警察の人が、お話をしましょうだって」

くーちゃん「楽しくはなさそうですね」

お母さん「あたりまえでしょうが」

海の男「まあ、そう言ってやんな」

お母さん「あ…」

海の男「よう」

海の男「久しぶりだな」
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:34:35.12 ID:Ppk08Rtz0
海の男「でかくなったじゃねえか、この子も」

お母さん「…そうですね、おかげさまで」

海の男「なんの心配することはねえよ」

海の男「ふつうの、いい子だよ」

お母さん「………」

お母さん「ありがとうございます」

くーちゃん(…知り合い、だったのでしょうか)

くーちゃん(まあよいです)

くーちゃん(海の男にも、お母さんにも)

くーちゃん(それぞれ、物語があるだけです)
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:04:40.67 ID:Ppk08Rtz0
5年後、病院

くーちゃん「といった感じです」

医師「…ハードすぎるね、いろいろと」

くーちゃん「ありがとうございます」

医師「褒めてないよ」

医師「戻ってからは、どんな感じ?」

くーちゃん「まあ、普通の毎日です」

くーちゃん「でも植物さんとの時間は、堂々と過ごすようになりました」

くーちゃん「道端の植物さんにもくーちゃんは挨拶します」

くーちゃん「素敵なお花さんがいたら、トンネルを感じたいので寝そべります」

くーちゃん「周りの人も、くーちゃんがそんなことをするの」

くーちゃん「当たり前のこととわかってくれてるので、注目されることもありません」

医師「…そっか。仕事にはせず、自分の時間として、過ごすようにしたんだね」

くーちゃん「正直助かりました。おかしいも、日常になれば普通なんです」
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:05:54.60 ID:Ppk08Rtz0
医師「ハナちゃんの方は、どうなったの?」

くーちゃん「無口ですね」

医師「…なるほど」

くーちゃん「あ、でも、たまに笑うよになりました」

くーちゃん「あと、堂々と絵を教室で描くようになりました」

346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:12:06.07 ID:Ppk08Rtz0
医師「周りからはどんなリアクション?」

くーちゃん「ハナちゃんの絵、すごいので」

くーちゃん「注目浴びること、ありましたけど、ハナちゃんはあまり気にしていません」

医師「…彼女も変わったんだね」

くーちゃん「しいて言えば」

くーちゃん「一度だけ、「変な絵」って言ってきたクラスメイトに」

くーちゃん「思い切り回し蹴りを喰らわせてました」

医師「バイオレンスすぎない?」

くーちゃん「さすがくーちゃんの大好きなハナちゃんです」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:15:06.49 ID:Ppk08Rtz0
医師「でも、たしかに彼女の絵は、評価されてたみたいだね」

医師「17歳にて、多くの賞を取っている」

くーちゃん「そうなんです。なんだかすごいコンテストで、なんだかすごい賞、とってました」

くーちゃん「くーちゃんもその展示会に行きました」

くーちゃん「色んな人、ハナちゃんの絵を見て、感動してました」

くーちゃん「新参者がなに安っぽい涙を流してるんだと思いました」

医師「新規のファンに厳しすぎるよ」

348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:16:23.47 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「あれですよ。好きなミュージシャンが、売れ始めてから急に熱が冷めるあれです」

くーちゃん「それ言ったら、ハナちゃん、また照れくさそうにうつむくだけでした」

くーちゃん「肝心な時に何も言わないんです。それがハナちゃんのよいところです」

医師「なるほどね」

医師「他にはまだあるかい?」

くーちゃん「はい、まだまだあります」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:19:12.88 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんとの学校生活、とても楽しかったです」

くーちゃん「はい、あの船でお話した通り、たくさんの思い出、作りました」

くーちゃん「遠足だって、休み時間だって、お休みの日だって、修学旅行だって、全部楽しかったです」

くーちゃん「でも、くーちゃんが修学旅行先の沖縄で海を見て」

くーちゃん「また丸太に乗ろうとすると全力で止めてきました」

医師「そりゃ止めるよ」

くーちゃん「ハナちゃんは心配性なんです」

医師「僕でも止めるよ」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:19:59.54 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「まあでも、そろそろゆきます」

くーちゃん「最後になりますので、今度こそ」

くーちゃん「ハナちゃんと、やくそくしてます」

医師「やくそく?」

くーちゃん「くーちゃん、そろそろお引越しするので」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:22:00.50 ID:Ppk08Rtz0


ハナ「小型船舶の免許って、難しかった?」

くーちゃん「まあ、ぼちぼちです」

ハナ「でも、上手だね、くーちゃんの操縦」

ハナ「ダンさんよりうまいかも」

くーちゃん「ダンさん?」

ハナ「海のおじさん」

ハナ「海野男って、書いて、ウミノダンさん」

くーちゃん「本当に海の男だったんですね」

くーちゃん「ただの変なおじさんだと思ってました」

ハナ「くーちゃんに言われたくないと思うよ」
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:24:01.45 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「運転免許は?」

くーちゃん「落ちました」

ハナ「なんかごめん」

くーちゃん「12かいおちたので、やめました」

ハナ「わざわざ言わなくていいよ、大丈夫だから」

くーちゃん「くーちゃんは陸より海の方が向いてるようです」

くーちゃん「それに自動車免許、引っ掛け問題が多すぎます」

くーちゃん「なんですか、夜は気を付けて運転をしなければいけないとゆう問題で」

くーちゃん「答えがバツだなんて。ふざけてます」

くーちゃん「昼も夜も気を付けて運転しなければいけないなんて」

くーちゃん「くーちゃんは一休さんじゃありません」

ハナ「その問題は私も理不尽だと思う」
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:25:37.46 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「くーちゃんは、本当に、島で、暮らすの?」

くーちゃん「はい。大楠さんとの約束です」

くーちゃん「畑とか、漁については、色々準備をしています」

くーちゃん「自給自足とゆうのは、結構大変らしいので」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっか」

354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:26:45.99 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんは、卒業してどうするか、決めたですか?」

ハナ「…そうだな…」














ハナ「私も、島、行こうかな」

355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:28:29.85 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「だめです」

ハナ「え、だ、だめ?」

くーちゃん「全然だめです。一緒に島なんて、ありえません」

ハナ「ど、どうして? 一緒に、旅だって、したし」

くーちゃん「一緒に旅、したからです」

くーちゃん「くーちゃんは大楠さんとの約束、交わせました」

くーちゃん「くーちゃんは、自分の人生、決めたんです」

くーちゃん「ハナちゃんも、ちゃんと自分で決められるはずです」
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:30:39.36 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんの喋る量、少しだけ増えました」

くーちゃん「でも、言葉にしない情報の方が、ハナちゃんのことがわかります」

くーちゃん「苦しそうな顔の人と、島で一緒に暮らすことはできません」

くーちゃん「ハナちゃん。本当にやりたいこと、ないですか?」

 ちゃぷん



                    ちゃぷん


          ちゃぷん

ハナ「くーちゃん」

くーちゃん「はい、なんでしょう」

ハナ「喋りたいことがあるの」
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:32:14.46 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「旅に出たいの」

くーちゃん「…とてもすてきです」

くーちゃん「くーちゃんは、ハナちゃんの旅を応援してます」

ハナちゃんの旅の目的は、特に尋ねませんでした。

もちろん興味はありました。

でも、ここで深堀して、言葉にさせてしまうと

せっかくのハナちゃんの持ち味が台無しになるって思ったんです。

言葉にする大切さがあれば、言葉にしない大切さを知ってるハナちゃんには、よい配慮と思いませんか?

誰だって喋りたいことを喋ればよいんです。

喋りたくないことなんて、喋らなくてよいんですよ。
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:33:12.84 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「反対されても気にしなくてよいです」

くーちゃん「だって、海の男、突き落として」

くーちゃん「船、ジャックしたです」

くーちゃん「ハナちゃん、なんだってできますよ」

ハナ「それ言うのやめてくれない⁉」

そう言ってハナちゃんとくーちゃんは、笑いあいました。

そして、卒業してからくーちゃんとハナちゃんは

離れ離れになりました。
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:34:17.24 ID:Ppk08Rtz0
また明日ノシ
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/17(土) 10:06:10.62 ID:gTinn2ZxO
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:47:12.35 ID:KdntX8IL0
TRACK14 沼の底

くーちゃんとハナちゃんは、それからずっと、長い間会うことはありませんでした。

お互いその頃携帯電話は持ってませんでしたし、手紙を書く習慣もなかったので

繋がる手段が、なかったんです。 

くーちゃんは島での暮らしを始めました。

慣れない畑作業や、海の男の漁の手伝いをしながら

くーちゃんは毎日、大楠さんのところへ行ってました。

そして、くーちゃんは大楠さんに抱き着いて、あのトンネルの世界の奥へ進んでいました。

相変わらず暗くて大きくて、さみしくて、でもどこか居心地のよい、不思議な場所でした。
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:52:49.05 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「…沼、もっと大きかったはずなんですけど」

くーちゃん「小さな水たまりになってますね」

ぴちょん

くーちゃん「沈むほど、深かったはずですけど」

くーちゃん「においも、なくなりました」

くーちゃん「でも」

くーちゃん「あなたは変わらずいるのですね、大楠さん」


363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:53:59.54 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「ねてるのですか? おきてるのですか?」

くーちゃん「前みたいに、何かを求める感じでもないですね」

くーちゃん「どうしてでしょう。なにもわかりません」

くーちゃん「ただそこにいるだけって感じですね」

くーちゃん「…あの、よかったら」

くーちゃん「歌でも、歌いましょうか?」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:56:28.18 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「これから、毎日うたいます」

くーちゃん「毎日、違う歌です」

くーちゃん「くーちゃん、きっと大楠さんより早く死んでしまいます」

くーちゃん「大楠さん、これからも、とても長く長く、生きてゆくことでしょう」

くーちゃん「だから、毎日、たくさん歌を届ければ」

くーちゃん「大楠さん、当分の間、退屈しないでしょ?」

くーちゃん「それくらいなら、くーちゃんでもできそうです」

くーちゃん「大げさかもしれませんが、くーちゃんのトンネルを感じられる力」

くーちゃん「このためにあったんですね」
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:59:20.99 ID:KdntX8IL0
毎日毎日

そんなことを続けていたのです。

たまに海の男の漁、手伝って

食料やお金をもらったり、畑の作業、しながらですけど。

それでも、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も
何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も
何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も

ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと







くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ」














くーちゃん「なんか」

くーちゃん「トンネルの外、出るの、めんどくさくなりましたね」

366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:00:37.04 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「大楠さん、しゃべりたいことあります」

くーちゃん「くーちゃんが島で暮らし始めたのは、あなたに歌を届けるためでした」

くーちゃん「とゆうことは、このトンネルから出ても」

くーちゃん「よいことはありません」

くーちゃん「もともとくーちゃんの、あの旅は」

くーちゃん「あなたの呼び声にこたえて、現実に見切りをつけるのが目的でした」

367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:02:10.44 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「でも、ハナちゃんの言葉や、チョコレートで」

くーちゃん「沼に沈むのはやめて」

くーちゃん「現実であと少し、生きようと思ったんです」

くーちゃん「でも、今、ハナちゃんいません、どこにいるのか知りません」

くーちゃん「きっと、ハナちゃん、くーちゃんのことなんかすっかり忘れて」

くーちゃん「幸せな人生、歩んでます」

くーちゃん「そこに、くーちゃん、もういらないのです」

368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:04:46.59 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「離れ離れになった時、思いました」

くーちゃん「心のどこかは、離れてても、つながってるって」

くーちゃん「でも、わからないのです」

くーちゃん「植物さんのトンネルだと、いろいろと感じられるので、ほっとするのですが」

くーちゃん「人間にはトンネルがないのです」

くーちゃん「心、見えないんです」

くーちゃん「お話をして、顔を見ないと、感じられないんです」

くーちゃん「だから、くーちゃんはにんげんがこわいのです」

くーちゃん「きらいとゆうより、こわかったんです」

 
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:06:44.29 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「それに、現実に戻らず、ここにずっといたほうが、大楠さんもうれしいはずです」

くーちゃん「ずっとここにいれば、あなたに毎日、思いついた時に、いつだって歌を歌えます」

くーちゃん「別に、沼の底に沈むなんて大げさな話じゃありません」

くーちゃん「ようするに、このトンネルで、ずっとずっといれば」

くーちゃん「現実のこと、全部全部忘れて」

くーちゃん「あなたのことだけ考えられます」
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:08:15.34 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「大楠さん、二転三転しましたが」

くーちゃん「こういうのはどうでしょう」

くーちゃん「一緒に沈まないと言いましたが」

くーちゃん「くーちゃん、ここにずっと、いても、差支えないでしょうか?」

水たまりから生えてる大楠さんに、くーちゃんは抱き着きました。

湿った木の空気が、くーちゃんの乾いた肺を満たしてゆきます。

あの時の、沼の底の懐かしいにおいが、漂ってきました。

気が付けば抱き着いているくーちゃんの体を、ぬめぬめした液体が沈めてゆきます。


くーちゃん「…あ」

それは、あの時の沼でした。

371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:09:01.12 ID:BXJMuESK0
もう沈むことはないと思っていた沼に、くーちゃんはまた沈み始めてたんです。

あの旅の果てで、くーちゃんは沼の底を望んでいました。

あの時選ばなかった、沼の底への道をたどる。

理想の世界の扉を開けられる。

ああ


素晴らしい人生です。
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:09:49.03 ID:BXJMuESK0































くー





















あっ

















373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:10:32.33 ID:BXJMuESK0
あと2回

また明日

ノシ
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/18(日) 11:55:50.11 ID:5Tz9o532o
おつ
くーちゃん一人にしたら駄目な子だ
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/18(日) 14:19:45.85 ID:WJ0HkjWDO
何歳くらいになったんだろう
でも喋り方は変わらない
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:10:26.78 ID:BXJMuESK0
くー

「くーちゃん」

くーちゃん(…だれのこえでしょう)

くーちゃん(おとこのひとです。とても、なつかしい、もうきこえない)

くーちゃん(たいせつな、こえです)


377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:12:07.31 ID:BXJMuESK0
 くー

「ほら、くーちゃんだ」

くーちゃん(…くーちゃん)

くーちゃん(すごく、かわいいなまえです)

「こんなに小さいのに、自分で自分の名前をつけられるなんて」

「天才的な頭脳だ」

?「大げさね、お腹が鳴っただけじゃない」

「いいんだよ」

「人生大げさなくらいがちょうどいいんだよ」

くーちゃん(…そうでした)

くーちゃん(だからくーちゃんは)

くーちゃん(このなまえが、だいすきだったんです)
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:13:45.02 ID:BXJMuESK0
くー

パチ

くーちゃん「…あ」

くーちゃん「…ここは」

くーちゃん「…現実です」

くー

くーちゃん「…おなか」

くーちゃん「…すきましたね」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:30:01.66 ID:BXJMuESK0
TRACK15 おにぎり

海の男の家

海の男「…ずいぶんひさしぶりだな」

海の男「漁も畑も手伝わねえで、なにしたんだお前さん」

くーちゃん「お前さん違います。くーちゃんです」

海の男「おまえもう30も半ばだろ。いい年してまだくーちゃんか」

くーちゃん「くーちゃんは、この名前が大好きなんです」

くーちゃん「誰かにこの名前を呼ばれるのも大好きなんです」

くーちゃん「だから、何歳になってもくーちゃんです。後期高齢者になっても同じ感じでゆきます」

海の男「相変わらずいい性格してるな」

くーちゃん「ありがとです」

くーちゃん「それより海の男」

くーちゃん「くーちゃんとおにぎり食べませんか?」
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:31:21.59 ID:BXJMuESK0
海の男「おにぎり?」

くーちゃん「お米はもってきました」

海の男「炊いてないじゃねえか。うちには飯盒しかねえぞ」

くーちゃん「知ってます。貸してください」

くーちゃん「くーちゃんはおなかがへりました」
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:33:11.74 ID:BXJMuESK0
小一時間後

くーちゃん「我ながらきれいににぎれました」

海の男「ふん、うまいじゃねえか」むぐむぐ

海の男「てっきり、お前さんのことだから、トンネルの向こうの沼から」

海の男「行ったきり、もう戻ってこねえんじゃないかって思ったぜ」

くーちゃん「沼の底でも、腹は減るんです」

くーちゃん「おなか、減って死んでしまえば、歌、届けられません」

くーちゃん「会いたい人、会えなくなってしまいます」

くーちゃん「くーちゃん、それは嫌だなって、思っただけです。それだけの話です」

382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:34:33.80 ID:BXJMuESK0
海の男「お前さん、大楠さんはいいのか?」

海の男「大楠さんがさみしがるだとか、そんなこと言ってなかったか?」

くーちゃん「だいじょぶです。大楠さん、くーちゃんと一緒にいたいわけじゃないのです」

海の男「来てほしいって言われたんじゃねえのか」

くーちゃん「しょくぶつのトンネルで、ことばはきこえないんです」

くーちゃん「だからあれは」

くーちゃん「くーちゃんのこえだったんです」

くーちゃん「多分、一緒に沈みたかったの、大楠さんじゃなくて」

くーちゃん「くーちゃんだけだったんです」
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:36:02.42 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「だから、くーちゃんが現実に見切りをつけたとき」

くーちゃん「沼に沈みだしたのは、くーちゃんの意志とゆうことです」

海の男「…そうか」

海の男「なあ」

くーちゃん「なんですか?」

海の男「今度、飯作ってやるよ」
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:38:06.55 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「どしたんですか、急に」

海の男「お礼だよ」

くーちゃん「おにぎりのですか?」

海の男「ちげえよ」

くーちゃん「じゃあなんですか」

海の男「秘密だ」

くーちゃん「海の男なのに、隠し事して、よいですか?」

海の男「言わない大切さもあるんだよ」

いつも屁理屈ばかりの海の男ですが、たまには筋の通ったことを言うものです。

睨まないでください。冗談ですよ。

いつもありがとうございます。
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:39:47.77 ID:BXJMuESK0
海の男「ついでにギターも教えてやろう」

海の男「お前さんの歌もいいが、楽器があると、より引き立つ」

くーちゃん「船に積まれてたギター、あれ飾りじゃなかったですか」

海の男「自分で言うのもなんだが、そこそこ弾けるんだぞ」

ハナちゃんはたしか高校時代、音楽の授業をとってたので

ギターが少し弾けたことを思い出しました。

海の男「そうだ。お前さんに会ったら渡しておくもんがあったんだ」
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:46:17.58 ID:BXJMuESK0
海の男「ったく、お前さんの荷物、いい加減お前さんの家に届くようにしろよ」ごそごそ

くーちゃん「あの島の家より、海の男の家の方が、郵便屋さん、とどけやすいです」

海の男「変なところ気遣ってんな…あったあった」

海の男「こいつだ」

海の男が持ってきたのは、大きな茶封筒でした。

中は少しだけ膨らんでます。

触ってみると、本のような角ばった感触がしました。
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:55:03.03 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「だれからですか?」

海の男「それが送り元が空欄でな」

くーちゃん「ふむ」びりっ

くーちゃん「あ」

くーちゃん「えほんです」

くーちゃん「タイトルは…」

くーちゃん「しかの、かぞく」

くーちゃん「とても、かわいい題名です」

くーちゃん「表紙の絵も、とても素敵です」

その独特な色使い。忘れるはずありません。

 
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 21:55:38.14 ID:BXJMuESK0
内容を簡単にゆうと、こんなお話です。

木でできた鹿さんたちが、離れ離れになった自分の家族と出会う、とゆうものです。

そのお話は、くーちゃんのとても大切なお友達の絵で描かれてました。

たくさんの花や植物に囲まれてる、鹿さんの家族には、何十色も、見たことのない色が使われてます。

ところどころ、グルグルしてたり、びよんびよん伸びてたり、

たくさんの小さい丸や大きい丸があったりして、

まるで踊ってるみたいな絵です。

その絵はきっと、最高の笑顔で描かれたのでしょう。

きっとそうだと思います。海の男じゃなくても、

くーちゃんにはわかります
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:04:03.29 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「これが、やりたいことだったですね」

パタン

くーちゃん「あ」

くーちゃん「海の男、お願いあります」

海の男「なんだ?」

くーちゃん「電話、貸してもらえないですか?」

 絵本の裏に、たくさんの色を使って描かれてたのは、電話番号でした。
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:04:49.36 ID:BXJMuESK0
海の男の携帯電話を借りて、番号を入力しました。

今の時代は便利です。くーちゃんもこれをきっかけに、携帯を契約しようと思ったほどです。

来週くらいにしようと思います。

毎回海の男に貸してくださいと言うのも、めんどくさいので。

そろそろ電話代を要求されそうな気がします。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:05:27.08 ID:BXJMuESK0
話を戻しましょう。

三回ほど、プルルルルと、音が鳴ったあと、ハナちゃんは出てくれました。

久しぶりに聞いたハナちゃんの声は少しだけ大人っぽくなってたですけど、

いつもみたいに、優しい声で、チョコレートの味を思い出しました。

それはもう、最高に最高に、ぜんぶぜんぶうれしくて

、胸はずっと、ドキドキしてました。
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:06:09.57 ID:BXJMuESK0
いろいろなお話をしました。

天気の話、海の男の話、くーちゃんの暮らしの話、大楠さんのトンネルの話、とかです。

あ、でも、ハナちゃんがあれからどんな旅をしてたのかとゆう話が最初でしたね。

絵本の鹿でピンと来た人もいるでしょうが、ハナちゃんは、あの鹿のお兄さんを探してたんです。

しかも探し方がすごいんです。

日本中の山を探してたんです。

無謀すぎます。ハナちゃん、もう少し考えてから動いたほうがよいです。本当に。

冗談です。くーちゃんにだけは言われたくないですよね。
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:06:46.47 ID:BXJMuESK0
ただ、それなら絵本を直接島に届けに来てくれたらよいものを、と思いますよね。

なんでこんなまどろっこしいこと、したのかとゆうと、

どうやらハナちゃんは、くーちゃんの顔を見るのが少しだけ気まずかったみたいなんです。

あれほどくーちゃんのことを大好きだったハナちゃんが

くーちゃん以外に夢中になってしまうものを見つけて

それに没頭してしまったら

くーちゃんを、裏切ってしまった気持ちになったんですって。
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:07:22.06 ID:BXJMuESK0
ハナちゃんはずいぶんとつまらないことを気にしてたものです。

好きなものがたくさんあるのは、悪いことじゃありません。

それに、ハナちゃんがくーちゃんのことを大好きなのは、ちゃんと伝わってますから、

何も心配いりません。

お互いがお互いの道を進んだのは

きっと悪いことじゃなかったと思います。
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:07:51.98 ID:BXJMuESK0
すいません。強がりを言いました。

くーちゃんはずいぶんと偉そうなこと、言いましたが

くーちゃんは、ハナちゃんが近くにいないのはさみしかったので。

そのことを素直にハナちゃんに電話で言うと、大きな声で笑われてしまいました。
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:08:37.43 ID:BXJMuESK0
それから、しばらくしてハナちゃんと、鹿のお兄さんが、島に遊びに来てくれました。

大楠さんの前で一緒にのんびり過ごしました。

どんな遊びをして、どんなことをお話したか、今回は割愛します。

別に、他愛のないことばかりなので。

強いて言えば、それからもたまにハナちゃんは、遊びに来てくれるようになりました。

お兄さんと一緒の時もあれば

一人で来て、一緒にお酒を飲みながら大楠さんの前でのんびりと星空を見上げたりします。

すっかりくーちゃんたちは大人になってました。

いろいろと変わってしまったものもあります。でも、それでよいんです。

変わってゆくこと、きっと人生では大切なことなんです。
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:10:32.72 ID:BXJMuESK0
・・・・・・・・・・・ふう

こんな感じでよいでしょうか

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

多分、ちゃんと録れてるはずです。

では、みなさん。

続きは会場でお話しますね。

ありがとうございました。




…プツッ
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 22:11:29.02 ID:BXJMuESK0
次回、最終回

ノシ
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/18(日) 23:06:47.48 ID:1O9sV0O/o
おつおつ
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/19(月) 14:59:50.37 ID:YCxOLkbDO
最後はまったりとした感じで終わりそう
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/19(月) 20:38:46.66 ID:fhKmTJaH0
えー、あー、あー、

テステス

ただいまご紹介にあずかりました。あまのくうです。

くーちゃんと気軽に呼んでください。

みなさんは、もう知ってますかね。

とゆうか、聞いてくれましたかね。くーちゃんのあの、長い長いお話を。

ハナちゃんはすごいです。

くーちゃんのスピーチをQRコードとやらにして、招待状で聞けるようにしてくれたんですから。
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