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クラスの変わり者が揉め事を起こして始まる一次創作
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 17:39:56.06 ID:J1OtaQLyO
「あんたさぁ、ムカつくんだよね」
この多様化を肯定するご時世、クラスにひとりくらいおかしな生徒が混じっているのが普通になっているが、ご多分に漏れず、あたしのクラスにもおかしな生徒が存在している。
「聞いてんのかよ、田中ァ!」
田中、なんといっただろうか。あたしを含めてそいつの下の名前を知っているクラスメイトは少ない。というか誰もいないかもしれない。そのくらい地味で存在感のない生徒だ。
「ちょっとちょっと、朝からなにキレてんのさ? しかも相手は田中ってどゆこと?」
怒鳴り散らしているのは山田。山田とよくつるんでいる佐竹が事情を聞く。クラスメイトも聞き耳を立てて、この騒動の原因を探る。
「どうもこうもないっての。こいつ、裏でコソコソ高橋先輩と会っててさ。昨日キスしてるとこを見たんだよ。気持ちわりー」
衝撃的な事実にクラスがざわめく。高橋先輩ってのは下級生から絶大な人気を誇るイケメンな先輩だ。山田がその高橋先輩に惚れているというのは周知の事実で、会えばよくきゃあきゃあ言っていた。そんな山田がよりによって愛しの高橋先輩のキスシーンを目撃してしまった。これは絶対絶命、どうする田中。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1699519196
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 17:42:49.02 ID:J1OtaQLyO
「マジ? 田中、それほんと?」
「……はぁー」
佐竹が事実確認すると田中はため息を吐いて辟易した様子でやれやれと首を振りながら。
「高橋先輩にも困るよね。僕は誰かに見られたら困るからやめてって言ったのにさ」
「っ!? てめっ……!」
「ちょ、ちょっと山田ストップストップ!」
殴りかかろうとする山田。それを止める佐竹。そんな2人を眺めながら、田中は煽る。
「高橋先輩さ、山田のことは眼中にないんだって。良かったじゃん早めに知れてさ。いつまでも告白しないで片想いしてんのは疲れるでしょ? むしろ感謝して欲しいくらいだよ」
「うっせぇ! この、男女!!」
男女。その響きにクラスがしんとなる。だんじょ、ではなく、おとこおんなという響き。
田中は変わった生徒だ。男子の制服を着ている女子。しかし、実際のところどうだろう。
女顔の本物の男子生徒かも。定かではない。
「高橋先輩はさ、どっちでもいいんだって」
「っ……きしょいんだよ!」
「うん。そうだね。だから振ってやったよ」
「は……?」
冷や水を浴びせられたように鎮まった山田に向かって、田中はこう吐き捨てた。
「どっちでもいいとかきしょいですねって」
意味がわからん。誰にも理解出来なかった。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 17:45:28.51 ID:J1OtaQLyO
「また僕のことを観察してたの?」
放課後、帰り支度をしていると田中にそう囁かれた。普段からお喋りをする間柄ではないけれど、揉め事があるといつも絡まれる。
「田中って山田が高橋先輩のこと好きって知ってたでしょ?」
「そりゃあ、あれだけ好き好きオーラ出してたらね。もちろん知っていたよ」
「あんたさ、いつか刺されるよ」
「一応キスも寸止めだったんだけど……」
「そんなの関係ない」
帰り道に率直な感想を述べると、田中はさも困ったように腕を組みつつ、提案してくる。
「明日からスカート穿いたほうがいい?」
「その辺、こだわりないんだっけ?」
「まあ、どっちでも。本来、今日みたいな諍いを減らすためにズボン穿いてるわけだし」
どうだか。結果的に拗れて悪化しているとしか思えない。素直に女生徒として登校していれば、反感を買うこともないだろうに。
「まあ、僕はかわいいから仕方ないね」
「その僕ってのやめな。きしょいから」
「でもこれが男連中には効くんだよね」
知らんがな。げんなりしていると、不意に。
「心配してくれて、ありがとう」
こいつは本当に。確かに田中は可愛かった。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 17:50:52.01 ID:J1OtaQLyO
「あの、高橋先輩。遅刻しちゃいますよ?」
「頼む、田中! もう一度だけ!」
翌朝。登校中にコンビニの裏から声がして覗いてみると、今度はあたしが田中のキスシーンを目撃しそうになった。
「……何やってんですか」
「うわ!? な、なんでもねーよ!」
思わず口を挟むと、高橋先輩はびっくりして立ち去った。まるで発情期の犬や猫だな。
今日はスカートを穿いている田中に訊ねる。
「先輩のこと振ったんじゃなかったの?」
「なんかしつこくてさ。今度はぶん殴る」
「強らなくていい。震えてんじゃん」
「だって、スカート……寒いから」
飄々としていてもわかる。怖かっただろう。
「女子の制服だからムラムラしたとか?」
「あーたしかに。やっぱ着替えてくるよ」
来た道を引き返す田中。久しぶりのスカート姿。田中はかわいい。高橋先輩が発情してしまうのも納得だ。眼福とばかりにその後ろ姿を目に焼き付けてから、登校した。
「今朝はありがとう」
遅刻してズボンを穿いた田中に感謝を告げられたので、あたしは尊大な態度で応じる。
「ん。以後、気をつけたまえ」
「有栖川って、カッコいいよね」
「まあな」
「苗字がね」
「羨ましいのか?」
「お嫁さんにして欲しいくらいには」
あたしの苗字はカッコいい。田中は可愛い。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 17:54:39.46 ID:J1OtaQLyO
「有栖川、一緒に帰ろう!」
「ん。よかろう」
あれ以来、田中との距離が縮まった。もともと人間観察するあたしから、田中は自分が客観的にどう見えているのかを聞き出すことはあったが、別に友達ではなかった。
「田中、お前は暖かそうだな」
「予備のスラックスがあるから有栖川も穿いて登校する?」
「あたしは生足に自信あるからいい」
現在繰り広げられているこの頭の悪い会話も以前とは距離感が縮まった証拠と言えよう。
「おそろがいいよ、ね? 穿いてきて」
「生足を隠すなんて人類の損失だ」
「誰も有栖川の生足なんて興味ないよ」
「なん……だと……?」
親しき中にも礼儀あり。というか傷ついた。
「田中も興味ないの?」
「へ? ぼ、僕はまあ……それなりに。えへ」
なんで焦る。なぜ照れる。あたしも照れる。
「や、休みの日とかなら……考えてもいい」
「マジで? いいの? 休日ズボンデート?」
「デ、デートじゃないし!」
「スカート禁止だからね! 絶対だよ!!」
なんだろうこれ。とにかく週末が楽しみだ。
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 17:56:47.47 ID:J1OtaQLyO
「お、おまたせ……」
「田中、あんた遅すぎるって……え?」
休日デート当日。振り返るとそこには肩出しニットワンピースを着た美少女が佇んでおり、そんな童貞を殺すような服を着ているのが田中であると脳が認識した瞬間、あたしはスマホを取り出して激写した。
「うっわ! うっわぁー! えぐっ! えぐすぎる! なんなんその格好! 下手したら捕まるってか、通報するよ!? おまわりさーん!!」
「あ、有栖川、騒ぎすぎ。ほら早く行くよ」
自然に手を取って歩き出す。ドキドキする。
「あ、有栖川もその格好……カッコいいね」
「そ、そう?」
不意打ちで困った。オーダー通りにパンツルックで適当にジャケットを合わせただけだ。
髪をアップにしてるのが新鮮かもしれない。
「うん。苗字だけじゃなく、カッコいい」
「……アホか」
くそかわいいなもう。まずいよ落とされる。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 17:58:34.85 ID:J1OtaQLyO
「ていうか、あんた寒くないの?」
「寒いけど……こないだ、有栖川の生足論を聞いたからね。今日は痩せ我慢してみるよ」
「ふーん」
ニット自体はあったかいんだろうが、露出が多すぎる。映画とか飯を食ってる時は平気そうだけど、外を歩くには寒かろう。
「ほら、羽織って」
「いいの?」
「周囲の男どもにとって目に毒だからな」
「ありがとう」
ジャケットを貸すと嬉しそうな田中可愛い。
「あ、あのさ……」
「ん?」
「ほんと、有栖川って……カッコいいよね」
「べ、別にそんなことないって」
「そんなことあるよ」
照れて鼻をかくあたしを見つめて田中はいつになく真剣な表情と声音で語り始めた。
「仲良くなる前から気にしてくれたでしょ」
「そりゃあ、田中は変わってたから……」
「僕が何か問題を起こすたびに、心配そうに見てくるのは有栖川だけだった」
そうだろうか。ただの野次馬だよあたしは。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 18:01:09.52 ID:J1OtaQLyO
「別にあたしは田中を助けたわけじゃない」
そう。何もしてない。助けたわけじゃない。
「あんたが困っててもただ見てるだけだった。あんたがあたしに話しかけてから、会話をするような薄情者だ」
自分で言って惨めになる。初めて口にする。
「……ごめん」
謝罪するとすっきりした。すると、田中は。
「有栖川は何もわかってない」
「……え?」
「僕は別に普通に過ごそうと思えば出来た。山田の好きな高橋先輩に色目使って騒ぎを起こしたのは僕の意思だよ」
「んん? どゆこと?」
「有栖川の人間観察の対象になるために、他人の恋路を利用したってわけ」
利用したのか。それは良くない。でも何故。
「あ、有栖川と、仲良くなりたかったから」
「あー……なるほど」
それならあたしが悪いな。なんたるこった。
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 18:03:09.42 ID:J1OtaQLyO
「ま、まあ、経緯はどうあれ、結果オーライじゃん? そういうことにしとこう、うん」
「嫌いにならない?」
そんな風に上目遣いするな。卑怯だぞ田中。
「……嫌われないように、気をつければ?」
「うん……わかった。ありがとう」
そんな風にほっとするな。可愛いぞ、田中。
「今度はあたしがその格好するから貸して」
「ええ〜えっち」
「なんでよ!?」
うちのクラスには田中という変わった生徒がいる。あたしはこいつが気に入った。これからはちゃんと助けてやろうと思う。だって。
「……あたしもあんたに嫌われたくないし」
「ん? 何か言った、有栖川?」
「別に。ていうかあんた結局、女なの?」
「ふふふ……内緒だよ」
どっちでもいいなど詭弁だ。どっちも好き。
【結局、あたしは下の名前を知らない】
FIN
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/09(木) 18:46:15.73 ID:1WgXEtdg0
結局何が言いたいのかさっぱりな自己満足の駄文やん
無理に捻り出すよりも死ぬまでうんこにまみれたものを
書き続けている方がお前にはお似合いだよ
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/11/09(木) 19:41:34.76 ID:zhZBJo6Lo
おつおつ
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/11/09(木) 19:42:42.42 ID:Vm8jKpWdO
悪い事言わんからこんな所より他の所で書いた方がいいよ。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/11/09(木) 19:51:39.01 ID:3MiSuUjbO
登場人物の本名が判明しないとか、お前が散々汚してきた
ハルヒのモロパクりやん。これで一次創作名乗るとか笑わせんな
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/10(金) 03:32:43.56 ID:J4m7k5JcO
「有栖川、ちょっといい?」
「ん? なに?」
僕のクラスには変わった人がいる。僕自身もかなり変わり者である自覚はあるけれど、目の前でその鋭い眼光を話しかけてきた山田に向かって飛ばしている有栖川は変わり者だ。
「あんたさ、最近田中と仲良すぎない?」
「は? だからなに?」
「そんなおとこ女、ほっとけばって話」
おーおー。よくもまあ、本人の前で村八分の相談をするものだ。お昼休憩の和やかな雰囲気が台無しじゃないか。すると、有栖川は。
「おーい、佐竹。山田引き取って」
「ご、ごめんねー有栖川さん。ほら、席に戻るよ、山田。ていうか、喧嘩売る相手は選びなさいよ」
「チッ……なんで同級生にさん付けする必要あんの? 有栖川なんか大したことないし」
山田はわかってない。有栖川はすごい人だ。
「別にさん付けなんかする必要ないのは確かだけど、山田はあたしに喧嘩売ってんの?」
「だったらどうする?」
「上等じゃん」
おもむろに席を立った有栖川は高い身長で山田を見下す。威圧感が半端ない。その美貌も含めて目立つ存在の有栖川は、入学して早々に先輩に目をつけられて、その悉くを返り討ちにしたという伝説的な喧嘩番長であった。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/10(金) 03:36:23.92 ID:J4m7k5JcO
「へー山田って案外根性あるんだ」
胸ぐらを掴まれても怯まなかった山田に対して有栖川は感心して、こちら振り向き呼ぶ。
「田中、そろそろ山田と仲直りしな」
「あ、はい」
事の発端は自分のせいだった。顛末は有栖川に明かしてあるけれど山田にはあれ以来無視されていたので話せていない。良い機会だ。
「ごめんね、山田。僕が悪かったよ」
「い、今更謝ったって……!」
「山田、あたしも悪かった。ごめん」
「な、なんで有栖川まで謝んのよ!?」
詳しく説明すると拗れるので今は謝罪のみ。
「まーまー。とりあえず謝ってくれたんだし、この件はもう水に流そ? 山田だって、今のままじゃこの先やりにくいでしょ?」
「わ、わかったって……もう怒ってないし」
佐竹の仲介もあり、ひとまず丸く収まった。
「良かったじゃん、田中」
「うん。ありがとう、有栖川」
ポンポンと僕の頭を撫でながら微笑む有栖川にドキリとする。有栖川は滅多に笑わない。
怖いイメージで近寄り難い。深窓の令嬢だ。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/10(金) 03:39:18.61 ID:J4m7k5JcO
「有栖川、今日はごめんね」
「ん? なんのこと?」
帰り道に騒動に巻き込んだことについて謝罪すると、有栖川は本当に心当たりがないかのようにキョトンと首を傾げた。
「山田のこと」
「あー……あれはまあ、あたしにも責任あるって言うか、原因みたいなもんだから」
仲良くなって知ったことだけど、有栖川はお人好しすぎる。将来サギにでも引っかからないか心配だ。もっとも、この冷たい印象の美人を騙すのは勇気が必要だろうけど。
「有栖川はさ」
「ん?」
「僕が小細工なしで友達になってって言ったら、仲良くしてくれた?」
そう訊ねると顎に手をやって有栖川は考え始めた。その横顔が綺麗で僕はドキドキする。
「わからん。いきなり田中が友達になってとか言ってきたら、たぶん何を企んでるのか疑ってたと思う」
「だよね」
やっぱり僕は正しかった。山田には悪いけどこのアプローチでしか有栖川に近づくことは出来なかった。けれど有栖川はこう続ける。
「でも、なんだかんだ仲良くなってたと思うよ。うん。それはきっと間違いない」
「な、なんでそう言い切れるの……?」
「田中はありがとうとごめんなさいを素直に言えるから。それが出来れば仲良くなれる」
なんだそれ子供か。美人の癖にかわいいな。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/10(金) 03:44:31.56 ID:J4m7k5JcO
「有栖川」
「なに山田。昨日の続き?」
「違う違う!! 山田も一緒にお弁当食べたいんだって! もちろん田中も一緒にね?」
翌日の昼休み。お弁当箱を持った山田と佐竹と一緒にお昼ご飯を食べることになった。
「ところで、山田」
「なに?」
「まだ高橋先輩を狙ってんの?」
会食早々にぶっ込む有栖川。ヒヤヒヤする。
「もういいし。どっかの誰かさんによると、眼中にないみたいだから」
「そっか。それは賢明な判断だと思う」
「ところで有栖川」
「ん?」
「あんた、最近めっちゃかわいい女の子と休みの日にデートしてるって噂になってるよ」
「げほっ!?」
噴き出した有栖川。レア顔だ。顔が真っ赤。
「な、なにそれ!?」
「まるで彼氏彼女みたいだったって」
「全っ然違うし!!」
「ちなみにあんたが彼氏ね」
「はあ!? あ、あたしだってたまに田中からかわいい服を貸して貰ってるし!!」
貸すのはいいけど伸びるんだよ。デカくて。
「ほほう? となるとやっぱりデート相手は田中なんだね? おふたりさんはラブラブだね」
「うん。僕と有栖川はラブラブなんだよ」
「うるさい佐竹! 田中も悪ノリすんな!!」
「有栖川って趣味悪くね?」
「ほっとけ!」
佐竹の発言を肯定すると、有栖川はめっちゃ照れていた。山田はそんな僕らを呆れたように眺めている。仲直りして良かったと思う。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/10(金) 03:53:25.08 ID:J4m7k5JcO
「田中、なんでひとりで帰んの?」
「有栖川……」
放課後。靴を履こうとしていたら、昇降口で有栖川に見つかってしまったので説明する。
「なんか噂になってるみたいだからさ」
「噂って、昼休みの話?」
「うん。僕らが付き合ってるって噂」
僕は変わり者の自覚がある。有栖川は無自覚だろうけど変わり者である。そんな僕らが余計なことをするとめちゃくちゃ目立つのだ。
というか、ぶっちゃけここまで早い段階で噂が広まるとは思ってなかった。もっとゆっくりと浸透する筈が完全に予想を上回ってる。
「暫くは距離をおいたほうが良いかなって」
今日だってお弁当を囲む僕たちは相当目立っていた。つい先日喧嘩した山田とその子分の佐竹。僕と有栖川。それぞれ別々に行動している分には目立たないが、集まると目立つ。
こんな筈ではなかったのだが、こうなってしまっては致し方ない。それにこれは他ならぬ有栖川のためでもあった。
「有栖川もまた停学にでもなったら大変でしょ? 僕のせいで何か問題に巻き込まれたりしたら申し訳ないし」
有栖川は入学早々に先輩に絡まれた件で暴れた際、停学となっており、前科一犯である。
なのでやはり距離を取るべきだと思うけど。
「ん。あんたの言い分はわかった。それで、あたしはこれからどうやって田中と接すればいい?」
「いや、だから距離を……」
「教室では話さず、帰りも別々で、休みの日も会わなければいいの?」
「うん……しばらくはそうしたほうが……」
「そんなの嫌だ」
漢らしい台詞とは裏腹に、有栖川は涙声で。
「せっかく仲良くなれたのにそれは寂しい」
僕はこの日、有栖川も泣くんだと学習した。
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/10(金) 03:57:41.29 ID:J4m7k5JcO
「有栖川、もう平気?」
「なにが? 別に全然、なんともないけど?」
あれから慌てて全言撤回して有栖川を泣き止ませて、ようやく帰路についた頃にはすっかり夕暮れだ。野次馬にジロジロ目撃されたので、噂は更に大きくなっていることだろう。
「有栖川、目が真っ赤っかだよ」
「ふん。ウサギみたいでかわいいでしょ?」
ウサギは寂しくて死ぬらしい。それは困る。
「やれやれ。有栖川は寂しがり屋だね」
「仲良くなったあんたの自業自得だし」
違いない。とはいえ自得が大きすぎるので。
「よし。今度のデートは僕が彼氏役になる」
「そ、そういう問題か……?」
「こう、顎をガッと掴んでぶちゅーって!」
「そ、それはいくらなんでも早くない!?」
僕のクラスには変わり者がいる。目をつけたのは僕のほうだ。これからは有栖川を泣かせないように気をつけよう。だって約束した。
「有栖川に嫌われないように、頑張るから」
「ん。キスはまだ早いからな」
「下の名前を呼ぶのは?」
「それも……まだ早い」
ひとまず鼻声の美人の手を握るに留めよう。
【結局、僕は下の名前を呼ばない】
FIN
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/11/10(金) 19:45:09.19 ID:sSyhUtx2o
続き感謝!
おつー
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/11(土) 02:14:34.01 ID:K/6HqkOhO
「いい加減許してよ有栖川」
「うるさい田中あっちいけ」
はい! ということで本日も始まりました変わり者が起こす揉め事。実況はわたくし、佐竹でお送りさせて貰います。解説は山田です。
「いやー喧嘩するほど仲が良いとは言いますが、近頃は田中と有栖川さんが揉めている姿をよく見かけます。山田はどう思う?」
「どうでもいい」
「ふむふむ。基本的に有栖川さんは正論しか言わないので、恐らく田中が何かやらかして怒らせたのではないかという見解ですね。なるほどなるほど。はいはい。私も同感です」
「佐竹……なんでそんな楽しそうなわけ?」
楽しんでいるのは私だけではありません。クラスメイトという観客の皆さんも固唾を飲んで決着の行く末を見守っています。ああ、場内の写真撮影は禁止なので控えてください。
「音痴なの?って訊いたのは謝るからさぁ」
ふむふむ、有栖川さんは音痴と。これは意外や意外。天性の喧嘩センスのおかげか、運動神経抜群で尚且つ成績優秀な才媛である有栖川さんによもやそのような弱点があるとは。
「だからあたしは別に音痴じゃないし」
「じゃあ帰りにカラオケ寄っていこうよ」
「無・理!」
「それはやっぱり音痴だから?」
「だから違うって!」
ははあん。僭越ながら私はその理由とやらに見解がつきましたぞ。そのことを田中に耳打ちすれば事態は収まるでしょうが、さてどうしたものか。おや? 解説の山田さん、何か?
「さっさと行ってくれば」
はいはーい。仰せのままに。ガキ大将閣下。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/11(土) 02:17:53.25 ID:K/6HqkOhO
「はい、有栖川さん。コーラで良かった?」
「あたしは炭酸苦手で……」
「じゃあ僕のストレートティーをあげるよ」
「……ありがと」
というわけで無事に事態を収拾して、放課後にカラオケボックスまでやって参りました。
メンバーはわたくし佐竹と有栖川さん、田中、そして嫌々山田がゲストで来ています。
「山田はメロンソーダだっけ?」
「あー……マジだるい」
「え? 好きでしょ、メロンソーダ」
「なんであたしまでカラオケに……」
文句を言いつつも山田はリモコンを手に取って曲を入れ始めます。この子は誘うのが大変なだけで来れば誰よりも歌う変わり者です。
「はい、有栖川さん。お次どうぞ」
「あ、あたしは歌わないぞ」
「じゃあ僕が次に入れるよ」
「それなら有栖川さんはとりあえず山田と田中のメドレーを聴いてから、もし気に入った曲があったら歌ってみてね」
「……考えとく」
断固歌うのを拒否する有栖川さん。どうやら最近の流行りの曲を知らないらしい。だからそもそも歌う曲がないので、カラオケの誘いを断っていたとのこと。それならそうと言ってくれればいいのに。なにせ、こいつらは。
「田中、採点勝負から逃げんなよ」
「ふふふ。上等じゃん……なんてね」
歌唱力もさることながら、驚異的な音楽センスとリズム感でボーカル・ギター・ドラムスなんでもござれのメスガキ歌姫山田と、96猫を彷彿とさせる魅惑的なハスキーボイスで老若男女問わず誰もを虜にする男女田中のカラオケバトルの火蓋が今、切って落とされた!
ていうかこいつら、今すぐYouTuberになれ。
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/11(土) 02:21:22.38 ID:K/6HqkOhO
「チッ……なんだよ同点とか。つまんねー」
「100点以上は表示されないからね」
勝負は引き分け。いやはや耳が幸せですわ。
「どう? 有栖川さん、歌えそう?」
「ん。なんとか」
「あ、じゃあ僕と一緒に歌おう有栖川!」
「まあ、やぶさかではないというか……」
田中にリードされながらデュエットする有栖川さん。やれやれ。素直じゃないんだから。
ていうか、うま!? 今聴いたばっかなのに。
まるでおん湯が歌う帝国少女だ。え、本人?
「なんだ、音痴なら笑ってやったのに」
「山田も歌いかたを教えてあげたら?」
「やだよめんどくさい。それよりあたしらも一緒に歌うぞ、佐竹。今度こそ勝つんだ!」
「私をチーム対抗戦に巻き込まないでよ」
結局、チームで分かれてのど自慢合戦となってしまった。有栖川さんはめきめきと上達して、平凡な私が足を引っ張ったことにより、最終的にこちらのチームは負けてしまった。
「よし! あたしらの勝ちだ!」
「ふたりは無敵! プリキュアだね!」
ハイタッチするふたり。結果は見えていた。
「あーあ。負けた。だからやだったのに」
「別に……勝敗なんかどうでもいいし」
「私が足引っ張ったこと、責めないの?」
訊ねると、山田はおもむろに席を立って。
「有栖川」
「ん?」
「佐竹に感謝するべきじゃないの?」
いきなり矛先を向けられた。何か言う前に。
「佐竹、ありがとう。おかげで楽しかった」
「あ……いえ。お気になさらず」
有栖川さんの貴重な笑顔を向けられて、ちょっとだけ田中の気持ちがわかった。これはたしかにいいものだ。マジで惚れそうになる。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/11(土) 02:24:18.76 ID:K/6HqkOhO
「いや〜なんだかんだ楽しかったね」
「別に」
帰り道、田中たちと別れてから山田と一緒に帰路につく。山田は私の幼馴染で家が近所なのだ。とはいえ仲良くなったのは最近だが。
昔はチビの癖にやたら凶暴なガキ大将だった山田によく虐められていたものだ。とほほ。
「まだ悔しいの?」
「は? なにが?」
「田中の歌声に高橋先輩が惚れちゃって、取られちゃったこと」
高橋先輩は中学から軽音部で、歌やベースが上手かった。休みの日にはライブ活動をしていて、そこで中坊山田は高橋先輩と出会い、憧れて独学でバンドの知識を学んでいった。
同時に洒落気を出して伸びなかった低身長も功を奏し絶世のメスガキへと成長したのだ。
「あとちょっとだったよね……」
あとちょっとで、バンドのメンバーに加えて貰えたかも知れない。ていうかそもそも勇気を出して軽音部に入部していれば、今頃は恋が成就していたことだろう。今は昔の幻だ。
「あたしの声はあの人の耳に届かなかった」
たまたま合コンみたいな形で高橋先輩とカラオケに行き、人数合わせで呼んだ田中がハスキーボイスで魅了した。その瞬間、負けた。
山田のアニソン系の歌声では勝てなかった。
「あの時先輩は田中を選んだわけだし……」
しかしどうだろう。私はそうは思わないな。
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/11(土) 02:26:14.25 ID:K/6HqkOhO
「田中はこの前、高橋先輩が山田のことなんて"眼中にない"って言ってたけどさ。あんなの別に気にしなくていいんじゃないの?」
「でも、眼中にないならあたしは……」
「そもそも目と耳は違うじゃん」
ただの屁理屈。眼中になくても聴こえてる。
「私は山田のれをる様っぽい歌声好きだよ」
「れをる様って……まあ、もういいけどさ」
諦めるなとは言わないしウジウジするくらいなら玉砕覚悟で告ったほうがいいのかも知れない。このまま思い出にするのもまたよし。
そう言えば、昔はお互い名前で呼んでたな。
それもまた今となっては思い出でしかない。
「山田って、先輩の下の名前知ってる?」
「……佐竹の下の名前なら知ってる」
「私も山田の下の名前、知ってるよ」
「まあ、呼ばないけど。今更恥ずかしいし」
「山田って、結構かわいい名前だったよね」
「有栖川と田中の前では絶対に禁句だから」
「はいはい。仰せのままに。ガキ大将閣下」
昔のようにへりくだると、そっぽを向いて。
「ふん。ていうか、その……今日は嬉しかった。あたしの歌声、好きって言ってくれて」
おやまあ。昔からは考えられない。進歩だ。
「れをる様の【ヒビカセ】歌ってくれる?」
「いいけど……田中たちがいない時限定で」
やったね。変わり者の幼馴染は役得ですわ。
【結局、私も幼馴染を下の名前で呼ばない】
FIN
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/12(日) 02:20:02.62 ID:cnVE/bAzO
「ねえねえ、山田」
「なに?」
「田中、朝から元気ないね」
佐竹に肩を叩かれそう囁かれてから田中のほうを見ると、奴は机に突っ伏して寝ていた。
あいつが有栖川とつるむようになる前はよく見かけた光景だが、この頃は寝ていることは少なく、いつも有栖川に絡んでいるので、佐竹の言う通り、元気がないのかもしれない。
「気になるなら様子見てくれば?」
「なんで? 私は別に田中を心配する理由なんてないし。皆無だし。それに朝から有栖川さんが声をかけても変わらずあのままじゃん」
そんな薄情なことを口にする佐竹を見つめると目の奥が笑っているのがわかった。きっとあたしをけしかけようとしているのだろう。
「その手には乗らない」
「え? なんのこと? ていうか山田は田中のこと嫌いなんだから、気にする必要ないって」
佐竹さぁ。あたしよりも性格悪いよなお前。
「いいから行ってこいって」
「嫌だよ。田中は私の幼馴染を傷つけたんだからいい気味だよ。山田もそう思わない?」
あーもう。こうしてあたしらが言い合ってると周囲の野次馬がひそひそ話を始める。また揉め事の中心になる。佐竹め、覚えてろよ。
「チッ……行ってくる」
「はーい、いってらー」
重い腰を上げて、嫌いな奴の席に向かった。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/12(日) 02:22:50.11 ID:cnVE/bAzO
「田中。おい、田中」
机に突っ伏している田中のつむじを見下ろすとふわふわの髪の毛を鷲掴んでやりたい衝動に駆られたが、ぐっとこらえて肩を揺する。
「ん……なんだ、山田か」
なんだとはなんだ。やっぱこいつは嫌いだ。
「僕、眠いからそっとしといて」
また机に突っ伏す前に手の甲で頬に触れる。
「冷た。やめてよ。山田は手も心も冷たい」
「黙れ。熱があんなら帰りな」
「……熱なんかないよ」
いや絶対あるね。熱いし。机に散乱している勉強道具を横に引っかけてある鞄に詰める。何してるかって? 強制退去に決まっている。
「ほら、さっさと帰れ」
「酷いや……イジメだ」
寝言を抜かしながら席を立った田中に、鞄を手渡す。そこで田中の背中に手を置いて支えてる自分に嫌気が差して、有栖川を睨んだ。
「有栖川、あんたのツレでしょ」
「あ……うん。でも田中は大丈夫って……」
「大丈夫じゃないことくらい見抜け」
「……ごめん」
有栖川が怯んでいた。てか、まさかこいつ。
「はあ? 嫉妬してる場合?」
「っ……嫉妬なんて」
「有栖川って、やっぱり大したことないな」
吐き捨てるも応答がない。佐竹が仲介する。
「はいはい。喧嘩はそこまで。有栖川さん、田中をさっさと保健室まで送っていって」
「ん……わかった……いこ、田中」
有栖川に手を引かれた田中がこちらを睨み。
「……有栖川は悪くない」
いいや悪いね。佐竹と同じくらい悪い奴だ。
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/12(日) 02:28:16.84 ID:cnVE/bAzO
「有栖川さん、もう放課後だよ」
「ほっとけ、そんな意気地なし」
結局田中は早退して、それから今度は有栖川が机に突っ伏していた。その態度にもイライラする。もっと強いやつだと思ってたのに。
「私は田中のことはどうでもいいけど、有栖川さんのことはほっとけないよ。友達だし」
「佐竹……お前って本当に酷いやつだよな」
自分の幼馴染に呆れたら、肩の力が抜けた。
「有栖川。ちょっと話があんだけど」
「……あたしも山田に話がある」
ようやく顔を上げた有栖川だが好戦的な言葉とは裏腹に目を合わせない。そんな態度を見てるとまたムカムカする。すかさず佐竹が。
「じゃあ帰りにどっか寄っていこう! 有栖川さん、パフェ好き? 美味しいお店あるんだ」
「うん……パフェ好き」
「山田もパフェ大好きなんだ。そこで話そ」
「佐竹、余計なこと言うな」
「ほんとのことじゃん。照れてんのー?」
「照れてない!」
お気に入りのパフェなのに絶対不味くなる。
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/11/12(日) 02:30:31.97 ID:cnVE/bAzO
「どう? 美味しい? 有栖川さん」
「うん……美味しい。ありがとう、佐竹」
結論から言って、パフェは変わらず美味かった。これはきっとこの店のパフェの美味さが上限突破してるからに違いない。ていうか。
「有栖川近い。さっきから肘が当たってる」
「あ……ごめん」
テーブルを挟んで対面のソファなのに、何故か佐竹が座ってる向こう側でなくこっちに座り、しかもやたら近い。嫌がらせだろうか。
「向こう行ってよ」
「いや、佐竹はなんか……いまいち」
「がんっ」
ショックを受ける佐竹。いい気味だと思う。
「山田はこう……頼りになるというか」
「頼りにすんな」
と言いつつも満更でもない自分に嫌気が差した。なんなんだこのふわっとした気持ちは。
佐竹への優越感かそれとも田中に対する劣等感が解消されたのか。ろくなもんじゃない。
「まあ、たしかに意思が強くて頑固だけど、山田なんて私がいなきゃとっくに退学だよ」
「佐竹、そういうところだ。お前のそういう腹黒さが、全てを台無しにしてるんだ」
「うるさい山田。私は田中よりはマシだし」
「まあ、たしかにあいつよりはマシか……」
そうやってより酷い例をあげて自分を棚に上げているのも佐竹の腹黒さを証明しているわけだけど、そこで何故か有栖川が挙手して。
「どうしたの、有栖川さん。お手洗い?」
「いや、あたしも今日、結構性格悪くて」
有栖川はずるい。こうやって認めんのかよ。
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/12(日) 02:33:52.06 ID:cnVE/bAzO
「山田と話したかったのもそのことについてで、モヤモヤしたままだと寝れなくなりそうだったからちょっと聞いて欲しいんだけど」
そう前置きしてから、有栖川は吐き出した。
「まずは田中に触るのをやめて欲しい件」
「んなっ」
「あんな風にベタベタ触んないで欲しい」
「おまっ」
「そもそも山田は田中のこと嫌いな癖に不意打ちで優しくするなんて卑怯だ。田中は最後まで恨み節を呟いてたけど普通ならあの瞬間に惚れてる。あたしだって惚れそうだった」
なんの話だ。言いたいことは山ほどあるが。
「そもそもあれはあんたの役目でしょ!? あたしだって佐竹に言われて嫌々やってやっただけだし! それなのに勝手なこと言うな!」
「うん。だから悪かったと思ってる。ごめんなさい。これからは気をつけるから。だからもう田中に馴れ馴れしく触らないで欲しい」
ダメだこいつ。ていうか有栖川わかってる?
「それって結局さ、あんたの嫉妬でしょ?」
「うん。そう。あたしは、山田に嫉妬した」
認められたら何も言えない。あたしもそう。
「山田も嫉妬で田中を嫌ってるからね。有栖川さんの言い分はわかったと思うよ。でも不思議だよね。なんで嫉妬した人の隣に座って寄り添ってるの? 知りたいな、有栖川さん」
佐竹に言われて近さに気づく。何故だろう。
「山田に言われないとあれが嫉妬って気づけなかったから。これからも似たようなことがあったら落ち度を指摘して欲しいから。だからあたしは山田から離れようとは思わない」
たぶんあたしも有栖川とそうありたいんだ。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/11/12(日) 02:36:08.83 ID:cnVE/bAzO
「パフェ美味しかった。今度また、誘ってくれたら嬉しい。それじゃあ、また明日」
言いたい放題言って有栖川は帰っていった。
すっきりした顔だったので今夜は熟睡出来るだろう。あたしはどうだ。寝つけるのかな。
「すごい人だね、有栖川さん」
「別に……大したことないし」
「山田もあんな風に毅然と振る舞える?」
あたしだけじゃない。誰だって無理だろう。
「……あたしにはあたしのやり方があるし」
「うん。そうだね。今日は山田の勝ちだね」
勝ち負けじゃないと言えなかった。だって。
「山田の満足そうな顔、久しぶりに見たよ」
「……ふん」
勝利の充足感。征服感。また、味わいたい。
「有栖川さんに気に入られて良かったね」
「はあ? いいや、違うね。それは逆だし」
「え? 山田のほうが気に入ったってこと?」
ニヤニヤとわかりきった顔の佐竹を睨んで。
「あたしは頭を下げさせるのが好きなだけ」
「あはは。さすが我らがメスガキ大将閣下」
「ちょっと、余計なのが増えてんだけど!」
誰がメスガキだ。おのれ佐竹め。普段からそんな風に見てやがったのか。ていうか仕方なくない? 背が低いなら武器にするだけだし。
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