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花帆「梢ちゃ〜ん!」梢「!?」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:33:09.11 ID:ImkD+W3L0
したらば投下分の修正版です
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11177/1697550489/
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1698751988
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:34:33.23 ID:ImkD+W3L0
梢「か、花帆さん…?その呼び方は…」
花帆「えっ!?どうして私の名前を知って……」
花帆「あ、もしかしてファンレター読んでくれてたんですか?!すごいすごい!梢ちゃんに認知されるなんて夢にも思わなかったよ〜!」
梢「……花帆さん?」
花帆「そうだ!今度のFes×LIVEも絶対観ますね!東京から応援しています!」
梢「???」
梢(わけがわからないのだけれど…)
梢(どういうことなのかしら…これは……)
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:35:22.18 ID:ImkD+W3L0
花帆「まさかまさか!念願の金沢旅行で憧れの梢ちゃんに会えちゃうなんて…!」
梢「旅行…?」
花帆「はい!1泊2日で遊びに来ているところなんです!」
花帆「あ、あの、失礼を承知でお願いがあるんですけど…いっしょに写真いいですか!?」
梢「え、ええ…私はかまわないわ」
花帆「ほんとですか!!やったー!!ありがとうございます!!」パァー
花帆「いきますよー?はいチーズ!」
パシャリ
梢(写真ならいつも二人で撮っている…わよね?)
梢(どうして仰々しくお願いなんてするのかしら)
花帆「あれ?」
花帆「そういえば梢ちゃん…プライベートではポニーテールじゃないんですね」
梢「えっ…?」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:35:53.75 ID:ImkD+W3L0
花帆「サイドに結んだ梢ちゃん…!貴重なレアショット手に入れちゃった〜!妹たちに自慢しよーっと!」
梢「…待って!」
花帆「ひぃ!…やっぱり肖像権的にだめでしたか?」
梢「そ、そうじゃなくて…!私はいつもこの髪型なのだけれど」
花帆「そうなんですか?じゃあ配信のときだけポニーテールなんですね!」
梢「?????」
梢(話がまったく噛み合わないわ…)
梢(また慈が企んでいる…?でも花帆さんからは嘘をついているにおいは感じないし…)
梢(なにかしら…この違和感の正体は……)
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:37:24.38 ID:ImkD+W3L0
梢「……あなた、本当に日野下花帆さん?」
花帆「えっ……ど、どうして私の苗字まで知ってるんですか…?」
花帆「ファンレターには名前しか書いてなかったよね…?ちょっと怖いです…」
梢(この反応…いつもの花帆さんそのもの…)
梢(しかし、この子は…私の知る花帆さんではないような…)
梢(どうなっているの…?もうちんぷんかんぷんだわ!)
梢(…とにかく、もっと詳しく状況を探る必要がありそうね)
梢「ねえ花帆さん?少し話がしたいのだけれど…ついてきてもらえないかしら」
花帆「え、いやです」
梢「!?」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:38:02.37 ID:ImkD+W3L0
花帆「実は私…よくない噂をすこーしばかり耳にしてまして…」
花帆「梢ちゃんは…その…DMでファンの子を誘っては食い漁ってるって…」
梢「でーえむ…?」
花帆「いや、私は信じてなんかいないですよ?ほんとです!」
花帆「梢ちゃんはとても誠実な人だと思っていました!ほんとに!!」
花帆「……ついさっきまでは」
梢「人聞きが悪いわね?!そんなことしないわ!」
花帆「…そうなんですか?」
梢「ほら、あそこのおでん屋さん!いっしょにお食事でもどう?」
花帆「おでんー!金沢に来たら最初に食べたかったんです!行きましょうー!」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:38:38.57 ID:ImkD+W3L0
花帆「えへへ〜♪梢ちゃんとおでん食べられるなんて夢みたいですよ〜」ハイ!ニタマゴデス!
梢「そ、そう…よかったわ」アリガトウ
梢(言動には違和感があるのだけれど…どこからどう見ても花帆さんなのよね)
梢(違いといえばバッグクロージャーの有無と…私との距離感…私への呼称…)
梢(正直、なにが起こったのかさっぱりだわ…)
梢「あなたは日野下花帆さん」
花帆「…はい」モグモグ
梢「私は乙宗梢」
花帆「禅問答…?」
梢(……なのだけれど)
梢(いま目の前にいる花帆さんは…私の知っている花帆さんとは別人だという考えが確信に変わってきたわ)
梢(そして、花帆さんが認識しているポニーテールの梢ちゃん……)
梢(これもまた…私とは別人よね…?)
梢(つまり、花帆さんと私……それぞれに似て非なる者が存在している…?)
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:39:15.72 ID:ImkD+W3L0
花帆「いやー…まさか梢ちゃんに会えるなんてねぇ…奇跡としか思えないですよ…!」
梢「……」
梢(さまざまな推測がよぎる中…ぱっと思い浮かんだのは前に読んだ本のこと……)
梢(金沢を舞台にした小説で…主人公は自分が存在していない世界に迷い込み…そこで生まれてこなかったはずの姉と出会う……というあらすじね)
梢(フィクションにすがるのも我ながら馬鹿らしいと思うのだけれど…いま考えられる可能性はこんなものしか……)
花帆「…あの、梢ちゃん?」
梢「!ご、ごめんなさい…少し考えごとをしていて……なにかしら?」
花帆「あぅ、すみません……私ばっかり喋ってましたよね…迷惑でしたか…?」
梢「そんなことないわ!もっとあなたの話を聞かせて頂戴」
花帆「え、いいんですか…?」
梢「もちろんよ!花帆さん、金沢には旅行に来ていると言っていたけれど…今はどちらの学校に?」
花帆「えっと…東京です……スクールアイドルが有名な学校でして…」
梢「そう…金沢と比較できないほどの大都会ね」
花帆「あ、あはは…」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:39:45.95 ID:ImkD+W3L0
梢「東京の学校にいるのならどうやって私…」
梢「…いえ、乙宗梢のことを知ったのかしら?」
花帆「え?それはファンレターに書きましたよ」
梢「!?…そ、そうだったわね?でも改めてあなたの口から聞いてみたかったのよ!」
花帆「ああ、そういうことですね!」
花帆「私がスクールアイドルの動画にハマってる話をしたら妹たちがスクコネのことを教えてくれたんです」
花帆「いろんなスクールアイドルを観ているうちに蓮ノ空に辿り着き…そこで梢ちゃんに出会えたんです!まさに運命ですよ!」
梢「…ふふっ、私たちは赤い糸で結ばれているのかもしれないわね」
花帆「…?なんの話ですか?」
梢「な、なんでもないわ!」
梢(…間違いなさそうね)
梢(ここは私のいた世界とは別の……裏面世界)
梢(花帆さんが蓮ノ空を選ばなかった世界線なのね…)
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:40:18.04 ID:ImkD+W3L0
梢(思えば…私が今朝"DXシロモ"を買いにお店へ出向いたときのこと…)
梢(ちょうど最後の一点が売り切れたとかで店員さんに平謝りされ…ショックで私は眩暈に襲われて……)
梢(……気づくと、商品棚には売り切れだったシロモがいて…店員さんは何事もなかったかのように営業スマイルでお会計をしてくれたわ)
梢(私がこの世界に迷い込んだのはきっとあのタイミングね…?)
梢(花帆さんが都会の学校に通い…私がポニーテールになり…DXシロモが売り切れなかった世界……)
梢「…ふふっ、あなたとも運命で結ばれているかも」ナデナデ
シロモ『PUIPUI』
花帆「あっ!カバンから顔を覗かせてるそれってまさか…噂の"DXシロモ"ですか?!」
梢「まあ!花帆さんも知っているの?!」
花帆「はい!金沢で売っているという噂を聞きつけたので旅行のついでに買うつもりだったんです!」
梢「あっ…ごめんなさい」
花帆「どうして謝るんですか…?」
梢「実はこの子が最後の一体だったの…それを私が……本当にごめんなさい…」
花帆「いえ、いいんです!梢ちゃんへのプレゼント用だったので無事に買えたならよかったです!」
花帆「それにしても梢ちゃん…モルカー大好きですよねー?普段とのギャップも相まってすっごくかわいいです!」
梢「モルカー…」
梢(こちらの世界の乙宗梢もモルカーに魅了されている…?やはりどの世界でも私は私なのね)
梢(……そういえば)
梢(裏面世界にも梢がいるなら…今どこにいるのかしら…?)
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:40:48.06 ID:ImkD+W3L0
梢(こちら側の梢……花帆さんに合わせて"梢ちゃん"と呼びましょうか)
梢(梢ちゃんは今…この世界にいるのかしら?)
梢(あるいは私と入れ替わって私の世界に……)
花帆「金沢おでん!すっごくおいしかったです!ごちそうさまでしたー!」
梢「喜んでもらえてなによりだわ」
花帆「じゃあお会計を…」
梢「大丈夫よ!私が支払うから」
花帆「で、でも…」
梢「あなたを誘ったのは私よ?だからここは任せて頂戴」
花帆「梢ちゃん…!はいっ!」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:41:17.53 ID:ImkD+W3L0
店員「ありがとうございましたー!お会計は…」
梢「カードで」スッ
花帆「梢ちゃん…!カッコいい〜!」
梢(なぜ裏面世界に迷い込んだのか…どうすれば帰れるのか…そして梢ちゃんの行方は……)
梢(まだまだわからないことばかりね…さて、どうしたものかしら…)
梢(…そうよ!寮の自室に行ってみましょう)
梢(もし梢ちゃんがこの世界にいるのなら…自室で待っていれば必ず会えるはず……)
店員「…あの、お客さま?こちらのカードはご利用いただけないみたいです」
梢「…えっ?」
梢「お、おかしいわね…前に来たときは使えたのだけれど…」
店員「いえ…?以前から変わっておりませんが…」
梢(ここにも世界の変化が…?確かにシロモを購入する際にもなぜかカード払いができなかったのよね…)
梢(仕方ないわ…ここは現金で……)
梢「……」
花帆「…梢ちゃん?」
梢「私のおこづかい全額…シロモにつぎ込んだのを失念していたわ…」
花帆「えっ」
梢「か、花帆さん……断腸の思いなのだけれど…」
梢「……お金…持っていないかしら……?」
花帆「梢ちゃん…」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:41:43.52 ID:ImkD+W3L0
マタノオコシヲー!
梢「本当にごめんなさい……花帆さんに奢ってもらうだなんて…」
花帆「いいんです!あの梢ちゃんとおでん食べられたんですよ?!こんなの何億ptギフト送っても足りないくらい凄いことです!!」
花帆「梢ちゃんにダイレクト貢ぎできて私は幸せでした!だから気にしないでください!」
梢「…それでも先輩としての矜持が許してくれそうにないの」
梢「少し待っててもらえるかしら?ATM…というもので工面してくるわ」
花帆「あ…はい」
「……あれ……んー…どうして…」
「お願い…機械さん……カードを吐き出さないで…!」
「反芻してもあなたが苦しむだけよ…?!大人しく受け入れて頂戴…!!」
梢「……ごめんなさい、機械さんとは絶交したわ」
花帆「なにがあったんですか!?」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:42:17.94 ID:ImkD+W3L0
梢(元の世界のカードはどれも使えないみたいね…)
梢(これじゃあ帰りのバスの運賃すら……でもこれ以上…花帆さんを頼るわけには……)
梢「はあ……」
花帆「……」
花帆「梢ちゃん…このあと予定とかってありますか?」
梢「いえ?特にはないけれど」
花帆「!!だ、だったら…」
花帆「私ときょう一日……デートしてください!」
梢「!?」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:43:01.63 ID:ImkD+W3L0
梢「で、デートぉ…?!」
花帆「はい!」
梢「花帆さんと……私が…!?」
花帆「はいっ!!」
梢「……お誘いはうれしいのだけれど…」
梢(きっと私に引け目を感じさせないため…花帆さんなりの気遣いなのよね…?)
梢(だけど、金銭を払ってのデートというのはちょっと…世間体的にあまりよろしくないような…)
梢(それに私は……花帆さんの慕う梢ちゃんとは別人で……)
花帆「……ダメ…ですよね……あはは、私ったら思い上がっちゃって…恥ずかしいなあ…」
梢「!」
花帆「ちょっと優しくしてもらっただけで…仲良くなれたと勘違いするなんて……ほんと、バカだなあ…」
花帆「こんなだから…私は……」
梢「…待って!」
花帆「……梢…ちゃん…?」
梢「花帆さんは金沢に来るの……初めて…なのよね…?」
花帆「ええ、はい…」
梢「…だったら!私が金沢を案内するわ!」
梢「観光案内ならやましいことはないでしょう?」
花帆「!!……いいんですか…こんな私のために…」
梢「花帆さんだからこそよ!さ、行きましょう!」
花帆「……はいっ!!!」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:43:29.74 ID:ImkD+W3L0
梢(茶屋街で食べ歩き…神社仏閣を巡り…今は無き金沢城跡を望み…そして兼六園でまったりと話に花を咲かせる)
梢(行き当たりばったりな弾丸ツアー…なのに花帆さんは目をキラキラ輝かせて楽しんでくれた)
梢(交際費や交通費を支払ってもらうのは忍びなかったのだけれど……)
花帆「あ、あの……じゃあ…」
花帆「私の頭…なでてもらえませんか…?」
梢「頭…?」
花帆「はいっ!一回なでるたびに10円チャージされます!」
梢「…なるほど、これで支払えばいいのね」ナデナデ
花帆「えへへ〜!最高のご褒美です!」
梢(私のほうがご褒美なのだけれど?????)
梢(別世界とはいえ…こんなにもかわいい花帆さんを目いっぱい愛られるなんて…!)
梢(…僥倖よっ!!!)フラワー!
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:43:55.72 ID:ImkD+W3L0
オマタセシマシター
花帆「わぁぁ…!これがハントンライス…!!配信でいつもおいしそうだなぁ〜って思ってたんです!」
梢「ここのお店のは特に絶品なの」
花帆「へー!よく来るんですか?」
梢「…ええ、まあ」
梢(花帆さんとふたりっきりで…ね)
花帆「はい、取り分けておきました!」ハントン!
梢「!?私も食べるの…?」
花帆「もちろん!私ひとりじゃ食べきれませんよ!」
梢「そうね…じゃあいっしょに食べましょうか」ナデナデ
花帆「はいっ!」
花帆「んんっ〜♪」モシャモシャ
梢「…ふふっ」
花帆「ん?私の顔になにか付いてますか?」
梢「いえ…なんでもないわ」
梢(花帆さんは本の話や地元のこと…家族との思い出を饒舌に語ってくれた)
花帆「で、こんなことがあったんです!私ほんと感動しちゃって…あ、それから〜……」
梢(それと、うっすら勘づいてはいたのだけれど…)
梢(この世界の花帆さんは…スクールアイドルをしていなかったわ)
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:44:22.46 ID:ImkD+W3L0
梢(バスに乗り停留所を6駅…)
花帆「ここが県立図書館…!今日ぜったい来ようと思っていたんです!」
梢「あら、そうだったのね」
花帆「梢ちゃんが案内してくれる場所…ぜーんぶ私の好きなところです!なんでわかるんですか…?もしやエスパー?!」
梢(当然よね…私のよく知る花帆さんが好きな場所を選んでいるんだから)
梢(…ここまで過ごしてよくわかったわ…どちらの世界の花帆さんにも違いはない)
梢(あるのは環境の差だけで花帆さんらしい部分はすべて同じだもの)
花帆「わぁー…!すごい開放的で幻想的…!まるで本の中の世界ですね!」
梢「しーっ…ここは図書館よ?」
花帆「あっ、そうでした…」
梢「ふふ…さあ、本を見つけましょう」
梢(…ここに来た目的は観光案内だけではないわ)
梢(元の世界に帰る方法…)
梢(原因も解決法もなにもわかっていない現状…もしかしたら二度と帰れないかもしれないわ……)
梢(そうならないよう…なんとか手掛かりになりそうなものを探さないと…!)
梢「……うん、これがよさそうね」ペラッ
花帆「リゼロ…?梢ちゃんラノベ読むんだ…意外…」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:44:59.21 ID:ImkD+W3L0
梢「……」ペラペラペラッ
梢(ダメね、どれも参考にならないわ…)
梢(どうして異世界転生した主人公は元の世界へ帰りたいと思わないのかしら…?)
梢(あるいは、この主人公たちの思考回路が一般的で…帰ろうとしている私のほうが異端なの…?)
梢「わからないわ……ん?」
花帆「〜♪」
梢「スクールアイドルの雑誌……花帆さんは本当にスクールアイドルが好きなのね」
花帆「はい!」
花帆「あ、今ちょうど去年のラブライブ決勝グループの特集ページ読んでるんですけど…」
梢「決勝、ねぇ…」
梢「全国各地の錚々たる強豪校が集うスクールアイドル最高峰の舞台……」
梢「今年こそみんなで…そのステージに立ってみせるわ」
花帆「……えっと、梢ちゃん…?」
梢「ん?なにかしら」
花帆「いや…びっくりしました…なんの冗談かと思いましたよ〜」
梢「冗談…?」
花帆「またまた〜!ほら、証拠ならこのページに載ってますからね」
『決勝進出 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』
梢「!!?」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:45:34.76 ID:ImkD+W3L0
梢「……け、…けっっっっっ!?」
花帆「しーっ!ここ、図書館ですよ」
梢(な、なななんなのこれは…?!)
梢(決勝進出……?蓮ノ空が……?)
梢(何度見ても間違いない……私と綴理と慈…そして校名を冠したグループ名……)
梢「……ま、まさか…」
梢「こちらの世界の私たちは…ラブライブ決勝まで登り詰めた…というの…?」
花帆「世界…?」
梢「あ、いえ……その、去年の私たちは…決勝の舞台に立った…のね…?」
花帆「そうですよー!梢ちゃんが他2人を引っ張り…当時1年生だけで躍進を遂げたじゃないですか!」
花帆「私が蓮ノ空を知ったのもちょうどその時で…妹たちといっしょにライブで応援してたんです!」
梢「……」
梢(あまりに衝撃的な事実を知らされ…すべてが吹き飛んだわ…)
梢(あら?ここに来た目的はなんだったかしら…私のこころは上の空……)
梢(…そう…そうなのね)
梢(梢ちゃんは……うまくやれたのね…?)
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:46:29.38 ID:ImkD+W3L0
梢(気づくと私たちはイオンの側にいた…どういった経路を辿ったのか覚えていないけど…)
花帆「ぜえ…ぜえ……遠かった…!」
梢「あそこに公園があるから少し休憩しましょうか」
花帆「……はいっ」
梢(黄昏時ね)
梢(梢ちゃんたちがラブライブ決勝に進めたという事実を知ってから…そわそわして落ち着かないわ……)
梢(月末に迫ったラブライブ地方予選……練習を遅らせるわけにはいかない…早く向こうの世界に戻らなきゃいけないのに……)
梢(ああ、焦燥だけが募る…私はどうすれば……)
ピタッ
梢「ひゃあっ!?」
花帆「えへへっ!梢ちゃんのレアな反応ゲットです!」
梢「か、花帆さん…」
花帆「はい、午後ティー買ってきました!梢ちゃんは紅茶好きですもんね?」
梢「え、ええ…ありがとう花帆さん」ナデナデ
花帆「いえいえ!滅相もないです!」
梢(甘々……まるでスリーズブーケのような飲料ね…)
梢(夕風が体を震わせる……花帆さん…もう少し隣に座ってもかまわないのだけれど…)
花帆「…今日は一日付き合ってくださり…ありがとうございました!」
花帆「私の人生の中で……一番幸せな時間でした!」
梢「……花帆さん」
花帆「はい?」
梢「どうしてそんな顔をしているの…?」
花帆「……えっ」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:47:05.31 ID:ImkD+W3L0
花帆「あ、あれ……おかしいなぁ…」
花帆「うまく笑えていたと思ったのに…」
梢「…」
花帆「あはは…やっぱり梢ちゃんはエスパーですね…?」
花帆「私のこと……なんでもお見通しだ…」
梢「…ねえ、花帆さん?」
梢「花帆さんとは今日が初対面で…まだ深い関係を築けていないのだけれど…」
梢「もし、私でよければ…あなたの悩みを聴かせてほしい」
花帆「……いや、でも……こんな話…」
梢「無理にとは言わないけれど…私は少しでも花帆さんの支えになりたいの」
花帆「あの、どうしてそこまで言ってくれるんですか…?」
梢「…あなたが好きだからよ」
花帆「そっか……って、ええぇっっっ!!?」
梢「!?ち、違うの…!花帆さんの人間性が好きってことよ…!?」
花帆「そ、そうですよね…びっくりしたぁ……」
花帆「……」
花帆「じゃあ……ちょっとだけ甘えさせてください」
梢「…ええ」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:47:37.06 ID:ImkD+W3L0
花帆「……その、今日は本当に楽しかったんです…憧れの梢ちゃんに会えて…いっしょに金沢デートできて…この感情は本物です…」
花帆「ただ……楽しかったあとに…ふと我に返っちゃって……なんで私…笑えてるんだろう…って」
花帆「いつもはこんなに笑ってたかな……こんなに楽しめてたっけ…」
花帆「私はどこで選択肢を間違えたんだろう…って」
梢「選択肢…」
花帆「私…ずっと長野の田舎で暮らしてて…だから都会には強い憧れがあったんです」
花帆「東京に行ったら…こんな私でも花咲けるかもって…そう本気で信じていたんです」
梢「でも…違った?」
花帆「はい…」
花帆「お上りさんな私は…街についていけず…同級生に気後れして……気づいたらひとりぼっちでした」
花帆「都会で花咲くどころか…劣等感ばかり刺激されて……」
花帆「大好きだったスクールアイドルの動画も…いつからか観るのもつらくなって……」
花帆「……学校…やめたいなぁ……って…」
梢「……そうだったのね」
梢(そんな気がしていたわ…花帆さんはそれらの話を意図的に避けていたから)
梢(そうよね…?都会暮らしが充実しているなら自然と話題に挙がるわよね…)
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:48:56.45 ID:ImkD+W3L0
花帆「雑草の私が都会で輝くなんて…どだい無理な話だったんです…」
花帆「この名前も…嫌いです……太陽の下の花だなんて…私は軒下の雑草なのに……だれにも名乗りたくないくらい大嫌い…」
花帆「あぅ、すみません…こんなジメジメした気持ちを大好きな梢ちゃんにぶつけちゃって…」
梢「……」
梢「あなたの名前を初めて聞いたとき…こう思ったわ」
梢「なんて素敵な名前なのかしら…!ってね」
花帆「!」
梢「花帆…日野下花帆……親御さんがあなたを大事に想っているのがよく伝わってくる…かわいくてきれいなお名前」
梢「…この名は、あなたにこそ相応しいわ」
花帆「そんな…私なんか……」
梢「花帆さんが思わなくても私が思い続けるわ」
花帆「っ…」
花帆「……あの、梢ちゃん…ずっと疑問が晴れなかったんですけど……どうして私の苗字を…?」
梢「んー…そうねぇ…」
梢「……実は私、別世界から来たの」
花帆「別世界…?」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:49:29.34 ID:ImkD+W3L0
梢「その世界ではね?花帆さんは蓮ノ空に入学しているの」
花帆「えっ!私が…?」
梢「私のライブを観て感銘を受けた花帆さんは…なんとスクールアイドルになる道を選んだわ」
花帆「ええっ!?」
梢「ユニットはもちろんスリーズブーケ…!私とふたりで練習にライブに大忙しの日々よ!」
花帆「そ、そんな世界が……!」
花帆「……あったらよかったんですけどね…あはは」
花帆「こんな私にスクールアイドルなんて…無理ですから……気を遣わせてしまいすみません…」
花帆「でも、もしそんな夢物語があったら…今みたいにお話できる関係だったらいいなあって…不遜ながら憧れちゃいます…」
花帆「……なんて、絶対あり得ないですけど」
梢「花帆さん…」
梢(例えば、この花帆さんを蓮ノ空に編入させ…スクールアイドルクラブに迎え入れたとしたら…)
梢(さやかさんや瑠璃乃さんともすぐに打ち解け…綴理や慈にかわいがられ……満開の笑顔を取り戻せるかもしれない)
梢(でも、それじゃダメよね…?)
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:49:58.96 ID:ImkD+W3L0
梢(たとえ環境のせいだとしても…それを言い訳にしたら逃げる口実を探すだけの人生になってしまう…)
梢「この世界の花帆さんには…自分の選択を信じてほしい…」ブツブツ
梢「今ある環境で花咲いて…そして、もっと自分の名前に誇りを持ってほしい…!」
花帆「え…?えっと…」
梢「花帆さん!ちょっとだけ待ってて頂戴…!すぐに戻るわ!!」
花帆「うわ、梢ちゃん…!?」
「……はい…ステージの使用許可を…」
「突然のことで申し訳ありません……ですが、なにとぞ…」
「…え、本当ですか!?ありがとうございます…!」
梢「ぜえ…ぜえ……」
花帆「こ、梢ちゃん…?」
梢「花帆さん……明日もまだ…金沢にいるのかしら…」
花帆「は、はい…いますけど…」
梢「そう!よかった…!確認するのを忘れていたから…」
花帆「あの……」
梢「…花帆さん」
梢「明日……イオン前の特設広場でライブを行うことになったわ…!だから…ぜひ観に来て頂戴…!」
花帆「へーそうなんですか……」
花帆「…えっ?ら、ライブぅ!!?」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:50:27.16 ID:ImkD+W3L0
梢「蓮ノ空の6……いや、5人でライブをするわ」
梢「だから…あなたに来てほしいの…!」
花帆「ええ…ちょっと急すぎてびっくりしてます…」
梢「そうそう、予定が変更になる可能性もあるからそのときは連絡するわね」
花帆「…連絡ってどうやって?」
梢「あっ…そうね?お互いの連絡先を交換しておきましょうか」
花帆「っ!?こ、梢ちゃんの連絡先…!」ゴクリ
梢「えーっと、スマホを……ん…んー?」
梢「あれ……おかしいわね…機械さんが動かないわ…」ポチポチ
花帆「バッテリー切れですかね?あ、充電器どうぞ」
梢「ありがとう…!これで機械さんも機嫌を直してくれるはず……」ポチポチ
花帆「……電源つきませんね」
梢(もしかしてカードと同じで…こちらの世界では使えなくなっている…?)
梢「……と、とにかく明日の午後4時…!この場所に来てもらえないかしら…!!」
梢「花帆さんのためだけに…最高のパフォーマンスを披露するわ…!!」
花帆「…はいっ!絶対に観に行きます!」
梢「ふふ、ありがとう」ナデナデ
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:51:47.41 ID:ImkD+W3L0
『蓮ノ空女学院前〜…蓮ノ空女学院前〜……お荷物、お忘れないようお降りください〜…』
梢(結局、元の世界への帰り方はわからずじまいね…)
梢(案外なにもしなくても自然と戻れるものなのかしら…?)
梢(でも、できれば…明日のライブが終わるまでこの世界にいさせて頂戴…)
梢「さて…これからどうしようかしら」
梢「明日のライブ、独断で決めちゃったけれど…クラブのだれにも相談してないのよねぇ…」
梢(…そもそもスマホが使えないから連絡しようにもできなかったのだけれど)
梢「綴理はきっとノリノリで…瑠璃乃さんは驚きつつも食いついてくれそうね」
梢「慈とさやかさんは少し怒るでしょうけど…文句を言いながらも協力してくれるのよね」
梢(急遽決めたライブだもの…時間がないわ…)
梢(ステージの設営…照明に音響の準備…それと曲の振り付けも確認しなくちゃ……大忙しになるわね)
梢(ともあれ、まずはみんなにライブのことを伝えましょう…!話はそこからよ!)
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:52:26.08 ID:ImkD+W3L0
梢(この時間帯ならみんな食堂に集まっているはず…)
梢「……?」キョロキョロ
梢(おかしいわね…?どこにも見当たらないわ…)
梢(もう夕食は食べ終えたのかしら…?だったらお風呂場か…自室を順番に回っていって……)
綴理「ししゃもの名産地〜」フラフラ
梢「!」
梢(綴理…!ナイスタイミングよ!)
梢(そうだわ!綴理からみんなに連絡してもらえば部屋を回る手間を省けるわ!)
梢(明日のライブのことも含め…理解を得られるよう説明しないと……)
梢「ねえ綴理…!あの、実は明日……」
綴理「あ、こずちゃん…髪型かわいいね」
梢「!?」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:52:58.01 ID:ImkD+W3L0
梢「つ、綴理…?なんなの…その呼び方は…」
綴理「んー?ボクはいつも通りに呼んだよ」
梢「いつも…通り…?」
綴理「うん、こずちゃん……あれ?それ以外の呼び方なんてあったっけ?」
綴理「こずきち…こずのすけ…こずがわら……うん、やっぱりこずちゃんがしっくりくる」
梢「そ、そうね…そうだったわ…綴理はいつも私をそう呼んでいたわね…?」
梢(突然のことに面食らってしまったけれど…そこまで驚くことでもなかったわね…ええ、想定内よ)
梢(この世界の梢ちゃんはポニーテールで…蓮ノ空を決勝まで導いたんだもの…周囲との関係性も変わっているはずだわ)
綴理「明日、ライブか……急だね?でもやろっか」
梢「ありがとう…!あ、ついでにライブのことを他のメンバーにも伝えてもらえないかしら…?」
綴理「こずちゃんから言わなくていいの?ボクは鶴じゃないよ」
梢「鶴…?……私のスマホ、訳あって使えない状況なのよ」
綴理「ああ…また壊したんだ……うん、わかった伝えておくよ」ポチポチ
梢「それと、明日は朝6時に部室に集合ね?これも伝えておいて頂戴」
綴理「えっ、無理だ…ボクに早起きを期待しないでくれ」
梢「さやかさんに手伝ってもらってでも起きなさい!…いいわね?」
綴理「なんでさやちゃん…?ああ、うん、わかった……LINE送信!」ポチッ
梢(これでクラブのみんなへの連絡は済んだわね…)
梢(私の恣意によるライブに出演してもらうんだから…みんなには明日ちゃんとお礼を言わないとね)
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:53:40.39 ID:ImkD+W3L0
ガチャ
梢(私の部屋……鍵は元の世界と同じ型みたいで助かったわ)
梢(物の配置やインテリアに差はあれど…この雰囲気は私のものね)
梢(で、梢ちゃん当人は不在……やはり向こうの世界に飛ばされていると考えてよさそうね)
梢(今ごろ、梢ちゃんは私の部屋でくつろいでいるのかしら?…なんだか変な気分ね…お互い様なのだけれど)
梢(教科書…ノート……すごい、私の字とまったく同じ…)
梢(梢ちゃんもここで勉強してたのね…で、少し疲れたらこうやって身体を伸ばして……)ノビー
ガンッ
梢「痛っ…!」
梢(な、なにっ?!机の下に…四角い箱が…)
梢(私の部屋には存在していないものね…)
梢(錠がついている…梢ちゃんの宝物箱なのかしら…?)
梢(鍵さえあれば開けられるけど……他人様のものを物色するのはやめておきましょう…他人といっても同じ梢なのだけれど)
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:54:15.69 ID:ImkD+W3L0
梢「……」
梢(元の世界のみんなは今頃どうしているかしら…)
梢(いなくなった私のことを心配していたり……)
梢(…いえ、私と同じように梢ちゃんが私を演じてくれているはずだわ)
梢(…私の不在を心配されないのも少し寂しいのだけれど……行方不明扱いよりはずっとマシよね)
梢(ライブが終わって花帆さんとお別れしたら…本腰を入れて帰る手立てを探らないとね…!)
梢(さて、明日も早いしそろそろ寝ましょう)
梢「……ん?」
梢(ベッドの真上…天井に貼り紙が……なにかの模様…?)
梢(いや、これは……書き殴られた文字…………)
『優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝努力努力努力努力努力努力努力努力努力優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝優勝』
梢「きゃあああああっっっ!!?!?」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:55:10.79 ID:ImkD+W3L0
梢「なっ…なんなの……これ…!」
梢(朝起きたら…真っ先に目に飛び込んでくる位置に…)
梢(こんな…呪詛みたいな文字の羅列が…!)
梢「だれかの悪戯…ではないわよね」
梢「これは……私の字…」
梢「……」
梢(こちらの世界の花帆さんと過ごしてみて…両世界の人物に本質的差異はないと思っていた…)
梢(私と梢ちゃんは変わらない存在だと…勝手に思い込んでいた…)
梢(でも…)
梢(も、もしかすると…梢ちゃんは……)
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:55:41.60 ID:ImkD+W3L0
梢「…」ウトウト
梢(結局…ほとんど眠れなかったわ…)
梢(だって…あの貼り紙に見下されながら安眠できるわけないじゃない…!)
梢(部室に来たはいいものの…まだ30分あるわね)
梢(少しだけ仮眠を……)
ガチャ
綴理「おお、こずちゃんは今日も早いねぇ」
梢「お、おはよう……綴理ぃ…!?」
綴理「おはよう、鳩が鳩サブレを食べたような顔であいさつされるのは初めてだ」
梢「あ、あなた…よく早起きできたわね…?」
綴理「さやちゃんに起こしてーって頼んだからね…いつもは6時半に起きるから…ちょっと眠い…」フアァー
梢「あの綴理が……普段から早起きを…!?」
梢「天変地異でも起きない限りありえないわ…!そんな、まさか…!?」
綴理「ボクなんなの」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:56:39.08 ID:ImkD+W3L0
梢「…ところで、さやかさんは?」
綴理「お弁当鋭意製作中…楽しみだね」
梢「そ、そう…」
綴理「あ、忘れるところだった…」ゴソゴソ
梢「…?」
綴理「はい、これ」
梢「歌詞ノート…綴理が書いたの?」
綴理「うん、今回もけっこう自信作」
梢「ふーむ……流石のセンスね…」ペラペラッ
梢「……」
梢「え?これってDOLLCHESTRA用の楽曲よね…?」
綴理「そうだよ」
梢「それをなぜ私に見せたのかしら…?」
綴理「なぜになぜ…?キミがなにを言っているのかさっぱり理解できない」
梢「だから……どうして別ユニットの私に歌詞を見せたのか…と訊いているの!」
綴理「……?さっきからこずちゃんはなにを言っているんだ」
綴理「キミとボクで…DOLLCHESTRAじゃないか」
梢「……はい?」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:57:30.63 ID:ImkD+W3L0
梢「……私が?」
綴理「DOLLCHESTRA」
梢「あなたも?」
綴理「DOLLCHESTRA」
梢「ふたりで?」
綴理「DOLLCHESTRA」
梢「どうなっているの…」
梢(花帆さんがいないからユニット構成が変動しているのは当然だけれど…)
梢(私がDOLLCHESTRA…?綴理とユニット…?ミスマッチな気がしてならないわ…)
梢(…いえ、私じゃなく梢ちゃんの話だったわね……彼女は存外クールな女の子なのかもしれないわ)
梢「そ、それじゃあ…さやかさんはどのユニットに?」
綴理「こずちゃん昨日からずっと変…こずちゃんがユニットを決めたのにね」
梢(え…?どうして私がユニット決めに関わっているの…)
綴理「さやちゃんはね…スリーズブーケだよ」
梢「なっ…!?」
梢(さやかさんがあの浮かれポンチな曲を…?まったく想像できないわ…)
綴理「あ、噂をすればおいしそうな香り……さやちゃんだ」
ガチャ
タタタタタッ!!
…ピョン!
さやか「梢さん〜〜〜???」ムギューーー
梢「さ、さやかさん!?」
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:58:16.11 ID:ImkD+W3L0
さやか「髪型変えたんですね?かわいいですぅ〜!筋肉つきました?たくましいですぅ〜!新しい香水ですか?とろけちゃいそうですぅ〜!」スリスリーズ
梢「!!?!?」
さやか「ライブのことは綴理さんから聞きました!同じユニットとしていっしょにがんばりましょうね???」
梢「え、ええ…」
梢(この子……本当にさやかさんなの?!)
梢(ツインテールをかわいらしいリボンで装飾して…犬みたいにじゃれついてくるのだけれど…!!)
梢(裏面世界だと…綴理ではなく梢ちゃんに懐いているのかしら…)
さやか「」パッ
さやか「綴理さん〜〜〜???」ムギューーー
綴理「よしよし、いい子だ」ナデナデ
さやか「くぅ〜ん?」スリスリーズ
梢「あっ……」
梢(だれにでも甘えているのね……いえ、別に寂しくなんてないのだけれど…)
梢「……ん?同じユニット…?」
さやか「えっ!?ひどいですよぉ梢さん〜!わたしとの関係を消さないでくださいよぉ〜〜〜!!!」
さやか「わたしたち…一生スリーズブーケの誓いをした仲じゃないですかぁ???」アンナコトヤ…コンナコトモ…?
梢「なんてこと…」
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 20:59:19.57 ID:ImkD+W3L0
さやか「今日も腕によりをかけてお弁当?いっぱい作っちゃいましたぁ〜!みなさんで食べましょうね???」
綴理「わーい、ありがとうさやちゃん」
さやか「うへへ!先輩方3人の胃袋はしっかり掴んじゃいますよ?」キュルルン?
梢(一挙手一投足すべてが愛くるしいのだけれど…これならスリーズブーケの曲も歌えそうね…?)
梢(いや…問題はそこじゃないのよ……)
梢「どうして私は…2つのユニットを掛け持ちしているの…!?」
綴理「自問自答?」
梢「そもそも!蓮ノ空のユニットは先輩と後輩で組むのが伝統でしょう?!」
梢「どうして私と綴理が……まさかあなた…留年して…」
綴理「2年の夕霧綴理だよー」
梢「そうよね…?綴理は同級生よね…」
綴理「でもボクはこずちゃんの後輩だよー」
梢「はい…?あなた、なにを言って……」
ガチャ
慈「……あ、みんなおはよ〜」
梢「慈…!」
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