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デジタルモンスター研究報告会 season2 後編

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674 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:36:34.47 ID:EBsv9197o
カリアゲが机に突っ伏している。
「…どうすりゃ良かったのかな、俺達…。やることやってたつもりだったのに…」

…精神論、根性論で語っても仕方ないよ、カリアゲ。
方法論で考えよう。

今回は、敵の手口があまりにも巧妙すぎた。
というよりは…コロンブスの卵だね。

粘菌デジモンを餌にして、野生のモリシェルモンを呼び寄せ、デジタルゲートを潜らせてけしかけるという手口自体は至極簡単なものだけど…
その手口をクラッカーより先に閃き、対策することができていなかった。

ワームモンを失った原因があるとするならそれだよ、きっと。

「なんなんだよクラッカーの野郎!!性格が悪すぎるだろうが!!そんなん普通思いつかねえよ!!」

うん…
正直、あまりにも悪どすぎて、まともな人間じゃ思いつかないのは確かだ。

人間が起こすサイバー犯罪なら、犯人にどんな悪意があろうと、手口はだいたい過去のデータから分析されているから、「既に見つかっている手口の延長線上」で考えれば先回りして対処はできる。

だけど…
デジモンを使ったサイバー犯罪は、「過去のデータの積み重ね」がない。

だから「過去の手口の延長線上」を考えようとしても、先回りはできない。

クラッカーより悪どいことを考えられる人間が、セキュリティ側にいないと…
クラッカーにより「新たな手口の発明」には対処しきれないのかも。

「誰ができるんだよそんなこと…」

…無理だよねえ。



「いや、もう一つ…確実な手段がある。後手に回っても対処できる手段がな」

リーダー…?
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 16:37:42.21 ID:twX5uXGGo
一見無理ゲーな戦争だな
676 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:50:00.79 ID:EBsv9197o
「デジモンを使ったサイバー犯罪なら、とりあえずクラッカーのデジモンを戦って倒してしまえば被害は収まるんだ」

まあ…それはそうだけど。
言うほど楽なことじゃ無いと思うよ…。

「そうだ。強いデジモンを育てることや、運用することは難しい。DPが高いデジモンを育てれば、維持コストも跳ね上がる。…だが、ジャスティファイヤはそれを承知であえてシューティングスターモンを育て上げた。いかなるコストを払ってでも、最終的に勝利できるようにするためだ」

…武力というのは、実際に行使するだけじゃなく、チラつかせることに大きな効果があるとはいうね。

「そうだ。シューティングスターモンの存在は、いわばクラッカーへの脅し、抑止力でもある。『政府を攻め落すためにいかに強力なデジモンを育てようとも、最終的に勝つのはこちらだからやめておけ』…とな」

でもシューティングスターモンは極秘の秘密兵器だから、抑止力にはならないと思うけど…。

「シューティングスターモン自体はな。だがジャスティファイヤの戦力はそれだけじゃない。ティンクルスターモンやアグモンなど、DPが高い成長期を育てていた。そっちを成熟期まで育て上げてから、存在を公表し、見かけ上の抑止力として掲げるつもりだろう。秘密兵器シューティングスターモンは、それらの抑止力をより強く見せるための奥の手として運用するつもりだ」

ああ、なるほど…
シューティングスターモンに強い敵を倒させて、その手柄をティンクルスターモンやアグモンの功績として発表することで、表向きの抑止力を実際より強く見せるのか!

…あのパルタスって人、初めて見たときは随分なアンポンタンだなって思ったけど…
案外抜け目無くて有能なのかな?

「オレは最初からそうだと評価しているぞ」

…うーん。
人って第一印象だけだと分からないものなのかもね。
677 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 17:12:54.04 ID:EBsv9197o
「だが、オレ達研究所の戦力も地道にだが着実に育成をしている。キンカクモンの子供であるプニモンは先日トコモンへ進化したし、ケンキモン…の本体もようやく一個デジタマを産んだ」

ケンキモンのデジタマ、産まれたんだ。
良かった。
正直、今回ワームモンを失った件についても、コマンドラモンがいればなんとかなったような気がする。

「それは決して過大評価じゃないぞ、メガ
。実際の戦いで、コマンドラモンはクラッカー相手に自己判断で先手を取って戦ってきた。極めて優秀なセキュリティデジモンだ。それほど頼りになるコマンドラモンを、これからたくさん産めるようになれば、ハッキリ言って暴力しか能のないクラッカーデジモン如きには遅れを取らないだろう」

コマンドラモンは戦闘能力だけじゃなく、透明化によるデジタマ採集の能力も高いからね。
もしもまだコマンドラモンがケンキモンに進化してなかったら、今頃フローティア島でガルルモンやトータモンのデジタマも育てられてたのかな。

「そうだろうな。ケンキモンは透明化能力を失ったことを悔やんでいる。だからこそ、ケンキモンが産むデジタマは、きっと透明化に長けた優秀なデジモンに育つだろう」

桃栗三年柿八年…。
先を見て立ち回らなきゃね。

そうやってリーダーと話していると…
クルエが席から立ち上がって背伸びをした。
「ふぅ〜、疲れた…でも、だんだん分かってきたぞ、あいつのこと」

おや?
そういやクルエって今何してるの?

「…ワームモンのこと、残念だったね…あんなにみんなに懐いてたのに…。カリアゲには特に…」

…うん。
それで、クルエって今何してるんだっけ?
僕がデジタルアソートの方に重きを置くようになる前は、レポートの直しとか、他のチームや外部との調整とか色々やってくれてたよね。

「あれ、メガには言ってなかったっけ?ベーダモンとの対話だよ」

ベーダモン…
あのタコみたいなやつだっけ。
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:13:12.18 ID:32uDre4To
核ミサイルかな?
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:15:29.06 ID:5W/AENyu0
対話!?
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:16:10.10 ID:32uDre4To
クルエの長けてる能力判明か?
681 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 17:20:57.51 ID:EBsv9197o
「リーダーに言われてさ、『クラッカーと手を組まれる前にどうにかして味方につけろ』ってことらしくって。それで仲良くなろうとしてるんだ」


…うまくいってる?

「一緒にゲームで遊んだりはしてるよ」

ゲーム!?
なにやってんの!?

「なんか…気難しいんだよね〜ベーダモン。面白いかどうかで物事を判断してるみたいでさ。私達のことを観察対象として見てるみたい」

気難しいんだ…。

「でさー聞いてよ!ベーダモンにアニメ見せたらさ…」


その時。
デジクオリアの映像を映したパソコンの画面から、大きな音が鳴った。

何かがはげしく削られているような音だ。

な、なんだ?

画面を見てみると…
映っているのは、サーバー内のデジタル空間だった。

なんと、ネット回線を護っているファイヤウォールが可視化された壁が…
ヒビ割れてボロボロになっている!
どうやら音は、ファイヤウォールから鳴っているようだ。

「マシィ!マシシィィーー!」
チビマッシュモン達は、デジタル空間内で何かを追いかけて、捕まえて食べている。

チビマッシュモン達が追いかけているのは…
可視化されたコンピューターウィルスだ!

え…?
何だこれ、どうなってんの!?

コンピューターウィルスが侵入してきて、ファイヤウォールを破壊したのか!?

いや…そんなバカな。
トロイのような潜伏型マルウェアだろうと、チビマッシュモン達は検出できるはず!

ファイヤウォールを破壊する前に、ウィルスを駆除できるはずなのに!

なんでこんなことに…!?
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:27:57.01 ID:5W/AENyu0
気になる所で話が切れてしまったし普通にピンチだ……
683 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 17:31:45.91 ID:EBsv9197o
「なんだ!?サイバー攻撃か!?」

り、リーダー!
新型のコンピューターウィルスがデジタル空間内で増えてるんだ!

「セキュリティソフトだけで駆除できないとは…本当に新型のウィルスらしいな。チビマッシュモン、ウィルスを駆除しろ!メガ、ファイヤウォールを修復できるか!?」

やってみる!
しかしなんなんだ、この大きな掘削音は…!

とりあえず僕は、破損しているファイヤウォールの修復を試みたが…

何かがファイヤウォールを突き破ってきた。

それは…
回転しているドリルだった。

やがて、何かがファイヤウォールを完全に破壊しながら出現した。

「ウゥゥゥーーーー!」
https://i.imgur.com/2l91rsM.jpg

…頭部にドリルがついた、モグラ型デジモンだった。
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:43:10.76 ID:bgHkPkJJ0
お、終わりだ…
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:43:22.06 ID:rOgZXKgy0
モリシェルモンの次は蛮族か
686 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 17:52:21.24 ID:EBsv9197o
こいつは…!
蛮族の集落で見たことがある…!
ドリモゲモンだ!

こいつがここに出現した…ということは…

「ああ。マルウェアによって、デジモン伝送路を繋げられたらしい…!」

まずい!
どうするリーダー!?
ネット回線を物理的に遮断する!?

「それをやると、デジクオリアが機能停止して、デジタル空間内部の状態が分からなくなるな…。だが被害が拡大するよりマシだ!やってくれ!」

…くそ!マルウェアによって、ソフトウェア制御による電子的な回線切断ができなくされている!
これはアナログで対処しなきゃダメだ!

「シン、カリアゲ、クルエ!大至急、外部に繋がっているネットワーク回線を全て物理的に遮断しろ!メガは同時並行で、デジモン伝送路の切断を試してくれ!」

リーダーがそう言うと、シン、カリアゲ、クルエはいくつもある外部との接続を、ひとつひとつ切断しに奔走した。

その間、僕はデジタル空間内の様子を観察しながら、勝手に繋げられたデジモン伝送路の電子的な切断を試みた。
チビマッシュモン達は目についたマルウェアを片っ端から食べようとしてるみたいだけど、どうも揺動用のダミーみたいなのがたくさんあるみたいだ。
伝送路を勝手につなげているマルウェアを特定して、チビマッシュモン達にそれを最優先で駆除してもらおう!

ネット回線のトンネルからは、ドリモゲモン以外にもデジモンが出てきた。

次に出てきたのは…
小鬼型成長期デジモン、シャーマモンが4体。
ロウソク型成長期デジモン、キャンドモンが4体。
類人猿型成長期デジモン、コエモンが2体。

さらに、ジャングルモジャモン1体と、セピックモンが2体。

そして…
フーガモンと、キンカクモンがやってきた。

「ヒヒィイーーーン!!」
フーガモンはシマウマ型デジモン、シマユニモンに乗っている。

成長期が10体。成熟期が6体。
計16体のデジモンが、百鬼夜行のようにぞろぞろとやってきた。

蛮族デジモン…!
ついに戦線投入されたか!くそ…!
一番嫌な手を打ってきた!
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:56:45.18 ID:sMKUvDCgo
タイミング最悪な時に一気に戦力送り込んできた…
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:00:04.54 ID:rOgZXKgy0
分かってる戦力だとシューティングスターモン以外対処不可能だな
689 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 18:15:44.84 ID:EBsv9197o
くそ…
伝送路を維持してるマルウェアはどこだ!

僕とリーダーは、一緒にマルウェアの本体を探しているけど…
デジタル空間内に散らばっているのはどれもダミーばかりだ!

「…ん?チビマッシュモンの中に、様子がおかしい奴がいる。どこか動きが不揃いだ」

…え?

「おい、そこのチビマッシュモン!ちょっと体を調べさせろ!」

リーダーはそう言い、チビマッシュモン達に、怪しいチビマッシュモンを取り押さえさせた。

「マシ!マシ!」

「だが、調べるといっても…オレ達の使っているデジモン分析ソフトでは、スキャンに長い時間がかかる…!そんな時間はないというのに…!」

いや、すぐに済むよリーダー。
僕は、デジタルアソートで育てた平和利用デジモンの試作型、仮称ガンマを連れてきた。

「そいつは…、蟹鍋作りのときに、湿地帯で沼に埋まったシャコモンの貝殻の位置を探し当てたデジモンか!」

そうだよ!
仮称ガンマ!そのチビマッシュモンを調べろ!

『合点承知だぜ 秘技! ディープサーチ!』

検索結果が表示された。
怪しいチビマッシュモンの体内には…
マルウェアが埋まっていた。

「…やはりだ…!伝送路を繋いでいる本物のマルウェアは、このチビマッシュモンの体内に埋まっている!」

ええ!?
どういうこと!?
690 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 18:33:07.14 ID:EBsv9197o
「オタマモン!今すぐその個体を排除しろ!」

リーダーがそう言うと、赤オタマモンが出てきて、怪しいチビマッシュモンを火炎放射で燃やした。

「マシャアアアーーーーー!!!」

リーダー…これは…!?

「…オレは正直、今回の事件…すぐに片付くと思っていた。シャバい詐欺業者をしょっぴいて、それで終わりだと思っていた」

僕もそう思ってたよ。
でも実際は…モリシェルモンという罠が仕掛けられていたんだ。
詐欺と合わせて、二重の罠が待ち受けてた…!

「いいや…違う!罠は三重だったッ!奴の真の狙いは…!コイツを紛れ込ませることだったんだ!オレ達の…チビマッシュモンの中に!」

ど…どういうこと!?
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:33:54.20 ID:sMKUvDCgo
そこまでやってくるか
692 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 18:45:51.16 ID:EBsv9197o
『ご明察。デジモン伝送路を切断したようだな。トロイを破壊したか。だが…気付くのが遅かったなぁ。クックック…』

この声は…!

声がしたほうを見ると、デジタル空間内には、デジドローンが1個浮いていた。

『貴様らの手持ちの戦力でモリシェルモンを排除するためには…チビマッシュモン共を餌にしてモリシェルモンを誘き出すしかないだろう?クックック…うまく知恵を使って対処したつもりだったか?私に踊らされているとも知らずに?』

お前…!

『そうして、あの場にチビマッシュモン共を誘き出して…その中に、私のチビマッシュモンを一体、紛れ込ませたんだ。ファイヤウォールの破壊と、デジモン伝送路の接続…そしてデコイを出す機能を持ったマルウェアを仕込んでね…!』

やることが…汚いぞ…!
AAAェーーーッ!!!

『さて!待たせたな、研究者諸君!今度こそきっちり滅ぼしに来たぞ!クックック!』

この男の悪意…
あまりにも我々の想像を超えすぎている…!
悪意の権化そのものであるかのようだ。

『メガよ、前に私のことを、道具の使い方が下手なヘボエンジニアと呼んでくれたなあ!これでもまだそう言えるか?ンン!?』

うがっ…
コイツ、言われたことを根に持つタイプだ!
悪意の権化がどうとか形容せずとも、シンプルに性格が悪い!!
693 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 18:47:03.56 ID:EBsv9197o
つづく
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:47:43.11 ID:rOgZXKgy0
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:47:46.28 ID:+S8oVpPwo

うーむやられっぱなしだ
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:48:06.87 ID:f1IPluRdo

どうやって立ち向かうのか
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:53:34.29 ID:63A/y7NBo

悔しいが有能だなぁAAAェーーーッ!!!
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 19:05:07.52 ID:5W/AENyu0

陰湿で手段を問わず実力もある、という敵に回したくない要素揃い踏みの相手が最初っから敵であるということよ
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/03(日) 19:40:44.47 ID:rj9S84Cuo
一見詰んでるようにも見えるが果たして
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/12/03(日) 23:42:04.06 ID:FJ50azQs0
主人公補正でも無ければ皆殺しにされる場面だが……
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/04(月) 09:08:30.68 ID:S7eK4zsMo
このssなんで初めは安価ssだったんだろう?
安価に頼る必要全然ないくらい知識も技量も構成力も高いじゃん
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/06(水) 19:34:44.70 ID:tRcqqePD0
敵にまで馴れ馴れしくニックネームで呼ばれるの腹立ちそうだなメガ
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/12/07(木) 05:37:35.99 ID:Yqc+0nEV0
つか、デジタマ盗っちゃってる時点で蛮族には大義名分出来ちゃってるくらな
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/07(木) 08:34:21.57 ID:54aDB5RL0
sageろよ
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/09(土) 16:35:14.04 ID:IXyA1fdfo
成長期成熟期でもひいひい言ってるのに完全体究極体が利用されることなったら人類滅びそう
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/09(土) 22:46:04.32 ID:QDYfCbTgo
土曜だし来ること期待してたがないか
707 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:01:21.28 ID:FW7wa3IfO
クラッカーが不正に繋げてきたデジモン伝送路を遮断することには成功したので、物理的にネット回線を遮断する必要はなくなった。

AAAがデジドローンでデジタル空間内の状況を確認してクラッカーデジモンへ指示を出せるという弊害はあるが…
だからといって回線を切断するとこっちもデジクオリアのオンラインライセンス認証がエラーを吐いてデジドローンが緊急停止してしまい、パートナーデジモン達に指示を出せなくなってしまうので、切断はしない方が良さそうだ。

だが、こうしている今もクラッカーデジモン達は、デジタル空間を破壊しながら、重要な研究データを強奪している。
AAAが蛮族という物資強奪に特化したデジモンを育成して、農耕を教えなかったのは、彼らを強盗として利用するためだったのかもしれない。
このまま放置すればものの10分でシステムが破壊し尽くされてしまう…!

ん…?
よく見ると、僕達がデジモン伝送路を維持しているマルウェアを探している最中に、敵の数がさらに増えたようだ。
具体的に何がどれだけいるか…という差分についてはさすがに分からないけども、明らかにさっきはいなかった種類のデジモンがいる。

蟹型成長期デジモン、ガニモン。
それが3体いるようだ。

そんなばかな…!
ガニモンは人と意思疎通できるようなデジモンじゃなかったはずだ。
どうやって手懐けているんだ…!?

それだけじゃない。
プラチナスカモンもいる。
プラチナスカモンは、ジャングルモジャモンと並んでネット回線トンネルの前に陣取っている。

そしてもう一体。おかしなデジモンがいる。
一頭身体系のハゲオヤジ…とでもいう珍妙な姿のデジモンだ。
https://i.imgur.com/QjzJVxH.jpg
ハゲオヤジデジモンは、破壊活動に加わることなく、高い壁に登ってあぐらをかいて座りながら、ポヨモンの干物をかじっている。
とっくりから何かの液体を小さな器に注いで、気分良さそうに飲んでいる。

色からすると…おそらくアルコール飲料だ…!
ポヨモンの干物をつまみにして、果実酒かなんかを飲んでいる!
ふざけやがって!
708 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:20:06.24 ID:FW7wa3IfO
今、バイオシミュレーション研究所のところにいる戦力は…
重機型成熟期のケンキモン(とその本体)。
植物型成長期のパルモン。
アテになるかならないか分からないファンビーモン。
ファイヤウォール破損中に次々と送り込まれてくるマルウェアの駆除に奔走しているチビマッシュモン軍団。

…フローティア島にいるトコモンと、ケンキモン(の本体)のデジタマ、ププモン達は戦力外だ。

使える武器は…
コマンドラモンの爆弾の予備が30発。
パルモンが貯蔵していた花粉を入れた袋が15袋。

あとは、鉄製の道具…ツルハシが2つ。
ショベルが2本ある。

「ツルハシやショベルって凶器としてもフツーに使えるよな。一応武装すりゃ武器の質ではこっちが上か」

「…カリアゲ、蛮族デジモン達の武器を良く見てみろ。骨棍棒じゃない」

「ん?武器っスかリーダー…。なんか光ってる…金属製かあれ!?」

「青銅の棒だ。銅とスズの合金。鉄には敵わないが、それでも強力な武器だ」

「銅…そーいやあいつら、なんか金属の精錬っぽいことやってたな…!」

…戦力差はあまりに絶望的だ。

「そ、そーだ!リーダー、外に助けを呼ぼうよ!パルタスさんとかスポンサーさんに!」

「そうだなクルエ。ジャスティファイヤとクロッソエレクトロニクスにグループ通話を繋ぐ!」
709 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:30:42.20 ID:FW7wa3IfO
リーダーは、スポンサーさんとパルタス氏の二人に通話をした。
『ケン君が向かったニセ業者事件は罠だった…!?そっちの本丸が攻められているのか!我々が飼育している赤オタマモンを5匹ほど向かわせるかね?』

「それは助かるが…ネット回線トンネルの前に、プラチナスカモンとジャングルモジャモンが陣取って見張っている。外からの増援に対して出待ちをしているんだ。せっかくオタマモンを送り込んできてもらっても、おそらくトンネルを抜けた瞬間に青銅器の棍棒で叩き殺される」

『むぐ…うかつに増援も送れないのか』

「スポンサーさん。ケンキモンを防衛のために出動させたい。まだデジタマを一個しか産んでいないが構わないな?」

『勿論だ!「デジタマを2個産むまで出動禁止」と言ったのは、コマンドラモンを安全に殖やしてサービスの質と量を上げるためだ。その本拠地が攻め落とされたらサービス継続が不可能だ!ケンキモンを出撃させてくれ』

「わかった」

『だが…絶対に敵に鹵獲されてはいけない。理由は分かるね?』

…優秀なセキュリティデジモンは、優秀なクラッカーデジモンにも成り得る。
もしもコマンドラモンがクラッカーのもとで殖やされ、悪用されたらと思うと…気が気じゃない。

「…ああ。分かっている」

デジクオリアの画面から、ケンキモン(の本体)の声がした。

「敵には 決してつかまらない もし捕まったら その場で自爆する」

「気持ちは嬉しいが…自爆に使える火薬があるなら、敵にぶつけてやってくれ」

「わかった リーダー」
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 15:34:32.68 ID:KkPwz/mPo
か、勝てるわけがないぃ
711 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:41:42.63 ID:FW7wa3IfO
続いてパルタス氏から発言があった。
『状況は分かった!我々も至急増援を送ろう!どれだけ送れるかは上の許可次第になるがな!』

あれ。
トンネル前でジャングルモジャモンとプラチナスカモンが出待ちしてるから送れないって言ってなかったっけ。

『くだらん!トンネルから登場次第、その猿と大便どもをブチ殺してしまえばいい話だろう!』

それはそうだけど…
本当にできるなら助かるよ。

クルエがひょこっと顔を出した。
「スポンサーさん、ローグソフトウェア?ってところに救援は要請できないでしょーか?」

『…難しいだろうね。彼らの言うことは予想できる。「そんな契約はしていない」…その一言で終わりだろう』

カリアゲはそれを聞いて頭に血が登ったようだ。
「そりゃねえだろ!俺達が攻め落とされたら国内デジモンセキュリティ事業の一大事だぞ!協力してくれよ!」

『…彼らは今の状況を、「競合他社がひとつ潰れてくれるなら儲け物」と捉えるだろうねぇ』

「ウッソだろ…警察と提携してる会社がそんなんでいいのかよオイ…」

リーダーはため息をついた。
「…今挙げたものが集められる戦力のすべてか。この戦力差を埋めるには程遠そうだ」

いや。
まだ味方がいるよリーダー。

「なに?誰だ?」

僕だ!

「メガ…お前が?デジタルアソートは非戦闘用デジモンしかいないんじゃなかったのか?」
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 15:44:00.83 ID:yMC032GAo
誰だ?
僕だ!ってかっこいいな
713 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:55:07.99 ID:FW7wa3IfO
そうだ。
デジタルアソートの平和利用目的デジモンは、低コスト運用を前提にしているから、パワーもスピードも防御力も低い。

だけど、その力を戦いに活かせないわけじゃない。
さっきだってそうだったでしょ?

「確かに…仮称ガンマの検索能力のおかげで、チビマッシュモンの体内からマルウェアを発見できたな」

…『仮称デルタ』。
今のこの状況の数的不利を、わずかだけど誤魔化せる力を持つデジモンがいるんだ。

「なに!どこにいるんだ?」

今はケンといっしょにいる。
…デジヴァイスの中だよ。

「思い出した…仮称デルタは、デジヴァイスに搭載したデジクオリアシステムを管轄しているデジモンだな!…そいつが役に立つのか?」

確実に心強い味方になるはずだよ。
ただ…
呼べればの話だけど。

「ネット回線トンネルの前では敵が出待ちしているんだったな。すると、ネット回線を通らずに、直接パソコンにUSB接続して送り込む必要があるのか。今すぐにケンにここへ戻ってきてもらう必要があるな」

カリアゲは眉をしかめた。
「そういやケンは今どこにいるんだ?ちょっとケンに通話してみるか」

カリアゲはケンに電話をかけた。
「もしもしケン!こっちの本拠地がクラッカーに攻められてる!すぐに帰ってきてくれ!今どこにいるんだ!?」

早く戻ってきてケン…!

「何だって!?タクシーが渋滞に捕まって抜けれない!?」

えぇ!?
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:03:26.15 ID:h74bn8I70
運にさえ見放された
715 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:12:04.21 ID:FW7wa3IfO
〜ケン視点〜

今私はタクシーに乗り、帰路についているところだが…
長い渋滞に捕まっていて、車が進まない。

そんな状況で、カリアゲから電話が来た。
研究所が攻められているので、今すぐに帰ってきて欲しいとのことだ。

早く帰りたいのはやまやまだ。
タクシーが進まない以上…ここで降りて、徒歩で走って帰るか…!?

『どれくらいかかるんだ!?』

徒歩だったら…、どれだけ全力で走っても1時間はかかる。
途中で渋滞がない道路を見つけて、そこでタクシー呼んでも…10分20分じゃ着かなさそうだ。

『どうして今日に限ってそんな!俺が車で迎えに行ってもムリか!?』

街中の信号機が異常な挙動をしてるらしい。
赤と青が同時に灯ったり、黄色を飛ばして急に赤と青が切り替わったり…無茶苦茶だ。

『なんだよそりゃ…』

カリアゲの落胆した声に続いて、シンの声が聞こえた。

『デジヴァイスってwifi使えるんスよね?ケンさんのスマホのデザリング機能で、仮称デルタを俺のスマホに無線で送ってもらってから、それをUSB接続でパソコンに送り込めばいいんじゃないッスか?』

おお、そっか。
それでいくか!?

『…残念だけど、ケン、シン。今のデジヴァイスは正規品じゃなくて試作品なんだ。システム全体の機能うち、どの領域までを本体のハード・ソフト側に仕込み、どこからを仮称デルタに持たせるかのバランスも調整中なんだ』

そ…それで?今はどうなのメガ。

『wifiの無線機能は、本体側じゃなくて仮称デルタの力で実現しているんだ。だから無線通信でデルタが移動を始めた途端、無線接続が切断されてしまうんだ』

な…なんだって!?
結局無線じゃ送れないのか!
716 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:25:11.27 ID:FW7wa3IfO
シンの声がした。
『USB接続でのデータ通信はできるんスか?そっちもデルタが管轄してたら、デルタはどうやってもデジヴァイスから出られないってことになるッスね』

リーダーの声がした。
『いや、USB接続ならできるはずだ。デジヴァイス本体にその機能がなかったら、そもそもデルタを最初にデジヴァイス内に入れることすらできなかっただろうからな』

『なるほど。じゃあケンさんのスマホにデルタを移動して、そっちから無線通信で送ったらどうッスか?』

『それは別の問題で難しいよ。今デジヴァイス内にモリシェルモンを閉じ込めてる隔離チェンバーと、ブイモン達がいる飼育室の境界を維持する機能は、仮称デルタの力で実現してるんだ。だからデルタが抜けたら、ブイモンとモリシェルモンが同じ部屋で鉢合わせになる』

それは絶対させられない…!
くそ…
クラッカーデジモンが研究所のシステムを破壊し尽くす前に、研究所に仮称デルタを送り込むのはどうやっても無理か…!?

『いや…大丈夫だよケン。タクシーの外を見て』

…?
どういうこと?メガ…

私がきょとんとしていると、デジヴァイスから懐かしい声がした。

『はっはっは むかえに きたでござるよ ケンどの』
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:28:46.19 ID:NmhOv+aA0
おぉ再登場
718 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:30:39.07 ID:FW7wa3IfO
私はタクシーの外を見た。
すると、そこには…

四つの回転翼でホバリングしている、空中バイクがあった。

こ、これは!?

『せっしゃにのって いっしょにとぶで ござる』

前にデジタルアソートのデモンストレーションのときに乗った…
『デジモンの力で自動運転する空中バイク』だ!

『これで ひとっとびで ござるよ』

私はタクシーの運転手に料金を払い、タクシーを降りて、渋滞している道路から離れた。
そして空中バイクに乗り込んだ。

『しっかり つかまるで ござる』

空中バイクは、凄まじいスピードで飛行した!
時速100kmは出ている…!

『けんきゅうじょまで いっちょくせんで ござる はっはっは』

で、でもこれ…大丈夫なの?
道路交通法とか。
警察に捕まったら面倒なことになるんじゃ…

『しんぱい ごむようで ござる』

な、なんで…?
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:32:46.36 ID:h74bn8I7o
渋滞に捕まってる人達ビックリしちゃう…
SNSのトレンド1位になっちゃうよ
720 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:35:49.78 ID:FW7wa3IfO
『なぜなら ガンマどのの けんさくのちからで けいさつのいちをさがし せっしゃの ナビゲートのちからで そこをさけて とんでるからで ござる』


す、すごい…凄すぎる。
デジタルアソートのデジモン達は、そこまで高度な機能を有してるのか。

それにしても…
仮称なんちゃらって呼び方は、流石に覚えづらい。
もう少し覚えやすい名前はないのだろうか?

君の名前なんだっけ?

『せっしゃは 仮称ニューでござるが… ふむ けんきゅうじょが こわれれば せっしゃたちも おしまい ケンどのと われわれは いちれんたくしょうで ござるな』

…そうなるね。

『ならば いずれ せっしゃにあたえられる デジモンとしてのなまえを なのらせてもらうで ござる』

助かるよ。

『せっしゃのなは…』

仮称ニューがそう言うと…
デジヴァイスの画面が起動し、見たことがないデジモンの姿が映し出された。
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:37:33.22 ID:h74bn8I7o
一蓮托生なんて難しい言葉も覚えててえらいね
722 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:40:00.30 ID:FW7wa3IfO
そこに映し出されたデジモンの姿は…
これまでに見たどのデジモンとも似ていなかった。

三頭身くらいの人型ではあるが…
全身が緑色で、薄い黄緑色のラインが入っている。

頭部には矢印のような形状の飾りがついていて…
両腕は、赤いマーカーの形状をしていた。

そう、例えるならば…
地図アプリで目的地を指し示すマーカーのような。

https://i.imgur.com/u8eA1Ba.jpg
『せっしゃの名は… アプリモンスターズ計画 試作ロット第二号 ナビモンでござる』
723 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:40:27.57 ID:FW7wa3IfO
つづく
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:42:42.12 ID:h74bn8I7o

まさかのアプモン
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:43:38.67 ID:NmhOv+aA0

お前だったのか
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 17:45:23.42 ID:/ERb11350
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 18:49:13.88 ID:R5lrPih90

忍者のデジモンなのか……?と思ってたけどなるほど しっくり来るな
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/11(月) 19:12:07.27 ID:lQqz9GYEo
週一更新ペースだとするとAAAとの決戦リアルタイムで長丁場になりそうね
729 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 20:59:12.30 ID:u0sxTrbTo
〜再び、メガ視点〜

ケンのことは仮称ニュー…ナビモンが迎えに行ってくれている。
5分もすればデジヴァイスの中にいる仮称デルタ、ドーガモンを連れてきてくれるはずだ。

だけど、それまでの間何もしなかったら、デジタル空間が破壊し尽くされてしまう!
今できることを、少しでもやろう!

シンがランドンシーフを持ってきた。
「ランドンシーフ起動しました!これでデジタル空間の好きなとこにいつでもデジタルゲート開けるッスよ!」

カリアゲがサムズアップした。
「ナイスだシン!あれ?どこにでも開けるってことはよ…蛮族デジモン達の足元に落とし穴みたいにゲートを開けば、全員デジタルワールドに追放できねえかな?」

残念だけどできないよ。
デジモンがゲートをくぐるかどうかは任意なんだ。
強制的にKICKすることはできない。

「うーんそっか…くっそ…」

リーダーがクルエの方を向いた。
「そうだ、デジタルワールドといえば…ベーダモンはどうだ!?ヤツの協力は得られないか!?」

「えっ…ベーダモンですか。いちおう声かけてみますね」

クルエはうちにある3機のデジドローンのうち2機目を起動し、ベーダモンへコンタクトを図った。

モニターにはベーダモンが寝床にしている樹が映る。

「ベーダモン様!聞こえる!?手を貸してほしいの!ピンチなんだ!」

すると木のうろからニュルニュルとベーダモンが出てきた。
ベーダモンはチャットを送ってきた。
『忙しいな 何事だ 余に何の用だ 研究者よ』

うおお、チャットを使いこなしている!
クルエとカリアゲはベーダモンに言葉を教えられたんだ。すごい。
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:01:52.57 ID:r4FeTMSG0
様って…
様の概念教えれたのね
731 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:05:29.39 ID:u0sxTrbTo
「うちのサーバー内に敵デジモンがたくさん侵入してきたの!このままじゃ私達みんなやられちゃう!お願いします、力を貸してくださいベーダモン様!」

『面白そうなことになっているな 様子を見せろ』

クルエはデジドローンのプロジェクターで、うちのデジタル空間内で暴れている蛮族たちの姿を見せた。

『これはこれは 愉快な祭ではないか』

「愉快じゃないです!このままじゃみんなやられちゃう!どうか、何卒お助けくださいベーダモン様!」

『余に何をしろと?』

「こいつらを洗脳光線で、ベーダモン様の手駒にしてやってください!」

『それで 汝らは 彼奴らとどう交戦したのだ』

「いえ、まだ…」

『つまらん 自ら戦いもせず 最初から余に助けを求めるか 恥を知れ痴れ者が』

痴れ者!?
クルエがデジモンから痴れ者って呼ばれた!
なんてボキャブラリーだ。

『愚図め 思っていた以上につまらんな汝らは そんなことで滅びるのならさっさと滅びてしまえ』

「そ、そこをなんとか…!何でもしますからああぁ!」

クルエは頭をペコペコ下げている。
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:07:18.99 ID:hIEhZy0Zo
ん?今なんでもって
733 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:21:49.03 ID:u0sxTrbTo
『何でもするだと ならば 汝らの滅びの悲鳴でも聞かせるがいい』

「そ、そんなあ!」

ベーダモンは笑っている。
性格悪くないか?こいつ…!?

カリアゲがマイクを握った。
「ベーダモン!敵の数は圧倒的だ。こっちの戦力は向こうよりうんと少ねえ…圧倒的不利だ!」

『そうらしいな カリアゲ』

「だけど!俺達は死にものぐるいで戦う!そして絶対に勝つ!」

『ほう』

「だから見ていてくれ!俺達がAAAをぶっ倒すところを!」

『それは面白い あの調子に乗っている生意気な小僧を 汝らが叩き伏せ 地に顔を擦り付けさせるとでもいうのか』

「おうよ!やったらぁ!」

『それは愉快だ 彼奴の無様な姿を余に曝け出させるというなら それほどおかしなことはない しばらく見物してやる』

「サンキュー!ベーダモン!」

『おや 余の力を借りたいと懇願していたのではないのか クルエはそうだったが』
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:22:40.42 ID:hIEhZy0Zo
主人公みたいなメンタルしてんなカリアゲ
735 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:25:02.48 ID:u0sxTrbTo
「自分達の身を護る戦いだからよ…最初からヨソを当てにするのはお門違いだろうよ」

『貴様はよく身の程をわきまえているな カリアゲ』

ベーダモンは腕を組んでいる。

『余の洗脳光線は 一度に2体も3体も同時に操ることはできぬ この数を相手にしても 余の下僕たちを繰り出せば勝てなくはないが つまらん しばらく戦って数を減らせ』

「ああ!」

『余を愉しませろ できなければ そのまま見殺しにする その方が愉快だ』

「オーケイ!なんとかしてみるさ!」

…いいの?
力を貸してもらえる感じじゃないけど。

リーダーは頷いている。
「これでいい。今大事なのは、ベーダモンをAAAの側につけないことだ。味方じゃなくても、敵でなければ十分だ」

いいんだこれで…
736 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:34:02.94 ID:u0sxTrbTo
他にできることは…

「さて…パルモン。進化だ!」

ええっ!?
どういうことカリアゲ!?

「パルモンは今の俺達の仲間では一番…マッシュモンを除けば一番長い間成長期のままでいる。だけどパルモンは、十分な戦闘経験を積んで、獲物を狩ってきた!今なら進化できるはずだ!」

そんなに狩りしてたっけ?

「釣りだよ!プカモンやスイムモンをたくさん釣ったし、ガニモンも倒した!」

そうだったね。

「パルモン!分かるか?今俺達が大ピンチだってことが!サラがやられて…ワームモンもやられたんだ。俺の大好きなワームモンが…!」

パルモンはしょんぼりしている。
「ワームモン いなくなった かなしい」

「このままじゃみんなもいなくなっちまう…!だから、頼むパルモン!俺達を護ってくれ!一緒に奴らを倒そう!」

「わるもの!たおす!」

「いくぞ!なるんだ…成熟期に!今こそ進化だ!パルモン!」

「しんか…する! みんなを まもる!」

おお!?
いけるのか!?マジで!?

「ぱるもん… しんかぁーー!」

パルモンは全身に力を入れて踏ん張った。
いいぞ、いけ!パルモン!
737 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:38:33.59 ID:u0sxTrbTo
「…かわんない」

…進化は起きなかった。
あれ。
なんかできそうなノリだったのに。

「なっ…!?くそ、行けると思ったのになー!何が足りないんだ!?」

「カリアゲパイセン…」

「シン!そんな目で俺を見るな!」

いや。
やれることは何でもやるべき状況だからいいと思うよ。
ナイストライ。

『プーックックックック…!フーッフフフフ…!』
ああっ!
ベーダモンが笑ってる!
ちくしょう…ウケを狙ってるわけじゃないのに。
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:42:16.56 ID:cWTD845T0
カリアゲほど研究者みたいなインテリ職が似合わない人材は中々いまい
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:44:54.17 ID:eiGfcAUe0
Brave Heartのイントロ掛かってる雰囲気だったのにな
740 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:49:23.77 ID:u0sxTrbTo
「とはいえ…やれることはある。奴らの破壊を食い止めるために、今できることが!やるぞ、パルモン!」

「しんかを!?」

「そっちはいい!ゴニョゴニョ…」

「なるほど、わかった!じゅんびする!」

パルモンは何かの支度をし始めた。



デジタルゲートの中では、蛮族デジモン達がデジタル空間を破壊し、研究データを奪っている。

『くっくっく…どうした研究者ども!パルモンは?コマンドラモンは?ズバモンとルドモンはどうした?怖がって出てこれないか!くっくっく!臆病なセキュリティ共だ!とんだ看板倒れだなぁ?』

ね、ねえリーダー。
最悪の事態に備えて、研究データを予備の記憶装置にバックアップすべきじゃないかな?

「そうだな。できる限りリスクに備えよう。クラウドストレージへのデータ移送も始める!」

僕は最悪の事態に備えて、大事なデータのバックアップを始めた。
研究データで特に大事なものは、ネットワーク外部のクラウドストレージへ送ろう!

そして大容量データを転送すると…

デジクオリアの画面では、大容量データが光の塊として可視化され、ネット回線トンネルの方に向かって飛んでいくのが見えた。
741 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:53:49.83 ID:u0sxTrbTo
だが…
ネット回線トンネルの前で陣取っているプラチナスカモンが立ちふさがった。

プラチナスカモンは大口を開けて、転送中のバックアップデータを食べた!

「うんみゃああァ〜〜〜い!もっと!美味いデータを食わせてくれよォ!ギャーッハッハッハ!」

だめだ…
外部ストレージへの大容量データ転送は妨害されてしまう!

バックアップは内部だけでやるしかない…!

「じゅんび!できた!」

おおっ、準備いいかパルモン!
それじゃあ…やるぞ!
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:55:49.46 ID:xgDrKbLso
ケンー!!!!はやくきてくれーっ!!!!
743 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:59:52.18 ID:u0sxTrbTo
デジタル空間の天井から穴が空いた。

そこから、右手から蔓を伸ばしてロープ代わりにしたパルモンが降りてきて…

花粉の入った粉を、蛮族達の頭の上にぶちまけた!

そして、左手の蔓を大きく振り回して気流を作り、花粉を散布した!

蛮族デジモン達は、涙を流してくしゃみを始めた。
「ゲッホゲホ!オヴェ!オゲーッホゲホ!!」
「カユイイイイ!メガアアア!ハナガアアアア!」

シャーマモンやコエモン達は目を開けていられないようだ。
「ウホオォォオオオ!ゴッホゴッホ!」
ジャングルモジャモンも目を擦っている。
パルモンの花粉アレルギーは…成熟期にも通用する!

「キィイィイイ!」
怒ったセピックモンが、ブーメランを投げようとしてくるが…
パルモンはすぐにゲートへ引っ込み、ブーメランを回避した。

時間稼ぎにはなるはずだ!
頑張れパルモン!
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:03:44.76 ID:IIX9hqIC0
この花粉と蔓が進化したら失くなるかもしれないと思うと
745 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 22:04:49.83 ID:u0sxTrbTo
パルモンはあっちこっちから出ては逃げを繰り返し、ストックしていた花粉をあちこちの蛮族デジモン達へ浴びせて回った。

花粉が効かないプラチナスカモンや、必死に我慢して反撃しようとしているセピックモンは、飛び道具を投擲してパルモンを仕留めようとしている。

うお、危ない!
ブーメランが当たりそうになった。
大丈夫かいパルモン!

「へーき!」

その時。
「私が 出る!」

そう声がした。

次の瞬間。
大きなデジタルゲートが開き…

中から巨大なデジモンが出現した。
ケンキモンだ!

全高6mの巨大なマシーンの図体はやはりでかい!
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:07:23.48 ID:PymN3XFjo
もはやロボットである
747 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 22:16:46.24 ID:u0sxTrbTo
普段のケンキモンは、右手がフォークリフト、左手がパワーショベル、肩にクレーンがついており、とても戦闘向きには見えない。

しかし今出撃したケンキモンは、どうやら装備を換装しているらしい。

普段パワーショベルだった左手には、油圧鉄骨カッターがついている。
https://i.imgur.com/0tP5BBN.jpg

フォークリフトだった右手には、穴掘建柱車のドリルがついている。
https://i.imgur.com/megZv8u.jpg

クレーンには解体工事用の鉄球がついている。

おお…!?
解体工事仕様の装備だ!?

ケンキモンは、キャタピラー(クローラー)を唸らせて走行し…

一体のセピックモンの胴体を、鉄骨カッターのハサミで挟んだ!

「ウギ!?」
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:18:20.84 ID:r4FeTMSG0
特撮のロボットみたい
○○武装!とか出来るタイプの
749 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 22:20:33.44 ID:u0sxTrbTo
「むぅん!」

そして、鉄骨カッターで…
バチンとセピックモンの胴体を両断した!

「グッギャアアアアアアア!!」

蛮族達は、突如響いた悲鳴に、目を擦りながら驚いた。

「花粉が 効いているうちに 強い敵から 倒す!」

ケンキモンは、ユニモンに乗ったフーガモンに突撃しながら、進路にいるシャーマモンやキャンドモンをクレーン鉄球でぶっ飛ばした!

「ギャアアオオオ!」

成長期程度は相手にならない!

「ゲッホ!ゴホ!」

フーガモンもユニモンも、まともに前が見えないようだ!
そのまま王手を取れ、ケンキモン!
750 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 22:26:14.57 ID:u0sxTrbTo
『なんだ貴様ら、いつの間にそんな大型デジモンを!?面白い!迎え撃て、プラチナスカモン!』

AAAのデジドローンから指示が出た。

「ギャハーッハハッハ!俺様の出番だナ!?ギャハーッ!」

プラチナスカモンは、ケンキモンの顔面に目掛けて飛んできた。

ケンキモンは、それを鉄球で迎撃しようと試みた。

鉄球は空中でプラチナスカモンにヒットした!
プラチナスカモンはべちょっと潰れ、鉄球に張り付いた。

おお、やった!
そのままフーガモンにトドメをさせケンキモン!

ケンキモンは、フーガモンの首にめがけて鉄骨カッターを繰り出す!
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:27:49.66 ID:XuFWBPtJo
ケンキモンのことやズバモンルドモンとっくに移籍したことはまだ知られてないのね
752 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 22:33:55.99 ID:u0sxTrbTo
その時…
ケンキモンのクレーンから鉄球がぼろりと外れ、ケンキモンの足元にずんと落ちた。

自身の鉄球に足をとられ、つまづきそうになるケンキモン。

必死にバランスを取って、なんとか転倒を回避した。

な…なんだ!?
なんで急に鉄球が外れた!?

鉄球の方を見ると…
なんと潰れて張り付いているプラチナスカモンが、ずるずると蠢き、ケンキモンの脚部にひっついた。

ケンキモンのクローラーは、次第に溶けていく!
な、なんだ!?どうなってるんだ!?

「スカーーッカッカッッカッカ!俺様を倒したと思ったか!?その慌てよう、スカっとするゾ!」

それを見たリーダーは、はっとした顔を見せた。
「AAA…これは…!火山地帯のズルモンの性質だな!」

『ほう?気づいたか!そうだ、火山地帯のズルモンがもつ、岩石や鉱石を溶かす性質だ!貴様らがプラチナスカモンと名付けたその個体には、その性質を与えた!』

「なん…だと…!だが、酸の反応にしては早すぎる…それだけじゃないな!」

『くっくっく…貴様らが名付ける前に、私がプラチナスカモンにつけていた名を教えてやろう。そいつの名は…「アマルガモン」』

アマルガモン…?

「アマルガム…。まさか…プラチナスカモンの正体は…!『水銀』か!」

「スカーーッカッカッッカッカ!その通り!俺様のボディは!金属を溶かして吸い取るキラッキラの水銀だァーー!スカーーッカッカッッカッカ!!」

や、やばい…!
そんなのに引っ付かれたら、ケンキモンは…!
753 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 22:39:59.55 ID:u0sxTrbTo
その時。

デジタル空間に、大きなゲートが開いた。

そして、その中から大きなデジモンがのっしのっしと這い出てきた。

『ウバシャアアアアアアアア!!!』

そのデジモンは、超高圧の水流を噴射し、ケンキモンからプラチナスカモンを洗い流した。

「グヒャーーー!?」

水流で剥がれたプラチナスカモン。

「な、なんだ!?俺様の見せ場をよくも…!」

そのデジモンは…

「ンバアアァ」

大きな口で、プラチナスカモンをばくんと丸呑みにした。

『む…!?』

「水銀になろうと…粘菌デジモンは、こいつの大好物だ。指示がなくとも…最優先で狙う!」

そ…
その声は!
754 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 22:42:04.63 ID:u0sxTrbTo
「お前が使った手に…今度はお前自身が苦しめられろ!AAA!」

け…ケン!
来てくれたんだな!

「お待たせメガ。連れてきたよ。ドーガモンを…そして、こいつを!」

『ウバシャアアアアアアアア!ゴアアアア!』

デジタル空間内に解き放たれたモリシェルモンは、周囲に蠢いている二足歩行の餌達を見て大喜びし、咆哮を上げた。
755 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 22:42:32.80 ID:u0sxTrbTo
続く
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:44:48.18 ID:wW2J4j/Bo

なるほどモリシェルモン問題をここで解決したか
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:47:18.69 ID:r4FeTMSG0

前回のピンチを逆に利用したか
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 22:47:59.91 ID:eiGfcAUe0

熾烈なMPK合戦だ
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/13(水) 00:03:27.66 ID:XAihZnZI0
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/16(土) 16:52:13.14 ID:gdqdyO2Jo
もうそろそろAAAにちゃんと勝てれば良いな
761 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/17(日) 20:01:23.70 ID:QUG87C/oO
〜ケン視点〜

「ウシャバァアアア!!」
モリシェルモンは、貝殻に籠もると、回転して浮きながら、周囲の蛮族デジモン達へ突撃した。

シャーマモンやコエモン達が撥ね飛ばされている。
「ウギャァーーー!」

柔らかいワームモンへ一撃で致命傷を与えたモリシェルモンの回転タックル。
成長期の蛮族デジモン達は、その威力を一撃食らっただけで再起不能になっていた。

パルモンの花粉を、涙や鼻水で少しずつ洗い流している蛮族デジモン達は、視界がきくようになってきたのか、回避行動を取り始めた。

ドリモゲモンは、頭部のドリルでデジタル空間の地面に穴を掘って潜った。

目を擦りながら薄目を開けているフーガモンは、シマユニモンの手綱を引き、「とにかく離れろ」と言わんばかりに方向を指示をしたようだ。

フーガモンを乗せたシマユニモンは、その方向へ猛スピードで駆け出した。
どうやらシマユニモンには花粉があまり効いていないらしい。
https://i.imgur.com/9ZFlmF4.jpg
目がバイザーで覆われているため、鼻水は出るが涙で目が見えなくなることはないらしい。

モリシェルモンは、ケンキモンには攻撃してこない。
見るからに鉄の塊であり、食えそうにないからだろう。

…さて。
モリシェルモンは本命じゃない。
本当に連れてきたかったのは、デジヴァイスの制御システムを管轄してるドーガモンだったね、確か。

https://i.imgur.com/vtbqrA3.png
『お オレサマか』

ドーガモンがきょろきょろしているが、メガが答えた。
「そう。いずれパルモンの目潰しは効力を失う。そうしたら、このドーガモンが数の不利を補ってくれる。決定力はないけど、いるといないとでは絶対違うはずだよ、ケン」

分かった。
それで、そのドーガモン戦法はすぐにできるのか?

「いいや、デジモンの映像をドーガモンに視聴させて、それを教師データにして3分ほど深層学習させる必要がある。それまでは…モリシェルモンとケンキモンに時間を稼いでもらおう」

なるほど…!
ケンキモン、モリシェルモンと一緒にできるだけ蛮族デジモンを減らしてくれ!

すると、デジヴァイスからブイモンの声がした。
「お、おれも…いくよ! ワームモンの…か、かたきだ…!」

…無茶するなブイモン。
膝が震えてるよ。

それに今は、モリシェルモンが敵味方の区別なく暴れている。
ケンキモンみたいな明らかな無生物型デジモン以外は巻き添えを食らうよ。

「…そうかよ…」

君にはきっと然るべき出番で役割があるはずだ。

「…ねえんだろ、どうせ…オイラみたいに、バカであしひっぱってばかりのザコには…」

そ、そんなことないって…!
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 20:02:49.96 ID:W6ECuDjro
ブイモン…
763 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/17(日) 20:13:10.19 ID:QUG87C/oO
「シャオオオォ!」
モリシェルモンは、キンカクモンに向かって水流とともに小さな貝殻の弾丸を発射した。

「チクショウガァ!」

仮面で素顔を覆い隠しているキンカクモンにも、花粉は効いているようだ。
だが、どうにかして金棒を振り、貝殻を打ち返そうとする。

貝殻に金棒がかすったようだ。
軌道を反らしはしたが、打ち返せてはいない。
貝殻の弾丸は、隣りにいたセピックモンの大きな仮面に当たった。

「ウキイィ!?」

貝殻はセピックモンの仮面に突き刺さり、びしびしとヒビを入れた。

凄まじい威力だ…!
キンカクモンとて、まともに食らったらただでは済まないだろう。


そこへ…
ケンキモンが突っ込んできた。
片方のキャタピラーがガタガタと不安定に揺れている。
プラチナスカモンの水銀ボディで若干溶かされたせいで、走行しづらくなっているらしい。

ケンキモンは、まだ花粉が効いているうちにキンカクモンを仕留める気だ!

右手の穴掘建柱ドリルを、キンカクモンに向かって突き出した!

キンカクモンはドリルを金棒でガードした。
「ヌウゥゥゥ!」

キンカクモンはケンキモンから距離を取る。
まだぶつかり合うのは不利だと悟ったようだ。
キンカクモンは仮面を外し、手で目を擦っている。

カリアゲがガタッと身を乗り出した。
「うおっ…美人さんだ…!敵じゃなけりゃあなぁ…!」

いや、おそらく蛮族デジモン達は、猿型デジモンがAAAからの影響を受けて人に似た姿に収斂進化したデジモンだ。
敵じゃなかったら人の姿に近付く機会すらなかったはずだ。

「おお、そっか…今はそんな解説してる場合じゃないと思うけどな!」

それはそう。
私の悪い癖だなぁ…
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 20:14:57.10 ID:W6ECuDjro
やはりある程度の言葉を覚えているか
765 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/17(日) 20:25:36.91 ID:QUG87C/oO
ケンキモンは、巨大なボディで強力なパワーを発揮して戦っている。 

その動力源は、ケンキモンのコクピットに搭乗している「本体」が体内で発電した電気と、ケンキモンの予備バッテリーに充電していた電気の二つだ。
現在のケンキモンは、それら二系統の電力を同時に使ってオーバーロードしているから、本来のDPを超えたパワーを出せる。

だけど、いずれ予備バッテリーの電力は尽き、パワーが半減してしまうだろう。
そうなる前に、ケンキモンは短期決戦で強力な敵を仕留めようとしている。

距離を取ったキンカクモンに詰め寄ろうとして、脚部のキャタピラー(無限軌道)をぶん回そうとするケンキモン。
その時。

『今だ…やれ!』

突如、ケンキモンの脚部のキャタピラーの履帯がバチンと切れた。

な…なんだと!?
プラチナスカモンに溶かされたとはいえ、破断するほどのダメージは負っていなかったはずだ!
どうして!

ケンキモンの足元には何かがいた。
それは…

3体の、蟹型デジモン…ガニモンだった。
くそっ、こいつらがハサミで履帯を切断したのか…!

だけど、ガニモンはこんなに細かい命令を聞いて実行できるデジモンじゃないはずだ…!
なぜこんなに命令に従うんだ。

それに、花粉は効いていないのか…!?

…いや、効いてる!
目からドバドバ涙を流していて、目が真っ赤に痛々しく充血している!
物凄く辛そうだ!

フローティア島では、ガニモンは花粉をくらったら視界が効かなくなって海へ逃げていったはずだ。

このガニモン達、おかしいぞ…
蛮族デジモン達ですら耐え難い目の激痛と痒さに襲われているのに、なぜこんなロボットのように忠実に命令をこなせるんだ!?
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 20:26:29.03 ID:n0ifzAFQ0
かわいそ…
767 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/17(日) 20:37:35.68 ID:QUG87C/oO
「どけ!」

ケンキモンは、鉄骨カッターを振ってガニモンを打ち払った。

ぶっ飛ばされたガニモンは仰向けにひっくり返る。

ん…?
ガニモンの腹部になにかついている…!

こ、これは…
ズルモン!

粘菌デジモンのズルモンが、ガニモンの腹部に潜り込んでいる…!
寄生してるのか!?

ガニモンは、あの寄生ズルモンに操られていた…!?

リーダーは驚いた。
「なんだと…!?今まで見てきた粘菌デジモンに、寄生する性質は無かったはずだ!どうやってあんなデジモンを作り出した!?」

クルエは寄生ズルモンにドン引きしながら答えた。
「どうって…どうにかしたんじゃないですか…?亀のデジモンを剣や盾への変形デジモンにできる奴らですよ、これくらいやってきそうですが…」

「だが…自然界にいるデジモンの中には、寄生性のデジモンは居ない。パッチ進化やジョグレス進化をしたとしても…、寄生して栄養を吸うだけならともかく、宿主を操る能力を獲得するように人工進化させるなど容易いことではないぞ…!」
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 20:40:13.56 ID:W6ECuDjro
数も多い上に何でもありかクラッカー側
769 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/17(日) 20:51:28.87 ID:QUG87C/oO
リーダー。
心当たりがあります。

「フクロムシ」…という寄生虫を知っていますか?

「…ああ。知っている。カニに寄生して、体を乗っ取って操ってしまう生物だな。デジタルワールドでは、そのニッチに該当するデジモンは見つかっていなかったはずだが…」

そのフクロムシは…
フジツボの近縁種なんです。

「フジツボ…海岸の岩にくっついてるヤツらか」

はい。
フクロムシはフジツボと同系統の、蔓脚類という甲殻類です。

フジツボがカニの腹部にくっつくようになったものが、寄生能力を得るように進化した生物。それがフクロムシです。

そして、デジタルワールドにはフジツボによく似たデジモンがいます。

『フジツモン』…。
ピチモンから進化して、ガニモンへ進化する幼年期レベル2デジモンです。

「フジツモン…たしかタコ型デジモンのオクタモンの頭部にくっついてたり、岩にくっついたりして水中を漂う生ゴミの粒を食っている幼年期デジモンだな」

はい。
クラッカーはおそらく、粘菌デジモンのズルモンを、こともあろうにガニモンの進化前の姿であるフジツモンとジョグレス進化させたんです。

そうして、現実のフクロムシの進化を辿らせて、それに酷似した性質を持った寄生性ズルモンを作り上げたんです!

「…そうか…!『どんなデジモンにも寄生して操れるズルモン』を作ろうとした場合、寄生対象となる宿主デジモンの神経系統を乗っ取れるような遺伝子を作り上げなくてはならない…そんなことはとうてい不可能だ。だがいずれガニモンへ進化する遺伝子を持った幼年期のフジツモンをベースにして寄生デジモンを作ることで、ガニモンの神経系統を乗っ取れる遺伝子を獲得したということか!」

きっとそうです。
ガニモンの神経系統を乗っ取れるようにしたいなら、ガニモンの遺伝子を持った寄生デジモンを作ればいい…ということです。

「理屈は分かるけどよぉ…そんなことやるかフツー!?どんだけ性格悪いんだよAAAのヤツ!」
カリアゲは悪態を付いている。
気持ちは分かる。

…AAAのデジドローンから声がした。
『…何だ?今のお前…ガニモンの腹部を一目見ただけで、私が寄生ズルモンを作り上げた手段を一瞬で言い当てたのか?』

だったら何だ!

『…お前、私と手を組まないか?クラッカー側に来いよ』

行くわけ無いだろ!
770 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/17(日) 21:03:12.92 ID:QUG87C/oO
『そうか…仕方ない。おい、もうそのデカブツは用済みだ。片付けろ』

ん…?
AAAのデジドローンが、なにかへ指示をした。

「ウシャアアアア!」
モリシェルモンは、多数の蛮族デジモンに対して数の不利など知ったことかと言わんばかりに圧倒している。

シャーマモンを叩き潰して殺し、食わずに捨てて、新たな獲物を仕留めにかかっている。

モリシェルモンはヌメモン系統なので、腐敗した死骸でも平然と食う。
そのため獲物を仕留め次第逐次食うのではなく、とにかく殺せるだけ殺してから、それを巣に持ち帰ってじっくり食べる習性がある。腐り始めたものから…。

そうだ…
ズルモンは粘菌デジモンだ!
モリシェルモンの大好物!

ケンキモンは、足下の小さなガニモン達を相手にするのを手こずっているが…
モリシェルモンの興味を引ければ、腹部のズルモンごとガニモンを優先的に食ってくれるかもしれない!

ケンキモン、モリシェルモンの意識を引け!

ケンキモンは私の指示を聞き、ガニモンを一体モリシェルモンの方へ弾き飛ばした。

モリシェルモンをおびき寄せる気だ!

その時…
「ガアアアアアァァァ!?」
突如、モリシェルモンが悲鳴を上げた。
771 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/17(日) 21:09:52.90 ID:QUG87C/oO
どうしたんだ、モリシェルモン!?

「ガアアアアアァァァ!ァガアアアァァァ!ゴバアアア!」

モリシェルモンは吐血した。
物凄く痛がっているようだ。
な、なんだ!?

『くっくっく…このデカブツを繰り出して、一杯食わせたつもりか?だとしたら興醒めするほどつまらんな。この私が…自分が使う手への対抗策を何も用意していないと思ったか!』

モリシェルモンはグルンと白目を向いた。
するとモリシェルモンの頭部が、メキメキと裂けて…
血飛沫をあげ、頭の中から何かが突き出した。

それは…
回転するドリルだ。

「ウウゥゥゥウ〜〜!!」

モグラ型成熟期デジモンのドリモゲモンが、モリシェルモンの頭部を突き破り、引き裂いてモリシェルモンの体内から出てきた。

モリシェルモンは、力なくうつ伏せに倒れた。

「ウゥーーーーー!!」
ドリモゲモンは雄叫びをあげている。


…そんな…。
あんなに強いモリシェルモンが、こんなに一瞬であっさりと仕留められた!
772 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/17(日) 21:14:38.12 ID:QUG87C/oO
ドリモゲモンのDPは、モリシェルモンに比べれば遥かに低い。
だが、ドリルで地中にトンネルを作って掘り進む力を持つドリモゲモンは、ある意味モリシェルモンにとって天敵なんだ…!

途中からモリシェルモンの腹部の下へ、そのまま『掘り進んで』しまえば、モリシェルモンの体内へそのまま『トンネル』を掘り、内部から破壊してしまうことができる。

くそ…!
そんな手があったなんて!

『ついでだドリモゲモン!そこのガラクタを解体してやれ!』

「ウゥゥ〜〜!」
モリシェルモンを仕留めたドリモゲモンは地中に潜った。

ま、まずい…!
ケンキモンは今、キャタピラーは破損していて移動できない!

血中からドリモゲモンに攻撃されたら、回避できない…!
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/17(日) 21:17:13.06 ID:qrMvnQFJo
命運もここまでか!?
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