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デジタルモンスター研究報告会 season2 後編
- 642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 16:31:37.80 ID:Akfy2wM5o
- モリシェルモンがこんな絶対勝てなさそうな驚異として描かれるの初めて見た
- 643 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/26(日) 20:31:24.48 ID:EHFw9EIrO
- まず、モリシェルモンがここにいる理由だが…
大きく分けて『偶然』か『作為的』かの2通りが考えられる。
偶然というと…
たとえば、デジタルワールドとの間に偶然デジタルゲートがつながり、野生デジモンが入ってくるケースだ。
実際、デジタルワールドとどこかのサーバーの間に偶然デジタルゲートが開き、デジモンが侵入してくることはたまにある。
カンナギエンタープライズが開発した、デジタルワールドへのゲートを開く技術は、その現象を模倣したものだ。
しかし、自然現象で開くデジタルゲートは極めて小さなものだ。
幼年期デジモンが一匹通れるかどうかってサイズしかない。
では、野生の幼年期デジモンが偶然このパソコン内へ住み着き、ちょうど今モリシェルモンへ進化したのだろうか?
それは有り得ないとは言い切れないが…考えにくい。
デジタル空間に住み着いたデジモンは、環境負荷が加わったり頻繁に戦闘する機会がない限り、DPの高い成熟期デジモンへ進化することはないと考えられている。
となれば、偶然ではなく作為的なものである可能性が高いのだが…
もしもクラッカーが育成して差し向けた刺客だとしたら、「なぜモリシェルモンなのか?」という点が疑問だ。
モリシェルモンはDPが高くて大量の餌を食べるデジモンだ。
その上、本能に従って生きるので、人間の指示を覚えて理解するようなデジモンじゃない。
クラッカーがデジモンを道具扱いするにしても…
モリシェルモンは、その道具としての適性が低いのだ。
そんなデジモンを、クラッカーが飼育しようとしたらどうなるか。
今我々の目の前にいる個体がやっているように、パソコン内のデータを食い散らかすだろう。
故に、戦闘用の刺客デジモンを育成するにしても、もっと適任となるデジモンがいくらでもいるはずだ。
分からない…
なぜモリシェルモンがここにいるんだ…?
- 644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 20:34:09.23 ID:gdijYNvzo
- 来たか
一見真相解明不可能な事件だが
- 645 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/26(日) 20:49:32.76 ID:EHFw9EIrO
- 『…そういうことか。分かったよ』
そう言ったのは…
スポンサーさんだった。
『おそらくこの個体は、野生のモリシェルモンだね。貝殻に苔が生えている』
あ…
よく見たら確かにそうですね。
色々あって気が動転していたせいか気づきませんでした。
しかし、どうして野生のモリシェルモンがここに…?
『簡単な話だよ。クラッカーはデジタルを開き、野生のモリシェルモンをここへ呼び寄せた。ただそれだけのことだよ』
呼び寄せた?
どうやって…!
『野生動物を呼び寄せる方法なんてそう難しいことじゃない。餌を設置して、おびき寄せればいいのさ』
餌…
まさか。
『彼らはモリシェルモンの大好物である粘菌デジモンを飼育しているんだろう?それを餌にしてモリシェルモンをおびき寄せ、デジタルゲートをくぐらせて…、ここへ送り込んだ、ということだろうね』
…はい?
『何か筋が通らない点があったかね?』
……………………。
理解はできます。
できますが…………。
私では、思い至らなかった。その可能性に。
余りにも…
あまりにも、ひどすぎる話じゃないですか。
そんなのは。
『クラッカーが我々のセキュリティデジモンを暴力で排除したならば、極論を言えばクラッカーが自分で強力なデジモンを飼育する必要すらなかったんだ』
…。
『強力で凶暴な野生デジモンを、我々のデジモンにぶつければ、目的は果たせるんだ。別に指示を聞かないデジモンだろうが構わない。「目の前のデジモンを捕食しろ」なんて、命令するまでもないだろうからね』
我々が、ファンビーモンを育てて本能のままに暴れさせたという戦術を…
クラッカーはさらに悪辣なやり方で、やり返してきたってことですか。
『…とんでもない奴らだねぇ』
- 646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 20:51:50.93 ID:IedIRtBWo
- この絶望感
- 647 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/26(日) 21:15:22.21 ID:EHFw9EIrO
- 仮にこのモリシェルモンを、頑張って討伐したところで…
『クラッカー側にとっては何一つ損害にはならないだろうね。なにせあの個体は、クラッカーがコストを費やして育てたデジモンではないのだから。失うものはなにもない』
…。
クラッカーが、刺客としてモリシェルモンを選んだ理由は…。
『野生デジモンを誘き寄せたいとしても、餌を用意できなくては実現できないだろうね。もしもガルルモンのような、普通の肉食デジモンをおびき寄せたいならば、普通の動物型デジモンを餌にする必要があるね』
普通の動物型デジモン…。
トコモンとかプニモンみたいな幼年期でしょうか。
『そうだね。だが、それにはコストがかかりすぎる。餌にする幼年期デジモンを殖やして育て、しっかりと言語教育を施して、「モリシェルモンのところへ行ってから、デジタルゲートに向かって逃げてこい」なんて指示をするのは、労力とリターンが釣り合わないだろう。そもそもそんな死を前提とした指示に餌デジモン達が素直に従うとは限らない。指示を無視してデジタルゲートのない方向へ逃げれば計画はパーだ』
それはそうですね…。
成功確率が低すぎる。
『だが彼らの手駒には、司令塔の意のままに動く粘菌デジモン達がいる。楽にどんどん殖やすことができて、死を恐れない粘菌デジモンが。しかし、普通の動物デジモンは粘菌デジモン達を餌として認識しない』
まあ食いつかないでしょうね…。
ガルルモンとかグレイモンをゲレモンやズルモンの餌で誘き寄せようと思っても絶対食いつかない。
『ただし一種だけ…デジタルワールドでただ一種だけ。粘菌デジモンを大好物とし、それを餌にすることで誘き寄せることができる強力な肉食デジモンがいる。それがモリシェルモンだ』
…。
『君の前に突如出現した刺客がモリシェルモンである理由は…これで説明できないかな?』
…おみそれしました。
私には、そこまで考えつきませんでした。
何故なんでしょうね。
『…犯罪心理学というやつだ。君はデジモンや生物、シミュレーションの知識はあっても、連中のドス黒い悪意に対する理解が不十分かもしれないね』
…不勉強ですね、私は。
『無理もないさ。君はもともと世の中を良くするための研究をしている研究者なのだから。あんなゴミクズ野郎共への理解が不足していたとしても、責められる謂れはないさ』
…だけど、こういう手を想定できていれば…
サラも、ワームモンも、失わずに済んだはずです。
『…それはそうだねぇ…』
- 648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 21:17:54.80 ID:RogmJunX0
- その純粋さが優秀さの源だから捨てることもできない
- 649 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/26(日) 21:30:48.46 ID:EHFw9EIrO
- 一旦ここまで
- 650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 21:31:43.35 ID:BFJhlmfl0
- 一旦乙
- 651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 21:32:35.87 ID:RogmJunX0
- 乙
- 652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 21:40:29.96 ID:4m9pjeCH0
- 乙
- 653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/27(月) 01:08:54.40 ID:Zu0Y0Pb4o
- こんなこと繰り返されたら研究チームどころか全ての合法組織のデジモン全滅しちゃうな
- 654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/27(月) 17:19:57.05 ID:CjFOpSoJ0
- 絶望展開が続くのはなかなか堪えるな
光が欲しい
- 655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/27(月) 19:22:47.94 ID:Wq86tkHY0
- リアリティのある賢しい悪が描かれてるのは貴重だと思うし好き
賢しさが徹底してるとこうなるんだな……というのはある
- 656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/28(火) 20:38:28.55 ID:u1/M0glIo
- 一見詰んでるように見えるけどここからどうなるのか気になるねえ
- 657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/29(水) 18:58:30.93 ID:2BsEGeR6o
- 分析した結果分かったことは
もうダメだぁ…おしまいだぁ…
好き放題やれる犯罪者サイドはいつも強いね
- 658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/29(水) 19:20:04.14 ID:d8mLnZCQ0
- 合法でも違法でも脱法でもなくこれからの時代は「無法」がトレンドだぜ
- 659 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 14:22:27.23 ID:EBsv9197o
- 『…さて。ここまで言えば、ケン君なら…あのモリシェルモンをどうにかする方法は、パッと思いつくだろう?』
…方法はあります。
クラッカーの手口の逆をやればいい。
すなわち…
デジタルゲートを開き、チビマッシュモンを餌にして、このパソコンから誘き出せばいい。
デジヴァイスの中のデジタル空間には、幸いなことに今ブイモン達がいるのとは別に、もう一個部屋がある。
危険な存在を隔離するための隔離チェンバーが。
そっちへ誘き出せば、とりあえず除去はできます。
『…やれるかね?』
…。
スポンサーさんにそう問われたが…
正直、絶対にやりたくない。
これまでに我々が、チビマッシュモンを犠牲にするような戦術を一切やってこなかったかと問われたら嘘になる。
ディノヒューモンの農園からブイモンとワームモンのデジタマを採取したときは、揺動のためにチビマッシュモンを放ち、犠牲にしたことがあった。
クレカ事件のときは威力偵察のために、ズバモンとルドモンで武装したスカモンにチビマッシュモンをぶつけたことがあった。
だが、その時はどちらも、ボスマッシュモンが自らその役割を買い、チビマッシュモン達へ指示をしてくれていた。
私自身が指示を出したわけではない。
ワームモンとサラマンダモンを失った直後の今…
チビマッシュモン達へ、私がその指令を出すのは…
…正直、今は無理だ。
私のこの感情は、セキュリティサービスの運営としては、大きく間違っているものなのだろう。
非情にならなくてはいけないときがある。それが今なのだろう。
それでも…
指示ができない。
- 660 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 14:31:32.78 ID:EBsv9197o
- 『素晴らしい!』
え?
『いい判断だ。その通り。君はそんなことをやらなくていい。チビマッシュモンを犠牲にして、モリシェルモンを追い払うことなんてやらなくていいんだ。君の判断は100%正しい!』
な、何故ですかスポンサーさん?
教員さんも驚いてますよ、今のその発言に。
『だって我々は慈善活動家じゃないんだ!その教員は、悪徳業者に自分からダマされて、安物買いの銭失いをしたってだけのことだろう!個人情報流出事件の真相は暴かれ、我々の汚名は払拭できた。ならもう帰ってくればいい!ハーッハッハッハ!』
それを聞いた教員さんは目を見開いた。
「そっ…そんな!で、でもそれじゃあ私達のデータは!?」
『んん?依頼は受け付けますよ!ただし、我々が提供する正規のサービスとこの場で契約することが条件だ。そうすればモリシェルモンもどうにかしましょう。どうしますかな?』
す…スポンサーさん。
こんなところでも営業活動ですか。
『我々が投資したのはビジネスのためだ。慈善活動は結構だが、それは利益に繋げなくてはならない。でなければ私もカネを送れなくなるんだ』
…それはそうですけども…。
- 661 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 14:41:39.81 ID:EBsv9197o
- 「し、しかし上に許可を取らないと…この場で勝手に契約なんてできませんよ…!そんなことしたらまた怒られる…!」
『それは結構!では上に許可を取ってから契約の可否を判断すればよいでしょう。我々が動くのもそれを待つことにします』
「え、ええ…しかしそれでは、データをどんどん食べられちゃうんじゃ…」
『そうなりますなぁ』
「…ど、どうにかしてくれませんか?」
『タダで?』
「…できれば…」
『貴方は我々に、何の対価も求めずに受けているチビマッシュモン達の命を犠牲にして、あなた達の間違いの尻拭いをしろと言っているのですかな?』
「…」
『イエスかノーかで答えていただきたい!』
「…イエスです」
…。
地獄だ、この空気…。
- 662 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:00:55.69 ID:EBsv9197o
- 『…オホン。では柔軟に解決する手段を提供しましょう!その名も「デジタル・マーセナリー」です』
「マーセナリー…傭兵?」
『ええ!気軽にお求めいただけるデジモン退治サービスです。悪質なクラッカーデジモンをすぐに退治する、一回限りの契約です!どうですか?』
「…代金はいくらになります?」
『見積りはこんなとこですな。ここから増えも減りもしないでしょう』
そう言い、スポンサーさんは見積もり金額を表示した。
「ひっ…こんなに!?」
『我々とてデジモンの貴重な命を失うこと前提の作戦なわけですから、これ以上お安くはできません。しかしあなたのポケットマネーでお支払いできない金額ではないでしょう?理想的な落とし所ではないですか?あなたは上から必要以上に叱られたり、責任を取らされたるせずに済むし、モリシェルモンによるデータ捕食被害を最小限に抑えられる。我々は対価が保証されるのですぐに動ける。win-winではないですかな?』
「うぅ…。とほほ…。今月厳しいなぁ…」
『ですがご安心を!今回は!!特別に!!お安くするチャンスをご提供します!一ヶ月以内に見張りマッシュモンサービスのサブスクにご契約頂けたら、なんと今回のデジタルマーセナリの料金は50%キャッシュバックします!!お得です!!どうでしょう!今がチャンス、今しかないですよ!』
「お、お安く…!?今しかない!?でしたら是非!よろしくお願いします」
『素晴らしいいぃ!素晴らしい判断、勇気あるご決断だ!では契約書にデジタルサインをお願いします!』
ま…マジか!
スポンサーさんすげぇ…!
しかし、教員さんは不憫だな…身銭を切らされることになるとは。
お金がなくて余裕のない者ほど損をしやすい…。
なんか…ちょっと世の中の構造を垣間見た気がする。
『ケンくん、我々はまだ一回限りの契約で済ませるプランやキャッシュバックを提示するだけ、まだ温情な方だよ。ローグソフトウェアだったらサブスクの本契約を必須で結ばせうえで緊急対応料金を上乗せしてくるからね』
…ローグソフトウェアって警察と提携してるとこですよね。大丈夫なんですかそこは?
『値段相応いい働きをするよ』
…そうなんですか。
- 663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 15:06:44.06 ID:8jgK0JzI0
- すげえぜスポンサーさん
- 664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 15:10:08.06 ID:5W/AENyu0
- 一教員に払えて、今月厳しくなるぐらいで済む金額なら良心的と言えるかも
- 665 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:15:55.88 ID:EBsv9197o
- 『さて…ケン君。教員さんは我々に正式に依頼をした。こちらは契約通りの働きをしなくてはならない…いいね?』
…はい。
『おっと、リーダー君からケン君に言いたいことがあるそうだ』
リーダー?
どうしましたか?
『ケン、今からそちらに真・ボスマッシュモンの分身が向かう。戦闘には向かないチビマッシュモンサイズの分身だ。そいつに指揮を執らせるといい』
…来てくれるんですか、ボスマッシュモンが。
『ああ。ボスマッシュモンは言葉だけじゃなく、菌糸を使った神経接続で直接チビマッシュモンの脳へ指示を送れる。ケンが口で指示するよりも成功確率は上がるだろう』
…分かりました。
ありがとう…ボスマッシュモン。
やがて、小さなボスマッシュモンが、ネット回線のトンネルからやって来た。
そうして、私は隔離チェンバーへのデジタルゲートを開いた。
ボスマッシュモンは、チビマッシュモンを囮にして、隔離チェンバーへモリシェルモンを誘引き寄せ、収納した。
…デジタルゲートを閉じた。
これで排除完了だ。
「あ…ありがとうございました!」
では教員さん、この口座に2週間以内に代金を振り込んでください。
「…あ、あの。もうちょっとお安くなりませんか?」
でしたら学校側で見張りマッシュモンサービスと契約して、キャッシュバックを狙うといいですよ。
「…どうにかしてみます」
- 666 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:33:35.60 ID:EBsv9197o
- さて…
帰ろうブイモン、みんなのところへ。
みんなが待ってる。
どうする?
今回は粘菌デジモンがネット回線トンネルを塞いでいる可能性を危惧して、ブイモン達にはデジヴァイスに入って来てもらったけど…
帰路は安全だから、先にネット回線から研究所に戻っても大丈夫だよ。
「…」
ブイモンは、大きなデジタマを抱きしめている。
ワームモンを失って落ち込んでいる様子だ。
…私もつらい。
「…オイラ…ほんとになんのやくにもたってねえ…。てきのマッシュモンをたおしたのはサラマンダモンだし、モリシェルモンをおっぱらったのはうちのボスマッシュモンだし…。オイラはなにもせずに、ずっとひっこんでればよかったんだ…。そうすれば…ワームモンは、こんなことに…!ならなかった…!」
…自分を責めなくていいよ、ブイモン。
君は自分ができることを十分やった。
もっと強くなって、次に…
「…もういいよ…。やくたたずのオイラは、みんなのあしひっぱってばっかで…。オイラよりよっぽどやくにたつワームモンをしなせて…。オイラのほうがしねばよかったんだ…」
そ、そんなこと言わないで…
「…」
…ブイモンは、ショックから立ち直るのに時間が要りそうだ。
このままデジヴァイスに入れて、一緒に帰ろう。
『われわれは さきに かえる』
おや、ボスマッシュモンは先にネット回線から帰るんだね。
- 667 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:48:03.20 ID:EBsv9197o
- 『ケンのかみよ わたしにはブイモンのきもちが わからない』
ボスマッシュモン…?
『わたしは なかまをうしなうことの おそれ かなしみ そのかんじょうが りかいできない』
そうなの…?
結構前、うちのサーバーで菌糸の要塞に住んでた頃は、外に出るのが怖いと言ってた気がするけども。
『わたしは 菌糸のデジモンだ わたしのからだを こうせいする 菌糸 いっぽんいっぽんが マッシュモンだ そして マッシュモンは ひびしんかして バージョンアップしている』
そういや遺伝子もけっこう変異してきてるらしいね。
『そうして しんかしていくなかで われわれは なかまをうしなう かなしみを うしなって しまった チビマッシュモンを ぎせいにするたびに いちいちかなしんでは いられないからだ』
…そうか。
今まで色々な作戦で、チビマッシュモンが犠牲になってきたけども…
人と同じメンタルなら、同胞の個体が死んで悲しくないわけがないんだ。
だけど、ボスマッシュモンがそれを悲しまなくなったのは…
『仲間が死んでも悲しまない』ように心が進化したからか。
つまり…進化を重ねる中で、ボスマッシュモンは仲間が死ぬ悲しみを失ったんだ。
『そうだ ケンのかみよ わたしには ブイモンを はげませない かれを たのむ』
…分かったよ。
そう言うと、ボスマッシュモンはチビマッシュモン達と共に、ネット回線から研究所へ先に帰っていった。
- 668 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:57:50.89 ID:EBsv9197o
- 駅のホームで電車を待っている間、スポンサーさんに通話してみた。
『ご苦労さまだったね、ケン君。どうしたのかね?』
サラマンダモンを失ってしまいましたが…
スポンサーさんは悲しいですか?
『それは悲しいさ!サラは赤オタマモンのデジタマを産んでくれた。炎を吐く優秀なセキュリティデジモンの赤オタマモンをね。それが失われたとなると、オタマモンを売れなくなる。大きな損失だ』
そういう意味ではなく。
『…男はね、人前で涙を見せないものだよ』
…はい。
『君のデジヴァイスの隔離チェンバーにいるモリシェルモンには恨みはないが…クラッカーには然るべき報いを必ず与えるさ』
…そうしましょう。いつか、きっと。
- 669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 16:02:18.08 ID:LNx12oIFo
- マッシュモンの変化にはそういう背景が
- 670 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:10:24.48 ID:EBsv9197o
- …
〜バイオシミュレーション研究所 メガ視点〜
つい先程、ケンからワームモンの訃報が伝えられた。
カリアゲを筆頭とした研究チームはみんな悲しんでいる。
僕も悲しい。
ケンは今、ブイモンとともに鉄道で帰路についているらしい。
デジクオリアの画面を見ると、ネット回線からチビマッシュモンと小型ボスマッシュモンが帰ってきた。
チビマッシュモンの数体は、モリシェルモンを誘き出すために犠牲になったようだ。
…おかえり、ボスマッシュモン。
君は無事だったようで嬉しい。
さて、クレカ事件のときは、ブイモンやパルモン、コマンドラモン達が不在のタイミングで、我々の研究所にクラッカーの差し金であるキャンドモン達が攻めてきたっけ。
あれはクラッカーによって、文書作成ソフトの脆弱性を突かれてマルウェアを送り込まれたせいで、デジモン伝送路を繋げられてしまったんだ。
今回は同じ過ちは繰り返さない。
脆弱性対策はしっかりやっている。
そして何より、ネット回線のトンネルをチビマッシュモンに見張らせている。
ネット回線を行き来しているデータの中に、悪質なマルウェアが存在している場合、どうやらデジモンはそれを肉眼で視認できるらしい。
デジモンは、人間が開発したセキュリティソフトのファイヤウォール以上の脅威検出能力と対処能力を持っている。
万が一、他のソフトの脆弱性を突かれたとしても…
そこにマルウェアが送り込まれてきたら、見張りマッシュモンがパクっと食べて対処してくれる。
だから今度は、同じ手は食わない。
- 671 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:25:47.31 ID:EBsv9197o
- 「マシマシ〜!」
見張りマッシュモンが交代をするようだ。
同じ個体が長時間ずっと集中して見張りをしていると、集中力が落ちて脅威検出精度が下がりかねない。
だから、複数の個体で交代で見張りをしている。
…それにしても、ワームモンを失ったのは本当に惜しい。
ワームモンには、セキュリティデジモンという役割だけじゃなく、デジクロス・システムの被検体としての役割があった。
成長期であるワームモンのうちはそれが叶わなくとも、成熟期へ進化してからデジクロスの力を獲得してほしかった。
デジクロスシステムは、普段は少ない代謝量のデジモンが一時的に高いDPを獲得する、戦闘力ブーストの力だ。
それは維持コストを安くしつつ、いざというときに強大な力でクラッカーデジモンを排除できるという、セキュリティデジモンとして理想的な力だ。
将来的に、各企業は自社のサーバーを守るためにセキュリティデジモンを飼育するようになるかもしれない。
だが、そのセキュリティデジモンがシューティングスターモンのようにとんでもなく高いDPを持ったデジモンの場合、食べる餌の量も凄まじいことになり、それだけ維持コストがかかってしまう。
零細企業には大きな負担になってしまう。
だから、ワームモンは僕達の未来がかかっていたといえる。
デジクロスシステムを搭載したセキュリティデジモンの量産という未来が。
しかし…
その機会は失われてしまった。
僕が代表を務めるデジタルアソートのデジモン達は、戦闘向きじゃない。
ワームモンの代わりはやれないんだ。
- 672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 16:29:38.52 ID:+S8oVpPw0
- 疲労しちゃうのは生物でもあるが故の欠点かデジモン
- 673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 16:31:06.76 ID:HqPwB6BhO
- マッシュモン、あいつはウィルス種の祖先になりえる存在かもしれない。
仲間を失った時の悲しみを理解できない時点で。
- 674 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:36:34.47 ID:EBsv9197o
- カリアゲが机に突っ伏している。
「…どうすりゃ良かったのかな、俺達…。やることやってたつもりだったのに…」
…精神論、根性論で語っても仕方ないよ、カリアゲ。
方法論で考えよう。
今回は、敵の手口があまりにも巧妙すぎた。
というよりは…コロンブスの卵だね。
粘菌デジモンを餌にして、野生のモリシェルモンを呼び寄せ、デジタルゲートを潜らせてけしかけるという手口自体は至極簡単なものだけど…
その手口をクラッカーより先に閃き、対策することができていなかった。
ワームモンを失った原因があるとするならそれだよ、きっと。
「なんなんだよクラッカーの野郎!!性格が悪すぎるだろうが!!そんなん普通思いつかねえよ!!」
うん…
正直、あまりにも悪どすぎて、まともな人間じゃ思いつかないのは確かだ。
人間が起こすサイバー犯罪なら、犯人にどんな悪意があろうと、手口はだいたい過去のデータから分析されているから、「既に見つかっている手口の延長線上」で考えれば先回りして対処はできる。
だけど…
デジモンを使ったサイバー犯罪は、「過去のデータの積み重ね」がない。
だから「過去の手口の延長線上」を考えようとしても、先回りはできない。
クラッカーより悪どいことを考えられる人間が、セキュリティ側にいないと…
クラッカーにより「新たな手口の発明」には対処しきれないのかも。
「誰ができるんだよそんなこと…」
…無理だよねえ。
「いや、もう一つ…確実な手段がある。後手に回っても対処できる手段がな」
リーダー…?
- 675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 16:37:42.21 ID:twX5uXGGo
- 一見無理ゲーな戦争だな
- 676 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:50:00.79 ID:EBsv9197o
- 「デジモンを使ったサイバー犯罪なら、とりあえずクラッカーのデジモンを戦って倒してしまえば被害は収まるんだ」
まあ…それはそうだけど。
言うほど楽なことじゃ無いと思うよ…。
「そうだ。強いデジモンを育てることや、運用することは難しい。DPが高いデジモンを育てれば、維持コストも跳ね上がる。…だが、ジャスティファイヤはそれを承知であえてシューティングスターモンを育て上げた。いかなるコストを払ってでも、最終的に勝利できるようにするためだ」
…武力というのは、実際に行使するだけじゃなく、チラつかせることに大きな効果があるとはいうね。
「そうだ。シューティングスターモンの存在は、いわばクラッカーへの脅し、抑止力でもある。『政府を攻め落すためにいかに強力なデジモンを育てようとも、最終的に勝つのはこちらだからやめておけ』…とな」
でもシューティングスターモンは極秘の秘密兵器だから、抑止力にはならないと思うけど…。
「シューティングスターモン自体はな。だがジャスティファイヤの戦力はそれだけじゃない。ティンクルスターモンやアグモンなど、DPが高い成長期を育てていた。そっちを成熟期まで育て上げてから、存在を公表し、見かけ上の抑止力として掲げるつもりだろう。秘密兵器シューティングスターモンは、それらの抑止力をより強く見せるための奥の手として運用するつもりだ」
ああ、なるほど…
シューティングスターモンに強い敵を倒させて、その手柄をティンクルスターモンやアグモンの功績として発表することで、表向きの抑止力を実際より強く見せるのか!
…あのパルタスって人、初めて見たときは随分なアンポンタンだなって思ったけど…
案外抜け目無くて有能なのかな?
「オレは最初からそうだと評価しているぞ」
…うーん。
人って第一印象だけだと分からないものなのかもね。
- 677 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 17:12:54.04 ID:EBsv9197o
- 「だが、オレ達研究所の戦力も地道にだが着実に育成をしている。キンカクモンの子供であるプニモンは先日トコモンへ進化したし、ケンキモン…の本体もようやく一個デジタマを産んだ」
ケンキモンのデジタマ、産まれたんだ。
良かった。
正直、今回ワームモンを失った件についても、コマンドラモンがいればなんとかなったような気がする。
「それは決して過大評価じゃないぞ、メガ
。実際の戦いで、コマンドラモンはクラッカー相手に自己判断で先手を取って戦ってきた。極めて優秀なセキュリティデジモンだ。それほど頼りになるコマンドラモンを、これからたくさん産めるようになれば、ハッキリ言って暴力しか能のないクラッカーデジモン如きには遅れを取らないだろう」
コマンドラモンは戦闘能力だけじゃなく、透明化によるデジタマ採集の能力も高いからね。
もしもまだコマンドラモンがケンキモンに進化してなかったら、今頃フローティア島でガルルモンやトータモンのデジタマも育てられてたのかな。
「そうだろうな。ケンキモンは透明化能力を失ったことを悔やんでいる。だからこそ、ケンキモンが産むデジタマは、きっと透明化に長けた優秀なデジモンに育つだろう」
桃栗三年柿八年…。
先を見て立ち回らなきゃね。
そうやってリーダーと話していると…
クルエが席から立ち上がって背伸びをした。
「ふぅ〜、疲れた…でも、だんだん分かってきたぞ、あいつのこと」
おや?
そういやクルエって今何してるの?
「…ワームモンのこと、残念だったね…あんなにみんなに懐いてたのに…。カリアゲには特に…」
…うん。
それで、クルエって今何してるんだっけ?
僕がデジタルアソートの方に重きを置くようになる前は、レポートの直しとか、他のチームや外部との調整とか色々やってくれてたよね。
「あれ、メガには言ってなかったっけ?ベーダモンとの対話だよ」
ベーダモン…
あのタコみたいなやつだっけ。
- 678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:13:12.18 ID:32uDre4To
- 核ミサイルかな?
- 679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:15:29.06 ID:5W/AENyu0
- 対話!?
- 680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:16:10.10 ID:32uDre4To
- クルエの長けてる能力判明か?
- 681 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 17:20:57.51 ID:EBsv9197o
- 「リーダーに言われてさ、『クラッカーと手を組まれる前にどうにかして味方につけろ』ってことらしくって。それで仲良くなろうとしてるんだ」
…うまくいってる?
「一緒にゲームで遊んだりはしてるよ」
ゲーム!?
なにやってんの!?
「なんか…気難しいんだよね〜ベーダモン。面白いかどうかで物事を判断してるみたいでさ。私達のことを観察対象として見てるみたい」
気難しいんだ…。
「でさー聞いてよ!ベーダモンにアニメ見せたらさ…」
その時。
デジクオリアの映像を映したパソコンの画面から、大きな音が鳴った。
何かがはげしく削られているような音だ。
な、なんだ?
画面を見てみると…
映っているのは、サーバー内のデジタル空間だった。
なんと、ネット回線を護っているファイヤウォールが可視化された壁が…
ヒビ割れてボロボロになっている!
どうやら音は、ファイヤウォールから鳴っているようだ。
「マシィ!マシシィィーー!」
チビマッシュモン達は、デジタル空間内で何かを追いかけて、捕まえて食べている。
チビマッシュモン達が追いかけているのは…
可視化されたコンピューターウィルスだ!
え…?
何だこれ、どうなってんの!?
コンピューターウィルスが侵入してきて、ファイヤウォールを破壊したのか!?
いや…そんなバカな。
トロイのような潜伏型マルウェアだろうと、チビマッシュモン達は検出できるはず!
ファイヤウォールを破壊する前に、ウィルスを駆除できるはずなのに!
なんでこんなことに…!?
- 682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:27:57.01 ID:5W/AENyu0
- 気になる所で話が切れてしまったし普通にピンチだ……
- 683 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 17:31:45.91 ID:EBsv9197o
- 「なんだ!?サイバー攻撃か!?」
り、リーダー!
新型のコンピューターウィルスがデジタル空間内で増えてるんだ!
「セキュリティソフトだけで駆除できないとは…本当に新型のウィルスらしいな。チビマッシュモン、ウィルスを駆除しろ!メガ、ファイヤウォールを修復できるか!?」
やってみる!
しかしなんなんだ、この大きな掘削音は…!
とりあえず僕は、破損しているファイヤウォールの修復を試みたが…
何かがファイヤウォールを突き破ってきた。
それは…
回転しているドリルだった。
やがて、何かがファイヤウォールを完全に破壊しながら出現した。
「ウゥゥゥーーーー!」
https://i.imgur.com/2l91rsM.jpg
…頭部にドリルがついた、モグラ型デジモンだった。
- 684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:43:10.76 ID:bgHkPkJJ0
- お、終わりだ…
- 685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:43:22.06 ID:rOgZXKgy0
- モリシェルモンの次は蛮族か
- 686 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 17:52:21.24 ID:EBsv9197o
- こいつは…!
蛮族の集落で見たことがある…!
ドリモゲモンだ!
こいつがここに出現した…ということは…
「ああ。マルウェアによって、デジモン伝送路を繋げられたらしい…!」
まずい!
どうするリーダー!?
ネット回線を物理的に遮断する!?
「それをやると、デジクオリアが機能停止して、デジタル空間内部の状態が分からなくなるな…。だが被害が拡大するよりマシだ!やってくれ!」
…くそ!マルウェアによって、ソフトウェア制御による電子的な回線切断ができなくされている!
これはアナログで対処しなきゃダメだ!
「シン、カリアゲ、クルエ!大至急、外部に繋がっているネットワーク回線を全て物理的に遮断しろ!メガは同時並行で、デジモン伝送路の切断を試してくれ!」
リーダーがそう言うと、シン、カリアゲ、クルエはいくつもある外部との接続を、ひとつひとつ切断しに奔走した。
その間、僕はデジタル空間内の様子を観察しながら、勝手に繋げられたデジモン伝送路の電子的な切断を試みた。
チビマッシュモン達は目についたマルウェアを片っ端から食べようとしてるみたいだけど、どうも揺動用のダミーみたいなのがたくさんあるみたいだ。
伝送路を勝手につなげているマルウェアを特定して、チビマッシュモン達にそれを最優先で駆除してもらおう!
ネット回線のトンネルからは、ドリモゲモン以外にもデジモンが出てきた。
次に出てきたのは…
小鬼型成長期デジモン、シャーマモンが4体。
ロウソク型成長期デジモン、キャンドモンが4体。
類人猿型成長期デジモン、コエモンが2体。
さらに、ジャングルモジャモン1体と、セピックモンが2体。
そして…
フーガモンと、キンカクモンがやってきた。
「ヒヒィイーーーン!!」
フーガモンはシマウマ型デジモン、シマユニモンに乗っている。
成長期が10体。成熟期が6体。
計16体のデジモンが、百鬼夜行のようにぞろぞろとやってきた。
蛮族デジモン…!
ついに戦線投入されたか!くそ…!
一番嫌な手を打ってきた!
- 687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 17:56:45.18 ID:sMKUvDCgo
- タイミング最悪な時に一気に戦力送り込んできた…
- 688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:00:04.54 ID:rOgZXKgy0
- 分かってる戦力だとシューティングスターモン以外対処不可能だな
- 689 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 18:15:44.84 ID:EBsv9197o
- くそ…
伝送路を維持してるマルウェアはどこだ!
僕とリーダーは、一緒にマルウェアの本体を探しているけど…
デジタル空間内に散らばっているのはどれもダミーばかりだ!
「…ん?チビマッシュモンの中に、様子がおかしい奴がいる。どこか動きが不揃いだ」
…え?
「おい、そこのチビマッシュモン!ちょっと体を調べさせろ!」
リーダーはそう言い、チビマッシュモン達に、怪しいチビマッシュモンを取り押さえさせた。
「マシ!マシ!」
「だが、調べるといっても…オレ達の使っているデジモン分析ソフトでは、スキャンに長い時間がかかる…!そんな時間はないというのに…!」
いや、すぐに済むよリーダー。
僕は、デジタルアソートで育てた平和利用デジモンの試作型、仮称ガンマを連れてきた。
「そいつは…、蟹鍋作りのときに、湿地帯で沼に埋まったシャコモンの貝殻の位置を探し当てたデジモンか!」
そうだよ!
仮称ガンマ!そのチビマッシュモンを調べろ!
『合点承知だぜ 秘技! ディープサーチ!』
検索結果が表示された。
怪しいチビマッシュモンの体内には…
マルウェアが埋まっていた。
「…やはりだ…!伝送路を繋いでいる本物のマルウェアは、このチビマッシュモンの体内に埋まっている!」
ええ!?
どういうこと!?
- 690 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 18:33:07.14 ID:EBsv9197o
- 「オタマモン!今すぐその個体を排除しろ!」
リーダーがそう言うと、赤オタマモンが出てきて、怪しいチビマッシュモンを火炎放射で燃やした。
「マシャアアアーーーーー!!!」
リーダー…これは…!?
「…オレは正直、今回の事件…すぐに片付くと思っていた。シャバい詐欺業者をしょっぴいて、それで終わりだと思っていた」
僕もそう思ってたよ。
でも実際は…モリシェルモンという罠が仕掛けられていたんだ。
詐欺と合わせて、二重の罠が待ち受けてた…!
「いいや…違う!罠は三重だったッ!奴の真の狙いは…!コイツを紛れ込ませることだったんだ!オレ達の…チビマッシュモンの中に!」
ど…どういうこと!?
- 691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:33:54.20 ID:sMKUvDCgo
- そこまでやってくるか
- 692 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 18:45:51.16 ID:EBsv9197o
- 『ご明察。デジモン伝送路を切断したようだな。トロイを破壊したか。だが…気付くのが遅かったなぁ。クックック…』
この声は…!
声がしたほうを見ると、デジタル空間内には、デジドローンが1個浮いていた。
『貴様らの手持ちの戦力でモリシェルモンを排除するためには…チビマッシュモン共を餌にしてモリシェルモンを誘き出すしかないだろう?クックック…うまく知恵を使って対処したつもりだったか?私に踊らされているとも知らずに?』
お前…!
『そうして、あの場にチビマッシュモン共を誘き出して…その中に、私のチビマッシュモンを一体、紛れ込ませたんだ。ファイヤウォールの破壊と、デジモン伝送路の接続…そしてデコイを出す機能を持ったマルウェアを仕込んでね…!』
やることが…汚いぞ…!
AAAェーーーッ!!!
『さて!待たせたな、研究者諸君!今度こそきっちり滅ぼしに来たぞ!クックック!』
この男の悪意…
あまりにも我々の想像を超えすぎている…!
悪意の権化そのものであるかのようだ。
『メガよ、前に私のことを、道具の使い方が下手なヘボエンジニアと呼んでくれたなあ!これでもまだそう言えるか?ンン!?』
うがっ…
コイツ、言われたことを根に持つタイプだ!
悪意の権化がどうとか形容せずとも、シンプルに性格が悪い!!
- 693 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 18:47:03.56 ID:EBsv9197o
- つづく
- 694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:47:43.11 ID:rOgZXKgy0
- 乙
- 695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:47:46.28 ID:+S8oVpPwo
- 乙
うーむやられっぱなしだ
- 696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:48:06.87 ID:f1IPluRdo
- 乙
どうやって立ち向かうのか
- 697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 18:53:34.29 ID:63A/y7NBo
- 乙
悔しいが有能だなぁAAAェーーーッ!!!
- 698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 19:05:07.52 ID:5W/AENyu0
- 乙
陰湿で手段を問わず実力もある、という敵に回したくない要素揃い踏みの相手が最初っから敵であるということよ
- 699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/03(日) 19:40:44.47 ID:rj9S84Cuo
- 一見詰んでるようにも見えるが果たして
- 700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/12/03(日) 23:42:04.06 ID:FJ50azQs0
- 主人公補正でも無ければ皆殺しにされる場面だが……
- 701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/04(月) 09:08:30.68 ID:S7eK4zsMo
- このssなんで初めは安価ssだったんだろう?
安価に頼る必要全然ないくらい知識も技量も構成力も高いじゃん
- 702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/06(水) 19:34:44.70 ID:tRcqqePD0
- 敵にまで馴れ馴れしくニックネームで呼ばれるの腹立ちそうだなメガ
- 703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/12/07(木) 05:37:35.99 ID:Yqc+0nEV0
- つか、デジタマ盗っちゃってる時点で蛮族には大義名分出来ちゃってるくらな
- 704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/07(木) 08:34:21.57 ID:54aDB5RL0
- sageろよ
- 705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/09(土) 16:35:14.04 ID:IXyA1fdfo
- 成長期成熟期でもひいひい言ってるのに完全体究極体が利用されることなったら人類滅びそう
- 706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/09(土) 22:46:04.32 ID:QDYfCbTgo
- 土曜だし来ること期待してたがないか
- 707 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:01:21.28 ID:FW7wa3IfO
- クラッカーが不正に繋げてきたデジモン伝送路を遮断することには成功したので、物理的にネット回線を遮断する必要はなくなった。
AAAがデジドローンでデジタル空間内の状況を確認してクラッカーデジモンへ指示を出せるという弊害はあるが…
だからといって回線を切断するとこっちもデジクオリアのオンラインライセンス認証がエラーを吐いてデジドローンが緊急停止してしまい、パートナーデジモン達に指示を出せなくなってしまうので、切断はしない方が良さそうだ。
だが、こうしている今もクラッカーデジモン達は、デジタル空間を破壊しながら、重要な研究データを強奪している。
AAAが蛮族という物資強奪に特化したデジモンを育成して、農耕を教えなかったのは、彼らを強盗として利用するためだったのかもしれない。
このまま放置すればものの10分でシステムが破壊し尽くされてしまう…!
ん…?
よく見ると、僕達がデジモン伝送路を維持しているマルウェアを探している最中に、敵の数がさらに増えたようだ。
具体的に何がどれだけいるか…という差分についてはさすがに分からないけども、明らかにさっきはいなかった種類のデジモンがいる。
蟹型成長期デジモン、ガニモン。
それが3体いるようだ。
そんなばかな…!
ガニモンは人と意思疎通できるようなデジモンじゃなかったはずだ。
どうやって手懐けているんだ…!?
それだけじゃない。
プラチナスカモンもいる。
プラチナスカモンは、ジャングルモジャモンと並んでネット回線トンネルの前に陣取っている。
そしてもう一体。おかしなデジモンがいる。
一頭身体系のハゲオヤジ…とでもいう珍妙な姿のデジモンだ。
https://i.imgur.com/QjzJVxH.jpg
ハゲオヤジデジモンは、破壊活動に加わることなく、高い壁に登ってあぐらをかいて座りながら、ポヨモンの干物をかじっている。
とっくりから何かの液体を小さな器に注いで、気分良さそうに飲んでいる。
色からすると…おそらくアルコール飲料だ…!
ポヨモンの干物をつまみにして、果実酒かなんかを飲んでいる!
ふざけやがって!
- 708 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:20:06.24 ID:FW7wa3IfO
- 今、バイオシミュレーション研究所のところにいる戦力は…
重機型成熟期のケンキモン(とその本体)。
植物型成長期のパルモン。
アテになるかならないか分からないファンビーモン。
ファイヤウォール破損中に次々と送り込まれてくるマルウェアの駆除に奔走しているチビマッシュモン軍団。
…フローティア島にいるトコモンと、ケンキモン(の本体)のデジタマ、ププモン達は戦力外だ。
使える武器は…
コマンドラモンの爆弾の予備が30発。
パルモンが貯蔵していた花粉を入れた袋が15袋。
あとは、鉄製の道具…ツルハシが2つ。
ショベルが2本ある。
「ツルハシやショベルって凶器としてもフツーに使えるよな。一応武装すりゃ武器の質ではこっちが上か」
「…カリアゲ、蛮族デジモン達の武器を良く見てみろ。骨棍棒じゃない」
「ん?武器っスかリーダー…。なんか光ってる…金属製かあれ!?」
「青銅の棒だ。銅とスズの合金。鉄には敵わないが、それでも強力な武器だ」
「銅…そーいやあいつら、なんか金属の精錬っぽいことやってたな…!」
…戦力差はあまりに絶望的だ。
「そ、そーだ!リーダー、外に助けを呼ぼうよ!パルタスさんとかスポンサーさんに!」
「そうだなクルエ。ジャスティファイヤとクロッソエレクトロニクスにグループ通話を繋ぐ!」
- 709 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:30:42.20 ID:FW7wa3IfO
- リーダーは、スポンサーさんとパルタス氏の二人に通話をした。
『ケン君が向かったニセ業者事件は罠だった…!?そっちの本丸が攻められているのか!我々が飼育している赤オタマモンを5匹ほど向かわせるかね?』
「それは助かるが…ネット回線トンネルの前に、プラチナスカモンとジャングルモジャモンが陣取って見張っている。外からの増援に対して出待ちをしているんだ。せっかくオタマモンを送り込んできてもらっても、おそらくトンネルを抜けた瞬間に青銅器の棍棒で叩き殺される」
『むぐ…うかつに増援も送れないのか』
「スポンサーさん。ケンキモンを防衛のために出動させたい。まだデジタマを一個しか産んでいないが構わないな?」
『勿論だ!「デジタマを2個産むまで出動禁止」と言ったのは、コマンドラモンを安全に殖やしてサービスの質と量を上げるためだ。その本拠地が攻め落とされたらサービス継続が不可能だ!ケンキモンを出撃させてくれ』
「わかった」
『だが…絶対に敵に鹵獲されてはいけない。理由は分かるね?』
…優秀なセキュリティデジモンは、優秀なクラッカーデジモンにも成り得る。
もしもコマンドラモンがクラッカーのもとで殖やされ、悪用されたらと思うと…気が気じゃない。
「…ああ。分かっている」
デジクオリアの画面から、ケンキモン(の本体)の声がした。
「敵には 決してつかまらない もし捕まったら その場で自爆する」
「気持ちは嬉しいが…自爆に使える火薬があるなら、敵にぶつけてやってくれ」
「わかった リーダー」
- 710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 15:34:32.68 ID:KkPwz/mPo
- か、勝てるわけがないぃ
- 711 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:41:42.63 ID:FW7wa3IfO
- 続いてパルタス氏から発言があった。
『状況は分かった!我々も至急増援を送ろう!どれだけ送れるかは上の許可次第になるがな!』
あれ。
トンネル前でジャングルモジャモンとプラチナスカモンが出待ちしてるから送れないって言ってなかったっけ。
『くだらん!トンネルから登場次第、その猿と大便どもをブチ殺してしまえばいい話だろう!』
それはそうだけど…
本当にできるなら助かるよ。
クルエがひょこっと顔を出した。
「スポンサーさん、ローグソフトウェア?ってところに救援は要請できないでしょーか?」
『…難しいだろうね。彼らの言うことは予想できる。「そんな契約はしていない」…その一言で終わりだろう』
カリアゲはそれを聞いて頭に血が登ったようだ。
「そりゃねえだろ!俺達が攻め落とされたら国内デジモンセキュリティ事業の一大事だぞ!協力してくれよ!」
『…彼らは今の状況を、「競合他社がひとつ潰れてくれるなら儲け物」と捉えるだろうねぇ』
「ウッソだろ…警察と提携してる会社がそんなんでいいのかよオイ…」
リーダーはため息をついた。
「…今挙げたものが集められる戦力のすべてか。この戦力差を埋めるには程遠そうだ」
いや。
まだ味方がいるよリーダー。
「なに?誰だ?」
僕だ!
「メガ…お前が?デジタルアソートは非戦闘用デジモンしかいないんじゃなかったのか?」
- 712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 15:44:00.83 ID:yMC032GAo
- 誰だ?
僕だ!ってかっこいいな
- 713 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 15:55:07.99 ID:FW7wa3IfO
- そうだ。
デジタルアソートの平和利用目的デジモンは、低コスト運用を前提にしているから、パワーもスピードも防御力も低い。
だけど、その力を戦いに活かせないわけじゃない。
さっきだってそうだったでしょ?
「確かに…仮称ガンマの検索能力のおかげで、チビマッシュモンの体内からマルウェアを発見できたな」
…『仮称デルタ』。
今のこの状況の数的不利を、わずかだけど誤魔化せる力を持つデジモンがいるんだ。
「なに!どこにいるんだ?」
今はケンといっしょにいる。
…デジヴァイスの中だよ。
「思い出した…仮称デルタは、デジヴァイスに搭載したデジクオリアシステムを管轄しているデジモンだな!…そいつが役に立つのか?」
確実に心強い味方になるはずだよ。
ただ…
呼べればの話だけど。
「ネット回線トンネルの前では敵が出待ちしているんだったな。すると、ネット回線を通らずに、直接パソコンにUSB接続して送り込む必要があるのか。今すぐにケンにここへ戻ってきてもらう必要があるな」
カリアゲは眉をしかめた。
「そういやケンは今どこにいるんだ?ちょっとケンに通話してみるか」
カリアゲはケンに電話をかけた。
「もしもしケン!こっちの本拠地がクラッカーに攻められてる!すぐに帰ってきてくれ!今どこにいるんだ!?」
早く戻ってきてケン…!
「何だって!?タクシーが渋滞に捕まって抜けれない!?」
えぇ!?
- 714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:03:26.15 ID:h74bn8I70
- 運にさえ見放された
- 715 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:12:04.21 ID:FW7wa3IfO
- 〜ケン視点〜
今私はタクシーに乗り、帰路についているところだが…
長い渋滞に捕まっていて、車が進まない。
そんな状況で、カリアゲから電話が来た。
研究所が攻められているので、今すぐに帰ってきて欲しいとのことだ。
早く帰りたいのはやまやまだ。
タクシーが進まない以上…ここで降りて、徒歩で走って帰るか…!?
『どれくらいかかるんだ!?』
徒歩だったら…、どれだけ全力で走っても1時間はかかる。
途中で渋滞がない道路を見つけて、そこでタクシー呼んでも…10分20分じゃ着かなさそうだ。
『どうして今日に限ってそんな!俺が車で迎えに行ってもムリか!?』
街中の信号機が異常な挙動をしてるらしい。
赤と青が同時に灯ったり、黄色を飛ばして急に赤と青が切り替わったり…無茶苦茶だ。
『なんだよそりゃ…』
カリアゲの落胆した声に続いて、シンの声が聞こえた。
『デジヴァイスってwifi使えるんスよね?ケンさんのスマホのデザリング機能で、仮称デルタを俺のスマホに無線で送ってもらってから、それをUSB接続でパソコンに送り込めばいいんじゃないッスか?』
おお、そっか。
それでいくか!?
『…残念だけど、ケン、シン。今のデジヴァイスは正規品じゃなくて試作品なんだ。システム全体の機能うち、どの領域までを本体のハード・ソフト側に仕込み、どこからを仮称デルタに持たせるかのバランスも調整中なんだ』
そ…それで?今はどうなのメガ。
『wifiの無線機能は、本体側じゃなくて仮称デルタの力で実現しているんだ。だから無線通信でデルタが移動を始めた途端、無線接続が切断されてしまうんだ』
な…なんだって!?
結局無線じゃ送れないのか!
- 716 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:25:11.27 ID:FW7wa3IfO
- シンの声がした。
『USB接続でのデータ通信はできるんスか?そっちもデルタが管轄してたら、デルタはどうやってもデジヴァイスから出られないってことになるッスね』
リーダーの声がした。
『いや、USB接続ならできるはずだ。デジヴァイス本体にその機能がなかったら、そもそもデルタを最初にデジヴァイス内に入れることすらできなかっただろうからな』
『なるほど。じゃあケンさんのスマホにデルタを移動して、そっちから無線通信で送ったらどうッスか?』
『それは別の問題で難しいよ。今デジヴァイス内にモリシェルモンを閉じ込めてる隔離チェンバーと、ブイモン達がいる飼育室の境界を維持する機能は、仮称デルタの力で実現してるんだ。だからデルタが抜けたら、ブイモンとモリシェルモンが同じ部屋で鉢合わせになる』
それは絶対させられない…!
くそ…
クラッカーデジモンが研究所のシステムを破壊し尽くす前に、研究所に仮称デルタを送り込むのはどうやっても無理か…!?
『いや…大丈夫だよケン。タクシーの外を見て』
…?
どういうこと?メガ…
私がきょとんとしていると、デジヴァイスから懐かしい声がした。
『はっはっは むかえに きたでござるよ ケンどの』
- 717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:28:46.19 ID:NmhOv+aA0
- おぉ再登場
- 718 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:30:39.07 ID:FW7wa3IfO
- 私はタクシーの外を見た。
すると、そこには…
四つの回転翼でホバリングしている、空中バイクがあった。
こ、これは!?
『せっしゃにのって いっしょにとぶで ござる』
前にデジタルアソートのデモンストレーションのときに乗った…
『デジモンの力で自動運転する空中バイク』だ!
『これで ひとっとびで ござるよ』
私はタクシーの運転手に料金を払い、タクシーを降りて、渋滞している道路から離れた。
そして空中バイクに乗り込んだ。
『しっかり つかまるで ござる』
空中バイクは、凄まじいスピードで飛行した!
時速100kmは出ている…!
『けんきゅうじょまで いっちょくせんで ござる はっはっは』
で、でもこれ…大丈夫なの?
道路交通法とか。
警察に捕まったら面倒なことになるんじゃ…
『しんぱい ごむようで ござる』
な、なんで…?
- 719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:32:46.36 ID:h74bn8I7o
- 渋滞に捕まってる人達ビックリしちゃう…
SNSのトレンド1位になっちゃうよ
- 720 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:35:49.78 ID:FW7wa3IfO
- 『なぜなら ガンマどのの けんさくのちからで けいさつのいちをさがし せっしゃの ナビゲートのちからで そこをさけて とんでるからで ござる』
…
す、すごい…凄すぎる。
デジタルアソートのデジモン達は、そこまで高度な機能を有してるのか。
それにしても…
仮称なんちゃらって呼び方は、流石に覚えづらい。
もう少し覚えやすい名前はないのだろうか?
君の名前なんだっけ?
『せっしゃは 仮称ニューでござるが… ふむ けんきゅうじょが こわれれば せっしゃたちも おしまい ケンどのと われわれは いちれんたくしょうで ござるな』
…そうなるね。
『ならば いずれ せっしゃにあたえられる デジモンとしてのなまえを なのらせてもらうで ござる』
助かるよ。
『せっしゃのなは…』
仮称ニューがそう言うと…
デジヴァイスの画面が起動し、見たことがないデジモンの姿が映し出された。
- 721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:37:33.22 ID:h74bn8I7o
- 一蓮托生なんて難しい言葉も覚えててえらいね
- 722 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:40:00.30 ID:FW7wa3IfO
- そこに映し出されたデジモンの姿は…
これまでに見たどのデジモンとも似ていなかった。
三頭身くらいの人型ではあるが…
全身が緑色で、薄い黄緑色のラインが入っている。
頭部には矢印のような形状の飾りがついていて…
両腕は、赤いマーカーの形状をしていた。
そう、例えるならば…
地図アプリで目的地を指し示すマーカーのような。
https://i.imgur.com/u8eA1Ba.jpg
『せっしゃの名は… アプリモンスターズ計画 試作ロット第二号 ナビモンでござる』
- 723 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/10(日) 16:40:27.57 ID:FW7wa3IfO
- つづく
- 724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:42:42.12 ID:h74bn8I7o
- 乙
まさかのアプモン
- 725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 16:43:38.67 ID:NmhOv+aA0
- 乙
お前だったのか
- 726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 17:45:23.42 ID:/ERb11350
- 乙
- 727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/10(日) 18:49:13.88 ID:R5lrPih90
- 乙
忍者のデジモンなのか……?と思ってたけどなるほど しっくり来るな
- 728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/11(月) 19:12:07.27 ID:lQqz9GYEo
- 週一更新ペースだとするとAAAとの決戦リアルタイムで長丁場になりそうね
- 729 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 20:59:12.30 ID:u0sxTrbTo
- 〜再び、メガ視点〜
ケンのことは仮称ニュー…ナビモンが迎えに行ってくれている。
5分もすればデジヴァイスの中にいる仮称デルタ、ドーガモンを連れてきてくれるはずだ。
だけど、それまでの間何もしなかったら、デジタル空間が破壊し尽くされてしまう!
今できることを、少しでもやろう!
シンがランドンシーフを持ってきた。
「ランドンシーフ起動しました!これでデジタル空間の好きなとこにいつでもデジタルゲート開けるッスよ!」
カリアゲがサムズアップした。
「ナイスだシン!あれ?どこにでも開けるってことはよ…蛮族デジモン達の足元に落とし穴みたいにゲートを開けば、全員デジタルワールドに追放できねえかな?」
残念だけどできないよ。
デジモンがゲートをくぐるかどうかは任意なんだ。
強制的にKICKすることはできない。
「うーんそっか…くっそ…」
リーダーがクルエの方を向いた。
「そうだ、デジタルワールドといえば…ベーダモンはどうだ!?ヤツの協力は得られないか!?」
「えっ…ベーダモンですか。いちおう声かけてみますね」
クルエはうちにある3機のデジドローンのうち2機目を起動し、ベーダモンへコンタクトを図った。
モニターにはベーダモンが寝床にしている樹が映る。
「ベーダモン様!聞こえる!?手を貸してほしいの!ピンチなんだ!」
すると木のうろからニュルニュルとベーダモンが出てきた。
ベーダモンはチャットを送ってきた。
『忙しいな 何事だ 余に何の用だ 研究者よ』
うおお、チャットを使いこなしている!
クルエとカリアゲはベーダモンに言葉を教えられたんだ。すごい。
- 730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:01:52.57 ID:r4FeTMSG0
- 様って…
様の概念教えれたのね
- 731 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:05:29.39 ID:u0sxTrbTo
- 「うちのサーバー内に敵デジモンがたくさん侵入してきたの!このままじゃ私達みんなやられちゃう!お願いします、力を貸してくださいベーダモン様!」
『面白そうなことになっているな 様子を見せろ』
クルエはデジドローンのプロジェクターで、うちのデジタル空間内で暴れている蛮族たちの姿を見せた。
『これはこれは 愉快な祭ではないか』
「愉快じゃないです!このままじゃみんなやられちゃう!どうか、何卒お助けくださいベーダモン様!」
『余に何をしろと?』
「こいつらを洗脳光線で、ベーダモン様の手駒にしてやってください!」
『それで 汝らは 彼奴らとどう交戦したのだ』
「いえ、まだ…」
『つまらん 自ら戦いもせず 最初から余に助けを求めるか 恥を知れ痴れ者が』
痴れ者!?
クルエがデジモンから痴れ者って呼ばれた!
なんてボキャブラリーだ。
『愚図め 思っていた以上につまらんな汝らは そんなことで滅びるのならさっさと滅びてしまえ』
「そ、そこをなんとか…!何でもしますからああぁ!」
クルエは頭をペコペコ下げている。
- 732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:07:18.99 ID:hIEhZy0Zo
- ん?今なんでもって
- 733 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:21:49.03 ID:u0sxTrbTo
- 『何でもするだと ならば 汝らの滅びの悲鳴でも聞かせるがいい』
「そ、そんなあ!」
ベーダモンは笑っている。
性格悪くないか?こいつ…!?
カリアゲがマイクを握った。
「ベーダモン!敵の数は圧倒的だ。こっちの戦力は向こうよりうんと少ねえ…圧倒的不利だ!」
『そうらしいな カリアゲ』
「だけど!俺達は死にものぐるいで戦う!そして絶対に勝つ!」
『ほう』
「だから見ていてくれ!俺達がAAAをぶっ倒すところを!」
『それは面白い あの調子に乗っている生意気な小僧を 汝らが叩き伏せ 地に顔を擦り付けさせるとでもいうのか』
「おうよ!やったらぁ!」
『それは愉快だ 彼奴の無様な姿を余に曝け出させるというなら それほどおかしなことはない しばらく見物してやる』
「サンキュー!ベーダモン!」
『おや 余の力を借りたいと懇願していたのではないのか クルエはそうだったが』
- 734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:22:40.42 ID:hIEhZy0Zo
- 主人公みたいなメンタルしてんなカリアゲ
- 735 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:25:02.48 ID:u0sxTrbTo
- 「自分達の身を護る戦いだからよ…最初からヨソを当てにするのはお門違いだろうよ」
『貴様はよく身の程をわきまえているな カリアゲ』
ベーダモンは腕を組んでいる。
『余の洗脳光線は 一度に2体も3体も同時に操ることはできぬ この数を相手にしても 余の下僕たちを繰り出せば勝てなくはないが つまらん しばらく戦って数を減らせ』
「ああ!」
『余を愉しませろ できなければ そのまま見殺しにする その方が愉快だ』
「オーケイ!なんとかしてみるさ!」
…いいの?
力を貸してもらえる感じじゃないけど。
リーダーは頷いている。
「これでいい。今大事なのは、ベーダモンをAAAの側につけないことだ。味方じゃなくても、敵でなければ十分だ」
いいんだこれで…
- 736 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:34:02.94 ID:u0sxTrbTo
- 他にできることは…
「さて…パルモン。進化だ!」
ええっ!?
どういうことカリアゲ!?
「パルモンは今の俺達の仲間では一番…マッシュモンを除けば一番長い間成長期のままでいる。だけどパルモンは、十分な戦闘経験を積んで、獲物を狩ってきた!今なら進化できるはずだ!」
そんなに狩りしてたっけ?
「釣りだよ!プカモンやスイムモンをたくさん釣ったし、ガニモンも倒した!」
そうだったね。
「パルモン!分かるか?今俺達が大ピンチだってことが!サラがやられて…ワームモンもやられたんだ。俺の大好きなワームモンが…!」
パルモンはしょんぼりしている。
「ワームモン いなくなった かなしい」
「このままじゃみんなもいなくなっちまう…!だから、頼むパルモン!俺達を護ってくれ!一緒に奴らを倒そう!」
「わるもの!たおす!」
「いくぞ!なるんだ…成熟期に!今こそ進化だ!パルモン!」
「しんか…する! みんなを まもる!」
おお!?
いけるのか!?マジで!?
「ぱるもん… しんかぁーー!」
パルモンは全身に力を入れて踏ん張った。
いいぞ、いけ!パルモン!
- 737 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:38:33.59 ID:u0sxTrbTo
- 「…かわんない」
…進化は起きなかった。
あれ。
なんかできそうなノリだったのに。
「なっ…!?くそ、行けると思ったのになー!何が足りないんだ!?」
「カリアゲパイセン…」
「シン!そんな目で俺を見るな!」
いや。
やれることは何でもやるべき状況だからいいと思うよ。
ナイストライ。
『プーックックックック…!フーッフフフフ…!』
ああっ!
ベーダモンが笑ってる!
ちくしょう…ウケを狙ってるわけじゃないのに。
- 738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:42:16.56 ID:cWTD845T0
- カリアゲほど研究者みたいなインテリ職が似合わない人材は中々いまい
- 739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/12(火) 21:44:54.17 ID:eiGfcAUe0
- Brave Heartのイントロ掛かってる雰囲気だったのにな
- 740 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:49:23.77 ID:u0sxTrbTo
- 「とはいえ…やれることはある。奴らの破壊を食い止めるために、今できることが!やるぞ、パルモン!」
「しんかを!?」
「そっちはいい!ゴニョゴニョ…」
「なるほど、わかった!じゅんびする!」
パルモンは何かの支度をし始めた。
デジタルゲートの中では、蛮族デジモン達がデジタル空間を破壊し、研究データを奪っている。
『くっくっく…どうした研究者ども!パルモンは?コマンドラモンは?ズバモンとルドモンはどうした?怖がって出てこれないか!くっくっく!臆病なセキュリティ共だ!とんだ看板倒れだなぁ?』
ね、ねえリーダー。
最悪の事態に備えて、研究データを予備の記憶装置にバックアップすべきじゃないかな?
「そうだな。できる限りリスクに備えよう。クラウドストレージへのデータ移送も始める!」
僕は最悪の事態に備えて、大事なデータのバックアップを始めた。
研究データで特に大事なものは、ネットワーク外部のクラウドストレージへ送ろう!
そして大容量データを転送すると…
デジクオリアの画面では、大容量データが光の塊として可視化され、ネット回線トンネルの方に向かって飛んでいくのが見えた。
- 741 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/12(火) 21:53:49.83 ID:u0sxTrbTo
- だが…
ネット回線トンネルの前で陣取っているプラチナスカモンが立ちふさがった。
プラチナスカモンは大口を開けて、転送中のバックアップデータを食べた!
「うんみゃああァ〜〜〜い!もっと!美味いデータを食わせてくれよォ!ギャーッハッハッハ!」
だめだ…
外部ストレージへの大容量データ転送は妨害されてしまう!
バックアップは内部だけでやるしかない…!
「じゅんび!できた!」
おおっ、準備いいかパルモン!
それじゃあ…やるぞ!
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