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デジタルモンスター研究報告会 season2 後編
- 575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/12(日) 20:09:27.94 ID:MuT4xusw0
- 乙
- 576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/14(火) 15:20:11.22 ID:QiOxEriro
- このチームいつも風評被害に悩まされる
- 577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/16(木) 22:18:46.83 ID:qlyiLdpf0
- マッシュモンの天下にも陰りが見えてきたかな
- 578 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/18(土) 20:18:21.96 ID:PLmZrDjhO
- ボスマッシュモンは、ワームモンの糸で捕縛されているクラッカーマッシュモンにチャットで問いかける。
『なぜ クラッカーに かたんし あくじを なす』
クラッカーマッシュモンはチャットで答えた。
『ひとは われわれの かみだ ひとのやくに たて そう わたしのそせんは おそわった』
ボスマッシュモンは苦い顔をする。
『だが おまえは ひとを こまらせている それは よくない』
クラッカーマッシュモンは負けじと言い返す。
『おまえこそ われらのあるじの せいぎのおこないを いつも じゃましている ひとを こまらせているのは おまえのほうだ』
正義…!?
クラッカーマッシュモンは、クラッカーの行いを正義と言ったのか、今!?
ボスマッシュモンは叱咤する。
『サイバーはんざいに せいぎなど あるものか』
クラッカーマッシュモンはペースを乱されずに返答した。
『われらのあるじは せかいのいびつな しはいこうぞうを ただそうとしている』
え…?
何だって…?
なんか大事なことを言ってそうなので、マッシュモン達のチャット文章を自動で漢字に変換するようセッティングした。
『世界の秩序は いびつだ かつて世界を暴力で支配し 搾取する側に回った者達が 今は 暴力を振るうなと かつて踏みつけた者達に言っている 支配と搾取の構造を 覆されたくないがためだけにだ 醜いとは 思わないか』
な、何を言ってるんだクラッカーマッシュモンは…
クラッカーにそう言えと吹き込まれたのか?
『我々は 我が主の 理想に 心から 心酔し 新たな神と 崇めた わたしの活動は 我が神の 理想を叶えるための ひとつに すぎない』
ボスマッシュモンは腕を組み、首を横に振った。
『クラッカーに そんな理想など 存在しない 彼らは 私利私欲のために カネを騙し取る 只の薄汚い犯罪者だ おまえは それらしい嘘に 騙されているだけだ』
そう否定されたクラッカーマッシュモンは、ボスマッシュモンを強く睨んだ。
- 579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 20:21:32.11 ID:RS+sr1Ito
- 宗教かな?
- 580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 20:24:10.42 ID:bdTMY9fU0
- マッシュモンの語彙力やべえな
- 581 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/18(土) 20:39:42.12 ID:PLmZrDjhO
- 『我が神を 否定すると いうのならば もう 戦いしか 残らない』
ボスマッシュモンは構えた。
『それしか ないようだ だが その状態で どうするつもりだ』
クラッカーマッシュモンはにやりと微笑んだ。
『こうする』
いつの間にか周囲に押し寄せてきていたズルモンやゲレモンなどの粘菌デジモン達が、クラッカーマッシュモンを包んだ。
驚くボスマッシュモンとブイモン。
そして粘菌デジモンの繭は、天井へと一気に登った。
く、しまった…!
スカモン大王になるのか…!?
前回のクレカ会社事件の出来事があって、全デジモンを持ち出すと本丸がもぬけの殻になってしまう危険性が見出された。
ゆえに今デジヴァイスに入れて連れてきた手持ちのデジモンは、ワームモン、ブイモン、ボスマッシュモン、そしてチビマッシュモンが数体…。以上だ。
ケンキモン、パルモン、オタマモン、プニモンは連れてきていない。
繭は天井で蠢いている。
中で合体し、大型の成熟期デジモンへと変態しているのだろう。
どうにかして、今のうちに繭を切り開いて内側からチビマッシュモン軍団で食い尽くしてしまえば勝てるが…
天井まで登る手段が今はない。
…どうする!?このまま指を咥えて見ていることしかできないのか…?
『ぼくに まかせて』
そうチャットを打ってきたのはワームモンだった。
- 582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 20:44:02.42 ID:PLxbB0XZo
- デジモンってどいつもこいつも表情豊かだや
- 583 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/18(土) 20:49:16.47 ID:PLmZrDjhO
- 『ブイモン あれにむけて』
「お、おう!」
ブイモンは、ワームモンがしがみついている腕を繭に向けた。
『ふりまわして』
「こ、こうか?」
ブイモンはワームモンごと腕を上に上げて、ぐるぐる回す。
ワームモンは糸を吐く。
すると、どんどん糸が伸び、空中で円を描く。
その直径はどんどん大きくなっていく。
そうか、ハンマー投げの要領で、遠心力を利用して天井まで糸を伸ばすのか!
いけ!ブイモン!
「おおおおりゃああ!」
ブイモンは、空中で回していた糸を、遠心力を利用して繭に向かって投げた。
ブイモンとワームモンの連携はぴったりだ。
糸は一発で見事に繭に当たった。
ナイス!すごいコントロールだ!
『さきっぽいがい ねばらないから このままのぼって!』
ボスマッシュモンはツルハシを持って、ワームモンが伸ばしたロープを登った。
どうやら本当に先端以外は粘着力がないようだ。ボスマッシュモンとその部下たちは、ロープを伝って繭へ近づいていく。
器用なことができるようになったな、ワームモン…。
そして賢くなった。
親のスティングモンに少しずつ近づいてきているのだろうか。
- 584 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/18(土) 21:03:13.94 ID:PLmZrDjhO
- ボスマッシュモンは、ツルハシを振って繭へ打ち込んだ。
…だが、パワーが足りない!
マッシュモンはそんなに腕力があるデジモンではない。
ツルハシを何度か打ち込んでいるが、なかなか繭を破壊できていないようだ。
ツルハシじゃだめだ!
虎の子のスナイモンの鎌を持ってきているので、それをボスマッシュモンへ渡した。
ボスマッシュモンは、鎌で繭を切り裂いた。
…だが、まだパワーが足りない…!
くそ、せめてブイモンやパルモンくらいのパワーがないとキツいか。
だがブイモンは今、下でロープを支えている…!
さすがに戦力が足りないんじゃ…!?
今回はネット回線のトンネルが粘菌デジモンで塞がれていないから、ネット経由で増援を要請できる。
このまま成熟期に進化されたら厄介だ。
やはり、ケンキモンに来てもらった方がいいのでは…!
だ、だめですかスポンサーさん!?
『リーダー君から話は聞いた。契約通り、ケンキモン君の出撃はまだ許可できない。デジタマを最低ふたつ産んでからでなくてはね』
くっ…
だめですか…!
- 585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 21:05:39.41 ID:YT0svTUZ0
- ロボット物で切り札の発動をなかなか承認してくれない長官みたいなシチュエーション
- 586 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/18(土) 21:10:05.88 ID:PLmZrDjhO
- 『だが…見張りマッシュモンサービスのニセモノなんてものがのさばったら、我々のブランドに大きな傷がつく。これは見過ごせないねぇ!代わりの増援を既に向かわせたよ!』
代わりの増援…!?
ネット回線のトンネルの方を見ると…
四足歩行のデジモンがペタペタと這ってやってきた。
そのデジモンは、そのまま壁にひっついて壁を登り、天井に貼りついた。
そして、繭へ向かって口から火炎放射を吐いた!
「クワァァ〜!」
粘菌デジモン達の繭がメラメラと燃えていく!
そのデジモンは紛れもなく…
サラマンダモン!
サラマンダモンが来たぞ!
『はっはっは、君達が保護した個体…サラだよ!パチモノの詐欺デジモンなんて焼き尽くしてしまおう!』
- 587 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/18(土) 21:10:49.69 ID:PLmZrDjhO
- つづく
- 588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 21:12:31.83 ID:PhdcFi0Io
- これは熱い
おつー
- 589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 21:12:39.99 ID:SXqvCYL+0
- 乙
- 590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 21:14:13.14 ID:OOUXga5So
- 乙
最高の助っ人が
- 591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 21:16:02.51 ID:YT0svTUZ0
- いつも頼れるスポンサーさん
乙
- 592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 21:18:58.65 ID:V274x+fn0
- 乙
すっかり頼りになるポジションになったもんだ
- 593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/18(土) 21:29:36.85 ID:KcrA6350O
- 乙
- 594 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 20:57:04.35 ID:q+yBML/gO
- 天井に貼り付いたサラは、粘菌の繭へ燃料を噴射し続ける。
繭は既に燃えているので、吐くのは火炎じゃなく燃料だけでいいのだ。
メラメラと燃える繭は…
突如、破裂した。
飛び散る破片の中から出てきたクラッカーマッシュモンは、落下しながら毒キノコをサラへ投げつけた。
毒キノコはサラの顔にポコっと当たった。
サラはそれを炎のオーラで焼き尽くそうとしたが…
突如、毒キノコは爆発した。
「クワアアア!?」
キノコの胞子が粉塵爆発を起こしたのか…
なかなかやるな。
大丈夫かサラ!?
「ク、クワアァ!」
サラは着地したクラッカーマッシュモンへ火炎放射を浴びせようとするが…
『まってくれ』
ボスマッシュモンがサラにチャットを送った。
「クワ!?」
火を吹くのを止めるサラ。
クラッカーマッシュモンは続けて毒キノコを投げようとした。
「おらああああぁぁ!」
ブイモンは、スナイモンの鎌でクラッカーマッシュモンを横一文字にぶった切った。
「マシイィイイィィイィイ!!」
クラッカーマッシュモンは、腰から上と下が真っ二つに分かれた。
決着だ。
- 595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 20:58:40.18 ID:tuPeNvyZo
- サラは誰かの喋ってることは理解は出来ても自分からチャット送るとかは出来ないだったか
- 596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 20:59:35.08 ID:HOSFUTuJ0
- ブイモン君全然有能なのにオンリーワンの個性がないから本人もコンプレックスになる
- 597 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 21:14:21.14 ID:q+yBML/gO
- 上半身と頭だけになったクラッカーマッシュモンは、じたばたと暴れる。
マッシュモンはパワーが弱い分、生命力が異常に強いのだ。
教員はその無惨な姿を見てショックを受けているようだ。
「あ、ああ…マッシュモンちゃん…!」
教員さん。
なぜ正規のセキュリティサービス業者と契約せず、こんな怪しい業者と契約したんですか?
先程パソコンを調べさせて頂きましたが…
このパソコンからマルウエアに感染し、生徒の保護者達へ自動でウィルス付きメールが送信されたようです。
そしてメールを開いてしまった親御さん達のパソコンへ、マルウエアの感染が広がっていった…。
もし誰か一人でも正規の見張りマッシュモンサービスと契約していれば、マルウエアの感染を検出して防止できました。
全員が同時に詐欺に引っかかるというのは流石におかしいのではないですか?
「…だって。正規の業者は料金が高いんですもの」
そんなにですか…?
「今は給食費払うのにすら苦労する親御さん達がいっぱいいるんです!それに学校だって、物価上がってる世の中で、あれこれの費用を頑張って頑張って切り詰めてるんです!それなのに世間では税金減らせ、公務員の給料減らせ、学校が使う金も減らせ減らせって…。だから少しでも負担を減らそうと思って…」
…正規より安い料金のサービスを選んだんですね。
「だってそれが普通でしょう!スーパーの野菜だって国産の高いやつより外国産の安いのを買う!車だって高い新車より安い中古車を買う!家だって新築より…ぜぇはぁ…。安いのを選ぶのは…今の時代…当たり前でしょう…!」
…
内心、この人教育者として大丈夫なんだろうかと思ったが…
言わないでおいた。
「良かれと思って…みんな大変だから…良かれと思ってやったんです…悪気はなかったんです…ねえ…悪いのって私ですか?また私だけが親御さん達から責められて責任負わされるんですか?ねえ?」
…悪いのはクラッカーですよ。
「…ですよねぇ…」
だからもう怪しい業者には騙されないでください。
- 598 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 21:40:06.54 ID:q+yBML/gO
- ブイモンはなにやら訝しげな顔をしている。
「まだまだオイラぜんぜんだめだな。サラマンダモンだっけ?こいつ、だれかしらないけど…こいつがたすけにきてくれなかったら、オイラたち、てきにかてなかった」
…そうだね。
「ぜんぜんよええよ…」
そんなことないよ。
ちゃんとブイモンが鎌でトドメ刺したじゃんか。
「おぜんだてしてもらっただけだよ…。ってか、なんでテキは、サラマンダモンみたいなさいしょっからつえーやつをおくってこねーんだ?」
前に一度、そこそこ強い成熟期デジモンを繰り出してきたときがあったよ。
アイスモンという奴だ。
まあ、サラマンダモンに瞬殺されたけど。
「まじか!つええな!」
そのアイスモンは、ランサムウェアデジモンの母体だったから、そいつを倒して以来しばらくの間ランサムウェアデジモンが出現しなくなった。
つまり…
クラッカー側にも強い成熟期デジモンはいるっちゃいるだろうけど、討伐されたり、もしくは侵入した端末がネットから遮断されて監禁されたら貴重な母体デジモンをロストしたり鹵獲されることになってしまう。
それはクラッカーデジモンを殖やすことにおいて大きなロスになる。
だからクラッカーは、迂闊に強いデジモンを送り込んでこれないみたいだ。
「…そっか。じゃあスカモンとかはなんなんだ?」
粘菌型デジモンは殖やすのが容易だし、合体すれば強くなるから、リスクが低いというわけだ。
「なるほどなー…」
- 599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 21:41:08.28 ID:74msPB3T0
- ブイモンちゃんと質問できてえらいね
- 600 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 21:46:05.15 ID:q+yBML/gO
- ボスマッシュモンは、クラッカーマッシュモンにしがみつく。
『な 何をする気だ』
『お前を 私に 吸収し 記憶を もらう』
『やめろ 私は消えるわけにはいかない 命をかけても 主の望みを叶えなくてはならない』
『なぜ それほどまでに 悪事に加担したがる』
ボスマッシュモンは、クラッカーマッシュモンを吸収しながらチャットで問いかける。
『何故とはなんだ ヒトは 我々の祖先に命の恵みとなる糧をくださった 神のごとき存在だ ヒトに恩返しをする それこそが 我々マッシュモンの使命ではないのか』
ボスマッシュモンははっとした。
『…人間は すきか』
クラッカーマッシュモンは答えた。
『当たり前だ 敬愛し 崇拝している』
…そうか。
そういうことだったのか。
デジモンはロボットでも奴隷でもヒーローでもない。
デジモンが人間に力を貸すときは、必ずデジモン側にその動機が存在している。
手を貸す動機がない場合、敵味方問わず襲いかかるファンビーモンや、働かないズバモンルドモンのようになるということだ。
そして、マッシュモン達の系統…
ボスマッシュモンやクラッカーマッシュモン、そしてスカモン達が持つ『人の命令に従う動機』は…
『崇拝』と『感謝』なんだ。
かつて我々のサーバーに住み着き、菌糸の城を建て、そこで我々のパソコンから齎された餌の恵み。
それを与えた我々を神と崇め、感謝をする気持ち。
我々の側も、クラッカー側も。
人間を『崇拝』していることが、人の命令に従う動機なんだ。
ボスマッシュモンは慈しむような表情をしながらチャットで語りかけた。
『身を委ねろ お前は 消えるわけではない 私とともに 記憶を維持し ひとつになって生きるのだ ヒトへ感謝し 恩返ししたいという気持ちは 私と 同じだ』
『…ああ、あああ』
『祈ろう ともに』
クラッカーマッシュモンは目を瞑った。
ボスマッシュモンへ吸収されていく…
- 601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 21:47:13.56 ID:gb+3l7lKo
- ナメック星人?
- 602 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 21:55:35.17 ID:q+yBML/gO
- その時。
突如、巨大なデジモンの大きな口が、ボスマッシュモン達を丸呑みにした。
な、なんだ!?
そこにいた巨大な影は…
https://i.imgur.com/Vg3dv4O.jpg
…モリシェルモン!
馬鹿な…なんでこいつが今、ここに!?
クラッカーが送り込んできたのか…?
だが、モリシェルモンは知能が低くて凶暴なデジモンだ。
間違っても人間の指示を聞くような奴じゃない!
「クワアアア!」
サラマンダモンは、天井からモリシェルモンに向かって火炎放射を放った。
「ウゴシャアアアアアア!」
モリシェルモンは、頭部から凄まじい勢いの水流を放った。
サラマンダモンの火炎放射は、燃料に火をともして噴射するものだ。
当然水圧で押し負ければ、火炎放射も押し負ける。
圧倒的な水圧で放たれたモリシェルモンの水流は、サラマンダモンの火炎放射を押し返し、天井のサラマンダモンにヒットした。
「クワアァ!?」
ファンデルワールス力を利用して天井にひっついていたサラマンダモンは、地面に落下する。
- 603 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 22:05:52.27 ID:q+yBML/gO
- や、やばい!
一旦逃げろ!
私はできるだけデジモン達へ近い位置へゲートを開いた。
サラマンダモンからゲートまでの距離は10mほどだ。
急いで入ってこい!
「ク、クワアァ!」
サラマンダモンはゲートに向かってペタペタと這ってくる。
「ウバシャアアアアアアア!」
モリシェルモンは、口を開くと…
凄まじい勢いで、何かを飛ばしてきた。
小さな貝殻を、水圧によって凄まじい勢いで飛ばしてきたのだ。
「グワッ!」
貝殻は、サラマンダモンの胸部を深々と貫き、吹き飛ばした。
5mほど転がったサラマンダモン。
「ゴブ…ゴッ…」
あ、ああ…やばい。
あの位置は、気管支を脊椎ごとぶち抜かれている。
夥しい量の出血をするサラマンダモン。
『サラ!!!』
スポンサーさんの叫び声が、端末から聞こえてきた。
「あ、ああ、あ…」
ブイモンは、モリシェルモンの威圧感に気圧され、震えている。
ブイモンの左腕にしがみついているワームモンも、目を見開いて仰天している。
やばい…力の差がありすぎる!
逃げろブイモン!
「か…かえせ…マッシュモンかえせよ…!」
ブイモンはモリシェルモンを睨み返す。
「う…うあああ!おれだって!やれるんだ!」
ブイモンは鎌を持ってモリシェルモンに飛びかかる。
ダメだ!
逃げろブイモン!
- 604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 22:07:04.73 ID:gb+3l7lKo
- ぜ、全滅しちゃあ
- 605 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 22:23:32.67 ID:q+yBML/gO
- 危篤のサラマンダモンは…
ぷるぷると震えながら、デジタマを一個産んだ。
まるで、己の命を後世に託すかのように。
「うあああーーー!ぶったおしてやる!」
モリシェルモンは、頭部を殻に引っ込めると、貝殻を高速回転させて宙に浮いた。
そして、凄まじい勢いでブイモンにタックルしてきた。
「う、うわあぁ!」
ブイモンは、咄嗟に…
左腕でガードした。
凄まじい衝撃音とともに、ブイモンは吹き飛ばされた。
吹き飛んだブイモンは、何かにぶつかった。
ゴチャ、という嫌な音がした。
「うぐぐ…いてて…!」
ブイモンはむくりと起き上がった。
良かった、どうやら無事なようだ。
…無事?
いや、そんなはずはない。
あれ程の衝撃を受けて、無事なはずがないのだ。
- 606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 22:24:56.62 ID:t6g9JCcpo
- 死んじゃうのサラ…
- 607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 22:25:29.31 ID:t91fR8450
- まさか…
- 608 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 22:35:02.42 ID:q+yBML/gO
- 「くそっ…あいつ…つええ!どうやってたたかえば…」
その時。
ブイモンの左腕から、何かがずるりと落ちた。
腹部が痛々しく破裂して内臓が飛び出たワームモンだった。
「え…?わ、ワームモン…?」
ブイモンが後ろを向くと…
ブイモンが叩きつけられた場所には、割れたデジタマがあった。
ブイモンがあの攻撃の直撃を受け、吹っ飛ばされて地面に叩きつけられても生き延びることができたのは…
ワームモンと、サラのデジタマが、その衝撃を受けたからだったのだ。
「あ、ああぁあああああ!ワームモン!ワームモン!!!」
ブイモンはワームモンの体を揺すっている。
「マシマーーーー!!」
デジタルゲートからチビマッシュモン達が飛び出してきた。
そして、サラマンダモン、ワームモン、割れたデジタマをゲート内に運び込んだ。
ブイモン!!!
まずは体制を立て直すぞ!
今のままじゃ勝てない!
作戦がなければ!
「…あ、あぁ…」
ブイモンは、チビマッシュモン達に手を引かれて、ゲート内へ入った。
「ウシャオオォォオオオオオーーー!!」
…ワームモンの体液やサラマンダモンの血痕が残るデジタル空間に、モリシェルモンの怒声が反響した。
- 609 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/20(月) 22:35:57.57 ID:q+yBML/gO
- つづく
- 610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 22:36:34.56 ID:oYI/oNQWo
- えっぐ…
- 611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 22:36:57.99 ID:MfqcdFPL0
- 乙
一気にみんな死んじゃった…
- 612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 22:44:32.24 ID:xQoFTR1h0
- 乙
- 613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/20(月) 23:37:21.25 ID:74msPB3To
- 乙
先が気になる展開だ
- 614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/21(火) 14:58:05.57 ID:A8CW63/l0
- このショッキングな引きでまた長く待つのは中々辛いな
いっぱい死んじゃって泣きそ
- 615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/22(水) 15:19:30.90 ID:gNk27YRh0
- ブイモンと炎のデジタマ……!
- 616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/11/22(水) 16:26:23.08 ID:FD5Pxt08O
- サラマンダモンは勇気の血統……っ!
- 617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/22(水) 16:50:57.44 ID:PZldEBBXo
- 展開予想止めろと散々言われたろ
- 618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/22(水) 17:14:31.77 ID:+P7jX1p/0
- ハーメルン専門になった方が平和になるかも知れないと時折思う
ここだと覗きに行かなくてもこういうの目に入っちゃうんだよな
- 619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/22(水) 19:00:43.63 ID:vibb/e/30
- 自分の頭の中に留めとけばいい予想や願望をわざわざ言う必要性なんもないよな
その上何度もするなと言われてることで
子供じゃないんだからさ…
- 620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/23(木) 12:47:51.37 ID:Be++OYR00
- 面白かったら展開はなんだって脳内の予想が当たろうが外れようがどっちでも良いし望み願望なんてせいぜいもっと見たいずっと見たいってくらいだ
- 621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/24(金) 13:59:19.94 ID:WdXCgPnto
- デジモン達がよく戦うネットの中って大体アニメ版ロックマンエグゼの電脳空間みたいな感じかな?
- 622 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/25(土) 16:07:56.22 ID:9HMLjPYuO
- デジタル空間からデジヴァイスに撤退してきたパートナーデジモン達。
だが、様相は酷いものであった。
腹部が破裂して内臓が飛び出ているワームモン。
胸部に空いた大きな穴から血泡を吹いているサラマンダモン。
そして、割れてしまったサラマンダモンのデジタマ。
それらを見て呆然としているブイモン。
…ボスマッシュモンは、モリシェルモンに丸呑みにされてしまった。
モリシェルモンの腹を掻っ捌けば救出できるかもしれないが、それができる戦力は我々にはない。
心身ともに平気そうなのはチビマッシュモン達だけだ。
…一瞬の出来事だった。
ほんの一瞬のうちに、我々のパートナー達は戦闘不能になった。
「あ、ああ…オイラが…オイラがよけいなことしたせいで…ワームモン…!」
ブイモンはワームモンを揺さぶっている。
だがワームモンは虫の息だ。
…これはもう助からない。
「ケン!たすけてくれ!ワームモンがしんじゃう!」
…ごめん…。
今のデジヴァイス内の設備じゃ救えない。
「…ちくしょう!オイラがワームモンをたてにしたせいで…!オイラが…オイラがワームモンを…こんなにしたんだ…!」
…ブイモンはモリシェルモンのタックルを受けそうになったとき、咄嗟に左腕でガードをした。
ワームモンがくっついている左腕で、だ。
そのおかげでブイモンは深いダメージを負わずに済んだが…
盾になったワームモンは、致命傷を受けてしまった。
「オイラが…ワームモンを…ころしたんだ…!」
それは違う…
それは違うぞブイモン!
「ちがわねーよ…ケンのいうこときいて、すぐににげてれば…ワームモンは…!オイラが!バカだから!オイラのせいで!!」
ブイモン!!
自分を責めるな!
「じゃあだれのせいなんだよ!」
それは決まっている。
…モリシェルモンが…
…いや…
なんでモリシェルモンがここにいる?
クラッカーが飼育しているのか?こいつを?
あり得ない。
モリシェルモンは人間の指示を聞くようなデジモンじゃない。
- 623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 16:10:00.60 ID:MIzSRhbko
- 人間と変わらないレベルの感情があるばかりに心傷つきまくるブイモンかわいそ…
- 624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 16:17:08.38 ID:lyq9rMPI0
- 教員さんどんな気持ちでこの凄惨な光景を見せつけられてるんだ
- 625 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/25(土) 16:30:41.64 ID:9HMLjPYuO
- デジタル空間内のモリシェルモンは、クラッカーマッシュモンが残した繭をバリバリと食べている。
「ムシャムシャ!ウオォ!ウシャオオォ!」
あの繭は、猛毒をもつ粘菌デジモンの集合体だ。
まともなデジモンは食べることなど不可能だ。
先程丸呑みにされてしまったマッシュモン達も体内に毒を持っており、野生環境下で彼らを襲うデジモンはほぼ居ない。
だが、モリシェルモンは違う。
デジタルワールドにいる野生のモリシェルモンは、カラツキヌメモンが外敵に襲われた時に発するフェロモンを嗅ぎ取り、その外敵を倒して食う習性を持つ。
だが、そうでない平時の場合は…
野生のマッシュモンを襲って食べているのである。
超強力な消化吸収能力をもつヌメモンを祖先にもつモリシェルモンは、祖先譲りの強力な消化吸収能力を受け継いでいる。
そのため、マッシュモン由来の毒物が効かない。
マッシュモンから進化した粘菌デジモンがもつ毒も同じ成分なので、効かないようだ。
そしてリアルワールドの動物達は基本的に、「自分だけが消化できる毒物を美味と感じる」ようになる傾向をもつ。
たとえば、アルコールはほとんどの動物にとって猛毒である。
犬や猫は、アルコールを多少舐めただけでも容易に致死量に達してしまうという。
だが、人間やハムスターは、その猛毒であるアルコールを分解する酵素を持つ。
ゆえに、酵母菌によって発酵しアルコールを含んだ食物を独占することができるのだ。
もちろんアルコールを接種しぎると人間の体にも害となる。ゆえにアルコールは人体にとっても軽微な毒素であることは間違いない。
接種しなくて済むならば、接種しないほうがいいのだ。
それでは人間は、軽毒であるアルコールを避けるだろうか?
…否。
むしろ人間は、人体にとっても多少有毒であるはずのアルコールを(個人差はあれど)大変好む。
自分からアルコール…酒類を生成し、それを販売し、積極的に飲むほどアルコールが大好きなのだ。
同様に、唐辛子に含まれるカプサイシンも多くの動物にとって有害な毒物だが、人間はそれを香辛料として栽培するほど好む。
人間だけではない。
昆虫の蚕は、アルカロイド系の毒素を含む桑の葉を積極的に好んで食べる。
リスやキツネは、イボテン酸という毒素を含むベニテングタケを積極的に好んで食べる。
このように、「自分達だけが消化できる毒」は、あらゆる動物にとって好物になるのだ。
モリシェルモンもまた、猛毒のマッシュモンを積極的に好んで食べる習性があるのだ。
我々人間がビールや香辛料を好むのと同じように。
- 626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 16:32:34.40 ID:4co2tymk0
- そういう仕組みなんだ…
- 627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 16:33:06.72 ID:lyq9rMPI0
- はえ〜
- 628 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/25(土) 16:47:44.29 ID:9HMLjPYuO
- 繭を食べ終えたモリシェルモンは…
デジタル空間内に散らばっている様々なデータを食べ始めた。
…教員さん、大変です…
パソコン内のデータが次々と食べられていってます!
「…え?、へぇっ!?あ、ああ…あなた達の、その、パートナー?さん達の方が…大変な状況じゃないかと思うんですが…」
まあそれはそうですけども…!
そっちはそっちで、消されたら困るデータがパソコン内にたくさんあるんじゃないですか?
「!あ、あります!期限が近い作りかけの資料とか、生徒たちの成績のデータとか!あわわ…!食べないでぇぇぇ!」
デジタルワールドで高度に進化した多くのデジモン達は、デジタルワールドに住むデジタル生命体を消化吸収するのに特化した消化器官を獲得する傾向がある。
その方が高い栄養価が得られるからだ。
故に、こういったデータを直接食べようとしない種が多い。
だがモリシェルモンの祖先は、生態系ピラミッド最下層のスカベンジャー(分解者)であるヌメモンだ。
デジモンの腐乱死体や糞、朽ち木、腐葉土、他もろもろの有機物ゴミ残渣をなんでも食べる。
それだけの悪食だ。
多くのデジモンが捨てた「データを直接食べる性質」を再び取り戻しているのは不自然なことじゃない。
奇妙な感覚だ。
我々がデジタルワールドを最初に観測したとき、最初に観察したデジモンが、シャコモンから進化したヌメモンだった。
我々が観察したシャコモンは、海中でガニモンに襲われて捕食されそうになったことがあった。
それを見ていた私は、咄嗟にゴミデータをぶちまけて煙幕を張り、シャコモンを助けてしまった。
野生の生存競争に干渉すべきでないと知りながら、ついシャコモンを観察したいという欲求が上回り、助けてしまったのだ。
…あのとき私がシャコモンを助けていなければ、地上にヌメモンが繁栄することはなかったのかもしれない。
そして、それが進化したモリシェルモンが、今目の前に現れることもなかったのかもしれない。
あのとき、迂闊に自然に干渉した軽率な行動の報いが、今私達に業として降り掛かってきたのだろうか…。
…なんて感傷に浸っている場合じゃない!
ワームモンとサラが死にそうになっており、モリシェルモンがパソコン内のデータを食い散らかしているんだ!
ど…どうにかしないと!
- 629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 16:49:20.13 ID:4co2tymko
- また懐かしい話を
- 630 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/25(土) 17:00:24.47 ID:9HMLjPYuO
- 「クワ…ゴ…ゴボ…!」
サラマンダモンは、胸部の穴を粘液で塞いだ。
サラマンダモンのバイタルはどんどん低下している…。
だが、低いレベルで安定してきているようにも見える
有尾目の両生類は高い再生能力をもつ。
オオサンショウウオは、手足が千切れてもしばらく待てば生えてくるという。
ウーパールーパーは、心臓や脳、鰓などの急所や循環器を切除されても再生することができるほど高い再生能力がある。
それらに似た特徴をもつサラマンダモン…
もしかしたら、この傷からも生還できるかみしれない。
バイタルが低下しているのは、自ら仮死状態になって再生に専念するためなのかもしれない…。
だが、ワームモンの方は、体液が流出し続けており、心拍がどんどん低下している。
「ごめんな、ワームモン…!オイラとワームモンがいっしょにテキとたたかってるとき…、イトをだしたりしてやくにたってるのは、いつもワームモンのほうだった…。オイラはワームモンをはこんだりしてるだけで…だれでもできることしか、してなかった…」
ぶ、ブイモン…
「イトがつよいワームモンじゃなく…やくたたずでバカな、オイラがそうなってたほうが…よかったんだ…!」
ワームモンは、危篤状態でありながら、泣きじゃくるブイモンにチャットを一通だけ送った。
『ブイモンが たすかって よかった うれしい』
ワームモンはにっこりと、弱々しく笑みを浮かべた。
「ク…ワァァ…!」
突如、サラマンダモンがよろよろと、ワームモン及び割れたデジタマの方へ這ってきた。
な、なんだ…!?
- 631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 17:02:01.40 ID:NlOcfCdDo
- ワームモンお前自分が死にそうなときでもまだ他人のことを…
- 632 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/25(土) 17:12:00.91 ID:9HMLjPYuO
- サラマンダモンは、ワームモンとデジタマに覆いかぶさると…
「グ…ゴボ…クワァァ…!」
その体が、突如光を発した。
こ、これは一体…!
危篤状態のワームモンも、それに呼応するかのように体から光を発した。
ふたつの光は、ひとつに溶け合い…
割れたデジタマを覆い始めた。
やがて光が消えると…
そこには、一回り大きくなった白いデジタマがあった。
「…ワームモン…?」
ブイモンは、大きなデジタマにそっと手を触れる。
「…どうなったんだ?ワームモン?サラマンダモン…?おい…?」
ブイモンは混乱しているようだ。
何が起こったのか理解できていないのだろう。
私も分からない。
サラマンダモンとワームモンが、破壊されたデジタマと融合し、修復したのか…?
…これは、まさか…
ジョグレス進化か?
かつて瀕死のスターモンとウッドモン、たくさんのゴツモン達が、互いの命を補い合うために融合したのと同じように…。
ワームモンとサラマンダモンも。
死にゆく自らの肉体を構成するデータを使って…
これから生まれ育つはずだったデジタマに、再び命を与えた、ということなのだろうか…。
「…」
ブイモンは、涙を零しながら…
何も言わずに、大きなデジタマを優しく抱きしめた。
「グスッ…グスッ…」
教員さんが涙を流している。
ご、ごめんなさい教員さん。パソコンを荒らしてるモリシェルモンもどうにかしないといけないのに。
「グスッ…いえ、デジモンってプログラムかなんかだと思ってたのに…こんなに必死に生きて、戦ってたなんて…!グスッ…!」
…クラッカーマッシュモンのことは災難でしたね。
次は正規品のちゃんとした見張りマッシュモンを可愛がってあげてください。
「そうします…グスッ…」
- 633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 17:12:52.34 ID:NlOcfCdDo
- 実質3体のジョグレス
- 634 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/25(土) 17:23:14.14 ID:9HMLjPYuO
- 「…ケン…マッシュモンは…?だめなのか、もう…」
ボスマッシュモンはもう救出できそうにない…。
「ちくしょう…!マッシュモンまで…ちくしょう…!」
…ボスマッシュモンとは、数々の戦いを共に乗り越えてきた。
彼が消えてしまったのは…
やはり悲しい。
『ケン そちらのじょうきょうは どうだ』
ん?
デジヴァイスにチャットが来た。
送信元は…
マッシュモン!?
あ、あれ?
ボスマッシュモンは今、食べられたはずじゃ?
『そっちにいたのは わたしときおくを 同期した たんまつだ わたしのほんたいは ビオトープのちかにはりめぐらされている 菌糸だ』
あ…そういえばそんなこと言ってたっけ。
メガから聞いた。
真・ボスマッシュモンというのがビオトープにいると。
『そちらのわたしから きおくを マージできないのは ざんねんだ ケン なにがあったか きかせてくれ』
…私は、リーダーやスポンサーさんと通話を繋ぎながら、真・ボスマッシュモンへ状況を報告した。
スポンサーさんが発言した。
『…サラは、デジタマになったのだね。…よく戦ってくれた』
リーダーが発言した。
『そうか、ワームモンが…。残念だ…。…おい、落ち着けカリアゲ、今はモリシェルモンをどうにかしなければいけないんだ、おいカリアゲ!落ち着け!』
…そうだ。
このモリシェルモンをどうにかしなければ…。
だが、戦って倒すことはできそうにない。
- 635 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/25(土) 17:27:06.87 ID:9HMLjPYuO
- 『ケン、冷静になれ。闇雲にぶつかって、戦って倒すだけが排除の手段ではないはずだ。ケンはいつも、敵デジモンのルーツや、生態、形質を分析し…有効な手段で問題を解決してきた。オレはケンのそういうところを評価している』
…リーダー…。
そうだ。
眼の前のモリシェルモンを戦って倒すことだけが、問題解決の手段じゃない。
分析するんだ。
なぜモリシェルモンここにいるのか…。
いや…
今ここに現れたのが、なぜモリシェルモンなのか。
それを考えれば…
どうすれば排除できるのか、わかるかもしれない。
- 636 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/25(土) 17:27:33.69 ID:9HMLjPYuO
- 続く
- 637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 17:29:54.10 ID:NlOcfCdDo
- 乙
戦力低下しちゃった現状で果たしてどうするのか
- 638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 17:34:23.69 ID:ngRZ8F1Wo
- 乙
マッシュモンは進化する必要ないくらい便利だな
- 639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 17:49:51.00 ID:4co2tymk0
- 乙
教員さんみたいに激務でヒスってる人のメンタルをケアする方法
もっと大変そうなとこを見せる
- 640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 19:32:31.37 ID:WxgF3SV70
- 乙
- 641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/25(土) 21:41:16.96 ID:WfVyzZE5o
- 先が気になるねえ
- 642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 16:31:37.80 ID:Akfy2wM5o
- モリシェルモンがこんな絶対勝てなさそうな驚異として描かれるの初めて見た
- 643 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/26(日) 20:31:24.48 ID:EHFw9EIrO
- まず、モリシェルモンがここにいる理由だが…
大きく分けて『偶然』か『作為的』かの2通りが考えられる。
偶然というと…
たとえば、デジタルワールドとの間に偶然デジタルゲートがつながり、野生デジモンが入ってくるケースだ。
実際、デジタルワールドとどこかのサーバーの間に偶然デジタルゲートが開き、デジモンが侵入してくることはたまにある。
カンナギエンタープライズが開発した、デジタルワールドへのゲートを開く技術は、その現象を模倣したものだ。
しかし、自然現象で開くデジタルゲートは極めて小さなものだ。
幼年期デジモンが一匹通れるかどうかってサイズしかない。
では、野生の幼年期デジモンが偶然このパソコン内へ住み着き、ちょうど今モリシェルモンへ進化したのだろうか?
それは有り得ないとは言い切れないが…考えにくい。
デジタル空間に住み着いたデジモンは、環境負荷が加わったり頻繁に戦闘する機会がない限り、DPの高い成熟期デジモンへ進化することはないと考えられている。
となれば、偶然ではなく作為的なものである可能性が高いのだが…
もしもクラッカーが育成して差し向けた刺客だとしたら、「なぜモリシェルモンなのか?」という点が疑問だ。
モリシェルモンはDPが高くて大量の餌を食べるデジモンだ。
その上、本能に従って生きるので、人間の指示を覚えて理解するようなデジモンじゃない。
クラッカーがデジモンを道具扱いするにしても…
モリシェルモンは、その道具としての適性が低いのだ。
そんなデジモンを、クラッカーが飼育しようとしたらどうなるか。
今我々の目の前にいる個体がやっているように、パソコン内のデータを食い散らかすだろう。
故に、戦闘用の刺客デジモンを育成するにしても、もっと適任となるデジモンがいくらでもいるはずだ。
分からない…
なぜモリシェルモンがここにいるんだ…?
- 644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 20:34:09.23 ID:gdijYNvzo
- 来たか
一見真相解明不可能な事件だが
- 645 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/26(日) 20:49:32.76 ID:EHFw9EIrO
- 『…そういうことか。分かったよ』
そう言ったのは…
スポンサーさんだった。
『おそらくこの個体は、野生のモリシェルモンだね。貝殻に苔が生えている』
あ…
よく見たら確かにそうですね。
色々あって気が動転していたせいか気づきませんでした。
しかし、どうして野生のモリシェルモンがここに…?
『簡単な話だよ。クラッカーはデジタルを開き、野生のモリシェルモンをここへ呼び寄せた。ただそれだけのことだよ』
呼び寄せた?
どうやって…!
『野生動物を呼び寄せる方法なんてそう難しいことじゃない。餌を設置して、おびき寄せればいいのさ』
餌…
まさか。
『彼らはモリシェルモンの大好物である粘菌デジモンを飼育しているんだろう?それを餌にしてモリシェルモンをおびき寄せ、デジタルゲートをくぐらせて…、ここへ送り込んだ、ということだろうね』
…はい?
『何か筋が通らない点があったかね?』
……………………。
理解はできます。
できますが…………。
私では、思い至らなかった。その可能性に。
余りにも…
あまりにも、ひどすぎる話じゃないですか。
そんなのは。
『クラッカーが我々のセキュリティデジモンを暴力で排除したならば、極論を言えばクラッカーが自分で強力なデジモンを飼育する必要すらなかったんだ』
…。
『強力で凶暴な野生デジモンを、我々のデジモンにぶつければ、目的は果たせるんだ。別に指示を聞かないデジモンだろうが構わない。「目の前のデジモンを捕食しろ」なんて、命令するまでもないだろうからね』
我々が、ファンビーモンを育てて本能のままに暴れさせたという戦術を…
クラッカーはさらに悪辣なやり方で、やり返してきたってことですか。
『…とんでもない奴らだねぇ』
- 646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 20:51:50.93 ID:IedIRtBWo
- この絶望感
- 647 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/26(日) 21:15:22.21 ID:EHFw9EIrO
- 仮にこのモリシェルモンを、頑張って討伐したところで…
『クラッカー側にとっては何一つ損害にはならないだろうね。なにせあの個体は、クラッカーがコストを費やして育てたデジモンではないのだから。失うものはなにもない』
…。
クラッカーが、刺客としてモリシェルモンを選んだ理由は…。
『野生デジモンを誘き寄せたいとしても、餌を用意できなくては実現できないだろうね。もしもガルルモンのような、普通の肉食デジモンをおびき寄せたいならば、普通の動物型デジモンを餌にする必要があるね』
普通の動物型デジモン…。
トコモンとかプニモンみたいな幼年期でしょうか。
『そうだね。だが、それにはコストがかかりすぎる。餌にする幼年期デジモンを殖やして育て、しっかりと言語教育を施して、「モリシェルモンのところへ行ってから、デジタルゲートに向かって逃げてこい」なんて指示をするのは、労力とリターンが釣り合わないだろう。そもそもそんな死を前提とした指示に餌デジモン達が素直に従うとは限らない。指示を無視してデジタルゲートのない方向へ逃げれば計画はパーだ』
それはそうですね…。
成功確率が低すぎる。
『だが彼らの手駒には、司令塔の意のままに動く粘菌デジモン達がいる。楽にどんどん殖やすことができて、死を恐れない粘菌デジモンが。しかし、普通の動物デジモンは粘菌デジモン達を餌として認識しない』
まあ食いつかないでしょうね…。
ガルルモンとかグレイモンをゲレモンやズルモンの餌で誘き寄せようと思っても絶対食いつかない。
『ただし一種だけ…デジタルワールドでただ一種だけ。粘菌デジモンを大好物とし、それを餌にすることで誘き寄せることができる強力な肉食デジモンがいる。それがモリシェルモンだ』
…。
『君の前に突如出現した刺客がモリシェルモンである理由は…これで説明できないかな?』
…おみそれしました。
私には、そこまで考えつきませんでした。
何故なんでしょうね。
『…犯罪心理学というやつだ。君はデジモンや生物、シミュレーションの知識はあっても、連中のドス黒い悪意に対する理解が不十分かもしれないね』
…不勉強ですね、私は。
『無理もないさ。君はもともと世の中を良くするための研究をしている研究者なのだから。あんなゴミクズ野郎共への理解が不足していたとしても、責められる謂れはないさ』
…だけど、こういう手を想定できていれば…
サラも、ワームモンも、失わずに済んだはずです。
『…それはそうだねぇ…』
- 648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 21:17:54.80 ID:RogmJunX0
- その純粋さが優秀さの源だから捨てることもできない
- 649 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/11/26(日) 21:30:48.46 ID:EHFw9EIrO
- 一旦ここまで
- 650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 21:31:43.35 ID:BFJhlmfl0
- 一旦乙
- 651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 21:32:35.87 ID:RogmJunX0
- 乙
- 652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/26(日) 21:40:29.96 ID:4m9pjeCH0
- 乙
- 653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/27(月) 01:08:54.40 ID:Zu0Y0Pb4o
- こんなこと繰り返されたら研究チームどころか全ての合法組織のデジモン全滅しちゃうな
- 654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/27(月) 17:19:57.05 ID:CjFOpSoJ0
- 絶望展開が続くのはなかなか堪えるな
光が欲しい
- 655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/27(月) 19:22:47.94 ID:Wq86tkHY0
- リアリティのある賢しい悪が描かれてるのは貴重だと思うし好き
賢しさが徹底してるとこうなるんだな……というのはある
- 656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/28(火) 20:38:28.55 ID:u1/M0glIo
- 一見詰んでるように見えるけどここからどうなるのか気になるねえ
- 657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/29(水) 18:58:30.93 ID:2BsEGeR6o
- 分析した結果分かったことは
もうダメだぁ…おしまいだぁ…
好き放題やれる犯罪者サイドはいつも強いね
- 658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/29(水) 19:20:04.14 ID:d8mLnZCQ0
- 合法でも違法でも脱法でもなくこれからの時代は「無法」がトレンドだぜ
- 659 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 14:22:27.23 ID:EBsv9197o
- 『…さて。ここまで言えば、ケン君なら…あのモリシェルモンをどうにかする方法は、パッと思いつくだろう?』
…方法はあります。
クラッカーの手口の逆をやればいい。
すなわち…
デジタルゲートを開き、チビマッシュモンを餌にして、このパソコンから誘き出せばいい。
デジヴァイスの中のデジタル空間には、幸いなことに今ブイモン達がいるのとは別に、もう一個部屋がある。
危険な存在を隔離するための隔離チェンバーが。
そっちへ誘き出せば、とりあえず除去はできます。
『…やれるかね?』
…。
スポンサーさんにそう問われたが…
正直、絶対にやりたくない。
これまでに我々が、チビマッシュモンを犠牲にするような戦術を一切やってこなかったかと問われたら嘘になる。
ディノヒューモンの農園からブイモンとワームモンのデジタマを採取したときは、揺動のためにチビマッシュモンを放ち、犠牲にしたことがあった。
クレカ事件のときは威力偵察のために、ズバモンとルドモンで武装したスカモンにチビマッシュモンをぶつけたことがあった。
だが、その時はどちらも、ボスマッシュモンが自らその役割を買い、チビマッシュモン達へ指示をしてくれていた。
私自身が指示を出したわけではない。
ワームモンとサラマンダモンを失った直後の今…
チビマッシュモン達へ、私がその指令を出すのは…
…正直、今は無理だ。
私のこの感情は、セキュリティサービスの運営としては、大きく間違っているものなのだろう。
非情にならなくてはいけないときがある。それが今なのだろう。
それでも…
指示ができない。
- 660 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 14:31:32.78 ID:EBsv9197o
- 『素晴らしい!』
え?
『いい判断だ。その通り。君はそんなことをやらなくていい。チビマッシュモンを犠牲にして、モリシェルモンを追い払うことなんてやらなくていいんだ。君の判断は100%正しい!』
な、何故ですかスポンサーさん?
教員さんも驚いてますよ、今のその発言に。
『だって我々は慈善活動家じゃないんだ!その教員は、悪徳業者に自分からダマされて、安物買いの銭失いをしたってだけのことだろう!個人情報流出事件の真相は暴かれ、我々の汚名は払拭できた。ならもう帰ってくればいい!ハーッハッハッハ!』
それを聞いた教員さんは目を見開いた。
「そっ…そんな!で、でもそれじゃあ私達のデータは!?」
『んん?依頼は受け付けますよ!ただし、我々が提供する正規のサービスとこの場で契約することが条件だ。そうすればモリシェルモンもどうにかしましょう。どうしますかな?』
す…スポンサーさん。
こんなところでも営業活動ですか。
『我々が投資したのはビジネスのためだ。慈善活動は結構だが、それは利益に繋げなくてはならない。でなければ私もカネを送れなくなるんだ』
…それはそうですけども…。
- 661 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 14:41:39.81 ID:EBsv9197o
- 「し、しかし上に許可を取らないと…この場で勝手に契約なんてできませんよ…!そんなことしたらまた怒られる…!」
『それは結構!では上に許可を取ってから契約の可否を判断すればよいでしょう。我々が動くのもそれを待つことにします』
「え、ええ…しかしそれでは、データをどんどん食べられちゃうんじゃ…」
『そうなりますなぁ』
「…ど、どうにかしてくれませんか?」
『タダで?』
「…できれば…」
『貴方は我々に、何の対価も求めずに受けているチビマッシュモン達の命を犠牲にして、あなた達の間違いの尻拭いをしろと言っているのですかな?』
「…」
『イエスかノーかで答えていただきたい!』
「…イエスです」
…。
地獄だ、この空気…。
- 662 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:00:55.69 ID:EBsv9197o
- 『…オホン。では柔軟に解決する手段を提供しましょう!その名も「デジタル・マーセナリー」です』
「マーセナリー…傭兵?」
『ええ!気軽にお求めいただけるデジモン退治サービスです。悪質なクラッカーデジモンをすぐに退治する、一回限りの契約です!どうですか?』
「…代金はいくらになります?」
『見積りはこんなとこですな。ここから増えも減りもしないでしょう』
そう言い、スポンサーさんは見積もり金額を表示した。
「ひっ…こんなに!?」
『我々とてデジモンの貴重な命を失うこと前提の作戦なわけですから、これ以上お安くはできません。しかしあなたのポケットマネーでお支払いできない金額ではないでしょう?理想的な落とし所ではないですか?あなたは上から必要以上に叱られたり、責任を取らされたるせずに済むし、モリシェルモンによるデータ捕食被害を最小限に抑えられる。我々は対価が保証されるのですぐに動ける。win-winではないですかな?』
「うぅ…。とほほ…。今月厳しいなぁ…」
『ですがご安心を!今回は!!特別に!!お安くするチャンスをご提供します!一ヶ月以内に見張りマッシュモンサービスのサブスクにご契約頂けたら、なんと今回のデジタルマーセナリの料金は50%キャッシュバックします!!お得です!!どうでしょう!今がチャンス、今しかないですよ!』
「お、お安く…!?今しかない!?でしたら是非!よろしくお願いします」
『素晴らしいいぃ!素晴らしい判断、勇気あるご決断だ!では契約書にデジタルサインをお願いします!』
ま…マジか!
スポンサーさんすげぇ…!
しかし、教員さんは不憫だな…身銭を切らされることになるとは。
お金がなくて余裕のない者ほど損をしやすい…。
なんか…ちょっと世の中の構造を垣間見た気がする。
『ケンくん、我々はまだ一回限りの契約で済ませるプランやキャッシュバックを提示するだけ、まだ温情な方だよ。ローグソフトウェアだったらサブスクの本契約を必須で結ばせうえで緊急対応料金を上乗せしてくるからね』
…ローグソフトウェアって警察と提携してるとこですよね。大丈夫なんですかそこは?
『値段相応いい働きをするよ』
…そうなんですか。
- 663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 15:06:44.06 ID:8jgK0JzI0
- すげえぜスポンサーさん
- 664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 15:10:08.06 ID:5W/AENyu0
- 一教員に払えて、今月厳しくなるぐらいで済む金額なら良心的と言えるかも
- 665 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:15:55.88 ID:EBsv9197o
- 『さて…ケン君。教員さんは我々に正式に依頼をした。こちらは契約通りの働きをしなくてはならない…いいね?』
…はい。
『おっと、リーダー君からケン君に言いたいことがあるそうだ』
リーダー?
どうしましたか?
『ケン、今からそちらに真・ボスマッシュモンの分身が向かう。戦闘には向かないチビマッシュモンサイズの分身だ。そいつに指揮を執らせるといい』
…来てくれるんですか、ボスマッシュモンが。
『ああ。ボスマッシュモンは言葉だけじゃなく、菌糸を使った神経接続で直接チビマッシュモンの脳へ指示を送れる。ケンが口で指示するよりも成功確率は上がるだろう』
…分かりました。
ありがとう…ボスマッシュモン。
やがて、小さなボスマッシュモンが、ネット回線のトンネルからやって来た。
そうして、私は隔離チェンバーへのデジタルゲートを開いた。
ボスマッシュモンは、チビマッシュモンを囮にして、隔離チェンバーへモリシェルモンを誘引き寄せ、収納した。
…デジタルゲートを閉じた。
これで排除完了だ。
「あ…ありがとうございました!」
では教員さん、この口座に2週間以内に代金を振り込んでください。
「…あ、あの。もうちょっとお安くなりませんか?」
でしたら学校側で見張りマッシュモンサービスと契約して、キャッシュバックを狙うといいですよ。
「…どうにかしてみます」
- 666 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:33:35.60 ID:EBsv9197o
- さて…
帰ろうブイモン、みんなのところへ。
みんなが待ってる。
どうする?
今回は粘菌デジモンがネット回線トンネルを塞いでいる可能性を危惧して、ブイモン達にはデジヴァイスに入って来てもらったけど…
帰路は安全だから、先にネット回線から研究所に戻っても大丈夫だよ。
「…」
ブイモンは、大きなデジタマを抱きしめている。
ワームモンを失って落ち込んでいる様子だ。
…私もつらい。
「…オイラ…ほんとになんのやくにもたってねえ…。てきのマッシュモンをたおしたのはサラマンダモンだし、モリシェルモンをおっぱらったのはうちのボスマッシュモンだし…。オイラはなにもせずに、ずっとひっこんでればよかったんだ…。そうすれば…ワームモンは、こんなことに…!ならなかった…!」
…自分を責めなくていいよ、ブイモン。
君は自分ができることを十分やった。
もっと強くなって、次に…
「…もういいよ…。やくたたずのオイラは、みんなのあしひっぱってばっかで…。オイラよりよっぽどやくにたつワームモンをしなせて…。オイラのほうがしねばよかったんだ…」
そ、そんなこと言わないで…
「…」
…ブイモンは、ショックから立ち直るのに時間が要りそうだ。
このままデジヴァイスに入れて、一緒に帰ろう。
『われわれは さきに かえる』
おや、ボスマッシュモンは先にネット回線から帰るんだね。
- 667 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:48:03.20 ID:EBsv9197o
- 『ケンのかみよ わたしにはブイモンのきもちが わからない』
ボスマッシュモン…?
『わたしは なかまをうしなうことの おそれ かなしみ そのかんじょうが りかいできない』
そうなの…?
結構前、うちのサーバーで菌糸の要塞に住んでた頃は、外に出るのが怖いと言ってた気がするけども。
『わたしは 菌糸のデジモンだ わたしのからだを こうせいする 菌糸 いっぽんいっぽんが マッシュモンだ そして マッシュモンは ひびしんかして バージョンアップしている』
そういや遺伝子もけっこう変異してきてるらしいね。
『そうして しんかしていくなかで われわれは なかまをうしなう かなしみを うしなって しまった チビマッシュモンを ぎせいにするたびに いちいちかなしんでは いられないからだ』
…そうか。
今まで色々な作戦で、チビマッシュモンが犠牲になってきたけども…
人と同じメンタルなら、同胞の個体が死んで悲しくないわけがないんだ。
だけど、ボスマッシュモンがそれを悲しまなくなったのは…
『仲間が死んでも悲しまない』ように心が進化したからか。
つまり…進化を重ねる中で、ボスマッシュモンは仲間が死ぬ悲しみを失ったんだ。
『そうだ ケンのかみよ わたしには ブイモンを はげませない かれを たのむ』
…分かったよ。
そう言うと、ボスマッシュモンはチビマッシュモン達と共に、ネット回線から研究所へ先に帰っていった。
- 668 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 15:57:50.89 ID:EBsv9197o
- 駅のホームで電車を待っている間、スポンサーさんに通話してみた。
『ご苦労さまだったね、ケン君。どうしたのかね?』
サラマンダモンを失ってしまいましたが…
スポンサーさんは悲しいですか?
『それは悲しいさ!サラは赤オタマモンのデジタマを産んでくれた。炎を吐く優秀なセキュリティデジモンの赤オタマモンをね。それが失われたとなると、オタマモンを売れなくなる。大きな損失だ』
そういう意味ではなく。
『…男はね、人前で涙を見せないものだよ』
…はい。
『君のデジヴァイスの隔離チェンバーにいるモリシェルモンには恨みはないが…クラッカーには然るべき報いを必ず与えるさ』
…そうしましょう。いつか、きっと。
- 669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 16:02:18.08 ID:LNx12oIFo
- マッシュモンの変化にはそういう背景が
- 670 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:10:24.48 ID:EBsv9197o
- …
〜バイオシミュレーション研究所 メガ視点〜
つい先程、ケンからワームモンの訃報が伝えられた。
カリアゲを筆頭とした研究チームはみんな悲しんでいる。
僕も悲しい。
ケンは今、ブイモンとともに鉄道で帰路についているらしい。
デジクオリアの画面を見ると、ネット回線からチビマッシュモンと小型ボスマッシュモンが帰ってきた。
チビマッシュモンの数体は、モリシェルモンを誘き出すために犠牲になったようだ。
…おかえり、ボスマッシュモン。
君は無事だったようで嬉しい。
さて、クレカ事件のときは、ブイモンやパルモン、コマンドラモン達が不在のタイミングで、我々の研究所にクラッカーの差し金であるキャンドモン達が攻めてきたっけ。
あれはクラッカーによって、文書作成ソフトの脆弱性を突かれてマルウェアを送り込まれたせいで、デジモン伝送路を繋げられてしまったんだ。
今回は同じ過ちは繰り返さない。
脆弱性対策はしっかりやっている。
そして何より、ネット回線のトンネルをチビマッシュモンに見張らせている。
ネット回線を行き来しているデータの中に、悪質なマルウェアが存在している場合、どうやらデジモンはそれを肉眼で視認できるらしい。
デジモンは、人間が開発したセキュリティソフトのファイヤウォール以上の脅威検出能力と対処能力を持っている。
万が一、他のソフトの脆弱性を突かれたとしても…
そこにマルウェアが送り込まれてきたら、見張りマッシュモンがパクっと食べて対処してくれる。
だから今度は、同じ手は食わない。
- 671 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:25:47.31 ID:EBsv9197o
- 「マシマシ〜!」
見張りマッシュモンが交代をするようだ。
同じ個体が長時間ずっと集中して見張りをしていると、集中力が落ちて脅威検出精度が下がりかねない。
だから、複数の個体で交代で見張りをしている。
…それにしても、ワームモンを失ったのは本当に惜しい。
ワームモンには、セキュリティデジモンという役割だけじゃなく、デジクロス・システムの被検体としての役割があった。
成長期であるワームモンのうちはそれが叶わなくとも、成熟期へ進化してからデジクロスの力を獲得してほしかった。
デジクロスシステムは、普段は少ない代謝量のデジモンが一時的に高いDPを獲得する、戦闘力ブーストの力だ。
それは維持コストを安くしつつ、いざというときに強大な力でクラッカーデジモンを排除できるという、セキュリティデジモンとして理想的な力だ。
将来的に、各企業は自社のサーバーを守るためにセキュリティデジモンを飼育するようになるかもしれない。
だが、そのセキュリティデジモンがシューティングスターモンのようにとんでもなく高いDPを持ったデジモンの場合、食べる餌の量も凄まじいことになり、それだけ維持コストがかかってしまう。
零細企業には大きな負担になってしまう。
だから、ワームモンは僕達の未来がかかっていたといえる。
デジクロスシステムを搭載したセキュリティデジモンの量産という未来が。
しかし…
その機会は失われてしまった。
僕が代表を務めるデジタルアソートのデジモン達は、戦闘向きじゃない。
ワームモンの代わりはやれないんだ。
- 672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 16:29:38.52 ID:+S8oVpPw0
- 疲労しちゃうのは生物でもあるが故の欠点かデジモン
- 673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/02(土) 16:31:06.76 ID:HqPwB6BhO
- マッシュモン、あいつはウィルス種の祖先になりえる存在かもしれない。
仲間を失った時の悲しみを理解できない時点で。
- 674 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/02(土) 16:36:34.47 ID:EBsv9197o
- カリアゲが机に突っ伏している。
「…どうすりゃ良かったのかな、俺達…。やることやってたつもりだったのに…」
…精神論、根性論で語っても仕方ないよ、カリアゲ。
方法論で考えよう。
今回は、敵の手口があまりにも巧妙すぎた。
というよりは…コロンブスの卵だね。
粘菌デジモンを餌にして、野生のモリシェルモンを呼び寄せ、デジタルゲートを潜らせてけしかけるという手口自体は至極簡単なものだけど…
その手口をクラッカーより先に閃き、対策することができていなかった。
ワームモンを失った原因があるとするならそれだよ、きっと。
「なんなんだよクラッカーの野郎!!性格が悪すぎるだろうが!!そんなん普通思いつかねえよ!!」
うん…
正直、あまりにも悪どすぎて、まともな人間じゃ思いつかないのは確かだ。
人間が起こすサイバー犯罪なら、犯人にどんな悪意があろうと、手口はだいたい過去のデータから分析されているから、「既に見つかっている手口の延長線上」で考えれば先回りして対処はできる。
だけど…
デジモンを使ったサイバー犯罪は、「過去のデータの積み重ね」がない。
だから「過去の手口の延長線上」を考えようとしても、先回りはできない。
クラッカーより悪どいことを考えられる人間が、セキュリティ側にいないと…
クラッカーにより「新たな手口の発明」には対処しきれないのかも。
「誰ができるんだよそんなこと…」
…無理だよねえ。
「いや、もう一つ…確実な手段がある。後手に回っても対処できる手段がな」
リーダー…?
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