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デジタルモンスター研究報告会 season2

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7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/15(土) 01:17:27.76 ID:VHWhAq+RO
研究所では早速、デジモンサイバー犯罪の対策について議論が始まった。

リーダーはプロジェクターで、私が書いてる議事録を映しながら、司会をしている。
「さて…まずは。何か案のある奴はいるか?」

リーダーがそう言うが…なかなか案が挙がらない。
そりゃまあ、どうすりゃいいかなんていきなり聞かれても分からんよな。最適解をいきなり出せるはずがない。


さて…
こういう時に有効な、議論を進めるためのテクニックがある。

私は挙手して発言した。
「ハッキングデジモンが出現したら、コマンドラモンとマッシュモンをその場へ向かわせて退治させるのはどうでしょうかー?」


一同はしばらく、静まり返ったが…
やがてカリアゲが口を開いた。
「な、何言ってんだ!これから敵がどんどん増えるかもしれないし、強くなっていくかもしれないぞ!この二体だけじゃやられちまうぞ!」


続いてメガが発言した。
「前の戦いで勝てたのは運が良かったと思う。次同じ条件、同じ面子で戦ったら、相手はもうスカモン大王のコクピットを曝すような真似はしないだろう。勝てないよ」


クルエも続いて挙手した。
「そもそも後手にまわるのがビミョーですよね〜。こないだの事件も結局情報は盗まれましたし。未然に防ぎたいですよねー、犯人とっちめたいですねー」


新人のシンも続いて言った。
「相手はきっともっと強いデジモン出してくるッスよ!戦力強化は必須ッス!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 01:19:25.01 ID:v5q9IUsDo
なるほど
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/15(土) 01:26:26.76 ID:VHWhAq+RO
一通り聞いた後、私は発言した。
「なるほど。つまり今必要なのは、こういうことですね」

議事録に箇条書きをした。

@セキュリティデジモンの頭数を増やして、パワーアップする必要がある

A相手にセキュリティデジモンの弱点を突かれないように、多様な戦略を揃える必要がある

Bそもそもハッキングデジモンの侵入自体を阻止したり検知する仕組みが必要

C敵の動向を探り、手口の変化に警戒する必要がある


4つの箇条書きを書き終えた後、私は続けて話した。
「兎にも角にも、まずは今挙がった4つの課題を解決しないことには仕方ないってことですね」


「おぉー」
一同はそれっぽい指針が見えてきたことに感心しているようだ。


…これが、発言者が少ない会議を活発にさせるテクニック。
「最初にあえて、すぐできるけどダメな案」を出す。

人は誰でも変なこと言って批判されて恥をかきたくないのだ。だからアイデアをいきなり出すのに抵抗を持つ者は多い。

だが、あえて即効性があるけどダメな案を出すことで、他の参加者は「批判する側」に回れる。
というか、そうしないと最悪の案に決まってしまうという危機感を煽る。


そうすることで参加者は、「批判される側」でなく「批判する側」になれるので、ためらいなく発言できるようになるのだ。


しかしまあ…君らいい大人だろ。
私にこんな子供騙しみたいなテクを使わせなくても活発に議論してほしいぞ。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/15(土) 01:33:13.33 ID:VHWhAq+RO
リーダーが腕組みしながら口を開いた。
「よくまとめたなケン。他にも色々考えるべきことはあるだろうが、取っ掛かりはこんなもんでいいだろう。まずはこれら4つの課題に対して『今できること』を挙げていくことで、ロードマップを組み立てていこう」

カリアゲがつぶやく。
「今できることかー…。あんま多くなさそうだな」

クルエがため息をついた。
「なんか一気に全部満たす近道とかないすかねー」


メガがきっぱり言った。
「無いでしょ」


千里の道も一歩から。
地道に研究を進めつつ、その時点でできる精一杯の運用を試行錯誤していくしかない。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/15(土) 01:33:49.93 ID:VHWhAq+RO
〜つづく〜
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 01:37:13.62 ID:4GnAqwJI0
乙です
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 01:37:37.88 ID:orqqURr5o

続編待ってた
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 01:43:31.02 ID:WdvH6ju1o
おつ
続編ありがとう!
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 02:21:39.05 ID:HYaWYHmb0
生命体の定義は「エネルギー代謝を行い自己保存と自己複製が可能な物質系」だから遺伝子や魂魄の有無は無関係
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 07:23:24.21 ID:KuwapxTRo
そこら辺はseason1で触れられてる
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 08:08:20.88 ID:xKfs3G2T0
ハッカーのデジモンがマッシュモンの遺伝子デジモンだけならまだ勝機ありそうなのにデジタルワールドにも干渉できて他のデジモンも捕まえられるし手段選ばないからなあ…
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 08:35:43.56 ID:orZ5u5TT0
スカモン並みの戦闘力と知恵持ちのユニットが量産されたらたまったもんじゃないね
一見クソ野郎なのに主に従順っぽいから仲間割れは期待できなくて
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/15(土) 18:00:19.51 ID:DsxLRtf9o
>>6
世界の行く末を左右するかもしれないのに少々さびしい組織だ
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 00:53:25.43 ID:jEMBp6duO
我々はこの指針を実現するための具体的な施策について議論を始めた。

まずはリーダーが口を開いた。
「スカモンの背後にいる者が何者かは分からないが…敵は少ない方が…いや、増えない方がいい。そして戦いはなるべく、戦う前に勝てる方がいい。武力的衝突を最小限に抑えながらハッカーを排除する…それが最も合理的だ」

その通りだ。

「えぇっと…どういうことだ?」
カリアゲが首を傾げる。

「ようはデジクオリアやデジモンキャプチャーの販売規制を真っ先にやるべきってことじゃないですかー?デジモン達にケンカしてもらうよりもー」
クルエが髪をくるくる巻いて弄りながら答えた。

リーダーは頷いている。
「そうだ。結局ハッカー共がハッキング用デジモンを育成するには、有償ライセンスで純正品のデジクオリアを使用しているからだ。ならば、その供給元を抑えてしまえばいい」

デジクオリアを販売元といえばカンナギ・エンタープライズですよね。日本発の多国籍企業の。

「ああ。悪用される危険性がある以上、デジクオリアの販売規制をかけるべきだ。俺はそう思う」

私もそう思います。


「…そう言われると、ボクもそう思う」
メガも同意見のようだ。

「デジモンちゃん達が必要以上に傷付くのはやですもんねー」
クルエも賛同してくれた。

「よ…よし!カンナギ・エンタープライズへ交渉しに行こう!」
満場一致のようだ。
うちの研究所には他にもメンバーが多数いるが、そちらでも特に異論は出なかったようだ。

それなりにお偉い公務員の方や、スポンサーにも同行してもらい、我々はカンナギ・エンタープライズへ向かった。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 00:56:11.00 ID:om/Ov7i1o
エンタープライズと聞くとサイスル思い出す
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 01:03:48.12 ID:jEMBp6duO


カンナギ・エンタープライズ日本支社のオフィスに着くと、女性職員が出迎えた。

「初めましてぇ〜♪社長秘書の岸部エリカと申します〜♪よろしくお願いしまぁす♪」

岸部エリカと名乗った女性は大変な美人であった。

「うひょー!すげー美人!」
おいカリアゲ!なんつうこと言うんだ!
令和の時代にそんな発言をする奴があるかバカ!

「あっすんませんつい…でへへ…」

「ま〜ぁ♪褒められて嬉しいです〜♪よろしくお願いしますねぇ♪」

岸部さんは微笑んでいる。

スポンサーさんも微笑んでいるが、二人のやりとりを見て汗をダラッダラにかいている。
そりゃそうだ。

うーん…カリアゲには後で説教だな。コンプライアンスとか色々。





応接室にて、リーダーはデジクオリア販売規制の相談をした。

危険なハッカーがデジモンを悪用したら、世界規模の混乱が起きかねない。

だから、デジクオリアのライセンスを発行する相手を、政府管轄の組織による許可制にしてほしい…
そう頼んだ。


岸部さんは答えた。
「でもウチ多国籍企業ですよぉ?海外支社でライセンス発行をするときは、どちらさんから許可もらうんですかぁ?」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 01:11:36.98 ID:jEMBp6duO
メガはメガネをいじりながら答えた。
「その場合はその国の支社からライセンスを発行すれば…」

「あらぁ、うちの支社はさすがに世界196ヵ国すべてにあるわけじゃないんです〜♪ですからムリですね♪」

うぅ〜ん。そりゃ確かにそうだ。

カリアゲはうーんと唸ってから口を開いたは。
「じゃあよ…何かしらのさ、国際機関の承認を得なきゃダメってことにしたらどうだ?」

「いち企業のいち製品のライセンス発行を、国際機関が管理?うふふ、ずいぶん大げさですねぇ」

岸部は口に手の甲を当てながらくすくすと笑っている。

「まあ分かってると思いますけどぉ、うちの会社のお客さんが減るだけの提案をされて、はいそうですねって首を縦に振るメリット、ありませんよねぇ?」

そう来たか…。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 01:21:36.78 ID:jEMBp6duO
リーダーは険しい表情で返答する。
「自分が何を言っているか分かっているのか…?あなた達は、犯罪に加担することも厭わないと言ってるのか!?」

「道具を正しく使う人もいれば、悪用する人もいる。それはデジモンに限らず、コンピューター全部そうでしょう?Wind●wsの購入に国際機関の許可いりますぅ?」

「むむ…」
あのリーダーが苦戦している…。

「誤解しないでください、うちは別に、悪用を推奨してはいませんよぉ?」

「ならばなぜ賛同してくれない!?」

「だって…あなた達がいう承認機関とやらが、そもそも信用できませんもの♪」

「!?」

「仮にあなた達がデジクオリア使用の承認権を独占したら…あなた達の暴走を誰が止められるんですかぁ?」

「暴走だと…?」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 01:26:34.46 ID:xQI6KUwoo
スポンサーさんもだが商売に関わる人は中々痛いところをついてくる
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 01:26:37.11 ID:jEMBp6duO
「そうですよぉ、承認機関がごく一部の人達の手に渡ったら、もうその機関は世界中に好き放題デジモンでサイバー攻撃し放題じゃないですか♪誰も止められなくなりますよ♪」

「馬鹿げたことを…そんなことは…」
そこまで言って、リーダーは言葉を止めた。

「そんなことは?」

「…」

り、リーダー?
断言してくださいよそこは。

「うふふふふ♪賢い方ですねリーダーさんは♪その通り、あなた達の提案って、ようはサイバー戦争の道具を自分たちが独占して、世界をコントロールしたいって言ってるのと同じです♪うっふふふ♪」

岸部は笑っている。


クルエがつんつんと私の服の袖をつっついてきた。
どうしました?
「ケンさん…私、あの女嫌いです」

まあ…わからんでもないけどさ…
ヒソヒソ話だとしてもさ、今言うなよ。

27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 01:36:40.84 ID:jEMBp6duO
リーダーは苦い顔をしている。
「たしかに…あなたの言うことには一理ある。武力の行使権をひとつの組織が独占し、誰も対抗できなくなる…それは、理想的ではないかもしれない」

「そうですねぇ♪」

「だが…世界中でデジモンを利用した犯罪者どもが野放しになるよりはずっとマシなはずだ!よく考えてみろ!デジモンによるサイバー攻撃から全てのネットユーザーを守るために、どれだけ大量のセキュリティデジモン達を維持しなくてはならないのか!?」

リーダーは熱くなっている。

「維持費用は莫大になるぞ!うちもスパコンを駆使してようやく餌を捻出してるというのに!全てのネットユーザーがそのコストを捻出しなくてはならなくなる!そうでなければつけ入れれるからな。よく考えてみるんだ…地獄だろう、そんなのは!」

「ふふ…♪」

「ならば、たとえ武力の独占という形になってでも、混沌より秩序を目指すべきだ。その方が結果的に、皆がコスト捻出のために苦労せずに済むはずだろう!」

「しゅーじんのじれんま、ですねぇ♪」

「そうだ。だから頼む…。今ならまだ間に合う!パンドラの箱に鍵をかけてくれ!」

「まぁ♪素敵な言い回し♪」

必死に頭を下げるリーダーに対して、岸部はくすくすと笑みを浮かべるだけだ。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 01:39:08.02 ID:/eC/I58io
リーダーさん本当にマッシュモン達に非人道的なことやれてるのか?
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 01:44:53.41 ID:jEMBp6duO
「じゃあ、こうしましょう」

岸部は自身の口元に指を添えた。

「ライセンスの料金を、1000倍に上げます♪それでいいなら構いませんよ♪」

「ひゃっ…!?」
リーダーは青ざめている。
今だって安くないライセンス料金を払っているのだ。具体的には書かないけど…。
1000倍になったら流石に厳しすぎる。研究所そのものが維持できるかってレベルの話になってくる。

「だってそうでしょう?その話を飲むなら、本来私達が得られた収益が千分のイチくらいになっちゃうじゃないですか♪そんなにデジクオリアの価値を感じて独り占めしたいのなら、それくらい払ってもらわないとぉ♪釣り合いませんよぉ♪」

岸部は脚を組み替えながら余裕の表情をしている。


カリアゲがは不愉快そうな顔をしている。
「そ、そんな無理難題…!足元みやがって!平和より金のほうが大事なのかよ!」

「それはこっちのセリフですけどぉ?うっふふふ、お金がかさむなら平和を諦めるんですかぁ?政府からの補助金とかあれば払えるんじゃないですかぁ?」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 01:47:10.69 ID:JWfDKO7i0
本当にピンチの時いつも頼りになったコマンドラモンさん助けて
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 01:48:33.75 ID:8WM9F/jVo
もはや国家予算
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 01:51:44.32 ID:jEMBp6duO
す、スポンサーさん、どう思います?

「ね、値段交渉をしようじゃないか。1000倍は厳しいが…100倍くらいで手を打つのはどうかね?」

「だぁ〜め♪頼み方がカワイくなかったから、1100倍にしますね♪」

「元より増えた!?むむ…」
スポンサーは頭を抱えている。

「…その額になると、この場で即決はできない。というか…そこまで値上げすると、君達カンナギエンタープライズにとっても損な結果になるんじゃないかね?誰も買わなくなるぞ。そもそもデジモンの研究自体やれなくなってしまう。君達が今ほどほど丁度良く得ているはずの収益もなくなるのではないかね?」

「ん…」
岸部が眉をピクっと言わせた。
おおっ効いている…?
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 02:00:41.84 ID:jEMBp6duO
「そうだ。分かるだろう?今の値段を1000倍に釣り上げたからといって、君達の収益が今の1000倍になるわけではない!そんな値段は払えない、と誰もがデジモン研究事業から撤退し、結果的に収益が一万分の一になることだって十分あり得るだろう!分かっているのかね君ィ!」

スポンサーさんは自信満々にそう告げた。

「む…く…」
岸部は眉をヒクヒクさせている。
おお、効いてる!効いてるぞ!スポンサーさんが優勢だ!

「だが我々は、今の100倍になるのなら…どうにか払えるぞ!デジクオリアを使ったビジネスやサービスを黒字化するビジョンだってある。どうだね、お互いwin-winなのはこのあたりじゃないかね?」

「…それは、…」

「ハッハッハ!だいたいねぇ。我々は払えるが…多国籍企業の君達が急にデジクオリアの値段を100倍に吊り上げたら、よその国からどう思われるかね!株価暴落が間違いなく起こるぞ、んん?いいのかね君ぃ?」

「…っ!」
岸部はスカートをぎゅっと握っている。

足元を見て墓穴を掘ったせいで自爆してるんじゃないかあの人…?
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 02:05:06.23 ID:jEMBp6duO
「どうだね?カンナギエンタープライズが株価暴落を起こさずにライセンス料金を吊り上げるなら…50…いや…25倍でギリギリってとこだろう。どうだね?お互いの落とし所はその辺じゃないかね?君達はライセンス料金を上げられる!我々はネットの平和を守れる!win-winじゃないか!まだ断る理由があるかね!?」

うおぉ、なんか流れで25倍まで根切りやがった!
色々突っ込みを入れたいが…今は下手に口を挟まないでおこう。

どうだ…向こうの反応は…?
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/16(日) 02:05:33.69 ID:jEMBp6duO
つづく
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 02:22:24.75 ID:xpAbC/SGo
おつおつ
こっちはこっちで調子にのってんねぇ!
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 10:26:10.86 ID:0Kdk/qrw0
この企業社長の娘さん(大食い)とかいそう
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 10:33:22.45 ID:6KymHq0no
スポンサーさん頼りになるな
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 16:26:40.58 ID:uI5pRw9Oo
この企業ハッカーを裏で操ってそう
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/16(日) 20:49:19.71 ID:gHbv6DCW0
ってか社長じゃなくて秘書が取引担当なのか
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 00:38:20.37 ID:4cRLknN50
サイスルもやってたか
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 01:29:13.95 ID:rBr5ExBpo
今日はお休みか
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 10:36:32.13 ID:Wi2Jc5aYO
「やぁ、すまない。待たせたね」
応接室へ、スーツ姿の男性が入ってきた。

「カンナギエンタープライズジャパン」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 10:50:09.82 ID:Wi2Jc5aYO
するとそこへ…

「やぁ、すまない。待たせたね」
我々のいる応接室へ、スーツ姿の男性が入ってきた。

「カンナギエンタープライズジャパンCEOの神木だ。待たせてしまってすまないね、前の会議が長引いたもので」

私はCEOに挨拶した。
「お久しぶりです、ケンです。実際に会うのは、最初にデジクオリアとデジドローンのテストをご依頼頂いた時以来ですね」

「ああ、ケン。君のレポートはよく読んでいる。我が社の製品をうまく活用してクラッカーのデジモンを倒したそうだね。嬉しいよ」

リーダーやスポンサーも挨拶をした。

「待っている間、うちの岸部が話を聞いたそうだね。どこまで話したかな」

リーダーは、話の流れを説明した。


CEOは静かに話を聞いていたが、やがて口を開いた。
「なるほど、結論から言おう。クラッカーへの販売規制をする気は毛頭無い」

それを聞いたカリアゲは、ガタっと音を立てて席から立ち上がる。
「なんだって!?そこの美人秘書さんはさっき、ライセンス料金を吊り上げれば応じるって言ってたぞ!?」

だから本人の前で『美人』秘書ってつけるんじゃないよ…

「岸部にそんな決定権は与えていない。部下が勝手に口走ったことだ。一旦白紙に戻そう」

「でぇっ!?な、なんだそりゃ!ズルいぞ!さっきはいいって言ってたのに!」

「彼女の発言は言質として機能しない」

「なんだそりゃ…」

「岸部、あとは私が対応する。お茶の代わりを持ってきなさい」

「は、はい…失礼しますCEO」

カリアゲは不満そうにしている。
私の考えすぎかもしれないが…
このCEO、はじめからこれを狙っていたんじゃないんだろうか。

挑発が得意な岸部にこちらの腹の中を探らせて、本性を暴く。
そして話の流れが不利になったらバトンタッチして、なんやかんや言って白紙に戻す。

そうして一度だけ、話をリセットできるように仕掛けておいたのではないだろうか…。
疑いすぎかもしれないが。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 11:07:35.99 ID:Wi2Jc5aYO
カリアゲは納得行かないようだ。
「で、でもよお!そっちだってハッカーに製品を悪用されてマイナスイメージが付くのは不本意じゃねえのか!?」

スポンサーがそれに続けて話す。
「正直に言うが、規制がかかるのは時間の問題だと思うぞ神木くん!デジクオリアが悪用されて社会が混乱してから、君の不本意な形で規制をされることだって考えられる。それが分かりきっている以上、ある程度君の望む形で規制案を盛り込んでおいた方が、のちのち損せず済むと思うがねぇ!」

CEOはふーっと息を吐く。

「私には優秀なハッカーの友人が数多くいる。彼らと区別するために、悪意のあるハッカーをクラッカーと故障させてもらう」

「それはすまなかったね。そうしよう」

「…我々が戦う相手は、クラッカーだけじゃない。我が社のソフトウェアを違法コピーしたり、我が社の特許権を侵害して同様の技術のハッキングツールを勝手に作るような奴が現れることも危惧しなくてはならない」

「ふむ…。もともと違法行為をはたらくクラッカーには著作権侵害など気に留めないだろうからねぇ」

「デジクオリアは、我が社が莫大な予算を投じて苦労して開発したソフトだ。そう簡単にコピーされることはないはずだ。少なくとも、有償ライセンスの料金を払えば誰にでも使用させている今はね」

「今は…か」

「そう。同じものを作り直すよりも、我が社から買ったほうが遥かに安上がりだ。だからクラッカー共も、今は我が社のデジクオリアを正規購入して使用しているだろう」

そういうとこは律儀なんですね。
何に使ってるかは監視してないんですか?

「していない。あえてね」

あえてですか…
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 11:19:41.57 ID:rBr5ExBp0
時間が経って自力で作れるようになればそもそも規制は無駄か…
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 11:21:55.67 ID:Wi2Jc5aYO
「だが我々が販売規制を行ったならば、クラッカー達は違法コピーソフトを開発して使うようになるだろうな」

そう簡単に真似できるものなんですか?

「可能なはずだ。我々が莫大な予算を投じたのは、根幹となる基礎技術の研究開発の部分だからね。特許を取っている以上、システムの基礎理論は論文で公開している。それを実装しているプログラムは企業秘密だがね…。だからサルマネは言うほど簡単でないが、言うほど難しくもない」

カリアゲが顔をしかめながら答える。
「論文で公開しなきゃよかったんじゃねーか?」

「そうはいかない。基礎理論を公開しなければ、デジクオリアの映像を『カンナギエンタープライズ社が捏造したフィクション映像だ』と疑われても反証できなくなるからね。インチキ技術だと疑われないために必要なことだ」

「うーん…違法コピーされるかもしんねーけどよ、とりあえず販売規制しとけばクラッカーの勢力は落とせるだろ。だめなのか?」

「ああ、駄目だ。販売規制という安直な手段で対策した気になったら、誰もセキュリティデジモン開発に予算を回さなくなる。君達の戦力は育たない。…そんなときに違法コピー品のデジクオリアで戦力強化したクラッカーがデジモン犯罪を仕掛けたら、誰が対抗できる?」

「…あ」

カリアゲは黙ってしまった。

リーダーは苦い顔をしている。
「…それは、そうだな…」

スポンサーは扇子を取り出して、ぱたぱたと扇いでいる。
「ハッハッハ!結論が出てしまったね!神木CEO!この話し合いは君の勝ちだ!降参だ、ハーッハッハ!」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 11:27:05.24 ID:YQfxTly7o
正論ではあるけどこのままでは無駄足だ
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 11:31:40.75 ID:Wi2Jc5aYO
カリアゲは、はぁーっと溜め息をついた。
「そんな面倒事を引き起こすソフトをよぉ…なんで開発しちまったんだ?こんなことになるなら作らないほうがよかったんじゃねーか…」

「…?君は知らないのか?デジクオリアが元々何をするために作られたソフトなのか」

「ん?デジモンを見れるようにするためじゃないのか」

「いいや。デジタルモンスターそのものが初めて発見されたのは、デジクオリアを使って君達がデジタルワールドを調査したときだろう」

「そういやそうだな…。ん?あれ?え?どういうことだ?分かんなくなってきたぞ?」

要するに…カリアゲ。
因果関係が逆だ。

デジモンを見るためにデジクオリアが開発されたんじゃない。
デジクオリアが開発されたからデジモンを発見できたんだ。

「???あれあれあれ?えっと、じゃあ…デジクオリアが発明された時点じゃデジモンは見つかってなかったのか?」

そうなる。

「じゃあ、デジクオリアって元々なんのために作ったんだ?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 11:47:04.81 ID:Wi2Jc5aYO
そう話しているうちに、岸部さんがお茶をもってきてくれた。
笑顔がちょっと怖い。

神木CEOは、お茶を飲むと、少しだけ目を瞑った。
「…時間が余った。少しだけ、昔話をしないか」

「え?昔話ぃ?なんの?」
カリアゲが首を傾げる。

CEOの提案に、リーダーが答える。
「そうだな…研究が進んできた今、デジクオリアに対する認識を深めるためにも、今一度振り返っておきたい。どうやらデジクオリアの論文を読んでない者もいるようだ」

リーダーはカリアゲをちらっと見る。
「う…すまねえ、詠もうとしたけどアレ難しくってよ…一語一句がよくわかんねえ」

スポンサーはカリアゲを扇子で扇ぐ。
「ハーーッハッハッハ!分からないものを素直に分からないと言えるのは優秀な側の人間だよカリアゲ君達。見栄を張って知ったかぶるような、使いものにならない輩が世の中には大勢いるんだからねぇ!」

「褒められてる気がしねぇ〜…」

CEOはスクリーンにプロジェクターで資料を映した。

「では、改めて振り返ろうか。デジクオリア開発の経緯を」







一同のやりとりを聞いたクルエが、私にひそひそ話をしてきた。
「てかこの人達、なんで敬語使わないんすかねー?」

それは言及するな。
今その…なんか…そういうノリのあれなんだよ…うん。
マジで言及しないで。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 11:48:35.29 ID:Wi2Jc5aYO
つづく
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 11:51:55.77 ID:rBr5ExBpo

そりゃそうだ敬語使うよな普通w
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 11:52:57.18 ID:TdTZ5h3/o

カリアゲさん研究職についてるんだから高学歴なんだよな…?
どう見ても研究より運動タイプな気が
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 18:06:17.74 ID:KtqbIF4bO
CEOは静かに語り始める。
「数年前…ドイツの物理学者が『魂』の存在を証明したあの日以来、生物学の常識はひっくり返った。永らく機械論的唯物論で説明されてきた生命の営みが、魂という四次元空間上の情報生命体によって制御されていたと解明されたんだ」

スクリーンには、魂の構造を模式化した図が表示されている。

「我々…三次元空間に棲む生物よりも前に、この世界には既に生命は存在していた。我々の五感では知覚できない、『情報空間』とでもいうべき四次元空間的領域に…『情報生命体』がね。我々はこれを魂と呼ぶ」

細胞の模式図と、魂の関係性が図示された。

「原始の地球で、魂たちはタンパク質を使い、己の器である原核生物を作り上げた。厳密に言えばタンパク質というよりは分子、いや…素粒子であえるクォークを媒体とした肉体と呼んだほうが適切だな」

「やがて原核生物は細胞核を得て真核生物へ進化し、動物、植物、菌類…その他原生生物が誕生した。それらは多細胞生物となり、一個体が複数の細胞や魂を持つようになった」

人間の脳の機能局在を示すマップが表示された。

「そうして動物は進化を続け、我々人類となった。人類は脳を発達させて、想像力を獲得し、『心』という自分だけの心の中の世界を生み出せるようになった。それが人類の文明や芸術、宗教が発展してきた理由だ」

カリアゲはぼーっとした目で見ている。
「ほーん…」

CEOは、何ページか資料を飛ばした。
話を巻こうとしているようだ。

「前置きが長すぎたね、すまない。…魂の存在が証明されたとき、我々はこう考えた。…『魂が実在するなら、これまで霊と呼ばれてきたモノも実在』するのではないか?」とね
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 18:21:02.33 ID:KtqbIF4bO
「霊ってあの幽霊か?ヒュードロドローっていうオバケの?」

「正しくは『そう言い伝えられている何か』だ」

「?どう違うんだ?」

「当時それらを実際に目撃した者達が、事態を正しく解釈していたのは限らないし、正しく言い伝えられているとも限らない。フィクション作品による誇張でパブリックイメージが捻じ曲げられてもいるだろう」

「あぁー…なんか風で舞った布が月明かりで照らされただけのものを、オバケと見間違えた…って聞いたことあるな。あるいはプラズマがどうこうとか」

「その通り。実際そうであるケースもあるだろうが…、『現代科学ではそうとしか説明できない』故に我々がそうだと決めつけているものでもある」

「え…実際にオバケがいたかもしれないってことか?」

「その可能性があるということだ。そして我々は研究した。世界各地の心霊現象や、土着信仰、シャーマニズムの習慣などをね」

「ふーん…」

「結論から言うと…世界各地のシャーマニズムの習慣が根付いた原点を推測すると、どうやらそこには共通の『何か』が存在しているらしい、ということが分かった」

「共通の何かって?」

「儀式だ」

「儀式…」

「現代において、伝承されている祈祷をやったところで、実際に怪奇現象を起こせるわけではない。だが…それらの原点では、偶然か必然か、何らかの奇跡を引き起こす条件が揃い、実際に引き起こすことに成功したらしいことが分かったんだ」

「あ〜、それを上辺だけ真似てきたけどうまく再現できないって状態が続いてんのか」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 18:33:56.11 ID:KtqbIF4bO
「でもよ、昔の人はどうやってそんな儀式を作ったんだ?」

「…あらゆるシャーマニズムの儀式は『霊視』から始まる。霊とされる何かを目撃した者達から当時の状況を聞き、それを体系化し、人工的に起こそうとしたらしい」

「ありえねえって思うけど…まあ魂があるって分かった今、否定できねーよな…」

「ある素質を持った人物が、精神をトランス状態にし、何らかの所作をすることで…超自然的な『何か』と繋がる。それは世界各地で、神仏とか精霊とか云われるものだ」

CEOは、その儀式を図式化した画像を表示した。

「我々はこれをコンピューター・ソフトウェアで再現することを試みた。…世間からも株主からも、馬鹿馬鹿しいと批判されたよ。それでも多額の予算を投じて、我々は研究を続けた。…そうして、ついに再現に成功したんだよ」

「すげぇ…」

「我々は特殊な人工知能に祈祷の儀式をさせることで、人工知能の『心』を『超自然的な何か』へ接続し、その心象風景を映像として出力することに成功した!」

リーダーが静かに口を開いた。
「…それが、最初期型のデジクオリアか」

「そうだ。デジクオリアは元々、『霊』や『冥界』を観測するために開発したんだ」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 18:36:19.22 ID:rBr5ExBp0
色々怖い…
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 18:43:57.84 ID:KtqbIF4bO
「そうして霊視用人工知能が接続された『世界』を広く見回すために、デジドローンを開発した。そして君達に、何か意味のあるものが見えてこないかを調査をしてもらうために協力してもらったんだ」

そうして私が…
デジタルワールドの海底で、クラゲ型デジモン…ポヨモンを見つけた。

「そう、君の功績だケン。…驚いたよ。我々は天国とか地獄と呼ばれる世界で、幽霊と呼ばれる何かを見るつもりでいたんだ。だが実際にそこにいた幽霊は…肉体を獲得し、進化する力を身に着けていた」

あれらには、デジタル「クリーチャー(生物)」ではなく、「モンスター(怪物)」という名を付けさせていただきました。

「君の命名は適切だったよケン。あれらはかつて、世界各地のシャーマン達が目撃に成功した怪異そのものだったのだから。生物というよりは怪物なのだろうね」

カリアゲが驚く。
「え!?じゃあデジモンって幽霊なのか?」

「逆だ。かつて幽霊と呼ばれたものの正体が、何らかの手段で観測されたデジモンなんだ」

「ええ…でもよ、デジモンってデジタルネットワークの世界に住んでるデジタル生命体だろ?なんでインターネットが発明されるより前にデジモンがいるんだ?」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 18:48:01.91 ID:fL2teLpto
この社長さん秘書ほど性格悪くはなさそうだ
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 18:48:59.01 ID:ddvZDQAl0
なんにでもなるなデジモン
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 19:12:41.50 ID:G4CrTY5/o
この世界好きだあ
ここまで隙間の神の領域が狭められてると宗教も大人しくしてそう
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 19:17:00.96 ID:KtqbIF4bO
「思い出してほしい。我々生物は、素粒子を最小単位とする肉体に魂が宿って産まれた生物だ。ならば…他の何か最小単位とした肉体に魂が宿り、生命が誕生する可能性もあるんじゃないか?」

「んー…?まああるとすればあるような…」

「我々人類の脳は多数の神経細胞が結合した、ニューラルネットワークという仕組みで働く生体コンピュータだ。その働きによって生まれるのが『心の中の世界』…。ならば、人間の精神の中に新たな生命が生まれる可能性もあるはずだ。神経細胞が貯蔵するデータを肉体として…ね」

「…データの、肉体…?まさか…」

「そう。かつて人類が目撃した幽霊や精霊の正体とは…『脳神経の中で生まれた、心の中の世界で生きる情報生命体』だったんだ」

「…!」
カリアゲは驚いた顔をしている。そりゃそうだ。

「…うーん。でもよ、一人の脳ミソの中でしか生きられないんなら、ただの幻と同じじゃねえか?」

理解が早いな…。

「人類の脳がクローズドネットワークのままだったらね。しかし、その情報生命体は、魂が元々いた世界…『四次元空間上の情報世界』へ人類の脳を繋げ、行き来できるようになった。狐憑きや霊の憑依と呼ばれる現象…あれは『情報世界』から人間の脳へ、情報生命体が宿ることで起こる現象だ」

「えー…こっわ…」

「デジタルネットワークが発達した現在、世界各地の人工知能はめざましい発達をし、ついに人類同様に『内面世界』を獲得するに至った。機械が心を持つかどうかは別としてね」

「内面世界…?」

「シミュレータと呼ぶと分かりやすいかもしれないね。自動車開発や、新薬開発、気象予報用などに使われるシミュレータだ。ゲームソフトもある意味では『ゲームの中の世界』を模したシミュレータといえるだろう」

「それらの多数のシミュレータの中で…、ゼロイチのデータの肉体を持った生命体が生まれた。そして彼らはかつて人間の心の中に生まれた怪異と同様に、情報世界へ進出していったんだ」

「つまりそれが…デジモンか…!え、じゃあデジモンって、狐憑きみたいに人の脳に取り憑くことがあるのか!?」

「可能性は有り得なくはないが…、デジタルネットワークで生まれた生命体は、人間の脳の内面世界環境には適合しないはずだ。コンピューターの中には侵入することがあるだろうがね」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 19:24:00.34 ID:ZdYNMxkyo
ゴーストゲームだと人に取り付いたこと結構あったなあ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 19:31:29.51 ID:KtqbIF4bO
え、ちょっと待ってください。
論文は一通り読みましたが、人間の心の中の情報生命体なんてのは初耳ですよ!?

「それはそうだ。何故ならこれはあくまで我々デジクオリア研究チームの中だけの仮説だ。なにせ検証のしようがないだろう。シャーマンをどこから連れてくる?そのシャーマンの霊能が本物だとどうやって証明する?」

…あなた達はどうやったんですか。

「霊能者を名乗る人物達をかき集め、一握りの本物を探し当てた。…それだけで論文を書けるほどの確度はないがね」

…デジクオリア開発秘話にそんな話が…。

「すげーなそれ!世紀の大発見だぞ!古くから妖怪とか幽霊とか言われてたものの正体が、人から生まれたデジモンだったなんで!論文には書けなくてもさ、なんかで発表しろよ!」

カリアゲがそう言うと、スポンサーが口を開いた。

「ハッハッハ!カリアゲ君!それはできないよ!なあ神木CEO!」

「え、なんでだよ!?すげえ発見じゃん!」

「…怪異の伝承は、長い長い伝言ゲームの中で歪められて伝えられてきた。現代ではホラーフィクション作品の題材として、過剰な設定が与えられ、そちらにパブリックイメージが引きずられている」

「ああ…ヒュードロドロー、うらめしやーってやつ?」

「そうだ。デジモンがそれと同類などと発表してみたらどうなるか。デジモンがどんな偏見を持たれ、どんなデマが流れ、どんなパニックが起きるか…想像に難くない」

「あー確かに。デジモンが『妖怪テケテケ』や『口裂け女』、『ハイチのゾンビ』やらと混同視されちゃうのか…クソ、面倒だな…!」

「大衆は忙しい。正しい知識を得ようとせず、声の大きい輩が唱える第一印象だけで物事を決めつける。そうなるくらいなら、我々が今初めて発見した存在として、偏見のない状態から始めた方がいい」

「納得だ…」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 19:44:53.80 ID:KtqbIF4bO
「そうだ。デジモンを勝手に伝説や迷信と結び付けられたら、正しい情報が世間に伝わらなくなるからね。君達がデジドローンとデジクオリアで発見し、記録に残したもの…それが、それだけが。我々人類の、デジモンに対する理解の『全て』だ。それ以外の一切のまやかしは必要ない」

「…すげえ経緯があったんだな。デジクオリアの開発って」

「この研究にどれだけ多額の予算を投じたかは想像に難くないだろう。そして我々は、まだ開発費用の赤字分を回収できていない。研究存続のためにも、ライセンス料金という資金源を自ら絞るわけにはいかないんだ」

その話をすると、スポンサーさんがグスっと鼻を鳴らし、目に涙を浮かべた。
「苦労したんだねぇ…神木くん!ぐすっ、どれだけ大変だったことか…どれだけ世間や株主に後ろ指を指されたか!それでも君達は研究を成し遂げた!素晴らしい!猛烈に感動した!ウオオオォーン!オォーーン!」

マジ泣きしてる!?
ビジネスマンとして何か共感できるポイントがあったんだろうか。

「はーすげえな…。ん…?じゃあよ、昔の人が幽霊と言い伝えたような…『幽霊そっくりなデジモン』がどこかにいるってことか?」

「どうだろうね。デジタルワールドには未探索領域がまだまだ多い。世界の何処かにはいるかもしれないね…。人々が幽霊や精霊として言い伝えた『何か』が」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 19:51:23.11 ID:KtqbIF4bO
「あくまで仮説段階だが…、君達研究グループから送ってもらったデジモンの生態データをもとに、『かつて人が幽霊として認識した』とされるデジモンの想像図をAIに描かせた。見てみるかい?」

「見てぇー!どんなんだろ…はーこえぇ…!」
カリアゲは大ヒットのホラー映画でも見るかのようなテンションだ。

「これだ」

そう言ってCEOが映し出したのは…


https://i.imgur.com/ijQyMCG.jpg

…なんとも可愛らしい?姿だった。
煙の体に、小さな手と顔がついており、頭頂部には小さな火がついている。

「幼年期デジモン…仮称モクモン。こういうのを見つけたら教えてほしい」

「あんま怖くなかったな…」

「それは君がデジタルモンスターの知識を持ち、正体を知っているからだよ。恐怖とは未知から生まれる。何も知らない者が、こいつをいきなり目撃したら、話が違ってくるだろう」

「あーそりゃ怖いかも…」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 19:54:34.77 ID:rwDZ0jew0
怖いとかわいいの中間
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 20:03:32.46 ID:KtqbIF4bO
「…そういうことだ。我々はデジクオリア開発にかかった費用を回収しなければ倒産してしまう。販売規制などやって海賊版が溢れたら、カンナギエンタープライズが倒産しかねない。分かってくれたかリーダー」

「…そういう事情があるなら、販売規制の方は諦める。だが一つ聞きたい。CEO…あなたは平和と戦乱のどちらを望んでいるんだ?」

「…かつてドードーという鳥がいた。外敵のいない島で育ったため、逃げる力も戦う力も退化した鳥だ。だがドードーは、島の外からやってきた外敵によって、あっけなく絶滅させられた。君達の言う平和とは、ドードーのような暮らしを指すのか?」

リーダーはため息を付いた。
「…平和は戦って勝ち取るしかない、ということか。理解したよ」

「我々は悪のクラッカーを冷遇することはできない。君達が先程提唱した国際機関を信用することもできない。…だが、君達研究チームのことだけは、秩序を目指す者として信用している。新製品のテスター…という形でなら、優遇しても不公平ではないかな?」

「…それでいい。助かる」



そうして、カンナギエンタープライズジャパンのCEOへの交渉は…

誰も冷遇せず、誰も規制しない。誰のスタートラインも弄らない。

だが、我々研究グループが編成した対クラッカー用セキュリティチームに限り、新製品のテスターを優先的に依頼する。

…そういう落としどころで合意に至った。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 20:05:36.60 ID:YGzhYMGm0
これじゃあ文句言えないねえ
やるね社長さん
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 20:09:58.99 ID:KtqbIF4bO
研究室で、カリアゲははーっとため息をついた。
「結局、クラッカーと真正面からぶつかり合って勝つしかねえのかー…。あー大変そうだ…」

交渉では一言も話さなかったメガが、カリアゲに話しかけた。
「新製品のテスターというのも、戦力強化としてアテにしていいのか微妙だし…。無駄足だったかな…」

クルエはスマホを弄ってデジモンに関する世間の噂を調べている。
「無駄足かどうかといえば…まあそーかもしれませんねー。モクモンちゃんが可愛かったけど、可愛くない女がウザかったので足し引きゼロですかねー」

「そんなことはない」
リーダーが我々に話しかけてきた。

「戦わなくてはいけないことが分かった…踏ん切りがついた。それが収穫だ」

収穫なんですかそれ…?
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 20:11:00.28 ID:KtqbIF4bO
つづく
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 20:12:30.63 ID:YGzhYMGm0
まあ覚悟はできたか?
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/17(月) 20:51:24.19 ID:KtqbIF4bO
〜オマケ〜

ちなみに「ヒトの脳から生まれたデジモンがかつて存在した」という話は、くれぐれも他言無用で…と念を押された。

仮にこの話がクラッカーにまで知れ渡ってしまうと…
『ヒトの脳へのハッキングをするデジモン』がクラッカーの手で開発されかねないからだ。

そうなったら…本当に打つ手がなくなる。
クラッカーや独裁国家が、デジモンでヒトの脳へハッキングを仕掛けてくるようになったら、戦いすらできない。

現在、それらの研究データは、カンナギ・エンタープライズのクローズドネットワークの中だけで管理されており、外部から参照されることはない。

しかし、もしもカンナギ・エンタープライズがクラッカーを冷遇したり規制するようになったら、クラッカーは純正品デジクオリアのライセンスを管理するカンナギへデジモンによるサイバー攻撃を仕掛けるかもしれない。

そうして研究データが盗み出されたら、『脳へのハッキング』を試みるようになる可能性がある。

…クラッカーを冷遇できない理由は、自分達が攻撃されないようにするためでもあるのだそうだ。



…あっちもあっちで苦労してるんだな。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 21:35:58.08 ID:1SHc/9G20
都合の良い奇跡も助けも期待できないならやっぱりみんなで地道にコツコツ鍛えてくしかないのかねえ
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/17(月) 23:20:44.88 ID:zZdoMjNV0
出来る限りの協力してくれてるのは分かるんだけどな
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 01:37:01.65 ID:lG7klEu70
少数の戦力で生物としてのスペックも物量も圧倒的に上の勢力に挑め
地球防衛軍シリーズ感
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 11:06:11.80 ID:5ob1FvHa0
コマンドラモンさんが大局左右するくらいの武器作れれば
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 21:45:18.48 ID:j1PXGCEN0
続編来てたのか
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 22:13:12.54 ID:AuyxD+E/O
@セキュリティデジモンの頭数を増やして、パワーアップする必要がある

A相手にセキュリティデジモンの弱点を突かれないように、多様な戦略を揃える必要がある

Bそもそもハッキングデジモンの侵入自体を阻止したり検知する仕組みが必要

C敵の動向を探り、手口の変化に警戒する必要がある


リーダーは、この4項目をプロジェクターに映している。
「我々は、ひとまずこの4つの指針を目指していくものとする。今できることを積み重ねていくしかないだろう。…まずは何から始めようか」

メガが挙手した。
「はじめにやるべきことは…!スカモン大王を食べて大繁殖したマッシュモン達をどうにかすることだ!!」


そう。
先日の戦いで大繁殖したマッシュモンは今、ランドンシーフの中にいるのだが…

餌キノコの備蓄を猛烈な勢いで消費しているのである。
数が数ゆえ仕方ない。

このままではコマンドラモンやピョコモン達にあげる餌も底をついてしまう。

メガが面倒を見ているようだが…
「真っ先にコレなんとかしようよ!!よそに引き取ってもらうか、スパコンをもう2〜3台増強して餌を増やすか!!」

引き取ってもらうか…?でも、どこに。


クルエはSNSでデジモンについて検索しながら答えた。
「マッシュモンは今世間で大人気ですからねー、引く手数多だと思いますよー。デジタルモンスターの飼育端末ほしいって人今でもたくさんいますからねー」

また抽選販売するか?
それも悪くない手ではある。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 22:19:00.41 ID:NRRDzcv4O
リーダーは、スクリーンの字を見ながらなにか考え事をしている。

「Bの…ハッキングデジモンの侵入検知…。これをやるなら、具体的にどんな手段がある?既存のセキュリティソフトじゃ検知できないんだろう」

それを聞いたメガは答える。
「だから先にマッシュモンをどうにかーーーー!」




デジモンに見張らせて目視で検知すればいいのでは?


「え?」
メガがこっちを向いた。

今大勢いるマッシュモン達を、優先的にハッキングデジモンから保護したい施設・組織のサーバーへ派遣して、見張ってもらうのはどうでしょうか。

メガは手をポンと鳴らす。
「なーるほどー、それなら2つの問題がいっぺんに解決するネ」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 22:22:26.98 ID:Bj6zesIL0
マッシュモンペットから労働者へとジョブチェンジ
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 22:24:40.25 ID:JJBjrh190
ペットだけじゃなくて番犬や盲導犬や警察犬や軍用犬になれる犬みたいだ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 22:28:59.46 ID:fvNwB2jjO
スポンサーさーん!

『私をお呼びかな』

今いるマッシュモンを、警備員兼デジタルペットとして派遣するサービスを始めようと思うんですが、いかがでしょうか。

『素晴らしいいいい!イィィンノベェエエエイションだよケン君!客にはアテがある、こちらから声をかけてみようじゃないか!』

よろしくお願いします。

『では、このサービスに名前を付けたまえ!』

な、名前?
デジモン侵入検知サービス、とかでしょうか。


『駄目だ駄目だ!インパクトが弱ぁい!もっとこう、ドカンと来るやつを考えてくれたまえ!』

そう言われても…何がいいかな。
新人のシン君、なんかアイデアはある?

「うーん…サービス…『デジネズミトリ』とかどうでしょう」

デジネズミトリ…
まあ無難な感じでいいね。

カリアゲはなんかある?

「マッシュモン…見張り…!…『見張りまッシュモン』!なんてのはどーお?」

ダジャレかよ!

『素晴らしいいいいい!カリアゲ君、このアイデアに君のネーミング!鬼に金棒だよ!これでいこう!』

いいんですか!?




…そんなわけで、マッシュモン達は、サイバー攻撃から優先的に保護したい組織…
金融・保険業、官公庁、医療などの分野の組織へ派遣されていった(勿論有料サブスクリプションだ)。

寂しくならないように、2体のペアで1セットとした。

デジモンはただのソフトウェアでなく意思をもつ生物なので、コミュニケーションをとってあげてほしいと頼んだ。

…派遣先組織の情シスには、専門の『デジモンテイマー部』という部署が設立され、1〜2人程度の世話係が配備されたそうだ。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 22:34:42.45 ID:anYaaa0l0
Big and Bigger, Biggest Dreamer!
夢見るコトがすべてはじまりそれが答えだろ♪
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 22:36:35.98 ID:p8xZJmqOO
メガは心配そうにしている。
「これで大丈夫かな…。マッシュモンちゃんと働けるかな…。ハッキングデジモンに食われたり、逃げ出したりしないかな…」

まああり得るだろうな。

「うぅ、やっぱガバガバだよなぁ〜…」

ガバガバだな。
だけど、今取れる最善策ではある。

検知サービスの発展も、今後視野に入れていかないとな。

「あとこれ、サブスクけっこう割高だよなぁ…」

餌代がどうもかかって仕方ない。
もっと効率よく、栄養価の高い餌を生成できるようにする必要があるな。

「…でも、こうしていざ動いてみると、新しい課題がいろいろ見つかってくるね。最初はいまいちビジョンがぼやっとしてて五里霧中だったけど、だんだんやるべき事が具体化されてく」

クラッカーとの競争だからね。
石橋を叩いて渡ってたらあっという間に引き離されて追い抜かれる。

失敗するのも覚悟で、いろいろアグレッシブに試していくしかないさ。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 22:48:39.80 ID:p8xZJmqOO
リーダーは、スクリーンに例の四指針を映した。




@セキュリティデジモンの頭数を増やして、パワーアップする必要がある

A相手にセキュリティデジモンの弱点を突かれないように、多様な戦略を揃える必要がある

Bそもそもハッキングデジモンの侵入自体を阻止したり検知する仕組みが必要

C敵の動向を探り、手口の変化に警戒する必要がある




「Bはひとまず、今できることはやった。サービスの改善は必要だろうが、クラッカーに対して先手は打てたとみていいだろう」

通報があったらどうするんですか?

「…難しいところだな。コマンドラモンやマッシュモンをけしかけて駆除させられればいいが…戦力が心許ない」

そうなんですよね。
うちのデジモン達、火力不足なんですよ全体的に。

カリアゲがきょとんとしている。
「そうなのか?こないだのスカモン大王戦ではちゃんと敵を倒せてたぞ。コマンドラモンの火力はすげーぜ!」

それは、コマンドラモンが日頃からちょっとずつ爆弾や弾薬を作って備蓄してるからなんだ。

それらが尽きたら攻め手がないんだ。
マッシュモンの毒も、ゲレモンには効かないし…。

「格闘戦とかできないのか?」

コマンドラモンは、基礎代謝量を抑えつつ爆弾で瞬間火力を出すタイプだから、インファイトの格闘戦は苦手なんだよ。

「マジか…こないだはよく勝てたな…」

まあ、爆弾を無駄遣いせず、相手の口の中にぶちこめたおかげで、有効打を打てたからかな。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 22:50:19.16 ID:gKAXlGK50
マジでえらいなコマンドラモン
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 23:01:48.20 ID:p8xZJmqOO
はっきり言って、こないだの戦いでスカモン大王を倒せたのは、弱点を付けたことと、相手が舐めプしたからだ。

次はもう今の戦力じゃ間違いなく勝てない。

「…」

クルエは四指針を眺めている。

「Cって具体的に何すればいいんですかねー?」

今みたいに、戦力の分析をして、次の手を考えることを続けていくことですよ。

「なるほどー。じゃ、あとは@とA…戦力の強化と多彩化ですかー。どうやります?あっちみたいに半人工デジモンを作っていきます?」

クルエの問いかけに対してリーダーは答える。
「やっていくしかないだろうな…。みんな気が進まないようだが…」

カリアゲは苦い顔をしている。
「まあ正直…クラッカーの真似事はやりたくねえよな…やだなー…。それに時間かかりそうだよな。まともに戦わせられるようになるのはいつになるやら…」

「あの!」
新人のシンが挙手した。

「コマンドラモンの武器って、どうやって作ったんです?」

銃はコロモンから進化したときに生えてきたよ。
弾薬は日頃からちょっとずつ作って蓄えてる。

「じゃあ、銃って一度無くしたらもうそれっきりなんですか?」

…どうなんだ?コマンドラモン。
チャットで聞いてみた。

『ぶひんの よびは つくれる』

また作れるらしい。

「じゃあ、コマンドラモンにたくさん銃や爆弾を作って貰えば、マッシュモン達も同等の火力出せるんじゃないですか?」

…!
そう言われると確かに…!

手っ取り早く戦線強化できそうな気もしてくる。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:04:37.30 ID:Bj6zesIL0
頑張ればマッシュモン達が自力で武器や食品作れたりして
工場作って
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:07:30.00 ID:8U3/zpaC0
もしかして知識さえあれば割と何でも武器作れるのか?
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:10:15.92 ID:/W0KDf4Y0
武器とか作らせればいいんじゃない?
マッシュモンの進化先を考えるんだったら、剣や刀とか………。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 23:10:29.15 ID:p8xZJmqOO
「はー…コマンドラモンってスッゲー優秀なデジモンっすねー。武器工場役もできるなんて。クラッカーでもこんな凄い戦力持ってないッスよきっと」

そうだと祈りたい。

「でも、どうやってこんな凄いデジモン作ったんスか?設計した人頭良すぎですよ」

いや、設計したわけじゃないよ。
デジタルワールドで一番賢いディノヒューモンのデジタマを頂戴してきて、産まれたコロモンを訓練したらこうなった。

「…フローラモン?っていうんですか?ピョコモンの前世でしたっけ。戦闘記録見たら、弱そうに見えてけっこう活躍してましたよね。こっちはどうやって?」

フローラモンも特に「こういう風なデジモンを作りたい」って考えはなかったよ。
愛情を込めて育てたらこうなった。

「…あの…。…もしかして…」

…。




「…望み通りのデジモンをわざわざ作ろうとしなくても、拾ってきたデジタマを愛情込めて育てれば…、いい戦力に育つんじゃないですか?」

…確かに。
まさに今、そうなってる。



リーダーはそれを聞いて、はっとした顔をしている。
「…そうだ。そう考えると…、クラッカーは今、逆に不利なんじゃないか?望み通りのデジモンを作ることに固執するあまり、不確定要素を排除しようとして、逆にチャンスを手放している…のでは?」

冷静に考えると…
こっちにアドバンテージは十分ありますね。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 23:20:53.43 ID:p8xZJmqOO
この方向性…ワンチャンありますよ!リーダー!

「よし!@とAの案が出たな。コマンドラモンに武器の備蓄を増やしてもらいつつ…!デジタルワールドから、デジタマを集め、愛情をこめて、鍛え、育てる!これでいこう!どうだ?」

なるほど…これなら幾分か気が乗ります。
デジタルワールドの生態系への影響は気になりますが、まあ仕方ないでしょう。

カリアゲも乗り気だ。
「よっし!クラッカーの真似事なんてやめだやめ!こっちはこっちの得意分野がある!愛情という最大の武器がな!」

そう言うカリアゲに対して、クルエは指笛を鳴らしてヒューっと囃し立てた。


「善は急げだ!作戦名…『次世代戦力育成(テイマーズ)』!開始!」





…餌たくさん作れるようにならないと。
ね?スポンサーさん。

『ハッハッハ!スパコンがいくつあっても足りないねえ!予算の確保が大変だあぁ!ハーッハッハッハ!』
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/18(火) 23:22:25.07 ID:p8xZJmqOO
つづく



どのデジモンのデジタマを狙うか。
案があったらぜひ聞きたい。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:24:42.38 ID:/W0KDf4Y0
>>94
極寒地域のデジタマ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:25:05.92 ID:vHhfEuqF0
ディノヒューモンのデジタマはもう警戒されてるから次は無理って話してたっけな
生態系とか考慮して自然の中でたくさん死ぬこと前提で子を産むタイプのデジモンからちょっと拝借するとか
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:31:46.35 ID:Bj6zesIL0
マッシュモンは昔見たこともないスコピオモンに対して怯えてたからマッシュモンの遺伝子を持つスカモンゲレモンズルモンも遺伝子にスコピオモンの恐怖が刻まれてる可能性ありかもしれない
ということでスコピオモンの子孫に対して本能的な恐怖を抱いてくれること期待してスコピオモンのデジタマを狙う
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:38:07.69 ID:j1PXGCEN0
前のところは当然駄目だから、別の地域だな海のデジモンからホエーモン
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:38:57.51 ID:GK8bJ6K1o
やはりここは高潔なスピリットを持つ守護神ジャガモンから
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:41:21.86 ID:BI1IR4QJo
ディノヒューモンからは盗むのではなく快く譲ってもらう
デジタマもらう代わりに何か好きそうなもの差し上げる
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:45:41.21 ID:nHA+v4Yz0
合体と分離を自由に行うことで燃費と戦闘力を両立させるという画期的な生存戦略を生み出したエクスブイモンスティングモンのデジタマを
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/18(火) 23:52:23.46 ID:9vRt0wpE0
No.1の環境適応能力を持ってたかつてのエレキモンブラザーズの中で一番優秀そうなのからデジタマもらう
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/19(水) 01:43:44.92 ID:w9awNLfVo
とりあえず当分のハッカーの主戦力は粘菌系っぽいし物を乾燥させることに長けたデジモンのデジタマを
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/19(水) 03:41:04.59 ID:8axxOe1Ro
やっぱ純粋な戦闘力ならNo.1なグレイモンのデジタマかな
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/19(水) 07:26:52.72 ID:xvdL4VvWO
とにかく高いDP(戦闘力と基礎代謝量の高さを示す指標値)のデジモンを揃えまくり、グレイモンやジャガモンやスコピオモンを従えて、パワーでクラッカーデジモンを鎮圧すれば万事解決…

…というわけにはいかないのだ。


最も気をつけなくてはならないのは「飼育崩壊」。
我々がデジモンの餌を生成できるペースには限りがある。
そのため、大食いのデジモンを増やしまくったら即座に餌が底をつくだろう。
そうしたら飢えたデジモン同士が共食いを始めて、こちらの手持ちデジモン達全員が全滅することは想像に難くない。


カリアゲがスポンサーさんに「生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぞ!スパコンもう10個20個増やせばいいじゃんか!」と言っていたが…

『ハッハッハ!子供心を忘れないのはいいことだよ!ハッハッハ!』

…と、冷や汗混じりの表情であしらわれていた。

予算を無限に引っ張ってこれるなら良かったのだが…
残念ながら、不景気な昨今では大人の事情というものがあり、無制限にバカスカ予算を出してくれる猫型ロボット的な救世主の出現は望めないようだ。

そういうわけで、当面は…
高いDPのデジモンをひたすらかき集める方針ではなく、成長期や、低DPの成熟期を主戦力とした編成を強いられることになるだろう。

…懐事情が厳しいのは、クラッカー側も同じはずだ。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/19(水) 07:39:35.43 ID:YvwnKmJt0
物事の吸収力が早い幼年期〜成長期に色んなことじっくり教えてコスパ良くしてくしかないか
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