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デジタルモンスター研究報告会 season2
- 403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/28(金) 21:21:29.54 ID:emm18lEc0
- ここまで毎日更新してくれてたのがありがたかったな
座して待つ
- 404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/29(土) 23:49:56.30 ID:rTDdUZCao
- 夜勤か?
- 405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 00:02:13.38 ID:BL1FOTu7o
- めちゃくちゃ気になるところで
- 406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 00:59:25.75 ID:j+VVYAlr0
- やはりダメか?
- 407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/30(日) 14:29:40.24 ID:HhcdvCavO
- 一同がドン引きしながら見ている中…
クルエが呟いた。
「…サラじゃないですか、あれ」
え?
サラって…
「ん?なんだ?サラって?」
うお!
カリアゲが反応した。
…クルエは、絶対他言無用だったはずの名前を口に出してしまった。
「知っているのか?あの個体について」
リーダーに問わてたクルエは口を押さえて慌てている。
あ、ああ…
実は前にですね、クルエさんと一緒に赤いオタマモンを見つけたんです。
それが育ってコレになったのかなーと思って…ね!
「ああ、はい、そ、そです」
「…なるほど。名前まで付けるとは、随分愛着があるんだな」
愛着というか…
他のオタマモンと区別して呼ぶためにですね。
レッドオタマモンとか勝手に名付けても良かったんですが、まあまだ保留ということで。
「…にしても、一体何をやってるんだこいつは」
画面の中のサラマンダモンは、デジドローンの方を向いた。
「気付かれた…!?攻撃されるかもしれん、離れるぞ」
デジドローンはサラマンダモンから遠ざかっていく。
『クワーァ!クワァ!クゥーーワァァ!』
サラマンダモンはペタペタと這ってデジドローンを追跡してくる。
「追ってくるぞ!農園のサラマンダモンから、デジドローンは敵だと聞いているのかもしれん。いちど撤収だ」
そう言いリーダーは、デジドローンを近隣のアクセスポイントまで移動すると…
デジタルゲートを開き、デジドローンを引っ込めた。
サラマンダモンの叫び声は、ずっとデジドローンに浴びせられていた。
- 408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/30(日) 14:40:57.90 ID:HhcdvCavO
- 一同は話し合っている。
「あの行動の理由は何だ?一体何があったら、あんな行動を取るようになるんだ?」
リーダーの問いかけに、頭を悩ませる研究員達。
私とクルエも悩んでるフリをする。
メガが何か思い浮かんだようだ。
「もしかして…子供にいちど殺されかけたことがあるんじゃ…?」
カリアゲは眉をしかめている。
「いや、子供デジモンが親を殺そうとするって…どういう状況だ?」
リーダーは腕組みしながら発言する。
「有り得なくはないが…生まれもしないうちからデジタマを破壊するようになるものだろうか。仮にそうだとして、次はもっとマシな子が産まれてほしいと望んで産まれてくるのを待つんじゃないか?」
メガは目をつぶる。
「うーーーん…。多分そうだよなぁ…デジモンが人間の言葉を理解できたら簡単だったのになぁ〜…」
リーダーはクルエの方を向く。
「クルエはどうだ、何か考えはないか?」
「ひゅい!?」
慌てるクルエ。
「え、えーと、なんででしょうね…わかんないです」
知らない振りをするクルエ。
「お前はどうだシン?」
リーダーは、新人のシンに意見をたずねる。
「…現時点の情報では分からないッスけど…もし、調べるとしたら。あのサラマンダモンのデジタマを採取して育成すれば、答えが分かるんじゃないッスか?」
おお…!
確信に迫ろうとしている…!
- 409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 14:47:33.45 ID:5LOZFkrl0
- 来たか……!
サラのメンタルがどんどん心配な方向に向かいそうだ
- 410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/30(日) 15:00:35.22 ID:HhcdvCavO
- 「よし!サラマンダモンのデジタマを採取して育成してみよう。ケンとクルエはサラマンダモンを観察して、デジタマを破壊する理由を推理する情報を集めてくれ。我々は捕獲作戦を計画しておく」
わかりました。
そっちはよろしくお願いしますリーダー。
「もしかしたら、極めて凶暴なデジモンが産まれるかもしれない。サラマンダモンのデジタマは、第二ビオトープへ隔離して育成することにしよう」
そうですね…。
準備お願いします。
…
私とクルエは、なんとなく察しがついている。
あの個体が、カンナギエンタープライズで育てられ、放逐されたサラならば…
デジタマを破壊するようになってしまった理由には心当たりがある。
だが、それは今このまま観察を続けたところで、決して自然には導き出せないだろう。
どうしようかな…
- 411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/30(日) 15:14:19.75 ID:HhcdvCavO
- リーダー達は採取作戦を考えている。
「サラマンダモンが警戒心が弱かったら、デジタマを簡単に採取できるんだが…ヤツは明確にデジドローンに反応し、追跡してきた。おそらくデジドローン自体を脅威として認識しているんだ」
メガは頷く。
「農園の初代サラマンダモンはすでに死んでるんだよね…あのサラマンダモンはその子供ってことかな。たしか、僕達がディノヒューモンのデジタマを採った後、スナリザモンと代わってデジタマ警備をしてたのが初代サラマンダモンだった」
よく覚えてるなそんなこと…。
メガの記憶力には驚かされる。
農園の言語を解析したときも驚いたけど、「あんなの日本語のオノマトペだけで構成されてるじゃないか。簡単だよ」と言ってたっけ。ぜんぜん簡単じゃないぞ。
リーダーは顎に手を当てる。
「では、サラマンダモンの子供も、デジドローン警備の任務を引き継いでいる可能性があるな。…だが、なぜあの仮称サラという個体は、農園から離れて暮らしているんだ?」
カリアゲはうーむと悩んでいる。
「そうだよな、なんでだろ…農園から追い出されたとか?デジタマを破壊するから?」
シンは、はっとした顔をした。
「なんか…分かったかもしれないッス」
「おお!?」
一同はシンへ期待の眼差しを向ける。
新人くん…まさか、サラの過去について気付いたのか!?
- 412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/30(日) 15:21:57.24 ID:HhcdvCavO
- シンは静かに語り始める。
「きっと…過去に一度、農園ではこんな事件があったんスよ」
カリアゲはごくりと喉を鳴らす。
「事件…?」
「蛮族っていたじゃないですか…猿型デジモンの。あの蛮族が、自分達のデジタマと、農園にあるサラマンダモンのデジタマを…、一個こっそり入れ替えたんッス」
「入れ替えた…?」
「そうッス。農園に潜り込ませるスパイを育成するために…。デジタマをひとつ持ち帰り、数合わせのために一個置いて帰ったんス」
「な、なるほど…」
「そしてサラマンダモンの目の前で、デジタマが孵化した。そこからはなんと、敵である蛮族の子供が産まれた!…驚いたサラマンダモンは、その場で蛮族の子供デジモンを焼き殺したんスよ!」
「ゴクリ…」
「そうして、農園デジモンの子供を焼き殺したと誤解されたサラマンダモンは、農園を追放された…!サラマンダモンは喋れないから、誤解を解けなかったんス!」
「な、なるほど…!」
「そうして追放されたサラマンダモンは…、自分のデジタマを破壊するようになった。どうッスかこの推理!」
「すげえよシン!筋が通ってる!きっとそうじゃねえか!?お前頭いいな!」
「えっへへーwwまあ、こんなもんスよ」
…ちがーーーーう!
違うんだシン!カリアゲ!そうじゃないんだ!
だが、私がそう言って否定できるだけの材料があるわけでもない。
くぅぅ…もどかしい!
訂正できないのがもどかしい!
- 413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/30(日) 15:22:53.96 ID:HhcdvCavO
- つづく
- 414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 15:39:44.15 ID:5LOZFkrl0
- 乙
デジタマが別で盗まれた件とも矛盾しない推理になってしまったか……?
- 415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 16:04:17.73 ID:COPnxCGMo
- 間違った推測で面倒なことになる前にもうカンナギの社長さんにこのこと話しちゃった方が良いんじゃ
- 416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 16:11:31.44 ID:3SC19RUao
- 間接的に迷惑かけやがって社長
- 417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 16:31:30.04 ID:YQvlxM9z0
- サラのデジタマ調べたってサラがこうなった原因なんて絶対分からないから時間の無駄になるんだよなあ
ある意味社長のせいで研究が妨害されそうになっているとも言える
- 418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 16:44:18.23 ID:SwXJjNrg0
- しかしシンよ、生まれたばかりのデジモンが蛮族のデジモンかどうかなんて分かるのは蛮族くらいじゃないか?
- 419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 22:32:58.00 ID:jjYd+NLH0
- このままではサラは間違った事実のまま人間基準でもデジモン基準でも「狂った化物」と認識されて生涯を終えてしまう(´;ω;`)
- 420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 15:49:59.60 ID:jAc8KSXP0
- ゲロっちゃった方がいいんでないの? 理想はカンナギ側にアポ取ってからだけど
- 421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 21:02:06.12 ID:wLhI5SwO0
- 黙ってて研究で時間とられてもアレだからゲロっちまえよユーってなるな
- 422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 21:50:27.67 ID:x3HohwMoO
- 「ちょっと待てシン」
「なんっすかリーダー?」
「仮にそうだったとして…何故自分のデジタマを破壊するようになると?別に放っておけばいいんじゃないのか」
「えっとそれは、だから…自分のデジタマから蛮族デジモンの幼年期が産まれてこないように…と」
「それなら産まれるまで待って様子を見たほうが合理的ではないか?ちゃんと両生類系デジモンが産まれる可能性もあるだろう」
「そ、それは…そうッスけど…心ある生き物は常に合理的な判断ができるとは限らないッスよ」
「…それはそうだな。だが仮説としては弱い」
「じゃあ他にどういう理由があるんスか!?」
「…分からん」
わかんないよね…。
膠着状態だ。
「だが、今できることはある。デジタマ捕獲作戦の下調べだ」
「何するんッスか?」
「丁度いい。メガが作った試作品を試そう」
なんか作ったんですか?
「対クラッカー用撹乱兵器…ダミー・デジドローンだ」
- 423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 22:02:04.99 ID:QL2cyC/to
- カンナギのやらかしのせいで余計な混乱が…
- 424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 22:13:30.48 ID:x3HohwMoO
- ダミー・デジドローン…。
これはリーダーが、対クラッカー戦を想定してメガに作らせた秘密兵器だそうだ。
デジモンを従える者同士がデジタル空間で戦闘を行う場合、司令塔を破壊することが最も有効な戦術だ。
我々が操作しているデジドローンは、簡単に作れるものではない。
我々がデジタルワールドやデジタル空間を視認するのに使っているソフトウェアであるデジクオリアは、古の時代に実在したシャーマンの特殊な才覚と霊能力を人工知能によって再現するものだ。
そして、その視聴覚を担うデジドローンとは…
日本では昔「管狐」や「飯綱」と呼ばれ、海外では「使い魔」と呼ばれた霊能力技術を再現したものである。
ある意味では擬似的な人工デジタル生命体に近いかもしれない。
そのため、一度破壊されてしまうと、再構成するのには長い時間がかかってしまうのだ。
もしクラッカー戦でデジドローンが破壊された場合、我々はデジタル空間を一切視認できなくなってしまう。
デジタルゲートを安全な位置へ開いてデジモンを避難させることすらできなくなる。それは戦闘を大きく左右するだろう。
そこで、クラッカー戦でデジドローンを破壊されないために、簡単に作れるダミーのデジドローンを開発したのだ。
これを使い、サラマンダモンがどのようにしてデジドローンを攻撃するのか探るつもりらしい。
- 425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 22:23:54.80 ID:x3HohwMoO
- 我々は、ダミー・デジドローンを操作して、サラマンダモンへ近づけた。
どう来るか…!?
サラマンダモンは、デジドローンへ気づいた。
すると意外なことに、サラマンダモンは…
『クワー!クワーァ!クワアアァァ!』
なんと、デジドローンへ抱きついたのであった。
近接攻撃は苦手そうなのに。
『クワー!クワー!クワー!クゥーン!クゥーン…!』
サラマンダモンは、デジドローンへ頬ずりを繰り返したり、ひっくり返って腹を見せたりしている。
リーダーは驚いている。
「…?何をしてるんだ?敵対心がある反応とは思えないな」
シンは訝しげに見ている。
「ぜんぜん攻撃してこないッスね…燃えた体で頬ずりしてくるのが攻撃?いや、あんま温度高くないッスねあの炎…」
カリアゲは、その様子を見てははっと笑った。
「うちの実家の犬みてえだ。けっこうな老犬でさ、白内障なんだけどよ、俺が会いに行くとあんな声出して甘えてくるんだよ」
「甘えて…いる?まさか…?デジドローンに…?」
「ん?どうしたんすかリーダー?」
「…まさか、あのサラマンダモン…誰かに飼われていたのか?」
「飼われてた!?な、何に!?」
「他の研究者か…あるいは、クラッカーに、だ」
おおっ!すごい!
みんな凄いぞ!!
この調子なら、近いとこまで推理できそうか…!?
- 426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 22:25:51.86 ID:ohQV20xho
- ここから誰が飼ってたかにはたどり着けないよなあ
- 427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 22:33:29.56 ID:x3HohwMoO
- その様子を見たシンは、顎に手を添える。
「ははーん、分かりましたよ!こんどこそ!」
「おお、シン!次の推理を聞かせてくれ!頼むぜ!」
「任せてくださいッスカリアゲ先輩!…コホン。あのサラマンダモンは、クラッカーに飼われていたんです」
リーダーは頷く。
「ふむ…」
「サイバー攻撃翌用のデジモンとして育てられていたけど…、デジタマを産んだ結果、飼い主のサーバーにダメージを与えてしまったんス!」
「ダメージ?」
「炎のデジモンだから…火事とか」
「なるほど…?」
「それで怒った飼い主に棄てられたんッスよ。それ以来、ああやって罪滅ぼしのために自分のデジタマを焼くようになってしまい、また飼い主のところに戻りたがっている…!どうッスか!」
「ふむ…先程よりは無理がないな」
おお!だいぶ近いぞ!
飼い主はクラッカーではないが…
…いや悪質なサイバー攻撃による器物損壊をやるような連中だから善人ヅラしたクラッカーみたいなもんか。
合ってる合ってる!
「あとは、デジタマを採取して隔離チェンバーで育てれば、元飼い主のサーバーを燃やした幼年期デジモンが見れるはずッス!」
「なるほど…。やってみるか」
すごいぞシン!
- 428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 22:36:35.71 ID:YJndB10mo
- 確かに飼い主にダメージを与えそうにはなったか?
- 429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 22:47:01.62 ID:x3HohwMoO
- そのとき。
スポンサーさんから通信が入った。
『御機嫌よう諸君!調子はどうだね?』
かくかくしかじかです。
『なるほど素晴らしい!農園からエクスブイモンとスティングモン、モスモンのデジタマを採取したと!映像で見せてもらったが、あれらの戦闘力は一級品だ!オペレーション・テイマーズがうまく進んでいるようで何よりだ!』
どうも。
『あー、もしもだケン君。私がモスモンのデジタマを欲しいと言ったら…譲ってくれるかね?』
勿論。
あなたにはとてもお世話になっています。
こっちだけでは手狭になりそうですし、お譲りしますよ。
『では…他の研究所でもセキュリティデジモンを研究しているため、そっちがサンプルとして譲ってほしいと言ってきたらどうだね?』
他の研究所ですか。
勿論、喜んで…
「ダメだ」
リーダー!?
「あんたになら譲れるが、どこの馬の骨とも知れない奴らには譲れない。これは我々のパートナーデジモンが命懸けで手に入れたものだ。相応の対価がなければ譲れない。最低でも300万円は払ってもらう」
そ、そんな、デジタマを売り物にするような…
『ハッハッハ!今のはリーダーが正しいよケン君!デジタマは金になる!優秀なデジモンのは特にな!』
し、しかし…
『コマンドラモン君の命懸けの成果とは、それほど安いものかね!?そんなことではカモにされるぞ、しっかりしたまえケン君!』
うぅ…。
その通りですね。
- 430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 22:49:06.79 ID:QL2cyC/to
- 利益の面でも情の面でもいつも正論だスポンサーさん
- 431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 22:59:45.43 ID:x3HohwMoO
- ヒョイとカリアゲが顔を出した。
「それで、今日は俺達になんか用事があるんスか?」
『ああ、近況報告を聞きたくてね。そうだ、君達はランサムウェアの被害には遭っていないかね?』
「ランサムウェアぁ?なんだそれ?」
メガがヒョイと顔を出す。
「ランサムウェア…。マルウェアの一種だよ。感染したパソコンの…」
「マルウェアって?」
「あのさぁ…。…えっとね、コンピュータウイルスやトロイの木馬、ワームのような、悪質なソフトウェアの総称だよ。ランサムウェアは、感染したパソコンのデータを勝手に暗号化してしまうんだ」
「暗号化?嫌がらせのためにか?」
「それもあるが、暗号化解除ツールを売り付けるように要求するものもある。データを人質にとって身代金を振り込ませるような手口だよ」
「へぇー、こええな…」
『解説ありがとうメガ君!近年は、既存のウイルスセキュリティソフトでは防げないランサムウェアが流行っているらしくてね。君達も気を付けたまえ!』
怖いですね…忠告ありがとうございます。
『それで君達は、これからは例の3つのデジタマの育成に専念するのかね?』
- 432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 23:06:23.27 ID:x3HohwMoO
- シンがひょいと顔を出す。
「これから、サラマンダモンのデジタマを拾おうと思ってるんス!人懐っこくて甘えてくるから、きっと前に誰かに飼われていて、棄てられたんスよ。だから、デジタマが安全なら、サラマンダモンも拾おうかと思ってるッス」
『…誰がそれを捨てたのかね?』
「クラッカーじゃないか、と思われてますね」
『…イカン!そのデジタマとデジモンを拾ってはならない!』
え!?
「な、なんでッスか?」
『もしもクラッカーが棄てたのなら…、そのデジモンにはマルウェアが仕込まれている可能性がある!拾ったら悪質なプログラムが起動し、データを盗まれるかもしれないぞ!』
「な…なんだってーーーーー!?」
あーーーーもう!!
一旦話がまとまりそうだったのに、かえってややこしくなった!!
- 433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 23:13:09.78 ID:YU09u4Bmo
- 事が大きくなりすぎてもうケンとクルエとカンナギだけの秘め事にするの無理だよぉ…
- 434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 23:14:05.77 ID:x3HohwMoO
- 「そんなことできるんスか!?」
『デジタルモンスターは情報生命体だ。パッチ進化というものがあるんだろう?もしクラッカーが、そのデジモンに任意のマルウェアを食わせてパッチ進化させていたら、そのマルウェアをばらまく感染源になる可能性があるだろう!』
「う…確かに…!で、でもクラッカーじゃなくて一般研究者が棄てたのだったら可哀想ッスよ…」
『同情を誘うブービートラップなんて古今東西どこにでもあるじゃあないか。戦場では、ぬいぐるみのテディベアや、赤ん坊の泣き声を録音したベビーカー等に、爆発物を設置する…。そんな罠なんて典型的な手口だ』
「うっわ、えげつないッスね…」
『そのサラマンダモンもその類ではないかね!?』
「あ、ありえる…!」
うおおぉぉ!違うんだよ!!
これ以上話をややこしくしないでくれスポンサーさん!頼むから!
…そう言いたいけど…言えない…!
- 435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 23:44:06.32 ID:x3HohwMoO
- その時、クルエの声がした。
「このサラマンダモンさん、人の声やチャットに反応しますよー」
お、ほんとに?
「お腹すいた?って聞いたら首を縦に振ってました」
や、やはり…
人間に育てられたのは確定だ。
『あのスカモン同様、高い言語能力を持っているようだねぇ?んん?用心した方がいいのではないかな?』
お…お言葉ですがスポンサーさん!
私はこのサラマンダモンが、クラッカーの罠とは限らないと思います。
『ほほう!何故だね!』
理由は3つ。
1つ目ですが…、デジタマは金になると言いましたね。
これほどきちんと言うことを聞く母体デジモンなら、変な罠として使うより、殖やしてデジタマを仲間のクラッカーに売ったほうが儲かるのでは?
『それはケース・バイ・ケースではないかね?君達の研究設備をマルウェアで破壊することも彼らにとって後々利益を生むはずだ』
あっそれはそうですね。ハイ。
『それで2つ目は?』
2つ目ですが…
デジタマを焼くように仕込む意味がない!
デジタマを普通に放置するように育てた方が、金の匂いをちらつかせられるのでは?
『奇行で人目を引いて目立つためではないのかね?』
デジタマを焼くようにした場合、このサラマンダモンが野生デジモンに殺されたら計画は破綻します。
しかしデジタマを残すようにして、そこにもマルウェアが遺伝するようにしていたのなら、デジタマを産んだ数だけブービートラップデジモンが生き残って拾われる可能性が高くなるわけですよ。
そうした方が確実だったのでは?
『世代を重ねると、与えたマルウェアが遺伝子の中で変異して、元の想定どおりに機能しなくなる可能性があるのでは?』
うっ…たしかに…!
くそぅスポンサーさんつよい…どうする…!
『3つ目は何かなケン君』
- 436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 23:45:14.34 ID:PUo9hSm3o
- こんだけ食らい付いてきたらスポンサーもケンが何か知ってること感づきそうだな
- 437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 23:48:19.67 ID:x3HohwMoO
- このサラマンダモンは、人語を理解できます。
『そのようだね。幼年期からよく教育されているのだろう』
つまり!
このデジモンから、飼い主の情報が漏洩するリスクがあるわけです!
正体を隠しているクラッカーが、そんなのを野放しにすると思いますか!
『ムム!確かに…どれだけ喋れるかは知らないが、機密情報管理が余りにも杜撰といえるかもしれない』
それに、我々のランドンシーフにはマルウェアを封じ込めるための隔離チェンバーがあります。
そこで質問すれば、マルウェア感染を防ぎつつ、クラッカーの情報を聞き出せるかもしれませんよ!
『…それならやってみる価値はあるねぇ!たとえクラッカーの罠だとしてもだ!うむ、くれぐれも気を付けてやりたまえ!』
よっしゃあ!!
私はガッツポーズを取りそうになったけど堪えた。
- 438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 23:51:13.30 ID:x3HohwMoO
- そういうわけで。
我々はデジタルゲートを開き、サラマンダモンを隔離チェンバーへ招き入れた。
飼い主について聞き出す役割は…
私やクルエがやるるのは、ちょっと危ないからやめておこう。
誰に頼むべきだろうか…
- 439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/31(月) 23:52:27.56 ID:x3HohwMoO
- つづく
- 440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 23:56:31.55 ID:PUo9hSm3o
- 乙
ケンやクルエがバラさずに真相分かっちゃう分には問題ないけどほぼノーヒントからカンナギ社長のせいだと導きだせる人は誰か
- 441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/01(火) 00:09:52.46 ID:vIBYN3M90
- 乙
デジタマ取られるでも放置されるでもサラには良くないよなあと思ってたけど
何だかんだで良い方向に向かってきたようなだ
- 442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/01(火) 00:12:29.58 ID:xYBa+gyZ0
- 乙 でも飼い主じゃないって知ったらがっかりだろうなサラ
- 443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/01(火) 10:06:01.37 ID:EbsKlV0s0
- 捨てられたデジモンを拾ってお話してまた捨てたら動物愛護団体にボロクソ言われるかな?
- 444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/01(火) 17:18:30.45 ID:6jV2GDq8o
- パルモンは人間とデジモンの通訳出来るくらい成長したかな?
- 445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/02(水) 00:17:26.38 ID:izxxKQ/ro
- 今日はないかあ
- 446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/02(水) 18:38:34.25 ID:g3SdE9W70
- 意志疎通まで出来てしまうともうペットとか番犬じゃなくてほぼ人間並みの情抱いちゃうよなあ
- 447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/02(水) 23:04:30.56 ID:CVonZoJoO
- 「ケン、まずはお前がやってみろ」
リーダー直々に私が指名された。
断ったら怪しまれる。素直に従おう。
えーと、サラマンダモンくん。
こんにちは。
『クァ〜…』
…それにしても、このサラマンダモンというデジモン。
DPが低い成熟期デジモンらしいのだが、どうにも不思議だ。
全身がメラメラと燃えているように見えるのだが、いったい『何が』燃焼しているのだろうか。
炎とは、有機物が高温状態となって酸素と結合し、二酸化炭素が分離する際に熱と光を放つ連鎖現象のことを指す。
そうであれば、このサラマンダモンは、炎を維持するために常に燃料を出し続けているはずだ。
そうなると、体の熱量(カロリー)は凄まじい勢いで消耗されていくはずだ。
さらに、火だるまになっている肉体は当然、表面が常に1400℃の高温にさらされている。
そんな温度で加熱され続けたら、肉体はあっという間に焼き肉、ないし黒焦げになってしまうはずだ。
さらに、炎の放熱によって隔離チェンバー内の温度はどんどん高温になるだろう(空気を循環させているので酸欠にはならないはずだが)
だが、このサラマンダモンはそうはならない。
一体なぜなのか…?
興味が湧いた。調べてみよう。
- 448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/02(水) 23:05:56.94 ID:izxxKQ/ro
- 言われてみれば常に燃えてるなんて色々変な話だ
- 449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/02(水) 23:11:41.47 ID:n9bL4yBG0
- バレないようにしなければ……と言う思考を置いて知的好奇心がモリモリ芽生えるの、研究者の鑑すぎる
- 450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/02(水) 23:19:49.39 ID:CVonZoJoO
- まずはサラマンダモンの体表の温度を調べてみる。
…30℃。
両生類型デジモンとしてはやや高めだが、予想よりもずっと温度が低い。
メラメラと炎が燃えているように見えるのだが…!?
…これは本当に炎なのだろうか。
乾燥した枯れ草を拾ってきて、サラマンダモンの炎へ近づけた。
…燃えないな。
炎が燃え移らない。
加熱されてすらいない。
『クワァ〜』
…サラマンダモン君。
体の炎を熱くできる?
『クワッ!』
サラマンダモンが力むと、体表を包む炎の温度は一気に上がった。1500℃だ。
枯れ草はメラメラと燃える。
やがて、サラマンダモンは炎の温度を下げた。
『クワァ〜』
どうやら密室で炎を燃やし続けると、高温になり、酸欠になることを分かっているらしい。
空気を循環させているから心配ないが、賢いな。
…さて。
どうやら、サラマンダモンを常に包んでいるものは、どうやら炎ではないらしい。
意識すれば実際の炎を出せるようだが。
なんだこれは?
熱をほとんど伴わず、赤くゆらめく光だけが出ているようだ。
ウミホタルやカブトクラゲがやるような、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応による生物発光だろうか…?
- 451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/02(水) 23:30:43.90 ID:CVonZoJoO
- しかし、蛍光を発する物質を常に放出し続けているというわけでもないようだ。
なんというか、これは…
『オーラ』のような、不思議なエネルギー…としか言えない。
デジモンは時々、我々の世界の物理法則を完全に無視することがある。
スターモンは原理不明の推進力を得て空を飛ぶし、狙った場所へ隕石を落として攻撃できる。
ベーダモンは、光線銃の光の輪によって他のデジモンを操ることができる。
トゲモグモンやアイスモンは、水晶のような体から冷気を放ち、周囲の物体を凍らせることができる。
なんだ凍らせるって!?炎を放つなら分かるが、凍らせるのは流石に意味がわからない!液体窒素を放ってもああはならないはずだ。
そう、一部のデジモンは、超能力とでも呼ぶべき不思議な力を獲得しているのだ。
…サラマンダモンの見せかけの炎も、そういった超能力の一部…なのだろうか。
- 452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/02(水) 23:42:54.27 ID:CVonZoJoO
- だが、超能力を使うデジモンは、どうやら無限に使い続けることができるわけではないようだ。
スターモンは飛行に多くのエネルギーが必要らしく、あまり好んで飛ばない。
…エネルギーを消費するということは、デジモン世界には我々の世界とは異なる物理法則やエネルギーがあり、デジモン達はそれを利用しているといえるだろう。
サラマンダモンは、『超能力を使うデジモン』のサンプルとしても優秀かもしれない。
尚、先程サラマンダモンが背中の炎で枯れ草を焼いたときは、背中の皮膚の腺からジメチルエーテル水溶液が噴霧され、燃料として使われていた。
…超能力を使うにしても、100%を超能力頼りにするよりは、ある程度物理法則に則った現象を起こして超能力でエネルギーを補助する方が効率的なのかもしれない。
- 453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/02(水) 23:49:56.68 ID:CVonZoJoO
- 「調子はどうだ?ケン。何やらいろいろ調べているようだな」
あ、リーダー!
サラマンダモンの体表を覆う炎の性質について調べていました。
「は?」
結露から言うと、サラマンダモンの体表の炎は「超能力によって、燃焼物に擬態する」ために存在しています。
動物やデジモンにとって、炎は脅威です。
できれば触れたくないものといえます。
サラマンダモンは、炎に見せかけた超能力光によって、自分の身を火だるまであるかのように見せかけることで、外敵に狙われるのを避けているんです。
さらに、怖がらずに触ってきた相手には、体表からジメチルエーテルを噴霧し、超能力で種火をつけることで、実際に燃やしてしまうこともできます。
そうやって自分の身を守っているんですね。
とても機能的な形質といえます。
「…で、そのサラマンダモンの飼い主の情報は聞けたか?」
飼い主?何の話でしたっけ。
「いや、お前には飼い主の情報を聞き出せと指示していたんだが、なぜ炎の解明などしているんだ?」
…はっ!そうだった!
炎が気になり過ぎてガチで忘れてた!
「なんだと…何をやっているんだケン!?」
『ハッハッハ!リーダー君、これがケン君の良いところだよ!とんだじゃじゃ馬だ、しっかり乗りこなしたまえ!』
うぅ…つい。
- 454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/02(水) 23:57:01.96 ID:CVonZoJoO
- 「次は俺がやる」
頼みますリーダー。
「…サラマンダモン。君の飼い主について聞きたい」
『クワァ?』
「君の飼い主は、クラッカーか?」
『クワァ、クワァ!』
首を横に振っている。
「では、まともな研究者か?」
『クワァ〜!』
首を縦に振っている。
「だそうだ。サラマンダモン曰く、飼い主はまともな研究者だそうだ」
そ…そのようですね。
『リーダー君!君はクラッカーが、飼ってるデジモンに自分がクラッカーだと名乗ると思うのかね!?』
「うっ…」
『私には、今の証言は信用できないな』
「…ならばどうやって聞き出せばいいというんだ」
そうなんだよな…
サラマンダモンが嘘をついてる可能性や、嘘を信じ込まされてる可能性を否定できないだろうし…
それを見破れる方法など、正直思い当たらない。
- 455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/02(水) 23:58:12.81 ID:n9bL4yBG0
- 素でやってるのが才能なんだよなあ
しかし物理法則に乗っかってる部分があるんなら解明したら色々活かせそうで有用な情報かも
- 456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 00:06:54.19 ID:WjBUwhWcO
- 「よう、調子どうだー」
おお…カリアゲ。
喋れない相手から情報を聞き出すのは、ちょっと無理そうだ。
飼い主がクラッカーじゃなくまともな研究者だとは言ってたけど、そもそもその言葉自体の信憑性が疑わしい。
「嘘付いてるってことか?」
そもそも、クラッカーとか研究者って言葉の定義をちゃんと理解しているのかも怪しい。
強敵だ…
「そうか…これからどうするんだ?」
どうしようかな…
逃がしてしまえば無害なんだけども。
「…なんか可哀想だな」
『カリアゲ君も話してみるかね』
「…少し話してみるかね」
頼んだぞカリアゲ。
- 457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 00:13:46.83 ID:WjBUwhWcO
- 「よ。サラマンダモン…でいいんだっけ?」
『クァ〜…』
「まずは…ごめんな。俺達は、お前の飼い主だった奴じゃない。別の人間だ」
『クァ!?クァ〜!クァ〜〜!クアアァァーーーー!!』
「…悲しいよな。飼い主さんのこと好きか?」
『クァ!クァ!』
サラマンダモンは首を縦に振っている。
「そうか。いい飼い主さんなんだな。俺達もお前の飼い主さんに会ってみたいぜ」
『クァ…』
「いつか会えるかな?」
『クァー!クァ!クァ!クァー!』
サラマンダモンは首を縦に振っている。
「そうかそうか!俺も会いてえな、お前をこんないい子に育てた優しい飼い主さんに」
『クァ〜!』
「でも…どうしてデジタルワールドにいたんだ?迷子になったのか?」
『クァ…』
「…わかんないよな」
『クァ!クァ!クァァ!』
サラマンダモンは首を横に振っている。
「理由が分かるのか。…さっきデジタマを壊して焼いてたのと関係あるのか?」
『クァァァ〜!』
首を縦に振っている。
- 458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 00:15:10.47 ID:Bysd4BgKo
- ちゃんと人間の言葉を理解できておる…
これで人間の言葉を話せれば手っ取り早いのに
- 459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 00:22:33.81 ID:WjBUwhWcO
- 「自分のタマゴを壊すの…嫌じゃないのか?」
『ク…クァ!!クァァ!』
首を横に振っている。
「…ほんとか?タマゴを壊してるときのお前の声…すごく悲しそうだったぞ」
『クァ…』
「…ホントは壊したくないけど、壊さなきゃいけない理由があるんじゃないのか?」
『…クァ…クァ!!クァァー!クアァァー!』
サラマンダモンは何度も首を縦に振っている。
「辛いよな、悲しいよな。ずっと、嫌だったんだよな、ホントは」
『クァァァ!クァァァーーーーー!』
頷くサラマンダモンの声は…どこか泣いているかのような悲しい響きがあった。
「…でも、飼い主さんのことは好きなのか?ホントはどうなんだ?誰にも言わないから教えてくれ!」
『クァ!』
頷いている。
「…そっか。それでも飼い主さんが好きなんだな。それよりお前、腹空いてないか?飯あるけど、食うか?」
『クアァ!』
「キノコしかないけどごめんな。ほらよっと」
カリアゲはデジドローンできのこを与えた。
『クゥゥーン!クゥゥーーン!ハムハム!モグモグ!』
「おお、食いっぷりいいな。これ好きなのか?」
『クァ!クァ!』
…その後カリアゲは、サラマンダモンと2時間ほど話したり、ボールで遊んだりしていた。
- 460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 00:23:59.24 ID:WCTyoa1to
- 飼い主が誰か知ったらカリアゲ絶対ぶん殴りにいくぞ
- 461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 00:26:19.79 ID:WjBUwhWcO
- …
サラマンダモンとカリアゲはすっかり打ち解けたようだ。
「ふぅ…。色々聞けたぞリーダー」
「ご苦労だったなカリアゲ。収穫はあったか?」
「ああ」
おお!凄いぞ!
「それでは、飼い主が誰かわかったのか?」
「いや。全然わからん」
分からんのかい!!
2時間も何話してたの!?
- 462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 00:27:31.55 ID:7cCRjvsC0
- 迷子の子供なら保護者の名前と連絡先分かるもの持たされてるもんだけど捨て子だもんなあ
- 463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 00:38:46.24 ID:WjBUwhWcO
- 「…どうやら諦めた方がいいらしいな」
『安全性が不明確な以上、やはりクラッカーが差し向けた罠かもしれないからねぇ!マルウェアを仕込まれている可能性は大いにある。このまま隔離チェンバー監禁し続けるか…処分した方が安全ではないかね?殖えられても困るだろう』
うぅ…
どっちもやりたくないな。
「おいリーダー、スポンサーさん!まだ話の途中だぞ、聞いてくれよ!」
「まだ何か報告があるのか?」
「このサラマンダモン、温泉が好きなんだってよ」
「はぁ…」
「何か分からないが、仕事が終わった後は、飼い主と一緒に天然の温泉に入ってさ。そこでフルーツを食わせてもらうのが楽しみだったんだと」
「…飼い主と一緒に?」
「デジドローンVRで映したアバターのことらしいぞ」
「なるほど…それでカリアゲ、結論は?」
「結論を急がないで聞いてくれ、リーダー」
「おぉ…?」
カリアゲは、サラマンダモンから聞き出した様々な情報を報告した。
飼い主は、デジタルゲートでデジタルワールドのいろんなところへ連れて行ってくれたらしい。
花のきれいなところを見つけたら、サラマンダモンをそこへ連れていき、綺麗な花を見せた。
ボールを使って一緒に遊んでくれたし、ピンボールなどのゲームも一緒にやってくれた。
デジタルワールドの野草などを組み合わせて、お菓子を焼いてくれたこともあったらしい。
とても甘くて、美味しかったそうだ。
…まだまだ、たくさんの思い出があるらしい。
- 464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 00:40:50.65 ID:O5H/MdTT0
- ほっこり、コマンドラモン達ともやってあげてくれ〜
- 465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 00:41:13.12 ID:Bysd4BgKo
- そこまで思い出刻んだ上で捨てたのか…
- 466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 00:42:50.38 ID:IEKfenJ3o
- アレ?そこまで具体的なエピソード知れてなぜデジタマを破壊しなきゃならなくなったのかとか飼い主の名前とかは分からないのか…
- 467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 00:48:04.39 ID:WjBUwhWcO
- 「…それが何だと言うんだカリアゲ…?思い出を羅列したようだが、どの情報も飼い主の特定には至らない。もう聞き飽きたぞ」
「待ってくれよ!!クラッカーってのは、デジモンにこんなに…愛情を注いで!いろんなとこに連れてって!一緒に触れ合うもんなのかよ!!」
「…」
「あのスカモンもそうだったと思うか!?リーダー!」
「…」
「そんな優しい飼い主が…サラマンダモンをブービートラップに使う悪党だなんて…俺には思えねえ…!思えねえよ!」
「だがそのサラマンダモンを、飼い主は捨てたんだぞ、カリアゲ。そういう奴だったんじゃないのか」
「…それでもだ!なにか理由があったんじゃねえのか!?デジタマを増やせない理由とかよ!そのまま無理に世話し続けても、生き延びさせられないとかさ…!」
「…そう言われても」
その時。
拍手が聞こえてきた。
『…カリアゲ君。ようするにこう言いたいのだね。クラッカーがブービートラップにしたと考えるには…あまりにも、飼い主が世話を焼く時間を使いすぎていると。そういうことだね?』
「…スポンサーさん…。そうだよ…俺は、ここまでデジモンと心を通わせて、長い時間触れ合って、幸せにしてあげようとする奴がいるとするなら…それはクラッカーじゃねえと思うんだよ…!」
『…そう吹き込んだだけかと、一瞬考えたが…。ここまで根気強く、思い出を聞き出す者がいるなんて、クラッカーの計算外だろうねぇ』
- 468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 00:57:10.63 ID:obMQ7FwSo
- なんでサラは飼い主を憎まないんだ…
- 469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 00:59:54.75 ID:WjBUwhWcO
- 『ちなみに、そこまで詳しい話をどうやって聞き出したのかね?』
「写真とか絵を見せたりして、聞いた」
『…』
スポンサーさんは肩をすくめて、リーダーの方を向いた。
『…クラッカーが、口のきけないブービートラップデジモンにこれだけのエピソードを吹き込む合理性はあるだろうかね?』
「…考えられないな。そんなことを聞き出そうとする者がいるということすら思いつかないんじゃないか」
『…飼い主が何者かは分からない。だが、その愛情を、私は信じてみることにしたよ』
「いつもと違って随分感情的ですね」
『同情ではないよ。合理性さ』
「…そうですか」
『…万が一ということもある。君達の研究所でブービートラップが発動したら、オペレーション・テイマーズは水の泡だ。それに…君達のビオトープは少し手狭だ。サラマンダモンは我々が預かろう』
「いいんですか?あなたの会社…クロッソ・エレクトロニクスにマルウェア被害が出る可能性があるのでは?」
『社内ネットワークに繋がなければ済む話だろう?様子を観察するには十分だ』
「…引き取ってどうするつもりですか?」
『我々のグループには、君達にセキュリティデジモンの勢力が集中しすぎることを危惧する輩もいてね。我々の中でも、セキュリティデジモンを独自に育てたいという声があるんだ』
「面倒を見る…と?」
- 470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 01:04:34.08 ID:WjBUwhWcO
- 『そうしようと考えているが、いいかね?』
「…どうぞ」
こうしてサラマンダモンは、とりあえずスポンサーさんの会社、クロッソ・エレクトロニクスに引き取られることになった。
いつか飼い主が見つかるときは来るのだろうか。
…私かクルエが情報を漏らさない限り、飼い主と巡り合うことはできないだろう。
- 471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 01:06:39.25 ID:RN2/u2+po
- せめてスポンサーさんだけは最後まで面倒みてあげてね…
- 472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 01:10:37.82 ID:AI5+mo6y0
- デジタマ問題は解決してないかも知れないけれど……
資金豊富で手段も色々取れるスポンサーさん側なら対処もし易い、といいな
- 473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 01:18:33.57 ID:WjBUwhWcO
- サラマンダモンが、クロッソのビオトープで生活して3日後…
サラマンダモンは、デジタマを3個産んだ。
サラマンダモンは自分のデジタマを見て、破壊しようとしたが…
スポンサーさんはそれを制止した。
「よしたまえサラマンダモン君!君のそのデジタマには非常ゥーに価値がある!破壊しないでくれ!」
『クワ!?』
「君のようにコミュニケーションが取れるデジモンは貴重だ。そんな君の優秀なデジタマ!買いたがる者達はごまんといる!育てさせてほしいとな!」
『クワ…!』
「もう君は、デジタマを破壊しなくていい。いいんだよサラマンダモン君!好きなだけ産んでくれたまえ!」
『クワ〜!クワァァーーー!クワァァ〜〜〜…!』
- 474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 01:20:58.31 ID:WjBUwhWcO
- …
その後。
私とクルエは、カンナギエンタープライズジャパンへ向かい、神木さんへサラと思われる個体の顛末を話した。
「…拾ってくれたのが君達でよかった。ありがとう」
疑問があります。
サラはデジタマを産みすぎたと言っていましたが…
そのデジタマを、他の誰かに譲ることはできなかったのですか?
「誰にだ?他の国の支社にか?社外にか?」
前者でしょうか。
「…キリがないだろう。増え続ければやがて秘密は漏れる。サラの存在を知るものは、日本支社の最上層部だけだ」
…なるほど。
社外には譲れるわけありませんよね。
あのサラマンダモンから、あなた達の情報が漏れる可能性は危惧していなかったのですか?
いろいろ話してくれましたよ。
保護したのが我々でなくクラッカーだったらどうするつもりだったんですか?
情報だけでなく力も利用されていましたよ。
破壊活動用デジモンとして。
「…サラをどうするか…話し合いの中で、機密保持のために殺処分すべきという声も上がったよ。だが我々にはできなかった」
…。
「野に放つのは、無責任な…重大なセキュリティインシデントだ。会社の利益のためには、殺処分した方が絶対に合理的だったんだ」
…できなかったんですね。
「何もかも中途半端だろう?最低だと、自分でも思っている」
…でも、それでよかったと思いますよ。
飼育し続けるのが無理である以上、殺処分するのが善い判断とも私には思えません。
「…我々は、クラッカーに勝てないかもしれないね」
そんなことで張り合いたくも勝ちたくありませんとも。
- 475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 01:23:18.14 ID:WjBUwhWcO
- …
数日後。
エクスブイモンとスティングモンのデジタマが孵化して、幼年期デジモンが産まれた頃。
スポンサーさんから連絡がきた。
なんだろう!
『君達!大変なことが起こった!?』
どうしたんですか?
『我々の社内ネットワークに、例のランサムウェアが侵入したんだ!ファイルが次々と暗号化されていくゥゥ!』
え!?
- 476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 01:23:57.55 ID:WjBUwhWcO
- つづく
- 477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 01:24:00.39 ID:RN2/u2+po
- サラはデジモン増えすぎると飼いきれなくなるって人間の事情もちゃんと理解できてたのか
- 478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 01:26:31.13 ID:Bysd4BgKo
- そんないったいどうして…
暗号化されたデータはデジモン達が人力で解けないだろうか
- 479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 01:55:57.26 ID:FzfY7tlU0
- クラッカーがサラにバックドア仕込んでた?
いやたくさんいるデジモンの中でサラを拾ってもらえるかどうかに賭けるわけがないか?
- 480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 01:57:52.63 ID:AI5+mo6y0
- 乙
情は不合理だけど、こうして連鎖して悪くはない形に収まることもある…… 人間社会だ
そして一難去ればまた一難だなあ
- 481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 02:48:19.62 ID:Gyl6y3vqo
- 乙
血も涙もないクラッカーと同類にもなりたくないし負けたくもないんだけどどうしても良いようにやられるなあ
- 482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 08:23:50.89 ID:ietmqQMH0
- サラはデジタマ取られて売られてくのは嫌じゃないんだろうか?
- 483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 08:32:55.98 ID:cCam07QM0
- デジモンストーリーは2匹で1つのデジタマ産んでたけどこの世界にもそのうちそういう方法を選択する個体も現れるかな
- 484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 20:06:30.06 ID:O5H/MdTT0
- アカタマの時に逆にバックドアでもやられたか?
- 485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 21:54:37.11 ID:h3XdXB8oo
- 「一体何故だ!?やはりサラマンダモンは罠だったのか!?」
『いいやリーダー君!サラマンダモンは社内ネットワークからは隔離していたので、感染経路は彼ではないはずだ。我々のネットワーク回線には、見張りマッシュモンがいてだね。外部からランサムウェアがやってきたのを目撃したそうだ』
「マッシュモンが目撃していた…?ではなぜその時即座に回線を断たなかったんだ!そうすれば侵入を阻めたはずだ!」
『ハッハッハ!マッシュモン達はきちんと我々にシグナルを送ってくれたんだが…我々がそれを受け取れなかった!伝達ミスだよ!いかんねえ!』
それを聞いたメガがジト目をしている。
「せっかくマッシュモンの警告を受け取るシステム組んだのに…なんでちゃんと運用してくれないんだ。誰だその戦犯無能は…?」
そう言うなよメガ。
サービス運用初期ではよくあることだ。
「仕方ないか…それは置いといて、なぜランサムウェアが動いているのにこんな悠長に電話してられるんですか!?さっさとPCの電源切ってランサムウェアを止めなきゃダメですよ!シス管仕事してます!?」
『いいや、やってもダメだろうな!君達へ電話したのは…こいつへの対処法を知らないか聞くためだ。見てくれくれえよ』
そう言ってスポンサーさんは、クロッソ・エレクトロニクスの社内ネットワークに入れたデジクオリアの映像を我々に見せてくれた。
- 486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 22:24:35.27 ID:h3XdXB8oo
- そこに映っていたのは…
https://i.imgur.com/CGncXMk.jpg
かつてデジタルワールドの寒冷地帯で目撃した幼年期デジモン、ヒヤリモン…
それが多数。
https://i.imgur.com/yyUpcmX.jpg
そして、胸部に大きな傷痕がついた成熟期デジモン。アイスモンが一体だ。
さらに、体表が泡立っている幼年期デジモン、バブモンも多数見受けられる。
https://i.imgur.com/5Y96K5A.jpg
デジタル空間内のたくさんのデータへ、バブモンがプクプクと泡を吐きかけて、ヒヤリモンやアイスモンがそれに息を吹きかけて硬めている。
次々とデータが、透明な固形物に覆われていく。
『これが今流行りのランサムウェアの正体らしいんだ』
なるほど…
ウィルスセキュリティソフトで防げなかったのは、デジモンだからか。
そして、PCの電源を落としても止められないと言ったのは…
『君達が研究して突き止めたことだろう?デジモンはパソコン上で動くソフトウェアじゃなく、情報の中で生きる生命体だから、シャットダウンしても構わずに活動し続ける…とね!』
ゴミ箱マッシュモン事件のときもそうでしたね。
- 487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 22:27:13.20 ID:HRpX5wv/o
- 戦略的な動きをしておる
- 488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 22:34:00.44 ID:AI5+mo6y0
- アイスモンというと、寒冷地帯では唯一顛末が語られなかった成熟期だが……
- 489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 22:56:03.13 ID:h3XdXB8oo
- 『このままでは全部やられる!クラッカーのデジモンに対抗できるのは君達だけだ!どうにかしてくれたまえ君達!』
一体なぜクロッソ・エレクトロニクスが狙われたんでしょうか?
『このランサムウェアの被害を受けた会社は無差別に狙われているようだ!カネを持っていることくらいが共通点だ!我々が狙われる理由があるとしたら…君達に出資してるからだろうかね!ハッハッハ!』
なるほど…
奴ら我々の資金源を狙ってきたわけですね。
そうして我々の弱体化を狙ったり、発展を妨害しようとしていると。
『その話は後だ!セキュリティデジモン達は出撃できるのかね!?』
できます!
ただ…
オンラインで出撃させた場合、前のスカモン戦みたいにデジタル空間内の好きな位置へ自在にデジタルゲートを開いて戦う戦術は使えません。
『なぜだね!?』
普通、デジタル空間内へデジタルゲートを開く場合、アクセスポイントと呼ばれる位置の周辺にしかゲートを開けられないんです。
そこから離れた位置にゲートを開けるのは、そうとう長い準備が要るし、開ける時間も短くなり、ゲートの大きさも狭くなります。
しかし、我々の高性能パソコンであるランドンシーフを直接接続したネットワークは、任意の場所へアクセスポイントを設定し、ゲートを開けるようになるんです。
前にスカモン大王に勝てたのは、奴の直上にゲートを開けてマッシュモンを降下させることができたからと言えます。
『勝率を上げるには、直接来てもらったほうがいいが…そうこうしていると、あっという間にデータを暗号化されてしまう!どうすれば…!?』
見たところ…
バブモンが吹き付けているのは石鹸ですね。
『石鹸…!?』
はい。
バブモンは体内の脂肪酸を、水酸化ナトリウムと反応させて石鹸を作った後、それを酢と混ぜることで蝋…ワックスを生合成できるんです。
普段はそのワックスを身に纏うことで、肌の乾燥を防ぐんです。
- 490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 23:15:59.17 ID:h3XdXB8oo
- しかしバブモンは今、ワックスを作らずに石鹸のままデータへ吹きかけています。
『なにか理由があるのかね?』
…ヒヤリモンが冷やし固められるようにするためかもしれません。
『どういうことだ?』
寒冷地域に済むヒヤリモンは、水を凍らせて氷を作り、自分の巣を作ることがあります。
その際に、水と尿酸を混合させることで、溶解吸熱を発生させつつ、水分の蒸発による気化熱を発生させることで、ふたつの冷却原理を同時に起こして急速に冷却するんです。
『ほほう、よく調べているね…』
ワックスは水に溶けません。
そのため、バブモンだけでは、じっくりじわじわと固形ワックスをデータの周囲に塗りたくって地道に固めることしかできませんが…
バブモンが水と混ざった石鹸を出してデータをぱぱっと包み込み、ヒヤリモンがその水分を利用して冷却することで、データを効率的に次々と冷却できるんです。
奴らはそうやって連携し、データを石鹸で固めることで『暗号化』しているんです。
『…こ、この一瞬で奴らの手口を見抜いたのかい?ケン君…』
もともとデジタルワールドでの調査で、あれらのデジモンの性質は調査済みでしたので。
それをこうやって組み合わせてくるのは全く想定外でしたが。
- 491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 23:20:57.73 ID:Bysd4BgKo
- その作戦をデジモンが自分で考えたのかクラッカーの指示か
- 492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 23:33:48.30 ID:h3XdXB8oo
- 『石鹸で固められたデータは、元に戻せるのかね?』
…石鹸ですからね。融点は60度くらいです。
サラマンダモンは、オーラのように炎のようなものを纏っていますが…
これの温度を石鹸の融点丁度に維持すれば、データを焼いて損失することなく、石鹸だけを溶かして無傷で復旧できるかもしれません。
『サラマンダモン…彼に賭けてみるか』
まずはランサムウェアデジモン達を倒すのが最優先です。
我々のセキュリティデジモンをオンラインで出撃させ、バブモンやヒヤリモンを排除するので…
スポンサーさんは、サラマンダモンでアイスモンを排除してください!
『分かった。…サラマンダモン、君に頼みたい…。我々のサーバーを護って欲しい。やってくれるかね?』
スポンサーさんがそう言うと、『クワ!クワァ!』とサラマンダモンの声がした。
『…ありがとう。共同作戦、開始といこう!』
分かりました。
コマンドラモン、マッシュモン、パルモン!
出番だ!
- 493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 23:38:04.02 ID:7vpw62yW0
- 積み重ねた経験値で勝ていつもの三匹
- 494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 23:43:19.02 ID:h3XdXB8oo
- バブモンは、水でふやかした固形石鹸をデータへ次々とかけている。
ヒヤリモンとアイスモンは、それを次々と冷却し、固めていく…。
そんなアイスモンの頭上から、何かの液体が突如降り注いだ。
アイスモンの頭上…天井には、ヤモリのようにサラマンダモンがぺったりと貼り付いていた。
口から出した液体をアイスモンの頭へ吐きかけたのだ。
驚いたアイスモンは、サラマンダモンに気づいた。
反撃しようとしたアイスモンは、凍ったデータを持ち上げて、投擲しようとした。
…サラマンダモンは、アイスモンの頭上から火炎放射を放った。
それを浴びたアイスモンは、全身火達磨になって炎上した。
サラマンダモンが最初に吐きかけたのは、エタノールだった。
メラメラと燃えるアイスモンは絶叫し、地面を転げ回った。
自前の冷却能力で体を冷やして火を消そうとするが…
天井からサラマンダモンが火炎放射を続けている。
一方的な展開だった。
つ…強いなサラマンダモン。えげつな。
- 495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 23:51:24.91 ID:AI5+mo6y0
- DP同クラス同士だからいい感じの戦いは出来るんだろな、と思ってたらえげつなさすぎて笑った 強いわこれは
- 496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/03(木) 23:53:30.23 ID:h3XdXB8oo
- アイスモンは、そのままサラマンダモンに何一つ有効な反撃をすることができず…
やがて倒れ、燃え尽きた。
え、も、もう勝ったの…?
早くない?
『ハーッハッハ!真正面からヨーイドンで戦っていたら勝負の行方は分からなかったがね!奇襲させた方が悪い!』
…さすがはカンナギが破壊活動デジモンとして育成した切り札だ。
ガチの破壊活動に特化している分、火力は物凄い。
…サラマンダモンはそのまま、ヒヤリモンやバブモンを焼き払い続けた。
だが、火炎放射にはかなりのエネルギーを消耗するらしい。
サラマンダモンはバテた。
マッシュモンは、バブモンやヒヤリモンを食って、毒がないことを確かめると…
サラマンダモンは倒したそれらを食べて、体力を回復した。
…後は容易いものだった。
幼年期デジモン相手に、真正面から戦って、こちらの鍛え上げたデジモン達が負けるはずがなかった。
ボスマッシュモンは、チビマッシュモンを放って索敵し、ランサムウェアデジモンを引きずり出した。
パルモンは、腕から伸びるツタを使ってデジタル空間内をワイヤーアクションのように華麗に飛び回り、鋭いツタの攻撃でランサムウェアデジモン達を突き刺して始末した。
コマンドラモンは…
逃げる敵デジモンを、自動小銃で葬った。
途中から可哀想になってきたが…
中途半端に逃がしたところで、他の会社のサーバーへ送られるだけだろう。
鹵獲したところで、我々のサーバー内で破壊活動をするかもしれない。
…慈悲はない。
我々は敵を一匹残らず殲滅した。
- 497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/03(木) 23:57:39.49 ID:ztihO0+zo
- パルモンいつの間にかスパイダーマンみたいなことを
- 498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/04(金) 00:03:34.46 ID:RCFjiBdzO
- …
『暗号化』されたデータを固めている石鹸は、水をかけてからサラマンダモンの炎で炙ると、じわじわと溶け出した。
でも、溶けた石鹸がかかってるな。
このままにしたデータを使ってると、そのうち危なくなるかも…。
『拭き取れればいいんだが…。地味に面倒な後始末だ。敵デジモンを倒すより大変な作業じゃないか…?』
パルモン、なんか拭くもの出せない?
『まかせて!』
パルモンはそう言うと、腕から麻の繊維のようなものを出し…
それを編み合わせて雑巾をいくつか作った。
『おそうじ!』
…マッシュモン、パルモン、コマンドラモンは、雑巾を使って石鹸水を拭き取った。
『クァ〜』
4足歩行であり、手を器用に使えないサラマンダモンは、拭き取り作業を見守っていた。
- 499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/04(金) 00:09:52.84 ID:lCyvbNuxo
- 拭くもの出せない?なんてアバウトな指示でちゃんと適したもの出せるんだ…
掃除って概念理解できてるんだ…
- 500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/04(金) 00:10:04.43 ID:RCFjiBdzO
- …
『君達のおかげで無事復旧できたよ!ありがとう!』
いえいえ。
暗号化されたデータを元に戻せたのも、敵の親玉を倒せたのも、サラマンダモンのおかげですよ。
『敵はサラマンダモンが倒せたかもしれない。だがデータの復旧は、ケン君!君の知恵がなければ手が出せなかった!君にも感謝している!』
そ…それはどうも。
「なあスポンサーさん、まだサラマンダモンを疑うのかよ?」
『いやぁカリアゲ君、今回は彼に助けられた。サラマンダモン君の力に…ではなく、「行動に」助けられた』
「行動に、か」
『そうだ。どれだけ力を持っていても、意思と行動がなければ何も変わらない。…サラマンダモン君は、我々のために力を貸してくれた。その意思に、私は敬意を表する。クラッカーのもとでは、この心は育まれることはないだろう!』
『クワ…!』
『疑ってすまなかった!仲良くやっていこう、サラマンダモン君!』
『クワァ〜!』
こうしてサラマンダモンは、無事にスポンサーさんからパートナーと認めて貰えたようだ。
- 501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/04(金) 00:12:28.78 ID:xJKdepRGo
- 新たな絆生まれたぜ
- 502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/04(金) 00:17:21.94 ID:d+zO0cys0
- 良かったなぁサラ……
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