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【水星の魔女】 エラン5号「ノレア、天下一品に行こう!」 ノレア「・・・・・・は?」
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1 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 20:56:39.93 ID:D6WeSs5o0
ノレア「いきなり何を言い出すんですか」
5号「いやこれ見てよ! こってりMAXだって! 絶対美味いやつじゃん!」
そう言って、5号がスマホの画面を見せる。そこには、こってりMAXとよばれるラーメンの画像が写っていた。
ノレア「・・・・・・別に、私じゃなくても。あなたの兄弟と行けばいいんじゃないですか?」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1687262199
2 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:00:33.22 ID:D6WeSs5o0
5号「それは無理だね。四男はスレッタ・マーキュリー達とお出かけらしいし、
他の兄弟は兄弟で予定があるらしいよ」
ノレア「はあ・・・・・・。つまり私は、あなたの兄弟の代わりに連れて行かれる訳ですか・・・・・・。
便利屋扱いとか、最低ですね」
5号「いやいやいや、違うって! 自分から聞いてきて、勝手に解釈しないでよ。
別に兄弟(あいつら)は関係ないって」
3 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:01:54.99 ID:D6WeSs5o0
5号は真面目な表情で、
5号「僕が君と一緒に行きたいと思ったから、誘ってるんだ」
そう告げた。
4 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:02:49.75 ID:D6WeSs5o0
ノレア「・・・・・・っ! そういうトコ、ずるいですよ・・・・・・」
5号「・・・・・・? ずるい?」
ノレア「な、なんでもないです! 行けばいいんでしょ、行きますよ!」
5号「そう? なら良かった。じゃあ行こうか」
ノレア「・・・・・・ホントいい性格してる」
ノレアは小声で愚痴った。
5 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:04:56.35 ID:D6WeSs5o0
天下一品への道中にて・・・・・・
5号「そういえば、部活はどう? 美術部に入ったんでしょ?」
ノレア「ええ、まあ。私とソフィの、2人だけしかいない部ですけどね」
5号「2人だけ? 珍しいね。ところで、ソフィって絵描けるの?」
ノレア「全然。大体いつも私の隣でゲームをしたり、マンガを読んだりしてます」
6 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:06:38.66 ID:D6WeSs5o0
5号「あははっ! 部活、思いっきりサボってるじゃん」
ノレア「まあ、ソフィなので。でもたまに、手芸部に顔を出して、ぬいぐるみを作ってるらしいですよ」
5号「? それって、手芸部と兼部してるってこと?」
ノレア「いえ。そもそもウチの学校、兼部は出来ないじゃないですか。あくまで気が向いたら行くみたいです」
5号「・・・・・・ふーん」
7 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:08:33.25 ID:D6WeSs5o0
5号「(裁縫には興味があるのに、絵は描かない。それなのに美術部に入ったってことは、
きっとノレアをひとりぼっちにしたくなかったんだろうね)」
ノレア「・・・・・・あなた、何ニヤニヤしてるんです?」
5号「いやぁ、仲がいいなあ、って思って」
ノレア「・・・・・・刺しますよ?」
8 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:10:32.24 ID:D6WeSs5o0
ノレアが、衣服に忍ばせた鉛筆を取り出す。
5号「いやいや待ってって! なんで刺そうとするのさ!?」
ノレア「あなたが失礼なことを考えるからです」
鉛筆が5号の喉元へと向けられた。
5号「! 分かった、僕が悪かった! だからそれをしまって!」
9 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:12:47.29 ID:D6WeSs5o0
ノレア「・・・・・・次はないですからね」
ため息を漏らしつつ、ノレアが鉛筆を衣服にしまった。
5号「悪かったって。でもそうか、ソフィが手芸部に行ってる時は、ノレアしか居ないんだね。
それなら、その時は僕が美術部に行こうかな」
ノレア「あなたが? どうして?」
5号「君の絵を見たいんだよ。最近、風景画を描き始めたんだろ?」
10 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:14:44.84 ID:D6WeSs5o0
ノレア「そうですが・・・・・・。別に、ソフィが居る時でもいいでしょ」
5号「ソフィが居るとにぎやかになって、絵をじっくりと見れなそうだからね。
あと、君が描いてるところを直接見たい」
ノレア「・・・・・・」
5号「駄目?」
11 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:16:25.37 ID:D6WeSs5o0
ノレア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ノレアはしばらく考え込んだ後、
ノレア「・・・・・・はあ。いいですよ、私の絵でよければ」
そう告げた。
12 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:17:14.07 ID:D6WeSs5o0
5号「ホントに!? ありがとう、ノレア!」
ノレア「べ、別に、そんなに喜ばなくても。たいした絵じゃないですし」
5号「そんなことないさ」
13 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:18:17.10 ID:D6WeSs5o0
5号「・・・・・・少なくとも、僕にとってはね」
14 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:21:51.49 ID:D6WeSs5o0
天下一品・店舗前にて・・・・・・
5号「さあ、着いたよ。ここが天下一品・中野店さ!」
ノレア「へえ。ちなみに、この店舗を選んだ理由ってあるんですか?」
5号「いや別に。なんとなくだね。強いて言うなら、この店独自の取り組みが面白いなあって思ったから」
ノレア「独自の取り組み?」
15 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:24:32.86 ID:D6WeSs5o0
5号「うん。これこれ」
そう言って5号が、店の前に設置された看板を指さした。ノレアが看板に目を向ける。
ノレア「? こってりスープがテイクアウト可能・・・・・・?」
5号「そう! 中野店では、こってりスープを紙コップに入れてテイクアウト出来るんだ!
価格はなんと190円! これで散歩中でも絵描き中でも、天一が楽しめるね!」
ノレア「???? ちょっとよく意味が分からないんですが・・・・・・。いや、意味自体は分かりますけど。
どうしてそうしようと思ったのかが分からない」
16 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:26:03.27 ID:D6WeSs5o0
5号「分からない? どの辺が?」
ノレア「こってりスープを、コンビニコーヒーと同じ感覚で売り出してるのが」
5号「そう? 同じじゃない? どっちも飲み物だし」
ノレア「いや、コーヒーとラーメンスープじゃ、扱いが全然違うでしょ・・・・・・。そもそも、需要はあるんです?」
5号「普通にあるよ。最近だと、普通の自販機でもラーメンスープ缶が売ってるじゃないか」
ノレア「!? そうなんですか!?」
17 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:27:20.51 ID:D6WeSs5o0
5号「うん。某ブランドのとんこつラーメンのスープ缶が、コーンポタージュ缶より売れたって話もあるし」
ノレア「・・・・・・一体、この国はどうなってるんですか」
5号「いや、そんな評論家みたいなこと言われても。まあ、今回の目的はこれじゃないし、そろそろ店内に入ろうか」
ノレア「それもそうですね」
立ち話をやめ、2人は店内へと足を踏み入れた。
18 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:28:30.18 ID:D6WeSs5o0
天下一品・中野店の店内にて・・・・・・
茶髪の店員「お待たせしました、こちらがこってりMAXになります」
ノレア・5号「こ、これが、こってりMAX・・・・・・!」
2人が店に入ってから数分後、ついに「それ」と対面した。
19 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:29:27.77 ID:D6WeSs5o0
ノレア「え、ちょっと待って下さい。れんげが全然スープに沈んでいかないんですが・・・・・・」
5号「見てよ、ノレア! 箸で麺を持ち上げると、麺にめちゃくちゃスープが絡んでる!
これたぶん、麺を食べてるだけでスープがメチャクチャ無くなるやつだ!」
5号はハイテンション、ノレアは絶句に近い状態で第一印象を述べた。
20 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:31:20.54 ID:D6WeSs5o0
5号「いやあ、普通のこってりラーメンは何度も食べたけど、こってりMAXはやばいね。
こってりの格が違う。値段も1200円越えだし」
ノレア「私、これを食べきれる気がしないんですが・・・・・・」
5号「まあまあ。とりあえず食べてみようよ。いざとなったら、僕が残りを食べるからさ」
ノレア「・・・・・・分かりました。食べてから判断します」
そう言って、2人はラーメンを食べ始めた。すると、
21 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:35:26.40 ID:D6WeSs5o0
5号「美味い!」
ノレア「っ、美味しい・・・・・・!」
2人の表情が、ぱあぁっっと華やいだ。
22 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:37:11.34 ID:D6WeSs5o0
5号「普通のこってりよりも味が濃いけど、単に塩味が強くなったというよりは、深みが増したように思える」
ノレア「見た目はすごくドロッとしてますけど、味はしつこくないですね。思ったより全然いけます。
むしろ私、これ好きかもしれません」
5号「形が無くなるまで煮込まれた野菜が、いい仕事してるんだろうね」
2人はどんどんと食べ進めていき、残すことなく完食した。
23 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/20(火) 21:38:59.21 ID:D6WeSs5o0
以上で前半終了です。後半は数日中に投稿したいと思います。
ここまで読んで下さった方、ありがとうございました。
ではまた。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/20(火) 21:57:56.48 ID:Jfk2zhODO
おつ
枯渇していた5ノレ分が幾分か補給された
25 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:37:54.02 ID:rd60AkAz0
お待たせしました。これから、後半の内容を投稿していきます。
26 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:41:38.69 ID:rd60AkAz0
白銀髪の店員「ありがとうございました!」
食後、会計を終えた2人は店の外に出た。
5号「いやあ、美味しかったねぇ」
ノレア「そうですね」
27 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:42:35.38 ID:rd60AkAz0
ノレア「でも良かったんですか? ご馳走してもらっちゃって」
5号「もちろん。僕が誘ったしね。デート代は払うよ」
ノレア「・・・・・・デートって。私、知ってますからね。あなたがスレッタ・マーキュリーを口説(くど)いたこと」
5号「!? なんで知ってるの!? ・・・・・・って、そうか。そういえば、あの場にはソフィもいたんだっけ・・・・・・」
28 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:45:58.08 ID:rd60AkAz0
ノレア「ええ。『街中で2人で遊んでたら、気持ち悪いやつがスレッタお姉ちゃんを口説いてきた』って
言ってましたよ。気持ち悪いやつって、あなたのことでしょう?」
5号「・・・・・・え、ちょっと待って。僕、ソフィと普通に面識あるし、何度も話してるよね?
ソフィの僕の評価って、そんな感じなの?」
ノレア「あなたの口説く姿が、相当気持ち悪かったんじゃないですか?
そんな男にデートと言われた所で、全然嬉しくないですね」
ノレアがジト目で5号を見る。
29 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:47:09.02 ID:rd60AkAz0
5号「いや、あれは出来心だったというか・・・・・・!」
ノレア「へえ。じゃあ教えて下さいよ。なんで出来心を持ったのか」
5号「・・・・・・言わなきゃ駄目?」
ノレア「刺されたいですか?」
30 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:48:24.29 ID:rd60AkAz0
再び鉛筆を取り出そうとするノレアを見て、5号は観念した。
5号「分かったよ・・・・・・ほら、僕達兄弟って、みんな同じ顔してるだろう?」
ノレア「6つ子ですからね」
※このSSでは、オリジナルのエラン様は末っ子(六男)の設定になっています。
31 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:50:33.33 ID:rd60AkAz0
5号「そうそう。つまり、端からみれば誰が誰だか分からないってわけ」
ノレア「・・・・・・まあ、普通はそうでしょうね」
5号「明確な違いなんて、小物類の身に着け方くらいだろう? だからさ、スレッタ・マーキュリーの前で
四男の真似をしても、バレないと思ったんだ。それにほら、スレッタ・マーキュリーのほうは
少なからずアイツ(四男)に気があるみたいだし。それを確かめてみたいなぁって思って・・・・・・」
ノレア「四男のフリして口説いたと」
5号「はい」
ノレア「・・・・・・気持ち悪」
32 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:52:12.92 ID:rd60AkAz0
5号「言わないでくれよ!!」
5号は泣きそうな勢いで言葉を続ける。
5号「頑張ってアイツ(四男)に寄せたのに、スレッタ・マーキュリーには速攻でバレるし、
ソフィには「少女マンガに出てくる、かませ犬みたい」とか言われたあげく、大爆笑されたんだよ!?
口説くフリをしたこと、本気で後悔したよ!」
今にも地面に崩れ落ちそうな5号に対し、ノレアは、
ノレア「・・・・・・一応聞いておくんですが、本当にフリなんですか?」
ほんの一瞬、不安げな表情をして、そう尋ねた。すると、
33 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:53:42.05 ID:rd60AkAz0
5号「え? そりゃそうだよ」
あっけらかんと5号は答えた。
5号「だって、僕が好きなのは・・・・・・」
ノレア「・・・・・・好きなのは?」
34 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:54:28.14 ID:rd60AkAz0
ノレアと5号が見つめ合う形となり、そして・・・・・・。
5号「・・・・・・おっと、そろそろバイトの時間だ」
5号はそう言うと、視線を外した。
35 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:55:11.46 ID:rd60AkAz0
ノレア「・・・・・・下手すぎません?」
5号「何が下手なのか分からないなぁ! というか、危うく個人情報をばらす所だったよ。ノレアは策士だね」
ノレア「あなたが勝手にばらそうとしただけです」
5号「・・・・・・そうとも言えるね」
36 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:56:05.98 ID:rd60AkAz0
ノレア「はあ。変なことばっかり言うからそうなるんですよ」
5号「あはは。でも、バイトがあるのはホントなんだよ。実は、2時間後にバイトが入ってる」
ノレア「・・・・・・そういえばあなた、よくバイトしてますよね。部活も入らずに」
5号「まあね。行きたい場所があるんだ」
ノレア「行きたい場所?」
37 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:57:11.85 ID:rd60AkAz0
5号「ああ。どうしてもそこに行きたい。だからお金を貯めてる」
そう言う5号の顔は、いつになく真剣だった。
ノレア「・・・・・・あなたがそこまで強く言うなんて珍しい。本気なんですね」
5号「ああ、もちろん。・・・・・・だからさ、ノレア。その時は一緒に・・・・・・」
5号が言葉を続けようとした、その時だった。
38 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:58:12.06 ID:rd60AkAz0
ドォォオンッ!!!!!
突如、爆発音が聞こえた。
39 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 19:59:19.46 ID:rd60AkAz0
それと同時に、2人の意識が途切れる。
その時間は一瞬にも思えたし、永遠のようにも思えた。
いつの間にか地面に膝をついていた2人は、まだ朦朧とした意識の中、辺りを見回す。
すると、現状が理解できた。
40 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:00:19.99 ID:rd60AkAz0
自分たちが歩いていた街道。そこに並ぶように展開された商店の1つから、火の手が上がっていた。
勢いを増す炎。逃げまどう人々。崩落する街灯や看板。
小規模ながらも現実に起きた、疑いようのない地獄絵図を見て。
41 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:02:00.33 ID:rd60AkAz0
----- 壊してやろう・・・・・・! 学園ごと、何もかも・・・・・・! -----
ノレアは、知らないはずの記憶を、断片的に思い出した。
42 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:03:22.74 ID:rd60AkAz0
5号「大丈夫か、ノレア!」
爆発は、本当に偶然起きたものだった。
黒幕なんて存在せず、奇跡のような確率で起きてしまった悲劇だった。
ゆえに、それが引き金となる。
43 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:04:12.75 ID:rd60AkAz0
ノレア「触るな! スペーシアンッ!」
5号「っ・・・・・・!」
44 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:05:03.23 ID:rd60AkAz0
ノレア「その反応と表情・・・・・・あなた、”覚えて”ますね?」
5号「!? まさかノレア、思い出したのか?」
5号の問いかけは、「はい」と言っているのと同義だった。ノレアの感情に、怒りが生じる。
45 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:05:56.05 ID:rd60AkAz0
ノレア「本当に・・・・・・いい性格してますね。あなた、何も覚えてない私を見て、裏で笑ってたんでしょう?」
5号「違う! そんなことは・・・・・・!」
ノレア「違わない! このまがい物の世界が何なのかは知りませんが、元の世界で私達は、
仲良しでも何でもなく、使い捨ての道具としての繋がりしかなかった!」
46 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:08:24.09 ID:rd60AkAz0
ノレア「それなのに! この世界で私は、あなたと仲を深めただけじゃなく、
殺したいほど憎いはずのスペーシアンとも、交流をしていた! これが笑えないはず無いでしょう!?」
ノレアが衣服から鉛筆を取り出し、5号へと向ける。その先端は、5号の首元から数ミリのところまで迫っていた。
いつ刺されてもおかしくない状況の中、
5号「・・・・・・そうだね。元の世界で僕らは別に、仲良しじゃなかった」
47 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:09:37.60 ID:rd60AkAz0
5号「でもさ、仲良くなれる兆(きざ)しはあったよ」
あくまで冷静に、ノレアの瞳を見つめ、5号はそう告げた。
ノレア「・・・・・・あなた、この期に及んでそれって。死にたいんですか?」
5号「いいや? 君も知ってるだろう? 僕は長生きがしたいんだ。死にたくなんてない」
ノレア「だったら! そのふざけた態度は何なんですか!? 本当に刺しますよ!?」
48 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:10:14.13 ID:rd60AkAz0
5号「・・・・・・だって君、ずっと震えてるじゃないか」
49 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:11:23.56 ID:rd60AkAz0
5号「それじゃあ、誰も殺せないよ」
そう言って5号は、ノレアから鉛筆を優しく取り上げた。
ノレア「あっ・・・・・・」
それと同時に、ノレアは崩れ落ちるように膝を地面につける。
しばらく沈黙していたノレアだったが、やがて口を開き、
ノレア「・・・・・なんで、あなたは平気なんですか?」
そう問いかけた。
50 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:12:18.60 ID:rd60AkAz0
ノレア「あなたも私も、ガンダムに乗ってたでしょう? その記憶を思い出して、どうして平気でいられるんですか?」
ノレア「ガンダムに乗るたび、私達は命を削っていました。パーメットスコアが上昇するたび、
死が間近に近づいてくる。その恐怖を思い出したら、とても正気じゃいられない」
ノレア「この甘ったれた世界に慣れてしまったから・・・・・・尚更です。それに私は、自分の最期も思い出してっ・・・・・・!」
ノレアの瞳から涙がこぼれる。その瞬間、
51 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:14:18.73 ID:rd60AkAz0
5号「忘れよう」
そう言って、5号はノレアを抱きしめた。
52 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:15:03.71 ID:rd60AkAz0
5号「震えて泣くほど怖い記憶なんて、忘れてしまえ」
ノレア「・・・・・・簡単に言わないで下さい」
5号「簡単さ。ほら、こうやって何かに集中すれば、その事以外は希薄になる」
ノレア「それで抱きしめたんですか・・・・・・?」
53 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:16:17.13 ID:rd60AkAz0
5号「うーん。単に抱きしめたかったから、っていうのもあるね」
ノレア「なにそれっ・・・・・・!」
思わずノレアは笑う。
54 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:16:56.16 ID:rd60AkAz0
ノレア「でも、ずっとこうしている訳にもいかないじゃないですか」
5号「あっ。それもそうだね」
そう言うと、5号は片手でスマホを取り出した。
55 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:18:20.91 ID:rd60AkAz0
5号「あ、もしもし、店長? 僕です、僕。今日のバイトなんですけど、ちょーっと都合が悪くなりまして。
申し訳ないんですがお休みさせていただきます。ああ、ハイ。この埋め合わせは必ず。じゃあまた!」
ノレア「・・・・・・今の何です?」
5号「いやほら、この後バイトがあるって言ったろう? だからキャンセルの電話をしたんだ。
これでまだこうしていられる」
ノレア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しばらく呆気にとられていたノレアだったが、
56 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:20:35.42 ID:rd60AkAz0
ノレア「・・・・・・あはっ。あはははっ!」
堰を切ったように、爆笑した。
57 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:22:46.72 ID:rd60AkAz0
ノレア「そ、そういう意味で言ったんじゃなく・・・・・・て、あははっ 駄目、笑いが止まらないっ」
ノレアはしばらく笑い続け、その後、言葉を続けた。
ノレア「ふふっ。私、これだけ笑ったの、元の世界を含めて初めてですよ」
5号「・・・・・・なんかいまいち釈然としないけど、涙が止まったのなら良かったよ」
58 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:23:52.53 ID:rd60AkAz0
ノレア「まあ、別の意味で震えは止まらないですけどね」
5号「・・・・・・ねえ。君の方がいい性格してると思うんだけど」
ノレア「何か言いました?」
5号「別にぃー」
軽くふてくされた5号を見て、ノレアは再び笑みを浮かべた。
59 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:25:09.02 ID:rd60AkAz0
◇ ◇ ◇
5号「それでどう? もう大丈夫?」
ノレア「ええ。おかげさまで」
5号とノレアは手を繋ぎ、帰路へと向かう。
60 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:27:09.34 ID:rd60AkAz0
5号「また怖い目にあったら言ってよ。いつでも駆けつけるからさ。
まあ、今回みたいなことはそうそう無いと思うけど」
ノレア「・・・・・・それはどうも。でも、大変じゃないですか?」
5号「約束したからね。隣にいるって」
ノレア「・・・・・・あっ」
61 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:28:05.31 ID:rd60AkAz0
----- 生き方が分からないなら、一緒に探してやる! 怖いなら隣にいてやる! -----
62 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:30:10.88 ID:rd60AkAz0
5号「それとも、僕と一緒にいるのは嫌かい?」
5号がそう問いかけると、ノレアの頬が朱色に染まった。
ノレア「そ、そんなことは、ない、です」
頬の変化を隠すためか、ノレアが顔を背ける。その姿を見て、5号は笑みを浮かべた。
63 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:31:36.15 ID:rd60AkAz0
5号「それは良かった。ただ残念ながら、隣にいるのがどうしても難しい時ってあるからさ。
これを僕だと思って、お守り代わりに持っててよ」
そう言って5号は、ノレアに品物を渡す。それを受け取ったノレアは、訝しげな表情で問いかけた。
ノレア「・・・・・・・・・・・・何ですか、これ?」
64 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:33:36.79 ID:rd60AkAz0
5号「見ての通り、れんげだよ。天下一品ってキャンペーン期間中、
スマホのアプリでポイントが貯められるんだけど、その交換商品。実はさっき、店で交換してきたんだ」
ノレア「いや、そういう事じゃなく」
5号「お守りをれんげにした理由ってこと?」
ノレア「はい」
5号「・・・・・・まあ、別にれんげじゃなくても良かったんだけどさ。分かりやすいじゃないか」
ノレア「分かりやすい? 何がです?」
65 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:35:13.82 ID:rd60AkAz0
5号「今日一緒にラーメンを食べたのが、僕らの初デートだったってこと」
5号はいつも通りに振る舞うが、ほんの少しだけ、頬が赤く染まっていた。
66 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:37:08.39 ID:rd60AkAz0
5号「それで、ときどきでいいから『そういえばあの日が初デートだったなあ』って思い返してくれたら、嬉しい」
ノレア「・・・・・・馬鹿なの? あなた」
そう言って呆れながらも、ノレアは微笑んだ。
終わり
67 :
◆WLqChR3KymnV
[saga]:2023/06/25(日) 20:50:58.41 ID:rd60AkAz0
以上で完結です。
後半まで読んで下さった方々、ありがとうございました!
ちなみに、完全に余談ですがこのSSは、昔書いた、
【DOD3】ゼロ「天下一品に行ったことがないだと・・・」というSSと同じ世界の話になっています。
今回のSSの茶髪の店員や白銀髪の店員の正体は、ドラッグオンドラグーンシリーズやニーアシリーズを
ご存知の方なら察しがつくかと思います。もし興味があればご覧下さい。
(また、ネタバレになりますが、上記のSSを書いた2014年当時は、中野に天下一品はありませんでした。
何の事を言ってるのかは、SSを読めばお分かりになるかと思います)
それでは最後までご覧いただき、本当に、本当にありがとうございました!
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