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【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.1
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217 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:03:49.56 ID:zsw/61tI0
ルカ「ひとまず今は倉庫を漁ってるんだが、何しろあそこも膨大な数があるからさ。まだ全部は見れてないんだ」
にちか「それを……手伝えってことです?」
ルカ「ああ……悪いんだけど、頼めないか! にちか、オマエしかいないんだよ!」
にちか「……」
どうなんだろう。
私にはこのモノクマを起動することがパンドラの箱を開けることと同義にしか思えない。
でも、パンドラの箱を開けた結果に最後に残るのは小さな希望だ。
脱出という希望を掴むためなら、災厄の奔流に一度身をまかす必要もあるのかも知れない。
……生唾を一つ飲み込んだ。
にちか「……わかりました、やります。やりますよ」
ルカ「……ホントか!」
正直なところ、現実逃避できるところを探していたところはある。
この学校に来てから感じることになった身の危機や他の人と比べた時の劣等感。
そういうのに思考が堂々巡りになりがちな今、誰かのために時間と思考を捧げられるタスクは都合が良かった。
ルカさんは依存先の、とりあえずの依代としてちょうど良かったのである。
218 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:04:51.76 ID:zsw/61tI0
ルカ「サンキュー……にちか、オマエならそう言ってくれると思ってたよ」
にちか「アハハ、ルカさんにそう言われると弱いです!」
ルカ「おっし……それじゃあ必要になるのは【SHU-1ケーブル】【YM2ケーブル】【HR-MKケーブル】【K-Bケーブル】【SG-TMケーブル】の5種類だ。これを探すぞ」
にちか「了解です!」
ルカ「あ……忘れてた。それともう一つ。伝えとくことがあるんだが……」
にちか「ん? なんです?」
ルカさんはすくりと立ち上がるとそのままスタスタと部屋の反対へ。
モノクマの頭部に向き合うような形で部屋には扉が取り付けられていた。
ルカ「ここから外に出れるんだ」
にちか「外……ですか?」
ルカ「といっても流石に学園の中だ。まあ隠し通路みたいなもんとイメージしとけばいいさ」
にちか「はぁ……」
ルカさんは扉の横に取り付けられたボタンに手をかざす。
壁の向こうからゴゴゴゴと低く唸るような音がしたかと思うと、視界がだんだんと開けていった。
219 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:06:02.58 ID:zsw/61tI0
------------------------------------------------
【B1F 図書室】
にちか「こ、ここって……」
ルカ「ああ、地下の図書室だよ」
どうやら図書室の奥側の本棚の一角が動く仕掛けになっているらしく、裏の壁に隠された扉から出入りが可能みたいだ。
こんなの、初めに入った時はまるで気づかなかった。
ルカ「ったく隠し部屋なんてどこの魔法学校だって話だよな」
にちか「びびった……こんなん初めて見ましたよ」
私たちが扉から離れてしばらくすると、自動で本棚は閉まっていった。
これで普段はカモフラージュしているのだろう。
にちか「これ、図書室側から行くこともできるんですか?」
ルカ「あー……ちょっと待ってな」
ルカさんは動作した本棚に並んだ本をしばらく見比べてから、収められた辞典の一つを強く押し仕込んだ。
ゴゴゴゴ……
するとまた地響きのような音がして、本棚が動きだし、すぐに先ほどの扉が姿を現した。
220 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:07:27.77 ID:zsw/61tI0
にちか「……あれ?」
ただ、その扉には一つの違和感。
ルカ「そうなんだよ。こっち側から入るには【カードキーがいる】みたいなんだ」
先ほどの隠し部屋側ではボタンがあった位置に、今度はカードリーダーのような機械が取り付けられていたのである。
ルカ「当然私たちはこんなカードキーなんか持っちゃいない。こっちから入るのは不可能ってことだな」
にちか「一方通行の隠し通路……ですか」
ルカ「ああ、だから図書室側から入ることは基本的にないな」
どっち側からも行き来できたら何かに使えるかと思ったけど、これならあの隠し部屋に行く以外の用途はあまりなさそうだ。
私たちが扉から離れると、またしばらくして本棚が自動で動いて蓋がされた。
これでもう他の誰にも気づかれない。
ルカ「今の所ここに気付いてるのは私とにちかだけのはずだ……不用意に情報を振り撒くのも良くない気がするしな」
にちか「ですね……あのモノクマの頭とか……それを直そうとしてるとかってのは伏せた方が良さげです」
221 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:09:02.79 ID:zsw/61tI0
ルカ「にちか……急にこんなことを背負い込ませて悪いな」
にちか「い、いえ! むしろ私にだけ明かしてくれたのってなんかすごい嬉しいかもです! ルカさんが私を信頼してくれた証なのかなって思うと!」
やばい、急にルカさんに笑顔を向けられてテンパってしまった。
口から飛び出した不恰好な本心を慌てて両手で押さえ込む。
ルカ「いや、その通りだよ」
にちか「……!」
ルカ「正直さ……私、目が覚めてからずっと怖いんだよ。こんな訳のわからない状況で、コロシアイだのなんだの言われて……ずっと震えてるんだ」
にちか「ルカさん……」
ルカ「それでも前を向こうって思えたのは私を頼ってくれるオマエがいたからなんだよ」
ルカ「オマエの期待に応えてやりたい……それが今の原動力だ」
驚いた。
ルカさん自身の震えには気付いてはいたけど、そこまで私のことも思ってくれていたなんて。
私がルカさんのことを頼りにして、ようやっと立っている。
そんな一方的で無責任な思慕だとばかり思っていた。
でも、そうじゃなかった。
ルカさんだって等身大の女の子で、等身大に怯えて、等身大に震えている。
それでも私の前に立っているのは、私が後ろからルカさんのことを見続けているから。
ルカ「……なんてな」
ルカさんの口から、私という存在を必要とされていることが出たことが存外嬉しくて、私は思わず手を打った。
にちか「ルカさん……絶対、生きて帰りましょうね」
にちか「私も、ルカさんも……みんなも連れて!」
ルカ「ハッ……当たり前」
私とルカさんはそこで一旦別れて部屋に戻ることになった。
倉庫でケーブルを探すのは時間が空いたタイミングを見つけながらでいいと言っていた。
次の自由時間なんかで行ってみてもいいかもしれないな。
222 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:12:26.06 ID:zsw/61tI0
【にちかの部屋】
部屋に帰ってからも、口の中に押し込んだ秘密が溢れだしそうで、あたふたしていた。
ルカさんのためにケーブルを探す。その目的を得たのも一つ大きな収穫だった。
誰も存在を知らなかった隠し通路というだけで大興奮なのに、その秘密を共有しているのがあのルカさんなのだからしょうがないのだけど。
部屋に戻るなりすぐに蛇口をひねって、水道水を喉の奥に流し込んだ。
誰かに話してやりたいという衝動を飲み下して、一生懸命落ち着きを取り戻した。
さて、他の人に怪しまれないように日中は平然を過ごさなくちゃいけないよね。
まだ今日は朝ご飯を食べて少し経っただけ、今日という一日はまだ続くのだから。
どうしようかな……?
【自由行動開始】
1.交流する【交流相手の名前指定】
2.購買に行く(済)
3.休む(自由行動をスキップ)
【現在のモノクマメダル枚数…40枚】
【現在の希望のカケラ…15個】
↓1
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/07(水) 22:14:09.20 ID:Rw4nBgGP0
1.愛依
224 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:23:25.25 ID:zsw/61tI0
1愛依 選択
【中庭】
にちか「あ、愛依さん。こんなところで何してるんですか?」
愛依「あ、にちかちゃんじゃん。いや、何してるってわけでもないんだけどなんか落ち着かなくてさ……アハハ」
にちか「さっきの動機の話ですか?」
愛依「うん……いや、あんなの真に受けて行動する子なんていないとは思うんだけどさ……」
愛依「あの話聞いてると、うちらにコロシアイが要求されてるのはマジなんだなって認識するっていうか……」
にちか「……」
愛依「ご、ごめんね! こんなマイナスなこと口にしてもしゃーないもんね!?」
にちか「いや、大丈夫です。私も色々と溜まってるので、ここらでぶちまけあいましょうよ。そんですっきりしちゃいましょ!」
愛依「にちかちゃん……」
愛依さんと一緒にこのコロシアイにおける漠然とした不安を言葉にし合って過ごした……
-------------------------------------------------
プレゼントを渡しますか?
現在の所持品
【タピオカジュース】
【誰かの顔の餃子】
【クリスタルバングル】
【ストライプのネクタイ】
【クロの章】
【レイヤーキャリーバッグ】
【絵本作家ですのよ】
【三度サンドバッグ】
【猿の手】
【死亡フラッグ】
【生存フラッグ】
【お助けヤッチー君】
【ホームプラネット】
【占い用フラワー】
↓1
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/07(水) 22:27:22.14 ID:Rw4nBgGP0
【絵本作家ですのよ】
226 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:33:53.19 ID:zsw/61tI0
【絵本作家ですのよを渡した……】
愛依「こ、これ……! マジ?! もらっていいの!?」
にちか「え、あ、はい……なんか起動するたび新しい絵本を自動で生成してくれる機械なんですけど……」
愛依「うわ〜、めっちゃ助かるわ〜! 毎晩夜の読み聞かせの時の絵本に困ってたんだよね! なんだかんだいっつも同じ絵本になっちゃいがちだし、コンマリ?打破できそうでいい感じ!」
にちか「マンネリのことですかね……」
愛依「マジサンキュー、にちかちゃん!」
【PERFECT COMMUNICATION】
【いつもより多めに親愛度が上昇します!】
------------------------------------------------
にちか「そういえば愛依さんって兄弟がいらっしゃるんですよね?」
愛依「うん、そーだよ? 上にお姉とお兄がいて、そんで下には弟と妹が一人ずつ!」
にちか「えっ、めっちゃ大家族じゃないですか?! すご!?」
愛依「にちかちゃんのとこは、お姉ちゃんが一人だっけ」
にちか「いや、はい……え、嫌じゃないですか? そんなに兄弟いるのって」
愛依「イヤ……?」
にちか「ほら、うちの姉とかめっちゃデリカシーもプライバシーもないんですよ! こっちが部屋で友達と話しててもお構いなしに扉開けて『晩御飯よ〜』してくるし!」
にちか「私の選んで使ってるヘアコンディショナーとかも何の断りなしに使ってくるんですよ!? 家庭内の侵略者、ドメスティックインベーダーですよあんなの!」
愛依「アハハ、なんかにちかちゃんの家も賑やかそうだね〜」
にちか「笑い事じゃないです!」
愛依「でもうちもおんなじ。ほら、うちってちょうど真ん中だからお兄とお姉は何かと頼みごとをしやすい相手だし、弟と妹はちょうどいい遊び相手だと思ってる」
愛依「それでいったら家にいるときの一人の時間なんてめっちゃ少ないかもね」
にちか「ほら〜! しんどいじゃないですか〜!」
愛依「でも、うちからすればその時間もかけがえのないもんだからさ」
愛依「だって、その人と一緒に過ごす時間ってここから先の未来でも得られるかわかんないじゃん? 今こうやって一緒にいるキセキがあるからこそのもんじゃん?」
愛依「だから、うちは家族と一緒に居られる今が……すごく大好きで、すごく大切なんだよね」
にちか「……この学校、出なくちゃですね」
愛依「うん! お互い家族たちが待ってるもんね!」
(……お互い、か)
------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【愛依の現在の親愛度…3.5】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…16個】
227 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:35:59.00 ID:zsw/61tI0
【にちかの部屋】
愛依さん、本当に家族のことを大切に思ってるんだな。
ずっと話してる最中も笑顔を絶やさなかったし、一言も悪口なんて言わなかった。
それどころか私がお姉ちゃんの陰口をいってもニコニコしてて……
なんか、家族というものの理想像が愛依さんの中では確固たる明確なビジョンがあるんだろうな。
はぁ……私はそこまでまっすぐにお姉ちゃんのことを想えないよ。
【自由行動開始】
1.交流する【交流相手の名前指定】
2.購買に行く(済)
3.休む(自由行動をスキップ)
【現在のモノクマメダル枚数…40枚】
【現在の希望のカケラ…16個】
↓1
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/07(水) 22:43:07.21 ID:Rw4nBgGP0
1.愛依
229 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 22:46:34.39 ID:zsw/61tI0
1 愛依 選択
【愛依の個室】
ピンポーン
愛依「あれ、にちかちゃんさっきぶりじゃん。今日はなんかよく会うね」
にちか「えへへ……すみません、お邪魔じゃなければ一緒にお菓子でも食べませんか?」
愛依「おっ、いいね〜! ちょうどうちも小腹が空いてたとこだったんだよね」
にちか「やった〜! 倉庫からなんとなく見繕ってきたんですけどこれ、どうですか?」
愛依「ん〜……おっ、いいじゃんいいじゃん! 酢昆布にあたりめもあるんだ!」
(よかった……もしやと思ったけど、お菓子の好みも割とおばあちゃんテイストだったんだ)
愛依さんと二人でお菓子を食べて過ごした……
-------------------------------------------------
プレゼントを渡しますか?
現在の所持品
【タピオカジュース】
【誰かの顔の餃子】
【クリスタルバングル】
【ストライプのネクタイ】
【クロの章】
【レイヤーキャリーバッグ】
【三度サンドバッグ】
【猿の手】
【死亡フラッグ】
【生存フラッグ】
【お助けヤッチー君】
【ホームプラネット】
【占い用フラワー】
↓1
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/07(水) 22:48:37.23 ID:Rw4nBgGP0
【お助けヤッチー君】
231 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 23:00:14.49 ID:zsw/61tI0
【お助けヤッチーくんを渡した……】
愛依「なんこれ……で、でっかいシャチ?」
にちか「なんか、困ったことを聞くとなんでも応えてくれる……らしいですよ?」
愛依「え? この子に……言えばいい系?」
にちか「た、多分……」
愛依「あー……こ、ここから出してくれませんか〜?」
ヤッチー『……』
にちか「な、なんなのこいつ……なんも動かないじゃん」
愛依「あ、アハハ……なんか元ネタあんのかもしんないけど、うち分かんないわ!」
(なんかこのシャチ……どっかで見たことはあるんだけどな〜……)
(まあ、普通に喜んではくれたかな)
【NORMAL COMMUNICATION】
-------------------------------------------------
愛依さんと一緒に過ごした時間もそれなりになったけど、やっぱりそのたびに違和感は拭えずにむしろ増していくばかりで……
この人の才能が、【超研究生級の書道部】であるという違和感。
そろそろ真正面からぶつけてみてもいいかな。
にちか「あ、あの……愛依さん……実際、その……書道ってどれくらいの腕前なんですか?」
愛依「え? あ〜……もしかして、一緒に過ごすうちになんか自信なくなっちゃったカンジ? そりゃそうだよね〜! うちでもぱっと見書道できそうな子には見えないと思うし!」
にちか「あ、いや、そういうわけじゃ……あの、すみません!」
愛依「いいって、いいって! そうだ、せっかくうちの部屋に来てくれてるんだしなんか書いたげるよ」
そう言うと愛依さんは慣れた手つきで部屋の床に下敷きと長半紙を広げ、硯に炭を落とした。デスクの棚からは、なにやら上等そうな筆まで飛び出してきた。
愛依「なんか好きな言葉とかある?」
にちか「す、好きな言葉ですか……? つ、【詰め放題】……?」
愛依「おっけ、任せといて!」
私の適当な言葉に首をブンと縦に振って承諾を表すと、そのままさらさらと筆を走らせてあっという間に一つ作品は出来上がってしまった。
愛依「うい! こんな感じ……どーよ!」
……すごい。
極めて俗的な言葉を書いてもらったはずなのに、力強くもその形を崩していない、繊細な筆さばきで描かれた文字は一つの作品として完成を見ていた。
趣味でやっている……なんて言葉に甘んじない、確かな経験と実力が作品の裏に滲み出ていた。
にちか「す、すごい……御見それしました。正直愛依さんの事、侮ってたかもです」
愛依「アハハ、まあしょうがないけどね〜。でも、まあまあいけるっしょ? うちなりには上手く書けたと思ってるんだけど」
にちか「上手いです。少なくとも、うちのクラスの誰よりも。保証します」
愛依「えへへ、サンキュね」
にちか「ただ一つ惜しいのは……漢字が違います」
愛依「……え?」
にちか「これじゃ【詰め放題】じゃなくて【読め放題】になってます。電子書籍の期間限定キャンペーン広告みたいになってますんで」
愛依「やっば! マジはず!!!」
いつもと違う一面を見て驚嘆してしまったけど、このどこか抜けてる感じは私の良く知る愛依さんのままだな、と思った。
才能なんて言葉で人の魅力はひとくくりにできないよね。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【愛依の現在の親愛度…5.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…17個】
232 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 23:01:17.58 ID:zsw/61tI0
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
【キーンコーンカーンコーン……】
モノキッド『ミーが、ミーが悪かったんだ……こんなはちみつなんかで自分を見失っちまって……』
モノファニー『いいのよ、アタイたちは家族じゃない。どんなにモノキッドが荒れてしまっても、アタイたちは支えあっていけるわ』
モノスケ『はちみつに含まれる化学物質は暴力衝動を3割増しにするって論文もあるからな。悪いのはモノキッドだけやない、この世界を作りたまいし主にも罪があるんや!』
モノタロウ『ねえねえ、オイラもはちみつ舐めてみてもいい〜?』
モノダム『……』
プツン
なんか今日は色々なことが起きて疲れちゃったな。
モノクマの提示してきた動機……あれに今の状況を大きく変えるような効果はないだろうけど、ルカさんの言っていた懸念には納得がいく。
今はおしおきの免除で留まっていても、いつ別の手段を取ってくるか分からない。
何がきても立ち向かえるような対抗手段を持っていかないといけないんだ。
……私なんかが、そんなことできるのかな。
233 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 23:02:23.30 ID:zsw/61tI0
そして、そんな私の危惧は現実のものになる。
234 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/07(水) 23:04:15.05 ID:zsw/61tI0
本日はここまで。
安価にご参加いただきありがとうございました。
今日で少しお話を進めることができましたね。
自由行動をあと少し挟んだらいよいよ事件発生です。
是非学級裁判までお付き合いください。
明日6月8日21時〜更新予定です。
またよろしくお願いします。
235 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:32:05.42 ID:1RHWTY6u0
------------------------------------------------
【School Life Day5】
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
【キーンコーンカーンコーン……】
モノタロウ『うぅ……頭がガンガンするよ……』
モノファニー『モノタロウにはモノキッドのはちみつは刺激が強すぎたのよ……』
モノスケ『モノキッドのは純度が高すぎるからな! 常人ならべろべろのぶちゃぶちゃになってまうで!』
モノキッド『ビンビンだぜッ!』
モノダム『……』
プツン
ピンポーン
モノクマーズの放送の直後、インターホンが鳴って慌てて飛び起きる。
昨日の今日だ、ルカさんから何か話があるのかも知れない。
急いで私は扉を開けて来客を出迎えた。
あさひ「おはようっす! にちかちゃん!」
にちか「……芹沢さん?」
そこにいたのは、意外な人物だった。
にちか「どうしたの、私に用事?」
あさひ「はいっす! にちかちゃんに一つ、聞きたいことがあるんっすけど、今いいっすか?」
にちか「え? うん……」
236 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:33:04.45 ID:1RHWTY6u0
あさひ「昨日、朝ごはんの後……どこ行ってたんっすか?」
にちか「……え?」
あさひ「なんか昨日やけに食べるのが遅いなーって思ってたんっすけど、その後ルカさんと二人でどこかに行ってたっすよね?」
あさひ「女子トイレ……だったと思うんっすけど、その後見失っちゃったみたいで」
(尾行られてたのか……!)
瞬間、ルカさんと交わした口外禁止の約束が脳裏によぎる。
こんな揺さぶりでうっかり口を滑らせるわけにはいかない。
真っ白になりかける頭を努めて引き起こし、なんとか言い訳を考える。
237 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:34:18.04 ID:1RHWTY6u0
にちか「あー……昨日はなんだかお腹の調子が悪くて、それでルカさんに介抱してもらってたんだ」
あさひ「ふーん……じゃあ、トイレの後は寄宿舎っすか!」
にちか「そ、そうそう! 私、食あたりしちゃったみたいなんだよね」
あさひ「今日は元気そうっすね!」
にちか「あ、うん。一日経ったら落ち着いた感じでね……」
慣れないでまかせに、つい表情がぎこちなくなっているのを感じる。
でも、ここは引けない、決壊するわけにはいかないんだ。
あさひ「……」
これが事実だ、これ以上のものはない。
そう念じながら芹沢さんの目をじっと見つめた。
あさひ「了解っす! 気になってたんで、分かってスッキリしたっす!」
あさひ「にちかちゃんもスッキリしたみたいでよかったっす!」
にちか「あ、あはは……あんまり言いふらさないでね……」
パタタタ……
にちか「い、行ったか……」
ふぅ、とりあえず凌げたみたい。
……秘密を抱えるのも楽じゃないな。
さて、とりあえずは朝食会だね。
改めて準備を整えたら、向かわないと。
238 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:35:47.93 ID:1RHWTY6u0
あさひ「……本当のこと、話してくれなかったなー」
239 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:37:39.87 ID:1RHWTY6u0
------------------------------------------------
【食堂】
にちか「お、おはようございます!」
凛世「にちかさん、おはようございます……」
凛世「……? 何か、お困りごとですか……?」
にちか「え、ナ、ナンデ? ソンナコトナイデスヨ?」
凛世「……は、はぁ」
秘密は秘密、鉄仮面でいるぞと意思を固めながら扉を開く。
一斉に向けられる視線に不必要な怯みを感じつつも、平然を装って席へ。
ルカ「……オマエ、もうちょっと上手くやりなよ」
にちか「うぅ……すみません」
ルカ「ま、いいけどよ」
隣に座るルカさんには小突かれてしまった。
そんなに顔に出ちゃってるかな……
あさひ「……」
240 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:39:01.60 ID:1RHWTY6u0
◆
透「全員揃ってるね、いい感じじゃん」
霧子「うん……昨日の動機も、心配なかったみたい……」
めぐる「当たり前だよ! 何があっても、他の誰かを殺すなんて……ぜったいにダメだもん!」
恋鐘「状況はなんも変わらん! うちらはうちらで、ずっと仲良くしとけばよかともん!」
円香「状況が変わらない……助けが来ないのもそうですね」
甘奈「うーん……甘奈たちがいなくなったこと、ニュースにはなってる……よね」
甜花「最近、戦争とかのニュースも多いし……甜花たちのこと、埋もれちゃってたり……」
樹里「大丈夫だ、モノクマーズはあんなこと言ってたけどちゃんと警察も動いてるって」
真乃「……灯織ちゃん?」
灯織「いや……今私たちがいる、この才囚学園がたとえば国外だったら日本の警察は手の出しようもないなって」
恋鐘「か、海外〜〜〜?!」
灯織「可能性としてない訳じゃないですよね。国内だとしても地図にも載っていないような小さな島だったりとか……」
恋鐘「そ、そがん怖いことばっか言わんとって〜!」
灯織「あ、す、すみません……」
バビューン!!
【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!】
241 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:40:13.11 ID:1RHWTY6u0
モノクマ「私はなぜここにいるのか……」
モノクマ「誰が私を産めと頼んだ……」
モノクマ「そりゃもう世界が頼んだに決まってるよね! ボクみたいな愛されキャラがいない世界なんて、トンカツ抜きのカツカレーだもん!」
愛依「ふつーにカレーはカレーでいいじゃん……?」
モノタロウ「ねえねえ! なんでオイラたちは産まれたの! お父ちゃん、教えてよ!」
モノクマ「おっと……ここから先は保健体育の授業になっちゃうね。スタンダップ! 男子はみんな別の部屋でビデオを見てもらうから、退室してね」
真乃「ここには女の子しかいません……っ!」
にちか「それより、何しにきたの!? 昨日動機の提示はしたばっかりでしょ?!」
モノクマ「うんうん、それなんだけどね?」
モノクマ「なんでオマエラあれだけの好条件を示されておきながら誰も行動に移せない訳?!」
モノクマ「令和世代のもじもじくんの集まりか! 青春の吹き溜まりの寄せ集めか!」
モノスケ「もう【お父やんの堪忍袋も尾が切れた】っちゅーことや」
(……こ、これってルカさんの言ってた通り)
ルカ「……ヤベェな」
モノクマ「もうね、あんまりチンタラやってるとこっちも危ういのでね。時を進めさせていただきますよ!」
242 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:41:22.82 ID:1RHWTY6u0
モノクマ「コロシアイにタイムリミットを設けます!」
モノクマ「タイムリミットは【明日の夜時間】! それまでにコロシアイが起きなければ、殺し合いに参加させられている生徒は【全員殺処分】!」
モノクマ「モノクマーズの操るエグイサルを総動員してオマエラをスクラップにしちゃうよ〜!」
243 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:42:16.72 ID:1RHWTY6u0
モノキッド「エグイサルで鷲掴みにして口から内臓をデロデロ吐かせてやるぜ!」
モノスケ「踏みつけて轢かれたカエルみたいにしてやってもええな!」
モノファニー「うぅ……想像しただけでグロいわ」
モノファニー「でろでろでろでろ……」
モノタロウ「わー! モノファニーが黄色のゲロを吐いた! 黄色のゲロは危険信号だよ!」
モノスケ「キサマラの身に危険が差し迫っっとるっちゅうことやな」
……最悪だ。
私たちは脱出への糸口もまだ何もつかめちゃいない。
ルカさんが昨日見せてくれた部屋だって、何の意味があるのかまだ何も見えていない。
それなのに、明日の夜までに誰かを殺さないと、私たち全員が死んでしまうだなんて……
こんなの、どうしようもないじゃん……!!
244 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:43:45.53 ID:1RHWTY6u0
樹里「ざっけんな……! こんなのコロシアイの強要じゃねーか、話がちげーぞ!」
モノクマ「オマエラの自主性を信じていたんだけどね、ぼかぁ残念で仕方ないよ」
モノクマ「なんたって、コロシアイは新鮮さが命だからね! 一週間近くも何も起きないなんて鮮度が落ちちゃうでしょ!」
透「にしても明日かー」
愛依「やばいやばい……マジでどーすんのこれ」
モノクマ「殺るしかなくね?! てか殺るしかなくね?!」
モノスケ「一応言うとくけど、【昨日発表した動機は継続のまま】や」
モノスケ「一人殺してみんな仲良く生き延びるんがええか、誰も殺せず全員共倒れがええか。答えは火を見るより明らかってやつやな」
モノファニー「どっちみちグロイことには変わりないわ……でろでろでろでろ」
モノタロウ「モノファニーのゲロを見るより明らかだね!」
【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
連中がさった後、嫌な沈黙が訪れた。
恐れていた最悪の事態がついにやってきてしまった。
はじめの時のように、私たちはお互いに猜疑心の目を向けていた。
もはや自分の身を守るためには誰かを手にかけるほかない……それは間違いないのだから。
____みんながそう確信している中、ただ一人だけが違っていた。
245 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:44:41.91 ID:1RHWTY6u0
ルカ「待てよ」
ルカ「なんて顔してやがんだ、テメェら……まさか今のモノクマの話を聞いて、誰かを殺さないといけないなんて思っちゃいないよな?」
にちか「ルカさん……?」
ルカ「断言してやる。そんな必要はない。コロシアイなんて……【やらせない】」
夏葉「ルカ……私だってそう思いたいわ。でもこの状況はもう闇雲に主張しているだけじゃどうにもならないのよ」
甜花「誰かが、動いてくれないと……みんな、死んじゃうよ……?」
ルカ「誰がノープランだっつったよ」
(……!)
(まさか、【あの隠し部屋】のこと……?)
246 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:46:05.65 ID:1RHWTY6u0
ルカ「私にはこの状況を打開できる具体的な考えがある……誰も血を流さないで済むアイデアがな」
真乃「そ、そんなものがあるんですか……?」
めぐる「な、なになに?! どうすればいいの?! 教えて?!」
ルカ「……それは、ちょっと待ってくれ。こっちも準備がいるんだ」
円香「……なんですかそれ、今話せないなんて信用できるとでも?」
ルカ「変なことを言ってるのは重々承知だ。だけど、必ず私がオマエらを助けてやる……だから! 何があっても間違ったことを考えるんじゃねーぞ!」
ルカさんの並ならぬ気迫とその啖呵に、私たちは絶句するほかなかった。
さっきまで頭に纏わりついていた黒く澱んだものも吹き飛ばされてしまった。
今はむしろ頭が真っ白だ。
そんな真っ白な私たちを残して、ルカさんは部屋を出て行ってしまった。
残った私たちは、困惑に喚く。
247 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:47:17.25 ID:1RHWTY6u0
甜花「ど、どうしよう……行っちゃった……けど」
甘奈「他の誰かを手にかけるなんて……想像できないし、そんなことやらないけど……ルカさんのことをどこまで信じていいのかな」
凛世「明日の夜が期限……猶予はありませんが、何かお考えがおありの様子……」
夏葉「……私は私で対策を練るわ」
樹里「つって、アンタもどうすんだよ。まさか誰かを殺すとか言い出すんじゃないよな?」
夏葉「当然よ、私たちはコロシアイには屈さない。そうなれば、エグイサルの殺戮に対抗する手段が必要になるわ」
愛依「そ、それ……【あいつらと戦う】ってこと?! いやいや、流石に無理じゃね?!」
霧子「そんな、危ないよ……大怪我じゃ済まないかもしれない……」
夏葉「無理を承知でよ。それに、抵抗しなければ待っているのは死……武器を取らず死ぬよりは、私は埃を守って戦うことを選ぶわ」
樹里「……マジか」
灯織「……私は身を隠せるところを探します。流石に戦うのはリスクが高すぎます」
真乃「ひ、灯織ちゃん……」
灯織「……私は一人になったとしても生き延びるから」
ルカさんの言葉に触発されてか、それぞれがそれぞれの方向に動き出す。
コロシアイという方向にベクトルを向けている人こそいないけど、その思惑はどれも平行線で、交わることはない。
私たちは、未曾有の危機を前にして、更にもう一度分離する形となってしまった。
248 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 20:48:47.27 ID:1RHWTY6u0
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
明日の夜までの命だって、そんな急に言われても現実味のかけらもないや。
自分の部屋に戻る足取りもなんだか妙にふわふわとしていて夢でも見ているようだった。
残りの時間、みんなはどう過ごすんだろう。
【自由行動開始】
【事件発生前最終日の自由行動です】
1.交流する【交流相手の名前指定】
2.購買に行く(済)
3.休む(自由行動をスキップ)
【現在のモノクマメダル枚数…40枚】
【現在の希望のカケラ…17個】
↓1
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/08(木) 21:35:40.27 ID:uIxqS2tE0
1.愛依
250 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 21:44:56.27 ID:1RHWTY6u0
1 愛依 選択
【裏庭】
コロシアイのタイムリミットを宣告され、落ち着かない気持ちをどこにやることもできず。
ただソワソワするのを誤魔化すために、部屋の外を出てぶらついていた。
自然と足はあの、マンホールの脱出通路へと向かっていた。
何度挑戦してもクリアできそうにもなかった。
時間が経ったからどうという代物でもない。でも、コロシアイから逃げたいという弱い心が私をあの場所へと駆り立てていた。
愛依「あ、あれ……にちかちゃんも、まさかマンホールの奥にいくカンジ?」
そしてそれは、どうやら愛依さんも同じだったらしく。
にちか「あはは、すっごい奇遇……」
愛依「……やっぱ、不安だもんね。明日までって言われても実感ないし、何かやってないと気も休まらんしさ……」
にちか「……改めてこのマンホールに挑戦したところでこの先をクリアできるとは思ってないんですけどね」
愛依「それ正解だわー……はぁ、マジで萎えんね」
にちか「……下手な挑戦はよしときましょうか、体を痛めつけるだけですし」
私と愛依さんはマンホールへの挑戦を断念し、床に座り込んで話をして過ごした……
、-------------------------------------------------
プレゼントを渡しますか?
現在の所持品
【タピオカジュース】
【誰かの顔の餃子】
【クリスタルバングル】
【ストライプのネクタイ】
【クロの章】
【レイヤーキャリーバッグ】
【三度サンドバッグ】
【猿の手】
【死亡フラッグ】
【生存フラッグ】
【ホームプラネット】
【占い用フラワー】
↓1
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/08(木) 21:51:53.04 ID:uIxqS2tE0
【ホームプラネット】
252 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:01:40.89 ID:1RHWTY6u0
【ホームプラネットを渡した……】
愛依「これって室内用プラネタリウム……かな?」
にちか「みたいです。ガイドボイスはあの有名声優さんが務められてるとかで!」
愛依「有名声優って誰だろ……あ、この人うち知ってる! 弟の好きな……あの、鬼を狩る侍のアニメにも出てた人だ!」
にちか「さすが、弟さんの趣味の範囲は理解してるんですね!」
愛依「まーね、一緒によく見てるから。でも星、星かぁ〜、うちあんま詳しくないんだよね」
愛依「まあちょうどいい勉強の機会かもしんないもんね! ありがと、にちかちゃん!」
(まあ、普通には喜んでくれたかな)
【NORMAL COMMUNICATION】
-------------------------------------------------
愛依さんとこうして並んで話をしていると、嫌でも自覚させられることはある。
それは自らの地味さ加減。陽の光を眩いばかりに反射する艶やかな金髪、健康的な小麦色に日焼けした肌、そして何より溌溂であっけらかんとした喋り口。
曇りの日には姿が見えなくなってしまいそうな見た目をして、ネガティブとフラストレーションをないまぜにしたみたいな口調の私とはもはや対照的ともいえる。
にちか「あの、愛依さんっていつからそうなんですか?」
愛依「『そう』……? 何の話?」
にちか「いや、愛依さんっていっつも明るくて人を引き付ける空気があるっていうか……それに、ファッションとかにもかなり気を遣ってる感じじゃないですか」
にちか「まさにスクールカーストトップ、ピラミッドの先っちょみたいなイメージなんですけど……愛依さんは小さい頃からずっとそうだったんですか?」
愛依「え、そんなことないって! うちなんかどこにでもいる普通の女子高生だよ!? にちかちゃんとなんも変わらんって!」
(なんも変わらんってことはないでしょ……裏か表かぐらいには違うと思うけど)
愛依「それにうちって滅茶苦茶緊張しいだしさ……目立つのとかマジで苦手なんだよ?」
にちか「え……そうなんですか? めっちゃ意外です。もっとこう学園祭でバンドとかやったりしてるもんかと」
愛依「やんないやんない! うち、たくさんの人が見てる前でステージに上がるのとか無理系でさ〜! 他の人の視線を感じるとうひゃ〜!ってなってすぐ隠れたくなっちゃう」
多分嘘じゃないんだろう。
愛依さんの額にはうっすらと汗がにじんでいた。衆目を集める状況、それをイメージしただけでこれほどまでの緊張を抱いてしまうのだ。あがり症を自称するには十分すぎるほどの証拠だ。
愛依「だからアイドルの研究生とか言われちゃっても全然イメージ湧かないんだよね……むしろなんていうか……怖い?」
にちか「……怖い、ですか」
愛依「うん……ほら、アイドルになるって今まで出会ってきた人たちとは全く違う人たち。しかもこれまでとは比べ物にならないほどたくさんの人たちに見てもらうんだよ?」
愛依「したら、うちが今持ってるキンチョーの数倍、数十倍、いや数千倍はキンチョーしちゃうと思うんだよね」
愛依「そんなの……うち、一人じゃとても耐えられると思えなくてさ」
にちか「愛依さん……」
愛依「ま、アイドルになるなんてあり得ない話だけどね! どうせ今回モノクマーズが言ってるのもただのジョーダンに決まってるっしょ!」
にちか「あはは……そう、ですよね……はは……」
愛依さんは照れ隠しにわざとらしく声をあげて笑っていた。
でも、なんでだろう。愛依さんの口にした『もしも』の話がなんだか異様に寂しくて、胸に引っかかるように感じちゃったのは。
私は自分の胸のしこりに目を向けないようにして、愛想笑いを浮かべていた。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【現在の愛依の親愛度…6.5】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…18個】
253 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:03:56.68 ID:1RHWTY6u0
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
愛依さんと別れてから一度自分の部屋に戻った。
……この学園生活の目指す先は、一応『アイドルになること』なんだよね。
その目標の指すところと重責、あんまり考えたこともなかったな。
それにしても愛依さんが上がり症、っていうのはちょっと意外だった。
愛依さんの普段の性格からすれば対照的にも感じたけど、何か理由とかあるのかな……
【自由行動開始】
【事件発生前最後の自由行動です】
1.交流する【交流相手の名前指定】
2.購買に行く
3.休む(自由行動をスキップ)
【現在のモノクマメダル枚数…40枚】
【現在の希望のカケラ…18個】
↓1
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/08(木) 22:07:06.14 ID:uIxqS2tE0
1.愛依
255 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:14:28.23 ID:1RHWTY6u0
1 愛依選択
【寄宿舎 愛依の個室】
ピンポーン
愛依「お、にちかちゃん! さっきは変な話しちゃってごめんね〜?」
にちか「いえいえ! あの、むしろさっきの話……愛依さんが差し障りなければもっと詳しく伺いたいと思いまして」
愛依「え〜? なんも面白い話とかないよ〜?」
にちか「そんなことないです! この学園で一緒に過ごす間柄なので……相手のことが理解できるのなら、その……チャンスは逃したくないなって!」
愛依「にちかちゃん……あんがと! オッケー、それならうち腹決めて話すわ!」
愛依「とりあえず中入って! 煎茶でいい?」
にちか「え、あの、お構いなく!」
愛依「いいのいいの、気にしないで!」
愛依さんの部屋でお茶を淹れてもらった……
-------------------------------------------------
プレゼントを渡しますか?
現在の所持品
【タピオカジュース】
【誰かの顔の餃子】
【クリスタルバングル】
【ストライプのネクタイ】
【クロの章】
【レイヤーキャリーバッグ】
【三度サンドバッグ】
【猿の手】
【死亡フラッグ】
【生存フラッグ】
【占い用フラワー】
↓1
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/08(木) 22:16:45.30 ID:uIxqS2tE0
【生存フラッグ】
257 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:33:59.96 ID:1RHWTY6u0
【生存フラッグを渡した……】
愛依『こ、ここまでか……なあ、悪いが俺の代わりにボスに伝えといてくれないか? こんな俺をここまで面倒見てくれてありがとう、って』
にちか「バーカ、自分の口で伝えろよ……って言いたくなりますね」
愛依「あ、これってそういうお決まりの展開的なやつ?」
にちか「ですね。いわゆる生存フラグってやつです。追い詰められてるやつが自分の死期を悟ってべらべら喋り出すとたいてい生き残りますよね〜」
愛依「あー……言えてるかも」
愛依「じゃあこの旗はその願掛け的なやつなんかな……?」
にちか「ですかねー……」
(まあ、普通に喜んでくれたかな)
【NORMAL COMMUNICATION】
-------------------------------------------------
愛依さんは私に湯飲みを手渡すと、どっしりと深くベッドに腰かけた。
一口お茶を口に運んでから、大きな息を吐く。
愛依「……まあ、予告した通り。なんも面白いことは無いんだけどね?」
そんな前ぶりから、愛依さんは過去を語ってくれた。
愛依「うち、小学校の時に劇やったんだ。魔法使いのおばあちゃんに着ているみすぼらしい服を綺麗なドレスに代えてもらうあの童話のやつ」
にちか「ああ……分かります」
愛依「そん時のクラスのみんながね、うちをスイセン?してくれて……うち、劇でちょ〜大役任されちゃってさ。それこそ主演みたいな感じだったの」
多分愛依さんは幼少期から華々しかったんだろうし、推薦した子たちの気持ちはよくわかるな。
私だって同じクラスに愛依さんがいたら、大役は譲りたくなっちゃうと思う。
愛依「だから、うちめちゃくちゃ張り切って練習もして、家に帰ってからもお姉に読み合わせ手伝ってもらって、セリフも完璧に空で言えるようにしたんだ」
愛依「でも、いざ本番ってなったら……まるでダメだった」
にちか「え……」
258 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:37:19.09 ID:1RHWTY6u0
愛依「うち、初めてだったんだよ。家族でもない、友達でもない……全く知らない大人たちに囲まれて何かをするっていうの。知らない大人って言っても友達のお母さんとか、地域のおばあさんとか、別の学年の先生とか、そんな人たちなんだけど」
愛依「でも、うちにはその……評価をしようって目が……怖かった」
愛依さんは肩を縮こまらせて、今まさに怯えているかのようにそう語った。
愛依「ちっちゃい頃の話をいつまで引き摺ってんだ〜とはうちも思うんだけどね。なんつーかウマシカ?になっちゃってるみたいで……よくフラッシュバックすんだよね。あの時の景色」
にちか「……多分、トラウマだと思います」
私にも、愛依さんの気持ちはよくわかった。
私も小学校の演劇の時に似たようなことを感じたことがある。
それまでは自分自身がやりたいことをやって、自分が楽しければオッケーだったのに、急に他の誰かに値踏みをされるようになり、その見定めるようないやらしい温度の視線が鬱陶しく感じた。
愛依さんの場合はそれに加えて、周囲の期待があった。クラスのみんながめいさんなら大丈夫、愛依さんならやってくれると無責任に寄せた期待が両肩にのしかかり、結果としてそれを裏切ることになってしまったのも良くなかった。
誰よりも人のいい愛依さんからすれば、矢面に立って何かを為すことはその期待を裏切るトラウマが幾度となく呼び起こされてしまうのだろう。
愛依「ごめんね、やっぱあんま面白くない話だったっしょ?」
にちか「いえ、そんなことないです……聞けて良かったですよ」
愛依「またまた〜、にちかちゃんは口が達者だね」
にちか「私も似たような経験ならありますし、その気持ちはよく分かります。愛依さんは……その、このトラウマを乗り越えたいって思ってるんですか?」
愛依「……」
私の問いかけに少し考えこむような動作をしてから、
愛依「わかんない!」
愛依さんはニッと笑った。
愛依「乗り越えないままに、なんとなく今日まで来ちゃったし……実際今どれぐらいの深さでトラウマなんかも分かんないしさ……」
愛依「なんか大きなきっかけでもあれば、違うとは思うんだけど」
(きっかけ……か)
でも、そうだよね。
自分の胸の痛みに向き合うのなんか、そうそうできることじゃない。
そんな『きっかけ』なんて、運命的な出会いでもなきゃ見当たらないものだ。
生憎私たちには……そんな運命は不足している。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【現在の愛依の親愛度…8.0】
【希望のカケラを手に入れました!】
【現在の希望のカケラ…19個】
259 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:38:38.76 ID:1RHWTY6u0
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
【キーンコーンカーンコーン…】
モノスケ『なんだかワイまでドキドキしてきたで。せっかちな性分っちゅうのはこんな時に損やな』
モノスケ『おい! 聞いとるんかザコども! キサマラがコロシアイをやらんとワイの不整脈が悪化してまうど!』
モノファニー『あぁ〜! ストレスでモノキッドがまたはちみつに手を出しそうになってるわ!』
モノタロウ『画面の前のみんな! dボタンでモノキッドの飲蜜を止めるんだ!』
モノキッド『うぃ〜、ひっく』
モノダム『……』
ブツン
自分の部屋に戻ってきて襲ってくる切迫感。
一分一秒と刻むたび自分の命も刻まれていく。
これまでに感じたことのない息苦しさが身を包んだ。
「……気が触れそう」
ピンポーン
そんな時にインターホンが鳴った。
260 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:39:24.06 ID:1RHWTY6u0
(……ルカさん!)
閉塞感に風穴を開けてくれたようで、一瞬飛びつきかけたが、すぐにベッドの上に座り直した。
考えなしに開けてしまっていいのか?
命のタイムリミットが迫っているのは私だけじゃない、他のみんなだってそうなんだ。
それにモノクマに提示されているおしおき免除。
いつ誰が行動に起こしたっておかしくないんだ。
(ルカさん、なんだよね……?)
そんな私の思考を急かすようにインターホンが止むことなくなり続ける。
扉の向こうにいるのはきっとルカさんなんだろうと思うけど、そうじゃなかったら?
喉のあたりをぬるい汗が伝った。
(ええい、ままよ……!)
ガチャ
ルカ「おせーよ、もっと早く開けな。心配になんだろ」
にちか「ル、ルカさん……すみません」
ルカ「冗談だよ、こんな状況なんだし、即開けてる方がキレてた」
(どのみち嫌な顔はされてたのか……)
ルカ「にちか、夜時間だけどついてきてもらってもいいか? ちょっと……【例の場所】まで」
にちか「例の場所……」
(女子トイレ奥の隠し部屋ってことは、他の人に聞かれたくない話ってことだよね)
にちか「わ、わかりました」
ルカ「よし、それじゃあ静かにいくぞ。他の連中に見つからないように」
にちか「はい……」
私とルカさんは他の人たちの目を憚りながら、こっそりと動き出した。
261 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:40:08.77 ID:1RHWTY6u0
------------------------------------------------
【寄宿舎前】
灯織「……! 七草さん、斑鳩さん……! どうして、こんな時間に……!?」
(し、しまった……!)
ルカ「いや、別に。ちょっと二人で夜風にあたろうと思ってよ」
灯織「……」
(いやいや……それは流石に誤魔化し方としても)
灯織「誰かに危害を加えようと言うのでなければいいです。私も夜時間外に行動している訳ですし……」
ルカ「そっちこそ何してんだよ、今日は最後の夜だぞ。しっかり寝た方がいいんじゃねーか?」
灯織「……私とて、今日を最後にするつもりはありません。私にもできることは何かあると思うので」
灯織「斑鳩さんとは違ったやり方で、私も生き延びてみせますよ」
風野さんはそれだけ言うと立ち去ってしまった。
お互い詮索するな、と言うことなんだろう。
結局あの人は最後まで他の人間と距離を取ったままだったな……
ルカ「……あいつは裏庭の方に行ったな。好都合だ。今のうちに女子トイレに行くぞ」
にちか「はい!」
262 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:42:30.30 ID:1RHWTY6u0
------------------------------------------------
【女子トイレ奥 隠し部屋】
ルカさんに連れられて再び隠し部屋の中へ。
ここならば他の誰かに話を聞かれることもないし、介入されることもない。
秘密を共有するならこれ以上なくうってつけだ。
居心地の悪さだけを除けば。
ルカ「……」
ルカさんも横目に捉えたモノクマの頭部にはなんとなくバツの悪さを感じているようだったが、
今から口にしようと言う主題を前にすると、それも気にならなくなる様子。
私の顔をじっと見つめて、一度大きな呼吸をした。
にちか「あの、ルカさん……明日の期限までにどうにかするって言ってましたけど、それってこのモノクマを直すってことですか?」
にちか「もしかして、コードが見つかったとか……」
ルカ「……いや、そうじゃない。残念だけどコードは一本たりとて見つかっちゃいない」
にちか「……! それじゃ対抗手段って」
ルカ「ンなもんねーよ、ただあの場ではああ言っておかなきゃ、やな空気が蔓延しちまうところだったからな」
……やっぱりか。
私にもまるで心当たりがなかったし、やっぱりあの時のルカさんの啖呵はただのハッタリだったんだ。
263 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:44:24.15 ID:1RHWTY6u0
要は結論の先送り。ただコロシアイという命題から目を背けただけなんだ。
表に出さないようにしていたつもりだったが、ルカさんは敏感に私の落胆を感じ取った。
首をぶんと横に振って、次なる言葉を拾い上げる。
ルカ「だけど、言ってしまった以上私は【責任】を取る」
にちか「責任、ですか?」
なんとなく嫌な予感がした。
子供ながらに、その言葉が付きまとうときは大抵リスクとニコイチであることを理解していたから。
ルカ「いや、元々その気……だったんだよ。私は、このコロシアイが始まってからずっとな」
にちか「ちょ、ちょっと……おっしゃる意味がわからないんですけど……」
ルカ「……前に、私の相棒の話をしたよな」
にちか「は、はい……! 研究生時代からの仲で、ユニットを組んでいて……息もピッタリだって」
ルカ「そいつは……【過去の話】だ」
にちか「……過去?」
ルカ「私とそいつはとっくに【解散してる】んだよ。私があいつについていけなかったせいでな」
にちか「……!」
伏目がちに話すその姿はなんとももの悲しげだった。
きっと彼女にとってその解散は不本意だったんだろう。
この前地下水道で私に見せた瞳の炎。その猛り具合からして、今もそれは尾を引いている。
264 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:45:36.52 ID:1RHWTY6u0
いつかきっと戻ってみせる。
それはここを出ると言うことだけじゃなくて、ルカさんがアイドルとして実力を携えて、相棒さんの横に返り咲くと言う意味もこもっていたんだと理解した。
だけど、今のルカさんはその時とは対照的だ。ひんやりと冷え切ったようで、その瞳の奥に見えるのは……澱みばかりだ。
ルカ「もう、あいつの元には戻れない。私は」
にちか「そ、そんなのわからないじゃないですか! きっと相棒さんも待ってくれて____」
ルカ「ちげーんだよ! あいつは、あいつは……もう、事務所を移籍しちまった」
にちか「……えっ」
ルカ「もう、私が戻る場所なんて……どこにもないんだよ」
そこにあったのは初めカリスマという言葉に抱いていたイメージとはかけ離れた姿。
翼をもがれ、地面を這いつくばる鳥のように、哀れで、惨たらしい、夢の残骸。
ルカさんの表情はそれほどまでに、歪んでいた。
265 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:46:35.93 ID:1RHWTY6u0
ルカ「悪い……こんな姿見せちまって」
にちか「……」
ルカ「だけど……これが本当の私なんだよ。カリスマなんて似合わない。未練ったらしく、醜く過去に縋るだけの弱者なんだ」
ルカ「……この学園から脱出したところで私に居場所なんてない」
にちか「そ、そんなこと……!」
ルカ「いや、そうなんだよ。私はあいつの隣にいたいからアイドルを続けてただけ……あいつとのコンビが解消になっても続けてるのはこの仕事が潰しが効かない仕事だから」
ルカ「アイドル以外の道が閉ざされてるから……続けてるだけなんだ」
にちか「……」
口をまるで挟み込めなかった。
ルカさんは私よりよっぽど大人で、よっぽど多くの経験も葛藤も味わってきている。
そんな相手に私が何を言えるというのだろう。
どうして物知り顔で誰にでも戻る場所はある、なんて言えるだろう。
こんななあなあで生きてきただけの私が、口出しする権利なんてない。
266 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:47:55.76 ID:1RHWTY6u0
ルカ「でも、オマエたちは違う」
ルカ「オマエたちは……アイドルなんて泥濘にまだ足を踏み入れてない。まだ戻れる場所がある人間なんだよ」
ルカ「だから……こんなところで終わっちゃならねえ。こんなところで死んじゃいけねえんだ……!」
にちか「ル、ルカさん……?」
私の両肩をガシッとルカさんが掴んだ。
俯いて肩を振るわせる素振りには鬼気迫るものを感じさせる。
そんな姿を見ていると、なぜか背中を冷たいものが撫でるような気がした。
冷たくて、曲がっていて、その先端は鋭利で……
悪寒は、死神の鎌の形をしている。
267 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:49:12.17 ID:1RHWTY6u0
「明日の夜時間までに私を殺してくれ」
268 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:50:18.54 ID:1RHWTY6u0
「……っ?!」
鎌が背中を撫でたのは、死神がそれをルカさんに向かって振り上げたから。
私に殺してくれとせがむルカさんに、その標的が定められた。
にちか「な、何言ってるんですか?! 冗談きつすぎますってー!」
慌てて戯けるようなそぶりでそれをかき消そうとする。
でも、ルカさんは全く笑っちゃくれない。
影を落とした表情のまま、視線を合わそうともしない。
ルカ「私は……本気だよ。にちか、オマエに殺して欲しいと思ってる」
にちか「バ、バカ言わないでくださいよ! なんでそんなことを言うんですか?!」
ルカ「もうこれしか方法はないんだよ……!」
ルカ「この部屋のモノクマを直したところでどうなるかもわからない。こんなコロシアイを強制してくる首謀者と戦っても勝ち目なんかない」
ルカ「抗う術なんか、もう残っちゃねえんだよ……」
にちか「……」
ルカ「私が死ねば、全てが丸く収まる。戻る場所もない人間が、一人消えるだけで他の人間はみんな助かるんだ」
ルカ「それに、今はあの動機のことがあって学級裁判とやらで誰かが死ぬこともない」
ルカ「ノーリスクハイリターンなんだよ……」
269 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:51:34.79 ID:1RHWTY6u0
にちか「なんで……なんで私なんですか」
ルカ「にちか……?」
にちか「ルカさんを殺すだけなら誰でもいいじゃないですか、なんで私をわざわざ……」
ルカ「違う……私は、【にちかを救いたい】んだよ」
にちか「私を……救う?」
ルカ「オマエは私を殺した上で学級裁判を勝ち抜け。そしてこの学園からさっさと出ていくんだよ、そのための協力なら惜しまない」
にちか「え? は……? ちょ……」
ルカ「……この学園に始めきた時からオマエは私のことを慕ってついてきてくれたよな」
にちか「は、はい……それはそうですけど」
ルカ「私だって人の子だ……自分のことを慕って、付き従ってくれるような相手には愛着も、情けも抱く」
ルカ「にちか……私にとって今のオマエの存在は支えで、希望なんだよ……」
にちか「……!」
私のことを、ルカさんが……?
取り柄も何もない。雑踏があればすぐに埋もれてしまう。
ミルクパズルの一ピースのように、没個性で何者でもない私の存在を、
誰よりも個性的で、他の人を惹きつけることに長けたカリスマであるルカさんが……?
270 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:53:04.32 ID:1RHWTY6u0
ルカ「これはチャンスなんだ。自分の命と引き換えに一人だけ、コロシアイから救い出すことができるチャンス」
ルカさんからの背筋が凍るようなお願いを聞いたはずなのに、私の体は反対に火照り始めていた。
不謹慎極まりない自己肯定感が身を包み、鼓動が早くなる。
ルカ「それなら私は、にちかを選びたい。アイドルなんて泥沼に足を踏み入れていない、無垢なオマエを救ってやりたい」
でも、首を縦に振るわけには行かない。
こんな状況で、倒錯した興奮に振り回されれば、待っているのは破滅。
そんなことはわかりきっているから。
にちか「……ダメですよ、そんなの」
ルカ「……にちか、お願いだ」
______それなのに
ルカ「オマエしか、頼れないんだよ」
にちか「……っ」
271 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:54:01.42 ID:1RHWTY6u0
「……はい」
272 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:55:15.84 ID:1RHWTY6u0
その潤んだ瞳を前にして、言葉を飲み込むほかなかった。
私から漏れ出た返事に、ルカさんは表情をパァッと明るくする。自分の死が確定した瞬間とは思えないほどの眩さだ。
ルカ「ありがとう、これで全部解決だ。オマエラは日常へと解放される」
にちか「……」
返事をした。だけどまだ私は揺らいでいる最中だ。この話を本当に飲み込んでいいのかどうか、何度も足踏みをしている。
それでもお構いなしにルカさんは話を進めていく。
ルカ「じゃあ次は……どうやって私を殺すかの計画だけど、そっちも考えがあるんだ」
にちか「え……と」
ルカ「ここだよ。【この隠し通路を使う】んだ。ここの存在は今の所は私とにちかしか知らない。だからアリバイを確保するのに役立つはずだ」
ルカ「図書室で私を殺した後にちかが女子トイレまで逃げ込んで……それで他の奴らと合流すれば大丈夫なはずだ」
ルカ「まあ細かいところはまたじっくり詰めていこう。他の連中の動向も押さえておく必要があるからな」
にちか「……」
ルカ「にちか?」
にちか「……ああ、いえ。なんでもないです……」
ルカ「ハッ、しっかりしてくれよ。オマエが私を殺してくれなきゃ始まんないんだからな」
にちか「は……はは……」
引き攣った笑いを返しながら、私たちは来た道を引き返していく。
やっぱりこの隠し部屋は何かおかしい。底知れない悪意が渦巻いていて、私はそれに絡め取られたんだと思う。
そうでもなきゃ、飲み込める話じゃないんだから。
____あの、光の落ちたモノクマの瞳に私たちは魅入られていたんだ。
273 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:56:28.93 ID:1RHWTY6u0
------------------------------------------------
【寄宿舎】
ルカ「それじゃ細かいのはまた明日。今日のところはしっかり休んどけ」
にちか「……」
どうして明日死ぬと決めたのに、そんなに気丈に振る舞えるのか。そう尋ねたいが言葉はぐっと飲み込んだ。
そんなの、ルカさんからの信頼を踏み躙る、冷や水をぶっかける行為だ。
にちか「はい……ルカさんも」
ルカ「ああ、これが最後の夜……だもんな。堪能するよ」
にちか「冗談になりませんって……」
ルカ「……悪いな、にちか」
にちか「いや……いいですから。おやすみなさい」
ルカ「おやすみ、にちか」
別れ際のルカさんの言葉が、耳にしばらく残響していた。
274 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:57:05.14 ID:1RHWTY6u0
キィ……
???「……へぇ」
275 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/08(木) 22:58:36.81 ID:1RHWTY6u0
本日の所はここまで。
次回更新で事件発生、捜査パートへと移ります。
いよいよ物語が大きく動きますね。
次回更新は6/10(土)の21:00〜を予定しています。
それではまたよろしくお願いします。
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/06/08(木) 23:03:47.24 ID:uIxqS2tE0
お疲れさまでした
1作目2作目から新顔は増えていないのに関係性が変化することで立ち回りの違いが大きくて今後の展開が楽しみです
277 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:01:43.27 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【School Life Day6】
------------------------------------------------
【にちかの部屋】
【キーンコーンカーンコーン……】
モノタロウ『キサマラおはよう! 絶望的な朝だね!』
モノファニー『キサマラおはよう! 今日の夜時間までがコロシアイのタイムリミットよ!』
モノスケ『キサマラおはようさんやで! モノキッドはもう手遅れになってもうた! キサマラのせいや!』
モノキッド『げへへ……みんな、みんなわかっちゃったもんね……』
モノキッド『このコロ■■イは二■■で前の■■残■が■加■■るんだ……げへへ』
モノタロウ『わー! ダメだよモノキッド!』
モノダム『……』
プツン
……この日が来てしまった。
コロシアイの最終期限の日。
今日の夜時間までにコロシアイが起きなければ、全員がモノクマによって殺されてしまう。
それを防ぐために、私がルカさんを殺す。
「……!」
ダダダッ
混みあげる嘔吐感にトイレに駆け込んだ。
でも、何も出てこない。
罪悪感も寂寥も、まだそれは実態を伴っていない不安でしかない。
吐き出したくても、吐き出せるものはまだ生まれてもいないのだから。
「はぁ……はぁ……」
私は、今日人を殺す。
その決心が自律神経を狂わせているのは明確だった。
「とりあえずは……行かなきゃ、だよね」
でも、崩れるわけには行かない。
ルカさんの覚悟と思い、信頼を私が踏み躙るわけには行かないんだから。
叫び出したくなる衝動を必死に無表情で塗り固めるようにして、私は食堂へと向かった。
278 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:02:45.24 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【食堂】
愛依「あっ、にちかちゃん! どう……眠れた?」
にちか「あー……いや、まずまずですかね……はは」
灯織「こんな状況で寝れるわけないですよ……」
甜花「甜花は夜通しゲームしてた……やり残しがないように、積みゲーをこの世に残さぬために……」
愛依「まあうちも流石に寝られなくてさ、なんか寝不足……眠たくもないんだけどさ」
他のみんなも目に見えた精神に支障をきたしていた。
目の下にはクマができ、どこかふらふらとした足取り。
自分の命にまとわりつく不安に飲み込まれて、震えている。
【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】
モノタロウ「あれ! みんななんだか元気がないよ!」
モノキッド「モノダムみたいにしけた顔してやがる! そんなに死が恐ろしいのか!?」
(……!)
279 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:03:49.63 ID:xRQ0DVdX0
樹里「恐ろしいに決まってるだろ! アタシたちにも生きてきた人生がある……それが今日終わるかもしれないって……!」
モノスケ「うーん、ザコどもはやっぱりどこまで行ってもザコども根性が染み付いとるようやな」
モノキッド「ジャスト・ビー・ハングリー! 生は自分の手で掴み取るモノなんだぜッ!」
甘奈「……それって他の誰かを殺せってことなんだよね? そんなの……出来っこないよ……」
にちか「……」
モノファニー「でもそうしてくれなきゃグロい死体を見ることになるのはアタシたちの方なのよ。こっちの身にもなって欲しいわ!」
モノタロウ「それに、キサマラがやってくれなきゃお父ちゃんに怒られちゃうんだよ!」
モノダム「……」
モノスケ「とにかく、タイムリミットは今日の夜時間までや。改めて言っておくから、肝に銘じておくんやで」
【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
霧子「念押し……なのかな……」
恋鐘「うちらになんとしてもコロシアイをさせたいって感じやね……そんな脅しには屈しんばい!」
恋鐘「だってうちらはエグイサルにも負けん! 【戦って打ち負かしちゃる】って決めたけんね!」
(……え?)
280 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:05:06.39 ID:xRQ0DVdX0
ルカ「そういや昨日言ってたな……本当にオマエラ、あのモノクマーズと戦う気なのかよ」
夏葉「ええ、そのつもりよ。私たちはチームを組んだ、複数人で立ち向かえば勝機はあるはず」
めぐる「それに、武器もちゃんと用意してるんだよ!」
凛世「武器、にございますか……?」
樹里「倉庫にあったスポーツ用具だよ。金属バットや砲丸、剣道の防具なんかもある。あれを使えば、抵抗ぐらいはできるはずだ」
(……)
(……そんなの、無茶だ!)
ルカ「そんなのでどうにかなる相手だと思ってんのかよ!」
円香「……同感です。あのエグイサルに人の力で抗えるとは、到底」
夏葉「だとしてもよ」
にちか「……!」
281 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:06:35.01 ID:xRQ0DVdX0
夏葉「どのみちエグイサルに虐殺されてしまうのなら、少しでも争って死にたい。争おうと立ち向かって、仲間と協力してその末に死にたい」
夏葉「たとえそれが犬死にでも……私たちは誇りあるうちに死にたいの」
恋鐘「ばってん、そうそう負けてやるつもりはなか! なんとかなるってうちは心から信じとるばい!」
ルカ「……チッ」
戦うと覚悟を決めたのは八宮さん、月岡さん、有栖川さん、西城さん、愛依さんの5人みたいだ。
私たちとは違う、覚悟を決めた表情で彼女たちは戦闘を高らかに宣言した。
樹里「それじゃあ、私たちは作戦の準備があるからよ」
夏葉「参加者は一人でも多い方がいいわ。もし私たちと共に戦う覚悟を決めてくれたら、いつでも声をかけてちょうだいね」
私たちはその背中を見送ると、ため息をつきながらお互いの顔を見合った。
残っているのは、生きるのも死ぬのもどっちつかずの人間か、死を受け入れて争うこともしない人間のいずれか。
空気が急に変わるのを肌で感じる。
282 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:07:54.02 ID:xRQ0DVdX0
甘奈「……甘奈は甜花ちゃんと一緒に、同じ部屋にいることにするよ」
甜花「うん……最後はやっぱり、なーちゃんと一緒がいい。なーちゃんを一人で死なせない……!」
透「樋口は?」
円香「別に……」
真乃「ど、どうしようかな……」
灯織「……」
霧子「どう終わるのか、私も考えなきゃだね……」
凛世「凛世も、少し整理が必要です……これまでの生き方と、その幕の下ろし方と……」
ルカ「……いくぞ」
にちか「あ、ルカさん……」
ルカさんが顎で食堂の外を指した。
昨日言っていた通り、殺害計画の大詰めをしたいんだろう。
私にそれを拒むことはできない。
ルカさんの背中を追って、私も食堂を出た。
283 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:10:46.90 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【女子トイレ奥 隠し部屋】
ルカ「なあ、にちか……嫌なら、断ってくれていいんだぞ」
にちか「……今更、断りませんよ」
ルカ「オマエを救いたいっていうのも、私の勝手な言い分だ。別に、オマエが嫌なら私は……」
にちか「……もう、うっさいですって! 私も決めたんです、ルカさんを殺すって!」
ルカ「……そっか」
◆
ルカ「それじゃあ、殺害計画を共有するぞ。昨日も言った通り、私を殺害した後の逃走経路にはここの隠し通路を使う」
ルカ「したがって、私を実際に殺すのは【図書室】だ。自動扉が開いている間のインターバルに包丁を私の腹に突き刺して、そのまま逃げ去れ」
ルカ「私が図書室にいた理由は……呼び出しがあったことにする。適当に手紙を偽造しておいた」
『コロシアイを終わらせる手がかりを掴んだ
誰にも伝えずに図書室に来い』
ルカ「まあ怪しいっちゃ怪しいけど……なんとかなんだろ」
284 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:12:42.95 ID:xRQ0DVdX0
ルカ「で、アリバイの確保だけど……私が聞いた限りだと、夜時間のタイムリミットを迎えるときには【モノクマと戦うグループ】と、【食堂で最後の晩餐をするグループ】と、【個室でそれぞれの時間を過ごすグループ】に分かれるみたいだ」
にちか「まあ……そんな感じでしたよね」
ルカ「にちかは【食堂組】に身を隠せ。食事の途中にトイレで抜けて、私を殺して戻ってくるんだよ」
にちか「な、なるほど……」
ルカ「隠し通路の存在は他に誰も気付いちゃいない。露見しなければアリバイが崩れることもないだろうぜ」
ルカ「凶器はこいつを使いな。昨日の夜時間の前に厨房から抜き取っておいた」
にちか「包丁……」
ルカ「まあ実行まではここに置いといていいよ。その方が安心だしな」
ルカさんは布に包んだ包丁を隠し部屋のテーブルの上に置いた。
数時間後にはあれを握って、私が突き立てる。
現実味がまるで感じられないや。
ルカ「まあ計画と言ってもこんなもんだ。学級裁判も形式上行われるがペナルティもないし、最悪バレちまってもいい」
ルカ「でも、騙し通せればオマエは晴れてこの学園から脱出できる。にちかにはそのチャンスを掴んでほしい」
そう言って、ルカさんは私の手を両手でガッチリと握った。
285 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:13:50.29 ID:xRQ0DVdX0
ルカ「……オマエ」
その瞬間、知られてしまった。
私は今この瞬間も震えている。まだ迷っている。
ルカさんの信頼の紐帯の上から、落ちないように必死にバランスを保っていることを。
にちか「ご、ごめんなさい……!」
咄嗟に謝罪の言葉が飛び出した。
ルカさんも自身を殺そうとしている相手が不安に駆られていたら不快だろう。
それに報いるためのお詫び。
ルカ「……」
私のその言葉を、ルカさんは少しじっとして噛み砕くと、頬を綻んでみせた。
286 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:16:36.44 ID:xRQ0DVdX0
ルカ「まあ……怖いよな。今までやったことがないことに飛び込むことになって、しかもそれはオマエ一人っきりでよ」
ルカ「だけど運命を切り開くのはいつもそういう無謀な挑戦だったりすんだ」
ルカ「自分の身の丈なんか気にしないでよ、遮二無二に、自分のことも顧みずにやってみるもんだ」
ルカ「それが報われることばかりじゃないかもしれないけど……少なくとも、前いた場所とは状況は変わってるはずだ」
ルカ「なんて……今から死ぬやつが言うことじゃないかもしれないけどな」
ルカさんはきっとそういう挑戦を何度も経て今ここにいるんだろう。
アイドルの研究生として夢を追い続けたこと。それを自嘲気味に話してくれたけど、私はそうじゃないと思う。
夢を追うこともせず、ただ憧れるだけで燻っていても、流れる時間には何もない。
空虚な時間の積み重なりの中で、降ってくるのは後悔ばかり。
たとえ平地から泥濘に足を踏み入れることになろうとも、私はその一歩に意味があると思いたい。
『意味がある』と言える人間になりたい。
287 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:17:22.41 ID:xRQ0DVdX0
ルカ「にちか……オマエならやれる」
にちか「……はい!」
私も、覚悟を決めなくちゃ。
288 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:18:18.42 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
それから、夜時間のタイムリミットまではそれぞれに時間を過ごした。
やることは決まっている。
せいぜい他の人間の動向に目を配って図書室に近づけないことくらいだ。
とはいえ、元から人の出入りのほとんどない教室。
要らぬ心配だったようで、何も大きなことは起きることもなく、そのまま時間だけが過ぎていき、
あっという間に【その時】は来た。
------------------------------------------------
289 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:19:24.52 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【食堂】
霧子「にちかちゃんは何が食べたい……?」
にちか「そ、そうですね……オムライス、とかでしょうか……」
透「こっち、モノクマの用意してるメニューもあるね。『悪天候で孫が来れなかったこどもの日風ちらし寿司』だってさ」
円香「悪趣味……なんでこんな日に気が沈んだ料理を口にしなきゃいけないの」
凛世「凛世で宜しければ、お作りいたします……」
円香「……いい、自分でやる」
霧子「あっ……でも、包丁がないみたい……」
透「そういや、戦う人たちが持ってったんだっけ」
円香「……はぁ」
最後の晩餐という割に和やかな雰囲気ではない。
関係性の構築もそれほど進んではいないんだ。
どこか殺伐とした雰囲気の中でそれぞれが人生最後のご飯を口に運ぶ。
290 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:20:12.12 ID:xRQ0DVdX0
透「んー、何してんだろ。ここにいない人たち」
円香「さあ? 戦ったり隠れたりするんじゃない? 意味ないと思うけど」
霧子「にちかちゃんは……ルカさんと一緒じゃないんだね……」
にちか「あ、はい……なんかルカさんは一人でやりたいことがあるって……」
凛世「このコロシアイを止める方法があると仰っておりましたが……」
円香「ハッタリじゃない? あの人、引っ込みがつかないところあるし」
透「……てか、もうちょいで死ぬんか」
にちか「実感ないですよねー……」
291 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:21:02.44 ID:xRQ0DVdX0
【コロシアイタイムリミットまであと1時間!】
292 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:22:15.30 ID:xRQ0DVdX0
食堂で話していると、突然に耳を劈くほどの音量で鳴り響くアナウンス。
聞いているだけで気分が悪くなりそうな、不穏な調子の音量が爆音で流れ出し、モニターには私たちにコロシアイを促すようなメッセージが流れ始めた。
円香「いよいよ、ですね」
霧子「終わっちゃうんだね……何もかも……」
凛世「……お姉さま」
(……)
そして、残り1時間となったこのタイミング……
私にとっては決行の狼煙が上がったも同義。
別行動をしているルカさんはすでに図書室に待っているはずだ。
……行くしかない。
凛世「……にちかさん?」
にちか「すみません、ちょっとお手洗い……なんだか緊張しちゃって」
霧子「うん……大丈夫? 手を貸した方がいいかな……?」
にちか「いや、大丈夫です。ちょっとそこまでなので!」
食堂からトイレまで。
早歩きをしたけどその靴音は学園中に鳴り響く音楽でかき消された。
293 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:23:21.81 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【女子トイレ奥 隠し部屋】
廊下には人気もなく、警戒もほとんど必要なくすんなりと入ることができた。
そのまま真っ直ぐ用具入れに進み、壁を押す。
べこっという音と共に壁は凹み、隠し通路が姿を現す。
大きく息をひとつ吐き出してから、その一歩を踏み出した。
「うぅ……」
中の薄暗さはなんとなく嫌な感じがするが、足を止めるわけにはいかない。
アリバイを確保し続けるためには、ことにそう長く時間をかけるわけにもいかないからだ。
やることをやったら即撤退。それが鉄則。
頭ではわかっているのに、足がすくむ思いだった。
294 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:25:19.12 ID:xRQ0DVdX0
今から私は人を殺す。
自分の手で、命を奪う。
そのことが何度も脳を行ったり来たりして、その度に吐いてしまいたくなる。
今すぐ壁に手をついて泣き崩れてしまいたい。
全部全部、自分の手で台無しにしてしまいたい。
でも、そんなこと許さない。
ルカさんが唯一希望を託してくれたのは私なのだから、私が諦めてしまうことはルカさんの希望を閉ざすことにも繋がる。
この一歩は、ルカさんのための一歩。
この命はルカさんのための命。
だから私は、無理やりに体を引きずりながら、机の上の包丁を手に取った。
その向こうで低く唸る音がした後、扉はゆっくりと開いた。
295 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:26:34.19 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【B1F 図書室】
「よお」
待ち構えていたルカさんは、退屈凌ぎに持っていた本を適当にその場に放ると、スタスタとこちらに歩いてくる。
「ほら」
両手を開いて、私を抱き込むような形をとった。
無防備に向けられた腹には、すでに包丁の先端が触れている。
「早く」
喉が揺れて、ぬるい息が漏れる。
脳の後ろが熱く、目が張った。
視界の先にある包丁の先端には神経が結集していくようで、柔肌に触れるそれから目が離せなくなる。
「にちか!」
296 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:27:17.61 ID:xRQ0DVdX0
______つぷ。
297 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:28:09.41 ID:xRQ0DVdX0
肌を引き裂く感触はそんな感じ。
パンパンに水を入れたポリ袋には鉛筆を刺してもそう簡単には弾けない。
多分それと同じなんだろう。包丁が破った腹から割って出ようとする血流を刃自身が受け止めて、音にならない水音がした。
「いいぞ……そのまま、もっと奥」
私は思考を隅にやった。
目の前で起きていることを認識して処理すればきっと止まってしまうだろうから。
心地の良いその指示に身を委ね、体重を預けた。
ずずと肉を裂き進む刃には左右からそれを押しつぶそうという力が加わった。
真っ直ぐに進もうとすると、その力で何度か詰まりかける。
「まだだ……まだ……!」
ずぶぶぶぶ……
肉を割く感触は大量の水をかき分けるような感触がする。
繊維と血液に押し戻されるのに抗いながら、奥へ奥へと突き進む。
298 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:29:16.50 ID:xRQ0DVdX0
親指が痛いと思ったら、自分の人差し指が食い込んでいた。
包丁の柄までを押し込んでしまおうと込める力が分散して、私自身の体にもその爪痕を残す。
「……ぷ」
異音がして顔を上げる。
私を抱き込むような体制をとっていたルカさんの顔は見違えたように血色が悪くなり、
その口元には赤黒い液体が溢れ出しそうになっている。
そこでやっと自我が帰ってきた。
「わ、わあああ……!!」
思わず包丁を手放して、後ずさった。
ゴンという音とともに本棚に後頭部を打ち付ける。
隠し通路から出てきてからまだ十数秒の出来事。
本棚は元の位置には戻っていない。
その鈍い痛みが、俄かに冷静さを引き戻してくれた。
299 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:30:17.77 ID:xRQ0DVdX0
「あ、あぐ……」
喘ぎ、身を捩りながら崩れ落ちていくルカさん。
その姿はこれまでの学園生活で見たどの姿よりも哀れで弱々しく、踏み潰せてしまいそうなほどだった。
「行け……! 早く……!」
雑巾みたいになったルカさんは、震える手で私の後ろを指差した。
脳がチカチカする。義務の前に自分の手で引き起こした事象が立ち塞がってショート寸前。
ここまで来てなお、足が動こうとはしなかった。
ああ、やばい。
終わる……ぜんぶ、ぜんぶ終わる……
私という人間のぜんぶ。
ルカさんに委ねられた希望のぜんぶ。
今までと、これからのぜんぶ。
300 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:31:59.84 ID:xRQ0DVdX0
「にちか!」
血反吐を吐きながらの絶叫は、金切り声に近かった。
「頼む!」
キィンと脳に響いた絶叫が、シナプスの中を乱反射して、やっと私を動かした。
遅すぎる覚悟を決めた私は踵を返して、扉をくぐる。
少し時間をかけた。早く戻ってアリバイを確保しなきゃ。
上がる呼吸が、自分の靴音を掻き消していた。
301 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:33:26.87 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【女子トイレ】
手に付着した血液を流し落とす最中、ふと鏡を見た。
ひどい顔をしている。
まるでマラソンを走り終えた時のような、もう出し切ったという表情。
気力というものがてんで抜けてしまっている。
手のひらに水を汲んで、ピシャリとそれを顔面に叩きつける。
冷ややかな水に、あの時の感触が混ざる。
気つけとしてはこれ以上ない。戒めとしては最悪。
あの時視界の隅に入れていた血溜まりを頭から被ったような気持ちになって、胸が苦しくなった。
罪と焦りをハンカチで拭いながら、女子トイレを後にした。
302 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:35:11.14 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【食堂】
円香「……おかえり、大丈夫?」
食堂に戻ると、心配そうな表情で樋口さんが迎えてくれた。
少し時間をかけ過ぎてしまったようだ。
にちか「やっぱり、ちょっと怖くて……緊張、なんですかね?」
適当な言い訳で誤魔化して、そのまま席についた。
大丈夫だ。何も失敗はしてない。
現場には私に通じる証拠は何も落としちゃいないし、ルカさんの血に塗れた手は綺麗に水で洗った。
誰も今の私を見て殺人犯だとは思わない……はず。
凛世「……」
霧子「……」
透「……」
303 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:36:09.53 ID:xRQ0DVdX0
そんなことは分かっているのに、心はお構いなしに騒ぎ出す。
もしかして、見落とした血が付着しているのではないか。
もしかして、変なことを口走ってしまったのではないか。
もしかして、ルカさんが本当は裏切ってはいないか。
考えても仕方がないことで脳が埋め尽くされ、胸も詰まる。
食事なんて全く喉を通らなかった。
円香「……あと30分、切ったみたいだけど」
時計を見ると、午後9時30分を過ぎていた。
まだ例のうるさい音楽は鳴り響き続けている。
どうやら、ただ殺すだけでは条件を満たしていないらしい。
死体が発見されるところまで含めた制限時間……なのだろうか。
(図書室に行くように促す……? いや、でもな……)
余計な発言をすれば裁判の時に疑われてしまうかもしれない。
中々行動に移せず、焦燥ばかりが募っていたその頃。
304 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:36:58.19 ID:xRQ0DVdX0
【ピンポンパンポーン……】
305 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:38:10.77 ID:xRQ0DVdX0
にちか「な、何?!」
霧子「あっ……モニター……何か出てきたよ……!」
幽谷さんが指差した先。
先程までコロシアイを促す悪趣味な映像が流れていたモニターには、モノクマだけが映っていた。
『来た! ついに来た! 死体が発見されましたよ〜!』
『いや〜、まさか本当にコロシアイが起きないんじゃないかとヤキモキしたけどオマエラを信じて正解だったよ〜!』
『死体発見現場の地下図書室までオマエラお集まりください! モノクマからお話がございます!』
……来た。
ついにルカさんの死体が見つかったんだ。
306 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:39:17.60 ID:xRQ0DVdX0
凛世「い、今のアナウンスは……」
透「起きちゃったんだ……コロシアイ」
円香「……こういう時、どういう反応をすればいいのやら」
霧子「円香ちゃん……?」
円香「誰かが死んだ……それによって私たちは生き永らえた……」
円香「……複雑ですね」
(……)
にちか「と、とりあえず……図書室に行ってみますか? モノクマの指示に従わないと何をされるかわからないですし……」
透「ん……そうしよっか」
私たちはそのまま食堂に居合わせたメンバーで図書室へと向かうことにした。
私以外のみんなは何が起きているのかわからないと言った様子だ。
怪しまれないように、心臓の鼓動を必死に右手で押さえつけた。
307 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:40:13.94 ID:xRQ0DVdX0
------------------------------------------------
【1F階段前廊下】
あさひ「あ、みんなも今のアナウンス聞いたっすか?」
にちか「せ、芹沢さん……」
地下へと降りる階段の手前で、教室からひょっこり芹沢さんが姿を表した。
死ぬまで後1時間だというのに、こんなところで一人でいたなんて、やっぱり変わった子だ。
円香「一緒に来る? 行くところはどうせ一緒でしょ」
あさひ「はいっす。事件が起きちゃったみたいっすからね」
凛世「……一体、どなたが亡くなられたのでしょう」
霧子「心配だね……」
308 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:42:01.67 ID:xRQ0DVdX0
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【地下】
階段を降りると、すでに図書室の扉が開け放たれているのが目に入った。
中から話し声も聞こえてくる。
すでに騒ぎは起きているようだ。
透「急ご……もう逃げられないんだし」
にちか「は、はい……」
あさひ「一体何が起きてるんっすかね……」
その答えを、私だけは知っている。
私自身が自分の手で引き起こしたのだから。
だから、その分かりきっている光景を演技を持って受け止めなければならない。
覚悟を決めろ。
ここから先は、進むも地獄、引くも地獄。
誰一人として味方はいないんだ。
にちか「行きましょう」
先陣を切って、図書室の中に踏み込んだ。
309 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:42:41.97 ID:xRQ0DVdX0
______ああ、やっぱり
【包丁が腹部に深々と突き刺さり、ルカさんは本棚にもたれかかるように息絶えていた】
310 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:43:33.23 ID:xRQ0DVdX0
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CHAPTER 01
ガールビフールフールガールズ
非日常編
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311 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:44:33.20 ID:xRQ0DVdX0
テレビで見る殺人事件の報道を、どこか別の世界の話としてみていた。
ドラマとか漫画とか、そういう作り物の世界と同じ次元に見て、犯人は何を考えてたのかなとか、どんな手口を使ったのかなとかむしろエンタメとしてみていた節すらある。
___それがまさか、自分が【犯人】として当事者になるなんて。
「……ルカさん」
口から溢れでる言葉を必死に篩にかける。
犯人として口にしていい言葉はなんだ。
事件に巻き込まれた、潔白な人間が口にすべき言葉とはなんだ。
疑われないための正しい答えはなんだ。
そんな考えたこともない無限の問いかけを、何度も何度も繰り返していた。
312 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:45:34.32 ID:xRQ0DVdX0
愛依「にちかちゃん……だいじょぶ?」
にちか「め、愛依さん……」
凛世「この中で一番ルカさんと行動を共にしていたのはにちかさんです……ご無理なさらないように……」
にちか「あ、ありがとうございます……」
まさか私が犯人ともつい知らず、他の人たちは私を労ってくれた。
彼女たちの言葉に甘える形で、離れたところに座り込む。
(……怖い)
体育座りで伏せる目。その先には赤に沈むルカさんの姿がある。
瞼は閉じているけれど、どんな瞳でこちらを見ているのだろうか。
【おはっくま〜〜〜〜〜!!!!!】
モノタロウ「うわー! し、死んでるー!」
モノファニー「う、うう……でろでろでろでろでろでろ」
モノスケ「ついに始まりおったで……コロシアイが始まりおった……!」
モノキッド「血で血を洗う惨劇の幕が上がったなッ!」
モノダム「……」
313 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:46:44.40 ID:xRQ0DVdX0
モノクマ「うぷぷぷ……いや〜、ハラハラしたね! 制限時間ギリギリまで事件が起きないんだもん!」
モノクマ「オマエラ集団自殺志願者かよ! ヌートリアかってんだ!」
樹里「テメェ……」
モノスケ「それよりお父やん見てや! ちゃんとした死体が出たで! 血もドロドロ出とる!」
モノタロウ「お父ちゃん、こいつを見てくれ……こいつを、どう思う?」
モノクマ「すごく……グロいです……」
モノファニー「でろでろでろでろでろ」
めぐる「もう! 話が進まないよー!」
灯織「こうして殺人事件が起きたということは……あなた方の言っていた学級裁判が行われるということでいいんですね?」
モノクマ「うん、お弁当にパスタが欠かせないのと同じくらいコロシアイに学級裁判は不可欠だからね!」
甜花「ハンバーグの油を受け止めるぐらいの立ち位置なんだ……」
314 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:47:33.65 ID:xRQ0DVdX0
モノクマ「学級裁判ではオマエラの中に紛れた犯人、クロを探して議論をしてもらうわけだけど……」
モノクマ「正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき、不正解ならばそれ以外のシロ全員がおしおきで、クロは卒業してこの学園を出ていくことができるんだ!」
モノスケ「でも、今回の事件についてだけは動機によっておしおきの免除が決まっとるからな」
モノタロウ「あれ? そうだったっけ?」
モノファニー「そうよ、グロいパートがカットになるのよ!」
モノクマ「つまり、今回はオマエラ全員ノーリスクで学級裁判に挑めるってことだからさ!」
モノクマ「全然気軽に挑戦してくれちゃって大丈夫だから! ボクの胸を借りるつもりでおいでよ!」
モノキッド「羨ましいッ! ミーたちもお父ちゃんの頼り甲斐ある胸に抱かれたいッ!」
(ノーリスクの挑戦……そう、だからこそルカさんは私にこのチャンスを託してくれた)
(ここで騙し切れば、私は他の誰かの命を奪うこともなく学園から脱出できる)
(絶対に、バレるわけにはいかないんだ……!)
315 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:49:20.49 ID:xRQ0DVdX0
真乃「で、でも……そんな、犯人を当てるなんて……今までに経験もないですし……」
甘奈「うん……どうやってやればいいのかサッパリだよ……」
モノクマ「うんうん、そういうだろうと思ってたよ。なんだってスマホを叩けば情報が得られるこの時代に、足で情報を稼ぐなんて経験もないでしょう!」
モノクマ「ならば! 指だけで情報を得られる機会をご用意いたしました!」
モノファニー「はい、モノクマファイルを用意したわ。一人一個あるから押さず慌てず受け取ってちょうだいね」
モノファニーは一人一人に一枚のタブレットを手渡していった。
指を画面に沿わせるとすぐに起動して、仰々しいフォントで情報が並んだ。
『被害者は【超研究生級のカリスマ】斑鳩ルカ。死亡推定時刻は午後9時半ごろ。死因となったのは腹部に深く突き刺さった包丁による臓物損傷および失血死。他に目立つ外傷はない』
モノタロウ「死体に触らなくてもいいように、オイラたちで検証した情報がまとめてあるんだよ!」
透「まあ、でも……見たまんま?」
甜花「あんまり、新しい情報はないかも……」
モノダム「……」
モノクマ「まあそれは始まりの証拠だからさ。冒険におけるひのきの棒、就活におけるリクルートシート!」
モノクマ「それを最初のステップにして捜査を進めてちょうだいね!」
(……捜査、か)
(本来なら犯人特定につながる証拠を探すのが目的なんだろうけど、私の場合は逆だな)
(私へと繋がりそうな証拠はいち早く私自身で見つけて、隠滅しないと……)
モノクマ「それじゃあ暫くしたらまたアナウンスをするので、それまで捜査頑張ってね〜!」
【ばーいくま〜〜〜〜〜!!!!!】
316 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2023/06/10(土) 21:51:19.82 ID:xRQ0DVdX0
モノクマたちが姿を消すと、私たちは互いに顔を見合わせた。
この中に犯人がいるという事実を受け止めるための時間もなく、学級裁判という未知に挑まねばならない。
これで不安にならないほうが無理な話だ。
愛依「これ、やんなきゃいけないん……だよね?」
円香「今回に限りは犯人の特定をせずとも、私たちが命を落とすことはなさそうですが」
夏葉「いえ……犯人はしっかりと見つけ出しましょう」
夏葉「私たちを欺き、裏切ろうとした人間の悪意に屈するわけにはいかないわ」
(……酷い言われようだな)
灯織「……実際、モノクマの言う通りだと思います」
灯織「今回のコロシアイはチュートリアル。クロにもシロにもリスクのない学級裁判……このシステムに慣れる上ではうってつけです」
灯織「今後のことを考えても、この学級裁判はしっかりと成功させておくべきだと思います」
恋鐘「ばってん、どがんすればよかやろ……?」
霧子「とにかく、捜査をしなくちゃいけないよね……このモノクマファイルだけじゃ、犯人はわからないから……」
樹里「だな……だとすると……二人組で行動するか?」
凛世「二人組、にございますか……?」
樹里「ああ、この中に犯人がいることは確かなんだ。だとしたら、その犯人は現場を荒らそうとするかもしれない」
(……)
透「それを防ぐための監視役ってわけか」
夏葉「ええ、そうしましょう」
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