【あんこ】迷宮の探索者【安価】

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99 : ◆tybR/mt68A [saga]:2023/02/26(日) 21:45:14.59 ID:fUPi8LL40
千人以上の住民が居た街は一夜にして滅び、僅か数十人の生き残りを残すだけになった。

町に溢れた化物達は周辺の領地から救助に来た兵士達に三日後には討伐され、その間、家に隠れ続けていた彼女は兵士に保護された。
町を襲った者が何者か、なぜ町を襲ったのかは、調査により直ぐに明らかになったらしい。

領主やその家族、兵士、使用人を含むほぼ全員が殺されていたらしい城の中から、一つの石が見つかったそうだ。
記声石という、音声を一定時間記録する事が出来るその石の中には、領主が自分の罪を自白する声が入っていた。

元々素行の悪かった彼は仲間と共に酒に酔い、町中の裏道で見つけた女を廃屋に連れ込んで乱暴しようとし、
逃げようとした女を抑え込んでいる内に力加減を誤り殺してしまったという。

しかもその女は平民ではなく、偶然町に滞在していた貴族の子女だった。

平民の娘であれば、そのまま犯人不明として事件を闇に葬る事も出来たが、貴族絡みとなると犯人を捕まえて処刑しない限り
親は絶対に納得しないし、領主の立場も悪くなる。

跡取り息子を殺人者として公にする訳にもいかず、かと言ってこのまま揉み消す事も出来ないとなった領主は、代わりの犯人を
でっち上げて処刑してしまう事を思いついた。

その結果、選ばれたのが偶然町に滞在していた冒険者の男だった。

冒険者は渡世の無頼であり、騒ぎ立てるような親類も居ない。
それに男は大酒飲みの上に喧嘩っ早く、頻繁に問題を起こしていたので、罪を着せやすいと領主は考えたのだ。

泥酔していた男は抵抗らしい抵抗も出来ずに装備を没収されて鎖に繋がれ、異例の速さで処刑された。
その処刑を担当していたのは彼女の父か兄か分からないが、二人の内のどちらかだろう。

記録されていた領主の声はここまでだが、最後にこれは義兄弟の復讐であると言い残す別の男の声が入っていた。

それを持って、この件を調査した人間はこれを刺青の誓いを結んだ冒険者による報復だと判断したらしい。

迷宮を求めて町から町への渡り鳥。
寄る辺無き冒険者達は、古来から略奪や陰謀の標的になりやすかった。

そこで何時しか始まったのが、互いに認め合った冒険者が、自分の血を含んだ特殊な魔法墨を使ってお互いの名を相手に刻む刺青の誓いである。

互いの血を含んだ墨を刻み合った者達の間では特殊な絆が生まれ、互いが死ぬ時には断末魔の光景と思念がもう片方にも知覚される。
もし誓い合った相手が、誰かに不当に殺された場合は、生き残った片割れが仇を討つ。

とは言え、現実には本当に大変な思いをしてまで仇を討つ義理堅い冒険者など稀で、特に相手が領主ともなれば
本気で神の秘宝を目指していない半端者では後生を気にして仇など討てない。

しかし本物の冒険者、すなわち本気で神の秘宝を手に入れて、この世界の王になろうと志す大馬鹿者にはそんな理屈は通用しない。
自分が神の秘宝を手にすれば、領主など歯牙にも掛けなくなるのだから、後の事など気にしないという訳だ。
過去には稀な例ではあるが、一国の王を討ち果たした冒険者も存在する。

結局、この惨劇を起こした冒険者は見つからぬまま、周辺の領主達にとってはこの事件は幕引きとなったらしい。
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