西城樹里「タケウチ」

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745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:33:19.78 ID:VfNpJpls0
樹里(ヘッ……なんつー歌唱力だよ。こんなダンサブルな曲で!)

 タタン! キュッ タン!

樹里(アタシが足を引っ張る訳にはいかねぇ!)

樹里(ましてセンターでコケたりなんか……!)

 タン! タンッ! タッ タン!

樹里(絶対に、ミスなんか!!)


 キュッ! タタン! タンッ!



樹里(……震えが起きねぇ)

樹里(ヘッ、どうやらアタシの勝ちだな)

樹里(いや……)


智代子(……)ニコッ

凛(……)コクッ


樹里(アタシ達の勝ちだ)
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:34:45.45 ID:VfNpJpls0
  見渡してみよう (感じてみよう) いろんな景色
  みんなの気持ち (それはエナジー) 作った今日が
  また出会いに (色とりどり) つながるの


卯月「みんな……!」

未央「すごいよ……すっごく、カッコいいよ!!」


  答え見つけた (そうでしょ?)
  だから進むよ (そうだよ!)
  アイコトバ

一同「かがー やーけーー!!」


ワアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:35:49.48 ID:VfNpJpls0
美城「…………」

天井「見たまえ。
   この会場にいる誰もが望んだものが、そこにある」

天井「貴女や……お前も含めて。無論、私も」


黒井「……当然だ。私が監修したユニットなのだからな」

天井「フッ……」


美城「……歪まず真っ直ぐにいられるのなら、それに越した事はありません」

天井「その通り。だからこそ、彼女達の輝きは眩しく尊い」

美城「そうです」



美城「それ故に、我々がその業を背負う必要があるのです」
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:45:12.57 ID:VfNpJpls0
樹里(このまま突っ走るぜ! 皆っ!!)

凛(うんっ!)コクッ

智代子(合点承知!)

夏葉(楓もいいわね!?)

楓(はいっ!)

 タタンッ! タンッ! タンッ!


  ときめきのまま (わたしのまま) 叶えてみよう
  イメージのなか (未来のなか) 急ごう

凛「君と!」

夏葉「GO!」


樹里「〜〜〜〜! 〜〜〜!♪」タンッ タタン!



武内P「…………」
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:46:22.36 ID:VfNpJpls0
武内P「良い笑顔です……西城さん」


  だから言えるよ (そうだよ!)

  今まさに (ドキドキの)

智代子「ア!」

楓「ン!」

凛「ビ!」

夏葉「シャ!」

樹里「ス!」

一同「イブ!!  なーんだーー♪!!!」

  タタンッ タッ! ザンッ!!


ワアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!! パチパチパチパチ…!
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:47:05.35 ID:VfNpJpls0
樹里「はぁ、はぁ、はぁ……!」

樹里「……」クルッ


智代子「えへへ……!」

夏葉「出しきった、わね……」

楓「はい……」

凛「……ほら、挨拶」ニコッ


樹里「あぁ」


樹里「ありがとうございましたぁーー!!」


ワアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:48:12.12 ID:VfNpJpls0
コツコツ…

未央「! えへへ、来た来た!」

卯月「樹里ちゃん! 凛ちゃん、皆……!!」ウルウル


コツ…

樹里「……どうだった、プロデューサー?」

武内P「はい。とても良いステージでした」

樹里「そんなん当たりめーだっての。もっとこう、何かあんだろ」


武内P「はい、あります」

武内P「言葉では言い尽くせないものが、あまりにも、たくさん」

武内P「皆さんは……『TAKE−UC』は、
    それをファンの方々に届けられる明確な力がある」

武内P「この割れんばかりの歓声が、その証左にほかなりません」
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:49:25.37 ID:VfNpJpls0
樹里「ヘヘッ……!」

凛「樹里……お疲れ様」

樹里「あん? 何だよ、凛は今のでヘバッたのか?」

凛「ううん」フルフル

凛「もう一度、今すぐにでもステージに上がりたい気分だよ」ニコッ

夏葉「見上げた心意気ね、凛!」

智代子「私は、も、もう少し休憩してからで、いいかな……?」

樹里「チョコは明日からレッスンメニュー追加な」

智代子「そ、そんなぁ!? 後生だよ樹里ちゃん!!」

未央「あははは!」ニコニコ


武内P「……いかがでしたか? 高垣さん」
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:50:31.48 ID:VfNpJpls0
楓「はい……とても、楽しかったです」

楓「私にも、出来ることがあるのだと……
  悲観の対象でしかなかった自分の中に、一筋の光が見出せたライブでした」

楓「皆さんのおかげです」


咲耶「楓……あなたの居場所はここさ」

咲耶「お帰りなさい、楓」

楓「ふふっ♪ はい、咲耶ちゃん」ニコッ


ワアアアアアァァァァァァァァァァ…!!


卯月「ま、まだ歓声が鳴り止みません……!」

樹里「アタシ達が最後って訳じゃないんだろ?
   ステージの進行的に大丈夫かよ」

武内P「この後は、数組ほどの公演が残されており、
    それが終われば、審査結果の発表と表彰式が…」
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:51:20.96 ID:VfNpJpls0
ヴィー…! ヴィー…!

武内P「!」

未央「電話?」

武内P「はい。失礼」スッ


武内P「……!」ピクッ


ピッ!

武内P「……もしもし」



『お疲れ様です。
 ステージは、無事に上手くいったようですね』
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:52:36.66 ID:VfNpJpls0
武内P「他人事のようなお話しぶりですが……」

武内P「会場の観客席で、ご覧になられていたのではなかったのですか」


武内P「プロデューサーさん」


『申し訳ございません。
 もちろん俺も、皆のステージをこの目で見たかったのですが』

『どうしても外せない、急な用事が入ってしまって……』


武内P「……ところで、ご用件は」


『あ、あぁそうだ。すみません』

『クイーンズゲートドームって、ありますよね?
 あの……そちらに来ていただくことって、出来ますか?』
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:53:44.93 ID:VfNpJpls0
武内P「これからセレモニーです。
    私が担当する、『TAKE−UC』の」

武内P「お分かりいただけると思いますが、私はこの場を離れることは出来ません」


『や、やはりそうですよね、すみません……』

『うーん、どうしようかな。
 実は俺も、御社の今西部長から言われて、急遽こっちに来ているもので……』


武内P「今西部長が?」ピクッ


『あ、そうだ!
 あなたに伝えてほしいと、今西部長からお預かりしていた言葉があって』


武内P「……それは、一体」



『過去の清算をしたい、と』
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:55:09.17 ID:VfNpJpls0
冬馬「ヘッ! 身の程知らずも大概にしろ!だぜ!!」

翔太「冬馬君、口調がおかしな事になってるよ」

樹里「ハッハッハ、どうやら本心では負けを認めたみてーだな」エッヘン!

冬馬「う、うるせぇ! 結果を見るまで分からねぇじゃねーか!」

北斗「そう言いたい所ではあるがな」フッ


冬馬「まぁ、だけどよ……」ポリポリ

冬馬「光るものがあった、ってのは認めてやる」


未央「えへへ、なーんだイイとこあるじゃん、あまとう〜♪」ウリウリ

冬馬「あ、あまとうって言うな!」

咲耶「フフッ。冬馬は心根が素直で優しい人だね」ニコッ

冬馬「べ、別にそんなんじゃねぇよ……」ポッ

樹里「もしかしなくても咲耶に弱すぎんだろお前」
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:56:00.10 ID:VfNpJpls0
コツ…

凛「……?」


凛「!」タッ!

卯月「あれ、凛ちゃん?」



凛「プロデューサー!」


樹里「……?」クルッ


コツ…

武内P「…………」


凛「……どこに行くの?」

凛「そろそろ表彰式なんだよ? 私達の」
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:56:45.31 ID:VfNpJpls0
武内P「…………」


武内P「……申し訳、ございません」スッ


樹里「おい、待てよプロデューサー!!」ダッ!


武内P「西城さん……!」

ザッ

樹里「自分の担当ユニットの晴れ姿を放って優先する用事って、何だよ」

樹里「ここまで来て、そんな……そんなつまんねー事すんなよ……!」グッ



武内P「……つまらない事では、ありません」


樹里「え……」
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:57:33.94 ID:VfNpJpls0
武内P「私には、無視できない事なのです」

武内P「過去に犯してきた罪と、向き合うために」


武内P「……申し訳ございません」クルッ

樹里「あっ、おい!!」

タタタ…!


樹里「夏葉っ!」

夏葉「会場のSP達に連絡して、彼を包囲させろと?」

樹里「分かってんなら早くしろよ!!」

夏葉「残念だけど、それは出来ないわ」

樹里「なっ……!?」
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/23(木) 23:59:09.88 ID:VfNpJpls0
夏葉「言ったでしょう? 彼は簡単に許されて良い人ではないわ」

夏葉「きっと、それを最も理解しているのは、あの人自身」

夏葉「だから……彼の決意を、私達に止めることは出来ない」


夏葉「…………ッ」


卯月「ぷ、プロデューサーさん……」

樹里「…………ざっけんなよ……!」ギリッ



楓「……皆さん」

智代子「は、はい」

未央「楓さん……?」


楓「皆さんに、お話しておきたい事があります」

楓「いいえ、お話しなければならない事が」
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 00:04:33.75 ID:QvLQwGsg0
コツコツ…!

黒井「誰がクイーンズゲートドームの使用を許可しろと言った!!」

『い、いえ! それは、黒井社長のご指示があったものと…』

『社長のIDから発信されておりましたし、
 何よりもう……ドームは開場されていますので、我々はそのように……』

黒井「な、何だと……!?」ピタッ



天井「まさか……先日立ち入った際に、貴女は……?」



美城「悪しき慣習を排除するタイミングとして、決して望ましいとは思いません」

美城「ですが、今を逃せばその機を失う事にもなる。
   使えるものは何でも。やれることは躊躇無く」


美城「看板アイドルの口から告発されるという、最悪の事態は免れたとはいえ、
   我々も決して無傷では済まされない」

美城「しかし、結果として今がベストとならざるを得ないでしょう」
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 00:05:35.08 ID:QvLQwGsg0
今回はここまで。
次回は明日の夜9時〜12時頃の更新を予定しています。
次でラストです。
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2023/02/24(金) 05:38:48.78 ID:N6GUGpSDO
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:08:33.06 ID:QvLQwGsg0
〜クイーンズゲートドーム〜

ブロロロロロ… キキィ!

ガチャッ! バタン!

武内P「……ッ」タタタ…!





ギイィィ…


武内P「……」コツコツ…

武内P「……ッ」

ピタッ



武内P「せ、千川さん……!」
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:09:22.48 ID:QvLQwGsg0
ちひろ「…………ぅ」


武内P「千川さん! 大丈夫ですか!?」ダッ!



シャニP「ぷ、プロデューサーさん!」ザッ


武内P「!?」

武内P「……っ」


シャニP「これは、一体……!?」


武内P「よくものうのうと……」

武内P「あなたこそ、ご事情をよく承知した上で私を呼んだのではないですか?」
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:14:18.24 ID:QvLQwGsg0
シャニP「!? え、い、いや……ま、待ってください」

シャニP「俺は今西部長に呼ばれて来ただけです!
     千川さんがこんな事になっているなんて何も…!」

シャニP「ていうか、こんな話してるより、まず千川さんを助けないと!」

武内P「! それは、確かに……!」


「それには至らない」


武内P・シャニP「!?」クルッ



コツ…



コツ…



今西「……彼女は気を失っているだけだ。
   もうじき、目を覚ますだろう」
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:15:50.43 ID:QvLQwGsg0
シャニP「今西部長……?」

武内P「……ご説明願います、あなたの意図を」

武内P「『過去の清算』という話を額面通りに受け取るならば、
    これは私とあなたの問題であり、関係の無い彼を呼び出す理由が無い」

武内P「無論、千川さんをこのような目に遭わせる事も!」


今西「君の言う通りだね」

今西「しかし、だからこそ無関係でいさせたくない、という気持ちもある」

武内P「な、何を……」


今西「283プロのプロデューサーさん」

シャニP「は、はい」

今西「あなたと千川君には、生き証人になってもらいたい」

シャニP「は? ……い、生き証人?」


今西「あなたのそばにある、その機材のスイッチを押してもらえますか?」
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:17:15.53 ID:QvLQwGsg0
シャニP「この……赤くてデカいスイッチですか?」

今西「そう」

カチッ


ヴィン…!

シャニP「う、うわ!?」


武内P「モニターが……これは……」


『……それでは見事優勝した『TAKE−UC』のスピーチに移りたいと思います。
 しかし圧巻のステージでした! ご覧ください、まだ拍手が鳴り止みません!』

『ワアァァァァァァァ…!!! パチパチパチ…!!』

『……あ、えっと……あ、ありがとうございます。
 まだその、アタシ達……ていうか、アタシ、実感が無い、っていうか……』


武内P「西城さん……これは、『クリスタルウィンター』の?」
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:22:31.63 ID:QvLQwGsg0
今西「中継の模様を映し出しているだけさ」

今西「だが、行いたいのはそれではない」

シャニP「え?」


今西「知らないかね?」

今西「『クリスタルウィンター』の会場であるスターリットドームは、
   ライブイベントをはじめとした世界的な情報発信基地として、最新鋭の機能を有している」

今西「そして、このクイーンズゲートドームもまた、
   規模こそ譲るものの、スターリットドームに見劣りしない通信設備を有し、そして……」


今西「両ドームの通信は、既に繋がっている」

今西「つまり、ここから送った映像をあちらの会場のモニターに映し出し、
   それを全国に発信することだって可能、という訳だ」

武内P「! ……」


『すっごく嬉しいです! 嬉しいんですけど……
 アタシや、アタシ達だけの力で勝ち取れたとは思っていません』

『ずっと支え続けてきてくれた人がいて、その……ソイツに、ちゃんと届けたくて……』
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:27:01.69 ID:QvLQwGsg0
シャニP「ちょ、ちょっと待ってください!
     細かい話は俺にはよく分からないですが……!」

シャニP「今まさに進行している彼女達の晴れ姿を、台無しにしようと言うのですか!?」

武内P「おそらく、それに留まるものでは無いでしょう」

シャニP「えっ……」


武内P「今西部長……最初から、あなたが行うつもりだったのですね」

武内P「有栖川さんや高垣さんではなく、あなたが……」


今西「……我々が行ってきたことだ」

今西「その所業を、アイドルの口から言わせるのは、あまりに忍びない」


シャニP「しょ、所業……?」


今西「……ところで、君は961プロとの“契約”の当事者が自分だけと思っていないかね?」

武内P「え?」


スチャッ
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:28:02.85 ID:QvLQwGsg0
武内P「! 離れて!」ドンッ!

シャニP「うわ!?」


ダァンッ!!


バスッ!

武内P「ッ!! ……ッ」ガクッ

シャニP「!? ちょ、え……えっ!?」


ちひろ「……!」パチッ


武内P「……ぅ…………!」ドサッ


ちひろ「!! ぷ、プロデューサーさん!!」



今西「立場的には、私は君の“先輩”に当たるんだ」
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:31:04.94 ID:QvLQwGsg0
シャニP「ち、血が!? え、本当に拳銃……!」

ジャキ!

シャニP「うっ…!?」ピタッ


今西「言わずとも分かると思うが、余計な行動は慎んでいただこう」

シャニP「あ、あなたは……何者なんですか」

ちひろ「プロデューサーさん!
    しっかりしてください、プロデューサーさんっ!!」


今西「どうして、私がここの設備に精通していると思うかね?」

今西「私も、建造に携わった者の一人だからだ。
   このクイーンズゲートドームのね」

武内P「……ッ」カヒュッ…

今西「もっと言えば、有栖川夏葉君をかのオーディションで勝たせた際、
   黒井社長は君にこう伝えたはずだ」

今西「今回は“他の者”に依頼する、と」

武内P「……!」


ちひろ「ぶ、部長が手引きしていたんですか……!?」
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:32:44.96 ID:QvLQwGsg0
今西「346と961の間にある“契約”は、昔から続いていたんだ」

今西「だが、私も歳を重ねてしまったし、何より社内での役職もできた。
   昔のように、満足な活動ができなくなってね」

今西「“契約”を続けるための後継者が、346側に必要となった」


武内P「…………ま、さか……」

武内P「黒井、社長に…………かのじょ、を……?」


今西「黒井社長に、君と当時の担当アイドルに関する情報を渡したのは、私だ」

今西「……君にはすまない事をしたと思っている」


ちひろ「そんな……」

武内P「………………ッ」ズズッ

シャニP「し、しっかり! 無理しないでください!」
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:39:40.48 ID:QvLQwGsg0
今西「このクイーンズゲートドームの地下には、施設の全動力を担う設備室が備わっている。
   文字通りの心臓部であり、血管に相当する幹線がドームの至る所に経由している」

今西「普段は過負荷がかからないようセーフティーが機能しているし、
   何より全容量での稼働などせずとも十分に施設の運用には支障が無い」


今西「それほど過剰な設備のセーフティーを解除し、一気に臨界点まで稼働させたらどうなると思う?」

武内P「…………」


今西「彼女達のセレモニーが終わったタイミングで、モニターの映像をこちらに切り替える」

今西「そして、私達が重ねてきたことを、公表する……
   既に映像データは作成済みだから、それを流すだけだ」

今西「映像が最後まで流れる頃合に……地下の動力が臨界点まで作動し、
   このドームは地下から一気に崩れ落ちる」

今西「私と君は、闇に葬られるということだ……忌むべき歴史としてね」



今西「283プロのプロデューサーさん」

今西「あなたは千川君を連れて、このドームから退避してください」
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:40:59.19 ID:QvLQwGsg0
シャニP「い、今西部長……死ぬってことですか?」

シャニP「あなたもこの人も、死ななければならない人だとは俺には思えません」

シャニP「彼を慕うアイドル達の事はどうなるんですか!? どうして…!」

武内P「か、まいません……」

シャニP「! プロデューサーさん……」


武内P「いって……ください…………」


今西「……私も同じ気持ちです」

今西「きっと、私も彼も、大罪人として世間には周知される事となるでしょう」

今西「だが、私はともかく、彼は……彼の真実を知る人だけは、どうか残したかった」

今西「だから、あなたと千川君にここへ来てもらったのです」
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:43:34.25 ID:QvLQwGsg0
シャニP「……俺は」


ちひろ「どうにも……ならないんですか……?」ポロポロ

今西「アイドル達の未来を守るためには、こうするのが一番合理的だ」

今西「常務には詳しい事情を明かさなかったが……
   私の動向を監視しながら、こうして泳がせている当たり、彼女も私の思惑に気づいていたのだろう」

今西「まぁ……会社の不都合を一部の社員が丸ごと被って消えるとなれば、
   彼女として止める理由など無いだろうね、ハハハ」ポリポリ

ちひろ「い、いや……ぁ、うぁ……!」


『だから、今はその、なんか離れたトコに行っちゃったんですけど……
 もし見ていたら、こう伝えてやりたいんです』

『もっと目の離せないアイドルになってやるから、首を洗って待ってろ、って』

『じゅ、樹里ちゃん、ちょっとそれ言い方が物騒じゃぁ……!』

『うるせーな、良いんだよ。
 それくらいガツンと言ってやんなきゃどうせ分かりゃしねぇんだ、あんなヤツ』

『アハハハ…!』
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:45:29.33 ID:QvLQwGsg0
今西「……そろそろだな」

ちひろ「そ、そうだ黒井社長! 黒井社長に応援を…!」スチャッ

今西「無駄だよ。
   彼らの連絡網は、既にアカウント情報が錯綜して機能不全に陥っている」

今西「このドームに突入すべきなのか、ドームへ侵入者しようとする者を守るのか……
   どちらの指示が正しいのかも、もはや彼の部隊には判断がつかない」

ちひろ「う、うぅ……!」

シャニP「……天井社長は、あなたの考えに賛同されたんですね?」

今西「あなたをここへ呼ぶことも含めて、ね」


シャニP「分かりました」

シャニP「千川さん、ここを離れましょう」グッ

ちひろ「い、嫌です! そんなの、私嫌ですっ!!」

シャニP「でも、一つだけ約束させてください、今西部長」
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:46:57.69 ID:QvLQwGsg0
シャニP「俺はこんな幕切れが正しい事だとは決して思いません」

シャニP「だから、あなたの事を認めることは出来ません」

シャニP「ですが、俺は俺のやり方であの子達と向き合い、トップアイドルへと導いてみせます」

シャニP「それがきっと、あなた方が望んでいたアイドルの未来であると信じて」



今西「……聞いたかね? 彼の言葉を」


武内P「…………」コクッ


今西「納得したようだ」



シャニP「……失礼します」グイッ

ちひろ「うぁ、あぅぅ……!!」ボロボロ

スタスタ…
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:49:25.33 ID:QvLQwGsg0
今西「……静かになったね」

武内P「…………」

今西「あと1分ほどで、映像が切り替わる……」


『……えー、なおも興奮冷めやらぬこのスターリットドームですが、
 最後にこの方にもコメントをいただく必要があるでしょう』

『高垣楓さん。今回は当初出場予定だった283プロの白瀬咲耶さんから、
 急遽バトンを託されての『TAKE−UC』入りだったそうですが、今のお気持ちを』


『はい……これほど非常な精神で、ステージに望んだことはありませんでした』

『疑いなく、私のアイドル人生で生涯記憶に残るものになったと感じています』

『それは、ここにいる樹里ちゃん達『TAKE−UC』の皆さん。
 そして、今日会場にお越しいただいたファンの方々……』

『皆さんのおかげで、もう少しだけ私も自分の翼を信じ、羽ばたける気がしました』


『心より感謝を。
 ありがとうございます……これを観てくれている、あなたにも』
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:50:06.44 ID:QvLQwGsg0
武内P「た、かがき……さん……」


『ウィンターフェスの優勝者『TAKE−UC』の皆さんでした!
 皆さん、改めてどうか惜しみない拍手をお送りください! おめでとうございます!』

『ワアアアアァァァァァァ!!! パチパチパチパチ…!!』


ヴィン…!


武内P「……!」



今西「……始まったようだね」
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:50:57.75 ID:QvLQwGsg0
〜スターリットドーム〜

司会者「? あれ?」

ザワザワ…

樹里「何だ?」

凛「あのモニター、急に画面が真っ暗に……」

智代子「あそこだけじゃないよ! 会場中のモニターが……!」


夏葉「何者かにジャックされている……!?」

楓「…………」

ザワザワ…! オイオイ…!


パッ!


『……私は346プロダクションアイドル事業部長、今西と申します』
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:51:57.02 ID:QvLQwGsg0
「お、何だ?」
「何か始まったぞ」

ザワザワ…


未央「い、今西部長!?」

卯月「どういう事ですか!? どうして……!」


『この場をお借りして、皆様にお伝えしなくてはならない事があります』

『我が346プロダクションと、黒井祟男氏を代表とする961プロダクションは……』


咲耶「これは……まさか……!?」



『自らの利益を追い求めるために、罪も無い他社のアイドル達や、芸能関係者を……』
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:53:10.93 ID:QvLQwGsg0
ダァンッ!!

今西「!?」


ガィンッ!!

ギィッ ギギー!! ガガガ…!

ブスブス…!

今西「! き、機材が……!」


武内P「はぁ…………はぁ……」スチャッ


今西「拳銃……君は、一体どこでそんなものを……!?」





『ジジッ…! ザザッ!』

『ブツッ!』
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:53:46.72 ID:QvLQwGsg0
智代子「あ、あれ……?」

卯月「切れ……た?」





武内P「彼女達に……伝えたい事が……」グッ

今西「君は……」

武内P「予備の、回線は……ぐっ…………」ヨロヨロ…

武内P「ありますか……?」


今西「……もう、時間は無いぞ」

今西「臨界は始まっている」スッ

カチッ



パッ!
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:55:53.37 ID:QvLQwGsg0
未央「ん? ……えっ!?」

「え、何だ?」
「男?」
「誰……?」

ザワザワ…


樹里「ぷ、プロデューサー……!?」



『皆さん……さ、西城さん……』


樹里「!」



『申し訳…… ゴォォォ…! ござ……ゴゴゴ…! …せ……ゴゴゴゴ…!』


『どうか…… ゴゴゴゴゴ…!』
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:56:20.20 ID:QvLQwGsg0
ゴゴゴゴゴ…!!


今西「律儀だね、君は……」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!


武内P「…………」ガクッ


ドドドドドドドドオオォォォーーーー!!!!





プツッ!
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 21:58:05.66 ID:QvLQwGsg0
凛「切れ、た……」


咲耶「ぷ、プロデューサー……?」


ザワザワ…!



楓「…………」



樹里「…………何だよ、これ」

樹里「ふ、ふざけ……ふざけんなよ、なぁ……!?」


樹里「ウソだろ? ……プロデューサー…………?」


樹里「プロデューサーッ!!!」

樹里「未央、卯月! アタシのスマホ!! 早くっ!!」ダッ!
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:01:22.21 ID:QvLQwGsg0
未央「じゅ、ジュリアン落ち着いて! な、何が起きたか…!」

樹里「誰か連絡取れよ!! 何ボサッとしてんだよ!?
   どうなってんだよふざっけんな!! アイツどこだよ、さっさと…!!」ツカツカ…!

卯月「樹里ちゃんっ!!」ダキッ!

樹里「は、放せっ! 放せよぉ!!」


樹里「あ、アイツのトコに、行くんだよ……!
   何だよ……ウソだ……う、ぅ、ウソだ……ウソだっ……!」ジワ…

卯月「樹里ちゃん……!」

樹里「ウソだ! う、ウソだ……!!」


樹里「どこだよ、プロデューサー……? プロデューサー……!」


樹里「どこ行ったんだよ……!?」


樹里「プロ、でぅ……ぁ、うあ……あ……!!!」

樹里「うああぁ、あぁぁぁ……!!!」ポロポロ


――――

――――――
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:07:10.47 ID:QvLQwGsg0
――――――

――――


『先日起きた961プロダクション所有のドーム爆破事故について、
 代表の黒井祟男社長はこの日会見を開き、
 改めて同社の管理体制に問題は無かったとする見解を明らかにしました』


『……えぇー、こちらの事故調査報告書によりますと、
 我がクイーンズゲートドームの爆破の原因につきましては、
 地下の設備ルームに急激な負荷がかかり、臨界に達した事が挙げられまして』

『これは通常の管理・運用においては考えられない操作がなされたとのことです。
 加えまして、事故が起きた当日、我が961プロの“正規の社員”はこのドームに出入りしておらずぅ!』

『以上のことから導き出される事実は、何者かが故意にッ! 我が施設に侵入し操作した!
 つまり事故ではなく、大いに事件性のあるものと考えられましたので、
 961プロとして断固! 厳正に! 対処していく次第であります』

『週刊慎重です。黒井社長。
 今インターネット上で広がっている動画の件につきまして、コメントをお願いします』

『ハッ! あんなもの、どこの馬の骨か分からぬものが勝手に作った代物でしょう。
 出所すら確認できんものに、信憑性の有無を議論することはナンセンスと考えますな』

『しかし、幾人かの芸能関係者からも、これを検証すべきとのご意見が…』

『我が961プロが愉快犯の戯れ事に屈する事は無い!
 むしろ名誉毀損でこちらから…!』
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:14:31.85 ID:QvLQwGsg0
  >とんでもない爆弾案件が出てきたな
  >令和最大ぶっちぎりで更新しただろコレ
  >実際にいた人なんだっけ? 動画に出てた白髪のオッサン
  >自己紹介の通り、346プロダクションアイドル事業部の今西って人で確定らしい
  >ドームのネットワークを通じて346のデータクラウドからサルベージされたんだっけ?
   出所も信憑性も十分やんけ

  >あの歳で部長って凄いの?
  >普通に行けば専務とか取締役クラスでもおかしくないし、そうでもなくね?
  >最大手で役職就いてる時点でレジェンド定期
  >レジェンド(笑
  >346のアイドル部門立ち上げたのが本当ならガチレジェンドやろ
  >「346プロアイドル事業部長です。今すべてをお話します」
  >↑これ系でマジなの初めて見たわ

  >楓さんのことも結構言ってたよな
   さすがにヤバない? 楓さん見れなくなるんか?
  >本当だったら高垣楓どころか、アイドル業界のビジネスモデルが終わる
  >この間降臨してた考察班の言ってること当たっとるやんけ
  >チョコちゃん回のヤツ?
  >あのクッソ意味深な話して実況勢が軒並み混乱したヤツか

  >上がってたから見てきたけど、何だこれ……もう答え合わせできてるだろ
  >346プロサイドの沈黙が怖すぎる
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:17:15.04 ID:QvLQwGsg0
  >樹里ちゃんが大泣きしてたのもヤベー雰囲気出てたよな
  >演技に決まってんだろ、全部台本だよこんなの
  >演出で事務所のドーム爆破してたらすげーわww
  >西城樹里の言ってたプロデューサーって、当日会場で一瞬映ってたヤツ?
  >アイツが業界人の殺しやネガキャンとか全部やってたんだよな?
   ガチモンの極悪人やんけ
  >アイツのせいで一生懸命頑張ってた他のアイドルの子らも日の目見れなくなるのクソすぎ
  >そういうレベル超えてるわ、人として絶許
  >悪いことするヤツってマジで自分の事しか考えないよな。なんなん?

  >ていうかTAKE−UCの子ら、アレから全然出てこないな、大丈夫か?
  >事務所から口止めされてんじゃねーの(適当)
  >樹里ちゃんまた鬱になってそう
  >そりゃゴリ押しの後ろ盾が無くなればギャン泣きもするわな
  >まだ言ってんのかお前
  >ましてセンターだしな、そら入れ食いさせまくったんだろ
  >↑通報した
  >今裁判所の開示手続きクッソ早いからな、震えて眠るんやで
  >こんだけ誹謗中傷が問題視されてんのにまだやる馬鹿いるんだな
  >馬鹿はニュース見ないからな

  >素直に寂しいわ、テレビつければ大抵誰かが映ってたし
  >まさか西城樹里ロスを感じる時が来るとは……
  >広告も一切流れないの自粛ムードすごいわ
  >このまま引退しちゃうのかな……
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:18:56.18 ID:QvLQwGsg0
〜346プロ 会議室〜

美城「……適性を考慮した結果、
   君には渋谷凜とのデュオユニットで活動してもらう事を検討している」パラ…

美城「先日の『TAKE−UC』のステージは、私も感銘を受けた。
   それに、お互いに気心の知れた者同士の方が、何かと動きやすいだろう」

美城「優秀なプロデューサーもつけよう。
   君に無理をさせるような事は無いはずだ」パラ…

パラ…


美城「……君にとって、悪くない話を提示したつもりだが、いかがだろうか」



樹里「…………」



美城「……なら、君の希望を聞かせてほしい」

美城「君の境遇は理解しているつもりだ。
   アイドル事業部の常務として、君の待遇には最大限の配慮をする用意がある」
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:22:05.21 ID:QvLQwGsg0
樹里「……じゃあ、聞いてもいいですか」

美城「どうぞ」


樹里「アイツの……あのプロデューサーの事は、どうするつもりなんですか」

美城「…………」


樹里「アンタにしてみりゃ、何も痛いトコなんかねぇよな」

樹里「あの動画の通り……アイツと今西って人が961プロと勝手にやった事にすりゃあよ」

美城「…………」

樹里「沈黙を守ってさえいれば、どうせ黒井社長は遅かれ早かれボロを出す。
   ネットの検証が黒井社長のウソを暴いて、いずれ炎上して961プロは窮地に陥る」

樹里「それでズルズルと自滅すりゃ、結果としてアンタら346プロの一人勝ち……
   アンタの狙いは、そんなトコだろ」

美城「…………」
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:26:16.43 ID:QvLQwGsg0
樹里「ふざけやがって……!」ギリッ

ダンッ!

樹里「アイツを悪者にして、テメェの手を汚さず城の外へ一歩も出ねぇ王様気取りかよ!!」

樹里「アイツを追い詰めたのはアンタらお偉いさんだろうがっ!!」


美城「そうだ」

樹里「! ……」


美城「私とて、このような結末は本意ではない」

美城「だが、私は常務としてこの事務所を、そして社員の生活を守る責務がある」


樹里「だから、切り捨てるってのかよ……!?」

美城「仕事柄、憎まれ役は慣れている。
   それが私の仕事であるとも」

樹里「馬鹿にすんじゃねぇよっ!! 大人ぶりやがって!!」

美城「割り切らなければ、私達は前に進めないのも事実だ」
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:28:32.58 ID:QvLQwGsg0
樹里「……ハッ、簡単に言ってくれるぜ。他人事だと思ってよ」

樹里「アタシの希望を教えろっつったな。聞かせてやる」

樹里「アイツを返せ」

美城「…………」


樹里「アタシの……『TAKE−UC』のプロデューサーはな。
   冷蔵庫には変なドリンクしか入ってねぇし、自炊もままならねぇ」

樹里「かと思えば、ハンバーグを弁当に何個入れても空にしてくるし……
   バスケをやらせりゃ、信じらんねぇプレーでアタシの度肝を抜いてきやがる」

樹里「それで、淡泊な受け答えしかしなくて……
   さん付けなんかやめて、下の名前で呼び捨てにするって、約束してたのに」

樹里「とうとう、一度も呼んでもらえなくて……」


樹里「でも……」

樹里「アグラオネマって鉢植えを、あんま正しくねーけど大切に、
   丁寧に愛情を持って育てるようなヤツで……」

樹里「それと同じくらい、アタシの……
   アタシ達アイドルの事は、ずっと一番に考えてくれて……」

樹里「自分の事なんかより、よほど大事に……」ツー…

ポタッ
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:31:09.85 ID:QvLQwGsg0
美城「…………」

樹里「そんな……そんな献身的なヤツがさ」

樹里「私利私欲、のため、に……悪いことばっかして……ッ……」

樹里「それで……961と問題を起こして、勝手にし、しん……!」ポロポロ

樹里「あ……うぁ、ぁ……!!」ポロポロ

美城「………」

樹里「そんな……ひっ、ぐ……そんなさ……!」

樹里「そんな酷いヤツだったんだ、って! 世間に報道されて終わるなんてよ!!」

樹里「あんまりじゃねぇか……!!」グッ


樹里「返せよ……」

樹里「アイツを、返せよ」

美城「…………」

樹里「それが出来ねぇなら、せめてアイツは立派なプロデューサーだったんだ、って、
   アンタの口から公表しろ」

樹里「そしたら、アンタの条件を飲んでやる」
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:33:00.20 ID:QvLQwGsg0
美城「…………」

美城「……帰りの交通費にでも使いなさい」スッ


樹里「! ……〜〜〜〜ッ!!」ガシッ!

ビリッ!!

美城「…………」

樹里「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

樹里「どんだけコケにすりゃ気が済むんだ……!」


美城「……残念だ」

樹里「アタシはちっともだよ。逆に清々した」


クルッ

樹里「アタシは346のアイドルになんかならねぇよ。絶対にな」

樹里「アイツを……アイツをとことん、ヒドい目に遭わせた所になんか……!」ギリッ

ツカツカ…!



美城「……彼の名誉は、保証できない」

美城「しかし、別の人物の名誉を回復させる段取りは進んでいる」
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:35:00.94 ID:QvLQwGsg0
樹里「……!?」ピタッ


美城「君の見立てにも一理ある。
   だが、かの問題について、我々346プロが沈黙を貫くことは、本来望ましい事ではない」

美城「その気になれば、この機に乗じて、
   多少のリスクを被ってでも961を糾弾した方が、商売敵を一気に潰せるからだ」

美城「それをしない事の交換条件として、我々が961プロ側に要求した事項が一つある」

樹里「……?」


美城「とある一人のアイドルの名誉を、回復するようにと」

美城「961と346の契約のために、過去に犠牲となったアイドル……
   かつて彼が担当していたその子が、またステージに立つことができるように」

樹里「……!」


美城「既に一定の報道はなされている。
   再びこの事務所に顔を出してくれる日も近いだろう」
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:48:14.53 ID:QvLQwGsg0
ウィーン…



テクテク…


未央「……あっ、ジュリアン!」

卯月「樹里ちゃん!」タッ


凛「……樹里」


樹里「……皆、悪ぃ」

樹里「やっぱアタシ……ここには居られねぇわ」


凛「うん……何も謝ることなんか、ないよ」フルフル

樹里「でも……!」
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:50:10.55 ID:QvLQwGsg0
卯月「樹里ちゃんとは私達、ずっと一緒の友達です。
   たとえ同じ事務所でいられなくたって」

未央「そうそう。何かあったら……ううん、何も無くても連絡取り合おうよ!
   この未央ちゃん、電話一本ですぐジュリアンのとこに飛んでいっちゃうんだから!」

樹里「ハハ……またお前、そうやって調子の良い……」

未央「それが私の良い所でしょー?」ウリウリ

樹里「ハハ、ハ……」


凛「……そうだ。ねぇ樹里、コレなんだけど」スッ

樹里「あぁ、そうだったな」


卯月「アグラオネマ、ですか」

未央「プロデューサーの部屋に、あったヤツだよね……」
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:56:54.71 ID:QvLQwGsg0
樹里「本当は、アタシが決めることじゃないって、分かってんだけどさ……」

樹里「やっぱコレは……346プロの誰かに、面倒見てもらった方がいいと思うんだ。
   花壇かどっかに植えて……ドサクサ紛れみたいで、カッコつかねぇけど」

凛「うん……私も、そう考えてた」

樹里「凛が引き取ってもいいんだぜ?
   お前なら、ちゃんと世話してくれそうだしさ」

凛「ううん」フルフル


凛「樹里が引き取らないんだったら……私も、引き取れない」

凛「何ていうか、その……フェアじゃない、でしょ?」


樹里「……何だそりゃ」

凛「ふふっ……さぁ、何だろうね」クスッ

樹里「うるせぇ」ハハッ
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:58:07.24 ID:QvLQwGsg0
〜中庭〜

テクテク…

樹里「……こんなに広い中庭、あったんだな」

未央「結構さ、日当たりも良いんだよ」

卯月「私もたまに、日向ぼっこしたりしています」

樹里「ふーん……」


凛「どこに植える? 樹里」


樹里「……あそこがいい」スッ


卯月「噴水の……」

未央「おぉー、こりゃ一番目立つ所だねぇ」

凛「……恥ずかしいって、嫌がりそうだけどね」クスッ

樹里「そんくらいがちょうどいいんだよ、コイツには」
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 22:59:19.10 ID:QvLQwGsg0
ザクッ ザクッ

樹里「……」ザック ザック

凛「…………」


樹里「そういやさ……今さらだけどよ」ザク ザク…

樹里「寒さに弱いんじゃなかったっけ、これ。
   もしかして、外に植えるのって、まずいのか?」

凛「うん……本当はね。
  まぁ、最近暖かい日も多くなってきたから、大丈夫かも」

凛「でも……次の冬は、越えられないと思う……」


樹里「それでも……反対しねーのか?
   アタシが、ここに植えるの」


凛「……私は、お世話していないから」

凛「今まで世話していた樹里に……口出しできる筋合い、無いよ」


樹里「…………」


ザクッ

樹里「ごめんな……部外者のアタシが、ワガママ言って」ザクザク…
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:00:20.39 ID:QvLQwGsg0
凛「部外者なんかじゃ……」

樹里「アタシよりも、お前らの方が付き合い長いだろ」ザッ ザッ…

卯月「…………」

未央「そういうの……関係ないっていうか、さ」

ザクッ…


樹里「……アタシは、何を残してやれたのかな」

樹里「最期、アイツ……何を言いたかったのかな……」


凛「樹里……」


樹里「……ヘッ、なんてな。今さら考えたってしょうがねぇ」

樹里「よっと」スッ


樹里「こんな、感じで……と」ソォー…

樹里「ん? もうちょい掘った方がいいか?
   どう思う、凛?」

凛「……私は」



???「あっ! ちょっと待ってぇー!」タタタ!
806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:05:46.20 ID:QvLQwGsg0
樹里「へ?」

タタタ…!

???「よっこい、しょ! っと!
    えへへ、お花のお世話をしてくれてるんだねっ。ありがとう!」

???「うーん、穴はもう少し広い方が良いかなぁ?
    ちょっとスコップ貸して」ヒョイッ

樹里「あ……」

???「よっ。ほっ」ザク ザクッ

???「あっ、でもこれ、よく見たらアグラオネマ?」

???「ダメだよ、この子は日当たりの良いお外に植えるのは良くない品種なの。
    それに今はまだ寒いから、きっとすぐに枯れちゃう」


卯月「……あなたは」


???「だから、どうしても植えたいんだったら、あそこの、うーん……そう!
    春になってから、あの大きなけやきの下に植えてあげると良いんじゃないかなっ」

???「人目にも付きやすいし、木陰で休みながら皆に撫でてもらえたりするかも?
    この中庭の新しい人気者になれるかもね、なんて、えへへ♪」


未央「ひょっとして……」
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:07:24.77 ID:QvLQwGsg0
???「でも、勝手に植えたりしたらちひろさんに怒られちゃうからね。
    私の方から許可もらえるか聞いてくる! ちょっと待ってて!」

樹里「いや、いい」

???「ん?」ピタッ


樹里「日当たりの良いトコが……寒いのがNGなのは、知ってる。
   けど……コイツは、ここでいいんだ」

樹里「アンタみたいな専門家に言ったら……怒られちまうかもだけど……」

???「ううん、怒んないよっ」ニコッ

樹里「……え?」


凛「…………相葉、夕美」


相葉夕美「この子も、日当たりの良い所が好きみたいっ」

夕美「お花の気持ちが分かってくれる人に面倒見てもらえて、幸せな子だね♪」


樹里「何で……どうして、分かるんだ?」

夕美「そりゃあ、私の選んだ子だもんっ」ニコッ

樹里「!!」
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:08:52.25 ID:QvLQwGsg0
夕美「あの人に、プレゼントしてあげた子だったからね」


樹里「……あ、アタシは」

樹里「アタシは……!」ジワ…!

夕美「あなたが、西城樹里ちゃんだよね?」

樹里「……ずっと、アタシ……アンタに……!」

夕美「あの人と一緒に、ずっとこの子の面倒、見てくれてたんでしょう?」


樹里「ずっとアンタに、会いたくて……!!」ポロポロ

樹里「会って、あや、ぁ……謝らなくちゃ、って……!」

夕美「どうして?」

樹里「アタシは何もできやしなかった!!」


樹里「あの時、無理やりにでもアイツを引き留めていれば……!」

樹里「きっと、こんな事なんか……ごめん、う、ぅ……!!」ボロボロ
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:10:33.61 ID:QvLQwGsg0
夕美「ううん、許さない」


樹里「!」

夕美「樹里ちゃんはもっと笑っていい人なんだよっ」

樹里「……え」


夕美「あの人だって、きっとそう言っていたでしょう?」

夕美「二言目には、笑顔って言う人なんだから、
   きっと樹里ちゃんの泣いてる姿なんて、見たくないはずだよ」

夕美「それに、樹里ちゃんはあの人のそばにいてくれたんだから……」

夕美「きっと私のことで傷ついていたあの人に、親身に寄り添って、
   前を向いてもらえるようにしてくれたのが樹里ちゃんだって」


夕美「何となく分かるの。
   あなたに会って、こうしてお話をしていると、ひしひしと」スッ
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:12:20.59 ID:QvLQwGsg0
ギュッ

樹里「あ……」


夕美「だから、笑おう?
   あの人のためにも、樹里ちゃんのためにも」

夕美「そうしてくれないと、私、許さないんだからっ。なんてね♪」ニコッ


樹里「やめてくれよ……」

樹里「もうそういうの、ウンザリなんだよ……!! アタシは…!」

夕美「あっと、穴ぼこ広げなきゃだねっ。ちょっと待って、もう少しで終わ…」


樹里「許されていいヤツじゃねぇんだよアタシはっ!!」

夕美「…………」


樹里「……ッ」ダッ!

卯月「あ、樹里ちゃん!?」

未央「ジュリアン、どこ行くの!?」

タタタ…!
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:19:25.00 ID:QvLQwGsg0
卯月「樹里ちゃん……」


凛「……アンタが、相葉夕美」

夕美「…………」ザック ザック…


夕美「追い詰めるような事、言っちゃったかな……」ザク ザクッ

凛「ううん。でも……」

凛「今は……そっとしておいてあげた方が、いいと思う」

夕美「お花ってね」

凛「?」


夕美「お世話してくれる人に、ちゃんと答えてくれるの」スッ

凛「……」

夕美「逆に放っといたら、すぐに元気を無くして枯れちゃう」ソォー

夕美「もちろん、品種にもよるけどね……っと。こんなもんかな?」ギュッ


夕美「……こんなに立派なアグラオネマ見るの、私、初めてだよ」

夕美「あの人も、樹里ちゃんも……本当に、大事にしてくれてたんだなぁ……」


夕美「皆も出来ると思うんだ……樹里ちゃんに、この子と同じことを」
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:20:18.13 ID:QvLQwGsg0
凛「え……?」


夕美「樹里ちゃんを、支えてあげること。元気づけてあげること」

夕美「私では、ちょっと難しかったみたいだけど……
   樹里ちゃんと友達でいてくれた、皆なら」


凛「…………」

凛「未央」

未央「へ?」

凛「確か、バスケやったことあるって言ったっけ?」

未央「わ、私?
   えぇ、まぁ、部活の助っ人とか。あと、弟とたまに……」

凛「家にバスケボールある?」

未央「あ、ありますけど…」

凛「取ってきて」

未央「へぁ!?」

卯月「り、凛ちゃん?」
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:21:31.37 ID:QvLQwGsg0
未央「そ、それは構わないけど、私んち結構電車乗り継ぐから時間かかるよ!?」

凛「じゃあタクシーで行って。お金はちひろさんと相談するから」

未央「思い立ったら唐突に頑固だねしぶりんは!?」


未央「でも……何か考えがあるんだよね、しぶりん?」

凛「うん」コクッ

未央「よーし、じゃあ任された!」ダッ!

卯月「あ、未央ちゃん!」

凛「卯月、樹里を追いかけよう!」

卯月「凛ちゃん……はいっ!」ギュッ


夕美「……ありがとう」

凛「きっと何とかする。待ってて」

夕美「うんっ」コクッ

タタタ…
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:22:24.56 ID:QvLQwGsg0
夕美「……よし、じゃあ私は、っと」ヒョイッ

夕美「…………」ザッ ザッ


ちひろ「来てくれてたんですね……」スッ


夕美「……うん、おかげさまで」

ちひろ「ありがとうございます。それと……」

ちひろ「ごめ…」

夕美「言わないで、ちひろさん」

ちひろ「…………」


夕美「……あぁ、樹里ちゃんの気持ち、ちょっと分かるなぁ」
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:23:38.85 ID:QvLQwGsg0
ちひろ「夕美ちゃん……」

夕美「やっぱり、悲しいな……本当に、ちょっと、ううん……」


夕美「悲しんだり……寂しがった方が、良いのかな」

夕美「樹里ちゃん達みたいに……」

夕美「えへへ……分かんないや……」


ちひろ「強がらなくて、いいんです」

夕美「…………」

ちひろ「あなたの素直な気持ちなんですから……悲しいのも、寂しいのも」

ちひろ「どうか……夕美ちゃんのためにも、我慢しないであげてください」



ツー…

ポタッ


夕美「……うんっ」ポロポロ
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:24:58.76 ID:QvLQwGsg0
タタタ…!

未央「と、とは言ったものの……!」


ブロロロロ…! ププー…!

未央「タクシーなんて、そんな都合良く捕まらないよぉしぶりん!
   も、もっと駅の方まで歩かなきゃダメかなぁ……?」

ブロロロロロ…!


キキィッ!

未央「……へ?」

未央(何か、すっごい高そうな車が止まったけど……)


ウィーーン

夏葉「お急ぎかしら? 未央」
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:26:13.87 ID:QvLQwGsg0
未央「な、なつはし!?」

智代子「私もいるよ、未央ちゃん!」ニュッ

未央「チョコまで! 二人ともどうしたの!?」


夏葉「咲耶が楓の説得に向かっていてね。迎えに行く所なのよ」

未央「説得……」

智代子「ほ、ほら。楓さん、その……」

未央「う、うん。分かってる」


未央「引退説……」

未央「一応、同じ事務所だし……色々聞こえてきちゃったりするし」

夏葉「やはり、本当なの?」

未央「普段見かけないような偉い人達が、フロアを大慌てで走り回ってるのを見ちゃうと、ね」

智代子「咲耶ちゃん……楓さんと話、できたのかな……?」
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:28:24.05 ID:QvLQwGsg0
夏葉「それはそうと、未央はどこへ行くつもりなの?」

未央「えっ? あ、えっと、家に急ぐ用事があって!」

智代子「家? 未央ちゃんの?」

未央「そう! ちょっと忘れ物というか、取りに行きたい物が…!」

夏葉「乗りなさい。送るわ」クイッ

未央「ええっ!? い、いやいや! さくやんと楓さんを迎えに行くんでしょ!?」


夏葉「あの二人の事なら、咲耶に連絡をすれば足りるわよ」

夏葉「咲耶だって、きっと楓との時間を大事にしたいでしょうし」ニコッ

智代子「めくるめく二人きりのアブナイひととき……
    あっ、い、今のはちょっと不謹慎でした! 失敬!」ブンブン!


未央「……ありがとう! じゃあお言葉に甘えて!」ガチャッ

ササッ バタン
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:30:04.13 ID:QvLQwGsg0
夏葉「ところで、家まで取りに行きたい物って何?」

未央「あぁ、バスケットボール」カチャッ

未央「何に使うか分かんないけど、しぶりんがすぐに取ってきて、って」

夏葉「そう言われただけで取りに行く未央も、随分とお人好しね」クスッ

未央「なつはしも、でしょ?」ニカッ

夏葉「フッ……ご自宅はどこかしら?
   モタモタする気は無いわ! しっかり掴まっていなさい!」グッ!

未央「ちょっ、法定速度は守ってよなつはし!?」


智代子「あ、あの……ちょっといいかな?」スッ

未央「ん?」

夏葉「どうしたの、智代子?」


智代子「か、買えばいいんじゃないかな? って……バスケットボール」

智代子「わざわざ未央ちゃんの家まで行かなくても、その辺のスポーツショップで……」


未央・夏葉「……ッッッ!!?」

智代子「顔ッッッッ!!!」
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:30:47.78 ID:QvLQwGsg0
〜駅前〜

タタタ…!

凛「はぁ、はぁ……!」タタタ…!

『こっちの方はいません、凛ちゃん!』

凛「うん……もう少し探そう!」

『はいっ!』


凛「くっ……樹里……!」タタタ…!

凛「……!」



凛「あ、あのー!!」


オォォ…?  ドヨドヨ…
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:31:54.61 ID:QvLQwGsg0
「え、ウソ? しぶりんじゃない!?」
「ずっとテレビとか出てなかったよね?」
「制服着てる。オフかな……」
「めっちゃ可愛い〜……!」

ザワザワ…!


凛「じゅ、樹里を……西城樹里を探していますっ!!

凛「誰か、樹里を見た人はいませんか!?
  こっちの方に走っていったと思うんです!!」

ザワザワ… エェェ…?


凛「すみません! どんな情報でもいいんです!!」

凛「誰か……誰か、西城樹里を知りませんか!?」


ザワザワ…


凛(くっ……反応ナシ、か)



女の子「あ、あの……」スッ
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:33:03.73 ID:QvLQwGsg0
凛「!?」クルッ

女の子「ひぇっ! あ、す、すみません…!」

凛「あ、ううん、こちらこそ……何か知っているんですか?」

女の子「もしかしたら、っていうレベルなんですけど……」

女の子「金髪の子が、あっちの方に歩いて行くのが、見えた気がして……」スッ

凛「……行ってみます!」ダッ!

女の子「じゅ、樹里ちゃんは……」

凛「え?」ピタッ


女の子「樹里ちゃん……前に一度、握手してもらったこと、あって……」

女の子「きっと、迷惑かけちゃったのに……樹里ちゃん、すごく優しく応じてくれて」

女の子「ありがとな、って……照れ臭そうに、な、何度も、握り返してくれたんです」


凛「……そうなんだ」ニコッ
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:37:30.31 ID:QvLQwGsg0
女の子「樹里ちゃん、応援しています……凛ちゃんも」

女の子「もし困ってるなら……樹里ちゃん、助けてあげてくださいっ」

凛「ありがとう!」ダッ!

タタタ…!



凛「卯月! 道玄坂の方に行って!」タタタ…!

凛「今ツイスタ見たら、それっぽい目撃情報呟いてる人も結構いる!」

『わ、分かりました!』


凛「樹里……!」タタタ…!


  ――許されていいヤツじゃねぇんだよアタシはっ!!


凛「勝手なこと、言わないでよ……馬鹿……!」
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:38:54.16 ID:QvLQwGsg0
〜夏葉の車〜

ブロロロロロ…!

未央「うええぇぇっ!? し、しぶりん何してんの!?」ギョッ!?

智代子「ツイスタですごい拡散されてるね、凛ちゃんが駅前で大声上げてる動画」


夏葉「ふふ、凛もやるわね」

未央「笑ってる場合じゃないってなつはし!
   一応私達、事務所から謹慎っていうか自粛命令みたいなの出てるんだよ!?」

未央「こんなに目立っちゃう事したら、どんなお咎めが待っているか…!」ハラハラ…!

夏葉「それでも、樹里のためを思っての行動なのでしょう?」


夏葉「……敵わないわね、凛には」フッ

智代子「ん? どうしたの、夏葉ちゃん?」

夏葉「何でも無いわ」
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:40:14.36 ID:QvLQwGsg0
〜カフェ〜

店員「有栖川様よりお聞きしております。ごゆっくりどうぞ」カチャッ

咲耶「どうも」

スタスタ…


咲耶「聞いての通り、夏葉から教えてもらったお店なんだ」

咲耶「ここなら、人目を気にせずゆっくりアナタと話ができると思ってね」


楓「…………」


咲耶「お酒が好きなのは聞いている。だが、生憎私は未成年だからね」フッ

咲耶「それとも、お酒が入っていた方が、アナタの素直な気持ちを聴けただろうか」
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:41:25.31 ID:QvLQwGsg0
楓「…………」


咲耶「……本題に入ろう」

咲耶「楓……アイドルを辞める意向があるというのは、本当かい?」



楓「……今西部長は、346プロのアイドル事業部を立ち上げた人でした」

楓「第一期のメンバーに、私もお声がけいただいて……」

咲耶「…………」


楓「その際、当時モデル部門にいた私を、スカウトに来たのが……あの人だったんです」


咲耶「プロデューサーが……?」

咲耶「あの人は……かつて、アナタの担当プロデューサーでもあったのかい?」
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:43:57.64 ID:QvLQwGsg0
楓「右も左も分からない私を、あの人は親身に支えてくれました」

楓「もちろんあの人自身も、アイドル部門は未知の領域で、
  四苦八苦されていた所も、あったでしょうけれど……」

楓「不器用ながら、私と向き合ってくれる……とても誠実で真摯な方であると、感じました」

咲耶「…………」


楓「でも……人事異動があって、あの人は私の担当を外されました」

楓「私は大人ですし、一人でもある程度活動はできますから、
  若い子達をサポートする方が良い、との判断があったそうです」

楓「それはもっともだと、私も納得しました。
  そして、私の後にあの人が担当したのが……」

咲耶「……相葉夕美、だね?」


楓「とても快活で、心根の優しい、良い子でした」

楓「彼女と接した人は皆、笑顔になれる……
  私などよりも、ずっとアイドルに向いている、本当に花のような子でした」
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:47:13.91 ID:QvLQwGsg0
楓「……彼女が不幸な事件の被害者となった時、私は……とても悲しみました」

楓「でも……ふと、思ったんです」

咲耶「……?」


楓「彼女に対する嫉妬心は、本当に無かったと言えるのだろうか、と」

楓「あの子さえいなければ、私はまだ、あの人の担当アイドルでいられたのではないか」

楓「その気持ちが、無意識のうちに態度に表れて、どこかへ伝わって誰かに…!」

咲耶「楓っ!」ガタッ!


咲耶「アナタは誰かの不幸を願い、喜べるような人じゃないっ!」


楓「……咲耶ちゃんにそれが、分かるのですか?」

咲耶「え……」


楓「軽々しく……知った風に、言わないで」

楓「私でさえ、自分自身が……もう、分かりません……でも!」ギュッ

楓「私さえいなければ……あの人も……!」
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:49:29.93 ID:QvLQwGsg0
咲耶「分かるさ」

楓「……安い慰めを、言ってもらいたいのではありません」

咲耶「“安い”だって?」


咲耶「アナタだって知った風に決めつけているじゃないか! 私の気持ちをっ!」

楓「……!」ピクッ


咲耶「……楓の言う通りさ。
   私はアナタのことを、私という一方向の視点でしか理解できていない」

咲耶「いや、そもそも誰かを真に理解することなんて、本当は不可能なのかも知れない」

咲耶「だから私達は、寄り添い合おうとすることが出来るんだ、って……
   そう想うのは“安い”ことなのかい?」

楓「さ、咲耶ちゃん……」


咲耶「未央からさっき、連絡があった」

咲耶「私と一緒に、来て欲しい所があるんだ、楓」
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:50:53.74 ID:QvLQwGsg0
〜街中〜

凛「はぁ……はぁ……!」タタタ…!


「あ、マジでいた!」
「凛ちゃーん!」

「さっき樹里ちゃんもいたよな?」


凛「……!」ピクッ


「え、やっぱあれ樹里ちゃんだったの?」
「番組の企画とかかなぁ……」


凛「ど、どっちですか!?」ズイッ

男A「うわっ!?」

凛「樹里は、どこに……!?」

男B「な、生しぶりんだ……じゃなくて、あ、あっちの方っす」スッ

凛「ありがとうございます!」ダッ!
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:51:24.97 ID:QvLQwGsg0
トボトボ…

樹里「…………」


樹里「……ちきしょう…………」



子供「あれ?」


樹里「?」ピタッ



子供「おねえちゃん?」
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:52:36.38 ID:QvLQwGsg0
樹里「……! あ、お前……あん時の迷子か!?」


子供「おねえちゃんだー!」タタタ ダキッ

樹里「わっ! たっ、と……ちょ、どうしたんだよ、ママは一緒じゃねぇのか?」

子供「ううん、あっちでおかいもの」スッ

樹里「はぁ……この間迷子になったばかりだってのに、暢気なもんだな」


子供「おねえちゃんは、まいご?」

樹里「!」ピクッ


子供「……?」ジーッ

樹里「そ……そんなワケねぇだろ」ポリポリ

樹里「ただまぁ、ちょっと、その……気晴らしっつーか」

子供「きばらし?」

樹里「だーもう。いいんだよ気にしなくて」

樹里「ほら、ママが心配するといけねぇから、さっさと帰んな」
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:53:40.58 ID:QvLQwGsg0
子供「おねえちゃん、たのしくなさそう?」

樹里「た……?」

子供「たのしいこと、してないの?」


子供「ママがいってた」

子供「かえでさん、っていうアイドルと、おねえちゃんはおんなじだって」

子供「ぼくやみんなをえがおにしてくれる、すごいひとなんだよって」

子供「たのしいこと、たくさんしてもらえてよかったねって」


樹里「……そっか」

樹里「ただ、ごめんな……
   今はちょっとおねえちゃん、アイドルはおやすみ中なんだ」ナデナデ

子供「どうして?」

樹里「どうしても」
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:55:23.15 ID:QvLQwGsg0
子供「どうして、たのしいことをしないの?」

子供「アイドルって、たのしくないの?」



樹里「……楽しいさ」

樹里「本当にな……楽しいこと、たくさんやりたいに決まってるよな」

樹里「でも……ハハハ、うーん」

樹里「悪ぃ、ちょっと……説明すんの、難しいや」

子供「?」キョトン



タタタ…!

凛「……!」


凛「樹里っ!!」
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:55:49.62 ID:QvLQwGsg0
樹里「!?」

ダッ!

子供「あっ」


凛「待って、樹里!!」ダッ!

タタタ…!



タタタ…

樹里「クッソ……はぁ、はぁ……!」
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:57:07.04 ID:QvLQwGsg0
凛「……!」タタタ! バッ

ガシッ!

樹里「くっ……!」グッ…!

凛「じゅ、樹里っ……!」グイッ


樹里「放せ……クソ、放せよ!!」ガバッ

バシッ!

凛「うっ! ……ッ!」ガクッ

樹里「!? り、凛っ!」


樹里「わ、悪ぃ……つい、力入っちまって、手が……大丈夫か!?」

凛「……ッ!」スッ

バチンッ!

樹里「ぐぁ、いって!? ……!?」

樹里「な……何すんだよ!」


凛「おあいこだよ」

凛「これで、樹里が私に引け目や負い目を感じる必要なんて、無いよね?」
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/24(金) 23:59:03.03 ID:QvLQwGsg0
樹里「……調子乗んな」

樹里「そんなんでチャラにできるほど、アタシのやった事は安かねぇんだよ」

凛「じゃあ、もっとぶてばいいってこと?」スッ

樹里「それで凛の気が済むならな。ふざけやがって」

凛「ふざけた事言ってんのは樹里でしょ」

樹里「あ? 何だと?」ピクッ


凛「私がそんな事して満足するとでも思ってんの?」

凛「殴らせることで気を済ませたいのは、私じゃなくて樹里の方だよね?」


樹里「てめぇ……!」ツカツカ…!

ガッ!

凛「……ッ」グイッ!

樹里「そんなにアタシにケンカ売りてぇかよ!!」
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/02/24(金) 23:59:49.32 ID:ApKCZaSC0
سۇمىكا ئالتۇن دورا بېلىتى 100 يوكا خىروگارۇ خولو نەق مەيدان توكيو مانگا تارىخى بېلەت باھاسى
يېڭى مۇھەببەت ھېكايىسى
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/25(土) 00:01:24.49 ID:mUoeDtH10
タタタ…!

卯月「……あ、いた! って、じゅ、樹里ちゃん!?」


凛「そうだと言ったら?」

樹里「もうアタシに構うんじゃねぇってんだよ!!」

樹里「ウンザリだっつってんだろ! 気持ち悪いんだよお前らっ!!」

卯月「……っ!」ビクッ


樹里「! 卯月……」

卯月「じゅ、樹里ちゃん……」


樹里「……チッ……あぁそうだよ、気持ち悪いね」

樹里「今さらそういう上っ面な仲良しこよしなんざ……ウンザリなんだよ」

卯月「……ッ」ウルウル
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/25(土) 00:03:21.00 ID:mUoeDtH10
凛「心にも無いこと言って、私達を遠ざけようとしないでよ」

樹里「…………」

凛「来て」ガシッ

樹里「放せ……!」

凛「来てっ!」

樹里「……!?」


凛「プロデューサーに会いたいんでしょ?」


樹里「……ふざけてんのか?」

樹里「アイツはもういねぇ。アタシが…!」

凛「いるっ!」

樹里「ふざけんなっ!! アイツはもう、もういねぇんだよ!!」

樹里「いい加減、目ぇ覚ませっ!!」ガバッ
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/25(土) 00:04:42.73 ID:mUoeDtH10
パシッ

樹里「!?」

凛「……樹里の方こそ、目、覚ましてよ」

樹里「お前……」


凛「プロデューサーはいる。生きてる……私達の中に、ずっと」

樹里「……ポエムなら勝手にやってろ」

凛「それを誰よりも分かっているのは自分自身だ、って……樹里は気づいてる」

樹里「やめろ……!」

凛「誰よりも許せないのも自分だから、塞ぎ込んでる……
  また同じ事をするつもりなの? バスケの時と同じように」

樹里「うるせぇんだよ!! やめろっ!!」


凛「やだ。やめない……!」ジワ…!

樹里「! り、凛……」
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/25(土) 00:07:09.31 ID:mUoeDtH10
凛「放っておけなんて……構うな、って!」ツー

卯月「凛ちゃん……」


凛「そんな自分勝手なこと、言わないでよ!」

凛「あの人が樹里を放っておけなかったのと同じように、
  私だって樹里を放ってなんてできない!」

樹里「!」

凛「ずっと、友達でいさせてよ!」

凛「勝手なこと、言わないでよ……!」



樹里「…………」

凛「……来て。賭けをしよう」

樹里「……? 賭け?」


凛「一緒に公園に来て」
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/25(土) 00:09:35.14 ID:mUoeDtH10
〜公園〜

キュッ! キュキュッ!

ダムッ!

未央「あ、あぁっ!?」


パスッ!


智代子「おぉ〜、さすが夏葉ちゃん!」パチパチ


夏葉「……ふぅ、こんな所かしらね」

未央「この未央ちゃんをあっさり抜くとは、やるではないかなつはし」フフン

夏葉「私も、兄と少し嗜んでいた時期はあったから」


楓「…………」
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/25(土) 00:10:30.57 ID:mUoeDtH10
咲耶「皆、どうやらお遊びはそこまでのようだ」

一同「!」


楓「……樹里ちゃん」


テクテク…


ザッ



樹里「……皆」

凛「お待たせ」

夏葉「えぇ……待っていたわ」


卯月「あ、未央ちゃん。バスケットボール……」

未央「えへへ。なつはしに買ってもらっちゃった」
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