西城樹里「タケウチ」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:15:44.16 ID:LQd6uuhx0
「この子は、ここでいいの」

「もちろん、本当は日当たりの良い所に植えちゃいけない品種なんだけどね」


「この子は、大切な人からの……」


――――

――――――
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:17:15.96 ID:LQd6uuhx0
――――


 【国民的男性アイドルグループ『ITOKO』メンバー○○ 買春疑惑】

 【未成年に飲酒を強要か!? 幾度もあった、自宅マンションでのアツイ情事】


「ちょ、ちょっと待ってくれ! そんな事実は無いっ!!」


  >ITOKO逝ったあぁぁぁぁぁwwwwwwwwwww
  >令和最大のスキャンダルじゃねコレ?

  >これぞ上級メンバー様の風格やぞ
  >この間の特番に出てた時のキョドリ様ヤバかったよな
   どうせ薬もやってんだろ

  >割とマジで応援してたから残念だわ、死ね
  >いや、氷山の一角だろ普通に考えて
   芸能界なんて皆穴兄弟やで

  >こんな犯罪者が国民的アイドルやれてんだから世も末だわ
  >もう終わりだよこの国


「やめろ!! 違うんだ、信じてくれ! 俺は、俺は何も……!!」

「う、わああぁぁぁ……!!」


――――
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:18:24.17 ID:LQd6uuhx0
〜961プロ 社長室〜

黒井祟男「ククク……これで我が961プロアイドルの人気は不動のものだ」

黒井「しかし、良い時代になったものだなァ。
   自ら手を汚さずとも、こうして簡単に邪魔者を陥れることができる」


黒井「フッ……なぁに、心配することは無い」
   
黒井「約束の金は、先ほど手配した。後で確認するがいい。
   ご苦労だったな」

黒井「今後とも、よろしく頼むよ。お互いの利益のために」



武内P「はい」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:19:15.43 ID:LQd6uuhx0
ウィーーン…



ザワザワ… ガヤガヤ… プップー!…


スタスタ…

武内P「はい……今、終わりましたので、これから向かいます。
    1時間以内には到着できるかと」

武内P「……心配することはありません、渋谷さん。
    レッスンで培ってきたものが裏切ることは、決してありません」

武内P「そうです……落ち着いて……」

武内P「本田さんと、島村さんにも、よろしくお伝えください。
    それでは、1時間後に。失礼致します」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:20:09.12 ID:LQd6uuhx0
ピッ!

武内P「…………」

武内P「……」チラッ



 【TKG64 △△ 地元学生サークルの乱交パーティーに参加していた!?】

 【衝撃!! 業界関係者が語る、大物司会者□□と暴力団幹部の繋がりとは……?】



武内P「…………」


スタスタ…
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:21:30.93 ID:LQd6uuhx0
〜公園〜

タンッ タン…

園田智代子「よっ、ほっ……!」タン タンッ…!


智代子「とぁっ!」タタン ビシッ!

西城樹里「おぉー」パチパチパチ


智代子「はぁ、はぁ……えへへ、どう、樹里ちゃん!?」

樹里「どうって、凄すぎてアタシなんかじゃケチつけらんねぇよ」

智代子「ほ、本当!?」

樹里「あぁ、相当練習したんだなってのが伝わった。
   正直言って、見違えたぜ」

智代子「わぁ、やったぁ!
    ……ってあれ? 見違えたって、これまではヒドかったってこと!?」

樹里「な、何だよ?」

智代子「ケチつけないとか言っときながら、ヒドいよぉ! 樹里ちゃん!」

樹里「誰もそんなこと言ってないだろ!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:22:15.07 ID:LQd6uuhx0
樹里「ったく……でも、本当にすごいよ、チョコ」

智代子「えへへ。そりゃーだって、すごく頑張ったからね」

樹里「あぁ、ずっと言ってたもんな。アイドルになりたいって」

樹里「チョコなら、きっとすごく可愛い人気アイドルになれるよ。
   アタシも応援するぜ」

智代子「ありがとう。でも……」

樹里「? どうした?」


智代子「樹里ちゃんは、なる気ないの?」

樹里「なるって、何が」

智代子「アイドルに決まってるでしょ」

樹里「!? ……はぁ!?」

樹里「あ、アタシがアイドルって……そんなガラじゃねぇだろ!!」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:23:09.96 ID:LQd6uuhx0
スタスタ…


智代子「ガラとか関係無いよ、可愛い子にはアレをさせろって言うし」

樹里「旅じゃねぇし、か、可愛くねぇし!」

智代子「そういうトコが可愛いって言ってるんだけどね〜♪」

樹里「ッ!! こんの、バカッ!!」グワッ!


スタスタ…


智代子「うひゃー、樹里ちゃんが怒ったぁー!」タタタ…

樹里「待てこのっ!!」ダッ!

智代子「アハハハ」



スタスタ…

武内P「……」スタスタ…

武内P「……?」チラッ
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:24:07.03 ID:LQd6uuhx0
スタスタ… ピタッ

武内P「…………」


樹里「こらっ、逃げるなぁ!! ……ん?」ピタッ

智代子「?」


武内P「…………」


樹里「…………?」


智代子「樹里ちゃん、どうしたの? あの人知り合い?」

樹里「いや、全然」

樹里「おい、何見てんだよ」


武内P「……!」

武内P「……」ペコリ


スタスタ…


樹里「……何だアイツ。気味悪いな」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:25:04.32 ID:LQd6uuhx0
テクテク…

智代子「今日はありがとう、樹里ちゃん」

樹里「アタシは何にもしてねぇだろ。明日のオーディション、頑張れよ」

智代子「うん」


智代子「じゃあ、私はこっちなので。また明日ねー!」フリフリ

樹里「寝る前にチョコ食いすぎんなよー」

智代子「美味しいから大丈夫ー!」タッ

タタタ…
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:26:46.20 ID:LQd6uuhx0
樹里「……ったく、大丈夫かなアイツ」


樹里「ん?」ピタッ



本田未央「ぃやったぁー!! これで私達もいよいよお茶の間デビューだね、しぶりん、しまむー!」

渋谷凛「ローカルだけどね」

未央「ちょっとしぶりーん! なにさ〜ちょっとは合格嬉しがったらー?
   緊張しすぎてプロデューサーに電話してたの、この未央ちゃんお見通しだぞー?」ウリウリ

凛「ちょ、ちょっと未央、やめて…!」

島村卯月「あわわわ……未央ちゃん、あまり凛ちゃんをウリウリしちゃダメですよぉ」



樹里(……賑やかな連中だな)
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:28:05.05 ID:LQd6uuhx0
卯月「……?」

凛「どうしたの、卯月?」

卯月「いや、あそこに立ってる子……こっちをずっと見てるような……」

未央「しまむーのファンじゃない? それか私のファンだったりして!」

未央「はいはーい! 未来のトップアイドルですよー、なんちって」フリフリ


樹里「……!?」ドキッ


凛「やめなよ未央、恥ずかしいでしょ」

未央「うん、ありがとうしぶりん、さすがにちょっと恥ずかしかった」スッ

卯月「でも、そうやっていつも元気一杯なのが未央ちゃんの良い所ですよねっ」

未央「ありがとうしまむー! 良い所見つける天才かぁ!?」ダキッ!

卯月「うひゃあっ!?」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:29:22.64 ID:LQd6uuhx0
樹里(……何だアイツら)

樹里(馬鹿馬鹿しい。帰ろ)スッ

スタスタ…



未央「……? あれ、さっきの子は?」

凛「私達の様子見て、ため息ついてどこかに行った」


卯月「シュッとした感じの、カッコいい子でしたね」

未央「ひょっとして、どこかの事務所の子かな?
   近い将来、ライバルになったりして」

凛「バカみたいなこと言ってないで、もう行くよ」

未央「ちょっとしぶりーん! 今のは結構本気で言ったんだけどー私」

凛「ふーん、いつもは本気じゃないんだね」

卯月「あれ、いつも本気じゃないんですか?」

未央「えっ、おぅ……これはどう答えたらいいの私?」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:30:29.68 ID:LQd6uuhx0
〜夜、346プロ 事務室〜

カタカタ… カタカタカタ…

武内P「…………」カタカタカタ…


ガチャッ

千川ちひろ「お疲れ様です、プロデューサーさん」

今西部長「失礼するよ」

武内P「千川さん、今西部長……お疲れ様です」ギシッ

つ エナドリ

武内P「……」グビッ


ちひろ「エナドリのストック、こちらに置いておきますね」

武内P「はい」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:32:50.72 ID:LQd6uuhx0
ちひろ「先ほど、他の子達から聞きました。
    ニュージェネレーションズ、オーディション合格おめでとうございます」

武内P「ありがとうございます」

ちひろ「大変だったでしょう。
    皆あぁ見えて不安がりな子達ですし、これが良い自信に繋がると良いですね」


武内P「彼女達の場合、自分自身の実力への不信は、モチベーションの維持にも繋がっているようです」

武内P「根を詰めさせないように気を配ることの方が、より肝要と考えています」カタカタ…

今西「ふむ、なるほど……さすが、よく見ているね」

武内P「担当アイドルが荒波に飲まれぬよう、適切に舵を執ることはプロデューサーの責務です」カタカタ…

ちひろ「そうは言っても、プロデューサーさんの方こそ、あまり無理をしないでくださいね?」


武内P「いえ」

武内P「“本来業務”を行っているうちは……それは、苦にはなりませんので」カタカタ…
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:34:17.46 ID:LQd6uuhx0
ちひろ・今西「!……」


武内P「…………」カタカタ…


カタカタ カタッ……


武内P「……お気になさらずとも大丈夫です」

武内P「新たな“仕事”の依頼が、あったのでしょうか?」


ちひろ「…………明日の午後です。資料を」スッ

武内P「……」パラッ

ちひろ「すみません、急なお話で……」

武内P「いつものことです……明日、というと?」

ちひろ「はい……
    我が346プロのアイドル候補生を募集する、社内オーディション当日です」

ちひろ「その依頼内容というのが……」


武内P「……その筋の有力者の子供を、オーディションに合格させろ、と」

今西「心苦しいだろうとは、思うがね……」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:35:36.77 ID:LQd6uuhx0
武内P「依頼人は?」

ちひろ「同じです。961プロダクションの黒井社長、直々のご指名で……」


武内P「先方に確認をとります」ガチャッ

ポパピプペ


武内P「……」プルルルルル…


『……ウィ、私だ』

武内P「いつも、お世話になっております」

『ハッ! 心にも無い前置きなどどぉ〜うだっていい。
 依頼の件は、彼女から聞いたかね?』


武内P「今回の標的は、アイドルではありません。候補生の希望者です」

武内P「まだ業界関係者ではない人間を手に掛けることは、私の本意ではありません」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:37:13.86 ID:LQd6uuhx0
『雇われの分際で、一プロダクションの社長であるこの私に、随分な物言いだなぁ?』

武内P「お言葉ですが、961と346は協力関係にすぎず、立場としては対等です。
    その気になれば、上層部に掛け合い、社として態度を改めさせていただくこともできます」

武内P「つまらない意地の張り合いで、いたずらに事を荒立てるのは、お互いの利益にならない。
    そうはお考えになりませんか?」

『フン……自身の能力と346の威光を笠に着て、私を脅そうというのかね?』


『いいだろう。今回については、他の者に依頼するとしよう』

武内P「恐れ入ります」

『だが忘れるな』


『いくら崇高なポリシーとやらを持っていた所で、貴様は日陰者に過ぎんということをな』

ガチャッ

ツー ツー ツー…
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:38:26.32 ID:LQd6uuhx0
武内P「…………」ガチャ

武内P「今回の仕事については、私とは別の方に依頼されるとのことです」

ちひろ「そうですか……それは、何よりです」ホッ

武内P「内容を考えれば、喜ぶべきことではありません」

ちひろ「! ……す、すみません」


武内P「それに、黒井社長の言うとおりです」

ちひろ「えっ?」


武内P「私は、尊ばれる側の人間ではありません」


ちひろ「プロデューサーさん……」

今西「…………」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:39:17.91 ID:LQd6uuhx0
武内P「念のため、明日のオーディションは、私も様子を見守ろうと思います」

武内P「このオーディションの後、961側が次にどのような動きを見せるのか……
    わざわざ346プロの行事に手を下すからには、より大きな目的があるはずですので」

今西「……あぁ、そうだね」


ちひろ「では、私達はこれで……失礼します」ペコリ

今西「あまり、思いつめてはいけないよ」

ガチャッ

バタン…



武内P「…………」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:41:08.71 ID:LQd6uuhx0
〜翌日、346プロ オーディション会場〜

ガヤガヤ…


樹里「結構、人集まんだな」

智代子「ああぁぁあぁ当たり前でしょ、み、みし、みしろプロって大手、ううん超大手の…」ガチガチ…

樹里「どんだけ緊張してんだよ。ほら、チョコでも食うか?」スッ

智代子「い、今お腹痛くなったら、嫌だから、いいや……」ブルブル…

樹里「……こりゃ相当重症だな」


樹里「あのなぁ……アタシみたいな素人が言っても説得力ねぇだろうけど」

樹里「アタシはチョコのこと、現役のアイドルと変わらないくらい、すごく可愛いと思うぜ」

智代子「ほ、ホントに?」

樹里「大体、あれだけ練習してきたじゃねーか。
   自信持てよ、他のヤツらなんか目じゃないって」ポンッ

智代子「そ、そうかな……そうだといいな、えへへ」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:43:51.47 ID:LQd6uuhx0
???「フッ……黙って聞いていれば、好き勝手なことを」

樹里「なっ! だ、誰だ!?」


ザンッ!

有栖川夏葉「この私を差し置いて、随分と豪気なものね!」バァーン!


智代子「……えっ、ホントに誰!?」

夏葉「なっ、え!? 私を知らないというの!?」

樹里「無名だから候補生オーディションに応募すんじゃねーのかよ」

夏葉「……それもそうね」


夏葉「いいわ、まずは自己紹介といきましょう」

夏葉「有栖川夏葉よ。残念だけど、このオーディションは私がいただくわ!」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/19(日) 13:45:56.94 ID:LQd6uuhx0
樹里「何だぁ? 初対面のクセして」

智代子「あ、うぅ……」

樹里「ほら、チョコ。言われっぱなしにされてんなよ」トンッ

智代子「わっ! と……あ、あの」

夏葉「……」ドヤァ


智代子「そ、園田智代子ですっ。チョコアイドル目指してます!」

夏葉「チョコ?」

智代子「そ、そうです! 私、あまりコレといった個性が無くて……」

智代子「名前が、ちよこだから、なんか可愛いかなって、その……ごめんなさい」シュン…

樹里「謝ってどうすんだよ!」


夏葉「……智代子」

夏葉「あなた、チョコの主な原材料が何か、当然知っているわね?」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/02/19(日) 13:56:33.02 ID:LQd6uuhx0
智代子「えっ? か、カカオ……?」

夏葉「そう。カカオと人類は紀元前から延べ5500年以上もの長きに渡り、
   相互に深い関わり合いを持つものよ」

夏葉「古代アステカ、マヤ期の時代において、カカオは通貨でもあった。
   それほどの価値あるものを味わえるのは、王族をはじめとする特権階級等の限られた者だけ」

夏葉「かのコロンブスがこれに出会い、欧州に広めて大衆化させるまでは、
   カカオとはすなわち富と力の象徴だった、という事ね」


樹里「……で?」

夏葉「もちろん、今では市場に流通し、一般庶民の間でも広く愛されるものではあるけれど、
   カカオの独特の風味は、古代より人間のDNAに深く刻み込まれているものよ」

夏葉「理性を狂わし、これを欲せざるを得ない魔性としてね……
   私も、幼い頃はお風呂上がりにチョコバーを食べて、父に怒られたものだわ」

智代子「は、はぁ……美味しいですもんね!」ピョン

夏葉「そう! そうなのよ!」ビシッ!

樹里「? ……???」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:57:58.57 ID:LQd6uuhx0
夏葉「人を惑わすチョコを統べるアイドルなんて……末恐ろしいわ!」

夏葉「帝王学を修めてきた私にとって、最も危険視すべき存在と言っても良い。
   だから……」

夏葉「私は、あなたにだけは負けないと決めたわよ! 今、この瞬間!」ビシィ!

智代子「え、うぇぇぇっ!?」

樹里「なんつーか、メンドくさいヤツだなぁ」


樹里「そんな大ゲサな話じゃなくって、要はアイドルとしてどっちが可愛くて、
   歌とかダンスがすごいかってことだろ?」

樹里「その点、チョコは大したもんだぜ。後で吠え面かくなよ」

智代子「最後までチョコたっぷりだもんね!」

夏葉「フッ! いいわ、そういう事ならとくとその実力、見せてもらおうじゃない!」

樹里「チョコのボケにまずはツッコめよな」



スッ

武内P「…………」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:58:28.11 ID:LQd6uuhx0
武内P「…………」チラッ

武内P「……!」ピクッ


樹里「……?」



武内P「…………」



智代子「樹里ちゃん、どうしたの……あっ、あの人」

夏葉「?」

樹里「…………」


武内P「…………」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 13:59:12.70 ID:LQd6uuhx0
樹里「……ッ」キッ!

クルッ ツカツカツカ…!


武内P「……!」


樹里「おい」

武内P「……はい」


樹里「アンタ、昨日も会ったよな」

樹里「人のことジロジロ見やがって。そんなにアタシが物珍しいかよ」

武内P「いえ、そういうことでは…」

樹里「業界関係者かどうなのか知らねぇけど、アタシだって集中したいんだよ。
   目障りなことすんのは止めてくれよな」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:00:07.61 ID:LQd6uuhx0
武内P「! あなたも、今回のオーディションに参加を?」

樹里「なっ!? バッ……ちげぇよ!! 友達の応援で来てんの!」

武内P「し、失礼しました」

樹里「はぁ……そういうわけだから、あんまデカイ図体でウロウロしてんなよな」

武内P「申し訳ございません」ペコリ

スタスタ…


樹里「……ったく」

智代子「樹里ちゃん、だ、大丈夫だった? すごい剣幕だったから……」

夏葉「知らない男の人に、喧嘩でも売りにいくのかと、少し心配してしまったわ」

樹里「何でもねぇよ」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:01:03.71 ID:LQd6uuhx0
〜〜♪ 〜〜〜♪


樹里「へぇ〜……皆、上手いモンだなぁ。
   伊達に大手のオーディションじゃねぇってことか」

智代子「…………」

樹里「……チョコ」



スタッフ「それでは、次の方どうぞ」


ザッ

夏葉「エントリーナンバー17、有栖川夏葉です」


智代子「あ、夏葉ちゃんだ……どうだろう?」

樹里「大口叩いてるヤツが、本当に大したヤツだった試しはねぇけどな」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:02:37.44 ID:LQd6uuhx0
夏葉「……」スッ


キュッ タタンッ!

夏葉「〜〜♪ 〜〜〜〜!♪」タンッ! タタンッ

タンッ タッ タンッ!


樹里「うおっ……!」

智代子「えっ!? す、すご……!」


武内P「…………」


夏葉「〜〜〜! 〜〜〜〜♪」タタンッ タンッ

夏葉「〜〜! 〜〜〜〜♪ 〜〜〜♪」キュッ! タン タッ タンッ!
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:03:42.27 ID:LQd6uuhx0
智代子「ど、どうしよう……次、私だよぅ……!」オロオロ

樹里「ば、バカッ! 弱気になんなよ、チョコだって負けてないって!」

智代子「で、でもぉ……!」ウルウル



夏葉「〜〜〜!♪ 〜〜〜〜…」タンッ タッ

ガッ!

夏葉「!? キャ……!」グラッ


樹里「あっ」
智代子「え?」

武内P「……!?」


ドテッ


夏葉「!? ……ッ!」グッ!

〜〜♪
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:04:43.37 ID:LQd6uuhx0
夏葉「〜〜〜〜♪」

夏葉「…………」


スタッフ「はい、ありがとうございました」

夏葉「……」ペコリ


智代子「な、夏葉ちゃん……」

樹里「最後の最後で、コケちゃったな……同情するぜ」


武内P「…………」


ギリッ…

夏葉「………………ッ」プルプル…!



樹里「……アイツはアイツ、チョコはチョコだ。しっかりやれよ!」ガッツ!

智代子「う、うん……!」キュッ
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:05:39.34 ID:LQd6uuhx0
智代子「え、エントリーナンバー18、園田智代子ですっ」

智代子「ちょ、チョコアイドル目指してます! よ、よろひ…」

スタッフ「あ、そういうのいいです」

智代子「ひぇ……す、すみません……」シュン…

プッ クスクス…


樹里「……!」ムッカァ…!


武内P「…………」



智代子「……」スッ


〜〜♪
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:06:25.39 ID:LQd6uuhx0
タタンッ! キュッ タッ タンッ!

智代子「〜〜〜〜!♪」

智代子「〜〜! 〜〜〜♪」タンッ タタン!


夏葉「……!」


武内P「…………」


樹里「チョコ……頑張れ……!!」


智代子「〜〜〜! 〜〜〜!!♪」キュッ タンッ!

智代子「〜〜! 〜〜♪ 〜〜〜!♪」タタンッ タッ タン!



夏葉「あの子、こんなに凄かったなんて……」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:07:28.37 ID:LQd6uuhx0
智代子「〜〜ッ! 〜〜〜!♪」タン タンッ…!

智代子「〜〜〜ッ!」タタン ビシッ!


智代子「はぁ、はぁ……!」

パチ パチパチ…

智代子「ふぇ?」


パチパチパチパチ…!


智代子「え、あ……あ、ありがとうございましたぁ!!」ペコッ


武内P「……」パチパチ…
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:08:38.79 ID:LQd6uuhx0
樹里「やったなチョコ! ほんと、完璧だったぜ!」ガシッ!

智代子「樹里ちゃんっ……ありがとう、私、こんな……!」

智代子「まさか、こんなオーディションで拍手してもらえるなんて、思わなくてぇ……!」グスッ

樹里「それだけチョコが凄かったってことだよ。アタシの言ったとおりだったろ?」

智代子「うん……うんっ……!」

樹里「へへ、泣くなよ。まだ結果も出てな……」

樹里「あっ」


夏葉「……素晴らしいパフォーマンスだったわ、智代子」

智代子「夏葉ちゃん……」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:10:00.88 ID:LQd6uuhx0
樹里「あー、あの……最後、残念だったな」

夏葉「私が未熟だった。それだけのことよ、それに」

夏葉「あなたのような素晴らしい実力者に出会えただけでも、
   このオーディションに出場した甲斐はあったもの」

夏葉「ありがとう、智代子」スッ

智代子「夏葉ちゃん……ううん、こちらこそ」ギュッ


夏葉「私も、早くあなたに追いついてみせるわね。首を洗って待っていなさい」

樹里「そういうこと言うヤツって、なんか小者っぽいよな」ニヤニヤ

夏葉「あら、あなたに対して言ったわけじゃないわよ?」

樹里「うっせーな! 知ってるよ!」

智代子「えへへへ」ニコニコ



スタッフ「えぇー、それでは、本オーディションの合格者さんを発表します」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:11:27.02 ID:LQd6uuhx0
夏葉「じゃあ、私はこれで」スッ

樹里「え、発表聞いていかないのかよ?」

夏葉「聞くまでもないことよ」フリフリ

樹里「お、おう」



スタッフ「えぇー……17番さん。エントリーナンバー17の、有栖川夏葉さん」

スタッフ「他の方々はお帰りになられて結構です、ありがとうございました」



樹里「!?」

夏葉「……!?」クルッ

智代子「…………え」


ザワザワ…

武内P「…………」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:12:35.53 ID:LQd6uuhx0
智代子「そんな…………わたし……」

智代子「ダメ、だったんだ……あ、あはは……あは……」

智代子「バカみたい……そっかぁ、私……そう、だよねぇ……」ポロポロ…


樹里「ちょ、ちょっと待てよ!」

スタッフ「わっ!?」

樹里「さっきの見てただろ!? チョコの時だけ拍手が起きたんだぞ!!」

スタッフ「い、いや、それが直接の審査基準ではなくて…」

樹里「そうでなくたってチョコが一番凄かったんだ!
   何でチョコじゃねぇんだよ!! 夏葉はコケ…!」

樹里「ッ……あぁもう!! 絶対おかしいだろ、この会場の雰囲気がその証拠だ!
   合格者が発表されてザワつくオーディションがあってたまるか!!」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:14:30.21 ID:LQd6uuhx0
夏葉「その子の言うとおりよ」

樹里「夏葉……!」


スタッフ「あ、あの……」

夏葉「よくもこんな辱めを私にしてくれたわね……
   このオーディションの勝者は、誰の目にも明らかのはずよ」

夏葉「でも、不可解な審査があった理由について、大よその心当たりはあるわ。
   残念ながらね」

スタッフ「えっ?」


クルッ

夏葉「合格は辞退します。早急に、父に問い質す必要があるわね」

コツコツ…!
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:15:10.60 ID:LQd6uuhx0
スタッフ「あ、ちょ……有栖川さーん!?」

ザワザワ…! オイオイ…


武内P「…………」

武内P「……!」チラッ


スタッフ「……」
黒服達「……」ヒソヒソ…


武内P「……」チラッ


樹里「チョコ……もう帰ろう」

智代子「ヒック…………ヒック……」グスッ…

テクテク…



武内P「…………」

スッ
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:16:20.63 ID:LQd6uuhx0
〜346プロ レッスンスタジオ〜

未央「すぃ〜まむぅ〜〜」グデー

卯月「何ですか、未央ちゃん?」


未央「今日さ、何でプロデューサー来なかったのかな?」

凛「リーダーである未央にさえ、何も連絡が無かったの?」

未央「プロデューサーとお親密なしぶりんにも?」ニヤニヤ

凛「……」ギューッ

未央「あだだだだっ!! ごめんごめん、ごめんだから手の甲つねるのヤメてっ!!」

卯月「あわわわっ! きゅ、救急箱を……!」ダッ

凛「いいよ卯月、必要ない」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:17:19.04 ID:LQd6uuhx0
未央「ふぃー、お〜いちちち……」フーッ フーッ…

未央「いや、そりゃ連絡はあったよ?
   オーディションの様子を見に行くので、レッスンをお願いしますって」

未央「でもさ、ヘンじゃない?」

卯月「ヘン、ですか?」


未央「仮にもローカル局の番組出演っていう大仕事を控えた私達を、
   担当プロデューサーがあっさり放って、浮気しに行くかなぁ?」ウーン

凛「オーディションに、よほど注目すべき子がいたのか、あるいは……」

未央「あるいは?」


凛「……新しく担当になる予定の子がいたとか、かな」


卯月「うーん、だったら、最初から予定に組み込まれてそうな……」

未央「だよね? なんか今日のプロデューサー、急遽ってカンジしたよね?」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:18:33.34 ID:LQd6uuhx0
凛「……確かに、そうかも」

未央「うーん……なーんか、テンパってたりしないか不安っていうかさー」


卯月「まぁまぁ、未央ちゃん。
   大きなお仕事を控えて、たぶん私達、ナーバスになってるんですよ」

凛「……そうだね。
  逆に、私達に任せても大丈夫って、プロデューサーは思ってくれたのかも知れないし」

未央「そ、それもそうかぁ! うんうん!
   確かに、やる前からウジウジ悩むなんて私達らしくないよね!」ガバッ

凛「ほんと、調子いいんだから」フッ

未央「あ、何だよしぶり〜ん! 調子に乗せてるのはそっちでしょー?」ウリウリ

卯月「えへへへ。やっぱり未央ちゃんは元気が一番ですねっ」ニコニコ
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:19:41.46 ID:LQd6uuhx0
〜公園〜

樹里「……落ち着いたか?」

智代子「うん…………ごめんね、樹里ちゃん……」

樹里「アタシに謝んなよ」


樹里「結局、あんなオーディションなんてウソっぱちだったんだな。
   チョコの努力を、踏みにじりやがって……!」

樹里「夏葉が怒るのだって、もっともだぜ。
   あんな勝ち方じゃ、夏葉も嬉しくないだろ。何考えてんだアイツら」

樹里「あぁぁ〜〜もう、考えれば考えるほどイライラしやがる……!!」ギリッ…!


智代子「ううん、樹里ちゃん……」フルフル

樹里「……チョコ?」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:20:54.89 ID:LQd6uuhx0
智代子「やっぱり、私がダメだったんだと思うんだ」

智代子「何の取り柄も無いクセに、チョコアイドルだなんて、ムリヤリ個性を作って……
    たぶんそういうの、あざといし……見る人も、楽しくないだろうし……」

智代子「仮に、あのまま受かって続けたとしても……どこかで……」


樹里「そんなことないっ!!」ガタッ!

ガシッ!

智代子「じゅ、樹里ちゃん……」ジワァ…

樹里「忘れちまったのか!? 歌い終わって拍手が起こったの、チョコだけなんだぞ!」

樹里「チョコは絶対すごいアイドルになれるんだ!
   人を笑顔にしようってヤツが、自分でそれを認められなくてどうすんだよ!」

智代子「で、でもぉ……!」ポロポロ…

樹里「今のチョコは、都合のいい言い訳を自分で作って逃げてるだけだ!
   今度は誰にもさ、文句の付けようも無いくらいに頑張って、完璧な実力をつけて……!」

智代子「! わ、私だって……!」キッ!

樹里「……!?」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:22:32.85 ID:LQd6uuhx0
智代子「私だって、あ、あんなにっ! あんなに頑張ったのに……!」

智代子「か、簡単に、逃げてるとか……もっと完璧に、とか……!」ポロポロ…

智代子「そんな……そんな、こと、樹里ちゃんに……い、言われたく、ないもん……!!」

樹里「! ちょ、チョコ……!」

智代子「う、うっ、ぐ……うぅぅ……!!」ポロポロ…

樹里「ご、ごめん……アタシ、勝手なことを……」


智代子「あの場に立ってもいない樹里ちゃんに……!」

智代子「私の気持ちなんて、分からないもんっ!!」ダッ!

樹里「チョコ!? あ、おいっ!!」

タタタ…!
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:24:12.96 ID:LQd6uuhx0
樹里「…………クソッ!!」ガッ!

樹里「アタシ、なんてひどいことを言っちまったんだ……」



ザッ


樹里「……?」



武内P「西城、樹里さん……ですね?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:25:29.08 ID:LQd6uuhx0
樹里「アンタかよ……何でこんなとこ…」

樹里「って、何でアタシの名前知ってんだよ!?」ドキッ

武内P「オーディション会場に入る際、同伴者の方は、入口で参加用紙を記入されたかと思います」

樹里「それを見たって? はぁ……」


樹里「あのなぁ……一体、何なんだよアンタ。
   何でアタシに付きまとうんだ? それともチョコか?」

武内P「いいえ。西城さん、あなたに用があって参りました」

樹里「……何だよ」


武内P「単刀直入に言います、西城さん」

武内P「あなたを弊社のアイドルとして、スカウトさせていただきたいのです」



樹里「…………は?」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:26:54.81 ID:LQd6uuhx0
武内P「申し遅れました……名刺を」スッ

樹里「……ふーん。“961プロ”、プロデューサー」

樹里「い、いやいやいやいや!
   意味分かんなすぎる。何でチョコじゃなくてアタシなんだよ」

樹里「あっ! ひょっとして、アタシのことバカにしてんのか!?」

武内P「? ……バカにしている、とは?」

樹里「だ、だからぁ!
   アタシ、見てのとおり女っぽくねーし、言葉遣いだってほら、悪いし……」

樹里「アイドルって、もっと可愛くってフリフリしてて、女の子らしいだろ?
   そんなの、アタシのガラじゃねぇし、できるわけ……!」


武内P「あなたをスカウトしたい理由が、私にはあります」

武内P「いえ……スカウトしなければならない理由と、言い換えても良い」

樹里「……しなければならない、理由?」


武内P「西城さん……あなたは、狙われています」


樹里「……えっ!?」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:28:34.76 ID:LQd6uuhx0
武内P「あなたもお気づきのとおり、今日のオーディションは、不正が行われていました」

樹里「…………」

武内P「それはすなわち、346プロに有栖川夏葉さんを所属させたい者がいたことを意味します。
    引いては、それを足掛かりに、さらなる企みを抱く者が」

樹里「……何だよ、その企みって」

武内P「現時点では分かりません。
    ですが、それが頓挫し、有栖川さんも、園田智代子さんの芽も摘まれた今」

武内P「西城さん……あなたを346プロに所属させようという計画が、おそらく進められています」

樹里「……おい、デタラメ言うなよ。
   アタシはあのオーディションの出場者ですらねぇんだぞ」

武内P「あの場で、不正を表立って糾弾した者だからこそ、です」

樹里「!」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:29:42.55 ID:LQd6uuhx0
武内P「口封じのために346側があなたを抱き込もうとするにせよ、
    不正を依頼した者が、その代役としてあなたに目を付けるにせよ……」

武内P「間もなく、何者かがあなたに接触を試みてくるでしょう。
    そして、不正の事実を暴き得るあなたに、どんな手を講じてくるかが分からない以上」

武内P「このままでは危険です、西城さん。
    961プロに所属さえしていれば、容易に手出しはされなくなるはずです」


樹里「……じゃあ聞くけどよ」

樹里「アンタがその、接触を試みてくる悪いヤツじゃないっつー証拠、あんのか?」

武内P「……!」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:31:04.09 ID:LQd6uuhx0
樹里「さっきから、勝手なこと言ってくれてるけどさ。
   アタシはそもそもアイドルなんて興味ねぇんだよ、これっぽっちも」

樹里「どんなヤツらから勧誘されようと、応じる気はサラサラ無いね。
   ましてや、チョコを……!」

樹里「チョコを、あんなつまんないマネして蹴落としやがった346プロなんか……!!」ギリッ…!

武内P「西城さん……」


樹里「アタシはアイドルになんかならねぇよ。絶対にな」

樹里「チョコをヒドい目に遭わせた業界になんて、誰が好き好んで入るもんか」クルッ

ツカツカ…



武内P「…………」ポリポリ…
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:34:11.54 ID:LQd6uuhx0
〜夕方、樹里の家〜

樹里「…………」ゴローン


「ねぇー、樹里ー?」

樹里「んー? なーにー?」

「ちょっと卵と牛乳買ってきてちょうだい」

樹里「はぁー? 兄貴が行けばいいだろぉ?」

「まだ帰ってきてないのよぉ、友達と遊んでくるとかで」


樹里「はぁ〜……ったく、はいはい」ノソッ

樹里「卵と牛乳だけでいいのかー?」


ガチャッ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:34:58.97 ID:LQd6uuhx0
テクテク…

樹里「…………」



 ――あの場に立ってもいない樹里ちゃんに……私の気持ちなんて、分からないもんっ!!


 ――このままでは危険です、西城さん。



樹里「……チッ、何だってんだよ」

樹里「はぁ……今日はさっさと風呂入って寝よ」


スゥ…

ガバッ!!

樹里「……!!?」ガシィッ
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:36:28.23 ID:LQd6uuhx0
ガサッ…!

樹里「な!? ……むぐっ…!?」ジタバタ!

黒服A「お静かに願います」


ガチャッ

樹里「……!!」


黒服B「これだけの大金を、あなたにお渡しする用意が我々にはあります」

黒服B「何も聞かず、これを黙って受け取ってくれるなら、何も起こらない」


樹里「……!」

黒服B「おい、口を離してやれ」

黒服A「……」スッ

樹里「ぷはっ! て、テメェ……ぐっ!」ジタバタ

黒服B「あなたにとって、悪くない取引のはずです」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:37:47.95 ID:LQd6uuhx0
樹里「アンタら、346プロの……!?」

黒服B「……」


樹里「こんなモンのために、チョコの挫折を諦めろってのかよ……!」


樹里「346プロだけじゃねぇ。アタシは……アタシだって、チョコを追い詰めた……!」

樹里「友達ヅラして無責任なことを言って、支えてるフリして、何もできなかったんだ!」


樹里「何も起こらないだって? ふざけんな、何もできないまま終わってたまるか!!
   アタシはチョコに謝らなきゃいけないんだ!」

樹里「せめて346の不正を認めさせてからじゃなきゃ、顔向けなんてできねぇ……
   そんな金、受け取れるかよっ!!」



黒服B「……そうですか。残念です」

黒服B「もう少し、あなたが利口な方であれば良かったのですが」ジャキッ
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:38:25.51 ID:LQd6uuhx0
樹里「! け、拳銃……!?」


黒服B「致し方ありません」グッ…


樹里「……!!」



スゥッ…


ピトッ

黒服B「!?」ゾクッ



つ ナイフ

武内P「…………」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:39:15.31 ID:LQd6uuhx0
黒服B「馬鹿な……い、いつの間に……」


黒服A「……!」

樹里「あ、アンタは……!」


武内P「……声を出さず、首を振って答えてください。
    イエスなら縦、ノーなら横に」

黒服B「……」コクッ


武内P「私が誰か、ご存知でしょうか?」

黒服B「……」コクッ


武内P「では、どうすれば良いかも、ご存知ですね?」


黒服B「…………」コクッ
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:40:13.71 ID:LQd6uuhx0
黒服B「……ッ」チラッ

黒服A「……」スッ

樹里「う、わっ……とと」

樹里「こんの野郎…!」

武内P「西城さん、私の後ろにお越しください」

樹里「あ、はい」ススッ


黒服B「……」

武内P「では、そのまま後ろを振り返ることなく、立ち去ってください」

黒服B「…………行くぞ」スッ

黒服A「……」

スタスタ…



樹里「な、何だ……ヤケにあっけなく引き下がったな」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:41:52.86 ID:LQd6uuhx0
武内P「……」スチャッ

樹里「何なんだ、アイツら……346プロの差し金なんだろうけど」

武内P「現時点では、その可能性が高いですが、断定はできません」

武内P「それに、おそらく彼らは、端金で雇われたアマチュアに過ぎません。
    尋問しても無駄だと判断したので、手短に解放しました」

樹里「アマチュア、って……アイツら、銃持ってたんだぞ!?」


武内P「より熟達したプロであれば、そのような極端な手段に走ることは無かったでしょう」

武内P「現代社会において、銃は過去の遺物に過ぎません。
    チラつかせるどころか、それを街中で行使しようとするのは、アマチュアの手口です」


樹里「……アンタ、一体何者なんだよ」

武内P「アイドルのプロデューサーです」

樹里「アンタの業界じゃ、皆ナイフを常備してんのか?」


武内P「表沙汰に出来ない暗部を請け負う者も、いるということです」

武内P「もっとも、最近はこのような直接的手段を行使することは少なくなりましたが」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:42:45.70 ID:LQd6uuhx0
樹里「…………」

武内P「私を、疑いますか?」

樹里「えっ?」


武内P「自分の言うことを信じさせるために、私があの連中を西城さんに仕向けた」

武内P「そうお思いになるのは、自然であると考えます」


樹里「……いや、信じるよ。
   アンタは何となく、つまらないウソをつくようなヤツじゃなさそうだし」

樹里「それに、どっちにしろ信じらんねぇ出来事が起こりすぎて、いちいち疑うのもメンドくせぇ」

武内P「ありがとうございます」

樹里「褒めてねぇっての」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:44:31.38 ID:LQd6uuhx0
武内P「とりあえず、私は346プロ内部に探りを入れて、事実確認を図ります。
    その間、西城さんは警察に相談をするなどし、くれぐれも身辺の安全を…」

樹里「待てよ」

武内P「?」


樹里「気が変わった……アンタ、アタシをスカウトしてくれるか?」


武内P「……よろしいのですか?」

樹里「たとえ今回の一件がアンタの自作自演だったとしても、
   アンタやその仲間から強引に勧誘され続けるのは敵わねぇ」

樹里「そうじゃなかったとしたら、もっとやってらんねぇぜ。
   マジで正体不明のヤツらから襲われて脅迫されんの、おっかねぇだろ」

武内P「……ご自分の身の安全を、取引の材料に使わせるようで、恐縮ですが…」

樹里「いや、それだけじゃない」

武内P「えっ?」


樹里「お願いしたいことがあるんだ。
   あのオーディションって結局、合格者不在になったんだろ?」

武内P「有栖川さんが辞退された後、補欠合格者を選定するという話は上っていないようです」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:46:14.45 ID:LQd6uuhx0
樹里「なら、さ……アタシだけじゃなくて、チョコもスカウトしてやるのって、できないかな?」

武内P「園田さんを……」

樹里「ほら、その……分かるだろ?」ポリポリ…

樹里「元々アイドルを一生懸命に目指していたチョコがなれなくて、
   そのくせ、アタシが鳴り物入りでアイドルになるなんて、何つーか……」


武内P「……分かりました」

武内P「ですが、それにはまず、園田さんの意志を確認する必要があります」

樹里「そっか……そうだよな。あ、ちょっと待って」

ポパピプペ…

樹里「……あぁ、もしもし、アタシ。
   ごめん、ちょっとこれから出かけてくる。卵と牛乳は適当に買って」

樹里「はぁ? ちげーよ、ちょっとチョコのトコに行ってくるだけ。
   ……あぁ、晩メシには帰るよ。はいはい」

ピッ!

樹里「っし。じゃあ行こうぜ」

武内P「……」ポリポリ

樹里「何だよ」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:47:33.72 ID:LQd6uuhx0
〜智代子の家〜

ピンポーン♪

樹里「……チョコ」


「……」


樹里「あ、あのさ……さっきは、ごめんな。
   軽々しいことを、偉そうに言って、その……本当に、反省してる」

樹里「だから、って訳じゃないけど……チョコに、良いニュースを持ってきたんだ」


「……」


樹里「961プロって、知ってるかチョコ?
   ちょっと、そこのプロデューサーって人と、話をしてさ」

樹里「なんと、聞いて驚くなよ。
   アタシ、その961プロにスカウトされたんだぜ!」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:49:23.84 ID:LQd6uuhx0
樹里「アハハ。でさ?
   チョコにも言ったけど、アタシ、アイドルなんてガラじゃねぇだろ?」

樹里「だからアタシ、言ってやったんだよ。
   どうしてもアタシをスカウトしたいんなら、チョコも一緒にスカウトしろって」

武内P「……」

樹里「だからさ……もう346プロなんて放っといて、アタシと一緒に…」

「もういい……」


樹里「……え?」


「樹里ちゃん……きっと、すごいアイドルに、なってね」

「アタシと違って、樹里ちゃん、可愛くて……個性の塊、だから……」

「私はもう、大丈夫だから……アイドル、いいや……」


樹里「なっ……おい、チョコ。
   ちょっとココ開けてくれるか? ちゃんと顔合わせて話を…!」

「もう帰って!!」

樹里「!」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:50:58.98 ID:LQd6uuhx0
「もう、イヤだ……う、う……」

「テレビで見る、可愛い子達みたいに、なりたくて……でも……」

「わ、わた、し……テレビ、見てるほうが、す、きで……!」

「夢、見ちゃ、て……傷つく、より、も、ひ、ぃ……楽しい、もん……」

「う、わあぁぁ……あぁぁ……!」


樹里「ちょ、チョコ……」

武内P「……失礼」ズイッ

樹里「うわっ」


武内P「園田さん……夢を叶えることは、必ずしも簡単ではありません」

武内P「ですが、それを目指すことの尊さを、
    西城さんと、プロデューサーである私が、園田さんにお示しすることができたらと思います」

武内P「その時はどうか、改めてあなたをスカウトさせてください」



「…………」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:51:51.36 ID:LQd6uuhx0
テクテク…

樹里「……チョコ、とうとうドア開けてくれなかったな」

武内P「伝えるべきことは、伝えました。あとは……」

樹里「アタシ達次第、か」


樹里「アンタが言ったのって、要はアタシがチョコの憧れになれたらってことだよな?」

武内P「はい、そうなります」

樹里「ちぇっ、簡単に言ってくれるぜ。でもまぁ……」

樹里「チョコの弔い合戦、って言ったら乱暴だけど……
   どのみち、チョコをヒドい目に遭わせた346プロは、アッと一泡吹かせてやりてぇ」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:53:32.82 ID:LQd6uuhx0
樹里「ただの一般人、それも部外者のアタシが声を上げた所で、見向きもされねーだろうけど……
   例えば、もしアタシがアイドルとして有名になって」

樹里「皆から注目されるようになってから、アタシが346のオーディションの不正を告発すれば、
   346だって隠蔽しきれねぇだろうし、チョコの無念だって晴らせる」

武内P「…………」


樹里「アンタと一緒なら、それが出来る……そういうことでいいんだよな?」


武内P「……はい」

樹里「よしっ。決まりだな」

武内P「ありがとうございます、西城さん」ペコリ

樹里「樹里だ」

武内P「えっ?」


樹里「アタシのことは、樹里って呼べよ」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:54:32.89 ID:LQd6uuhx0
武内P「はぁ……しかし、それは……」ポリポリ…

樹里「まだるっこしいんだよ、“西城サン”だなんて。肩が凝ってイヤだ」

樹里「ていうか、下の名前で呼び捨てにすんのが、そんなに大変かよ」

武内P「はい」

樹里「はいぃ!? 何だそりゃ!」

武内P「申し訳ございません。どうしても……」


樹里「ったく……つまんねぇな、いいよもう」

武内P「申し訳ございません。善処致します」

樹里「だーもう! その申し訳ございませんってのもやめろ!」

武内P「申し訳ございません」

樹里「……よしっ」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:55:28.57 ID:LQd6uuhx0
〜某所〜


「はい……はい……」

「そうです……彼に先を越された形になります」

「ああなっては、彼女を引き込むことは難しくなったと言えるでしょう」


「いいえ……それが、彼の本来業務でもあります」

「少なくとも、彼はそう思っています……」


「はい、えぇ……では、引き続き監視を……」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 14:59:31.85 ID:LQd6uuhx0
〜翌日、961プロ〜

樹里「う、わあぁぁ……すげぇ」

武内P「こちらが、西城さんのスタッフ証になります。
    事務所内の施設を使用する際に必要となりますので、常に携行するようにしてください」スッ

樹里「あ、あぁ」


樹里「アンタ、こんなリッパな所で働いてたのか……何つーか、ナメてたぜ。ごめん」

武内P「いえ。では、中へご案内します」


ウィーーン…

樹里「うお、すっげぇ、超キレイ……!」キョロキョロ

武内P「……」

樹里「……な、何だよ! 悪かったな、田舎モンくさくて」

武内P「いえ。こちらです」スッ

コツコツ…


樹里「なんか、とんでもない所に来ちゃったんじゃねぇのか、アタシ……?」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:03:14.09 ID:LQd6uuhx0
ガチャッ

樹里「うわ、広っ!」

武内P「基本的に、レッスンはこちらのスタジオを使用することになります」

武内P「更衣室とシャワー室は、あちらです。
    さっそくですが、ご準備ができたら始めましょう」


樹里「……なぁ、プロデューサー」

武内P「何でしょう」

樹里「ひょっとして、アンタがその……レッスン、ってのを見るのか?
   何か、プロのコーチとか、こういうデカいトコだといねぇのかなって」

武内P「仰るように、通常は専属のトレーナーに任せることが多いですが、
    西城さんについては、特別です」

樹里「特別?」


武内P「西城さんを狙う者がいる都合上、関係者を極力絞ることが必要となります」

武内P「今後、西城さんがアイドルとして活動されるに当たっては、
    常に私と一緒に行動することになると思ってください」

樹里「ボディーガード、みたいなモンか」


樹里「ま、やるって決めたからには四の五の言ってらんねぇよな。
   ……よしっ、いいぜ」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:06:00.49 ID:LQd6uuhx0
タン タンッ…!

樹里「……っと」タンッ タン


武内P「…………」


樹里「……ッ ……」タンッ タッ

樹里「く……」タタンッ タン


樹里「……ッ!」ビシッ!

樹里「く、はぁ……はぁ……! つ、つれぇ……」ガクッ


武内P「給水を」スッ

樹里「あ……サンキュー」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:08:53.06 ID:LQd6uuhx0
武内P「西城さん。何か、運動経験はおありですか?」

樹里「え? あぁ……バスケを少し、な」

武内P「なるほど」


武内P「西城さんは、既に水準以上のものを持っています」

樹里「……!」ピクッ

武内P「ですが、練習は大事です」

武内P「しばらくは、基礎レッスンを繰り返し受けていただきます。
    今日は行わないですが、ボーカルやビジュアルについても同様に、です」

樹里「……その後は?」

武内P「色々ありますが、他のアイドルのバックダンサーとしてデビューするのが一般的かと」


樹里「…………」

武内P「何か、ございますか?」

樹里「いや、そのさ……煽ててんだろ?」

武内P「煽ててなどいません。事実を言っているまでです」

樹里「真顔で言うなっつーんだよ、そういうの。
   ただ、まぁ……お世辞でも嬉しいよ」

樹里「でもさ……」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:10:07.95 ID:LQd6uuhx0
武内P「自分には、アイドルとしての夢が無い、と?」


樹里「……チョコの憧れになってやる。
   そしていつか、チョコをアイドルの世界に連れてってやるんだ、って……」

樹里「それも、夢といえば夢なのかも、って思う。でもさ……」

樹里「別にアタシは、アイドルやりたくてやるんじゃない。
   チョコのためと、よく分かんねぇヤツらから逃げるために、なりゆきでさ」

樹里「そんな、不純っつーか……後ろ向きで他人本位な理由で、やっていいのかな……
   それに、いつ終わるんだろうな、って、ふと考えちまってさ」


武内P「…………」

樹里「……あっ! あの、ご、ごめん!
   まだ始まってもいねぇのに、先の話なんかしたってしょうがないよな」

武内P「いいえ、不安に思う気持ちはよく分かります」


武内P「ですが、その心配は無用です」

武内P「西城さんは、基礎的な体力や技術は元より、
    アイドルとして大きな強みとなるものを、既に持っています」

樹里「……何だよ、アタシの強みって?」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:11:14.96 ID:LQd6uuhx0
武内P「笑顔です」

樹里「はあ?」


武内P「……」

樹里「すげー真顔……あのな、笑顔なんて誰にでもでき…」

樹里「ていうか、よく考えたらアタシ、アンタの前で笑ったことなんてねぇだろ!」

武内P「はい。今はまだ」

樹里「適当なことを言いやがって! やっぱアタシのことバカにしてんな!?」


武内P「あなたには今、夢中になれるものがありますか?」

樹里「なっ……?」


武内P「なりゆきで巻き込んでしまったことについては、謝ります」

武内P「ですが……いいえ、だからこそ、あなたに知ってもらいたいのです。
    この世界で夢中になれることの尊さを」

武内P「そして、その先にある笑顔こそが、アイドルの本質であると、私は考えています」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:12:24.61 ID:LQd6uuhx0
樹里「……それ、誰でもいいって話じゃねぇのか?」

武内P「私は、あなたの笑顔が見たいと思った、ということです」

樹里「!!」カァ-!

樹里「バ、あ、あの……何なんだよいきなり!!」

武内P「あなたが夢中になれるよう、世界を広げることが私の務めです。
    共に頑張りましょう、西城さん」

樹里「……よくそんな恥ずかしいこと、平気な顔して言えんな、もう」ポリポリ


樹里「分かったよ。やるからには、ハンパはできねぇしな」

樹里「何でもいいけど、これからよろしく」

武内P「はい、こちらこそ」


武内P「それでは、今日のレッスンはこれまでとしましょう。
    着替えが終わりましたら、寮へご案内します」



樹里「……は? 寮?」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:13:26.21 ID:LQd6uuhx0
〜961プロ 寮〜

樹里「いや、アタシ実家から通えるって!」

武内P「入寮を強制するものではありません。
    自由にご利用になれる部屋を、西城さん用に確保したまでです」

武内P「通学される学校にも近いことから、ご両親には既にご了解をいただいております。
    もちろん、費用も事務所が負担します」

樹里「……あ、そう」


ガチャッ

武内P「こちらが、西城さんのお部屋になります」

樹里「……十分住めるな」


武内P「私の部屋は、この1階にありますので、何かあれば」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:14:34.11 ID:LQd6uuhx0
樹里「えっ? 事務所の人も住んでんの?」

武内P「私だけですが」

樹里「ふーん……」


樹里「なぁ、ちょっと部屋覗いてみてもいいか?」

武内P「……私の部屋を、ですか?」

樹里「アンタがホントに怪しいヤツじゃないかどうか知りたいんだよ」

樹里「……いや、既にもう十分怪しいんだけど」

武内P「あの、しかし……」ポリポリ

樹里「あ、1コ気づいたぜ」ニヤッ

武内P「?」


樹里「アンタ、困ったときは首の後ろを掻くんだな」

武内P「…………」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:15:48.98 ID:LQd6uuhx0
〜Pの部屋〜

ガチャッ

武内P「何も、面白いものはありませんが……」

樹里「……ふーん」ヒョイッ


樹里「意外、でもねぇけど……」キョロキョロ

樹里「生活感ねぇなぁ。ちゃんと飯食ってんのか?」ガチャッ

武内P「あ、冷蔵庫は特に…」

樹里「おわっ!?」


樹里「何だこりゃ! 変な栄養ドリンクしか入ってねぇぞ!?」

武内P「事務所からの、支給品です」スッ

つ エナドリ

武内P「自炊はしていませんが……これは、健康のために」グビッ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:17:55.12 ID:LQd6uuhx0
樹里「そういうのに頼らなくていいような健康的な生活をしろよ、まずはさ……」


樹里「ん?」


武内P「…………」スッ

つ 植木鉢

武内P「……」シュッ シュッ


樹里「育ててんのか?」

武内P「定期的に、霧吹きで水を与えるのはもちろん、
    晴れた日には、日当たりの良い所へ位置を調節しています」フキフキ

樹里「ま、マメだな……自炊もしねぇクセに」


樹里「まぁ、ちょっと安心したよ。
   ナイフ持ってたくらいだし、もっと物騒なモン持ってたりすんのかと思った」

武内P「あれは、非常用です。常にそういうシーンがある訳ではありません」


樹里「……なぁ、プロデューサー」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:19:33.16 ID:LQd6uuhx0
樹里「アタシが家事、手伝ってやろうか?」

武内P「……えっ?」


樹里「!? あ、バッ! 勘違いすんなよっ!!」

武内P「な、何がでしょうか?」

樹里「――ッ!!」カァーッ!

樹里「あぁ〜もう!! だからぁ、いいか!?」ワシャワシャ!


樹里「アタシはアンタに、アイドルとしての面倒見てもらいっぱなしだ。
   一方的に借りができんのは嫌なんだよ」

樹里「だから、生活力のねぇアンタの代わりに、アタシがなんかしてやるよ。
   たまに部屋に行って掃除とか洗濯とか、料理も」

武内P「いえ、お気持ちはありがたいのですが…」

樹里「アタシの気持ちの問題なんだよ!
   それにほら、その植木だって、プロデューサーが忙しくて面倒見れねぇ日もあんだろ?」


武内P「……確かに」

樹里「そこで引き下がんのかよ。どんだけ植木が好きなんだ」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:21:27.59 ID:LQd6uuhx0
武内P「ですが、成人男性の部屋に、未成年の女性が通って、
    掃除や洗濯をするというのは、やはり……」

樹里「む、ぐ……ま、まぁ確かに、それはアタシも言い過ぎたな」

樹里「じゃあ、昼メシの弁当作んのと、植木の世話をするくらいで、どうだ?」


武内P「……では、お言葉に甘えて」ペコリ

樹里「よしっ。まぁ心配すんな。
   両親が出かけてていない時は、いつも兄貴に料理当番押しつけられてんだ」

樹里「学校に通いがてら、朝、弁当渡しに行くからさ。
   あ、それと植木は外に置いとけよ。アタシが水やりとかしてやる」


武内P「植木に水をやる時は、こちらの霧吹きをお使いください。
    タイミングは、朝と夕方、夜の計3回。夜は私が行います」

武内P「根元だけでなく、葉っぱにも直接吹きかけて、こちらのタオルで軽く拭いてあげるように。
    あくまで適度な潤いを与えることが目的です」

武内P「また、天気の悪い日は、こちらの日除けの中に入れてください。
    逆に天気が良い日は、日射がこちらから降り注ぎますので、しかし葉が痛まないよう……」

樹里「悪い、なんか紙に書いてくれ」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:21:54.97 ID:LQd6uuhx0
樹里「じゃ、また明日なー」

バタン



武内P「……」


武内P「…………」ガラッ


つ エナドリ



武内P「…………」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:24:00.84 ID:LQd6uuhx0
――――――

――――


  ――ちょ、これwwwww
  ――うーわマジかよ、最悪だわすげぇ応援してたのに
  ――清純派アイドル(淫乱)

  ――不倫問題が取り沙汰されているとのことで、自宅前は騒然と……!


  イヤ……あの人達は、何?
  何で、みんな私を責めるの?

  私、何もしてない! どうして……どうして、こんなことに……!

「落ち着いてください。あなたのことは、事務所が必ずお守りし…」

  どうして家の前まで人が来るの!!

  何で、ウソの報道で、お父さんやお母さんまでズタボロにされなきゃ……
  う、うぅ……!!

「それは……」

  イヤ……やめてよぉ……!!
  助けて……!



「“事故”だったんです」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:26:10.21 ID:LQd6uuhx0
武内P「ハッ!!」ガバッ!


武内P「……ハッ! …………ハッ!……」



武内P「………………」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:27:27.98 ID:LQd6uuhx0
――――


樹里「アーアーアーアーアー♪」

武内P「力任せではなく、鼻から大きく、背中からゆっくりと頭の後ろを通って」

樹里「あ、えっ!? あ、アーアーアーアーアー♪」



武内P「カメラは通常、この位置と、この辺りにセットされることが多いです」

武内P「常に意識をしながら、感情豊か、かつ演出以外で目線を下げないように。
    アピールポイントは特に重要です」

武内P「また、審査にもトレンドというものがあり、動向を常に把握し…」

樹里「ちょっと待て、覚えること多すぎんだろ……」



タンッ タンッ!

樹里「うぉ……くっ……!」タタンッ タッ! タン

武内P「少し、早いようです。余裕をもって、その分振りを大きく」

樹里「うるせぇ……こ、こうか!?」タン! タンッ


――――
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:28:41.16 ID:LQd6uuhx0
〜346プロ 事務室〜

凛「…………」


未央「しぶりん、どうしたの?」ヒョコッ

凛「わっ!? ……み、未央」

未央「……あぁ〜それねー。私もすこーし気になってたんだー」


卯月「プロデューサーさん、お弁当作るようにしたんですね。
   忙しいのに、すごいなぁ」

未央「なぁに言ってんのしまむー。どう見ても愛妻弁当でしょ」

卯月「え、うぇぇ!? あ、愛妻……プロデューサーさん、奥さんいたんですか?」

凛「飛躍しすぎだから、卯月」

未央「でもさ、むふふ……誰なんだろうねープロデューサーの胃袋を掴んだ人は〜?
   しぶりんも気になるでしょ?」


凛「…………」

パカッ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:30:04.10 ID:LQd6uuhx0
未央「おっ♪」

卯月「あ、り、凛ちゃん! 勝手に開けちゃうのは…」

凛「減るもんじゃないから」


凛「…………」

未央「……普通においしそう」

卯月「ゆかりが乗った白ご飯に、鳥の唐揚げ。
   厚焼き卵にも鶏の挽肉が入ってるの、芸が細かいですね!」

卯月「おひたしに、ミニトマトやブロッコリー、煮物もあって、彩りも華やかです。
   うぅ、見てるだけでお腹が空いてきました……」


未央「何かと留守にしがちなプロデューサーに、この気合いの籠もったお弁当……」

未央「匂いますなぁ、しぶりん、しまむー?」ニヤニヤ

卯月「はいっ、おいしそうな匂いです!」

未央「うん、そだね」


凛「…………」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:31:30.79 ID:LQd6uuhx0
〜961プロ レッスンルーム〜

樹里「はぁ……はぁ……ふぅ」


武内P「西城さん」

武内P「そろそろ、ステージデビューを検討しています」

樹里「はぁっ!?」


樹里「きゅ、急だな……あ、ひょっとしてアレか?
   この間言ってたみたいに、誰かのバックダンサーとしての仕事とか」

武内P「いえ、西城さんのソロステージです。
    ライブハウスではなく、デパートのイベントスペースが会場となりますが」

樹里「ま、マジかよ……いつ?」

武内P「一週間後です」

樹里「一週間!?」


武内P「西城さんは、既に十分な実力を有しています。どうかご安心を」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:33:13.35 ID:LQd6uuhx0
樹里「……あのさ、プロデューサー」

武内P「何でしょう?」


樹里「アタシに構ってくれんのはいいけど……他に担当してる子とか、いねぇのか?」

武内P「……はい、います」

樹里「何人いるか知んねーけど、その子達のことも、ちゃんと見てやれよ。
   アタシなんてペーペーだけど、ポイントさえ押さえりゃレッスンも一人でできっからさ」

武内P「他のアイドル達についても、指示は適宜与えてあります」


樹里「……ちなみに、どんな子がいるんだ?
   ソイツらも961プロなんだろ?」


武内P「…………」

樹里「言えねぇようなコトかよ」


武内P「……守秘義務がありますので。不必要な情報は、口外を禁じられています」

樹里「うわぁ−、かってぇ〜なぁ、オイ」

武内P「…………」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:34:09.08 ID:LQd6uuhx0
樹里「まぁ別にいいよ、アタシはアタシのやることをやるだけだからな」スクッ

武内P「……申し訳ございません」

樹里「いいって。ちょっと不安になっただけだよ。
   アンタが本当に961のプロデューサーなのかどうか」

樹里「あんまりアタシの面倒ばかり見てっから、他に仕事ねぇのかなってさ。ハハハ」

武内P「…………」

樹里「じょ、冗談だよ……そんな深刻そうな顔すんなって、ごめん」

武内P「…………」

樹里「……エナドリ、飲むか?」スッ

武内P「いただきます」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:35:34.91 ID:LQd6uuhx0
〜街中〜

テクテク…

未央「アハハ、しぶり〜ん、冗談だってばー」

未央「プロデューサーだって毎日全然来てくれないってわけじゃないし、
   来ない時にはちゃんとあーせいこーせい連絡してくれるし」

卯月「私達のことも、ちゃんと目に掛けてくれていますよ、ねっ?」

凛「……そんなの、分かってるよ」


凛「でも、プロデューサーだって、体は一つしか無いんだし、
  担当が増えれば、一人当たりに掛けられる時間は少なくなるでしょ」

未央「そりゃあ、そうだろうけどね」

凛「だから、その……何ていうか、
  もっと私達がちゃんとしなきゃいけないと思うんだけど……」

凛「まだ駆け出しで、どう頑張ったら良いのか……
  方向性も分かっていない中で、変な方に突っ走るのも怖いから」


未央「ふーん、つまり……」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:37:06.82 ID:LQd6uuhx0
未央「しぶりんはもっとプロデューサーに構ってほしいんだ!」

凛「……」ギューッ

未央「うぎゃあああ!! あだだだだだだっ!!」

卯月「ああぁっ! み、未央ちゃんの手の甲がダルダルに……!」


未央「んー、まぁ、だったら今度プロデューサーに相談しようよ!」

凛「えっ? い、いや、プロデューサーも、忙しかったら悪い…」

未央「なーに言ってんのさしぶりん! あっちは大人だよ?
   遠慮することないって、ガンガン甘えちゃおうよ!」

卯月「凛ちゃんは優しいですね」ニコッ

凛「そ、そうじゃないけど……」


未央「私も、ニュージェネのリーダーだから分かるけどさ。
   人から頼られるのって、結構うれしいもんだよ?」

凛「未央……」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:38:20.25 ID:LQd6uuhx0
卯月「えへへ、じゃあ明日はプロデューサーさんに、私達の方向性について相談しましょう!」

未央「近況報告もね!
   この間トレさんに褒められたビジュアルレッスンの成果、さっそく発揮しちゃおっかな〜♪」

凛「何するの、それ?」

未央「そりゃあもちろん、お色気的なアレをさ?
   美嘉ねぇのポーズをこう…」

凛「……」ギューッ

未央「あぃだだだだだっ!!! 何で何でいだだだだだっ!?」



卯月「じゃあ、凛ちゃん未央ちゃん! 明日も頑張りましょうねっ!」ギュッ!

未央「うぅぅ……しぶりん、せめて片方を集中攻撃はやめてほしい……」ヒリヒリ


凛「うん。また明日」フリフリ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:38:54.47 ID:LQd6uuhx0
テクテク…


凛(未央も……本当は、不安なのかな)

凛(あぁして、わざとふざけてみせて……)


凛「…………」



凛「……?」ピタッ



凛「この公園……」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:39:38.15 ID:LQd6uuhx0
凛(……懐かしいな)


テクテク…

凛(卯月と……プロデューサーと話したのも、この公園だった)



凛「あっ……」ピタッ





コソコソ…


樹里「…………ッ」キョロキョロ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:40:44.72 ID:LQd6uuhx0
凛(? あの子……どこかで見たような……)



樹里「だ、誰もいねぇよな……?」キョロキョロ

樹里「ったく、プロデューサーのヤツ……
   あんな大事な話、もっと前もって知らせとけっての」



凛(! 思い出した。あの時の……)



樹里「ふぅ……よし、やるか」ザッ


タンッ タンッ! タタン…



凛「…………!」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2023/02/19(日) 15:41:57.23 ID:LQd6uuhx0
タッ! タタンッ!

樹里「……ッ」

樹里「ココなんだよなぁ、いっつも上手くいかねぇ……」ザッ


樹里「……! よ……!」タタッ! タンッ タッ


樹里「クソッ、ダメだ……!」



凛(まさか……本当に、アイドル……?)



樹里「えぇい、もういっかぃ……!」

樹里「? ……」ピタッ



凛「………………」
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