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先輩「そんなに私のことが好きなのですか?」
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1 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 13:39:27.94 ID:7AGwCm7j0
放課後 屋上
男「……は?」
先輩「とぼけても無駄ですよ。わざわざこんなところに呼び出したのです。私に告白するつもりなのでしょう?」
男「何を言って……」
先輩「私は断るつもりなのですが、男くんが素敵な言葉で愛を囁いてくれれば、お付き合いする可能性がなくもないです」
男「……」
先輩「さあ、全ては男くん次第ですよ」
男「いや、あんた誰だよ」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1664685567
2 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 13:42:29.16 ID:7AGwCm7j0
男「何か誤解しているようだけど、先輩を呼び出したのは俺じゃない」
先輩「では、なぜ屋上にいるのですか?」
男「それはだな……」
先輩「こんなところに来る理由なんてあまりないと思うのです。友達がいないとか? それとも……自殺、とか」
男「……」
先輩「あっ、友達がいないほうでしたか。これはすみません」
男「違う、違うから。憐れむような目で見るのはやめてくれ」
3 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 13:47:19.75 ID:7AGwCm7j0
男「同じ中学だった奴が多くて、そいつらが煩わしくてここに逃げてるんだ」
先輩「どうしてですか? 昔からの友達がいた方が楽しいものでしょう」
男「過去を知られてることが重荷になる人間だっているんだよ」
先輩「……なるほど」
男「まあ、そういうわけだから、俺は無関係だ」
先輩「では、誰が私に告白をするのですか?」
男「知らねえよ!」
4 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 13:51:11.64 ID:7AGwCm7j0
男「つーか、呼び出されただけで、告白されると決まったわけじゃないだろ」
先輩「いえ、間違いなく告白ですよ。何度もこうやって呼び出されて告白されていますから」
男「モテるんだな」
先輩「ええ。私は可愛いですから」
男「すっげえ自信」
先輩「でも、事実でしょう?」
男「……まあ、否定はしないけど」
5 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 13:55:20.32 ID:7AGwCm7j0
先輩「でも、女の子たちから嫉妬されるのは納得いきません。相手が勝手に好きになって告白してくるだけなのに理不尽すぎますよ」
男「やっぱり、そういうのあるんだな」
先輩「なるべく男の子とは接しないように気をつけているのですが……それでも告白されるのです」
男「まあ、ワンチャンあるんじゃないかって思われてるんだろうな」
先輩「……私が軽い女に見えますか?」
男「体重は軽そうだけど」
先輩「そういうことを言っているわけではありませんよ」
6 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 13:57:52.23 ID:7AGwCm7j0
男「先輩に彼氏がいないから、もしかしたらチャンスがあるんじゃないかって勘違いされてんだよ。彼氏持ちだったら諦めもつくだろ」
先輩「……確かにそうですね」
男「いっそ、これから告白しにくる奴と付き合えば?」
先輩「それはさすがに無理ですが……でも、交際してもいいかなと思う人ならいますよ」
男「好きな人いたのか」
先輩「好きというわけではありません。ただ、その人なら私の彼氏にしても問題ないというか」
男「先輩に認められるなんてさぞいい男子なんだろうな」
先輩「そうですね。ルックスはいいと思います」
男「外見で決めたのかよ……」
先輩「ええ。世の中、見た目こそ全て、見た目こそ正義ですから」
男「そんな世界は壊してしまえ」
7 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:08:12.11 ID:7AGwCm7j0
先輩「でも、好きでもないのにお付き合いしてもらっていいのでしょうか」
男「別に構わんだろ。相手には先輩の彼氏って相当なステータスが手に入るんだし」
先輩「そうですか。では、お願いしますね」
男「……は? 何を?」
先輩「私とお付き合いしてください」
男「……」
先輩「……」
男「はあああああああああああああ!!!?」
8 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:10:40.01 ID:7AGwCm7j0
男「な、なんで俺なんだよ!?」
先輩「さっき言いましたよね。外見が私好みだからですよ」
男「 い、いや、でも俺は先輩のことをよく知らないし……」
先輩「それは嘘ですね。私のことを『先輩』と呼んでいますが、私は何年生であるか明かしていません。どうして私が『先輩』であると知っているのですか?」
男「リボンだよ。学年ごとにリボンの色が違うだろ」
先輩「……なるほど。つまり、男くんは私の胸元を見ていたのですね」
男「はあ!?」
先輩「この控えめな胸でも欲情してくださる方がいらっしゃるなんて」
男「違うわ!」
先輩「……そうですか。やっぱり、大きい方がお好みなのですね。でも、安心してください。私のお母さんはとても立派なものをお持ちです。だから、私もいずれは……」
男「わかったから落ち着け」
9 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:15:46.85 ID:7AGwCm7j0
男「とにかく俺は無理だ。他の人にしてくれ」
先輩「でも、さっきは私と付き合うことがステータスになるとおっしゃったではありませんか」
男「それはそうだけど……」
先輩「私のような可愛い女の子と交際できるなんて普通の男子高校生だったら即答でOKですよ」
男「……俺、実は女子だから」
先輩「……」サワッ
男「ど、どこ触ってんだよ!?」
先輩「ちゃんとついているではありませんか」
男「あんたには羞恥心がないのかよ……」
10 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:20:54.09 ID:7AGwCm7j0
先輩「男くんが彼氏を作ればいいって提案したのですよ。責任取ってください」
男「いや、しかし……」
先輩「では、本当に私がこれから告白しにくる人と交際しろというのですね。その人にいいように弄ばれてもいいのですか?」
男「まあ、構わないけど」
先輩「あーんなことやこーんなことをされてしまうかもなのですよ」
男「避妊だけはしっかりしてもらえよ」
先輩「貴方には情というものがないのですか?」
11 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:24:00.08 ID:7AGwCm7j0
先輩「男くんは何が嫌なのですか?」
男「面倒事に巻き込まれたくないんだよ」
先輩「私に付き合うのが面倒だと?」
男「先輩に限らず、女性と付き合うのはそれなりに面倒だろ。休みの日に無理やり連れ回されたり、美味しくもない手料理食わされて正直な感想話したら怒られたり」
先輩「やけに具体的ですね。誰かとお付き合いした経験があるのですか?」
男「……別に。一般論を言っただけだよ」
12 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:29:21.22 ID:7AGwCm7j0
先輩「安心してください。私はそこまで求めていません。学校にいる間だけ一緒にいてくれればいいのです。休日に男くんがどうしようが私の関与するところではありません」
男「ああ、そうか。付き合っている振りでいいんだもんな」
先輩「そういうことです」
男「でもなあ……」
先輩「まだ何か?」
男「昼休みくらいゆっくりしたい」
先輩「お望みなら膝枕でもして差し上げますよ」
13 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:39:12.88 ID:7AGwCm7j0
先輩「では、交渉成立でいいですかね?」
男「あー、わかったよ」
先輩「良かったです。これ以上渋られるなら実力行使に出るところでした」
男「何するつもりだったんだよ……」
先輩「キスですね」
男「は……?」
先輩「だからキスですよ。何なら今しましょうか?」
男「どうしたらそんなことを平然と言えるんだ」
先輩「だって、私は妹とファーストキスを済ましていますから」
男「さらっととんでもないカミングアウトするな」
14 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:45:18.77 ID:7AGwCm7j0
先輩「これからお願いしますね」
男「……おう」
先輩「はい。では、私はこれから来る人を待ちたいと思います」
男「俺も一緒にいた方がいいのか?」
先輩「修羅場を経験したいのならどうぞ」
男「……先帰るわ」
先輩「最後にお別れのキスでもします?」
男「遠慮しとくわ。先輩の妹と間接キスはしたくない」
15 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:55:01.64 ID:7AGwCm7j0
階段
男(なんか、とんでもねえことに巻き込まれたな……)
???「ねえねえ」
男(まあでも、これであいつも俺に気を遣わないようになるか……)
???「おい! 聞いてるのか!」
男「……俺?」
???「この場には君以外にいないでしょうよ。男くんだよね? 私は……」
男「知ってるよ。A組のやつだろ。バスケ部期待のルーキーだって噂で聞いた」
女「そっちかー。どうせなら可愛い女の子って噂されたかったな」
16 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 14:58:22.15 ID:7AGwCm7j0
男「それで何の用?」
女「屋上で何してたのかなって思って」
男「……なんで屋上にいたことを知ってるんだ」
女「ここ三階だよ? これより上は屋上しかないでしょ」
男「それもそうか。ただ寝てただけだよ」
女「一人で?」
男「……そうだけど。他に誰がいるんだよ」
女「ふーん……おっと、そろそろ行かないと。じゃあね、男くん。君と話せてよかったよ」
男「お、おう……」
17 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:01:56.66 ID:7AGwCm7j0
火曜日 昼休み 廊下
男友「よう。久しぶりだな。足の具合はもういいのか?」
男「相変わらずだよ」
男友「……そうか」
男「で、なんだよ?」
男友「お前、2年生の先輩と付き合ってるんだって?」
男「な、なんでお前が知ってるんだよ!」
男友「噂になってるぞ。もう学年中に知れ渡ってるんじゃないか」
男「ちっ……なんかやけに見られていると思っていたが、そういうことだったのか……」
男友「自意識過剰なだけだろ」
18 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:04:54.51 ID:7AGwCm7j0
男友「お前はしばらく彼女を作らないと思ってたが」
男「……色々あるんだよ」
男友「でもまあ、あの人はお前に合ってると思うよ」
男「先輩のこと知ってるのか?」
男友「まあな。先輩はかなりモテるから、嫉妬した連中に背中刺されないように気をつけろよ」
男「ああ。さすがにもう入院はしたくないからな」
男友「……」
男「……別に深い意味はないからな」
男友「え? 何が?」
男「なんでもねえよ!」
19 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:08:49.42 ID:7AGwCm7j0
屋上
先輩「遅いですよ、男くん」
男「悪い。ちょっと友達と話しててな」
先輩「……男くん、すぐにバレるような嘘を吐くのはやめてくれませんか?」
男「いや、俺にだって友達くらいいるからな」
20 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:11:29.85 ID:7AGwCm7j0
男「俺たちのこと噂になっているみたいだぞ」
先輩「みたいですね。私もクラスの子に聞かれました」
男「いくらなんでも話が回るのが早すぎねえか?」
先輩「言っておきますけれど、私ではないですからね。登校したらみんなが知っていたのですから」
男「本当かよ」
先輩「本当です。私は家族にしか話していません」
男「え!!?」
21 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:13:42.78 ID:7AGwCm7j0
先輩「安心してください。詳細は話していませんから。ただ、お付き合いすることになったとだけ」
男「それがダメだろうが!」
先輩「どうしてですか? 皆、祝福してくれましたよ。お父さんなんて、嬉し涙を流しながら今度お家に連れてきなさいって」
男「それ、絶対嬉し涙じゃないよね? 悔し涙だよね? 家に行ったらぶん殴られるやつだよね?」
先輩「そして妹は祝福のキスをたくさんしてくれました」
男「もうただキスしたいだけだろ、それ」
22 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:16:50.94 ID:7AGwCm7j0
先輩「あれ、男くん? お弁当は持ってこなかったのですか?」
男「ん? ああ、持ってきてるよ」
先輩「……カロリーメイトだけじゃないですか」
男「これで充分なんだよ」
先輩「育ち盛りの男子高校生がそれだけで足りるはずがありません」
男「でも金ないし」
先輩「いかがわしい本を買ったりするからです」
男「先輩の中で俺はどういう人物になってんだよ」
23 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:19:21.52 ID:7AGwCm7j0
先輩「仕方ないですね。私のお弁当のおかずを分けてあげます」
男「いや、いいって」
先輩「はいはい。いいから早く口を開けてくださいよ」スッ
男「それはさすがに……」
先輩「いいから早く開けなさい!!!!」
男「んんっ……」
先輩「どうですか?」
男「……うまい」
先輩「でしょう! 私のお母さんが作る玉子焼きは世界一なのです!」
男「世界一とまでは言わんが……この味付けは好きだな」
先輩「そうですか! ではどんどん食べてください!」スッ
男「んん!?」
先輩「まだまだありますからね!」
男「わかった! わかったから! そんなにハイペースで食わせようとするな!」
24 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:21:44.81 ID:7AGwCm7j0
先輩「ご馳走様でした。さて、男くん」
男「ん?」
先輩「……」ポンポン
男「……おもむろに太ももを叩いてどうした?」
先輩「膝枕ですよ。昨日、約束したでしょう?」
男「いや、あれ冗談だから」
先輩「そうなのですか?」
男「たとえ、本気だったとしてもそう簡単に膝枕なんかするなよ」
先輩「でも、カップルって膝枕したりするものでしょう?」
男「どんな偏見だよ。よほどのバカップルでもない限りそんなことしねえだろ」
先輩「男くんはおバカさんなので、ある意味バカップルですよ」
男「勝手にバカって決めつけるなよ。バカだけどさ」
先輩「安心してください。外見は私好みなのでセーフです」
男「世の中的にはアウトなんだよなあ」
25 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:25:00.47 ID:7AGwCm7j0
先輩「実際に交際しているカップルというのはどういうことをするのでしょうね」
男「一緒に帰ったりとか休日に遊んだりするくらいだろ」
先輩「それだけですか?」
男「学生の交際なんてそんなもんだ」
先輩「そうなのですか。でも、それくらいなら友人関係のままでもできそうですけれど」
男「先輩はただの男友達と二人でどこかに出かけたりできるのか?」
先輩「私には男の子の幼馴染がいるのですが、その人と映画を見に行ったりしますよ」
男「幼馴染……ねえ」
先輩「どうしたのですか?」
男「どうせ、その男子は先輩のことが好きなんだろ」
先輩「どうしてそうなるのですか。私たちはただの幼馴染ですよ」
男「先輩はそうでも、相手は違うに決まってる。下心でもなきゃ、一緒にいたりするわけない」
先輩「違いますよ。私たちは家族のようなもので……」
男「アホか。幼馴染なんて所詮は他人。家族になんてなれやしないんだよ」
26 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:28:22.59 ID:7AGwCm7j0
先輩「でも、彼は私に恋してることはあり得ないと思いますよ。男くんのことを話したら祝福してくれましたし」
男「表面上はそうでも心の中じゃ何考えているかなんてわからねえだろ」
先輩「……それもそうですね。男くんだって下心があるくらいですし」
男「いや、俺は……」
先輩「下心でもなきゃ、一緒にいたりするわけない」
男「は?」
先輩「先ほど、男くんがそう言ったのですよ。つまり、男くんは下心があるから私とお付き合いしているわけです」
男「え、いや……」
先輩「ふふふ。言ってくだされば、この貧相な胸ならいくらでも差し出したのに」
男「あんたの貞操観念はどうなってんだよ」
27 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:32:19.34 ID:7AGwCm7j0
男「あんまりそういうことを言うんじゃねえよ。相手が本気にしたらどうすんだよ」
先輩「安心してください。こんなことを言うのは男くんにだけですし。そして男くんにそんな勇気がないのはわかっています」
男「え、何それ……」
先輩「それに胸は妹にいつも揉まれていますから。実際に触られたところでなんとも思いません」
男「……揉めるほどの大きさがあったのか」
先輩「さすがにそれくらいはありますよ。確認してみます?」
28 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:35:07.36 ID:7AGwCm7j0
放課後 昇降口
女「……」キョロキョロ
男「……おい、何してんだ」
女「うわっ! ……なんだ、男くんか」
男「そこ三年の下駄箱だろ」
女「そうだけど? 何か問題ある?」
男「お前、一年だろ……」
29 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:39:58.57 ID:7AGwCm7j0
女「そんなことよりさあ、二年生の先輩と付き合ったんだってー?」
男「お前まで知ってるのかよ……」
女「あの人、めっちゃかわいいよねー。ねえねえ、どっちから告白したの?」
男「さあな。つーか、お前は部活に行かなくていいのかよ」
女「主役は遅れて登場するものだよ」
男「いいよな。才能がある奴は。たいした努力もせずに結果を出せるんだから」
女「男くんだってそうでしょ。Jリーグの下部組織にいたくらいなんだから」
男「……なんで知ってる」
女「女子の情報網を侮らないほうがいいよ」
30 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:42:40.42 ID:7AGwCm7j0
女「Jリーグの下部組織ってエリート集団なわけでしょ?」
男「そうだな。でも、俺はユースに昇格できなかった落ちこぼれだ」
女「でも、怪我がなければ昇格できたって聞いたけど」
男「……」
女「可哀想に。男くんが大怪我をしてまでゴールを決めたからチームは――」
男「うるせえ。お前に何がわかる」
女「じゃあ、わかるように教えてよ」
男「黙れ。お前みたいに才能だけでここまできたような奴に俺の気持ちがわかってたまるか」
女「そうやって周囲を拒絶したから大切な人を奪われたりするんだよ」
男「なんで……」
女「だから言ったでしょ。侮らないほうがいいって」
31 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:44:53.43 ID:7AGwCm7j0
女「じゃ、私はもう部活に行くから」
男「……ちっ」
女「そうだ、男くん」
男「なんだよ」
女「今度は寝取られないようにしっかり首輪しておいてね」
男「……」
32 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:47:19.00 ID:7AGwCm7j0
帰り道
男(俺の中学時代の話が女にまで知られているとは)
男(サッカーの件はまあいいとしても……あいつのことまで)
男(……もう終わったことなんだ。どうして放っておいてくれないんだ
先輩「そんな険しい顔をして歩いていたら通報されちゃいますよ」
男「……」
先輩「警察署まで迎えに行くのは面倒なので機嫌を直してくれると助かります」
33 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:50:18.75 ID:7AGwCm7j0
先輩「個人的には一回くらいはそういう経験をしてみたいものですが、時期が時期ですからね。彼氏が警察に捕まったなんてお父さんやお母さんが知ったら心配するでしょうし」
男「……なあ」
先輩「なんでしょう?」
男「たとえ、俺が捕まったとして先輩が呼ばれることはないと思うけどな」
先輩「それもそうですね。まあ、私が傍に居ればその顔をしていても誰も通報しないでしょう。なので、好きなだけ不機嫌になっていただいて構いませんよ」
男「……理由は聞かないのか?」
先輩「私に話したら解決するのですか?」
男「いや、それはないけど」
先輩「でしょう。自分のことは自分で解決するしかないのですよ」
34 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:53:25.11 ID:7AGwCm7j0
先輩「だから、私ができることは男くんが通報されないように傍にいることです」
男「誰も通報なんかしねえよ」
先輩「……そうみたいですね。先ほどより男くんの表情が少し柔らかくなりましたし」
男「そうか?」
先輩「ええ。まあ、私のかわいい顔を見て頬が緩まない人間なんていませんからね」
男「なんだそれ。否定はしねえけど」
先輩「男くんって妙なところで素直になりますよね」
35 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:54:46.07 ID:7AGwCm7j0
先輩「私も男くんと話したおかげで憂鬱だった気分が少し晴れましたよ」
男「何かあったのか?」
先輩「生きていれば何かあるものですよ」
男「……それもそうだな」
先輩「では、そろそろ帰りましょうか」
男「あー、その前にコンビニ寄ってもいいか?」
先輩「どうぞ。私はハーゲンダッツで構いませんよ」
男「せめてガリガリ君にしてくれない?」
先輩「冗談ですよ、冗談」
36 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:55:40.13 ID:7AGwCm7j0
先輩「男くん、遅いですよ」
男「悪いな。レジが混んでたんだよ。ほら、これやるから」
先輩「え、本当に買ってきてくれたんですか」
男「さすがにハーゲンダッツじゃないけどな」
先輩「……それはちょっとずるくないですか」
男「なにが?」
先輩「こっちの……話です」
37 :
◆TMTTBwd/ok
[saga]:2022/10/02(日) 15:57:05.97 ID:7AGwCm7j0
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