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【安価・コンマ】皆で作る物語
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337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/08(土) 22:11:25.07 ID:pte2yVlmo
乙乙
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/08(土) 22:13:59.62 ID:bUj4LXr1o
乙
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/08(土) 22:26:49.99 ID:sXXDsxd2o
おつ
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/15(土) 20:26:50.57 ID:oEcPk3vHo
「ほら」
「ありがとうございます!」
エージェントは双眼鏡を覗きながら、差し出されたスーツケースを受け取る。街なかの尾行で双眼鏡なんて使うものなのだろうか、そんな疑問をいだきながらクールキャットは話しかける。
「それで、状況は?」
「ホシはあの埠頭で輸送の責任者と会っているみたいです!」
わざとらしくエネルギーゼリーを流し込みながらエージェントが答える。クールキャットは彼女の手から双眼鏡をひったくるとそれを覗きこんだ。
「見張りは……」
入り口に2人、奥に3人。多いどころか少ないくらいだ。それにアルティメット・ワンの人間、というよりは地元のチンピラだろうか?
「ここで間違いない?」
「勿論ですよ!ずっと瞬きすることなく追ってましたから!」
「そう…」
「んー、でも確かに警備が緩いですよね?もしかして私達、博士に騙されたんでしょうか!?」
コロコロと表情を変えながらエージェントは狼狽える。
「どうかな、奴らもそんなことをすればどうなるかは分かっているはず」
「ですよね…?」
いずれにせよここで引き下がるという選択肢は無い。この程度の警備なら仮に見つかったとしても充分対処可能だ。
双眼鏡を返すと、クールキャットは氷の弾丸を出現させる。
「それじゃあ、ここで待ってて」
「はい!」
エージェントの敬礼に見送られながら、クールキャットは埠頭の入り口へと近づいていく。
↓1コンマ
41以上で制圧
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/15(土) 20:30:09.15 ID:q4j2/4qj0
あ
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/15(土) 20:31:33.42 ID:WbWbgkWSo
つ
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/15(土) 21:24:10.77 ID:oEcPk3vHo
入り口の見張りは拳銃を片手に周囲を警戒している。
「さて…」
氷の弾丸を作り出すと、彼らの近くにあったコンテナに飛ばして注意を逸らす。
2人が背中を見せている間に忍び寄り、見張りの首を絞める。男もはじめは抵抗していたがやがて力が抜け意識を失った。クールキャットは男をゆっくり地面に降ろす。
「気のせいみたいだ」
そう言いながら振り返った見張りの頭にしなやかなハイキックが直撃する。男はうめき声を上げながら仰向けに倒れ込む。
男たちの手から拳銃を拾うと、クールキャットはそれを海に投げた。続けてコンテナの陰に隠れながら奥に進む。
「それじゃあ帳簿上の操作はこっちでやっておくから、積み荷はきちんと運んで下さいね」
「分かった。到着予定時間だが─」
どうやら会計士と輸送責任者が詳細について話し合っているようだ。2人の手前には3人の見張り。2人は拳銃、1人はサブマシンガンを手にしている。
クールキャットは再び弾丸、というよりは氷の塊を展開する。狙いは見張りの頭だ。スピードも少し緩めて当てれば、少なくとも死にはしないだろう。
意識を集中させながら、クールキャットは氷を飛ばす。だが見張りに届く前にそれは砕けちった。
「──!?」
突如として地面の中から現れた死神のような男が大きな鎌を振るったのだ。かなり着古したと思われるフード付きのボロボロの黒衣を身に纏っている。フードを深く被っており、前髪が目にかかるほど長いこともあって表情は捉えにくい。
「敵です」
黒衣の男がかろうじて聞き取れるほどの声で呟く。それを聞いた会計士は彼を指差すと大声で喚き散らし始めた。
「こういう時のために我々はあなたを雇っているんですよ、シャドウ!仕事を果たしてください!」
「あー、分かりました」
↓1コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
今更ですけど戦闘の難易度ってちょうどいい感じですかね?
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/15(土) 21:26:15.96 ID:BzAZsoe8o
ん
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/15(土) 21:38:48.00 ID:WuoW2+8NO
戦闘の難易度自体は問題ないけど、全部反転コンマにした方が完全な運任せって感じするのでそうして欲しいかなあとか。もしくはクリティカルとファンブルはゾロ目時限定にするとか
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/15(土) 21:39:49.85 ID:ke31f6DTO
個人的に「46-80戦局有利」のコンマをもう少し縮めてもいいと思う逆に「11-25戦局不利」のコンマを広げた方が難易度もいいかな思う。
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/15(土) 22:16:36.51 ID:oEcPk3vHo
シャドウと呼ばれた男が動く前に、まずは見張り達がクールキャットに向けて銃を乱射してきた。近くに置いてあったフォークリフトの裏に飛び込んで弾丸を避ける。
しばらくすると弾丸の雨が止んだ。どうやら装填中のようだ。フォークリフトの陰から頭を出して彼らの位置を確認する。シャドウがどこにもいないのが気にかかったが、ひとまずクールキャットは見張りの男たちに氷をぶつけた。
「よし…」
見張りは無力化したが、シャドウの姿が見当たらない。彼の姿を探して周りを確認するクールキャット。すると目の前の地面から、より正確に言えばクレーンの影の中からシャドウの上半身と鎌が出てきた。
銀色に光る鎌がクールキャットの胴を切り裂こうとするが、華麗な側転で彼女はそれを躱した。
(今のと名前で分かった。あいつは影に関するパワーを持ったヴィラン。恐らくは影の中を移動する力)
それならばと、クールキャットは周りに影のない場所まで移動する。もちろん自身の影から出てくる可能性はあるが、それは同時にシャドウの現れる位置を容易に予測できることも意味する。
↓1反転コンマ
36~ 戦局有利
26~35 膠着
01~25 戦局不利
それでは意見を参考にシャドウ以降の戦闘では少し弄りたいと思います。ただクリティカルとファンブルはとりあえず今のままにしときます。もしかしたらあとから変えるかもしれません。
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/15(土) 22:17:36.39 ID:BzAZsoe8o
ん
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/15(土) 22:51:21.11 ID:oEcPk3vHo
クールキャットが影のない場所に移動したのを見て、シャドウはクレーンの影の中から這い上がって全身を晒した。
(出てきた…。影と影が繋がっていないと移動できない?)
するとシャドウはクールキャットに向かって走り始めた。すかさず氷の弾丸が襲いかかるが、彼はそれを全て手にした鎌で防ぐ。するとシャドウは手のひらサイズの鎌を投げてきた。
身体をひねって避けたクールキャットだったが、気付けばすぐ目の前にまでシャドウが迫ってきている。袈裟斬りにするように振るわれた鎌を間一髪で避けると、クールキャットは足技による連撃を御見舞する。
しかしシャドウはそれを鎌の刃と持ち手で器用に捌く。それを見たクールキャットは蹴りによる攻撃を続けながらその合間に弾丸を放つ。
「──!?」
シャドウは歯を食いしばりながら、肩を狙った弾丸を小さな鎌で防ぐ。この展開は彼の予想外だった。というのもクールキャットはその能力から遠距離主体のヒーローだと思っていたからだ。
だが彼女はいつでも、そして360°どこからでも展開できる弾丸と蹴りを組み合わせた独自の格闘術を用いる。実際、彼女の強みはそこにある。前方の人間に対処しながら後方の弾丸を避けるなどそうそうできることではない。赤崎と出会う前の殺しを躊躇わない彼女ならその脅威はなおさらだ。
シャドウはその場で円を描くように鎌を振りかぶると、バックステップで距離を取った。
「っ…」
脇腹に鈍い痛みを感じるシャドウ。どうやらすべての弾は避けられなかったようだ。
↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
今日はここまで。多分明日もやります。
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/15(土) 22:53:24.02 ID:XIL7mpGdO
お
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/15(土) 23:29:55.02 ID:WbWbgkWSo
おつ
おっと
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 20:22:04.98 ID:JbeUYnZAo
後ろにひいたシャドウはその場から再び小さな鎌を3つ投げてくる。クールキャットは捻りを加えたバク宙でこちらに飛んできた全てを回避する。
視線を前に戻したとき、シャドウの姿は消えていた。その時、自分の足元に小さな影が落ちていることに気づく。シャドウが真上に放り投げた4つ目の鎌のものだ。
瞬時に危険を察したクールキャットはその影から離れようとする。しかし、影の中から飛び上がって現れたシャドウが振るった鎌が左肩に命中する。
「っ…」
思ったよりも深く入ったようで、押さえた右手に血がこびりついている。
(訂正。影が繋がっている必要はないみたい)
↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 20:22:29.16 ID:FDrDTvtLo
お
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 20:43:22.90 ID:JbeUYnZAo
シャドウは続けて痛手を与えようと動き出す。しかしクールキャットもそうはさせまいと、大量の弾丸を展開するとそれを放った。
(あいつの力量を考慮すれば、致命傷には至らないはず)
彼女の予想通り、シャドウは鎌を回転させて弾を防ぐ。しかし全てを捌けているようではなく、ところどころ手足から出血している。
(次で決める…)
↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 20:44:18.34 ID:DLosWoqso
ん
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 20:52:16.07 ID:JbeUYnZAo
シャドウは弾の嵐を防ぎながら後退すると、コンテナの影の中に沈んで消えた。
(いったい何のつもり…?)
クールキャットは改めて周囲を見渡す。自分の周りに影はない。シャドウが何かを投げていたわけでもない。
先程までとは打って変わって、静寂だけがその場を支配している。
↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 20:53:59.04 ID:+Cb6QGwG0
よい
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 20:54:00.90 ID:DLosWoqso
あ
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 21:05:33.55 ID:JbeUYnZAo
シャドウはまだ現れない。クールキャットは周囲を観察するが、異常はない。
一方遠くから戦いを眺めていた会計士と輸送責任者は、シャドウが仕事を放棄したのではないかと気が気でない。
↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 21:05:50.28 ID:FDrDTvtLo
お
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 22:44:10.32 ID:JbeUYnZAo
穏やかな波風の音だけが埠頭に響く。だがその時、流れてきた雲が太陽を覆い隠した。
シャドウはずっとこの時を待っていた。ようやく訪れた好機を逃すまいと、クールキャットの近くに現れようとしたその時。
「─くっ!?」
埠頭の夜間作業用に置いてあったワークライトが起動し、影を打ち消した。シャドウが潜っている間に、クールキャットが目をつけていたのだ。シャドウは強制的に影の中から引きずり出され、無防備な姿でクールキャットの目の前に現れた。
そこからの流れは早かった。クールキャットの足払いによってシャドウは体勢を崩す。鎌の持ち手でバランスを取ろうとするがそれも崩されてしまい、シャドウは仰向けに倒れ込んだ。
倒れながらもシャドウは黒衣の内側から小さな鎌を取り出そうとするが、クールキャットは彼の右足を踏みつけてそれを防ぐ。そのまま流れるように彼の鼻っ柱に右ストレートが叩き込まれる。
「っ!?」
声にならないうめき声を上げながらシャドウは意識を失った。
ヴィランを無力化したのを確認すると、クールキャットは会計士の方へ向かおうとする。
「しまった!」
だが彼と輸送責任者は一足先に船に乗り込んでその場から離れていた。ここからでは操舵手を狙うこともできない。会計士の男は船上で冷や汗を拭いながら、勝ち誇ったように笑う。
すると頭上からプロペラのけたたましい回転音が鳴り響いた。数台のヘリコプターと巡視艇が海上に現れる。
「今すぐ止まってくれるかな?」
扉を開け放ったヘリコプターの後部座席にはジュエルブレイブが居た。彼はクールキャットの方を見ると、シャカのハンドサインを送ってきた。
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 22:58:39.42 ID:JbeUYnZAo
───────
「それで、本当に会計士の身柄はこちらで預かっていいの?」
「もちろんだよ!」
クールキャットの疑問にジュエルブレイブは笑顔で答えた。もっとも彼の背後に控えている国連の補佐官は鬼のような形相をしていたが。
それもそのはず、国連は独自の情報網によってダミー会社が何か特別なものを運んでいる事を掴んでいたからだ。これを国連のヒーローが押さえれば、アメリカ1位のヒーロー輩出も夢ではない。
だから何としても会計士を世界戦隊連盟には渡したくない。しかし同時に悩みもあった。それはジュエルブレイブである。彼はアメリカでも高い人気を誇っており、仮に国連側からアメリカ1位ヒーローを出すとしたら、彼が一番手堅い。だが一方で、既にわかっているように彼自身はそう言った事柄には興味がない。もっともそんな性格も人気の理由でもあるのだが。
もちろんジュエルブレイブを無視して国連が独自に確保してもいいが、そうすればヒーローの支援者達からの突き上げは避けられない。というのも国連はヒーローを監督しているとはいえ、あくまでそれは彼らの行動を支援するため、という名目だからである。にも関わらずヒーローの意思を無視するような行動を取れば非難は避けられない。
そんな訳で補佐官は上司の人選ミスを恨んでいた。加えてこのあと自分が行わなければならないであろう報告会のことを考えると、胃が酷く痛むのは当然のことだった。
「俺は埠頭の騒ぎを確認しに来ただけだからね。それに君の手柄を奪うのも気分が悪いし」
「まあ、そちらに文句がないならいいけど」
クールキャットはそのままその場を去ろうと思ったが、ふと思いついた事をジュエルブレイブに尋ねることにした。
「あなたは、自分の中にうずまく“何か”と向き合ったことはある?」
「何か?それって何さ?」
ジュエルブレイブの疑問はもっともだったが、クールキャットにはそれを言い当てる言葉が見つからなかった。
「…わからない」
それを聞いてジュエルブレイブは少し考え込んだかと思うと、両手を頭の後ろに回して笑いかけた。
「いやー、俺ってポジティブ人間だからそんな経験はないな」
「…そう」
「でも、そういう事ならケイレブと話すといいかもね。彼はまさにそんな経験をした男だからね」
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 23:00:38.20 ID:JbeUYnZAo
そう言うとジュエルブレイブは、船舶を調査していた集団の中から一人を呼び寄せた。
そうしてクールキャットの前までやってきたのはヘルメットと防弾チョッキを身に着けた青年だった。彼はクールキャットを見るなり、目を輝かせた。
「は、はじめまして、クールキャットさん!僕は特別支援局のケイレブと申します!」
特別支援局──Special Support Agency──は国連の下部組織の1つである。主にヒーロー達の活動の支援や調整を行っている。今回のように武装した上で取締に同行する事もある。
「どうも」
「実はずっとお会いしたいと思っていたんです!」
頬を紅潮させながらケイレブは嬉しそうに話す。
「会いたかった?」
「はい!何せクールキャットさんは僕の人生を変えてくれた人ですから!」
興奮した様子でケイレブは話を続ける。
「実は、僕もZATO52で捕まっていたんですよ!」
それを聞いてクールキャットの表情が僅かに揺らぐ。
「当時、僕は逃げることはおろか生きることすらも諦めていました。でも、あなたが脱走したって聞いて衝撃を受けたんです!あんな状況下にあってまだ希望を捨てない、強い人が居たんだって!」
彼の言葉はクールキャットにとって驚きだった。なんせ、当時の彼女はただ目の前に転がり出たチャンスを必死につかもうとしただけだったからだ。
「それで僕も勇気をもらって、何とか逃げ出したんですよ!それでその後どうしようかと考えた時に、僕もあなたみたいに誰かに希望を与えられるヒーローになろうと思ったんです!ただ僕にはパワーがなかったので…」
ケイレブは少し俯いて口ごもったが、すぐに顔を上げて続きを話し始めた。
「それならせめてヒーローの手助けをしようとSSAに入局したんです!まあ、クールキャットさんが世界戦隊連盟に所属してるって聞いたときは少しショックでしたが…」
熱のこもった長話に若干圧倒されながらも、クールキャットは気になった事を尋ねようとする。
「私のせいで、ZATO52の体制は厳しくなったはずだけどそのことは恨んでないの?」
「まあ、それは事実ですけど、でも僕にとってあなたの行動は勇気をくれたんです。そりゃ、恨む人もいるかもしれませんが…。結局は捉え方次第だと思います」
あっけからんとした調子でケイレブは答えた。
「捉え方次第…」
するとケイレブがおずおずと右手を差し出した。
「あのー、握手していただいてもいいですか?」
「ええ」
赤崎との事も、捉え方次第なのだろうか。そんな思いが頭をよぎりながら、クールキャットは握手に応じたのだった。
第5話 終
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 23:01:21.96 ID:JbeUYnZAo
では第6話のキーワードを募集します。↓3まで
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:04:41.86 ID:Jsr0fdSXo
最高権力
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:04:51.44 ID:bUUJb4+DO
愛と友情
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:05:19.98 ID:+Cb6QGwG0
破滅
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:05:40.73 ID:WIF5qy6i0
孤児
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:05:42.18 ID:QBFobOFeO
解散
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 23:09:18.81 ID:JbeUYnZAo
ではちょっとした試みですが、こういうエピソードあるいは絡みが見たいというものを募集してみます。例えば国連の内幕が見てみたいとかそんな感じです。幕間的な感じにするか、本編に組み込むかはまだ分かりません。
テストなので少なめに↓2まで
今日はここまで。
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:13:04.04 ID:WIF5qy6i0
前日談みたいな感じで赤崎と詩音の過去のヒーロー活動について
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:20:21.62 ID:YK+cPy3bO
各組織の黒幕たちのフフフな暗躍劇
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:20:41.68 ID:WIF5qy6i0
文章ちょっと抜けてた
可能なら
>>371
は赤崎と詩音の出会いや本編前の過去のヒーロー活動についてに訂正できますか?
更新乙
374 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/16(日) 23:22:14.97 ID:YK+cPy3bO
乙
375 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/17(月) 00:14:03.86 ID:K/QzLom1o
おつー
376 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/22(土) 23:11:30.65 ID:I2FAhYGmo
暗躍劇は多分6話で描きます。
5.5話 「私のヒーロー」
これは本編より前の時期、赤崎がレッドマーゾとしての活動を始めたばかりの、そして彼とスカイウイングの出会いを描いた話である。
東京の某区、スカイウイングは夕焼けをバックに住宅街の上を飛んでいた。日課である放課後のパトロールである。だが彼女はある課題を抱えていた。
「あっ、お婆さんが困ってる!で、でも、私が手伝いに行っても余計なお世話じゃないかな…」
そうこう悩んでいるうちに他の一般人がおばあさんの手伝いを始めた。
「こ、今度は迷子の子供が泣いてる!どうしよう…。あっ──」
もたもたしている間に母親が子供を見つけたようだ。
そう、彼女の課題とはその内気な性格のことだ。ヒーローとして人々を助けたいという意識はあっても、内気な性格が災いして率先して声をかけたり手伝ったりすることができないのだ。
(結局今日もこうやって無駄に1日を過ごすのかなぁ…。ほんと、駄目なヒーローだな、わたし)
俯きながら空を飛んでいるスカイウイングだったが、4人の青年が目に入った。何か話し合っているようだが、距離が遠いこともあって途切れ途切れにしか聞こえない。
「今日も──って言われたぜ」
「相変わらずだな。大体───能力養成学校だって───活躍できるはずだ!」
「だな。ところで──するのにいい場所を見つけた。ここから西の倉庫だ」
「ああ、あの特訓に───だな。そしたら────いつか俺達も認められるさ」
すると青年の1人がスカイウイングに気づいて空を見上げた。それに続いて残りの3人も顔を上げる。空に漂うヒーローの姿を見て、4人の青年はその場を立ち去った。
「あっ、行っちゃった…。随分落ち込んだ顔をしてたから困ってるのかと思ったんだけど…」
結局、今回も声をかけることはできなかった。
(毎日毎日おんなじことして…。ただメモが増えていくばかりだよ…)
彼女は行動できなかった自分を戒めるために、自らの行動と見聞きしたものを丁寧にノートにまとめているのである。ここ1ヶ月で行動できたのは15件の内、2件だけだ。大半が迷子猫の捜索だか、お年寄りが困ってただかで大したものではないのだが、スカイウイングにとっては何よりも行動できない自分が歯がゆかった。
今日のところは大人しく家に帰ろう、そう思ってスカイウイングが帰路につこうとしたその時、1人のヒーローが目に入った。
「あれは確か──」
朝にやっている戦隊もののテレビに出てくるような、赤いコスチュームを身に着けたヒーロー、レッドマーゾだ。
(そう言えば最近よく見かけるなぁ。私なんかと違って、あの人はいつも誰かを助けてる…)
その時スカイウイングは妙案──少なくとも彼女自身はそう考えた──を思いついた。彼の1日を追えば、自分に足りない積極性に必要なものが分かるかもしれない、と。
だが今日はもう遅い、明日にしよう。そう思い至ったスカイウイングは自宅への帰路についたのだった。
377 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/22(土) 23:14:19.47 ID:I2FAhYGmo
そして翌日、レッドマーゾはいつものように街の見回りを行っていた。転んだけが人を自宅まで送ったり、壊れたバイクを修理屋まで運んだり、落とし物を探したりと彼の1日は忙しい。
「いやー、本当にありがとうね」
「これもヒーローの務めさ!」
お礼を言いながら去りゆく老人に、レッドマーゾは笑いかけながら手を振る。
「さて…」
レッドマーゾはふと空を見上げた。視界の端に映った黒い影が慌てて電柱の後ろに隠れる。
「何が目的か知らないが、いつまで付け回すつもりだ?」
すると電柱の陰から女性が顔を出した。
「なあ!何か話したいことがあるなら降りてきてくれないか?」
女性はしばらくレッドマーゾをじっと見つめていたがやがて赤い翼を広げると、正面にゆっくりと降りてきた。
「は、は、はじめまして。わた、わたしはスカイウイング、です」
手を後ろで組んで、顔を背けてもじもじしながら女性は答えた。
「俺はレッドマーゾだ。よろしくな」
スカイウイングは躊躇いがちに、レッドマーゾが差し出した手を握った。
「それで、何のようだ?」
「えと、何ていうか、コツ?を聞きたくて…」
「コツ?」
「は、はい。どうしたら…そんなに自信が持てるのかなって」
スカイウイングは伏し目がちにレッドマーゾを見る。しかし彼の表情はマスクのせいで読み取れない。
「自信、か。うーん、自信とは少し違うけど、俺を突き動かしているのはヒーローへの憧れと誇り、かな」
「憧れと誇り?」
「ああ!」
レッドマーゾは拳を天高く掲げながら話を続ける。
「ずっと幼い頃からヒーローになるのが夢だった。今、ようやくスタートラインに立てた。そしてヒーローを名乗る以上、それを汚しちゃならいない!つまり、困ってる人は助ける、だ!」
「な、なるほど…」
スカイウイングはレッドマーゾの熱意に若干押されて後ずさる。とはいえ彼の言っていることは理解できる。彼女自身、ヒーローになったのは困った人を助けたいからだ。
(根っこはきっとおんなじなんだ。…なのにわたしは──)
378 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/22(土) 23:15:00.48 ID:I2FAhYGmo
「あんたら、ヒーローか?」
スカイウイングの思考は突然聞こえた声によって中断される。声の主はフードを被った青年だ。
「ああ。何か困りごとか?」
「けっ、何がヒーローだ。何であんたらは尊敬されて、俺達は…」
レッドマーゾに答えることなく青年はブツブツと呟く。
「おい?」
レッドマーゾの言葉を無視して、男は片手をスカイウイングにかざす。次の瞬間、スカイウイングは空を見上げていた。
「へ?」
どうやらコケたらしい。それを見た青年はポケットからナイフを取り出すとレッドマーゾに襲いかかる。
「な、なんだ!?」
「死ねっ!特権階級の偽善者共が!!」
そう喚き散らしながらナイフを振り回す青年をレッドマーゾは何とか取り押さえようとする。だがかなり錯乱しており、とてもじゃないが手加減はできない。そう考えたレッドマーゾは諦らめて彼を気絶させることにした。
「ガハッ…!」
正拳を喰らった青年はナイフを落としながら倒れ込む。
「ふぅ…。大丈夫か?」
レッドマーゾが地面に倒れ込むスカイウイングに手を差し伸べた。
「──っ!」
だが彼女はその手を払うとその場から走って立ち去った。恐怖からではない、自分の不甲斐なさからだ。転んだあと、青年がナイフを振り回してる間、立とうと思えば立てたはずだ。
にもかかわらず自分は立ち上がらなかった。いや、立ち上がれなかった。挙げ句の果てにヒーローのくせして他のヒーローに守られている。そんな自分が情けなかった。
(わたしなんてっ…!!わたしなんてっ!!)
自分が飛べることも忘れて、ただひたすらに走る。流れる涙も鼻水も無視しながらただ走る、情けない自分を置き去りにするかのように。
一方、レッドマーゾは事態に困惑していた。突然襲われたかと思えば、スカイウイングは立ち去ってしまった。
「ん、これは?」
彼は近くに手帳が落ちているのを見つけた。
「中を見るのは…」
悪いと思いながらも持ち主を特定するためにページを開く。おそらくスカイウイングのものではないかと推測してはいたが。
「ふむ…」
中にはびっしりとメモが書いてある。
「やっぱり彼女のか。…とりあえずコイツを警察に運んで、それから彼女に届けよう。…でもどこに行けば会えるんだ?」
379 :
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[saga]:2022/10/22(土) 23:16:48.70 ID:I2FAhYGmo
レッドマーゾはそれから数日間スカイウイングを探し続けたが、ついに見つけることはできなかった。というのもあの一件以来、ヒーローとしての自信をすっかり失った彼女は自宅にひきこもっていたからだ。
「はぁ〜」
布団の中に引き篭もって、勇気を出すきっかけにとヒーローの話題を見ては自分に嫌気が差すという負のスパイラルに陥っていた。
その時ふと、街がいつもより騒がしいことに気がついた。
「何だか今日はやけにサイレンがなってるなぁ」
丸まった布団から頭だけを出して呟く。すると携帯の通知が鳴った。
「あれ、国連からの連絡だ。えーと…ゆ、誘拐!?」
能力養成学校──パワーを持った人物の全員がヒーローかヴィランになる訳ではない。能力を持ちながらも普通に働く人々、あるいはヒーローになれるほどの能力ではないがその扱い方を学び、制御したいと望む人のための学校だ──の生徒が何者かに誘拐されたらしい。
「捜索にあたっていたレッドマーゾの行方もわからず…!」
報せを聞いて、ようやく詩音は布団から這い出て立ち上がった。もっとも彼女は無我夢中だったので、自分が遂に1歩を踏み出したことには気づいていなかったが。
「誘拐…そうだ!いつもパトロールしてた時に、危険そうな場所や人通りの少ない場所はメモしてたんだった!」
慌てて手帳を探し出す。だが机の上を探しても、収納箱をひっくり返しても、ポケットを探っても手帳は見つからない。
「な、なくした…!?」
再び、自分なんて、という言葉が頭に浮かびそうになる。だが彼女はそれを振り払った。
「落ち着け…。あのメモは何度も何度も読み返した。だから…うん!憶えてる!!」
スカイウイングは窓を開け放つと、躊躇うことなく飛び立った。そうして子供とレッドマーゾを探しに、街を飛び回る。
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/22(土) 23:19:02.28 ID:I2FAhYGmo
散々探し回って、いよいよ最後の候補である倉庫があるあたりまでやってきた。
「あれ、何か聞こえる…」
耳を澄ましてみると誰かのうめき声と怒声、そして鈍い音が聞こえる。屋根の上にそっと降り立つと、天窓から様子を窺う。
「──っ!」
中ではレッドマーゾが2人の青年にタコ殴りにされていた。彼が反撃しないのは、残る1人が子供にナイフを突きつけているからだ。
「レッドマーゾさん…」
スカイウイングは天窓から視線を外すと、自分の両手を見つめる。
「…やる。助けないと!」
力を込めて両手を握り、そして手のひらを開いて力を解放する。手はまだ震えている。だが彼女は顔を上げて、天窓に近づく。
翼を硬質化させると叩き割るようにして中に飛び込む。中にいた全ての人物が彼女を見る。
「クソッ!」
子供を人質に取った男が動く前に羽根を飛ばして無力化、流れるように残りの2人にも羽根を飛ばす。
泣くのを我慢している子供を確保すると、レッドマーゾのそばに近寄る。
「だ、大丈夫ですか?」
「─っ!あ、ああ」
脇腹をさすりながら返事をすると、レッドマーゾは手を伸ばした。
「悪いけど起こしてくれないか?」
「は、はい!」
手を掴んで引っ張り上げると、レッドマーゾは膝に手をつきながら息を吸う。
「はは、“今度は”掴んでくれたな?」
「あ……は、はい」
スカイウイングが笑いかけると、レッドマーゾはヘルメットを脱いだ。何だか突然気恥ずかしくなったスカイウイングは目線を反らす。
381 :
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[saga]:2022/10/22(土) 23:21:21.99 ID:I2FAhYGmo
「え、えと、警察にはもう通報しました」
「わかった、ありがとう」
レッドマーゾは子供のそばによってしゃがみこむと頭を撫でた。
「よく頑張ったな」
「う、うん!」
子供に笑いかけると、レッドマーゾは立ち上がって誘拐犯のそばによった。
「どうして、こんな事を?」
地面に倒れ込みながら腹を押さえた男がレッドマーゾを睨みつける。
「あんたらにはわからねえよ…。俺達ミスフィットの境遇はな」
ミスフィット。これは本来の意味では、パワーを持っているにもかかわらずそれを活かす場所を見つけられない人々を指す言葉だ。しかし現在では中途半端なパワーを持った人々を指す差別用語となっている。
彼らはヒーローに、そしてヴィランになれるほどの力もない。しかし一般人にしてみれば、仮に犯罪に手を染めたならば普通の犯罪者よりも遥かにたちが悪い相手となる。そういった恐怖から、中途半端な能力を持った人物、特に特定の職についていない人物に用いられる。
「全くふざけた話だ。そこのガキどもは…俺らと大して変わんねえ癖に、親が金持ちだから能力養成学校に通える。んで、職を得て、みんなに尊敬される」
痛みで顔を苦痛に歪ませながら青年は語る。
「一方俺らはどうだ?親がミスフィットのせいで金がねえ。だから学校にも通えねえ。んで、なんだ?ミスフィットと呼ばれバカにされる。……本質的にはそこのガキと同じなのによぉ!!」
青年は拳を地面に叩きつける。
「だからガキを誘拐して、金を得て、俺は無理でも弟たちは学校に通えるようにしようとしたんだよ!」
「そう…だったのか」
「ま、てめぇら正義ぶったヒーローに阻止されたがな」
彼らの話を聞いて2人のヒーローの顔色が暗くなる。
「クソッ…。ようやく翼女の監視がなくなったから、実行したってのにこのザマなんてな…」
すると落ち着きを取り戻した子供がスカイウイングの袖を引っ張った。
「お姉さん、助けてくれてありがとう!それに、いつも見守ってくれて!」
「え?」
「いつもお空から僕達のこと、見ててくれてるでしょ?だからいつも安心なんだ!」
子供は無垢な笑顔を見せる。心の底から彼女を信頼しているようだ。
「え、えと…」
スカイウィングが動揺していると、警察が倉庫に到着した。彼らは誘拐犯と子供を外へと連れ出して行った。
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/22(土) 23:24:14.22 ID:I2FAhYGmo
スカイウイングはその様子を見ながら呆然としていた。するとレッドマーゾがそばによってきて、肩に手を置いた。
「スカイウイング、君は自信が無いって言ってたよな?」
「は、はい」
「でも今回のことで分かったじゃないか。君は立派なヒーローだ。いつも空から人々に安心を与えて、犯罪を抑止していた。そして、真っ先に俺と子供を助け出した。これでヒーローじゃないって言うなら、何なんだ?」
「私が…ヒーロー…」
子供から向けられた笑顔が頭に思い浮かぶ。
レッドマーゾは笑いかけながら、ゆっくりとその場に座り込む。それに釣られてスカイウィングも翼をそっと降りたたんで座る。
「良かったな、スカイウィング!」
「はい…」
彼女は隣に座って屈託なく笑うヒーローの顔を見る。
「…詩音です」
「え?」
「私の名前、詩音って言います」
「……そうか!俺は赤崎灯だ、よろしくな!」
改めて差し出された手を、スカイウイングは握った。
「はい。あか…さき君」
その日からずっと、彼女にとってのヒーローは赤崎灯、その人だ。
5.5話 終
今日はこれだけで終わりです。
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/22(土) 23:28:32.72 ID:ubaiD0DIo
乙
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/22(土) 23:43:37.69 ID:tOqpmMtN0
乙です
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/23(日) 00:49:01.72 ID:xwzF/VGDO
乙
主人公のカチューシャいるから恋愛面では厳しそうだけど詩音頑張れ
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/15(火) 21:28:48.34 ID:Wm2kcwQSo
間が空きすぎて人いるかわからないけど投下。
第6話 「会合」
窓もない狭い取調室の中、アイスエイジは両足を机の上にのせながら両腕を組んでいる。その傲慢な態度、シルクハットのつばから見え隠れする鋭い眼差しは、拘束されている人物のものとは思えない。
「なら、本当にこの製薬会社については何も知らないんだな?」
抑揚をつけず淡々と話すシルバーナイトに萎縮することもなく、アイスエイジは笑い飛ばした。
「どうだったかなぁ?最近、物覚えが悪くてね」
「…ふん」
アイスエイジの軽薄な態度に呆れながら、シルバーナイトは自分の後ろに控えていたクールキャットの所へ移動する。
「どうやら話すつもりはないようだ」
「みたいね。博士の方も空振りだったし」
二人はハワイで得た情報をもとに、アイスエイジと博士に尋問を行っているところだった。
得られた肝心の情報というのはある製薬会社が、例の配送会社に血液サンプルの輸送を依頼した、ということだった。
しかし肝心の血液サンプルは既に数日前に輸送済みであり、今からそれを差し押さえるのは法的にも難しいとのことだ。配送会社にしても護衛にヴィランを雇っていたことは、会計士および輸送責任者の独断ということにされ、本格的な調査を行うのも厳しい。
マーケティング部が秘密裏に調査を行っているが、しばらくは時間がかかりそうだ。
「ヘル・オーガを呼べば?前回は名前を出しただけで話したんでしょ」
「こっちに来るには時間がかかる。それに──」
するとシルバーナイトの携帯が鳴った。
「その電話、出たほうがいいと思うけどなぁ」
ニヤつきながら指を指すアイスエイジを一瞥すると、シルバーナイトは電話に出た。
「ああ、そうだ。…なに?」
シルバーナイトの眉がピクリと動く。
「本気で言っているのか?……ああ。ひとまずそちらに連れて行く。だが決めるのは話をよく聞いてからだ。ああ」
ため息をつきながら、シルバーナイトは携帯をポケットにしまう。クールキャットは話の内容を聞こうとしたが、アイスエイジを見る、彼の刃物のように冷たい眼差しがそれを躊躇わせた。
「だから言ったろ?」
口の端を上げながらアイスエイジが楽しそうに呟く。そんな彼を無視して、シルバーナイトは口を開いた。
「用事ができた、今からニューヨークの国連本部まで行く」
「そう。なら私はここで──」
「いや。君も一緒だ、それとアイスエイジと博士もな」
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/15(火) 21:30:46.51 ID:Wm2kcwQSo
──────
眼下に広がるは摩天楼。人類の進歩を体現するように上へ上へと伸びるビル群。それらの頂上には黒い影が落ちている。
世界戦隊連盟の空中機動戦艦のブリッジに居たクールキャットはぼんやりと外を眺ていた。
「どうかしましたか?」
声が聞こえた方を肩越しに見ると、スカイウィングが両手を後ろに組んで立っていた。
「……なにも」
彼女のつっけんどんな態度にもいよいよ慣れてきたスカイウィングは横まで来ると、一緒にニューヨークを見下ろした。
「たまに国連本部に来たときはいつも下から戦艦を眺める側だったんですけど、こうやって乗ってみるとすごい良い眺めですね」
ガラスのギリギリまで近づいて、手を双眼鏡のようにしながら外を見回す。
「でもビックリです。まさかこうして国連と世界戦隊連盟の会合に私達も参加するなんて」
そう呟いた彼女の肩は小さく震えていた。彼女の性格だ、この後ヒーロー界の大物と会うということで緊張しているのだろう。
「そうね。けど、私達の出る幕は恐らくない」
「どういうことですか?」
目を瞬かせながらスカイウィングが問いかける。
「今回の会合、シルバーナイトによればインナーサークルの連中も承認済みらしい」
インナーサークル──彼らは世界戦隊連盟の運営陣を支援する各界の有力者、つまり影の支配者だ。
「インナーサークルの手回しに加えて、国連の中央理事会じきじきの要請。ヒーロー業界の運営における最高権力者たちが決めたことに、今更シルバーナイトや私達の意見が通るとは思えない」
「そう言われると…そうですね。私も噂で今回のことは理事長のリエル・ロスチャイルドさんが提案したとかなんとか」
「リエル・ロスチャイルド…」
国連の中央理事会の理事長だ。彼女は大財閥ロスチャイルド家の首領でもあり、世界戦隊連盟に多額の出資をしているとの噂もある。それが事実なら今回の急な流れにも納得がいく。
「でも理事会はどうしてアイスエイジと博士の引き渡しを要請したんでしょうか?」
「私は知らないけど。国連に所属するあなたにも連絡はなかったの?」
「私は末端のぺーぺーヒーローなので……」
恥ずかしげに頭をポリポリとかきながら答える。
「けどそれならシルバーナイトさんがわざわざ私達も連れてきたのはどうしてでしょうか?」
「……」
その点についてはクールキャットも引っかかっていた。彼らを捕まえたとはいえたった3人の、ランキングトップ10に入っているわけでもないヒーローを連れていくことに意味があるとは思えない。だが、彼は意味のないことはしない。
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/15(火) 21:33:17.32 ID:Wm2kcwQSo
「ところで…」
押し黙ってしまったクールキャットを見て、話題を変えようとスカイウィングが口を開いた。
「赤崎くんと仲直りはしないんですか?」
「仲直り?」
虚を突かれたクールキャットの声が若干うわずる。
「あれ、えと、喧嘩したんじゃないんですか?」
「違う。ただ…ちょっとした行き違いがあっただけ」
それを聞いたスカイウィングは胸をなでおろす。
「なら良かったです。二人とも私の好きな人たちですから」
「…好き?」
「はい!私、クールキャットさんのこと、頼れる年上のお姉さんみたいに思ってて──」
するとクールキャットの少し驚いた表情を見たスカイウィングが目を伏せた。
「ご、ごめんなさい。私が一方的にそんな風な友達になれたらって思ってるだけで…」
「いえ。……別に嫌というわけではない。けど、レッドマーゾも同じように友人として好きということ?私はてっきり──」
すると突然スカイウィングがクールキャットの口を両手で押さえた。
「わ、わー!な、何のことですかー?」
クールキャットは顔を動かすことなく、赤面しているスカイウィングに目線を向ける。すると彼女はがっくりと項垂れると小さく呟いた。
「……はい、男の子として好きです……」
スカイウィングは勢い良く顔を上げると、クールキャットを真正面から見据えた。
「そ、そう言うクールキャットさんはどうなんですか?」
彼女はすぐに答えようとして口を開いたが言葉に詰まる。
「…分からない。友人とは少し違うし、好きというわけでもないと思う」
「じゃ、じゃあ何なんでしょう?」
「…今は答えられない。けど、いつかは答えを見つけられると思う」
自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
─────
スカイウィングとしばらく話した後、会談までまだ少し時間があったのでクールキャットは艦内を見回ることにした。そうしていると、ある人物と顔を合わせた。
↓1
出会ったのは誰?登場済みのキャラ、もしくは既出のキャラ案からお願いします。ただスカイウィングはさっき話したので無しで。
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/15(火) 21:37:54.08 ID:1Lssai5/o
艦内に誰がいる設定なのか分からんが
>>57
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/15(火) 22:32:04.21 ID:Wm2kcwQSo
不破くんのヒーローネームはこっちで適当に決めました。ちなみに所属は世界戦隊連盟ということにしました。
クールキャットはアイスエイジ達の様子でも確認しようと監房エリアに向かった。するとアイスエイジ達の監房の前に見知った顔が一人いた。
黒髪で仏頂面、刀を手にした若者だ。右眉のあたりにある傷痕のせいで18という年齢の割に威圧的な印象を与える。
「シャドウソード、ここで何を?」
「クールキャット。見張りだ。この悪党たちが逃げないようにな」
シャドウソードのことだ、命令された訳でもないが、内から湧き出る使命感とやらに突き動かされているのだろう。
シャドウソードは見た目のせいで冷徹な人間という印象を与えがちだが、実際にはヴィランを捕まえ、人々を守る事に情熱を注ぐ熱い人間だ。
詳しい事情は知らないが、テロで父親以外の家族を失ったらしい。彼の性格はそれが影響しているのかもしれない。その後父親と共にウクライナに移り住んで、現地で出会った継母との関係も良いらしい。
「ご苦労なことで」
「万が一があってはいけないからな。それに…アンタが彼らを殺さないとも限らないだろう」
「──そう」
そんな性格をしているので、殺しを躊躇わないクールキャットのことを彼は警戒しているのである。軽蔑とまではいかないが、快くは思われていない。とはいえこんな態度は慣れたものだ。
そんな彼の仏頂面を見ていると、クールキャットはふとレッドマーゾの事を思い出した。
シャドウソードとレッドマーゾは少し似ている。例えばその情熱的な性格なんかがそうだ。けど思い返してみれば、レッドマーゾは殺しを行うクールキャットの事を否定はしなかった。
彼のように理解を示してくれるヒーローはそう多くない。そう考えると、彼は少しズレているのかもしれない。
そんなことを思いながら、クールキャットはふと気づいた。レッドマーゾに対する葛藤が和らいでいる。
(──捉え方次第…)
↓1
シャドウナイトと話したい事があればどうぞ。なしと書いていただければそのまま進みます。
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/15(火) 22:36:54.97 ID:UzyWe9DMo
なんとなく友人や恋人いるのか聞いた
392 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/15(火) 23:15:32.81 ID:Wm2kcwQSo
「ところでシャドウソード、あなた、友人や恋人はいる?」
突然の質問にシャドウソードは面食らった。といっても右眉がピクリと動いた程度だったが。
「これは…いったいどういう心境の変化だ?アンタはそういったものに興味はないと思っていたが」
「別に、なんとなく」
「なんとなく?それこそおかしいな。俺の知るアンタは“なんとなく”で動いたり話したりしないが」
「それは…」
その通りかもしれない。今までクールキャットがヒーローと会話をするのは事務的なもののみだった。他人のプライベートなどどうでもよい。
「──折り合いをつけるべき感情がある。その参考にしようと思っただけ」
シャドウソードは目を細めてクールキャットを見る。
「まあいいか。友人はいる。ヴィランを追ってブラジルに行ったとき、面白い少年と会った。ルシャっていう名前で、今でも時々連絡を取ってる。後は、キーウの柔道教室の連中とはよく話す」
「恋人は?」
「…いない」
少しの沈黙の後、シャドウソードが口を開く。
「今はヒーロー活動に専念したいからな」
そう告げた彼の言葉は、いつもより少し早口だった。
「満足か?」
「後ひとつ聞かせて」
シャドウソードは大きくため息をつくと、目線を送ってクールキャットに話すよう促した。
「あなたにとって友人はなに?」
真剣な表情で尋ねるクールキャットを見て、シャドウソードは目を瞑る。やがて目と口を開いた。
「友人は…そいつらと一緒にいると楽しくなれる相手だ、互いにな」
「楽しく……」
なら、やはりレッドマーゾは友人ではない。一緒にいて楽しいとは特段思わない。それならまだスカイウィングの方が当てはまる。彼女の姿は、性格も見た目も違うがどこか妹を思い出させるもので、共にいると微かに楽しいという気持ちが湧き出なくもない。
しかし、それならレッドマーゾの存在はいったい自分にとって何だろうか。
「おい?」
シャドウソードの呼びかけで、クールキャットはまぶたをゆっくり開けて我にかえる。
「なんでもない。参考になった」
「ならいいが。さて、俺も暇じゃないんだ。用が済んだらもう行け」
「ええ」
そう言って立ち去るクールキャットの背中をシャドウソードは見つめる。
「ったく、調子狂う態度だったな……。大体、年下に何聞いてんだよ…」
今日はここまで。
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/15(火) 23:18:22.10 ID:UzyWe9DMo
乙
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/15(火) 23:24:03.48 ID:bdbww7gxo
乙乙
ゆったり待ってるから問題ない
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/16(水) 00:28:07.18 ID:1sC+MK/Z0
乙
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/21(月) 22:09:44.77 ID:UV8ftYFFo
「通信室、ね」
そろそろ会合が始まるとのことで、クールキャットはシルバーナイトに通信室に来るように呼び出されていた。
彼女が近づくと、扉を守っていた警備員が道を空ける。薄暗い室内にはシルバーナイト、炎帝、ブラックがいた。
炎帝、ブラックどちらとも面識はないが二人のことはよく知っている。どちらも世界戦隊連盟に7人しかいない星5ヒーロの一員だ。
「来たか」
「この二人は?」
シルバーナイトは炎帝とブラックに目をやると、ため息まじりに呟く。
「勝手についてきた」
「勝手に?」
「ああ。この会合、できる限り関係者は減らしたかったが…この二人は諭すだけ無駄だろうな」
どうやらシルバーナイトの秘密主義はこの会合においても鳴りを潜めてはいないようだ。しかし何を警戒しているのだろうか?
すると真紅のドレスを纏った炎帝がクールキャットに詰め寄る。身長がかなり高い上に、ハイヒールを履いているのでクールキャットを見下ろす形になっている。
「こんなちんまいのが、アイスエイジと博士を捕らえたって?マジなのか?」
「ま、シルバーナイトさんが目を掛けてるだけはあるってことですね」
気づく間もなく背後に回ったブラックがクールキャットの肩に手を置く。19歳とは思えないほど黒スーツの似合う彼は、クールキャットの目を見ると微笑した。
「それで、なぜここに?」
「僕はただの野次馬です」
ブラックは笑顔を崩さないまま炎帝の横に移動すると、彼女を指差した。
「で、炎帝さんは──」
彼女はニヤリと笑うと、胸の前で右手を固く握った。
「国連の野郎に売られた喧嘩は買わないとな!」
真顔でふたりを見るクールキャットとは異なり、シルバーナイトの表情はどこかいつもよりぎこちなかった。
「今、少し話しただけでも分かっただろう?」
「ええ」
背後から炎帝とブラックの騒ぐ声が聞こえるが、無視して話を進める。
「ところでレッドマーゾとスカイウィングは?」
「彼らは国連所属だからな。ついてきてもらったが、会合には参加しない」
「ならどうしてふたりを?」
クールキャットの疑問に答えることなくしばらく黙ったかと思うと、シルバーナイトは目線を部屋の中央に向けた。
「……そろそろ会合が始まる」
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/21(月) 22:11:57.91 ID:UV8ftYFFo
すると薄暗い部屋が青白い光で満たされた。部屋の中央には国連の中央理事会の面々、そして理事長のリエル・ロスチャイルドがいた。
「ごきげんよう、みなさん」
リエルはただでさえ糸のように細い目を更に細めて微笑みながら礼をした。顔を上げて、後ろで一本にまとめた艶やなや髪を肩に垂らすと、続けて口を開く。
「世界戦隊連盟の星5ヒーローに3人も参加していただいて光栄です」
「そっちは理事会のみか…。ヒーローはいいのか?絶対皇女はともかく、てっきりジュエルブレイブあたりが来ると思ったが」
「それについては──」
「彼らなど必要ありません」
とある理事の言葉を、強い口調でリエルが遮る。遮られた理事は不満と苛立ちを思わせる表情で、リエルを横目に見ていた。
「そもそも今回の会合には、あなた達も含めてヒーローなど不要なのです。既に決まったことなのですから」
その言葉を聞いて、炎帝とブラックが笑みを浮かべる。もっとも炎帝は挑発的な、一方ブラックは心底楽しそうな笑み、という違いはあったが。
「決まっているからと言って、話を聞かない理由にはならない」
冷静なシルバーナイトに続いて、炎帝が輝くブロンドの髪を揺らしながら口を開く。
「そうだ!なんならそっちに行って無理に話を聞かせてもイイんだぜ?」
「そんな事をすればインナーサークルの方々が黙っていないでしょう。除籍処分が下されますよ?」
余裕綽々、笑みを崩すことなくリエルが答える。
「ハッ、上等だ!アタイは別にアイツらに認められたくてヒーローやってるわけじゃないんでね!」
鼻息荒くまくし立てる炎帝をシルバーナイトが片手で制止する。
「炎帝、ここは抑えろ」
「僕も、シルバーナイトさんの言う事に従ったほうがいいと思いますよ」
炎帝は二人を交互に見ると大人しく下がった。
「それで、アイスエイジと博士を連行する理由はお聞かせいただけるのかな?」
「勿論です。彼らは国連の機密情報を握っている可能性があります。それ故、彼らは私たちで拘束させていただきます」
「機密情報……?」
シルバーナイトは黙ってしまうと、考え込み始めた。
「ようはそっちの落ち度だろ?なんでアタイたちが──」
「まあまあ」
ブラックが炎帝の口を押さえる。彼女は手を無理に引き剥がそうとするが、ブラックは意にも介していないようだ。
クールキャットが周囲の様子を眺めていると、ふとリエルと目があった。
「クールキャットさん、あなたはずっと黙っていますが何も言いたいことはないのですか?」
相変わらず笑顔のままリエルが問いかけてくる。
↓1
リエルに何か聞きたいことor言いたいこと
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/21(月) 23:06:10.10 ID:cRYttcgro
アイスエイジと博士の処遇について
399 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/21(月) 23:13:35.88 ID:olprkfnCo
なぜこんな秘匿の会合に自分たち末端も呼んだのか
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/21(月) 23:36:52.12 ID:WZQfLHNEo
ちょっとだけですが今日はここまで。
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/21(月) 23:45:20.21 ID:uxvcFX73o
おつ
402 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/21(月) 23:48:07.80 ID:olprkfnCo
乙乙
続き待ってる
403 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 19:47:00.56 ID:RHGLFZLGo
「二人の処遇はどうするつもり?」
クールキャットの言葉を聞いたリエルは軽く首を傾げた。
「そんなこと聞いてどうなさるおつもりですか?」
「理由が必要?」
「──いえ」
リエルがクールキャットを凝視する。彼女の微かに見える瞳はどこか虚ろで、自分ではない誰かを見ているかのようだった。
「では教えて差し上げましょう。まずは両名から“じっくり”とお話を聞かせていただきます。その後は彼ら次第。我々に協力するか、残る一生を日の届かない暗闇で過ごすか…。納得頂けました?」
リエルは顔の正面辺りで両手を合わせると、クールキャットに向かって微笑んだ。
「わかった」
クールキャットの返事を確認すると、リエルは咳払いをして注目を集める。
「それでは──」
その後は国連側から二人の引き渡しの予定についての説明など、実務的な話が続いた。
やがて話も纏まり──といっても世界戦隊連盟は殆ど話を聞いていただけだが──リエルが会合の終了を宣言した。
ホログラムが消えると、通信室の照明が点いた。暗闇に目が慣れていたせいで少し目眩がする。
「そんで、どうすんだ、シルバーナイトのダンナ。殴り込みに行ってもいいぜ?」
会合の中身がつまらなかったのか、ぶっきらぼうに炎帝が呟いた。彼女の横ではブラックが退屈そうにアクビをしている。彼の興味をひいたのは会合の前半部分のみだったようだ。
「…やめておいたほうがいい」
シルバーナイトの様子を見て炎帝があからさまに溜息をつく。
「ビビってんのか?随分腑抜けになったんだな」
「どうとでも言え。だが、まだ終わりではない」
「あぁ?それってどういう……。ま、イイや。ダンナがそう言うならなんかあんだろ。それを楽しみに待つとするよ」
すると炎帝の視線がシルバーナイトからクールキャットに移った。
「そういやちんまいのは絶対皇女と同じウクライナに居るんだったな。なら伝えといてくれ」
「いいけど、何を?」
「バーカってな!」
そう言いながらはにかんだ彼女は、まるでイタズラを楽しむ子供のようだった。大人っぽいドレス姿にはとても不釣り合いな笑顔なのに、それがどこか独特の魅力を生んでいる。
炎帝が通信室を後にしたのを見て、ブラックもそれに続こうとする。
「それじゃあ、僕もここらへんで失礼しますね〜」
ブラックは大きなアクビをしながら通信室を出ていった。
「…?」
「どうした?」
「……何も」
シルバーナイトに目を向けることなく呟く。
(部屋を出る瞬間、ブラックが笑っていた?)
それも今までに見た笑顔とは少し違ったような気がした。
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 19:50:02.36 ID:RHGLFZLGo
─────
通信室を出たクールキャットは割り当てられた艦内の自室で考え事に耽っていた。
リエルの話によれば──すべてを信じるならば、だが──博士とアイスエイジは国連に関する何らかの情報を握っている事になる。
状況を整理しよう。そもそもアイスエイジを捕らえることになったのはシルバーナイトに協力してもらうためだった。アイスエイジは世界各地を転々としていたようだが、数ヶ月前にウクライナにやってきて何かをしていた。そして丁度レッドマーゾがウクライナを訪れたのと同時期に日本へ訪れ、銃器を密輸した。
素直に考えるなら日本同様、各地で銃器を密売していたのだろう。しかし問題は2つある。1つは、アルティメット・ワンは何の為にそれを指示したのか、だ。活動資金の為、というのがもっともらしいが……。2つ目は銃器の密輸、その過程で果たして国連の機密情報を知る機会があるのか、ということだ。仮にあるとすれば銃器、あるいは何らかの密輸に国連が何らかの関わりを持っている、だろうか?
博士の方はというと、ダイヤモンドダストを捕まえる為にZATO52に行った際に偶然捕らえた。彼は研究の自由と引き換えに、アルティメット・ワンの為にヒーロー遺伝子を人為的に活性化させるための薬を製作している。
研究優先の性格からして出歩くことはそうないはずだ。だとすると国連の情報を得る機会は限られる。推測に過ぎないが、アメリカの学会に所属していた頃に何らかの接触があったのかもしれない。
色々考えてはみたが、やはりどうも二人と国連をつなぐ線どころか、点すらも怪しい。シルバーナイトの警戒もここにあるのだろうか?
少し頭を落ち着かせようとロシアンティーを淹れようとしたその時、強い揺れでティーポットが倒れた。
「っ!!」
すぐさま身をかがめると同時に、入り口の方に視線を移す。
揺れは一度で収まった。
「乱気流…?」
だが部屋の外から聞こえてくる騒ぎを聞くに、そうではなさそうだ。
警戒しながら外に出ると、黒ずくめの武装した二人組に出くわした。
「くそっ、予定より早いが仕方ない!」
そう吐き捨てると二人は自らの首筋に青い液体が入った注射を射した。
(あれは博士の薬……)
手に持ったサブマシンガンを使うことなくクールキャット目掛けて蹴りを放つ。しかし側転をして避けた彼女に当たることはなく、蹴りはドアに当たった。
(速い…)
素早くドアの方に視線を移すと大きなへこみができている。
(薬でパワーとスピードが増してる…)
↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
41~80 戦局有利
31~40 膠着
11~30 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 19:51:34.72 ID:xkG470uto
ん
406 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 20:04:57.48 ID:RHGLFZLGo
蹴りを放った巨躯の男はその大きさとは不釣り合いな速さでパンチを2発繰り出してくる。顔面を狙った拳を軽く躱したクールキャットは男の次の動きを確認しようと視線を移す。
再び拳を振るう素振りを見せた男だったが、突然しゃがみこむとその背後からもう一人の男がナイフを投げてきた。
「っ……」
回避はあと少しのところで間に合わず、神経は逸れたようだが肩から血が流れている。
↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
41~80 戦局有利
31~40 膠着
11~30 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 20:05:45.15 ID:taBlsnpj0
あ
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 20:18:15.38 ID:RHGLFZLGo
肩に刺さったナイフの柄を握るクールキャットに、巨漢がじりじりと近づいてくる。
(フェイント…それとも……ならこっちから!)
刺さったナイフを引き抜くと目前の男に投げる。クールキャットの血をまき散らしながら飛んでいくナイフは前の男にも後ろの男にも当たることはなかった。回避の動作で反応が遅れた巨漢の側面に蹴りを入れる。
「ぐっ…」
うめき声を上げながらも蹴りを受け止めた男がニヤつく。
(本命はあなたじゃない…)
クールキャットの蹴りで態勢が崩れた男の肩越しに銀色に光るナイフが見えた。
それを投げ飛ばそうと腕を振り上げた男は小さなうめき声をあげたかと思うと、うつ伏せに倒れた。彼の背中には氷の弾丸による傷跡が見えた。
「クソッ!」
前にいた男は振り返ることなく悪態をついた。
↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
41~80 戦局有利
31~40 膠着
11~30 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 20:18:23.85 ID:k5lJP+CUo
あ
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 20:29:31.54 ID:RHGLFZLGo
相手が一人なら後は楽だ。右足に氷の弾丸を撃ち込むと、男はそのまま片膝をついて崩れ落ちる。
そのまま回し蹴りを頭に当てると、男は黒目をぐるりと1回転させたかと思うと、白目をむいてしゃがみこんだ姿勢のまま気絶した。
クールキャットはハンカチを取り出して肩の止血を行うと男たちの服を探る。
(身分証はなし…。博士の薬を使っていたことから考えると、おそらくはアルティメット・ワン…)
しかしどのようにして世界戦隊連盟の戦艦に入り込んだのだろうか?
(なんであれ状況を把握しないと。シルバーナイトはおそらくは船首にいる。スカイウィングとレッドマーゾは…分からない。それとも監房の様子を見に行くべき?)
↓1
1:シルバーナイトのもとへ行く
2:監房へ行く
3:その他(自由安価)
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 20:30:44.47 ID:4C+7UInFo
2
412 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 20:51:14.49 ID:RHGLFZLGo
(シルバーナイトは星5ヒーロー。それに艦首には他にも警備部隊がいる。それよりも監房に行くべき。もし他にもさっきの連中が居るとしたら、普通の人間では分が悪い。シャドウソードが持ちこたえてるといいけど…)
即座に呼吸を整えるとクールキャットは船尾の監房エリアを目指して駆け出した。
艦内には警報を知らせるサイレンが鳴り響いているが、今の所誰にも遭遇していない。が、時折叫び声や争うような音が聞こえてくるので侵入者は他にもいるようだ。
地上の国連本部も襲撃を受けているのだろうか?そんな事を考えながら走っていると監房エリアまであともう少しだ。通路の角を曲がると廊下は襲撃の影響か、照明が点滅していた。
光と闇の世界に交互に移り変わる廊下を駆けながら、クールキャットはある異変に気づいた。廊下の壁に爪痕のような傷が多数残っている。
「っ…」
思わず足を止めたのは、暗闇の先に異様な気配を感じたからだ。吸い込まれそうな闇の中、2つの光がゆらりと動く。ゆっくりと姿を現したのは獅子の頭と胴体、竜の翼、尻尾の代わりに蛇がついた異形だった。
クールキャットを認めると、その異形は口に加えていた警備員の上半身を投げ捨て、咆哮する。
↓1反転コンマ
86~ 戦局有利(次の判定緩和)
56~85 戦局有利
36~55 膠着
11~35 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
413 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 20:54:43.68 ID:VuT01yWoo
ん
414 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 20:54:44.48 ID:lJ/q6lHDO
あ
415 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 21:10:40.20 ID:RHGLFZLGo
その異様な姿に僅かに怯んだクールキャットだったが、人ではない化け物相手に容赦する必要はないことに気づいた。素早く氷の弾丸を化け物に浴びせる。
異形は身を守るように翼を広げる。爬虫類の体表のような見た目に反して、鋭い金属音のような音と共に弾は弾かれた。
(なるほど…)
翼で身を守ったと言う事は、おそらく獅子の胴体はそこまで打たれ強くはないのだろう。翼が防げるのは正面のみ、ならば側面から弾を浴びせればいいだけのこと。
予期せぬ方向からの攻撃に、獅子の頭は耳をつんざくような雄叫びを上げた。
↓1反転コンマ
46~ 戦局有利
31~45 膠着
01~30 戦局不利
416 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 21:14:08.08 ID:4C+7UInFo
あ
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 21:18:48.85 ID:RHGLFZLGo
異形もこのままでは命が危ういと感じたのか素早い動きで爪を振るう。
しかしもとから離れていた位置にクールキャットが居たことに加え、痛みで動きが若干鈍っているようで、それを回避するのは余裕だった。
その間も変わらず氷の弾は獅子の胴体を傷つけ続ける。
↓1反転コンマ
86~ 戦局有利(次の判定緩和)
56~85 戦局有利
36~55 膠着
11~35 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 21:19:37.00 ID:taBlsnpj0
あ
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 21:54:35.73 ID:RHGLFZLGo
ストレート勝ちされたキメラさんかわいそう……
結局、キメラは手も足も出ずクールキャットに敗れた。はっきり言って相性が悪かったとしか言いようがないだろう。
物言わなくなった異形のそばを通り抜けると、クールキャットは監房エリアを目指して先を急いだ。
監房エリアの入り口に到達したクールキャットだったが、彼女の予感は見事に的中していた。辺りには戦闘の痕跡が残っており、警備員の死体が転がっている。
ヴィラン2人が収容されている独房の近くまでくると、争い合う音が聞こえた。角を曲がるとその先ではブラックがアイスエイジ、博士、そして見慣れないヴィランと戦っていた。そのヴィランは青いスーツに、炎にも似た青いオーラを身に纏っていた。その姿はまるでレッドマーゾをそのまま青色に変えたかのようだ。ただ1つ違うのは、彼が肌を刺すような鋭い殺気を放っていることだ。
数的不利にも関わらず、ブラックは3人と対等に渡り合っている。近くには座り込んで壁にもたれかかったシャドウソードがいた。負傷しているが致命傷ではない。
すると博士とアイスエイジがこちらに気づいた。
「僕のキメラがもう倒されたのか!?…帰ったら研究のやり直しだよ…!」
「おっと…猫チャンの登場かぁ?」
アイスエイジはシルクハットのつばを人差し指で持ち上げながらそう呟くと、青いヴィランに呼びかける。
「ブルースクリーム、そっちはいけるか?」
「ああ」
ブルースクリームと呼ばれたヴィランは低い声で短く答えると、オーラの輝きが更に増した。それを見たブラックの口角が思わず釣り上がる。
「だ、そうだ。じゃあ猫の遊び相手になってやるとするか」
「僕も手伝おう。彼女には恨みがあるからね」
声色だけでも仮面の下の素顔がニヤついているのがわかる。
(2対1……)
↓1反転コンマ
96~ 戦局有利(次の判定緩和)
86~95 戦局有利
61~85 膠着
26~60 戦局不利
01~25 戦局不利(次の判定悪化)
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 21:58:01.09 ID:k5lJP+CUo
あい
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 22:09:54.56 ID:RHGLFZLGo
まず動いたのはアイスエイジだった。氷のナイフを作り出すとそれを投げながらこちらに近づいてくる。体を左右にひねってナイフを躱すクールキャットに、アイスエイジは更に創り出したナイフを振り上げる。
「うおっ!?」
すると突然アイスエイジの目の前に酸が降り注いだ。
「お前、何考えてんだ!?」
「君が勝手に突っ込むからいけないんだろ?」
(あのクソ野郎、絶対にわざとだろ…)
舌打ちをしながらクールキャットに視線に戻すと、彼女の蹴りが鳩尾に命中した。
「──クソッ…!」
↓1反転コンマ
96~ 戦局有利(次の判定緩和)
86~95 戦局有利
61~85 膠着
26~60 戦局不利
01~25 戦局不利(次の判定悪化)
422 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 22:13:46.74 ID:qUYFa7SV0
あ
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 22:24:09.08 ID:RHGLFZLGo
よろめいたアイスエイジに追撃を加えようとクールキャットが更に回し蹴りを入れようとする。だがアイスエイジはそれを左腕で受け止めると、靴先にはやした氷のナイフで蹴り上げるように首元を狙う。
「仕方ない、キチンとサポートしてあげるよ…」
そう呟いた博士は酸が詰まった容器をクールキャットの背後に投げ捨てた。容器が破裂したかと思うと、酸の障壁が形成された。
「っ!」
アイスエイジの攻撃を後ろにさがってやり過ごしたかったが、酸の障壁に阻まれてしまった。致命傷を避けるため右腕を犠牲にしてナイフの勢いを殺したが、アイスエイジの靴を伝って彼女の血が滴り落ちる。
「ワーオ、痛そうだぁ!」
アイスエイジはわざとらしく驚いてみせる。
↓1反転コンマ
96~ 戦局有利(次の判定緩和)
86~95 戦局有利
61~85 膠着
26~60 戦局不利
01~25 戦局不利(次の判定悪化)
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 22:24:39.50 ID:k5lJP+CUo
ろ
425 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/02(金) 22:37:12.40 ID:RHGLFZLGo
痛みをこらえながら、クールキャットは自分の右腕で止めたアイスエイジの脚に肘打ちを入れようとする。
しかしアイスエイジは足首をスナップさせて靴先のナイフを折った。
「──っ!!」
その反動で傷口がえぐられるように痛む。
「ハッハァ!!」
楽しげに笑いながらアイスエイジは回し蹴りをクールキャットの頭に容赦なくぶち込む。
視界が大きく揺れたかと思うと、そのまま壁に頭を打ち付ける。目の前が一瞬白く明滅したかと思うと、途端に鈍い痛みが頭に響く。
「大丈夫かァ?視線が揺れてるぞ?」
↓1反転コンマ
91~ 戦局有利
76~90 膠着
01~75 戦局不利
426 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/02(金) 22:38:50.34 ID:4C+7UInFo
あ
427 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/03(土) 00:27:15.55 ID:fBcYC2kmo
「それじゃあ終わらせようか?」
博士はその場で頭を押さえるクールキャットに近づくと、彼女の両脚に躊躇なく酸をふりかけた。
「──ッッ!!」
緑色の液体がかかった途端、足に力が入らなくなる。まるで足の表面を針のついた棒で掻き回されているような痛みが襲う。
大量の冷や汗が目の中に入り込み視界がボヤケていく。
「猫には9つの命があるって言うが、それが本当か確かめるとしようか?」
アイスエイジが氷のナイフを手に持つ。その刃の表面には真っ青な顔をした自分の姿が写っている。ナイフが徐々に首もとに持っていかれる。そして氷の冷たさを首筋に感じたその時──。
「彼女から離れろ!」
久しぶりに聞いた暑苦しい声と共に、赤い羽根がアイスエイジを襲う。
「チッ!」
ナイフを捨てて後ろに下がったアイスエイジはクールキャットの背後を睨みつける。その視線の先にはレッドマーゾとスカイウィングが居た。
「大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄ってきたスカイウィングはクールキャットの両脚に目をやると、小さく驚きの声を上げた。
「お前たち…よくも──」
そう言って拳を握りしめるレッドマーゾだったが、更に奥にいるブルースクリームの姿を見ると思わず力が抜けた。
「そんな…バカな…。令、司…?」
「赤崎くん!?」
呆然とするレッドマーゾをよそに、いつの間にかブラックを降していたブルースクリームが博士に耳打ちする。
「分かったよ」
そう呟くと博士はひときわ厳重に保管された容器を取り出すと、それを壁面に取り付ける。
「ま、待てっ!」
我に返ったレッドマーゾだったが、動きを止めざるを得なかった。
「動けばコイツを殺す」
ブルースクリームは片手に持っていた拳銃の銃口をブラックに向ける。
どうすることもできずに動けないでいると、容器が破裂し、壁面に大きな穴が空いた。
「それじゃあヒーロー諸君、また会おう!」
ウインクをしながらアイスエイジが穴から飛び降りると、残りの2人も彼に続いた。
「に、逃げられちゃった…」
「大丈夫か?」
レッドマーゾはクールキャットに近づこうとするが、轟音と共に艦内が大きく揺れた。
「ば、爆発だよ!」
クールキャットはその爆発が音の方向から考えておそらく機関部であると気づいたが、声を出すことができない。
すると突然、床が大きく傾いた。どうやら戦艦そのものが傾いているようだ。突然の揺れに対応することが出来ず、クールキャットが体勢を崩す。その行く手には博士が空けた穴がある。
(まずいっ──!)
壁に手を掛けようとするが、足の痛みで力がうまく入らない。
428 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/03(土) 00:29:35.09 ID:fBcYC2kmo
「クールキャットッ!!」
レッドマーゾの叫びも虚しく、クールキャットは船外へと放り出される。
空に放り出されたクールキャットは目を瞑る。さっきまでの喧騒とは打って変わって空はとても静かだ。
(死ぬ…)
そう思ったが、その割には彼女の思考は冷静だった。
(サーシャ……。でも、きっと大丈夫。あの子なら──)
すると突然、誰かに体を掴まれた。思わず目を開けるとそこには赤いマスクがあった。
「レッドマーゾ…。どうして?」
いつの間にか足の痛みは感じなくなっており、声も出るようになっていた。
「…迷惑かもしれないけれど、俺はヒーローで、バディだからな」
その言葉を聞いた瞬間、クールキャットの頭の中の霧が晴れたような感覚がした。
「けど、このまま2人とも死ぬ」
「…体が勝手に動いたんだ」
マスクで顔は見えないが、きっとその下には穏やかな微笑みがあるのだろう。
「──そう」
クールキャットが再び目を瞑ると、今度は何かにぶつかったように大きく揺れた。またしても目を開けると、今度は涙と鼻水を流しながら泣きじゃくるスカイウィングが居た。
「ふ、2人とも死なせない、からっ!!」
「し、詩音!ありがとう!」
「──ありがとう」
2人の言葉を聞いてスカイウィングがぐちゃぐちゃの顔のままはにかむ。
「ど、どういたしまして!」
彼女は下に視線を移してからこちらを見る。
「──え、えと、が、頑張ってみるけど、たぶんかなりの勢いで地面に衝突すると思う!」
「どれくらいだ?」
「死にはしないけど、すごく痛いと思う!!」
「よしっ!なら、気合で乗り切るぞ!」
「えっ、う、うん!?」
そんなやり取りをした少し後、3人は地面に頭から突っ込んだ。
「──ケホッ、ケホッ!2人とも生きてる!?」
土煙で何も見えないがスカイウィングの声は聞こえる。
「い、生きてる!」
「私も」
やがて煙が晴れるとスカイウィングとレッドマーゾの2人がよろめきながら立っているのが見えた。安堵のため息をついたクールキャットは、レッドマーゾに呼びかける。
「な、何だ?」
「私、前にあなたが命を懸けて助けるのは迷惑だって言ったでしょ」
「ああ」
「それは今も変わってない」
「え…」
「だから私はそれを絶対に止める、バディとして」
クールキャットは微かに笑い掛けた。言葉の意味を察したレッドマーゾは、仮面の下で笑顔になる。
「分かった!」
そう言ってレッドマーゾはクールキャットに手を差し伸べる。一瞬だけ動きを止めたが、クールキャットはすぐにその手を握った。
429 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/03(土) 00:32:56.27 ID:fBcYC2kmo
「仲直り中ゴメンだけど、2人とも、アレ見て!」
スカイウィングが指差したのは国連本部の正面に設置された巨大モニターだ。そこには雪よりも白い髪と、ルビーのような目の色をした女性にも男性にも見える人物が映っていた。まるで人形のような見た目をした彼女が口を開くと、3人は話に意識を向けざるを得なかった。
『みなさん、こんにちは。私はロギア・ジアース。アルティメット・ワンという団体のトップを務めています』
彼女の透き通った目が見ている者を射抜く。
『私たちは世界の平和を望む者です。みなさんは今の世界が平和だと思っていますか?ヒーローたちに守られ、安心して過ごせていると?』
ロギアはまるで他愛ない世間話かのように話を続ける。
『ですがそれはあくまで仮初めです。世の中にはまだ多くの問題が残っています。何故ヒーローが存在するのに犯罪は無くならないのでしょう?それはこの世の中にまだ数多くの不正義や不公平が存在するからです』
「い、一体なにを…?」
レッドマーゾがボソリと呟く。
『それはミスフィットに対する差別、ヒーローと能力を持たない一般市民との間の超えようのない差、ヒーローが独占する権力、そういった物に起因しています』
「ミスフィット…」
詩音ら赤崎との出会いを思い出した。
『ではそれらをなくすには?答えは簡単です、みながヒーローになればいい。でしょう?ですので我々は本日から、世界各地にこの薬品を配布いたします』
そう言ってロギアが取り出したのは例の青い薬だ。
『こちらの薬品はミスフィットの方々も、能力が顕現していないみなさんでも、ヒーローに劣らない力を手に入れることができます。そうすれば不公平は解消されるでしょう』
するとスカイウィングが2人に携帯を見せた。
「こ、これ、ネットでも配信されてるよ!」
『ですが、ヒーローが権力を独占する不正義は解消されません。ですので我々アルティメット・ワンは国連、そして世界戦隊連盟を崩壊させ、誰も力を独占しない真の正義を実現します。もし、もしも私達に賛同していただける方は、彼らへの攻撃に参加してください。あなた方ひとりひとりの献身が世界をより良い方向へ導くのです』
そう言い終えると、ロギアはうやうやしく礼をする。
『それではみなさん、さようなら』
放送は突然終了し、画面は砂嵐になった。
「…こ、こんなの誰も賛成しないよね?」
「そう願うよ…」
「だけど──」
2人がクールキャットを見る。
「もし多くの人が彼女の言ったことを信じたら……今の危ういバランスのもと均衡している世界秩序は──破滅する」
430 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/03(土) 00:38:10.41 ID:fBcYC2kmo
────
「さて、みなさんのおかげで遂に私たちの計画が1段階進みました」
穏やかな物腰で話すのはロギアだ。
「ハッハッハッ!それにしてもボスも人が悪いね!あの大層な演説、どれも本心じゃないだろう?」
アイスエイジがシルクハットを指でくるくる回しながら笑い掛ける。
「確かに大義の部分は昔ある人から聞いたものうまく利用できるように少し変えた物ですね。ですが、世界平和を実現したいのは本当ですよ?ただ、手段がお話ししたものとは異なるだけです。ところで研究の進捗は問題ないのですね?」
ロギアは博士に説明するよう目線で促す。
「まあ、僕のような天才科学者がいる時点で当然だね。必要な材料は10人分。そのうち殆どは集まってるし、問題はないよ。ただ、厄介なのはシルバーナイトだね。アイツは警戒心が強い」
「ふふ、その点に関しても抜かりはありませんよ。彼は1番最後です」
するとずっと黙っていたダイヤモンドダストが口を開いた。
「ロギア様、私はあのブルースクリームとかいう奴は信用できないと思います!」
「確かに、この会議にも出てないな?」
アイスエイジがキョロキョロとあたりを見渡す。
「心配ありませんよ。確かに私たちの目的とは少し違う方向を向いているかもしれませんが、少なくとも私たちの協力者ではあります」
「で、ですが、私たちを、こう──」
「出し抜く?」
言葉に詰まったダイヤモンドダストにアイスエイジが助け舟を出す。
「そう、それ!」
「プッ、バカなガキ…」
地獄耳なダイヤモンドダストは博士のつぶやきを聞き逃さず、彼を睨みつける。一方博士はそんな彼女をおちょくるように手の平をひらひらさせる。
「落ち着いて、ダイヤモンドダスト。ブルースクリームはそんなことしませんよ」
ロギアは微笑んだかと思うと、恐ろしいほど冷たい声色で続ける。
「もし私たちを出し抜くつもりでも、モノがこちらにある限り全知全能は私たちのものです。博士、状態はどうですか?」
「常時モニターしてるけど問題なし。使えるのは1回限りだけど、いいんだよね?」
「はい、もちろん」
ロギアはそう言うとヴィランたちを見回す。
「それでは、本日はここまで。今後も計画通りにお願いします」
第6話、終。
今日はここまで。
なんかリエルさんとロギアさんの書き分けがうまくできてない気がする…。
ある程度設定を消化できたので新たに↓5まで募集しておきます。
431 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 00:45:06.96 ID:u1CRoOxSo
どんどん話が大きくなっていく…
「特別チーム」
432 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 00:53:48.73 ID:egnkGlFP0
活路
433 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 00:58:59.93 ID:nECUofTl0
束ねて繋ぐ手のひらを
434 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 01:08:33.84 ID:cyOQ859So
ご飯
435 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 01:09:52.63 ID:fBcYC2kmo
あー、ごめんなさい。設定って7話のキーワードのつもりじゃありませんでした。でもせっかくなんでキーワードは
>>431
から
>>433
までを採用します。
設定ていうのはキャラ案とか世界観設定とか組織の動向とかです。では↓5まで募集します。
436 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 01:29:00.10 ID:szq4az5ho
能力者と非能力者の格差問題を笠に政府は全ての能力者から能力を剥奪出来るようにしろとか能力者の排除といった反能力者主義の思想や団体がいる
※そういった主張をする者のほとんどは社会的問題は建前で生理的嫌悪など個人的感情が殆どな傾向にある
※そのため全ての人間が能力者になることに反対の傾向が強い
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