【安価・コンマ】皆で作る物語

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/30(火) 20:24:50.90 ID:daDCwBgqo
「そうだな────」

雷光はダイヤモンドダストとの取引を思い返す。

あれはサンクトペテルブルクの工業地帯でのことだ。工場の事務室でのダイヤモンドダストと数人の部下との話し合いの場。

「これを打って暴れろって?」

「そうだよー」

目の前の少女は天真爛漫な笑顔を見せる。

雷光は手渡された薬に目をやる。

「これ、何だ」

「いいものだよ!それをチクっとするだけで最強になれるの!」

テーブルに頬杖をつきながら彼女は足をブラブラさせる。

「…ったよ。金のためだ」

するとその時、部下の一人が少女に耳打ちをした。

「はぁ?なんで!」

まるでおもちゃを取り上げられて駄々をこねる子供のように声を上げる。すると彼女と部下は部屋から出ていった。

「しばらく待て」

そして1人、部屋に残った部下が雷光にそう告げる。

「…ふん」

(コイツらが何もんかは知らねえが、信用できないのは間違いないな)

その時、雷光の目にテーブルの上に置かれた情報端末が入った。

(これだ!)

雷光は監視の目が違うところを向く機会を待ち、それを素早く手に取った。

(パスワードか。当然だな。だが…)

雷光は端末に電気を流して回路の操作を試みる。

(っし!なになに…)

『積荷をムルマンスク州のZATO52に送れ。しばらくそこに滞在する』

(はぁ、どこだよそれ?)

それだけしか確認できなかったが、ダイヤモンドダストが戻ってくる気配を感じたので雷光は端末をもとに戻した。

そして時間は今に戻る。

「ってなわけだ。どこか知ってるか?」

「うーん…」

「知ってる」

後ろに控えていたカチューシャが口を開いた。赤崎と雷光がカチューシャを見る。

「ムルマンスク州はロシアの北方にある州。ZATOは閉鎖都市のこと。ソ連崩壊後、多くの閉鎖都市が開放されたけど、中には今も秘匿されてるものがある。ZATO52は…心当たりがある」

「本当か!」

「ええ。何年か前に、ZATO52が一夜にして氷漬けになったって噂話を聞いた」

赤崎が輝いた目で彼女を見る。一方、雷光はどこか納得いかないという表情だった。

「閉鎖都市…ってことはロシアが管理してんのか?だったらあのガキもロシアの手先ってことか?」

「…一部の閉鎖都市は政府でさえ持て余してる場所もある」

「つまり…分かんねえってことか」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/30(火) 20:28:49.13 ID:daDCwBgqo
「それで、あの3人組は?」

カチューシャが話題を変えるように雷光に問う。

「…俺もよくは分かんねえ。山小屋で休んでたら急にあのクソ共に襲われたんだ。勿論ぶっ倒そうとしたんだが、うまく力が出なくてな」

「…何か異常はなかった?」

「そうだな…特にないが。あ、そう言えば、山小屋に入る前に首元に違和感があったな」

それを聞いたカチューシャは断りもなく雷光の首元を探り始めた。そして彼女は雷光の後ろ首に何かの跡を発見した。

(これは…針の跡?この男が自ら使った薬でないとしたら、一体…?)

それを確認したカチューシャが側から離れると、雷光は話を続けた。

「そんで…逃げてるうちにここに追い込まれて…まあ、後は知っての通りだ。それで、俺はどうなるんだ?」

「罪は償ってもらおう。まずは国連に引き渡して──」

電話を終えて戻ってきた詩音はカチューシャが近くにいない事に気づいた。

(どこに行ったんだろう?)

暫く辺りを探すと、カチューシャは3人組が居た辺りでしゃがみこんでいた。

「大丈夫ですか?」

「ええ」

(結局あの3人組の正体は分からなかった。つまり…シルバーナイトの疑念についても)

2人の間に沈黙が流れる。気まずさに耐えかねた詩音が先に口を開いた。

「あ、あの、赤崎くんの事…」

「何?」

鋭い声色に狼狽えながらも、詩音は話を続ける。

「え、えと、バディの事、どう考えてるのかなって」

「…何も」

「え?」

カチューシャの答えは詩音が考えていたものとは全く違った。ある意味喜ばしいように思えたが、それ以上に、詩音は彼女の発言に形容し難い悲しみを感じた。

(何もって…さっきも命がけでヴィランと戦ったのに…)

詩音も人付き合いが得意な方という訳ではないが、それでも人と関わることの暖かさを知っている。それがあの赤崎なら尚更だ。

だがカチューシャの態度はまるで、人との関わりを可能な限り排除しようとしている。

(どうして、だろう…)

「おーい、ふたりとも!そろそろ行こう!」

詩音の思考とカチューシャの調査は、赤崎の呼び掛けによって中断された。

「そうね、行きましょう」

カチューシャは立ち上がると赤崎の方へと向かった。

(クールキャットさんは今、何を考えているんだろう)

彼女の背中を見ながら、そんな事を思う詩音も後を追う。

そうして4人はその場を去ることにした。

第3話、終
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/30(火) 20:29:48.53 ID:daDCwBgqo
では第4話のキーワードを↓3まで募集します。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/30(火) 20:34:56.79 ID:d/9AcUWwo
太陽
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/30(火) 20:35:08.93 ID:PuNjulgG0
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/30(火) 20:35:28.48 ID:toZAmDUpo
巨大ロボ
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/30(火) 22:32:02.06 ID:daDCwBgqo
第4話 「閉鎖都市」

ZATOというのは正式には閉鎖行政地域組織を指します。核兵器や新技術の開発の為に設置されたものが多く、その性質上、地図からは抹消され秘匿されているのが殆どでした。ソ連崩壊を機にそれらの多くに名前がつけられ、開放されました。しかしながらその排他的な性格故、一部では現在もその居場所を隠し存続しているものがあると言われています。特にソ連崩壊時には何かと不都合な書類等は内々に処分されたこともあり、その実数は正確には把握できていません。実際にソ連崩壊後、政府の支援を受けられなくなったZATOが大規模な犯罪集団となって命脈を保っていた、というケースも存在します。ですのでこれらの実態を把握することは喫緊の課題とも言えます。

────とある学者の書籍より抜粋
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/30(火) 22:36:07.14 ID:daDCwBgqo
「…うん、うまい!」

「だね。ロシアンティーにハマっちゃうかも!」

赤崎と詩音はキーウの街角にある喫茶店で一休みしていた。

「クールキャットさん、どれくらいかかるかな?」

「さあ?まあ、そう長くはかからないって言ってたし、待とう」

「うん…」

一方、カチューシャは自宅でアレクサンドラと会話をしていた。クールキャットとコールドキャットとしてではなく、姉妹として話をするためだ。

「本当にあそこに行かれるのですか?」

俯きながらアレクサンドラが呟く。

「ええ。そこにダイヤモンドダストがいる」

「ですが、あそこは…」

カチューシャは目を瞑る。

「サーシャ、ただの場所よ」

ゆっくりと目を開きながら、姉は妹に諭すように告げる。

「そう、ですわね」

するとアレクサンドラはカチューシャの手を取った。

「これ、覚えていますか?」

手渡されたものは小さな人形だった。昔、カチューシャがあり合わせの材料を使って作ったものによく似ている。もっとも、出来はそれよりも遥かに良いが。

今よりずっと幼い頃、アレクサンドラはカチューシャが作ってあげた人形をいつも大事そうに抱えていた。

「今度は私からお姉さまに差し上げます」

「…ありがとう。それじゃあ行ってくる」

「はい…」

そうして3人は国境を越え、ロシアへと赴き、ムルマンスク州まで向かった。

カチューシャの運転で舗装もされていない道をゆく。

「ロシアって本当に広いね〜」

詩音が窓に顔をくっつけながら話す。

「これだけ広いとノビノビ飛べそうだよ〜」

「ハハハ、それにここなら荷物を落としても大丈夫だしな!」

「ちょっと!」

「悪い悪い!」

そんな2人のやり取りをバックミラー越しにカチューシャは見ていた。

「もうすぐ着く」

「本当ですか?」

詩音はキョロキョロと周りを見渡す。やがて丘を越えると、その向こうに大きな氷の塊が見えた。

「…あれ、ですか?」

みるみるうちに詩音の顔が青ざめていく。

「ええ、そうよ」

「これは…氷漬けどころか…」

思わず赤崎も絶句する。

ZATO52──海に面した崖の近くに築かれた閉鎖都市。その全体が氷のドームに覆われ、まるで何かに飲み込まれたようだった。

「ま、まさか、昔からこうなんですか?」

「いえ、こうなったのは数年前だそうよ。一夜にしてこうなったらしい」

「冗談だろ…」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/08/30(火) 22:39:14.45 ID:daDCwBgqo
3人は車を降りると氷の壁のそばによる。

赤崎がコンコンと壁を叩く。

「かなり分厚いな。俺の炎でもぶち抜けるかどうか」

「空もザッと見てきたけど、完璧に囲まれてました。崖の方も、何故か崖下までしっかり氷に覆われてました」

「…こっち」

そう言うとカチューシャは近くにある斜面の方へと向かう。

「ここよ」

「これって…」

「排水口か?」

「ええ。ここからなら中に入れるはず」

カチューシャは懐中電灯を取り出すと暗闇の中に入って行った。

「ほ、本当に行くの?」

「当然だろ?」

そう言って先に入る赤崎。詩音は自分の服を改めて確認する。

「気合い入れて来るんじゃなかった…」

ため息をつきながら、詩音は翼を折り畳むと置いて行かれないよう急いで二人の後を追った。

下水道の中は思ったよりもきれいだった。もちろん鼻の曲がるような臭いは染み付いていたが。

「何も流れてない…ね」

「それもそうか。こんなふうになった街に人が住んでるはずもない。そりゃ出るもんもない訳だ」

「き、汚いよ…」

カチューシャは無言で前を歩く。心なしかその速度はいつもより速い。

彼女の脳裏にかつての光景が蘇る。

幼い妹の手を取りながら懸命に暗闇を走る。足元で飛沫が上がり、汚物が顔の近くに飛んでくる。それでもただひたすらに前に進む。妹の手は震えている。…いや、これは自分の手の震えだったか?

「クールキャット?」

レッドマーゾの声でふと我にかえる。気づけばかなり進んでいた。

「…ここから外に出れる」

今日はここまで。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/30(火) 22:42:00.85 ID:d/9AcUWwo
おつ
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/08/30(火) 23:00:51.48 ID:zOTeiz7GO
乙乙
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/06(火) 19:49:08.31 ID:NGz2EYs+o
はしごを登ると、大通りに出た。

「きゃあ!」

詩音が叫び声を上げながら尻餅をつく。その視線の先には氷の彫像があった。

「なんだこれ…びっくりさせるなよ」

赤崎が軽く小突く。

「…これ、人ね」

「ああ、人の彫像だな」

「そうじゃない。氷漬けにされた、人よ」

「なっ…!」

確かに彫像にしては随分リアリティのある表情だ。まるで何か恐ろしいものから逃げようとしている顔だ。

「じゃ、じゃあ、これ全部が、人、ですか?」

詩音は辺りを見渡して、そこら中に置いてある彫像に目をやる。中には倒れて砕けたものや体の一部がないものもある。

「そうね…」

「不気味だな。けど…あたりの景色は壮観だ」

街の内部はやはり完全に氷のドームに包まれている。高さも相当のものだ。街そのものも完全に氷漬けになっており、あたかも氷の彫刻でできた街のようだ。

「暗いね。でも、キレイ…」

詩音は空を見上げる。

分厚い氷のドームに覆われた内部は太陽の光も届かずかなりの暗さだ。だが僅かに届いた光が内部で反射し、天井に写り込んで、その様は小さな宇宙のようだ。

それはこのドームを作り上げた者の心を反映しているようにも思われる。太陽も及ばないような暗闇に、僅かな明かりが入り込み、中をぼんやりと照らす。

「ところで、クールキャットはこの街に何で詳しいんだ?」

「それは──」

その時路地裏の方から声が聞こえてきた。

「おい、さっさと来い」

「悪い悪い、こんな寒さじゃアソコも萎びちまってな」

「ったく、トイレくらい見回りの前に行っとけ!」

彼らの足音は間違いなくこちらに近づいてきている。

「隠れましょう」

「ああ!」

3人は近くの建物中に逃げ込み、窓から様子を窺う。

「大体、こんなところに来る奴なんて誰も居ないだろう?」

「そんな事言ってるとお前も氷漬けにされるぞ」

「はいはい…」

そんなことを言いながら見張りと思われる人物達は建物の前を通り過ぎていった。

「ふぅ…」

気が抜けたのか詩音が床に座り込む。

「アイツらは何者だ?」

「分からない。けど1番可能性が高いのはダイヤモンドダストの部下でしょうね」

「だといいんだが。…それにしても─」

赤崎はふと部屋の中を見渡す。どうやらバーか何かの店の類だったようで、特に変わった点はない、氷漬けな事以外は。

「建物の中にいるのに寒いな…」

腕をさすりながら赤崎が呟く。

「ま、まあ、建物ごと凍ってるしね…」

二人をの会話を聞きながら、カチューシャは再び過去の記憶に直面していた。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/06(火) 19:49:44.95 ID:NGz2EYs+o
どのような過去か?
↓3までで反転した上でコンマの値が最も高いものを採用
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 20:14:38.98 ID:tEODoC+Ko
姉妹で非人道的な組織に誘拐された
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 20:20:02.87 ID:lQeE/h5uo
元ヴィラン
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 20:20:06.49 ID:6J+4HqBDo
一番古い記憶
雪原に1人、凍死寸前
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 20:25:29.25 ID:3rxlzoCs0
双子の妹がいたが現在行方不明
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/06(火) 20:45:35.50 ID:NGz2EYs+o
肌を刺すような寒さが過去を思い出させる。それも覚えている中でも、最も古いものだ。

それが何歳ごろだったかも検討はつかない。ただ一つだけはっきりと感じたのは、死の予感だ。

どこまでも続く雪原に、猛吹雪。何故そんなとこにいたのかは分からない。それでもただ一人歩き続け、やがて倒れた。

白い視界が徐々に暗くなっていく。吹雪の音も次第に薄れ、意識が朦朧とする。そして向こうからボンヤリとした影が近づいてくるのを見たのが、最後の記憶だ。

カチューシャは我にかえると、その記憶を振り払うように頭を軽く振る。すると床に落ちている小さな人形に気がついた。

手に取ってよく見ると、それがかつて妹に渡した人形だったことに気がついた。

(どこにいったのかと思ってたけど、こんなところに…)

妹が宝物を失くしたと、さんざん泣き喚いたことが思い出される。それを丁寧にポケットにしまうと、カチューシャは口を開いた。

「これからどうする?」

「当然、ダイヤモンドダストを見つける!」

「でもどうやって見つけるの?私が空から探す?」

詩音が軽く翼をはためかせる。

「けど他にも見張りはいるはず」

「そうですよね…。いっそのことあの人たちの後を追うのはどうでしょう?」

「それか、取り敢えず中心部を目指すのはどうだ?」

カチューシャと詩音の疑問の眼差しを受けて、彼は話を続けた。

「だって、いかにもヴィランが居そうな時計塔があっただろ?」

その答えをきいてカチューシャは静かにため息をつき、詩音は苦笑いするしかなかった。

「とにかく選択肢は限られる。なんにせよ早く決めましょう」

↓1どう動くか自由安価
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 21:05:27.22 ID:A9a9Rx2wo
中心部を目指す
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/06(火) 21:23:52.84 ID:NGz2EYs+o
「中心部を目指す、それで行こう!」

「どうしますか、クールキャットさん?」

「…まあ、いいでしょう。最悪何もなくても、時計塔からなら安全に周囲を見渡せる」

「そうですね。それじゃ、いこっか?」

「ああ!」

そうして3人は建物を後にした。

↓1コンマ
20以下で時計塔につくまでに見張りに見つかった
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 21:24:15.71 ID:tEODoC+Ko
あい
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/06(火) 21:55:00.15 ID:NGz2EYs+o
「異常なし、と」

「ボスにどやされる前に帰るとするか」

銃を手にした男たちは車に乗り込むとその場を去った。

「また見張りか、ずいぶん多いな」

「その分ダイヤモンドダストがいる確率も高いってことだよ、きっと」

「だといいけどな」

「…ダイヤモンドダストは少女、それであってる?」

質問の意図が汲み取れず困惑した顔をしながらも赤崎は頷く。

前を歩く二人を追いながらカチューシャは思考を巡らせる。

(ダイヤモンドダストは10歳前後の少女。なら部下という存在に2つ疑問が生じる)

1つは、いくらヴィランといえども幼い子供に、大の大人が─それも見た感じでは犯罪者崩れの─従うのかという疑問。

とはいえこれに関してはある程度の妥当な結論は出せる。赤崎の話によればダイヤモンドダストの気性は激しい。であれば、恐怖によって部下を従えているのかもしれない。

(だとしてもまだ疑問は残る。少女に部下の組織化が可能なのかという点。もしかすると優れた副官のような存在がいるのかもしれない。…けど目的は?)

そんな事を考えている内に、気づけば時計塔の近くまで来ていた。

時計塔は大きな噴水のある広場に位置している。その広場付近は要塞化、というほどでもないが多少手が加えられており、見張りも十数人はいる。

「思ったより多いな。流石に正面から挑むのは無茶だな」

「ええ。ダイヤモンドダストに気取られたくもないし、何とか忍び込むしかない」

「が、頑張りましょう!」

↓1コンマ
35以下で見つかった
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 21:55:41.53 ID:3rxlzoCs0
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/06(火) 22:56:40.05 ID:NGz2EYs+o
「おい、ちょっとタバコ吸ってくる」

厚手のコートを着た中年男性が仲間に語りかける。

「はあ?あんた、見張りはどうすんのよ!」

「お前がいるだろ?大丈夫、ほんのちょっとだけだ」

それだけ言うと男はその場を離れてしまった。

「ったく!これだから中年オヤジは…」

ネオンオレンジのダウンジャケットを着た女性は悪態をつく。すると男が行ったのとは反対方向の塀の向こうから、何かが砕ける音がした。

まさかこんなところに侵入者が来るはずがない、そんなことを考えながらも彼女の鼓動は早鐘を打つ。

銃のセーフティが解除されていることを確認して、塀の向こう側を覗き込む。そこにあったのは氷が砕けちった破片だけだった。

「…ほ、ほら見たことか。どうせ上から氷の粒が落ちてきたとかそんなだろ」

そんな事を呟きながら持ち場に戻る彼女だったが、自分が見張っていた扉が僅かに揺れていたことには気づかなかった。

時計塔の内部では赤崎と詩音が一息ついていた。

「ふう、うまく入れたな」

「クールキャットさんのおかげで証拠も残りませんでしたね!」

「…とにかく中を調べましょう」

時計塔の大きさはかなりのもので、見取り図を見る限り各フロアに複数の部屋が存在しているようだ。

「1つずつ調べるしかなさそうね」

「ああ。とりかかろう!」

そうして3人は1階ずつフロアを捜索した。その殆どは氷漬けになった当時のままが殆どで、あとはいくつか見張りのものと思われる雑貨等が置いてあるだけだった。

そして最上階のひとつ下のフロアまで来た。その中に1つだけ、雰囲気の異なる扉があった。息を合わせて、3人が突入する。

「ひっ!?」

すると中にいた白衣の男が怯えるようにしてしゃがみこむ。

どうやら中は研究室のようだ。いくつかのモニターと実験器具、そして例の青い薬があった。

「おい、大丈夫か?」

赤崎が男に近づこうとするが、彼は怯えたように頭を抱えたまま動こうとしない。

「や、やめてくれ!言われたとおり働いてるじゃないか!?」

その声は酷く混乱しており、かなり震えている。

「お、落ち着け。俺達はヒーローだ」

その言葉に男はビクリと体を震わせる。

「ひ、ヒーロー!?やめろ、放っといてくれ!どうせアンタらもあのヴィラン共には敵いっこない!なにを相手にしてるかもわかってないんだろ!?下手に動いて殺されたくないんだ!」

「かなり怯えてるけど…」

「でも放っとけないだろ?」

「…」

↓3まで多数決
1放っとく
2保護する

今日はここまで。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 22:57:50.39 ID:cXwMHpRto
2
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 23:00:51.64 ID:tEODoC+Ko
2
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 23:04:16.49 ID:3rxlzoCs0
2
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/06(火) 23:14:19.31 ID:6J+4HqBDo
おつ
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 17:39:09.38 ID:fsJ1DJpRo
「やっぱり連れ出すべきじゃないか?」

赤崎の問いに答えることなく、カチューシャは研究者を見つめる。

(…見張りは居なかった、少なくともこのフロアには)

「と、取り敢えず、顔を上げてください」

そう言いながら、詩音が男の顔を覗き込むようにしてしゃがみこむ。するとその時、男が舌打ちをした。

「え?」

すると男が顔を上げる。若者らしい溌剌とした整った顔立ちで、見るものを強く惹き付ける。だがそこには同時に不気味さを感じさせるものもあった。

彼は素顔ではなく、仮面をかぶっているようだ。よく見ると、高名な科学者たちの肖像──アルベルト・アインシュタイン、ロバート・オッペンハイマー、フリッツ・ハーバーなど──の集合によって、モザイクアートのように一つの顔が形成されていた。

そこには過去の偉人たちに対する、彼なりの敬意と傲慢が込められていた。

男は袖の下から噴射器を取り出し、詩音に向ける。

「な、何ですかっ!?」

中身が噴射されるすんでのところで、カチューシャが密かに用意していた氷の弾丸によって狙いがそらされた。

噴射された液体は詩音の隣にあったテーブルにかかったが、その箇所には拳大ほどの穴が空いていた。

「ちっ…。これだから、ヒーローというのは嫌いなのさ。人の話を聞かずに、傲慢な振る舞いしかしない」

科学者は立ち上がりながら白衣の裾を払う。

「お前、ヴィランか!」

変身を終えた赤崎が男に問う。

「ヴィラン?違う違う、僕はただの博士だよ」

男は気怠げにスプレーを持ちながら戦闘態勢に入る。

「コイツを黙らせる」

「ああ!」

「は、はい!」

↓1
76~ 1発KO
21~75 戦局有利
16~20 膠着
6~15 戦局不利
01~06 戦局不利(次の判定悪化)
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 17:46:18.07 ID:hP81LbMqO
ふん
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 18:15:16.93 ID:fsJ1DJpRo
博士と自らを自称した男の動きは速かった。彼が毒が入った容器を放り投げると、炎が燃え上がっているかのように毒の壁ができた。詩音と赤崎を、一歩引いたところにいたカチューシャから分断したのだ。

(…これじゃ弾も防がれる)

赤崎は博士の懐に入り込もうとするが、牽制で放たれる毒の噴射のせいで思うように行かない。

詩音は室内ということで能力がうまく発揮できずにいる。いくつか羽を飛ばして赤崎の援護を試みているが、効果はあまり芳しくない。

↓1
76~ 1発KO
21~75 戦局有利
16~20 膠着
6~15 戦局不利
01~06 戦局不利(次の判定悪化)
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 18:17:09.31 ID:MnAJ6EM60
はあっ
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 18:31:19.82 ID:fsJ1DJpRo
赤崎たちが決定打を与えられない一方で、博士にも焦りはあった。

(だいたい、僕は武闘派じゃないんだよ。今だって何とか分断して拮抗できてるけどさ。早いとこここから逃げないとね)

幸い近くに出口はあるが、背中を見せようものなら一撃を食らうのは間違いないだろう。

博士がそんな事を考えている内に、次第に毒の壁が消滅しつつあった。

↓1
76~ 1発KO
21~75 戦局有利
16~20 膠着
6~15 戦局不利
01~06 戦局不利(次の判定悪化)
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 18:32:48.58 ID:3lRkIb7e0
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 19:01:12.80 ID:fsJ1DJpRo
ようやく毒の壁が消えたのを確認すると、クールキャットは弾を2つ用意した。

博士も壁が消えてしまったのは見えていたが、スカイウイングの羽根を避けるので精一杯だった。その上次第に精度がよくなってきている。

そんな博士の窮状に気づいたのかレッドマーゾが仕掛けようとする。白衣の科学者もやられまいと、毒の噴射機を用意する。

「っ!」

鋭い痛みが手の甲を襲う。見てみると、手の甲に小さな穴が空いていた。

「科学者の大事な手に穴を開けるなんて、それでもヒーローかよ…!」

そんな言葉に構うことなく、レッドマーゾは膝蹴りを博士の鳩尾に容赦なく叩き込んだ。

博士は腹を押さえながら倒れ込む。仮面をつけているので表情は変わらないが、口元の方から涎らしき液体が垂れていた。

「こ…降参だよ…」

震えながら両手を挙げて、博士は力なく呟いた。

「や、やりました!」

レッドマーゾは博士を後ろ手に拘束すると、床に膝立ちさせた。

「それで、どうする?」

「情報を聞き出す」

↓1
博士に何を質問する?
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 19:19:57.31 ID:QVUxLKHCo
こんな設備を用意できる組織はいったい何だ?
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 19:21:37.27 ID:/4auWrJoo
まず「あのヴィラン」とは誰のことか
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 19:32:23.57 ID:fsJ1DJpRo
では組織についての募集を行います
テンプレは以下の通り

名前:
目的:

↓3までで反転させた上で最もコンマの値が高いものを採用
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 19:41:28.05 ID:rlh4jLTko
アケロン
国家の解体
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 19:42:54.98 ID:yrKv7thhO
名前:アルティメットワン
目的:究極の異能【全知全能】に至りたい
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 19:47:05.92 ID:/4auWrJoo
コレクターズ
世界を滅ぼす力を持つお宝の収集
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 19:51:56.47 ID:fsJ1DJpRo
ついでなので組織のボスも募集します
テンプレは以下の通り

本名:(不明でも可)
ヴィランネーム:
性別:
年齢:
出身:
能力:
見た目や性格等の特徴:
来歴:(これはなくてもいいです)

↓2までで反転した上でコンマの値が高い方を採用
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 20:09:56.23 ID:QVUxLKHCo
本名:ロギア・ジアース
ヴィランネーム:ファースト
性別:ナゾ
年齢:ナゾ
出身:ナゾ
能力:超強力なサイコキネシス
見た目や性格等の特徴:中性的な見た目をした白髪赤目美人。性格は慈愛と冷酷さが表裏一体で掴みどころがない。
来歴:人間社会の闇をいっぱい見てきて心が痛いから、思ったことを何もかも叶える全知全能を手に入れて世界全てを幸福にしたいと願うようになった人類最初の異能者。願いを何でも叶えることを餌に世界中から選りすぐりの異能者を募り組織を作った。
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 20:13:13.60 ID:3lRkIb7e0

本名:不明
ヴィランネーム:モノ
性別:女
年齢:不明
出身:不明
能力:能力の強奪と付与
見た目や性格等の特徴:ゾッとするほどに無表情な背の低い銀髪の少女(精神年齢がそれと同じかは不明)
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 21:25:44.33 ID:fsJ1DJpRo
「…どう考えてもあなたやダイヤモンドダストに、こんな設備や大勢の部下をを用意できるはずない。バックについているのは?」

その問いを聞いて博士が鼻で笑う。

「まぁ、教えてもいいか。僕らはアルティメット・ワン」

「アルティメット・ワン、ですか?」

「うん。僕らの…いや、ボスの目的は究極のスーパーパワー、全知全能をその手に得ることさ」

「全知全能?それってあの伝説の“スーパーヒーロー”と同じようなやつか?」

「いや、彼の力よりももっとすごいものだよ。全知全能を手にしたら、願うだけで全てが叶う。この世のすべての仕組みを解明することも、新たに宇宙を作ることも、人々を1つの意志のもと統一することもね」

語っている内容の割に、博士の口調は随分と冷めた物言いだ。まるでそれを侮蔑しているかのようにも思える。

「そもそもヒーローやヴィランがスーパーパワーを扱えるのは、突然変異によるヒーロー遺伝子が原因なのは知ってるよね?」

「そうなのか?」

博士を取り押さえながら、レッドマーゾがスカイウイングとクールキャットの顔を見る。

「が、学校で習ったやつだよ…」

苦笑いをしながらそう言ったスカイウイングを無視しながら博士は話を続ける。

「これだからバカは…。とにかくそのヒーロー遺伝子だけど、実は君たちのそれは不完全な型となってるんだ。にも関わらずその力は凄まじい。なら、それが完全になった暁にはどうなるだろうね?」

薄気味悪い笑い声を上げながら博士は三人を見回す。

「で、でも、どうやって完全にするんですか?」

「そうだなあ、3つ考えられるね。1つ、更なる突然変異による完成。2つ、人為的に完成させる。3つ、ま、これはあり得ないけど、完全な型を持った人物を見つける」

「つまり貴方は型を完成させる為に研究をしている。この薬もその一環?」

クールキャットが例の青い薬を見せる。

「察しがいいね」

「それじゃあ、お前は全知全能を手に入れる事が目的なのか?それで何を叶えるつもりだ?」

博士はレッドマーゾの問いに対し、首を横に振る。

「いや。僕の目的は全知全能を手に入れるお手伝いをしながら、自分の好きなように研究を行う事だよ、予算も制約も、何も気にせずにね」

「そう。それで構成メンバーは?…例えばヒーローや政府の人間が関わってたりする?」

博士は肩をすくめる。

「さあ?僕は研究ができたらいいから、他の奴らはあまり知らなくてね」

「…そう」

↓1
博士に何を質問する?(最後の質問)
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 21:49:03.11 ID:RkEcymQiO
ダイヤモンドダストはどこ
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 22:18:35.89 ID:fsJ1DJpRo
「それじゃあ、ダイヤモンドダストはどこ?」

「あのどうしようもない子供なら崖下の港にいると思いますよ」

「どうしてそこに?」

「港といえば当然、船に荷を積み込むためですよ。それくらいプリスクールに通ってる子供でもわかると思いますけど」

博士の馬鹿にしたような物言いは無視しながら、クールキャットは二人に話しかける。

「誰かがこいつをここから連れ出さないと」

「確かにな。誰が連れて行く?やっぱりスカイウイングがいいんじゃないか?」

「そうだね。私ならここのてっぺんからあの下水道まで飛んでいけると思うよ」

「…でもダイヤモンドダストは氷の能力を使う。私とは相性が良くない。だから私がこいつを移送したほうがいいかも」

「何でもいいけど、早くしてくれないかな?腕がかなり痛いんだ」

↓1
誰が博士を外まで運ぶ?
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 22:30:05.76 ID:RkEcymQiO
スカイウィング
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/13(火) 22:33:45.49 ID:fsJ1DJpRo
では今日はここまで。

更新が遅いにも関わらず付き合って頂いている皆様には感謝しています。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 22:35:19.33 ID:RkEcymQiO
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/13(火) 22:36:06.00 ID:bKlqDpfbo
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 14:03:49.39 ID:/lBOC+S5o
「任せてもいい?」

クールキャットは博士から目を離すことなくスカイウイングにそう伝えた。

「あなたなら屋上からあの下水道まですぐにたどり着ける。ここでコイツを逃すのは惜しい」

「わ、わかりました!」

「何かあればこれで連絡を」

クールキャットは懐から通信機を取り出してスカイウイングに渡した。

「それじゃあ俺達は港に向かうか」

「ええ」

「ソイツは任せたぞ!」

そうしてクールキャットとレッドマーゾはその場をあとにした。

残されたスカイウイングは博士の方をチラリと見る。マスクに描かれた顔は真顔のはずだが、どこかニヤついているようにも見えた。

「え、えと、それじゃあ、行きますね?」

スカイウイングは博士の腕を拘束する。

「…飛ぶときは落とさないよう頼むよ」

↓1コンマ
35以下で港につくまでに見つかった
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 14:07:57.62 ID:wqQ4X99Lo
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 14:55:31.36 ID:/lBOC+S5o
レッドマーゾとクールキャットは街に点在している見回りの目を掻い潜りながら港へと向かう。

氷漬けにされた街は時すらも止まったようで、聞こえてくるのは二人の足音だけだ。

「それにしてもアルティメット・ワン?だったか。博士の話は本当だと思うか?」

「たぶん。実際、奴らはかなり組織だって動いているようだし。それにあの状況でわざわざ嘘をつく理由はない。…狂人でもなければね」

「あんな変なマスクを付けてるんだ、狂人かもな」

肩をすくめながらレッドマーゾが軽口を叩く。

「…あなたが言えた台詞?」

「ちょっと待て、どういう意味だ!このスーツはな──」

そうして特撮のロマンだかなんだかを語り始めたレッドマーゾをよそに、クールキャットは歩みを進める。

そうこうしているうちに二人は崖下に位置する港へと続く区域へとたどり着いた。どうやらここは工業地域だったようだ。その中でも目を引くのは崖下の港と崖上の工場を繋ぐ大きな貨物用エレベーターだ。おそらく資材の搬入や製品の輸送等に使っていたのだろう。

「でかいなぁ…」

「当然見張りがいるわね」

「だな。詩音が居れば楽に行けたんだろうが…。流石にこれで降りたらバレると思うぞ…」

「そうね。他の道を探してもいいけど…」

クールキャットは博士の言った言葉を思い出していた。

「どうした?」

「いえ。ただダイヤモンドダストがわざわざ荷物の積み込みに訪れているのなら、彼女もその船で移動するのかもしれないと思って」

「つまり、急がないと彼女ごと船が出航するってことか?」

「おそらくね」

↓1
1 エレベーターで下まで行く
2 他の道を探してみる
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 15:04:22.78 ID:RI6QWlRFo
1
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 15:25:44.19 ID:/lBOC+S5o
「ならエレベーターでさっさと行こう!」

握りしめた右の拳を左の掌に当てて気合を入れるレッドマーゾ。

「それじゃあ行きましょう」

↓1
21~ 見張りを倒した
06~20 足止めされた
01~05 負傷
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 15:28:09.90 ID:iNrwW0aRo
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 15:58:15.13 ID:/lBOC+S5o
合図とともにレッドマーゾが飛び出す。

「な、何だ!?」

当然、侵入者に対して見張りが反応する。彼らは慌てて目の前の赤い人物に銃口を向ける。しかし──

「ぐはぁっ!」

「うぐっ!?」

突然彼らの手足に鋭い痛みが走る。痛みに耐えながら傷口を見ると銃創のような跡ができていた。

銃を持った仲間が倒れるのを見て驚きながらも、鉄パイプを持った見張り二人がレッドマーゾに襲いかかる。

「死ねぇ!」

左側から襲ってきたフルスイングを、レッドマーゾが左手で受け止める。

「なっ!?」

見張りの男は何とかその手を振りほどこうとするがびくともしない。

その隙を狙ってもう一人の見張りが右側からレッドマーゾに襲いかかろうとする。だがレッドマーゾは素早くその男の右脛を蹴り飛ばす。

「──っっ!!」

倒れ込む見張りをよそに、レッドマーゾはもう一人の見張りの鳩尾に右手で拳を叩き込む。痛みで手放した鉄パイプを奪うと素早く二人の頭をそれで殴った。

「見事ね」

後ろから近づいてきたクールキャットが声をかける。

「まあな。さあ、早く行こう!」

二人はエレベーターに乗り込むと下へのボタンを押した。しばらくすると大きな音とともに格子戸が閉まり、耳をつんざくような高音をたてながら下降を始めた。

「これ、落ちたりしないよな?」

「…氷漬けの影響があるかもしれない」

その言葉を聞いて、思わずレッドマーゾは格子の隙間から下を見る。とてつもない高さでここから落ちればいくらヒーローでも死は免れない。

「落ちないことを祈る…」

そんな事を言っていると上の方から声が聞こえてきた。

「くそっ!侵入者だぞ!」

「見ろ、エレベーターに乗ってる!」

するとやってきた見張りの何人かが飛び降りてエレベーターに乗ってきた。

「コイツらを殺せ!」

↓1
31~ 見張りを倒した
06~30 足止めされた
01~05 負傷
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 15:59:28.67 ID:wqQ4X99Lo
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 16:31:06.82 ID:/lBOC+S5o
降りてきた見張りは4人。それぞれ2人ずつレッドマーゾとクールキャットに相対している。

ナイフを持った女がクールキャットに襲いかかる。しかし彼女はナイフを蹴り飛ばした。

すかさず警棒を持った男がフォローに入ろうとする。クールキャットの喉元めがけて突きを喰らわせようとするが、彼女はそれをいなすと見張りの腕を掴んで肘の骨を折った。

「グギャアァァ!」

苦悶の表情を浮かべながら倒れ込む男。女は落としたナイフを急いで拾おうとするが、クールキャットに手を踏まれて阻まれる。女は慌てて顔を上げるが、視界に入ってきたのは膝蹴りだった。そのまま格子に打ち付けられて彼女は気を失った。呻いていた男の顔面に蹴りを入れるとクールキャットは赤いロシア帽を被り直す。

クールキャットがレッドマーゾの方を振り返ると、丁度最後の一人を背負い投げで倒したところだった。

「やったな、ふぅ。…あと、どれくらいだ?」

レッドマーゾがそう呟いた少し後に、大きな揺れとともに格子が開いた。戦っているうちにいつの間にか下に着いたようだ。

だがどうやらまだ終わりではない。身長2メートルは超えているであろう巨漢が目の前に立っていた。

↓1
36~ 見張りを倒した
11~35 足止めされた
01~10 負傷
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 16:34:23.77 ID:NR2gLXTM0
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 16:34:37.09 ID:3A06q8Wxo
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 17:08:13.67 ID:/lBOC+S5o
ゾロ目ボーナスで次の判定緩和

レッドマーゾが巨漢の鳩尾に右ストレートをぶつける。

「…」

スキンヘッドでサングラスをかけた男は首の関節をポキポキと鳴らす。次の瞬間丸太のような腕がレッドマーゾを襲った。

「グハッ!」

吹き飛ばされながらも何とか受け身を取る。

その様子を見てクールキャットは遠距離戦に持ち込もうと距離を取って弾を展開した。だが近くに置いてあった鉄板を軽々と持ち上げるとそれを盾の代わりにして近づいてくる。

「ふんっ!」

巨漢が投げた鉄板を避けることができず、クールキャットは下敷きになってしまった。

「このっ!」

レッドマーゾは二人の間に割り込むと、男の身体に何度もパンチを喰らわせる。だがびくともしていないようだ。

(くそっ!せめて頭に手が届けば!)

男はレッドマーゾの攻撃を払いのけると、首を両手で掴んで彼を持ち上げる。

「ぐっ…カハッ!!」

意識が朦朧として視界が白ばむ。そんな中レッドマーゾは何とか自らのオーラに意識を集中させる。するとみるみるうちにレッドマーゾを包むオーラの温度が上昇していく。

「─っ!!」

思わぬ熱さに巨漢は手を押さえながらうずくまる。その隙に、鉄板の下から抜け出したクールキャットが男の肩に乗りかかる。

両足で首を絞められている男は彼女を引き剥がそうともがくが、それを何とかレッドマーゾが押さえる。

最初は暴れていたが次第に動きが緩慢になり、やがて腕がだらりとぶら下がる。そしてクールキャットが肩から飛び降りるのと同時に地面に突っ伏した。

「ったく、何て相手だ…」

「そうね」

するとその瞬間、一気に周りの温度が下がった。

「クールキャット、近くに!」

あまりの急激な温度変化に手足がしびれる感覚を覚えながら、何とか彼女はレッドマーゾの近くまで移動した。

「なーんか騒がしいと思ったらヒーロー?うっざー」

氷の様に綺麗な、だけどどこかどんよりとした瞳。つややかな白銀のロングヘアー。間違いない、ダイヤモンドダストだ。

「あれ…もしかしてそこのアンタ…」

↓1コンマ
偶数:クールキャットの事を知っている
奇数:特に何もなし
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 17:10:46.28 ID:wDESJ1Ggo
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 19:37:14.18 ID:/lBOC+S5o
ダイヤモンドダストの無邪気な顔は、クールキャットの姿を認めるやいなや怒りの表情に変わった。

「アンタ…!」

周りの温度が一層低くなる。その上吹雪いてきた。

「おい、知り合いか?」

隣に立つクールキャットに耳打ちする。

「…知らない」

だがダイヤモンドダストがクールキャットに向ける敵意は明らかに他人のそれではない。

「アンタ、許さない!」

「…悪いけど身に覚えがない」

その言葉を聞いてますます彼女の瞳に宿る憎しみの炎は勢いを増す。

「ああ、そう!ならこう言ったら分かる?ワタシも、このZATO52のクソ豚どもの、そしてアンタの被害者の一人!」

その言葉でクールキャットにはようやく意味が分かった。彼女自体に面識はないが、おおよそ予想はつく。

「おい?」

「…今はヤツの相手に集中しましょう」

「あ、ああ」

二人が戦闘態勢に入るのを見て、幼い少女は残忍な笑みを浮かべる。

「キタキタ、そうこなくっちゃ!絶対にアンタをぶっ殺す!」 

↓1コンマ
さっきのゾロ目ボーナスで+10
クールキャットとダイヤモンドダストの相性不利により-10
レッドマーゾとダイヤモンドダストの相性有利により+5
86~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~85 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 19:37:56.16 ID:of595Wsxo
メスガキが
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 20:13:04.81 ID:iNrwW0aRo
くっ
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 20:23:52.87 ID:/lBOC+S5o
ちなみにですが絶対零度についての化学的知識は適当にググった付け焼き刃の知識なのでご了承ください。

16+15-10=21 戦局不利 

ダイヤモンドダストが腕を振り降ろすと同時に嵐が二人を襲う。

「っ!」

腕や脚に痛みを感じた。小さな切り傷がいくつか見える。

「氷か…!」

氷と言っても普通の氷ではない。極限まで研ぎ澄まされた、刃物のような氷だ。一つ一つは致命傷にはならない。だが頸動脈などの箇所に当たればただではすまないだろう。

(長期戦はまずい…氷で体力を削られる)

痛みをこらえながらクールキャットはダイヤモンドダストに弾を放つ。だが少女が手をかざすとそれはピタリと止まり、地面に落ちてしまった。

(これは…)

そんな時二人の足元が白く光りだすと同時に温度が急激に下がった。

「移動するぞ!」

掛け声に合わせて二人は前転で白い光から離れる。その直後、先程まで二人がいた場所には淡い青色や無色透明の結晶らしきものが転がっている。

「リストに書いてあったとおり、絶対零度だ!」

猛吹雪の中レッドマーゾが声を荒げてクールキャットに伝える。

(かなり強力…勝つには何か弱点を見つけないと…)

「ほらほらどうしたのぉ、もっとかかってきなよ?コワくてうごけない〜?」

そう言いながら笑う彼女の顔は実に楽しそうだ。

↓1
クールキャットとダイヤモンドダストの相性不利により-10
レッドマーゾとダイヤモンドダストの相性有利により+5
86~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~85 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 20:26:22.04 ID:JYyYaado0
たあっ
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 20:27:53.14 ID:NR2gLXTM0
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 20:40:31.49 ID:No2eFMrto
戦隊ヒーロー風なら凄い武器とかロボットとか出して見せろレッド!
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 20:41:12.58 ID:/lBOC+S5o
後出しの説明になって申し訳ないですが、コンマの補正に関しては最低値(01)より下がるあるいは最高値(00)より上がることはありません。なので今回は04-05=01(最低値)となります。

「どうする!?」

自分の熱が下がらないよう必死に気持ちを奮い立たせながらレッドマーゾが問う。

「…もう少し考えさせて」

「なるべく早くな!幸いアイツは積極的には攻撃してこないが…!」

それは恐らく彼女の加虐趣味にあるのだろう、とクールキャットは考えた。人をいたぶってジワジワ苦しむ姿を見るのが楽しいのだ。

(とはいえ早く打開策を見つけないと…)

そうは思いながらもうまくは行かない。レッドマーゾがいるとはいえ、気温は極寒であり頭の回転も遅くなる。くわえて嵐による視界不良まである。

そうこうしている内にも二人の体力は削られていく。

↓1
クールキャットとダイヤモンドダストの相性不利により-10
レッドマーゾとダイヤモンドダストの相性有利により+5
46~ 戦局有利
31~45 膠着
01~30 敗北
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 20:42:19.12 ID:OqDG4S2Yo
どんなチート相手でも弱点見つけて勝つのが戦隊ヒーローだがこのヒーロー達は果たして
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 20:45:34.98 ID:nNL6AYOC0
特撮風に言うなら序盤に出てくる幹部クラス
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/25(日) 21:39:21.74 ID:/lBOC+S5o
(…だめ、早く、しないと。でも…)

身体から血が失われていくのを感じる。体温は体の芯から冷えていく。僅かに感じるレッドマーゾの暖かさも段々と感じられなくなる。

「おい、しっかりしろ!」

意識を失いつつあるクールキャットに必死に呼びかけるものの、彼女は応答しない。

かくいうレッドマーゾもクールキャットよりいくらかマシとはいえ確実に思考は鈍化しつつある。

「ねえ〜、もう終わり?」

先程まで二人が苦しむさまを見ていてあんなに楽しそうだった少女はすっかり退屈してしまったようだ。こういったところは歳相応の子供らしさが残っていると言える。

「…なんかこんなにあっさり復讐って終わっちゃうんだね。ま、いいや。今のワタシはアンタみたいなゴミカスよりも太陽のように暖かいロギア様の方が大事だから」

ダイヤモンドダストが両手をこちらに向ける。

「クソッ…!」

二人の足元が白く光り始めた。

(…せめてクールキャットは助けないと!)

元はといえば巻き込んでしまったのは自分だ。そんな負い目を感じていたレッドマーゾはせめてクールキャットだけでも助けようと覚悟を決める。

(恐らくだが…心を燃やし尽くせば絶対零度を凌げる)

だがそれは文字通り精神を燃料にする行為だ。全てが終わった時、彼は廃人と化しているだろう。

(それでも…!)

レッドマーゾは震える腕でクールキャットを抱きしめる。

「な…にを…」

朦朧としながらクールキャットが呟く。

自分の顔はマスクで見えない。そうわかっていながらもレッドマーゾは微笑んだ。

そして光が二人を包み込む。


今日はここまで。今更ですが「皆で作る物語」と銘打っていますので、ご意見ご要望、改善点等あれば遠慮せずにどうぞ。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/25(日) 21:42:02.16 ID:dUMSmwAWo
レッドさん早くも退場か
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 01:36:48.76 ID:SUX7kL+yo
皆で作るといえどもキャラ設定がたまに作れるというだけで世界観そのものを作る機会がないから世界が拡がらないのはある
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/26(月) 18:07:26.54 ID:k0a8rgRXo
>>290
確かにそうですね。でも世界観を拡げるってどんな感じでやればいいですかね?政府の動きとか他の組織を登場させるとかですかね?あんまり大雑把に募集しても皆さんやりにくいと思いますし…
自分でも考えてみますがいい案があれば是非教えてください。
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 18:09:54.99 ID:JP4qzfEEo
いつでもキャラ設定や要素設定募集受付とか?
読者の案9割使わなくてもだいぶ改編して使ってくれても好きにしてくれて良いんだけど
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/26(月) 18:13:51.28 ID:k0a8rgRXo
一方、それより少し前。街の外に博士を運んだスカイウイングは不安に駆られていた。というのも通信機ごしに呼びかけても二人からの返事がないからだ。

「どどど、どうしよう〜!?きっと何かあったんだよ!」

ワチャワチャと忙しなく歩き回る彼女を見て、博士が提案をする。

「僕なら、何とかできるかもよ?」

その言葉を聞いてスカイウイングは立ち止まる。振り返るとジト目でマスク越しに見える瞳を見つめた。

「ほ、本当ですか?」

「もちろんさ!僕は人類の為に働く偉大な科学者だよ?」

「…」

もちろんスカイウイングはこの言葉を信じていたわけではない。とはいえ今の自分にできることがないのもまた事実。であれば賭けに出るべきではないだろうか?そんな考えが頭をよぎったのである。

「わ、わかりました!」

彼女は博士の拘束を解いて、二人を助けるよう促す。

手の傷に文句を付けながらも、博士は座りながら白衣の懐からリモコンのようなものを取り出した。さらに何処に忍ばせていたのか小さなモニターまで出てきた。

「さて、と」

博士がセッティングを終えると街の方からとんでもない轟音が聞こえてきた。地面も大きく揺れている。

「な、何ですか!?」

音は崖の方から聞こえてきている。

「ほら、コレ」

博士が指差したモニターに視線を移すとそこにはダイヤモンドダストらしき少女とレッドマーゾとクールキャットの二人が映っていた。

「ど、どういう事ですか?」

「フフフ…これは僕が発明した巨大ロボ、メタロギコンの巨人さ!」

「す、すごいです!」

興奮したスカイウイングの翼が思わずはためく。

「それじゃあ、早く助けてください!」

「断る」

「…はい?」

一瞬の沈黙のあと、博士は嘲笑しながら立ち上がるとスカイウイングの方を向いた。

「まさか本気で僕を信じたのか?君ってピュアなんだね、気に入ったよ」

やはりヴィランに頼るべきではなかったと、歯を食いしばりながらスカイウイングは自分の愚かさを噛み締める。すぐに羽を飛ばそうとするが博士が人差し指を立ててそれを制止する。

「僕に何かすればこのボタンを押す。そうしたら君のお仲間二人は…まあ、肉片…いや床の染みになって見つかるだろうね」

「このっ…!」

「おおっと、落ち着いて。大丈夫、ここから僕を逃してくれれば何もしないさ」

二人の間で睨み合いが続く。

──────

「んん…」

光に包まれた気がしたが、クールキャットはまだ自分に意識があることに気づいた。レッドマーゾが自分に抱きついていることに気がつく。

「ちょっと…?」

↓1コンマ
35以下で死亡
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 18:17:27.76 ID:HQdCGt3oO
こんま
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 18:17:45.03 ID:aHEtklv8o
昔の戦隊は戦隊メンバーで殉職したりレッド途中交代とかあったなあ
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 18:18:21.91 ID:i21X0+im0
でやっ
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 18:26:48.19 ID:JP4qzfEEo
ここで生きられる運は大したヒーロー力だ
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/26(月) 20:34:55.84 ID:k0a8rgRXo
>>292
なるほど、試しに後で募集かけてみます。


「何だ、生きてる?」

クールキャットに抱きついたままレッドマーゾが呟く。当の彼も今の事態に困惑しているようだ。

「な、何だ、あれは…」

振り返ってみると、海中から出現した巨大ロボがこちらを見下ろしながら立っていた。全長はかなりのもので、崖上から海面を覆うようにして築かれていたドーム状の氷の壁の一部が破壊されている。

どうやらロボの方にダイヤモンドダストの気が逸れたお陰で命拾いしたらしい。

「ちょっとコレ!あのクソゲス博士のオモチャじゃん!邪魔しないでくれる!」

そう叫びながら少女は巨人に向かって中指を立てた。そうしてひとしきり罵声を浴びせると、二人の方を振り返った。

「さ〜て、邪魔が入っちゃったけど、次で終わらせてあげるね♪」

再びダイヤモンドダストが手をかざす。

今度こそ終わりだ。そう二人が覚悟を決めたとき─

「へぇ、随分と大きいわね」

目の前に居たのは赤い瞳に白髪の女性、絶対皇女だ。

「ど、どうしてここに!?」

赤崎の問いに答える前に彼女はロボに向けて手をかざす。

すると一瞬のうちにをロボの全身が白く変化していく。やがて音を立てて軋みはじめた。急激な温度変化によりパーツの耐久性が脆弱化したのだろう。

左脚がおかしな方向に曲がったかと思うと、ロボは体勢を崩して海に倒れ込んだ。大きな水飛沫はこちらにまで飛んできて、あたりはまるで雨が降っているかのようだ。

その様子を見てダイヤモンドダストの表情が曇る。続けて絶対皇女は少女に手をかざす、が、何も起きない。

(なるほど…私と同じ絶対零度の使い手ね)

自分の攻撃が通用しないとみると、絶対皇女は倒れ込んでいる二人の方を見た。

「たまたま近くを通りかかったらすごい音がしたから立ち寄ってみたけど、まさかアカレンジャーと大きなニャンコに会うとはね」

「と、とにかく助かった!」

意識が落ち着いてきた二人は立ち上がる。そのまま皇女と話をしようと思ったが、何やら海の方が騒がしい。

「あれは…」

どうやら近辺に待機していたアルティメット・ワンの構成員が騒ぎを聞きつけてやってきたようだ。ブラックマーケットで入手したと思われる軍の哨戒艇まである。
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/26(月) 20:39:32.48 ID:k0a8rgRXo
「…ここは引きましょうか」

絶対皇女の言葉を聞いて、レッドマーゾは肩で息をしているクールキャットの方を見た。体調は戻りつつあるが万全ではなさそうだ。

「分かった、行こう!」

クールキャットも頷くと、エレベーターの方へ向かった。三人が乗り込むと、遠くの方から少女の叫び声が聞こえてきた。

「このっ…待ちなさいよ!必ず、必ず殺してやるからね、カチューシャッッッ!!」

こちらを指差しながら喚き始めるボスを見て、やってきた周りの部下が銃を撃ち始める。幸い、皇女が絶対零度の力で弾を直前で止めてくれている。

だが全てを防ぎ切ることはできず、何発かがエレベーターのエンジン部分に被弾した。鈍い音を立ててエレベーターが大きく揺れる。

「っ!」

必死に手すりに掴まるクールキャットの懐から人形が2つ、崖下に落ちていった。格子の隙間から手を伸ばすが、届くことなく見えなくなってしまった。

あれは大事な妹の宝物。失いたくはなかったが当然取りに戻れるはずがない。それよりもまずはこの窮地を脱しないと。思考をクリアにする。

「上に着いたら間違いなく攻撃がくる」

「ナルホドね。出口までどれくらいかしら?」

「…急げば5分かそこら」

それを聞いて絶対皇女は考え込む。

「ギリギリね。まあ氷で足が滑らなければ間に合うわ」

「…」

皇女としては冗談のつもりだったが、真顔のせいもあって二人には通じなかったようだ。咳払いをして皇女が口を開く。

「とにかく遅れないでね。それと道案内もヨロシク」

「待ってくれ。道がわからないって、あなたはどうやってここに?」

ああ、それね、と皇女が続ける。

「パワーのおかげで氷の壁なんて私にとっては無いに等しいの。それで適当なところから入って適当に歩いてたら港までついたの。だから道は分からない」

レッドマーゾはこれも冗談の一種かと思ったが、特にその後の反応もなかったので本当の事だと悟った。

「さあ、行くわよ」

皇女の掛け声と共にゲートが開く。
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/26(月) 20:43:03.36 ID:k0a8rgRXo
そうして三人は何とか下水道から外へと脱出することがてきた。出口には地面にのびている博士と、それを見張っているスカイウイングがいた。

「皆無事だったんだね!」

そう言ってクールキャットとレッドマーゾを抱きしめたスカイウイングだったが、その後ろに立つ女性の顔を見て表情が固くなる。一方で目は輝いていた。

「ま、まさか、あなたは…あの絶対皇女ですか!?」

「ええ」

勿体ぶった動きで髪をかきあげながら皇女が答える。

ファン特有の目つきを察知した皇女はファンサービスのつもりでカッコつけた動きをしたのだが、目の前の内気な女子から黄色い声が上がることはなく、真顔のまま少しがっかりした。無論、原因はその表情にあるのだが。

「それで、何でコイツは気絶してるんだ?」

スカイウイングはビクリと肩を震わせてからレッドマーゾの方をゆっくり振り返る。

「え、と。は、話せば長くなるんだけど…」

「とにかくここを離れましょう」

「猫ちゃんの言うとおりね…私も、制限時間が…」

皇女が頭を押さえながらよろめく。

「だ、大丈夫ですか!?」

すかさずスカイウイングが肩を支える。

「ええ、ありがとう。とにかくここを離れましょう」

そうして5人はその場を後にした。

──────

テーブルを挟んで椅子に座る二人。口を開いたのは姉の方だった。

「ごめん、サーシャ。あなたの大切な宝物をせっかく見つけたのに。それに貰った人形も…」

申し訳なさそうな表情の姉とは対照的に妹は穏やかな微笑を浮かべている。

「構いませんのよ。だって私の宝物はお姉さまただ一人だけですから。無事に帰ってきて何よりです。それよりも…あそこを訪れて辛くはありませんでしたか?」

「それは問題ない。でも…」

カチューシャが口を噤む。

「どうされました?」

あの時、自分を庇ったレッドマーゾの姿がフラッシュバックする。

「何でもない」

アレクサンドラはテーブルの上の姉の手を両手でそっと包み込む。

「分かりました、お姉さま」

第4話、終
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/26(月) 20:44:41.02 ID:k0a8rgRXo
それでは第5話のキーワードを↓3まで募集します。
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 20:45:33.10 ID:HYjyaTaFo
常夏
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 20:47:00.92 ID:bgBbNRXj0
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 20:47:22.98 ID:zfxqOFJKo
修行
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 20:55:44.41 ID:/fn1gOLS0
交友
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/09/26(月) 20:59:32.63 ID:k0a8rgRXo
では今日はここまで。

それと試しにですが設定の募集を行います。内容はホントに何でもいいです。ヒーローやヴィラン、それ以外のキャラクター案、組織、ヴィランや他のヒーローの動き、世界観等、何でもOKです。
できるだけ出されたものは採用しようと考えてますが、改変や採用できない可能性がある事はご了承ください。テンプレートの要望や質問もあれば対応します。
では取り敢えず次の投稿まで募集します。ただ多すぎるとさばききれない可能性があるので最大で↓10までとします。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 21:42:23.93 ID:SUX7kL+yo
世界戦隊連盟でのヒーローはその強さを厳密に評価され星5から星1に区分けされ、最強のヒーローである星5は世界で7人しかいない。上に行くほど特権も増える。営利組織なのでヒーローは人気商品。国連と比べるとフレッシュな組織で若者も多い。

国連におけるヒーローは一応皆対等であるが、実力者は自然と名声を得る。(例:ロシア最強ヒーロー)
国連中央理事会が最高意思決定機関であり、数人の理事が全国連ヒーローの動きを統括している。この理事会も全知全能という一つの目的のために世界権力を悪用している。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 22:31:37.39 ID:iuoqAdaUo
日本にはレッドマーゾ達日本のヒーローを支援するための超巨大ロボットがある
あくまでも「戦闘兵器」ではなく「人命救助」という名目で作られたマシン
戦争のためには絶対に使わない
人命救助は勿論相手の巨大戦力制圧のためには戦闘行為も辞さない
全てのマシンには使用する際にヒーローが要請して上の人に承認してもらう必要がある
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 23:13:59.39 ID:/ngWPgbrO
名前:ゲオルク=シュターゼン
ヒーローネーム:ヘル・オーガ
ヒーローライセンス:世界戦隊連盟
性別:男
年齢:38
出身:ドイツ
主な活動地域:ヨーロッパ
能力:肉体強化と自己再生。圧倒的なフィジカルと大抵の傷は瞬時に治る回復力で敵を叩き伏せ、遠距離にいる敵には大口径の拳銃を撃つ。
見た目や性格等の特徴:
身長190cm程度。筋骨隆々とした体格。オールバックにした金髪。日に焼けた肌。眉間に傷跡がある凶悪な人相で傷跡が全身にある。
荒っぽいながらも正義感が強く悪人には容赦が無い。(人質がいれば、そちらの無事を優先するが)
子どもには優しい。
来歴:ドイツの警官でヴィランに妻子を殺害された過去をもつ。
相手がヴィランなら殺害しても構わないというスタンスで立ち向かう。
能力とは別に捜査や射撃、尋問など警官としての能力も優秀。


・設定
強いヒーローの存在やヒーローの多寡は国際社会への影響力に繋がるため、ヒーローに対する数々の優遇措置や婚姻の斡旋(ヒーロー遺伝子狙い。出産の推奨。ヒーローの重婚を認める国もある)などで超人を増やそうとしている国は珍しくない。
中には自国のヒーローやヴィランからクローンを量産しようとした国もある。
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 23:28:42.19 ID:lUa15GHy0
各世界のヒーローにはそれぞれ国ごとにランキングが存在し救命やヴィラン確保等でランキングが変動する事がある。ランキングが高いほど市民からの人気も高くなりヒーローに関するグッズも出たりする(ランキング以外で有名になることもある)。現在クールキャットはロシアでのランキングが高く、レッドマーゾは日本でのランキングはそんなに高くない。各世界の1位のヒーローが集まって会議することもある。

ヴィランも同様にランキングが存在しているがヴィランの場合は全世界でのランキングなっている。悪名が高いほどランキングが上がる。ヴィランは1位〜10位まで世界最強のヴィランが存在する(ダイヤモンドダストは15位)。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/26(月) 23:59:46.17 ID:dOdsJhwAO
名前:エイラ・ルーズベルト
ヒーローネーム:炎帝
ヒーローライセンス:世界戦隊連盟
性別:女
年齢:25
出身:カナダ
主な活動地域:北米
能力:業火
見た目や性格等の特徴:赤色のドレスの金髪巨乳女、高飛車でありちょっとおバカ。
来歴:世界戦隊連盟星5ヒーローにしてカナダ第一位のヒーロー絶対皇女のライバルで北極圏あたりでよく激突している。そこはかとなくボケキャラ。バカだけど強い。作戦は突っ込んで行って全部燃やす!ファンサービスをよくしてくれる。


設定
・世界戦隊連盟本部は空中機動戦艦内にあり、ニューヨーク国連本部をよく見下ろして小馬鹿にするような飛行をしている。
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/27(火) 00:32:12.53 ID:3TBq81dRo
心の力によって物を具現化させる能力者は極めて少なく謎が多い
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/09/27(火) 00:43:22.13 ID:W6AgJkEH0
名前:ルシャ・フェネクス
ヒーローネーム:ナチュラル
ヒーローライセンス:無資格
性別:男
年齢:12
出身:ブラジル
主な活動地域:ブラジルを中心とした南米、時には世界全体に移動する
能力:自然や動植物と意思疎通が出き、彼らの力を借りて戦う
見た目や性格等の特徴: 白い肌と太陽のような金色の瞳を持つ小柄な少年 普段は大人しくぼんやりとした性格であるが、戦いの時は人が変わったようにきびきびと動く
来歴:(これはなくてもいいです)彼自身はあくまで何かによって苦しんでる自然や動植物の為に戦ってる為、自身の名声に興味関心が無く組織にも属していないため世間一般の知名度は低いが、実力は世界戦隊連盟や国連の上位のヒーローとも引けを取らない
280.47 KB Speed:0.5   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)