【マギレコ】 最後の世代の魔法少女たち

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1 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 22:38:46.99 ID:/ZKesHprO
マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝の二次創作です。
書き溜めたものを順次投下して、書き溜めた分が尽きたら不定期で
書き上げて投下する予定です。


時系列は第二部第十一章の後日を想定。
本編には登場しない魔法少女もとして美国織莉子、呉キリカが登場。
おりこマギカイベント My Only Salvationが少々絡んでいます。

拙い内容ですが、よろしくお願いいたします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1658756326
2 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 22:43:52.64 ID:/ZKesHprO


それは今でも忘れられない、在りし日の神浜市という街の記憶。


神浜市を取り巻く根深い歴史問題。

同じ街の魔法少女同士による東西抗争。

魔女化の宿命からの解放を目指すマギウスの翼が起こした騒動。

伝説の大魔女と呼ばれたワルプルギスの夜の討伐。


その後に待っていたのは、浄化システムを巡る新たな戦いの日々の幕開け。

神浜マギアユニオンの結成と、プロミストブラッドとの抗争と共闘。

時女一族との出会いと同盟、戦友の喪失、ネオマギウスの計画阻止。

午前0時のフォークロアとの邂逅、争い合っていた魔法少女陣営との和解。

そして、インキュベーターに掌握された浄化システムをついに奪還。


その後は、里見灯花と柊ねむの復活があった。


魔法少女たちを取り巻く状況と環境は、短い間に目まぐるしく変化した。
だが、数々の困難を乗り越えて、魔法少女たちは、ようやく一時の安寧を得ることができた。
そんなある日、みかづき荘へ一人の人物が訪ねてくる。
3 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 22:52:05.25 ID:/ZKesHprO
「ご無沙汰しています。環いろはさん」
「……織莉子ちゃん?」
「急に尋ねてごめんなさい。その節は大変ご迷惑をおかけしました」

彼女の名は美国織莉子。未来予知の能力を持つ魔法少女で、みかづき荘の住人は
織莉子と面識があったが、当時は八雲みたまを巡る戦いで、敵対関係にあった。
お互いに命を危険に晒し合ったものの、織莉子の謝罪により和解を果たした。

その後は交流がなかったが、数ヵ月振りの再会となる今日、彼女は深刻な表情で現れた。
未来予知の内容を伝えに来たという織莉子を、環いろはが玄関先で迎える。

「すみません。本日、みなさんはいらっしゃいますか?」
「今日はみかづき荘のみんなで、これから出かけるところなの」
「そうでしたか。それでしたら日を改めます。都合のつく日を教えて下さい。大事なお話なんです」

いろはは、後ほどメンバーの都合を聞き、織莉子に連絡することを約束し、お互いの連絡先を交換。
織莉子はみかづき荘を後にした。
4 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 23:00:37.83 ID:/ZKesHprO
「誰か来ていたの?」
「それが、織莉子さんが訪ねて来たんです。深刻そうな顔をして……」
「織莉子って……あの時の、美国織莉子よね……?」
「これから出かけることを伝えたら、日を改めると。急なんですけど、
 みんなの予定が空いている日はありますか?」
「そうね、ちょっと聞いてみるわ」

七海やちよは、由比鶴乃、フェリシア、二葉さな、環ういに日程を尋ねると、
最後にいろはの予定を尋ねて、織莉子に伝えるよう促した。
織莉子からはすぐに、週末の休日に来訪する旨の返信があった。

「やちよさん、織莉子さんに日程を伝えました」
「ありがとう。美国織莉子、みたまの時のことを思い出すわ……」
「みたまを襲ったときは何事かと思ったけど、あんなことをしたのは、
 よく分からないままだったなぁ」
「あん時、一緒にいた黒いやつには、手こずらされたぜ」
「あの時の魔法少女が、今度は何の用ですかね……」
「お姉ちゃん、織莉子さんはどんな用事が言ってた?」
「さっき、電話で少しだけ話を聞いたんだ。今度、織莉子さんが来た時に、
 全容を話してくれることになってるんだけど」
「電話で聞いた話だけでもいいわ。どんな話を聞いたの?」
「それが……」

いろはは、先ほど織莉子と電話で交わした、会話の一部始終を語った。
話し終えたとき、話を聞いていた全員が呆れたような、怪訝な表情のまま、視線をいろはから逸らした。
5 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 23:07:02.38 ID:/ZKesHprO
ショッピングモールのポイント10倍デーに備えて、出発準備が整っていた住人は、
居間で着席はせずにいろはの報告を聞いた。

織莉子によれば、全人類が死に絶える未来を予知したという。
それを止められる可能性にかけて、みかづき荘を訪ねたとのことだった。
かつて、いろはたちと対峙した際、いろはの他者との絆を信じる前向きな姿勢に、
救世の可能性を感じたとも。

「率直に言うと半信半疑ね。みたまの時のことは謝罪を受け取ったから、
 当時のことをフィルターにかけたりはしないけど」
「でも、今日のことは電話だけで、今度は直接話すわけですし、
 いくらなんでも与太話ってことはないと思います」
「そうよね。そんなことするような人じゃないでしょう。今度の休みなのだけど、
 全員、一日予定を空けてちょうだい。もし本当に未来が危ないという話なら、
 真剣に聞きたいのよ」
「お姉ちゃん。今日のことなんだけど、私からもいいかな?」
「うい?」
「未来にかかわることなら、灯花ちゃんたちも呼びたいんだ」
「なんでアイツらまで呼ぶんだよ?」
「星屑タイムビューワ」
「なんだそりゃ?新手のウワサか?」
「今はもういないウワサだよ。桜子ちゃんの裁判があった日なんだけど、
 あの日、時間が来るまで、星屑タイムビューワで未来を一緒に見たの」
「中央区に行った時のことだね。覚えてるよ」
「だから、灯花ちゃんたちにも来てほしくて」
「分かったよ。私から連絡しておくね」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「やちよさん、一旦部屋に戻ります」
「分かったわ」

いろはは自室に戻ると、灯花に電話で連絡を取った。
灯花はすぐに電話に出ると用件を聞き、いろはは先ほどの内容を伝えた。
6 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 23:09:25.39 ID:/ZKesHprO
『未来のことかー。わたくしも興味あるし、ねむと桜子、あとは書記を連れて行くね。
 場所はみかづき荘でいいの?』
「うん。午前十時には織莉子さんが来るから、間に合うように来てほしいんだ」
『分かった。ねむたちにも言っておくね。それじゃ、またその日にね』
「よろしくね、灯花ちゃん」

いろはは灯花との連絡を終えると、やちよに報告し、目的地であるデパートへ出発した。


後日、美国織莉子は改めてみかづき荘を訪れた。
みかづき莊の居間には、みかづき荘の住人と里見灯花と柊ねむ、柊桜子、
書記として連れてこられた佐鳥かごめの、計十名が揃っていた。

「あなたが美国織莉子だね。はじめまして。わたくしは里見灯花」
「僕からも、はじめまして。僕は柊ねむ。こっちはウワサの柊桜子、
 書記として来てもらった佐鳥かごめ」
「|はじめまして。桜子でいい|」
「こ、こんにちは……佐鳥かごめです」
「みなさん、どうもご丁寧に。本日、予知で視た未来をお話しさせていただく、
 美国織莉子よ。私のことは織莉子と呼んでいただければ」
「そうさせてもらうね」

時間通りに全員が揃った場で、織莉子の話が始まろうとした前、かごめが挙手。

「かごめさん、でしたね。どうされました?」

かごめは魔法少女の記録をまとめた『マギアレコード』へ、記録を残すため、
後ほど織莉子への取材を希望し、主旨を理解した織莉子から快諾を得た。

「魔法少女の取材記録とは、大きな目標を掲げているんですね。
 せっかくだから、キリカも連れて来れたらよかったわ」
「そういえば、キリカちゃんは今日、来てないの?」
「これからお話しすることと関係していますが、別件で動いてもらっているんです。
 今頃は、ミラーズで調査をしているはずです。私は予知の内容を伝えに来ました」
「その予知のことだけど、いろはから未来に脅威が訪れると聞いているわ。
 どんな未来を視たのかしら?」
「少し話が長くなってしまいますが、お時間は大丈夫ですか?」
「この場にいる全員に、今日一日の時間を空けてもらってるわ」
「未来にかかわるとなると、一日かかってもおかしくないと思ったんだ」
「ありがとうございます。では、お話しします……」
7 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 23:15:27.74 ID:/ZKesHprO
織莉子が語る内容を簡潔にまとめると、彼女が視た未来には、世界にアリナ・グレイ以外の
魔法少女が存在しない。そこに生きている人類はアリナ以外におらず、世界には魔女とも
使い魔とも言えない異形が蔓延っている。

その世界でアリナは、巨大な魔女と思わしき存在と融合して力を振るっており、全人類を
人ではないものへと変え、互いに争わせ、その様子を見て狂笑を浮かべているという。

「異形の正体は、アリナ・グレイによって、姿形を変えられた人類の成れの果てでしょう。
 何らかの対策を打たなければ、人類の未来は永遠に閉ざされてしまうかもしれません」
「未来でアリナさんがそんなことを……」
「話を聞く限りだと、アリナが人類を滅ぼすように聞こえるわね」
「人間を化け物に変えてるってことかな?アリナだったら、やりかねないけど……」
「ですが、あくまでも可能性にすぎません。惨状の原因がアリナだとは断言できないんです」

それを聞いて、織莉子の一番近くに座るいろはが、質問のために手を上げて口を開く。

「仮定形で話してたけど、アリナが原因ではない可能性がある、ってことかな?」
「恥ずかしながら、断言できない理由は、私の予知能力にはぶれが生じるんです。
 自信の能力でありながら制御しきれなくて、それ故、重要ではない情報も私の
 意思とは関係なく予知してしまうという有様。それでも大筋は予知通りになる。
 未来で人類に滅亡の危機が迫るのは確かなんです」
「分かったわ。続けて」

いろはの隣に座る七海やちよは、いろはの質問で中断した説明の先を促した。

「キリカがアリナの身辺を調査中ですが、判明していることとして、彼女は自分専用のアトリエを
 願いで手に入れたことが分かっています。アリナの関係者と遭遇した際に知ったようですが、
 行方不明中のアリナは、そこに潜伏している可能性が高いと思われます」
「だったら、アリナのアトリエを見つければ、大事に至る前に解決しそうよね」
8 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 23:21:12.50 ID:/ZKesHprO
「それが、キリカと一緒にアリナに関係する場所を巡っていますが、成果は上がっていません。
 今のところアトリエを特定する方法も、侵入する手段も見つかってないんです」
「探せば見つかるような場所じゃない、ってことかな。それじゃ手の打ちようがないんじゃ?」

やちよの隣に腰かける鶴乃は、織莉子の説明が始まる前に、やちよが全員に用意した麦茶を
一口飲んで、喉を潤して尋ねた。

「アトリエが願いで手に入れたものなら、恐らくですが、アリナ本人しか辿り着けない
 場所であることも考えられます」
「それが本当なら、究極の自分専用だなぁ」
「アリナのアトリエは、超時間的、超空間的な場所に存在するのかもしれません。
 キュウべぇに聞けば、ヒントくらいは得られるかもしれませんが、神出鬼没です。
 探しても肝心な時に見つからない。こちらから接触するのは難しいでしょう」
「しょーがねーって、キュウべぇだし」

鶴乃の向かいに腰かけるフェリシアは、両手を頭の後ろで組んで不満を露にし、
ソファの背凭れに体を預けて脚を組んだ。

「だけど、あんなことがあった後で、キュウべぇが取り合ってくれるんでしょうか」
「た、多分、話くらいならしてくれるかも……」

浄化システムのコアとなった日を思い出しつつ、ういは心配そうに呟いた。
9 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 23:25:47.21 ID:/ZKesHprO
「こんなんじゃ、一度隠れたら、隠れた本人が自分から出てこない限り、どうにもならないね」
「こっちから乗り込んで、怖いねーちゃんを叩けねーってことかよ。ずりぃ」
「そうだ。キモチ石の時みたいに、灯花ちゃんからキュウべぇに接触できないかな?」
「そうしたいところだけど、まだ電波望遠鏡の修理は完了してないんだよ。
 しばらく機械たちも動かしてなかったから、稼働試験もしないとだし」
「こちらからキュウべぇに接触するのは、一旦は保留しておこう。今はアリナのことが気になるよ」
「アリナは、何らかの手段を用いて、アトリエで時間の経過を待つつもりなのでしょう。
 それがどのような方法かは分かりませんが、アリナを発見する方法がないのなら、
 鶴乃さんが仰る通り、彼女が自発的に現れるのを待つしかないでしょうね」
「未来でアリナが現れるのを待つしかないんですね。どれくらい待てばいいんでしょうか?」

織莉子はやや顔を俯かせて言い淀んだが、意を決したように顔を上げて答えた。

「……おおよそですが、百年弱です」

織莉子の返答を聞いて全員が絶句し、フェリシアの隣に座るさなは目を見開いた。

「ひ、百年って……冗談じゃ……ないんですよね?」
「……予知で視えたビジョンに、それくらいの時間経過を示すものがありました」
「百年なんて……仮にそこまで生きてても、その頃の私たちは全員、おばあちゃんだよ……」

さなの隣に座る環ういは、アリナ・グレイに対峙する、魔法少女姿の老婆集団を想像して落胆した。
そこへ、柊ねむ、里見灯花、柊桜子が言葉を続ける。
10 : ◆3U.uIqIZZE :2022/07/25(月) 23:36:30.63 ID:/ZKesHprO
「アリナが目指す、ベストアートの完成が目的なのかもしれない。自分以外に魔法少女が
 存在しない時代であれば、誰の妨害なく悲願を成就できると考えたのだろうね」
「混乱のどさくさでアリナを逃したのは痛手だったよ。困ったことになったにゃー……」
「|だからといって、アリナを全く放置するわけにもいかない。
  何か手を打つ必要があるけど、一旦休憩を挟むことを提案する|」

桜子の提案を受け入れた一同は、十五分後に会合を再開した。
各々、思い思いに休憩をとっていたが、灯花は休憩中から何かを考え込んでいた。
会合再開直後、いろはが灯花へ質問を投げる。

「灯花ちゃん、何か方法はあるかな?私たちじゃ何も思いつかなくて……」
「うーん……提案は……あるにはあるんだけど……」

灯花が語る未来を襲う脅威への対策方法は二つ。
一つは鏡の魔女結界に存在する無数の鏡から、目的の時間へ繋がる鏡を見つけ出し、
アリナが事を起こす未来へ渡ること。もう一つは、要員を選定してコールドスリープで
未来へ送ることだった。

「提案しておいてなんだけど、ミラーズを使う方法は、現実味の薄い方法なんだよね」

前者は目的の時間に通じる鏡が、存在することを前提とした方法だった。
だが、これまで未来の時間に繋がる鏡を、発見したという記録はない。
株分けの魔女の性質上、仮に以前に発見していたとしても、鏡を壊せばその記憶自体が消える。
未来に通じる鏡が存在する可能性はあるものの、どの鏡が目的の時間に通じているかは分からない。
それが発見できても、無事に未来へ渡れる保証も、未来から帰れる保証もない。

「それに、ミラーズで未来と現在を行き来できても、それはそれで別の問題があるんだよ」
「どういうこと、灯花ちゃん」
11 : ◆3U.uIqIZZE [sage]:2022/07/25(月) 23:40:07.03 ID:/ZKesHprO
「わたくしたちが暮らす現在を世界α、百年後の未来を世界βと仮定してお話するね。
 未来へ行って現在に帰ってくることは、わたくしたちにとっては世界αと世界βを
 往復しただけ。これは分かるかなにゃー?」
「うん」
「だけど、宇宙の視点からすると、それはまた別の意味を持つの。世界αは、世界βを
 経由した時間旅行者を内包する世界α’となるんだよ。百年後の未来である世界βは、
 世界αからの時間旅行者を内包していた世界、世界β’となる。これもいい?」
「ちゃんとついていけてるよ」
「これが何を意味するかというと、世界α’では百年後の未来までの間に起きる
 すべての出来事は、世界β’に繋がるよう、世界α’が調整されるかもしれない、
 ということなんだよ」
「え、えっと……ごめん、ちょっと混乱してきた。世界βと世界β’はどう違うのかな?」

そこへ、ねむが灯花の説明の捕捉に加わる。

「いろはお姉さん、僕たちがミラーズを経由して、百年後の未来である世界βに渡ったと考えて」
「うん」
「世界βに到着したら、脅威を払拭するまでは、世界βに滞在することになるよね。
 この時点では、世界βはまだ世界β’になっていない。これはいい?」
「大丈夫、ついていけてるよ」
「脅威を払拭して世界βから世界α……つまり、現在に戻ってくる。すると世界αは
 世界α’となり、世界βは、僕たちが去った時間以降が世界β’となる」
「そっか。私たちが未来へ渡ったとして、現在に帰ってくるまでは、どちらの世界も
 ダッシュには変わらないってことだね」
「その通りだよ。世界βが世界β’に変わるのは、現在である世界αに到着した時。
 その時、はじめて世界αは世界α’になり、世界βは世界β’になる」

そこまでの説明で、会合出席者の一部は、首を傾げて考え込み始める。
出席者のうち、頭を抱えて困惑するフェリシアの様子は、一際目立っていた。
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