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タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part8
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596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2024/07/20(土) 18:45:28.06 ID:udPuxTgm0
>>42
「ナイト・ライフ」
狸が、線路脇の公園の植込みから顔を出したが、すぐ引っこめた。電車がやってきたからだ。
まばゆいほどにヘッドライトを輝かせ、木製の粗末な柵で仕切られた線路上を、リズミカルに鳴らして走る。
その電車が、ひとりの酔っぱらいを追い抜いた。見事な赤ら顔で、へべれけでないはずがない。
ジャケットをはだけて、ビール腹をつきだし、よたよたアヒルみたいに線路沿いの細い路地を歩いていた。
狸は植込みの下に隠れて電車が通過するのを待っていた。そしてその長い車体の大半が狸から遠ざかったとき、
狸は様子をうかがうために頭を植込みから出し、すぐ隠れた。酔っ払いが近づいていることに気づいたのだ。
いくら東京の片隅でも、すべての生き物が人に慣れているわけでもない。特に狸なんかは、夜がその生活の舞台だから、
そうそう人とは交わらず、慣れてもいない。それに千鳥足の樽のような人間は見慣れていなかった。
電車と酔っ払いは通り過ぎた。横の様子を確認して、狸は線路を横切った。もちろん、何の邪魔も入らない。
狸はそのまま夜の住宅街のくらい路地をかけていった。どこを目指しているのか、誰も知らなかった。
その狸がさっきまでいた植込みの裏に、二つの影が屈みこんだ。
この植込みは、線路脇の路地沿いを数十メートルぐるっと取り囲み、公園のなかを外から隠していた。
これだから、若者やチンピラのたむろすることになるわけだが……
20分ほどして、二つの影がのっそり立ちあがり、植込みをまわりこんで路地に出てきた。
若い男女だった。黒髪の白いブラウスと黒いスカートの女と、センター分けのカーゴパンツの男。
彼らは手を握り合って、線路脇の路地を、さっき電車が走り去った方とは逆のほうに歩いて行った。
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