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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4
- 458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 21:45:03.53 ID:D38ZPOww0
- 1.死体付近に落ちている矢
- 459 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:52:18.49 ID:PGzGnqfO0
- 1 選択
------------------------------------------------
【死体付近に落ちている矢】
死体に突き刺さっていたであろう矢を拾い上げる。
誰かが握っていたのだろうか、本来無機質な冷たさであるはずの鉄の柱はほのかに熱を有している。
ルカ「……」
にちか「ルカさん、何をそんなにジロジロ見てるんですか? 何か気になることでもありますー?」
ルカ「いや、なんでもねーよ」
美琴「二人とも、これも正解みたいだよ」
美琴の指摘通り、私の手の中で矢はその姿をみるみると変えていく。
魔法の感触というのは随分と心地が悪い。
手に纏わりつく泡のような物質は鬱陶しいばかり、キラキラとした光の粒子も目に五月蝿い。
ルカ「……今度はなんだ? なんだかチラシっていうか、パンフレットみたいになったわけだが」
さっきまでのコピー用紙とは違ってすべすべとした手触りの紙切れ。
組織のロゴマークとは対照的に青や白で飾られて、いかにもベンチャー企業といった印象。
この外面だけの良さは、外部の人間に向けられたアピール用、なのだろう。
- 460 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:54:22.70 ID:PGzGnqfO0
-
にちか「……『チーム・ダンガンロンパ』、これって月岡さんが言ってたやつじゃないですか?」
美琴「透ちゃんも知ってたみたいだったよね」
《恋鐘「そう! うちも社長も、チームダンガンロンパのメンバーやけんね!」
智代子「チーム……ダンガンロンパ?」
あさひ「ダンガン、ロンパ……」
透「……ちょっと待ってそれって」
恋鐘「まあ、そん辺りのややこしか話はうちが死んだ後の真相究明編でやればよかとやけん、割愛するばい」
智代子「え、ええっ?! そんな勝手な……?!」
恋鐘「チームダンガンロンパはあくまで裏方、メインはコロシアイに参加しとるみんなやけんね。そこに割くべき尺も文量もなかよ」》
《あさひ「それに、大事なことは隠したままっす。恋鐘ちゃんと天井社長のバックにいるチームダンガンロンパ。これが分からないんじゃ、何も解決してないっす」
透「その組織自体は、聞いたことある」
智代子「え、本当に……?!」
透「一応、ね。詳しいことは知らないけど、前回のコロシアイ……どころかこれまでにも何度もコロシアイを仕掛けてきたんだって」
あさひ「コロシアイって……今回と前回だけじゃないんっすか?」
透「……みたい。それを裏で取り仕切っているのがチームダンガンロンパ、とか」
智代子「そ、そんなの……聞いたこともないよ……」》
これまでの人生で一度も聞いたことがないような組織だった。
コロシアイなんてものすら人生で触れることはまずないのに、それを取り仕切っているだなんてSF小説にしてもくだらない。
もはや信じるとか信じないとか、そんな前提にすらないようなお話で、私は両手を手放してしまっていた。
それなのに、目の前の紙切れは実在だと声高に主張してくる。
- 461 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 21:56:34.29 ID:PGzGnqfO0
-
『チーム・ダンガンロンパは刺激の足りない毎日を送る皆様にこれまでにない画期的なエンターテインメントを提供するソーシャルエグゼクティブなグループです!』
『我々は人と人が命をかけて生存を争う様子を【コロシアイ】と題してリアルタイムな配信を行なっています! 平穏に飼い潰されてしまった日常に、刺激的な時間をお届け!』
『コロシアイは正真正銘の本物! 本当に実際の人間が血を流し、苦しみ、命を落としています!』
ルカ「マジでこんな組織があるってのか……?」
コロシアイ、なんて文字列と共に並んでいるのはスタッフであろう人間のお手本のような笑顔。
キラキラとした表情に血生臭い文言ばかりが並んで、その取り合わせがなんとも言えない不快感を抱かせる。
にちか「でも、確かに需要はありそうですよねー。スプラッタ映画とかって昔からコアなファンがいるじゃないですか」
ルカ「いやいや……あれは作り物だろ? 生身の人間でのコロシアイだなんて、そんなのそもそもが法を犯してて……」
美琴「だからこそ、じゃないかな」
美琴「日常の範疇から逸脱しているからこそ、人の目を引く。ラインを超えてでも見てみたい、そういうふうに思う人はそう珍しくもないんじゃない?」
ルカ「まあそうなのかもしれねえけど……」
ニ猇kkkkkk
『あははは! そうですよね、私だって人が死ぬところ見てみたいですもん! あははははは!:
深コ菟
【人のお腹を裂くとどんなふうに内臓が出てくるのかな人の首を切るとどんなふうに血が飛ぶのかな人は命を落とす時どんな声を漏らすのかな≫
¿尼Ch果
:コロシアイはもう一大エンターテインメントなんですよ無責任に人の生き死にを笑いたい惨たらしい死に様を嘲笑いたい「
ルカ「ふーん……まあそういうもんか」
私だって同じことが繰り返されるような日常には飽き飽きしているんだ。
コロシアイという刺激に飛びつく人間がいたとしてもそれはおかしくもないのかもな。
コトダマゲット!【チーム・ダンガンロンパ】
〔恋鐘と努が生前所属していた組織。コロシアイをエンターテインメントと定義し、リアルタイム配信を行なっていた。コロシアイを運営するのはこれが初めてではなく、既に何回もコロシアイが行われていた〕
1.ボウガン
2.死体の抱える本
↓1
- 462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 21:58:30.64 ID:D38ZPOww0
- 1.ボウガン
- 463 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:05:30.05 ID:PGzGnqfO0
- 1 選択
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【ボウガン】
本が群れをなす中にひっそりと、その群れの中に姿を隠すようにして置かれたものがある。
いかにも重要そうな手がかりみたいな面をしておいて、実際は事件とは無関係な偽装された証拠だと言うのだからタチが悪い。
美琴「ボウガン……千雪さんに刺さっているのとは型番が違ったんだよね」
ルカ「おう、これを置いたのは月岡恋鐘……狸だよ。冬優子を秘密で釣っておいて、罪をこれでなすりつけようとしたわけだ」
にちか「これもヒントみたいですね、弓がなんかぐにゃりだしましたよ!」
ボウガンは飴細工のように捻じ曲がったかと思うと、今度私たちの前に突然と浮き上がる。
そこに壁などないのに、何かにぶつかり溶け込むようにして、長方形の板のような形に変わった。
それを一言で言うなら、ゲームのウィンドウだ。
にちか「うわ……なんかアルファベットと数字の羅列……これってプログラミングってやつじゃないです?」
美琴「……みたいだね、すごい情報量」
ルカ「おいおい、こんなもんパッと見せられても私たちじゃ全く意味わかんねー……」
美琴「……エラーが発生してるみたいだね」
ルカ「あ?」
にちか「み、美琴さん! プログラミング分かるんです?!」
美琴「ううん、そうじゃなくて。ほら、単純にこの一部分には〔error〕の表示があるよね?」
ルカ「あ、言われてみれば」
美琴「テキストメッセージとして出ているものだけ拾えば、少しくらいは読み解けるんじゃないかな」
にちか「だ、だったら任せて下さい! 英語は得意科目……ってほどでもないですけど、一応現役なので!」
美琴「うん、頼めるかな」
- 464 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:06:29.81 ID:PGzGnqfO0
-
妙に息巻いてウィンドウを流れるメッセージを読み解いていくにちか。
言葉を辿々しく拾い集めると、恐る恐るその解答を口にする。
にちか「多分……なんですけど、このエラーは何かウイルスが混入して発生したみたいです」
美琴「ウイルス? これは病気になってるの?」
(おいおい……)
にちか「誰かが持ち込んだウイルスによってシステムに異常が起きてて……多分、外からじゃどうにもならない……みたいな感じだと思います」
ルカ「外から? プログラムに外も中もないだろ」
にちか「うるさいなー、私だってよくわかんない分野の話なんですから黙っててくださいよ」
ルカ「なっ、生意気な……」
美琴「もしかして、セキュリティの話なんじゃない? ハッキングを防ぐためのファイアーウォールとか……そういう話だったりして」
にちか「さ、さすがは美琴さん……! どこぞのニュース解説者より分かり易い解説です……!」
ルカ「無駄に喧嘩を売るなっての……」
(まあ、言い方はさておいて……ウイルスの侵入によるセキュリティ異常ってのは覚えておいてもいいかもな)
(何のシステムのメッセージかはわからないけど、外部とは完全に遮断されたことは大きな意味を持つはずだ)
コトダマゲット!【プログラムエラー】
〔何らかのシステムにおけるエラーメッセージ。システム内部に何かウイルスが侵入した事でセキュリティシステムが異常作動を起こし、外部の干渉を完全に遮断してしまったらしい〕
【選択肢が残り一つになったので自動進行します】
- 465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/08(火) 22:07:48.92 ID:xVZEcpDk0
- 1
- 466 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:09:50.70 ID:PGzGnqfO0
- ------------------------------------------------
【死体の抱える本】
千雪が何やら大事そうに手にしている本がある。
彼女の腹部から漏れ出たものであろう血は、手のひらを経由して紙の装丁の表紙にべったりと張り付いている。
元々の表紙、そのタイトルは今からは解読不能だろう。
ルカ「……」
何故だか、私はその本から目が離せなかった。
別になんてことはない、死体が握っていただけの一冊。
それこそダイイングメッセージの一つでも蓄えた宝箱くらいの認識で足りるはず。
私が抱いているのは、一体なんの感慨なんだ。
にちか「何ボケーっとしてるんですか、さっさと検証しましょうよ」
にちかはそんな私を他所に死体から乱暴に本を引ったくる。
この本も例に漏れずウサミの魔法がかけられていたようで、血に塗れた表紙はチカチカしたピンクの光と共に移り変わり、既視感のある一冊へと変わった。
ルカ「……これって、確かモノクマの工場かなんかで見つけたやつじゃ」
『ジャバウォック島再開発計画』のタイトルに掲げられている通り、
ここに記されているのは時代に取り残された観光島・ジャバウォック島の事業再生を目指す計画書。
その先導に立つのは、私たちの前にその存在を何度か仄めかした『未来機関』だ。
- 467 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:12:19.82 ID:PGzGnqfO0
-
にちか「うーん……でも変ですよね、この島って私たち以外にまるで人はいない感じなのに。このファイルにはずーーっと人が住んでて生活が営まれてる体で書かれてますよね」
美琴「……姿を消したにしても大規模だよね」
ルカ「それに、この島で見つけた被験体……ってのは誰の何を指してるんだ……?」
にちか「島の中央の行政施設を解体して未来機関の拠点にする……はー、かんっっぜんにサッパリです!」
ルカ「あの遺跡を作って何がしたかったのかも分からないし……マジで謎だな」
にちか「こうなったらあの遺跡に入ってみる以外なくないです? 他のことはなーんにもわかんないですし」
ルカ「おいおい、またパスワードかよ……めんどくせえな」
私たちの前に何重にも立ち塞がる謎という壁。
その一つ一つが分厚く、そして全貌の見えぬほどに高い。
美琴「……ルカ、これは前に見た書類と完全に一緒?」
ルカ「ん? おう……あさひと見た時と一緒……だな。元々この島には住んでいる人間がいて、中央の島の行政機関をぶっ潰す形で『未来機関』ってのがここに拠点を持ったらしい」
美琴「その後のこれは?」
ルカ「……『先遣部隊が上陸時、既に標的の姿は島にはなく、鎮圧自体は何ら妨害を受けることもなく成功した』」
ルカ「まあ、見たことない記述だけど……そんなに重要なのか?」
美琴「……」
にちか「なんかほんとどこまでも小学生の自由帳みたいな話ですよねー」
ルカ「どこまで信用できるのかは疑問だな……」
コトダマゲット!【ジャバウォック島再開発計画】
〔未来機関という組織がジャバウォック島を再開発し、新たに本部を構えるまでの記録。中央の島には行政機関があったらしいが、そんな痕跡は今現在の島には全くない。未来機関が上陸時に、既に標的の姿は島になかったという〕
- 468 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:14:38.30 ID:PGzGnqfO0
-
ルカ「後はこの死体ぐらいのものか……」
千雪の亡骸の近くに散らばっている物は一通り拾い上げて、その正体も確かめた。
しかしながら、まだパスワード自体は分かっていない。手がかりを残すのは、この死体だけ。
にちか「じゃあ今度こそ死体を分解しますかねー。両腕引きちぎっちゃいます?」
美琴「そうだね……その前に眼球を抉ったりして、小さなところから確かめようか」
(……)
不思議な感覚だった。
真実を知ろうとしているだけ、先に進むために探索をしているだけなのに、なぜかにちかと美琴の言葉の一つ一つに胸がざわつく。
そんな感情は無用な感情だ死体は死体でしかないそんな感慨なんて抱いたところで無意味
屍を踏み越えて私たちは先に進む希望に停滞はない希望に行き止まりはないただ前に進むだけ
ルカ「よし、それじゃあ舌をペンチでぶっこ抜くところからだな!」
死体をぶち壊して情報を啜ろうとしたその一歩手前。
またしても死が裏返った。
美琴「……!」
踟¡逝キ
|私が一■黙って■■ばい■罪■背■って■を閉ざしてい■■誰も傷つ■ない私だ■■犠牲に■ればいい
にちか「あ、またパスワード教えてくれるやつですかね! ほら、早く言っちゃってください! ゲロった方が楽になりますよ!」
ルカ「取り調べじゃないんだから……」
チ$裄:;
■を貫く鉄芯が■■い本当■■れでよか■たの■な私が■■意味はあっ■のかな■が信じ■あげ■■よかったの■な私は疑うこ■を■■てよかっ■のかな
美琴「パスワードは『モ』……ありがとう、後はもうゆっくり休んで」
ルカ「これで2個目、か」
にちか「このペースじゃ日が暮れちゃいますよ! さっさと次行っちゃいましょう!」
私たちがパスワードを獲得すると、千雪はその場に崩れ落ちてまた物言わぬ骸に戻った。
死体を傷付けずともヒントが得られた。そのことに安堵せずにはいられない自分がいたが、二人には悟られないように取り繕っていた。
- 469 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:16:11.54 ID:PGzGnqfO0
-
美琴「次のヒントは『落ちて、堕ちて、墜ちる』……」
にちか「どこか高いところなんですかねー……? 崖の上とか!」
ルカ「今日は火曜日でもないしサスペンスでもないぞ。それにこの島にそれらしい崖なんかないだろ……」
(まあ高いところってのは間違いなさそうだな……考えてみるか)
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『落ちて、堕ちて、墜ちる』
【第三のヒントが指し示す場所を選べ!】
↓1
- 470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 22:19:37.52 ID:D38ZPOww0
- 病院の駐車場?
- 471 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:22:27.88 ID:PGzGnqfO0
- 【正解】
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【第3の島 病院 駐車場】
西部劇を思わせる荒野に突如として現れるコンクリートの絨毯。
すっかり砂をかぶっているため、その表面はざらついており、ソールが叩いてもコツンという足音には雑音が混じる。
高所とは真逆の印象もあるこの場所に、なぜ足を運んだのか……相変わらず自分自身でもわからないままだ。
にちか「えー、病院? どこか体でも悪くしてるんですかー?」
美琴「ルカ、どういう推理なの?」
ただ、その不可解はすぐに接頭語も外れることとなる。
ルカ「……ビンゴみたいだな」
私たちの前に現れたのは血の海に正面から顔を浸し、うんともすんとも言わなくなった三峰結華の死体。
その頭上をハゲタカが獲物を狙うように、ドローンが飛び交っていた。
にちか「うぇー……なんかあの死体、顔面グロい感じになってる気じゃないです……? ルカさん、ちゃっちゃと捲って見てきてくださいよ」
ルカ「私はオマエの小間使いじゃねえぞ……チッ、とりあえず死体の周りで情報を集めようぜ」
美琴「まあ……それが良さそうかな」
やたらと照りつける日差しが厳しい島だ。野外の操作は手早にしておかないとこちらの体力が持っていかれる。
それに……腐臭も増していくばかりだ。
1.結華のメガネ
2.青い繊維
3.ゲッカビジン
↓1
- 472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 22:24:48.74 ID:D38ZPOww0
- 1.結華のメガネ
- 473 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:26:27.22 ID:PGzGnqfO0
- 1 選択
------------------------------------------------
【結華のメガネ】
死体は真っ正面から激しい衝撃を受けているので、みるも無残な有様という他ないが、
その脇に落ちているメガネはあり得ないほどに綺麗なまま。
事件の鍵を握っていた重要なパーツ……パスワードのヒントがあると言うのなら、ここだろう。
ルカ「……やっぱりな」
天に透かすようにしてみると、度の入ったはずの視界は鮮明になるどころか、反対に別のものを映し出した。
まだ太陽は高く登っている、周りには遮蔽物もない。
それなのに、レンズの先はまるで別世界のように真っ暗だ。
にちか「うわ……ルカさん死体から剥ぎ取ったメガネかけてますよ。どこの羅生門なんですかそれ」
ルカ「捜査のためだ……うるさいな。それに羅生門は髪の毛だろうが」
一つの仮説を立て、自分自身でメガネを装着。
そのまま顔を上げて天を仰いでみると、仮説を裏付ける根拠が顔を覗かせた。
- 474 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:28:15.48 ID:PGzGnqfO0
-
ルカ「……やっぱり、このメガネを通してみると夜の状態の島の様子が見えるんだな」
夜空に散らばる星の数々、その中央に鎮座する真円の満月。
この島に来てからずっと見てきた夜空そのものと全く変わりない光景がそこにはあった。
ルカ「……」
自然と、あの夜のことを思い出す。
にちかを犠牲に生き残ったあの晩に、息が詰まるような切迫感の逃げ道を空に探した時のことを。
あの時から、この空は何も変わらない。
星の配置も、月の満ち欠けも。
まるで時が止まってしまったかのように変わらないのである。
ルカ「なあ、二人はどうしてこの月の形が変わらないんだと思う?」
爾|#戈
そんなこ■を気にする必要はありませ■私た■は使命に従■■生き■だ■彼女た■を■■るために育て■だけそれ■■が生きる理由な■です■
m萎k悪t苧
私た■は舞台装■彼■たちをステ■ジに立たせるた■■舞■装置■だけ見せ■だ■そこ■思■■必要ない■■要らな■
ルカ「……そう、だよな」
私は何を気にしていたんだ。月の形が変わらないからってなんなんだ?
考えたところで答えが見つかるわけでもないのに烏滸がましい身分不相応図に乗っているダメだ却下拒絶断絶中断終了
コトダマゲット!【満月】
〔この島に来てからずっと月の形は変わらないまま〕
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1.青い繊維
2.ゲッカビジン
↓1
- 475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 22:32:38.14 ID:D38ZPOww0
- 1.青い繊維
- 476 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:36:43.38 ID:PGzGnqfO0
- 1 選択
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【青い繊維】
空を飛んでいるドローンを調べようにも、手を伸ばしたところで届くはずもない。そうなると視線は自然と死体に戻ってくるわけで。
……だとしても、なぜこんな糸屑に私の視線は止まってしまったのだろう。
死体の纏っている衣服のどれとも違う、青い色合いの繊維。
ほんの一ドットほどの違和感が私を捉えた。
ルカ「まさかこんな所に眠ってたりしないよな……?」
だが、その違和感はもはや確証に等しかった。
このレクリエーションが始まってから、明らかに私は異常だ。
何かに手を引かれているかのように行動の全てが他の誰かの意思の上にある。
導かれた先の悉くで、それに出会う。
にちか「わ! またモノミの魔法ですよ!」
美琴「……今度は資料とかじゃないね、どんどん大きくなっていく」
私の手を離れたところで繊維は粒子を巻き込んで大きくなっていき、やがて一つのものを形作る。
これまでの紙や冊子の形状とは全くの別物。
そこに出てきたのは……
ルカ「浅倉、透……?」
私たちが共同生活を続けてきたやつと全く同じ姿形で、化けて出たのである。
- 477 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:38:06.85 ID:PGzGnqfO0
-
美琴「ホログラム……のようなものなのかな」
にちか「浅倉さーん……? これ、どうなってるんですかー?」
透「……」
透「ねえ、記憶ってどこまである? この島に来る前の一番新しい記憶って?」
ルカ「……あ?」
それは、不思議な感覚だった。
脳の隅をほじくり返したと言うべきか、押入れの隅で埃をかぶっていた衣服を引っ張り出した時のようなむず痒さを伴った。
無意識化に押しやっていたことに対する、罪悪感にも近い割り切れない感情。
透「ねえ、記憶ってどこまである? この島に来る前の一番新しい記憶って?」
にちか「え、なにこれ……壊れたレコードか何かですか」
美琴「この言葉に意味があるってことなのかな」
(私は……知っている、こいつの、この言葉を)
何度も繰り返される言葉が、深層の底に落ちていた記憶をゆっくりと引き上げていく。
それは、私の記憶に紐づいた、記憶の証言の記憶。
あの病院で、惨劇が起きる前の、一歩を踏み出すトリガーになった、明確な分岐点の、在りし日の、忘れ難き、記憶。
- 478 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:39:37.33 ID:PGzGnqfO0
-
《透「思い出しちゃ、ダメなんだよ」
透「忘れといて、そのまま」
ルカ「……お前が私たちの記憶を奪ったのか?」
透「……」
ルカ「いつからの記憶がないかを把握してるってことはそういうことだろ? お前はこの希望ヶ峰学園歌姫計画の参加者じゃなくて……運営する側の人間なんじゃないか?」
透「……私が奪ったって言うか」
透「私たちが、奪った」》
ルカ「……!!」
一気に記憶が間欠泉のように噴き出した。
眠っていた記憶が即座に蘇る。
あの言葉で私は浅倉透という存在に対する認識を改めて、信頼の一歩を踏み出したんだ。
このコロシアイの最中で、自分を追い込む発言だと分かっていながら、
歩み寄るために口にした言葉には確かな力があったのに、なぜ私はそんなことを忘れていたんだろう。
ルカ「そうだ……この島に来た理由、それは浅倉透が私たちを連れてきたから」
- 479 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:40:59.51 ID:PGzGnqfO0
-
ルカ「なんで、なんでこんなことを忘れちまってたんだ……? なんだ、何が起きてる……? 私たちはコロシアイをしてたはずだろ? なんでこんな呑気にウォークラリーなんか……」
聻ち¿k亜亜亜01
疑問を持■な今はそのフェーズで■ない与えら■た役割を遂■しろ今はただ情報を■■だけの傀儡■なれ
11111胡000000
浅倉透を憎め感情■定■■れ■いる自分の感情は許さ■ていない■く次に進め記■はあとで■■てくる
ルカ「……あ?」
にちか「もう、ルカさん何やってるんですかー? 今大事なのは浅倉さんが私たちをこの島に連れてきた極悪犯ってことですよねー?」
美琴「うん、彼女のことは許しちゃいけないよ」
ルカ「ハッ……ハハッ、そうだよな。浅倉透は許さない、そうだ、そうだよ……なんだったんだ、今のは」
私が錯乱しているうちにいつの間にか浅倉透を真似た繊維は姿を消していた。
二人のいう通りだ、今大事なのは浅倉透は私たちをこの島に連れてきた憎むべき悪人だということ。
この感情に疑問なんて抱いちゃいけないのに、何を思っていたんだろう。
ルカ「……」
……そう、なんだよな?
コトダマゲット!【透の証言】
〔浅倉透はルカに対して、このコロシアイの参加者を集めたのは自分だと自白している。当初の希望ヶ峰学園歌姫計画は彼女とその仲間が計画したものであるらしい〕
【選択肢が残り一つになったので自動進行します】
- 480 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/08(火) 22:42:37.03 ID:PGzGnqfO0
-
次は少し長く、眠気がすごいので急ですがここで今日は中断させてください。
次はゲッカビジンより再開します。
明日も時間が取れそうなので、11/9(水)21:00ごろから再開予定です。
よろしくお願いします。
それではお疲れさまでした。
- 481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/08(火) 23:10:39.71 ID:D38ZPOww0
- お疲れさまでした。
正常にバグってるゲーム画面、好き。
- 482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/09(水) 01:07:33.44 ID:xSnet1NJ0
- お疲れ様でした!
どんどん怖くなっていくな……
- 483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/09(水) 09:51:06.65 ID:u3uNaGPf0
- sageも使えないド低脳ってまだいるんだね
その手のイナゴはVTuberあたりに流れたと思ってたわ
- 484 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:38:12.39 ID:nQKkMRrM0
- ------------------------------------------------
【ゲッカビジン】
ルカ「……確かこの花、夜の間しか咲かないんじゃなかったか?」
ドローンと同じく宙をなぞるようにしてそこに在った一輪の花が差された花瓶。
どこか神聖な雰囲気をも携えて青白い花弁を広げているその花は前に見た覚えがあった。
にちか「え、ルカさんお花とか知ってるんですね。めっちゃ意外」
ルカ「前に見かけたことがあっただけ……べつに花が好きとかそんなんでもない」
美琴「これ、なんていうお花なの?」
ルカ「ゲッカビジン……一晩の間しか花弁を広げないんだとよ」
にちか「へー、なんかコスパ悪い花ですね」
ルカ「風情がねぇな……」
花を手に取って太陽の光に透かして見た。
薄い花びらには目立った色彩もなく、煌々とした陽の光ではその中に埋もれてしまう。
やはりこの淡さというのは夜にしか映えないものなのだろう。
美琴「……ルカ、それ」
そして、更にその淡さを台無しにするのがウサミの下品な魔法。
絵の具をベタ塗りしたようなくどいピンクの光がすべてを飲み込んだ。
にちか「わ、なんかこれ……いつも以上に眩しくありません!?」
ホワイトアウトならぬピンクアウト。
目の前が何も見えなくなってから数秒、世界が落ち着きを取り戻す頃。
私たちの心は再び揺れ動かされることとなる。
- 485 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:42:46.90 ID:nQKkMRrM0
-
莓\‘懿
最後ま■誰も疑■■かった信■た末に裏■■れて殺■れ■■った後■はし■ないけ■みん■と最■■でい■■なかっ■ことが■しい辛い
にちか「うっわ〜〜〜……首から血噴き出してるんですけど……ちょっと、距離とってもらっていいです?」
そこに立っていたのは、和泉愛依の骸。
私たちがその死に直面した時と同様に、薄い布地の病人服を身に纏っているが、その半分は首から流れた血に塗れている。
美琴「でも、にちかちゃん。彼女何か持ってるよ? ヒントじゃないかな」
にちか「最悪……ルカさん、取ってきてください」
ルカ「オマエな……」
()乜***%ィ
二人は最■■で生■られ■のか■うち■け先■■なく■ってご■ん
私も近寄るのには生理的な嫌悪感を感じたが、ここで退くわけにもいかない。
まんじりとも動こうとしないにちかを尻目に、一歩踏み出て死体からその手のフォルダを引っ手繰るようにした。
ルカ「んだこれ……『新世界プログラム』?」
これまた仰々しいネーミングだなとため息交じりにそれを捲る。
- 486 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:43:32.62 ID:nQKkMRrM0
-
にちか「メンタルヘルスを助ける、仮想現実による箱庭診療のアプローチプログラム……えーっと……」
美琴「どうやら、被験者さんの意識をコンピュータ上のバーチャル空間に送り込むプログラムみたいだね」
ルカ「トラウマとかの記憶を取り除いたうえで、仮想現実での生活を送らせることで精神疾患の治療を促す……か」
にちか「あはは、ルカさんもやってもらったらどうですか? 口を開けば『病んだ』ですしー!」
ぱっと見の印象では縁遠い世界の話。
精神疾患の診療なんて経験もないし、きっとにちかと美琴も同じことだろう。
ルカ「しかしすごいな……これ、一人に対するアプローチどころじゃなくて、複数人を同じ世界に同期できるって書いてあるぞ」
にちか「ネトゲみたいなもんですかね?」
ルカ「オーバーテクノロジーが一気に俗っぽくなるな……」
美琴「でも、一体こんなシステムがなんだって言うんだろうね」
ルカ「……さあな?」
気が付けば和泉愛依の骸は風化でもしたかのようにきれいさっぱりとその場から姿を消していた。
悪夢が何の意味も持たずに私たちの前に立ちふさがることなどない。
きっとそのはずだから、何か意味はあるんだろうが……
なんだろう、この感覚は。
ルカ「……」
これは……………………既視感?
コトダマゲット!【新世界プログラム】
〔精神疾患の診療のために使われる、仮想現実構成プログラム。複数人の意識を装置上で同期させ、同じ世界で生活させることができるらしい〕
- 487 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:46:20.42 ID:nQKkMRrM0
-
怪しいところは大体調べ終わった。
そうなると次に待っているのは、死が裏返る奇術の時間だ。
先の2回ですっかり慣れてしまった私たちはもはや違和感なくそれを受け入れていた。
にちか「ほーら、死んでないでさっさと蘇ってくださいよ。他のチームに負けちゃいますー」
ルカ「おい、あんまぞんざいに扱うなって」
美琴「どうして? 死んじゃったらただの物だよね?」
ルカ「んまあそうだけどよ……」
にちか「……! 来ますよ!」
にちかの呼びかけ通り。死体が小刻みに震え出したかと思うとムクリ体を起こし、私たちに向き合った。
地面に衝突したせいで無惨な姿だったはずの死体は、その顔に影が落とされていてよく見えない。
ウサミによる配慮なのだろうか、これも今更という感じだが。
愉iii‼︎加
何も■えない■も聞こえ■■何も分か■ない闇の■■葬られ■勇気を出■■踏み出し■一■■踏み躙られ■無数の足跡■■に消え■もう見た■もない
にちか「おっ、出ましたね! パスワードは『ヤ』ですよ、メモメモ!」
ルカ「……それ言うなら自分でメモれよ、ったく」
美琴「これでパスワードは三つ目だね、残すところはあと二つみたい」
- 488 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 20:47:43.60 ID:nQKkMRrM0
-
・:/螠⁂下
騙され■信じ■■のにも■■じ■だけ無駄裏切ら■るだけ■も信じな■ただ一人孤■■中で息絶■る方がい■
にちか「これでやっと折り返しですか……結構疲れますね、このラリー!」
ルカ「まあこれぐらい骨がないとやりごたえもないしな。ほら、さっさと次に行くぞ」
@↓\\\\禍
他人のこ■な■■誰に■分■■ない■か■たくない■か■れたくもない踏み込■ない■退いて近づ■■■でほしい一人■消えてい■か■
次のパスワードの場所を探すために背を向けると、後ろから物音がした。きっとあいつが物言わぬ骸に還ったのだろう。
そこになんの感慨も執着もない。
私たちの思考から彼女の存在はすっかり消え失せてしまった。
美琴「四つ目は……『箱入り娘が空を行く』か、どう? 二人とも」
にちか「うーん……私からは縁遠い言葉ですね……」
ルカ「まあ箱入り娘ってよりは世間知らず、だよな」
にちか「はー? それはルカさんの方でしょ! 一人じゃ交通定期券にお金も入れられなかったくせに!」
ルカ「テメ……いつの話ししてやがんだ!」
(……『箱入り娘』なんか、283の連中は大体該当しそうなもんだが)
(一体どこを探したもんかね……)
------------------------------------------------
『箱入り娘が空を行く』
【第四のヒントが指し示す場所を選べ!】
↓1
- 489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/09(水) 20:57:40.44 ID:mGojh2Bh0
- 観覧車
- 490 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:00:40.88 ID:nQKkMRrM0
- ------------------------------------------------
【第4の島 観覧車】
にちか「なんかこういうファンシーなとここそウォークラリーって感じがしますねー!」
美琴「そうかも、レクリエーションってこういうのをイメージしてた」
ルカ「小学校の遠足とか、遊園地に行きがちだよな」
にちか「ですねー。まあルカさんの失った青春を取り返すのを手伝ってあげますか!」
ルカ「そんな虚しい理由でここに来たわけじゃねーよ。四つめのパスワードだ」
美琴「『箱入り娘が空を行く』……ここに?」
にちか「うわ……自分のこと箱入り娘になぞらえてアトラクションに乗ろうとしてます?」
ルカ「だから……私をやたら悲しく飾り立てるのはやめろって。あれだよあれ」
近づいた瞬間に漂ってきた異臭。
嗅いだことのないその匂いに思わず手の甲で鼻を塞いだ。
- 491 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:01:48.52 ID:nQKkMRrM0
-
にちか「うわ……なんなんですかこれ、血の匂いのそれとはまた違った意味合いで悪臭なんですけど」
美琴「焦げたような匂いに……ガソリンみたいな匂いが混ざった感じがするね」
一歩踏み出すたびにウッとなるのを堪えながら近づくと、見慣れない光景が目に入った。
本来非現実を求めて子供や大人たちが夢を託す観覧車のゴンドラが、過熟の末に落果した柘榴のようにへしゃげてオイルを吐き出し続けている図。
その中で腐った果肉のようになっているのが、有栖川夏葉の成れの果てだ。
にちか「どれだけ鍛えても爆死したら形なしってこと何ですかねー……うわー……」
美琴「このゴンドラ、相当頑丈なつくりなのに……すごい衝撃だったんだね」
ルカ「こいつ自身も体を改造された挙句のこれだからな……もし生身だったらと思うと震えるよ」
にちか「あはは! 脳みそとかも全部出ちゃったりして!」
ルカ「ハッ……そいつは勘弁願いたいな……」
にちかの悪趣味な冗談に苦笑しながら、辺りに手がかりを求めた。
1.水素の吸引機
2ロケットパンチ
↓1
- 492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/09(水) 21:06:57.41 ID:mGojh2Bh0
- 1.水素の吸引機
- 493 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:10:53.45 ID:nQKkMRrM0
- ------------------------------------------------
【水素の吸引機】
冬優子が美容のために病院からせしめていた機械も、どうやら爆発に巻き込まれていたらしい。
水素を閉じ込めていたボンベはその面影もないほどに弾け飛んでおり、吸引のためのパイプは根元からひんまがっている。
こうなっては美しさから最も遠い所にある機械かもしれない。
ルカ「あーあ、これじゃ使い物になんねーな。ったく、水素なんか本当に意味ある物なのかね」
にちか「うーわ、そういう一歩引いたスタンスとってるのマジでダサいですよ。分かってるアピールしないと気が済まないんですか?」
美琴「これもウサミのヒントだったみたいだね」
使い物にならないはずのボタンを美琴が押してみると、すけたたましい轟音と共に機械は水素ではない何か別のものを吐き出し始めた。
すっかり淀み切った黒煙が現れたかと思うと、そのまま私たちを取り囲むようにして、一寸先の仲間の顔も見えないほどに充満した。
ルカ「お、おい……なんだこれ……何が起きてる……!」
にちかと美琴を探して煙を掻き分けるようにした。手の振りに合わせて煙は退いたが、そこに在ったのはその二人の姿ではなく。
美琴『……【浅倉透】、このコロシアイであなたは命を落としていると書かれているけれど、どうしてここにあなたがいるのかな』
浅倉透と美琴の二人の姿だった。
だけど、さっきまでの美琴とはどこか違う。
さっきまでにはなかった明確な敵意と殺意を込めた視線に、これまで感じたことのない熱。
今一緒にレクに参加していたのとは、まるっきりの別人と言ってしまった方がいい。
- 494 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:12:28.63 ID:nQKkMRrM0
-
(……なんだ、私は何を見ている?)
そして、自分自身の体はまるで地面に張り付いてしまったかのように動かない。
声を発そうとも口がパクパクと動くだけで何も出てこない。
全身を拘束されて、映像を見させられているような、そんな感覚に陥った。
そして実際、その喩えは間違っていない。
私の目の前で続いたそれは、私の中の記憶の上映会だったからだ。
透『そっか……私、死んでたんだ』
透『……ううん、知らない。私は、何も知らない。聞かされてもいなかったからさ、死んでたってのも』
美琴『ふざけるのもいい加減にしてもらえるかな』
美琴『あなたはにちかちゃんの命をかけた糾弾をどこまで時踏み躙りたいの。答えをいつまでも出さずに、バカにしているとしか思えない』
透『……ごめんなさい』
透『もう、言わざるを得ない……か』
透『私は、みんなの知ってる浅倉透とおんなじだけど違うんだ』
透『みんなが覚えてる浅倉透が今の『私』』
透『みんなの知らない浅倉透が写真の『私』』
透『……写真の『私』の過去の私が、今の『私』』
透『『浅倉透』のある部分までの記憶と人格とをコピーして作られたのが、『私』なんだよ』
(……!)
- 495 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:13:27.67 ID:nQKkMRrM0
-
……そうだ。
私たちがこの島で接していた浅倉透という人間は全くの偽物。
本物とほとんど変わりない記憶と人格を持っていただけの、別人だったのだ。
そしてその肝心のオリジナルは……とうに死んでいる。
私たちよりも前に、コロシアイの中で命を落としてしまっていた。
そのことを知らされもせずに、ただ真似ていただけの不出来な人形がこの浅倉透なのである。
(……本物は、とっくに死んでいる)
私の記憶の再現が終わるとやがて黒煙は断ち消えた。
にちかと美琴も同じものを見ていたのかと尋ねるとキョトンとして首を振った。
彼女たちを包んだ黒煙は私とは別物だったのだろうか。
それとも私がただの幻を見たと言うのか。
(……今のは、私に何を見せたかったんだ)
ただ、私の脳内でなにかが錆び付いていることだけは確かだった。
コトダマゲット!【オリジナルの浅倉透】
〔この島にいる浅倉透の元となったオリジナルは既にコロシアイで命を落としている。コピー体の浅倉透はどうやらその事実を認識していなかったらしい〕
【選択肢が残り一つになったので自動進行します】
- 496 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:14:43.28 ID:nQKkMRrM0
- ------------------------------------------------
【ロケットパンチ】
ゴンドラの天井の内壁を大きく歪曲させている異物。
この中で最も焦げ付いているパーツはこれになるだろう。
爆炎の中心部にあったであろうパーツは元がなんだったのか即座にはわからないほどに黒ずみ、開いたはずの指は熱で接合されて固く閉じられている。
本来ならこの手のひらでユニットの最年少の頭を撫でていたであろうに、無情なことだ。
にちか「どれだけ強化されても、それで自分自身を殺しちゃうんじゃ意味ないですけどね。文字通りのブーメランってやつです」
美琴「彼女、鍛えた自分の体に自信があっただろうに。こんな形で踏み躙られちゃうんだね」
ニ!黹¡蠃
元々持ってい■希望と理想が■■ゃぐちゃ■潰さ■■様は美しいんで■■そこか■立ち■■か■こそコロシア■はエン■■テイン■■トと■て素晴ら■■んです
ルカ「ま、これにもウサミの魔法がかけられてるのは間違いないみたいだな。……ほら」
またしてもけったいな発光と共にその姿は変化した。
少し久しぶりの長方形、情報がファイリングされた書類形態になって私の手の中に収まった。
- 497 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:18:53.37 ID:nQKkMRrM0
-
ルカ「今度は……『候補者リスト』? なんのことだ?」
美琴「……心当たりはないけど、読んでみたらわかるんじゃない? 開いてみて」
ルカ「おう……」
美琴に促されるままにページをめくる。
丁寧で丈夫に綴じられている書類は、情報の整理に加えて保管の性質が蓄えているだろうことを窺わせる。
実際、これまでにみてきた活字の波とは少しその様相が異なっていた。
続々と並ぶ顔写真に、その横に付記される詳細な情報の数々。
にちか「これ、書類ってより名簿って感じじゃないです?」
小学、中学、高校。それらの過程を経るたびに押し付けられた、無駄に根の張る嵩張るだけの一冊。
思い出の押し売りと揶揄したアレに、よく似ていた。
美琴「……私たち一人ひとりの名前と、他の誰かが羅列されてるんだね」
その既視感は私たちの個人情報がおしげもなく書き広げられたページのせい。
後から見返すのが小っ恥ずかしくなる作りをしているのがそっくりだ。
にちか「うわー……私の分もありますよ、これ」
ルカ「……これ、とりあえず全員分の纏めとくか。簡単にな」
美琴「そうだね、どれが誰に対応しているかは押さえておこうか」
風野灯織…【超高校級の占い師】飯田数秀
三峰結華 …【超大学生級の写真部】蜷川卓
田中摩美々…【超高校級の服飾委員】喜多川新菜
小宮果穂…【超小学生級の道徳の時間】本城ハヤ太
園田智代子 …【超高校級のインフルエンサー】不破アルル
有栖川夏葉… 【超大学生級の令嬢】菱井友安
桑山千雪… 【超社会人級の手芸部】四季衛児
芹沢あさひ…【超中学生級の総合の時間】上蔵居鶴
黛冬優子…【超専門学校生級の広報委員】永瀬美奈
和泉愛依…【超高校級のギャル】 藤村美優
市川雛菜…【超高校級の帰宅部】小野田・K・ユーサク
七草にちか…【超高校級の幸運】苗木誠
緋田美琴…【超高校級のシンガー】夜々中亜道
斑鳩ルカ…【超高校級のダンサー】関口小春
- 498 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:20:09.30 ID:nQKkMRrM0
-
ルカ「……大体全員に他の誰かがあてがわれてるな」
にちか「ないのは月岡さんと浅倉さんの二人だけですねー」
美琴「まあ、コロシアイの黒幕と偽物の二人だからしょうがないんじゃない?」
ルカ「にしてもこいつら誰なんだ? 正直名前に全く心当たりはないぞ」
私たちの横に並んだ名前は、どれをみても聞き覚えが欠片もない。なにを持っての『候補』なのか、どういう選考基準なのか。
全くもって意味のわからない文字の並びに、取り残されるばかりだ。
にちか「それに、なんか気色悪いですよこのリスト。私たちのこともそうですけど、この候補者さん?たちのところも」
美琴「……『自分に自信はないが正義感は強い。献身的な思考が根底にあるが、自己犠牲が過ぎる面もある』」
ルカ「プロフィール……にしてはなんか詳細だな」
にちか「うわ、なんですかこれ。今に至るまでの主たる出来事……? プライバシーガバガバが過ぎますよ」
一人の人間について網羅するには十分すぎるだけの情報量。
さっきまではこの一冊を名簿として表現していたが、それでは生ぬるい。これではもう、図鑑と言ってしまった方が正しいのではないだろうか。
(……誰が、何のためにこんなものを?)
コトダマゲット!【候補者リスト】
〔今回のコロシアイの参加者から恋鐘と透を除いたメンバーと、他の誰かの名前が書き連ねられたリスト。才能の他に異様なまでに細かい個人情報が付記されている〕
- 499 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:22:28.02 ID:nQKkMRrM0
-
にちか「今回、死体バラバラですけどちゃんとパスワード貰えるんですかねー?」
にちかはそんなことを言いながら頭を持ち上げてその場で何度も振り回した。
光を失った瞳の頭部は振り回されるのに合わせてカラカラと玩具箱のように音を立てる。
無邪気さに裏打ちされた空虚さが胸を刺す。
美琴「そもそも死体と言えるのか疑問だものね、これはほとんど故障品のようなものだから」
にちか「あはは、ホントですねー! パスワードもらえなかったらジャンク品で売り飛ばしちゃいますかー!」
(……)
美琴「……どうしたの、ルカ?」
ルカ「あ、いや……なんでもない」
にちか「ちょっと、何面食らってるんですか。ただの死体なんですよ、ただの物なんですよ? なのにそんなふうに感情移入するのっておかしくないですか?」
*膩△豸∫
所詮は希望のた■の踏■■なんです■こ■で消費さ■■だけ■存■な■■そん■物なんで■皆さ■■希■にな■た■■存在■■ですから死■な■■に躓■てる場合じゃな■■です
ルカ「……ああ、悪い」
にちかの言うことは全面的に正しい。正論だ。
希望はなによりも素晴らしく、何物も犯してはならない、尊く強いものである。
弱者の死への感傷のせいで希望を曇らせるなどあってはならない。
より眩い希望を手にするための糧にするのが道理なのであり、そのために消費されるなら死者も冥利に尽きると言う物だ。
ありとあらゆる犠牲の上に立つのが希望である。そのためなら殺戮も肯定される。それが人類としての美学なのである。
- 500 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:23:18.94 ID:nQKkMRrM0
-
美琴「ほら、ルカも手伝って。バラバラの死体をもっとめちゃくちゃに破壊しよう」
にちか「そうですよ! 死者の尊厳をめちゃくちゃに踏み躙って、踏み台にしましょう!」
ルカ「おう、そうだよな……それが希望のためだもんな……」
ふらふらと死体の左腕を持ち上げた。
剥き出しのケーブルには漏れ出したオイルが伝い、その下の地面に緑色の水溜まりを作っている。
ルカ「じゃあ、これをぶっ壊すか」
目一杯振り上げたその瞬間……
ナ?腫
彼女は背後に立っていた。
にちか「あれ、人間の姿ですよ。うわー……全身火傷しちゃってます、痛そー……」
美琴「赤く爛れて……衣服が皮膚と一体化しちゃってるね」
ルカ「……」
- 501 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:25:17.89 ID:nQKkMRrM0
-
爲ツツツツツツ¡¿瀉
私の選■■間違っ■いな■■た力が■■なかった■け守■な■■たのは■の弱■のせい私■も■■しっかり■■いれ■■がもっと強け■ば私が■っ■何か■てあ■■ことができてい■なら
にちか「おっ、パスワードゲットです! 四つ目は『ク』です!」
美琴「やったね、にちかちゃん」
にちか「はい!」
(……)
死者を蘇らせて、パスワードを喋らせるだけ喋らせたら骸に還す。
最後の最後まで死を踏みにじる行為には吐き気を催すが、それが希望のためなのである。
偉大なる希望のためには瑣末な犠牲など無視される。
人権なんてものも希望の前には塵芥同然、人間の意志など大いなる意志に従属するのが道理。
何も考える必要はない何も悼む必要もない。希望のために全てを消化し呑み下せ
美琴「……ルカ、さっきからぼうっとしてどうしたの?」
にちか「そんなバッチい死体なんか無視してさっさと次行っちゃいましょう! 時間は待ってくれないんですよ!」
ルカ「……お、おう」
- 502 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:26:19.15 ID:nQKkMRrM0
-
死体はまた私たちの目の前で膝から崩れ落ちた。
力が入っていない肉体は自立しようとすることもなく、損壊も厭わずにクシャクシャの形で地面に額をぶつける。
あれほど気高かかった女性でも、死んでしまえばこんな醜態を晒す。
(なんだ、なんなんだよ……さっきから)
希望のための犠牲、そう割り切るべきなのに……胸中に湧き上がる異物が、息苦しかった。
にちか「で、いよいよラストですね! 『収穫祭』……どこか畑とかありましたっけ?」
美琴「……これまでと同じなら、何かを例えた表現なんだろうね」
ルカ「……収穫、な」
------------------------------------------------
『収穫祭』
【第五のヒントが指し示す場所を選べ!】
↓1
- 503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/09(水) 21:29:27.29 ID:B29l6wky0
- エグイサルの工場
- 504 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:34:40.44 ID:nQKkMRrM0
- ------------------------------------------------
【第五の島 ワダツミインダストリアル】
南国の情緒を正面からぶち壊す工業地帯、その中でもぶっちぎりな巨大な工場がここ。
収穫祭なんてのどかな情緒からは程遠い排気ガスに咳き込みながら、そのシャッターを上げる。
にちか「うるさー……会話もままならないじゃないですか、こんなの」
ルカ「だな……そこかしこで金属音がしてやがる」
にちか「えー?! 何か言いましたー?!」
美琴「そこかしこで金属音がしているから声が届かないねって」
にちか「あ、確かにー! ですです、それを思ってたんですよー!」
ルカ「……」
金網や鉄板で仕立てられた足場を歩いて行くと、やがてそこに行き当たる。
工場というよりはガレージに近い開けた空間。
といっても自動車なんかをしまうようなこじんまりしたものではなく、航空機だとかの規模の体育館のような高さと広さ。
そこに堂々と鎮座しているのは、私たちを何度も脅かしてきた……あの機体だ。
にちか「エグイサル……しかも全色揃ってますよ」
美琴「それに……何かを取り囲んでいるみたい。あれは……椅子? 何か座っているようだけど」
ルカ「……!」
- 505 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:35:28.49 ID:nQKkMRrM0
-
そこにあったのは、首のない死体。
両手を椅子の肘置きに固定され、美容室のように首から下にはシートをかけられている異様な姿。
断面から滴り落ちた血液は、まだ乾いていない。
ぱっと見では誰とも分からないその姿に、私はつい怯んでしまった。
にちか「これ、誰なんですかねー?」
死体に臆す必要など何もないのに。
にちかは少しも怯む様子もなくぺたりと死体に被さられているシートを捲った。まだ乾ききっていない血が飛び散り、その額にかかった。
にちか「これ、服装的に市川さんじゃないですか? まあ制服も血で汚れちゃってますけど」
ルカ「……っぽいな」
にちか「ちょっと、何やってるんですか。ほら、もっと近づいてみてくださいよ」
ルカ「……わかってるよ」
にちかに促されて私も死体を覗き込んだ。
やはり見立て通りこの死体の身元は市川雛菜なのだろう。
肉付きのいい体に、すらりとした手足。
それに纏っている制服には私でも見覚えがあった。
彼女が愛してやまないキャラクターのアップリケも血に汚れてしまっている。
美琴「彼女が最後のパスワードを握っているのかな」
にちか「なら、さっさと見つけちゃいましょうよ! そこら辺に市川さんの頭、転がってないです?」
(……それは、流石に勘弁願いたいな)
1.エグイサルのリモコン
2.エレクトボム
↓1
- 506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/09(水) 21:37:47.32 ID:B29l6wky0
- 1
- 507 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:41:52.12 ID:nQKkMRrM0
- 1 選択
------------------------------------------------
【エグイサルのリモコン】
死体の脇に落ちている妙ちくりんな装置。
やたらゴテゴテしたボタンが取り付けられた板からは、いかにもなアンテナが伸びている。
にちか「これ、もしかしてエグイサルの操縦に使うやつですかね?」
ルカ「……おい、ボタン押したりすんなよ? 誤作動で殺されるとかマジで勘弁だからな」
にちか「しませんよ! いちいちうるさいなー」
美琴「きっとそれもウサミのヒントだよね、にちかちゃん怪しいところはない?」
にちか「は、はい……うーん、どうなんですかね。見たところ変わったところは……」
美琴「……なら、ボタンを押してみるしかないんじゃないかな」
ルカ「……は?! ちょっ、待」
にちか「はい! ぽちっとな!」
私の制止は一瞬で棄却。にちかは迷うこともなくボタンを押してしまった。
そして、それがトリガーになった。
- 508 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:45:26.34 ID:nQKkMRrM0
-
にちか「わ、わ、わ〜〜〜!!」
例の如く、ウサミの魔法だ。
リモコンは宙でその姿を変え、バインダーに綴じられた一枚の資料となって私たちの手に落ちた。
『我々の開発も一定の成果をあげた。いよいよ実証段階に遷移することとした。本実験の最後では全被験者への適用が予定されているが、特に適正値の高い被検体αに先行して適用した。性格における一部類似点に加え、実験の準備段階で蓄積された類似経験が作用し、特に目立った拒絶反応も発生することなく実験も成功した』
そこには『実験』と称される詳細不明な研究の記録が残されていた。
写真のようなものも殆どなく、具体的な名称も検閲の対象となっているのか悉く記述を避けられている。
ここにある被験体αというものが、どんな形状のどんな性質なものなのか。ここからだけでは読み解くこともできない。
にちか「……これ、もしかして人間の話をしてます?」
ルカ「人間だぁ……?」
にちか「ほら、ここ……『性格』って書いてますよ? 動物とかだったら言わなくないです?」
美琴「それは……どうなんだろうね」
ルカ「いや、人体実験の記録ってことか……? そんなの、法が許さないんじゃ……」
司法がなんだ希望より先に立つルールなどないこの世界に希望をもたらすためなら多少の逸脱は看過されるべき
自戒せよ我々は世界のために生きている社会のために生きているのではない秩序よりも優先されるべき使命というものがある
ルカ「……あ゛っ、ガッ……」
美琴「どうしたの、ルカ?」
(……一体なんなんだ、さっきから頭ん中が……)
コトダマゲット!【被験体α】
〔捜査の中で見つけた怪しい実験記録。『我々の開発も一定の成果をあげた。いよいよ実証段階に遷移することとした。本実験の最後では全被験者への適用が予定されているが、特に適正値の高い被検体αに先行して適用した。性格における一部類似点に加え、実験の準備段階で蓄積された類似経験が作用し、特に目立った拒絶反応も発生することなく実験も成功した』〕
【選択肢が残り一つになったので自動進行します】
- 509 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:46:40.35 ID:nQKkMRrM0
- ------------------------------------------------
【エレクトボム】
死体の懐からこぼれ落ちたであろう毒々しいピンク色の球体。
団子の串ように上部にささったピンが、その正体を物語る。
にちか「ば、爆弾……?! これ、ヤバくないですか……!?」
といっても、その正体を私たちは知っている。
これは浅倉透、そのコピーが島に持ち込んだジャミング装置。
炸裂した近辺の電波を一時的に機能停止にし、特定の周波数のもの以外通さなくなるらしい。
美琴「……」
ルカ「……」
にちか「あれ? ルカさん? 美琴さん? どうしちゃいましたー?」
この爆弾のことなど知り尽くしているはずなのに、私と美琴は凍りついてしまう。
まるで張り付いてしまったように、この爆弾が手から離れない。
ルカ「……これが、これがあれば美琴は死なずに済んだのに」
にちか「……」
その言葉を口にしていたのは、知らずの私だった。
意味も所在もわからぬままに飛び出した言葉に、自分自身で困惑していた。
- 510 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:48:00.95 ID:nQKkMRrM0
-
にちか「……これ、元々は浅倉さんの持ち物なんですよね?」
ルカ「……え? あ、お、おう……確か……そのはず……」
美琴「エレクトボムを使って誰かと連絡を取っているのを目撃したからこそにちかちゃんは殺害を考えたんだよね」
にちか「ですです! 裏切り者だ、殺せー!ってなって」
《にちか「初めから、裏切ってたんですよ。浅倉さんは。私たちが外の世界と連絡が取れないことに焦っていた中で、別の誰かと連絡を取っていて……一人だけこの孤立無援の恐怖を感じていなかった」
にちか「だから私思ったんです。ああ、この人はちがう……私たちの仲間じゃない、モノクマとの内通者なんだって」
透「……」
夏葉「……透、説明してもらえるかしら。あなたの口で」
透「あー……」
透「あの時の、にちかちゃんだったんだ」》
にちか「だって怪しすぎじゃないですか! みんなこの島に幽閉されて孤立無縁のはずなのに、一人だけ外部と連絡を取ってたなんて……絶対絶対裏切り者じゃないですか!」
ルカ「……いや、でもあいつはオマエが死んだ後は誠実に___」
- 511 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:48:42.03 ID:nQKkMRrM0
-
深酷ト、
にち■ち■■の言う通り浅■透は私た■■敵私■ちを殺し■■は彼女惨劇■引き起■■たのも彼女全■■責任は彼■■ある
‼︎尓…チ
浅倉透■許すな浅■透を吊■せ浅倉透を弾■せよ
ルカ「……浅倉、は」
浅倉透がいなければ私たちは大事な存在を失うこともなかった。
浅倉透がいなければこんな思いをすることもなかった。
浅倉透がいなければ私は私のままでいられた。
《透「……死にたくない、以上に裏切りたくない」
透「だから、高望みするよ。勝つって、黒幕ぶっ倒すって」》
ルカ「……あ、ぐ、う」
Command01
浅倉透を憎しみ続けろ
Command02
浅倉透を恨み続けろ
……違う、私たちがこの島の生活の中で見てきた浅倉透は憎まれ、恨まれるような存在じゃない。
あの時にちかの目撃した姿だって、きっと。
コトダマゲット!【透の外部との通信】
〔第一の事件の前日、透はエレクトボムを使用して黒幕からの干渉を拒絶した上で島の外の人間と連絡を取っていた〕
- 512 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:51:12.39 ID:nQKkMRrM0
-
にちか「やっとこれで最後のパスワードですね……他のチームはもうクリアしちゃってるのかな」
ルカ「どうだろうな……途中で他の連中に会うことはなかったが」
美琴「会うも何も、みんな死んじゃってるからじゃない?」
にちか「あはは、確かにー!」
骸を前にしていつもながらの談笑。
もうこれで五度目のこと、たとえ死に怯える幼い子供でももう慣れてしまっても当然の域だ。
だが、私は対照的に……数を重ねるごとに違和感を募らせていた。
なぜ私は死体を前にして平然とできる?
なぜ私は死体を前にして笑顔を浮かべられる?
なぜ私は……一度見た死体をもう一度見ている?
にちか「でも、今回はどうやってパスワードを教えてもらえるんですかね? 喋ろうにも首が取れちゃってますよ?」
美琴「そうだね、首もどこに行ったのか分からないし……引っ付けたところで戻るわけじゃないからね」
にちか「うーん……どうすればいいのかな……」
にちか「……あっ!」
死は何度でも私たちを嘲笑う。
頭を抱えて悩んだところで、平然と裏返り、情緒の一切を踏み潰すのだ。
- 513 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:53:57.97 ID:nQKkMRrM0
-
ルカ「……うっ」
首のない死体は椅子から身を起こし、千鳥脚に私たちの前に立ち塞がった。
断面から噴き上がった血が宙でうねり、やがて歌舞伎の隈取りでもするかのように人の顔を象った。
市川雛菜の顔というにもあまりにも不出来な、落書きのようであった。
非\9亡
暗■動けな■怖い■■起き■■わからな■全身が痛■雛■が何をしたの誰■■庇うの■そん■■悪いこ■なの
にちか「うーわ……これ今までの中でも最悪じゃないです?」
美琴「……ちょっと、ギョッとしちゃうね」
ルカ「……」
市川雛菜の骸に対して冷ややかな反応をする二人を見て、私はやけに冷静な視点だった。
気がついた時には私もすでに飲まれてしまっていたが、この二人の反応は明らかに異常……
どう考えたって、こんな状況でこんな反応をするような二人じゃない。
姿、記憶、人格……それらは元の二人と対して変わりないが、それ以外のものが……大切な何かが欠落しているのだ。
そして、それは先ほどまでの私も同じ。
幾多の死に接したことで逆に冷静さを取り戻し、我に返った私からすればこの半日のことが不気味で仕方ない。
(……どうして)
それなのに、体が言うことを聞かない。
私の意識は椅子に縛り付けられたようで、私でない何者かが私を演じているのを見せつけられている。
- 514 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:56:46.31 ID:nQKkMRrM0
-
&鄙:儺&
雛菜■首を返して■雛■の右手を返し■よみん■と一■■笑っ■たしあ■せを返して■楽し■■た学■生活を返■てよ
にちか「うわっ、うーわ! ちょっと近寄らないでくれますー? 血がこっちまで飛んでくるんですけどー!」
美琴「ほらにちかちゃん、パスワードも喋ってるよ。ちゃんと彼女の言葉を聞かなきゃ」
〓nul无《
守りたい■■を守■■だけなのにど■して恨まれな■■いけな■の■菜は雛■のや■たいことをや■ただけな■■どう■て
にちか「あー……最後のパスワードは『ミ』みたいですね。はい、もう聞けたんで適当に死んじゃっといてくれていいですよ」
にちかが右手で適当にあしらうと、すぐに死体は膝からその場に崩れ落ちた。
人の顔を象っていた血液は重力の支配に再度戻り、鉄板の床にびしゃびしゃと音を立てて散らばった。
にちか「ほんと最悪……ちょっと汚れちゃいましたよ、服」
ルカ「ハッ、いいじゃねえか。地味の地味過ぎる制服にいいアクセントだ」
美琴「大丈夫? ハンカチ、使う?」
にちか「い、いえ! ちゃんと自分のもありますから!」
- 515 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:57:28.27 ID:nQKkMRrM0
-
5つの骸からパスワードを受け取ったところで懐から紙を取り出した。
このウォークラリーの初めにウサミから受け取った紙には、おあつらえ向きに五文字の空白が設けられている。
ルカ「ここに一文字ずつ入れ込んで……と」
美琴「ここで集めたパスワードが、ノートパソコンのログインのパスワードになるんだよね?」
にちか「はい! どうです、ルカさん? パスワードは何になりました?」
ルカ「……『ヤクモナミ』」
にちか「……!? そ、それ……!」
美琴「それって、にちかちゃんにとっては憧れのアイドルで……」
ルカ「私にとっちゃ……唯一の肉親だった人だ。もう、死んじまってるけどな」
- 516 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:58:13.75 ID:nQKkMRrM0
-
_____『八雲なみ』
昭和の一時代を築いた伝説的なアイドルの一人。
発表された楽曲はあっという間に世間の評判を集め、あらゆるヒットチャートに彼女の名前を刻みつけた。
同世代はもちろん老若男女の話題を掻っ攫い、アイドル全盛期の時代を席巻した少女。
そんな彼女は……絶頂の最中に自ら命を絶った。
世間には隠して私を身籠もっていた彼女は、仕事とレッスンの過酷さや当時のプロデューサーからの精神的圧力に耐えかねたらしい。
デビューから数年と経たないうちの出来事に、当時はそれなりに話題にもなった。
そんな名前が、どうしてここで。
ルカ「……ウサミのやつ、どういうつもりなんだよ」
美琴「考えるのは後にしようか。とりあえず今はホテルに戻って入力するのが先」
にちか「ですね! 他チームに負けたくないですし! ほら、ルカさん!」
ルカ「……おう」
胸がいやにざわつくのを抑えることはできなかった。
- 517 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/09(水) 21:59:38.58 ID:nQKkMRrM0
-
区切りがいいところなので本日はここまで。
候補者リストに登場した名前は一部を除いて全員元ネタアリのネーミングなのでよければ考えてみてください。
才能に関連する由来になっています。
次回更新は11/11(金)21:00ごろを予定しています。
早く開始できそうなら前倒しするかもです。
それではお疲れさまでした。
- 518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/09(水) 22:08:09.50 ID:B29l6wky0
- 1乙
正気と狂気を行ったり来たりするところ、ハラハラしながら読んでました
- 519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/10(木) 09:13:12.52 ID:ZFSET9iY0
- >>1来てたのか
ていうか候補者リストの元ネタ
にちかとあさひとまみみの奴しかわからん・・・
- 520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/10(木) 12:55:46.23 ID:DqXcM0W50
- 候補者リストの元ネタ、
にちかとあさひがダンロンで摩美々が着せ恋のメイン二人の苗字と名前の合成、
夏葉は過去の四大財閥からとって三「菱」+三「井」+住「友」+「安」田
果穂は初代ウルトラマン(ハヤタ・シン)と初代仮面ライダー(本郷猛)の合成かなあって思ったけど苗字が微妙に違うから、
初代スーパー戦隊のゴレンジャーのアカレンジャー(海城剛)も入れて、「本」郷猛+海「城」剛+「ハヤタ」・シン?
灯織がゲッターズ飯田で、ちょこ先輩がフワちゃん、美琴さんがAdo?
美琴さんはもしかしたらYOASOBI→夜遊び→「夜々中」ワンダーラストの連想ゲームとかもある?
あとはもう全然わからん……
ダンサーで関口……メンディー……?とか、帰宅部ということは帰宅部活動記録……に誰も近しい名前ないな……とかなってる
- 521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/11/11(金) 00:04:37.45 ID:9rRJoyUY0
- >>483
そこまで言わなくてもいいじゃないですか・・・
こっちは純粋な善意でコメントしたんですよ
- 522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/11(金) 00:45:39.55 ID:dv12jMLW0
- >>521
お前初心者か?ageるとスレが上がるから探すの大変になるんだよ
あと>>1が来たと勘違いするから
お前は善意でコメントしたかもしれんが
お前以外にも見ているやつがいるということを忘れるな
- 523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/11(金) 00:56:02.63 ID:/b5782QD0
- 下手な悪意よりも自己満足の善意の方が悪質なことってよくあるよね
- 524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/11(金) 11:27:51.28 ID:SqE/uM9Y0
- 候補者リストの千雪さんのやつの名前の元ネタ、もしかしてすばせかとU19?
もしそうならこの名前の元ネタってマイナーネタ混じってて実は全部正解するのめっちゃ難しい感じだったりする?
- 525 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:31:57.28 ID:IHQOUw1J0
-
仕事の都合で遅くなりました……
候補者リストの元ネタは更新終わりに答え合わせします
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【第1の島 ホテル レストラン】
ホテルに戻ると、そこにはウサミがただの一人。
どうやら他チームの連中はまだ島を捜索中らしい、つまりは私たちが一番乗りだ。
ウサミは手を叩いて私たちを労って歓待した。
ウサミ「こんぐらっちゅれーしょん! シーズのお二人と斑鳩さんの仲良しチームが一番乗りでちゅよー!」
ルカ「……おら、退け。さっさとパスワードを入力させやがれ」
ウサミを乱暴にグッと押しやり、机に腰掛けた。
ノートパソコンは開きっぱなしで電源もつけられたまま。
にちかと美琴の二人に見守られながら、一文字ずつ丁寧に入力していく。
ルカ「『ヤクモナミ』……っと」
『確認』にカーソルを合わせてクリック。
液晶でしばらく白い丸が渦巻いたかと思うと、すぐに起動音と共に『ようこそ』の文字列が浮かび上がった。
美琴「正解だったみたいだね」
にちか「やったー! これでクリアー!」
ルカ「おし……サンキュー、二人とも」
ウサミ「おめでとうございまちゅ! うるうる……あんなに非協力的だった斑鳩さんがこうやって仲間を労っているなんて、あちしはその変化に涙ちょちょぎれでちゅよ!」
ルカ「ちょちょ切れるもなにもぬいぐるみがどうやって涙流すんだよ」
にちか「そんなどうでもいいことよりルカさん、何かポップアップしてますよ!」
ルカ「ん? あ、おう……」
- 526 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:32:55.06 ID:IHQOUw1J0
-
にちかに促されるまま視線を液晶に戻す。
ログインと同時にパソコンでは何かが立ち上がっていた。どうやらこれはメールボックスらしい。
いくつかのメールが未開封なままに残されている。
美琴「開けちゃってもいいのかな。これ」
ウサミ「問題ありまちぇんよ! このノートパソコンはミナサンにプレゼン・フォー・ユー! 中に入っている情報も何もかもミナサンのためのものなんでちゅからね!」
ルカ「おし……確かめてみるよ」
とりあえず目についたメールを右クリック。
旧型のパソコンなのか、少し時間をかけてからメールは展開された。
『A、君のこれまでの功績は評価に値する。我々は実際君に高い期待を寄せていた。だからこそ、今回の独断での行動は看過することはできない。即座に計画を打ち切ってほしい、我々の要求に応じない場合立場を追われることも覚悟しておいてくれ。理解ある行動を我々は望む』
ルカ「……はぁ?」
美琴「どういう意味なんだろうね」
にちか「なんか『A』?って人が離反したみたいな文面ですけど……」
ルカ「それに、こいつはそれなりの立場にある人間みたいだぞ」
美琴「そんな人が組織の意向に背いてまで成し遂げたかったこと……なんなんだろうね」
コトダマゲット!【Aへのメール】
〔ウサミのウォークラリーの末にロックを解除したノートパソコンに入っていたメール。『A』という人物が組織の意向に背いて独断で動いた旨が記されている〕
- 527 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:34:10.06 ID:IHQOUw1J0
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にちか「他のメールはどうです?」
ルカ「んー……あとはスパムメールとか……あんま碌な情報は残ってなさそうだな」
メールをいくら開封しても役に立ちそうな情報はなし。
明らかに作為的に与える情報は絞られている印象だ。
ウサミの奴、味方ぶって見せるわりには一丁前に検閲をしているらしい。
ルカ「この『A』ってのがパソコンの所有者っぽいんだが……詳細はわからないな」
美琴「メールの送信者元はわからないの?」
ルカ「アドレス以外は特に残ってねえな……」
にちか「じゃあそのアドレスをクリックですよ! もしかしたらそこから手がかりが……」
ルカ「……ダメだな、そもそもこのパソコンがネットワークに接続してない」
にちか「じゃあ適当に電波の一つでも拾って……」
ルカ「……あ? どうなってんだ?」
美琴「どうしたの?」
ルカ「いや、今周りの電波環境をパソコンで検索したんだけどよ……まるで電波の類がないんだ。ネットワークに接続する以前の問題だぞ」
にちか「えー? それじゃテレビやラジオもダメってことですー?」
美琴「まさに絶海の孤島……だね」
(それじゃ、どうやってこのメールは送られたんだ……?)
コトダマゲット!【島の電波環境】
〔ジャバウォック島には電波の類が一切なく、外部から完全に隔絶されている〕
- 528 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:35:51.47 ID:IHQOUw1J0
- ------------------------------------------------
ルカ「……しょうがねえ、メールボックス以外のところを見てみるか」
美琴「外に接続できないのなら、中の情報を見るしかなさそうだね」
にちか「ほら、ルカさんフォルダを展開、展開!」
ルカ「わーってるよ、急かすんじゃねえ」
メールボックスを一旦閉じて、今度はフォルダを開いた。
写真、ドキュメント、音楽……ぱっと見は普通のパソコンと変わりない。
しかし、その右に表示されているストレージの残量ゲージを見てみると並ならぬ量がそこに注ぎ込まれていることが一目でわかる。
間違いない、宝石はここに眠っている。
にちか「ファイル、結構大雑把に分けられてますねー。大半は使い物にならなそうですけど」
ルカ「だな、風景写真やら観光地の案内やら……何かのカモフラージュのつもりか?」
美琴「……待って、この写真。開いてもらえる?」
ルカ「ん? おう」
美琴の目に止まった一枚の写真。
それがポップアップした途端、私にも僅かにあった違和感は完全なる既視感に転換した。
ルカ「この写真は……!」
- 529 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:37:28.03 ID:IHQOUw1J0
-
《「んだよこれ……!?」
そこに写っていたのは私たち。
この島にやってきた連中が全員横並びになって……目を瞑っている。
目を瞑ってコールドスリープ用の機械に横たわっている姿が写っていた。
だが、それで終わらない。
この情報の持つ意味、その一番大きなところは……その上。
「なんで、なんでこいつら……」
風野灯織、田中摩美々、和泉愛依、園田智代子、市川雛菜。
前回のコロシアイの生き残りだと名前が上がっていた連中は……白衣を着て、私たちを見下ろしていた。
____その機械でまるで、人体実験でもしているかのように。》
冬優子を裁判で処刑したあの晩に、無理矢理に押し付けられた混迷の一枚が再び私の前に立ち塞がったのだ。
にちか「え? これ、どういうことなんですか……? ちょっと、意味がわからないんですけど……」
美琴「この五人は……何をしているの? 私たちを見下ろして……」
結局、私はこの写真については共有を避けた。
そこに写っているものが何を意味しているのか、これが本当に正しい写真なのか。その詳細の一切が不明で、必要以上の混乱を招くと思ったからだ。
きっとその判断は間違っていなかったはず。二人がこれほどまでに当惑しているのだから。
ルカ「……今は、一旦置いとくぞ。情報は情報としてだけ受け取っておけ。邪推はすんな」
<<黹Qa*
前回のコ■■アイを生き抜い■者た■■器はす■■熟し■いる
麼/:‖亊
残すは彼■らも共に薪■焚べ■■け輝■■踏み台に才■を世に送り■■■だ
ルカ「……ああ」
コトダマゲット!【冬優子の写真】
〔冬優子が裁判終わりにルカに託した一枚の写真。前回のコロシアイの生き残り5人が、今回の参加者を機械に繋いで見下ろしている様子が写っている〕
- 530 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:39:29.79 ID:IHQOUw1J0
- ------------------------------------------------
にちか「それと、やっぱりこのフォルダが気になりますよね!」
ルカ「ああ……ぶっちぎりで一つだけ容量の大きなフォルダ。意味がないって方が無茶な話だ」
そのフォルダは明らかに異様だった。
容量の大きさもさることながら、更新日時の日も浅く、かつ文書や画像、映像も一緒くたに取り込まれているのだ。
まめに整理をする様子ではなかった持ち主のことだから、乱雑にぶち込まれてしまっているのだろうが、それにしても悪目立ちしている。
美琴「……でもこれ、開けられないね」
美琴の指摘通り、残念ながらその中身を見ることができないというのがネックなのだが。
クリックして展開の指示を出しても、アラーム音と共に錠前に阻まれる。
美琴「フォルダ名は……『方舟計画』? なんのことだろうね」
ルカ「つーかせっかくパス解除したのにまたロックがあるのは反則だろ?」
ウサミ「えーっと……それに関してはすみまちぇん……」
にちか「申し訳なく思うなら解除の一つでもしたらどうです?」
ウサミ「それも……すみまちぇん」
にちか「えー、めちゃくちゃケチですねー! なんでなんですかー?」
ウサミ「お、乙女の秘密って奴でちゅよ!」
ルカ「持ち主はオマエじゃねえだろうが……」
(歯切れが悪い奴だな……)
でも、歯切れの悪さはここに眠っている情報が重要なであることを証明している。
このパソコンに眠っていた『方舟計画』という言葉だけでも覚えておいて損はないだろうな。
コトダマゲット!【方舟計画】
〔ノートパソコンに入っていた謎のフォルダ。その情報量はかなり多いようだが、ロックがかけられており解錠はできない〕
- 531 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:41:30.88 ID:IHQOUw1J0
- ------------------------------------------------
ルカ「……で、一通り中身は見終わったわけだが。これでどうしろってんだ?」
ノートパソコンの中には重要な情報があるにはあったが、それも可能性と疑問止まり。
私たちにとって具体的な形で助けになるかと言われればそれは違う。
ウサミの狙いを計りかねて、つい乱暴な口振りになる。
ウサミ「はい! 御三方はあちしのレクリエーションのファーストステージをクリアされまちた! ここから先はセカンドステージでちゅ!」
美琴「セカンドステージ?」
ウサミ「この島にはもう一つパスワードのロックをされてる場所があったのは覚えてまちゅか?」
にちか「この方舟計画とはまた別で、ってことです?」
ウサミ「はい! 今回のウォークラリーのメインはそこなんでちゅ、ミナサンの手で新しい場所を開拓して欲しいんでちゅ!」
美琴「それって……第2の島にあった遺跡のことかな」
ルカ「そういえばそんなもんあったな……あのマシンガンが付いてる並ならぬ奴」
美琴「遺跡のパスワードはノートパソコンとはまた別物なの?」
ウサミ「はい! 遺跡のパスワードは、もう一つの未開の地に眠っていまちゅ!」
にちか「もう一つの……未開の地?」
ウサミ「その場所を探り当てることができれば、自ずと遺跡のパスワードも分かるはずでちゅ!」
(じゃあ実際のところはその未開の地とやらを探し当てるのがセカンドステージってところか……)
にちか「じゃあちゃっちゃっと見つけちゃいましょう! 絶対一番でこのレクリエーションを終わらせましょうね!」
ルカ「……ったく、あちこち移動させやがって。面倒なレクリエーションこの上ないな」
とはいえこのウォークラリーで全ての島は渡り歩いたはずだ。
まだ足を踏み入れていない場所など残っていただろうか?
【誰も足を踏み入れていない未開の地とはどこ?】
↓1
- 532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/11(金) 21:44:59.44 ID:Wgs5DF8B0
- ネズミー城
- 533 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:46:23.43 ID:IHQOUw1J0
- ------------------------------------------------
【第四の島 ネズミー城】
ジャバウォックの島々の中でこの空間は唯一と言ってもいい。
理由はわからないがモノクマもモノミも足を踏み入れようとしない聖域。
とはいえその城には出入り口らしいものも見当たらず、真っ白なレンガの絶壁に阻まれるため、私たちも息をつくことも叶わないのだが。
ルカ「未開の地といえばここぐらいのもんだろ? この城の中にパスワードのヒントは眠ってるはずだ」
にちか「言われてみれば、誰もまだ入ったことない場所ですよね」
美琴「……でも、どうやって入るの? こんな壁、人の力だけじゃどうしようもないよね?」
ルカ「ああ……何か爆弾でもないとな」
美琴「……」
ルカ「……?」
美琴「ねえ、さっきのエグイサル……使えないかな」
ルカ「はぁ? エグイサルを使うったって……どうやってだよ」
美琴「えっと……口で説明するより、実際に見せた方が早いかな」
ルカ「……あ?」
- 534 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:48:20.35 ID:IHQOUw1J0
-
『私が……この、赤いエグイサルに乗っているのが……っ!』
「緋田美琴だから」
- 535 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:50:26.63 ID:IHQOUw1J0
-
何が起きたのか、理解ができなかった。
突然に顔の横を突き抜けていった突風と熱。
爆音が全てをかき消す中で、瓦礫が後ろに飛んでいくのを目視しながら自分の目が覚めていくのを感じていた。
……悪い夢を見ていた。
悪霊に取り憑かれたように、自分の体は何者かによって操られ、思考の一つ一つも導かれて、肉体と精神は完全に私の支配の外にあった。
そこで抱いた感情も、私が口から吐き出した言葉も、その全てが粘土で作られた模造品。
むせ返るような図工室の香りに、私は嘔吐感で膝を折った。
(……私は、今の今まで何と話してたんだ)
あたりにこぼれた直近の記憶を拾い集めてみると、顔が黒塗りされた誰かと談笑している自分の姿。
人の死を嘲るような言葉をつらつらと楽しそうに語っていた。
「ざけんな……ざっけんな……!」
胃からせり上げるものを必死に抑え込んだ。
記憶に蓋をすることはできても、取り替えることはできない。
連中の死を玩具にしたことに対する嫌悪が湯水のように湧いてくる。
「マジで……死ねよ、私……」
それと同時に認知が蘇る。
今目の前で起きたことは、忌まわしき記憶の再現。
その受け入れ難さを前にして、嚥下を拒絶し、現実から逃避することに決めた死別。
和解をすることも叶わないままに迎えたエンドロールは、私に改めて後悔と無力感を痛感させるには事足りていた。
深淵の闇に堕ちた心境とは裏腹に、その視界は開けていた。
俯くことすらできずにいた私は、砂煙が捌けた後に現れた城の内部をそのまま受け止めることとなる。
「……なんだ、これ」
- 536 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:52:09.44 ID:IHQOUw1J0
- ------------------------------------------------
【ネズミー城 内部】
ふざけた外観からは予想だにできない、色彩と空間。
黒と青がタイルのように散らばる部屋は異様な無機質さで、漂う透明なキューブは電子を纏う。
床と壁には絶えず文字列が走り、毛細血管のようにタイルの合間にLEDが張り巡らされている。
近未来という言葉で飾るなら、こういう部屋だろうと思う。
「なん、で……」
しかし、私を驚かせたのは部屋だけで終わらない。
「なんでオマエが……ここにいんだよ……!」
そこには、あの女の姿があったから。
「ふふーん、昨日ぶりなのにご挨拶やね! ルカ!」
不気味なまでに朗らかな表情、押し付けがましさすらある明朗快活な声量。
見慣れたその立ち居振る舞いそのままに、いるはずのない彼女はそこに立っていた。
- 537 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:53:52.90 ID:IHQOUw1J0
-
ルカ「オマエは……死んだはずだろ、なんで……こんな……」
思わず詰め寄る私を、軽くあしらうようにする。
恋鐘?「死んだ? ……ああ、そげなこつ気にせんでよかよ、今更生きるとか死ぬとか些細な話たい」
ルカ「はぁ……?」
恋鐘?「さっきまでルカは何見とったか思い出さんね! 誰と一緒に話して、誰と一緒に行動ばしとった?」
ルカ「……あんなんは偽物だ、あんなのが、二人なわきゃねえ……!」
恋鐘?「んー……ルカん気持ちは分かるけど、話し方も体の動かし方も全部二人のそのまんまだったばい?」
ルカ「だとしてもだ……中身が、まるっきり別もんだっての……!」
恋鐘?「それはルカがそう思いたい、ってだけの話とやろ?」
ルカ「なっ……ちげーよ! オマエも283の人間ならわかんだろ! 美琴もにちかも……人の死を嘲るような下品で始末に追えないやつなんかじゃないって!」
恋鐘?「だから、それが推測に過ぎないって話ばい。目の前で話してる相手が何を考えているのかも本当の意味では分からん」
恋鐘?「相手がどんな人物か、なんてエスパーか神様でもないと読み取ったりなんか出来んからね!」
ルカ「うっせえ……それ以上美琴を穢すならタダじゃおかねえからな」
恋鐘?「んー……ルカも結構剛情やね……」
不可解と不快で募った苛つきに解答は与えちゃくれない。
私の見ていた夢が何かについて、具体的な言及はまるでせずに月岡恋鐘は自分の言いたいことだけを押し付ける。
- 538 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 21:55:15.02 ID:IHQOUw1J0
-
恋鐘?「まあ、こんな押し問答に意味はなか! さっさと本題に入るばい!」
ルカ「本題……?」
恋鐘?「ルカは今ウォークラリーばしとる最中! うちはルカに最後のパスワードを伝えるためのチェックポイントでしかなかもん」
ルカ「ああ、そういやそうだったな……」
恋鐘?「それじゃあ早速言わせてもらうばい! パスワードは……『0816』の数字4桁! ちゃんと覚えて帰ってね!」
ルカ「……? なんの数字だよ、それ」
恋鐘?「うーん……うちにも意味は分からん……」
ルカ「はぁ……?」
恋鐘?「ま、とりあえず伝えることは伝えたばい! これで用件はおしまい!」
傲慢にもここで背を向けた。
話したいこと以外話す気はないという意思表示なのだろう。
ルカ「は?! ちょ、ちょっと待てよ! どこに行く気だ?!」
思わずその左腕を掴んだ。
手の中に伝わる熱の感触は、なんとなく気味が悪い。
- 539 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:01:36.11 ID:IHQOUw1J0
-
恋鐘?「どこに行くも何も……元あるべき場所に戻るだけの話ばい」
ルカ「そんな無責任な話があるかよ、オマエは黒幕なんだろ? だったら今こうやってウォークラリーをさせてるのもオマエの意志のはずだ」
ルカ「オマエは私に何がさせたい? 何を伝えたい? さっきから断片的な情報ばかり与えて、何を目論んでる?」
恋鐘?「ちょっと待たんね! そげん質問矢継ぎ早にされても答えられん!」
答えられないと言う言葉には、何か含みを感じさせた。
自分の唇を噛むようにして腕をブンブンと振り回す。窮屈さを感じて駄々をこねる子供のようなそぶりだ。
そこから捻り出すような譲歩を彼女は口にする。
恋鐘?「んー……そいなら、一個だけルカに教えてあげてもよかよ!」
ルカ「……一個だけ?」
恋鐘?「時間が圧しとるから、一個だけ! ルカの質問に正直に答えてあげる!」
与えられた権利は手狭だ。
頭の中には無限の疑問符が浮かんでいる。
今の自分も過去の自分も、未来にいるはずの自分も、何もかも未知と不可解に侵されている中で、導として掴むには何が良いのか。
そんなのいくら考えても答えが出るものではない。
- 540 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:02:59.01 ID:IHQOUw1J0
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ルカ「……聞きたいことは山ほどある」
ルカ「だけど、その中でも一つだけ、どうしてもはっきりさせておきたいことがある」
恋鐘?「なんね?」
ルカ「……天井努だ」
それなら、と私は私自身のルーツを手に取った。
この思考の、この感情の、この言動の、根幹とも言うべきはその男への憎しみ。
他の人間なら誰しもが持つものを、持つという権利すら与える間も無く奪い去ったこの男を許しておけるはずがない。
ましてその男が凶行に走り、その凶行に感化された人間がいるとなるとその事の次第を明らかにしたいと思うのは正常な反応だろう。
恋鐘?「……!」
ルカ「私にとって親の仇とも言うべき男、あいつとオマエは繋がって……このコロシアイを仕掛けた、そういう話だったはずだ」
ルカ「オマエと天井の繋がり、それをハッキリさせろ。この前はそれをちゃんと聞く前にオマエがくたばっちまったからな」
月岡恋鐘は、表情では反応は見せなかった。
余計なことを悟らせまいとしているのか、ただ不器用なだけなのか。いまいち読みきれない。
- 541 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:04:20.26 ID:IHQOUw1J0
-
恋鐘?「ルカが聴きたいのは、うちと社長がどんな関係かって話でよか?」
ルカ「ああ、このコロシアイを仕掛けたオマエたちについて。聞かせてもらうぞ」
深呼吸を一度してから、ゆっくりと語り始めた。
恋鐘?「ルカたちももう知っとる話やけど、社長は283プロのアイドルば対象にして行われたコロシアイの1回目の黒幕ばい」
恋鐘?「そんコロシアイは、時代を超えてみんなの希望になるアイドルを生み出すのが目的やったとよ」
恋鐘?「うちはそん思想に賛同して、社長の仲間……チーム・ダンガンロンパの仲間になったばい」
ルカ「……その、チーム・ダンガンロンパってのはコロシアイを興行にしている組織なんだろ? 天井はそこの重役なのか?」
恋鐘?「ジェネラルマネージャー……幹部とも言い換えれるばい」
ルカ「なるほどな、それで資金繰りや物資の投入が可能だったわけか……オマエもその恩恵にあやかってたのか?」
恋鐘?「社長はもう死んどるから、リアルタイムでどうこうなんて話ではなかね。でも、社長には色々と助けてもらったのは事実ばい」
恋鐘?「コロシアイのいろはを仕込んでもらったし、今回のプログラムだって骨組みは社長が作ったものでうちはそれに手を加えた形やけんね」
ルカ「オマエと社長はいつから共謀関係にあったんだ?」
恋鐘?「1回目のコロシアイよりももっと前……283プロにおる今のユニットが全部揃った頃ぐらいから」
ルカ「……そんな前からかよ」
恋鐘?「はじめは社長がうちにコロシアイの映像を見せてきて……そこで魅せられてしまったばい」
恋鐘?「コロシアイの中で生まれる希望……その力強さと気高さは、他では生み出すことはできんけんね」
ルカ「……よくわかったよ、オマエがずっと初めから狂ってたってことは」
恋鐘?「人がせっかく親切に答えたのに随分な口ぶりばい……」
コトダマゲット!【恋鐘の証言】
〔1回目のコロシアイの黒幕である天井とはユニットが揃った時からの共謀関係。恋鐘はその思想に強烈な賛同を示しており、コロシアイ運営のいろはも彼に仕込まれたものだという〕
- 542 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:05:27.01 ID:IHQOUw1J0
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恋鐘?「ルカともっとおしゃべりしたいところやけど、もう時間ばい。ルカは次のステージに進まなきゃいかん!」
ルカ「な……待て、まだ聞きたいことが!」
恋鐘?「ぶっぶー! 質問は一個だけってそう言ったはずばい!」
おどけた様子でまるで相手にしない。
混迷の水位がまた上がりだす。
恋鐘?「それに……うちにわざわざ聞かなくても、ルカはこれから嫌でも知ることになるけん」
ルカ「……あ?」
恋鐘?「とにかく、今は遺跡に行くことだけ考えて! 知りたい真実はそこに眠っとるよ!」
ルカ「おい! 待て!」
最後まで耳を貸すことはなく、月岡恋鐘はその姿を消した。
ずっと目の前で見ていたはずなのに、どこに消えたのかも、どうやって消えたのかも何も分からないままで、私だけが部屋に取り残された。
ルカ「……考える間にさっさと進めってことかよ」
狐にはもう摘まれ慣れた。
今目の前で起きた異常にどうこう言うのも煩わしい。
ルカ「……遺跡、だったな」
- 543 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:07:24.51 ID:IHQOUw1J0
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【第2の島 遺跡】
最初にここに来たのは随分と前、最後にここに来たのも随分と前。
要は、探索の時以来まともに近寄ろうともしていなかった領域だ。
来るものを真正面から全て拒絶する盤石すぎるセキュリティ設備に、調査を進めようという意欲も削がれてその存在そのものを忘れ去ってしまっていた。
ルカ「……此処が最終目的地になるなんてな」
散々と島中を歩かされたが、これでいよいよラスト。
いつの間にか靴にくっついていた砂粒を、コンクリを爪先で叩いて振り払った。
「もー! ルカさん人のペース考えて歩いてくださいよ! どんだけがっつくんですかー!」
置き去りにしたにちかが背後から大声で叫ぶ。文句ばかり言うお荷物も、美琴の手前置いて行くことはできない。
形だけでも悪びれておいた。
- 544 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:08:48.28 ID:IHQOUw1J0
-
ルカ「ああ、いや……悪い」
美琴「いいよ、にちかちゃん。大丈夫」
にちか「でも……この人! ぜんっぜん周り見てないっていうか……!」
千雪「ウォークラリーももうこれで終わりなんだもん、走りたくもなっちゃうよね」
ルカ「千雪……人をガキみたいに言うんじゃねーよ」
摩美々「今度こそこれで終わりですかぁ……? これ以上歩くのとか、もう勘弁なんですケドー……」
結華「ウサミは遺跡でパスワードを入力すれば終わりって言ってたよね?」
灯織「はい……そのはずです。パスワードは恋鐘さんから教わった『0816』。これで扉が開くといいんですが……」
風野灯織が一瞥した先には重厚な扉。
鋼鉄でできた扉には『未来』と克明に刻まれている。
智代子「問題は、それを誰が入力するかだよね……」
あさひ「わたし、入力してみたいっす!」
夏葉「待って。扉の横にマシンガンが取り付けられているのを見ても、危険の伴う行為だわ。入力は慎重に行うべきよ」
雛菜「じゃあジャンケンで決めよ〜?」
透「オッケー。私、グーね」
愛依「おっ、透ちゃんサクシ〜! じゃあうちはパー出す!」
冬優子「そんな浅知恵で挑む勝負じゃないっての……下手すりゃ死ぬのよ?」
どこまでも緊張感のない連中に忘れそうになるが、今は最終局面。
このコロシアイ南国生活の進退が決しようとしている最中、自分の命も駆け引きの材料とする覚悟を求められている。
- 545 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:10:30.99 ID:IHQOUw1J0
-
ルカ「……私がやる」
そんなものは、とっくに備わっていた。
正確には覚悟ではなく、苛つきに近い。ここまでの横暴を許したこと、自分達を散々弄んだこと……要因は無限にある。
虫唾がフルマラソンを走る中で、このコロシアイを終わらせることができるのなら自分の命なんて安いくらいだ。
果穂「ルカさん、あぶないです!」
ルカ「いいんだよ、どうせ誰かがやらないといけない……だったらヨゴレの私がやるべきだ」
千雪「ま、待って! ちゃんと話し合いをしてから……」
ルカ「そんな時間はないだろ……今は一刻も早くこの遺跡の中を確かめないと」
結華「だとしても……! そんな、三峰たちを勝手に傍観者にしないでよ……!」
ルカ「……」
制止の声には耳を閉ざした。
おそらく何を言ってもこいつらは聞く耳を持たない。
自分達はみんな平等。
誰かを危険に晒して自分は安全圏なんてもってのほか。
だから、結論は一生出せない。
誰かが一歩踏み出せば、それを引き戻す。
お互いがお互いの命綱を握っているからこそ、彼女たちは賭けに挑むことはできないのだ。
- 546 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:11:18.14 ID:IHQOUw1J0
-
冬優子「ルカ……あんたにもしものことがあったら夢見が悪いのよ……!」
でも、それじゃあコロシアイには勝てない。
命を賭けるという前提に成り立つ秩序の中にいるのに、そこから目を逸らしている彼女たちは啄まれるだけの餌と変わりない。
食い物にされるだけなんて私はゴメンだし、食い物にされている連中を見るのも不快。
灯織「斑鳩さん……一人で背負わないでください、私たちで別の方法を何か考えてもいいですし……」
指で一つ一つ数字を丁寧に確認しながら入力していった。
にちか「……あー、もう! なんでそうやって一人でいっつも突っ走るかなー!」
一文字でも間違えれば蜂の巣。
そのことが頭をよぎるたびに、唾液が込み上げた。
美琴「ルカ……死なないで」
ようやく……最後の一文字を入力し終えた。
- 547 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:12:23.71 ID:IHQOUw1J0
-
ピピッ
入力パネルは全面が同時に緑色に点灯。
それとほぼ同時に扉の向こうから動作音が聞こえた。噛み合わされていた閂が外れるような音に、思わず振り返る。
愛依「……開い、た? もしかして」
ルカ「……みたいだな」
果穂「す、す、す、す……」
果穂「すごいですーーーーー!! これでウォークラリー、完全コンプリート、です!」
私に一斉に駆け寄ってくる283の連中。
さっきまで私の独断を非難し、その身を案じていたというのにすっかりそんなことは他所にやって成功に歓喜している。
両手を掴んでブンブンと振り回されるのに鬱陶しさを感じながら私は視線を逸らした。
冬優子「もう……成功したからいいものの、こんな真似すんじゃないわよ……こっちの身が持たない」
千雪「本当……心配で心配でしょうがなかったんだから」
ルカ「……誰かがやらなきゃいけなかったんだから。しょうがないだろ」
本当に、私はただ自分がやりたかったことをしただけ。
あのどうしようもない膠着を打破したくて、自分の命を差し出しただけなのだ。
それなのに、見当違いな感謝がそこら中から投げ込まれて参ってしまう。
息のつける場所を求めてそこかしこを見遣ると、一人の女と目が合った。
- 548 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:13:38.00 ID:IHQOUw1J0
-
灯織「……斑鳩さん。ありがとうございました、そしてごめんなさい」
そいつは、これ幸いとばかりに私につむじを見せびらかした。
そこまでの角度をつけてのお辞儀など、見慣れていない。
ルカ「あ?」
溢れた声も動揺の発露に近い。
私から反応があったことを確かめると、風野灯織は上体を起こして弁明した。
灯織「あなたは283プロダクションの人間でもないのに、私たちの命を背負ってここまで連れてきてくれた。そのことには感謝と申し訳なさを感じずにはいられないんです」
なるほどその理屈は分かる。
こいつの目線から見れば、私は突如として目の前に現れた救世主にでも見えているのだろう。
だけど私にはそんな後光なんて差していない。私に付き纏っているのは常に逆光だけだ。
- 549 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:14:25.62 ID:IHQOUw1J0
-
ルカ「別に……こっちも背負ったつもりなんかねーよ」
灯織「……え?」
ルカ「にちかの裁判の時言っただろ? 私は私がやりたいようにやるだけ。だからその過程で別の誰かの願いや希望を私が偶然叶え、思いを背負うことになったとしてもそれに引け目なんか感じなくていい」
ルカ「こっちは救おうと思ってやってるわけじゃないんだからな」
ここまでに事態が転がったのは本当にただの偶然なのだ。
偶然に283の連中に見とめられ、偶然に言葉を交わすこととなり、偶然に同じ時間を過ごした。
近づこうと思って近づいたことなど一度もなかった。それなのに、気がつけばジリジリと空間は狭まっていた。
磁力で引き寄せられるかのような、不可抗力だったのだろうと思う。
にちか「……ホント、一丁前なこと言いますよね」
ルカ「オマエはその筆頭だ」
にちか「……知ってます!」
ルカ「だから、オマエら283の連中も好きにしろ。私についてきてもこっちも何も言わねえ。歓迎の挨拶も、厄介払いの悪態もな」
だから、今更その不可抗力を弾くこともしない。
その方が面倒だし、労力もかかる。
ルカ「ほら、さっさと行くぞ」
最後まで風野灯織の言葉は受け取ることなく、私は背を向けた。
背中には、他の連中の視線を感じる。
羨望でもない、誹謗でもない。そこに帯びているものは私にはわからない。
具体的な繋がりなど何もないもの同士、その関係性を語る言葉はないはずだ。
ルカ「決着をつけるぞ」
- 550 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:15:31.29 ID:IHQOUw1J0
-
____これで本当に終わり。そして、ここからすべてが始まる。
あさひ「じゃあ早く行くっす! もう待ちきれないっすよ!」
蜀ャ蜆ェ蟄「縺ゅs縺溘?窶ヲ窶ヲ縺ゥ縺薙∪縺ァ蜻第ー励↑縺ョ繧医?ゅ∪縺ゅ?∵ー玲戟縺。縺ッ繧上°繧九¢縺ゥ」
諢帑セ「繧「繝上ワ縲√≠縺輔?縺。繧?s縲ゅ∩繧薙↑縺ァ荳?邱偵↓陦後%? 縺ュ?」
あさひ「あははっ! 分かってるっすよ、みんなで一緒に……っすよね!」
私は孤独に、ただ一人で歩み続ける……そのことには恐怖を抱かない……とは言い切れない。
だけど、迷いはない。
自分で決めた道を途中で変えた先にある凋落を、私は知っているから。
- 551 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:16:22.79 ID:IHQOUw1J0
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邨占庄「縺サ繧峨?√∪縺ソ縺ソ繧薙?ゅ≠縺ィ繧ゅ≧縺。繧?▲縺ィ縺?縺九i縺包シ」
鞫ゥ鄒弱?「縺オ繧上=窶ヲ窶ヲ蟶ー縺」縺溘i縺贋シ代∩繧ゅi繧上↑縺阪c縺?縺ュ繝シ」
邨占庄「縺昴l縺ッ縺セ縺や?ヲ窶ヲ莠、貂画ャ。隨ャ?」
自分の道を歩み続ける中で、拾い上げることになった不可視の粒の数々。
これ自体には何の力もない。
卵を砕くことも、紙を破くことすらもできない。
- 552 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:17:06.39 ID:IHQOUw1J0
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蜊?妛「縺ァ繧ゅ?√h縺九▲縺溘↑窶ヲ窶ヲ縺ソ繧薙↑縺ァ縺薙≧縺励※隧ヲ邱エ繧剃ケ励j蛻?k縺薙→縺後〒縺阪※」
轣ッ郢「縺ッ縺??∫ァ√b逧?&繧薙?縺雁鴨縺ォ縺ェ繧後※縺?◆縺ョ縺ェ繧」
蜊?妛「轣ッ郢斐■繧?s縺ッ遶区エセ繧医?ゅ∩繧薙↑繧剃ス募コヲ繧ょシ輔▲蠑オ縺」縺ヲ縺上l縺溘@窶ヲ窶ヲ縺阪▲縺ィ螳溘j縺ョ縺ゅk逕滓エサ縺ォ縺ェ縺」縺溘→縺翫b縺?o」
でも、それは確かに存在するようで。
他の連中が言うには、
その粒は胸の中で静かに燃え盛り、
なぜか手は無意識にそれを掴み、
他の連中はそれをもっともらしく弁舌に尽くし、
それを導にして道を決めているらしい。
- 553 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:17:58.27 ID:IHQOUw1J0
-
智代子「終わっちゃうと思うとちょっとだけ寂しさもあるね……」
譫懃ゥ「縺ッ縺??ヲ窶ヲ縺ェ繧薙□縺倶ソョ蟄ヲ譌?。後r蜈亥叙繧翫@縺溘∩縺溘>縺ァ縲√Ρ繧ッ繝ッ繧ッ縺励∪縺励◆?」
螟剰痩「縺オ縺オ縲∽サ雁コヲ縺ッ繝励Λ繧、繝吶?繝医〒縺ソ繧薙↑縺ァ譌?。後↓陦後¢繧九→縺?>繧上?縲ゅ?繝ュ繝?Η繝シ繧オ繝シ縺ォ繧りゥア縺励※縺ソ縺セ縺励g縺」
_______283の連中はそれを【絆】と呼んだ。
希望や絶望という漠然としたものではなく、明確な存在としての【絆】。
それがある限り、歩み続けることに恐怖なんてしない。
- 554 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:18:42.32 ID:IHQOUw1J0
-
髮幄除「謌サ縺」縺溘i蟄ヲ譬。陦後°縺ェ縺阪c縺?縲懌?ヲ窶ヲ髮幄除蟲カ縺ォ谿九▲縺ヲ繧ゅ>縺?°繧ゅ↑縲」
透「それな。あるかも、一理」
髮幄除「縺ゅ?縲懶シ」
今回ばかりは私の歩む道が偶然にその【絆】に、部分的に沿っていた。
そこで意図せず繋がってしまったのだ。
- 555 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:19:28.38 ID:IHQOUw1J0
-
ルカ「さあ、行くぞ……帰るんだ、ステージの上に」
鄒守清「縺昴≧縺?縺ュ縲∝セ?▲縺ヲ縺上l縺ヲ縺?k莠コ縺後>繧九°繧」
縺ォ縺。縺「縺薙s縺ェ縺ィ縺薙m縺倥c縲∵ュ「縺セ縺」縺ヲ繧峨l縺ェ縺?〒縺吶h縺ュ?」
だから私も、嫌々ながらその陽の下にいる。
図々しい陽の光は私たちをひとまとめに暖めながら、遥か先の一点を向いている。
その一点を目掛けて、一歩を踏み出すのだ。
_______私たちは“目的地”を、目指し続ける。
- 556 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:20:15.86 ID:IHQOUw1J0
-
「私たちの日常を、取り返すんだ」
扉から、光が差し込んできた。
- 557 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/11/11(金) 22:21:37.72 ID:IHQOUw1J0
- ------------------------------------------------
【???】
ルカ「……あ?」
……悪い夢を見ていた。
一度完全に醒めたはずなのに、気がつけば微睡の中にいた。
工場から排出されるヘドロのように、真っ黒で、ベトベトと纏わりつく不快なだけの夢。
モノミ「おかえりなちゃい! 今度こそパーフェクト、完全クリアでちゅよ〜!」
かといって現実に戻ったからと好転するでもない。
目を覚ました私たちを待ち受けていたのは、
このコロシアイそのものを象徴するような醜悪なマスコットと、網膜に焼き付いた生と死をないまぜにする裁判場。
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