このスレッドは1000レスを超えています。もう書き込みはできません。次スレを建ててください

【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

258 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:07:14.74 ID:O/LSqR+T0

ルカ「……チッ」

【解!】

ルカ「思い出せ、私たちがレストランで催眠ガスを吸わされた時から、今に至るまで。あさひはどんな格好をしていた?」

エグイサル赤『格好……? えっと……いつもみたいに、クリーム色のカーディガンに……』

エグイサル赤『ガスマスク……?』

エグイサル白『……ごめんなさい』

ルカ「……あのガスマスク、丁度目のグラス部分が灰色のガラスで作られてたんだ。それを通して外を見たところで、どうなる?」

エグイサル桃『世界のすべてが……灰色に見えてしまう……』

エグイサル青『そ、それじゃ……まさか……』

ルカ「あさひは事件当時、色の区別がついていなかったと思うぜ。だから……犯人がどのエグイサルに戻ったのか、正確には分かっちゃいないんだろうな……」

エグイサル桃『立ち位置とかを覚えてたとしても、さっきまで犯人に眠らされてたっつってたし……もう滅茶苦茶になってるだろうな』

(……クソッ、あと一歩……あと一歩だってのに……!)

モノクマ「うぷぷぷ……」
259 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:08:19.55 ID:O/LSqR+T0





エグイサル白『諦めちゃダメです……っ!』





260 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:09:33.17 ID:O/LSqR+T0

ルカ「……!?」

エグイサル白『真実はあと一歩のところまで迫っています、今はその手前で少し曇り空になっただけ……』

エグイサル白『もう、私たちは真実を掴み取るための翼は持っているはずです……っ』

エグイサル白『空を晴らすことができるのは、私たちだけです……っ!』

(真実を掴み取るための、翼……?)

(もしかして、これまでの議論の中で……エグイサルの正体を明かすための何かもすでに見つかっているってのか……?!)

ルカ「……それならやることはただ一つだ」

ルカ「この事件を始めっから振り返って……その中に隠されたヒントを見つけ出す」




ルカ「月岡恋鐘、オマエの喉元にナイフを突きつけてやるよ……!!」




261 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:11:03.85 ID:O/LSqR+T0
-------------------------------------------------

【クライマックス推理開始!】

【act.1】


ルカ「事件の発端となったのは、あさひが散布した催眠ガスだった。いつも通りレストランに集まった私たち、そして何者かによって呼び出された美琴。全員は無防備にもあさひの策にはまり、意識を失った」


ルカ「次にあさひはワダツミインダストリアルから持ち出したエグイサルを使って、わたしたちをそのまま第五の島へと運んだ。モノクマの開発中である新兵器のエグイサルをどうしてあさひが操縦できたのか? それは、冬優子の遺したリモコンのおかげだった」


ルカ「……多分、ファイナルデッドルームの初回攻略特典の一つだったんだろうな。私にもあいつから託された手紙があったし……有栖川夏葉を手にかけたこと、そして私たちを遺して逝くことに負目があったのかもしれない」


ルカ「それに、あのリモコンだけ渡されても訳がわからねーだろうしな。冬優子が犯行に手を染めた段階ではエグイサルの姿形も出ていなかった。好奇心旺盛なあさひならその正体を突き止めてくれると、そう期待したのかもしれない」


ルカ「……まさかそれで、こんな事件が起きるなんて、思いもしなかったんだろう」

262 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:12:27.24 ID:O/LSqR+T0

【act.2】

ルカ「ワダツミインダストリアル工場内に到着したあさひは狸を誘き出すための準備を着々と進めた。ここまで私たちの体を運んだ白いエグイサル以外の、赤、青、緑、黄、桃の五体に一人ずつ乗せて、コックピットをリモコン操作で閉めた。これにより、通常操作権を持たない私たちは脱出もできなくなる。ただ一人、このコロシアイの元凶でもある狸を除いて……な」


ルカ「エグイサルに搭乗させたことを前提に、自分自身を囮にした上で、誰が犯行を行ってもバレないであろう状況を作り出す。エグイサルで四方を取り囲んだ中央に何も武器も持たずに椅子に腰掛けた」


ルカ「まあ実際のところは行動ログは取っていたし、監視カメラの画角にすっぽり収まるようになっていた。狸が動こうものならその証拠が残る。たとえ自分の命と引き換えになろうとも……絶対に、狸を抑えてやろうとしたんだろうな」


ルカ「……でも、この時にイレギュラーが起きた。市川雛菜の薬剤耐性。つい数日前の美琴との接触で右手の神経が完全に死んで、激痛を前に鎮痛剤の常用を余儀なくされていたあいつは、催眠ガスの麻酔作用が効きづらくなってしまっていたんだ」


ルカ「多分、市川雛菜をエグイサルに乗せようとしている段階であいつは目を覚ました。わざわざ他の連中を巻き込んだ秘密の計画を練っていたというのに、こんなことでバレてしまうとはあさひからすれば肩なしだ」


ルカ「そこで、あさひは市川雛菜を抱き込んだ。あいつは美琴によって右手が使い物にならなくなっていたし、狸である可能性はかなり低かった。下手に騒がれてしまうよりも、計画を共にする同志にしてしまったほうが得策だと考えたんだ」


ルカ「そこであさひは市川雛菜をアルミのシートで隠すことにより存在をエグイサルの赤外線カメラでも掴ませないように工作。狸に気取られることなく、目撃証言という有効な証拠を生み出そうとしたんだ」


ルカ「……これが失策だったのかはわからない。あさひがミスをしたのだというなら、もっと前提の部分。単独でこの計画を実行してしまったことを追及できるが……きっとこの一つの選択により結末が大きく変わってしまったのもまた事実なんだろうな」

263 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:13:57.42 ID:O/LSqR+T0

【act.3】

ルカ「イレギュラーは続いてしまったんだ。市川雛菜だけでなく、目を覚ましてしまったものがもう一人。もしかすると最初っから意識を失ってなかったのかもしれない。だって、今回の犯人はコロシアイの首謀者……私たちの情報など全て筒抜けで、あさひの反抗計画もその全てを知っていたはずだから」


ルカ「市川雛菜との共謀関係がはじまった最中、その頭上ではとあるエグイサルのコックピットがゆっくりと開いていく。リモコンがないと操作はできないはずなのに……なぜ? その答えは単純だ、エレクトボムを使えば脱出は簡単だったんだ」


ルカ「コックピット内で炸裂したエレクトボムはジャミング電波を発生させ、エグイサルのコックピット内で異常事態が起きたと判定される。その結果緊急脱出システムが作動し、出ることができる」


ルカ「コックピットが開くと同時にジャミング電波は四方八方へ拡散。ワダツミインダストリアル内の監視カメラや行動ログも全て機能停止してしまった。これにより発生した空白の時間に、その全ては起きたんだ」


ルカ「完全に不意をつかれる形となったあさひはそのまま意識を奪われた。裁判の途中まで何の反応を示さなかったあたり、最終的には強力な麻酔をすわされたのかもな」

264 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:15:15.91 ID:O/LSqR+T0

ルカ「だが、狂牙はあさひだけでなく市川雛菜にまで及んだ。市川雛菜も体格はいい方だ、普段なら跳ね除けることもできたかも知れねえが、あいつは生憎肝心の右手が使えない。抵抗も甲斐なく、あいつはあさひが腰掛けていた椅子に拘束されてしまった」


ルカ「両手を縛り付けられ、手には手袋をつけられた。体の上には身を隠すために使っていたアルミのシートをかぶせられ、見た目からはとことん身元が特定できないように工作された。犯人は、首無しの身元不明の死体を作ることによほどご執心だったらしい」


ルカ「でも、当然首を刎ねるのは容易じゃない。どれだけ切れ味のいい刃物でも、振るう人間が非力な女じゃ大した切れ味にはならない。それだけの出力が必要だ」


ルカ「そこで犯人が使ったのが……なんと、モノクマだ」


ルカ「浅倉透から奪った後、恐らく解析を終えていたんだろうな。エレクトボムのジャミングは特定の波長の電話には相殺されてしまい、ジャミングの効果を発揮しない。モノクマはその“例外”に該当するように改造が施されていた」


ルカ「だから犯人は監視カメラにも映像を残さず、行動ログにも不審な動きを記録させず、市川雛菜の首をモノクマで刎ねることができたんだ。……市川雛菜はきっと絶命の瞬間までずっと意識があったんだろうな。あいつの手にはめられていた手袋は、左手だけがささくれてしまっていた。内側で必死に掻きむしった痕だろう。でも、これがきっかけとなって被害者を特定する根拠になったんだ」


ルカ「今回用いられたモノクマという最悪最凶の凶器……でも、その凶悪さこそが今回の犯人を導き出した!」

ルカ「私たちをコロシアイに引き摺り込んだ張本人、そして私たちの中に潜伏して散々かき乱した狸野郎……」

ルカ「その正体は_____________」



ルカ「月岡恋鐘、オマエだったんだな……!!」



【COMPLETE‼︎】

265 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:16:16.96 ID:O/LSqR+T0

ルカ「……今回の事件の一連の流れはこれで全部のはずだ」

(今の推理の中に……月岡恋鐘がどのエグイサルに乗っているのかを突き止めるヒントが……?)

モノクマ「ふふ〜ん、どがん考えてもうちがどんエグイサルに乗っとるかなんかわかるわけがなかよ!」

モノクマ「あさひはうちがエグイサルに戻る時の協力もしてもらっとるけど、あさひには目隠しをしたうえで、うちのエグイサルのボタンを押させたばい! あさひもうちの居場所は知らんけんね!」

エグイサル白『……』

エグイサル白『耳を貸す必要などございません……確かに、今の凛世たちに……恋鐘さんがどれに乗っているのかを知っている方は一人とていらっしゃいません……』

エグイサル白『でも、だからって終わったわけじゃねーんだ! ここからでも、どれに乗ってるか分かる方法がある!』

エグイサル白『その方法は今、あなたが語ってくれた推理の中にあるんだよー!』

(……月岡恋鐘がどのエグイサルに乗っているのか突き止める方法)

(クソッ……いったいどうやるってんだよ……!)

266 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:17:15.13 ID:O/LSqR+T0
-------------------------------------------------

【検討プロセッシング開始!】

……ひとまず黒幕もとい月岡恋鐘の行動について整理は出来た。
私の推理の一連の流れで行動を起こしたことはもう間違いないはずだ。
問題は……この中で何を活用して、エグイサルの特定につなげるかだ。
どれだ……? 犯人の、どの行動が特定の役に立つ……?

A.催眠ガスの無効化
B.エグイサルの脱出
C.モノクマの使用
D.エグイサルへの再搭乗

↓1
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:24:36.67 ID:kQM60gRt0
B
268 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:30:37.22 ID:O/LSqR+T0

【B】

【CORRECT!!】

……そういえば、月岡恋鐘は基本的にはすべて私たちと同条件で行動していた。
情報に関してのアドバンテージはあるものの、寝食を共にして時間も共有していた。
そして、行動の範囲も私たちと同一だった。
解放されていない物以上のことはしておらず、あくまで参加者『月岡恋鐘』に許された中での行動をとっていたのだ。

それは、今回の事件においても同じだった。
エグイサルの操作権を持っていたのは最初にファイナルデッドルームをクリアした冬優子からリモコンを受け継いだあさひのみ。
月岡恋鐘もやろうとすれば可能だったのかもしれないが、あくまで一参加者としての条件に拘った。
だから、こいつは私たちにも可能な方法でエグイサルを脱出したんだったよな。
エレクトボム、という浅倉透にも使用可能だったものを使って。

……あれ?
確かに私たち全員、エレクトボムは情報として共有はしていたが……なんで月岡恋鐘はそれを使用までしているんだ?
私はあの時、浅倉透にエレクトボムを託したはず……だったよな?

それってつまり……

A.浅倉透によって譲渡された
B.浅倉透から強奪した
C.浅倉透が落としたところを拾った

↓1
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:31:21.90 ID:4kUN3sNL0
A
270 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:34:05.39 ID:O/LSqR+T0

月岡恋鐘は、今日この瞬間まで私たちの味方だったんだ。
だからあいつも……私たちに馴染もうとする浅倉透からすれば信頼を置かれていた存在だったはずなんだ。
浅倉透がエレクトボムを渡していたとしても、何ら不自然ではない。

いや、むしろそう考える方が自然だ。
でも、一人だけに渡した……なんて、そんなはずがないよな。
月岡恋鐘が特別な間柄だったようなそぶりはないし、もし一人だけを選ぶなら市川雛菜だろう。
となると、エレクトボムの譲渡は全員に対して行われていたはずなんだ。
浅倉透から、全員に渡されたもの……それって……


【正しいコトダマを選べ!】

>>4 >>5

↓1
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:35:08.20 ID:kQM60gRt0
透のお守り
272 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:39:07.11 ID:O/LSqR+T0

【透のお守り】

【CORRECT!!】

そうだ……あの時レストランで全員に渡された出来合いのお守り。
あれは私を含めた生き残りのほぼ全員にその場で渡されたものだ。
浅倉透から何かを受け取ったタイミングは……あの時しかない!

懐に入れておいた私の分のお守り……その巾着部分をほどくと……



……やっぱり、あった。
紙札でも、勾玉でも、神木なんかでもない……
このお守りの正体は、エレクトボムだったんだ……!!


【FORGING!】

【透のお守り】→【エレクトボム】
〔第5の島を探索時、軍事施設にて発見したジャミング電波を発生させる投擲武器。透から『お守り』として生き残りメンバーのほぼ全員に手渡された。今回の犯人である恋鐘はこれを用いてエグイサルを脱出したものと考えられる〕

273 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:40:09.12 ID:O/LSqR+T0
-------------------------------------------------

【パニックトークアクション開始!】


モノクマ「うぷぷぷ……」【防御力60】
モノクマ「ふっふ〜ん♪」【防御力65】
モノクマ「本気でボクに勝てると思ってるの?」【防御力70】
モノクマ「うちにアイドルやらせたら、右にでる者はおらんけんね!」【防御力75】
モノクマ「絶望、どがんね〜?」【防御力80】


【盾の防御力をコンマで削り切れ!】

↓1〜5
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:41:09.08 ID:4kUN3sNL0
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/01(金) 22:42:16.70 ID:yFa+7TU30
それは違うぞ!
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:42:45.00 ID:4kUN3sNL0
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/01(金) 22:43:22.28 ID:yFa+7TU30
それは違うぞ!
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:44:00.65 ID:kQM60gRt0
279 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:47:46.52 ID:O/LSqR+T0

【発言力:♡×6→5】

【コンマ 08 70 00 28 65】

【内に秘めた激情が爆ぜる……! コンマの数値がプラスされました】

【最終コンマ 23 85 105 53 90】

モノクマ「うちはまだまだ負けん……絶望は、そう簡単にはやられんとよ!」

(あと少し……あと少しだ……!)

-------------------------------------------------

【パニックトークアクション開始!】


モノクマ「うぷぷぷ……」【防御力37】
モノクマ「ふっふ〜ん♪」【BREAK!】
モノクマ「本気でボクに勝てると思ってるの?」【BREAK!】
モノクマ「うちにアイドルやらせたら、右にでる者はおらんけんね!」【防御力22】
モノクマ「絶望、どがんね〜?」【BREAK!】


【盾の防御力をコンマで削り切れ!】

↓1〜2
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/01(金) 22:50:08.20 ID:OHUetqOdO
ば〜りばりばい!
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:50:16.27 ID:4kUN3sNL0
282 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 22:55:12.90 ID:O/LSqR+T0

【発言力:♡×5→3】

【コンマ 20 27】

【内に秘めた激情が爆ぜる……! コンマの数値がプラスされました】

【最終コンマ 35 42】

【敵の防御力がわずかに残った……】

【敵の防御力がピトス・エルピスの補正値未満の防御力のため、失敗分のダメージを受けたうえでの突破とします】

-------------------------------------------------
【ALL BREAK!】

ルカ「調子に乗ってんじゃねえ!」


【モノクマ「うちの乗るエグイサルを突き止めるなんて、どがんしたって不可能ばい!」】


ム/エ/ク/レ/ボ/ト


【正しい順番に並び替えて、コンマ値80以上でとどめをさせ!】

↓1
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:56:27.43 ID:4kUN3sNL0
エレクトボム
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 22:56:42.85 ID:kQM60gRt0
エレクトボム
285 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:00:40.30 ID:O/LSqR+T0

【コンマ43】

【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15します】

【最終コンマ 58】

【発言力:♡×3→2】

モノクマ「引かん! 媚びん! 顧みん!」

モノクマ「それがうちの、絶望のセオリーばい!」

(クソッ……あとちょっとなのに……!)

-------------------------------------------------

【モノクマ「うちの乗るエグイサルを突き止めるなんて、どがんしたって不可能ばい!」】


ム/エ/ク/レ/ボ/ト


【正しい順番に並び替えて、コンマ値80以上でとどめをさせ!】

※アイテムはここでも使用可能です
【高級ヒーリングタルト】×1
【プロデュース手帳】×1

↓1
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 23:02:13.20 ID:kQM60gRt0
エレクトボム
287 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:04:36.66 ID:O/LSqR+T0

【コンマ20】

【ピトス・エルピスの効果によりコンマの値が+15します】

【最終コンマ 35】

【発言力:♡×2→1】

モノクマ「引かん! 媚びん! 顧みん!」

モノクマ「それがうちの、絶望のセオリーばい!」

(クソッ……あとちょっとなのに……!)

-------------------------------------------------

【モノクマ「うちの乗るエグイサルを突き止めるなんて、どがんしたって不可能ばい!」】


ム/エ/ク/レ/ボ/ト


【正しい順番に並び替えて、コンマ値80以上でとどめをさせ!】

※アイテムはここでも使用可能です
【高級ヒーリングタルト】×1
【プロデュース手帳】×1

↓1
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/01(金) 23:07:35.85 ID:rPn9Ee780
高級ヒーリングタルト
289 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:10:08.39 ID:O/LSqR+T0

【高級ヒーリングタルトを食べた……】

【上品な甘さがほっぺたを蕩けさせる……!】

【発言力が最大まで回復しました】

-------------------------------------------------

【モノクマ「うちの乗るエグイサルを突き止めるなんて、どがんしたって不可能ばい!」】


ム/エ/ク/レ/ボ/ト


【正しい順番に並び替えて、コンマ値80以上でとどめをさせ!】

※アイテムはここでも使用可能です
【プロデュース手帳】×1

↓1
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 23:13:31.68 ID:kQM60gRt0
エレクトボム
291 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:17:38.03 ID:O/LSqR+T0

【コンマ68】

【内に秘めた激情が爆ぜる……! コンマの数値がプラスされました】

【最終コンマ83】

ルカ「これで終わりだ!」

【BREAK!】

ルカ「なるほど……そういうことだったのか……月岡恋鐘、オマエの一連の犯行にはどうやっても埋めようのない粗があったみたいだぞ」

モノクマ「……何を言うとると?」

モノクマ「あさひの口も封じとる、監視カメラや動作ログもな〜んも残っとらん。そいやのに、うちの行動をどうやって辿るつもりばい?」

ルカ「いや、オマエがどれに乗り込んだのかなんて行動を辿って考える必要はなかったんだ」

モノクマ「……ふぇ?」

ルカ「今この瞬間に、ほんの数秒にも満たない私たちの行動で……オマエの居場所はすぐに分かっちまうんだよ」

モノクマ「な、なんばいいよっと!? そ、そがん方法があるわけが……」

292 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:18:33.57 ID:O/LSqR+T0
ルカ「よく聴けオマエら!」


エグイサル赤『……』

エグイサル青『……』

エグイサル緑『……』

エグイサル桃『……』


ルカ「月岡恋鐘がすべての元凶だったと知って動揺する気持ちは分かる……でも、これまでに死んでいった奴に報いたい、この先も生きていたいとそう願うんだったら……」

ルカ「今すぐ手元にある、浅倉透に渡されたお守りを確かめろ! そして、その中身を……今この場で地面に向かって投げつけろ!」

エグイサル白『……流石だね、どうやらエスコートは不要だったようだ』

モノクマ「な、何を急に言い出すばい! 透が丹精込めて作ったお守りを、そがんぞんざいに扱うなんて罰当たりばい!」

ルカ「ハッ、あいにくこちとらカミサマなもんでねバチなんか全く怖かねえんだよ!」

ルカ「それに、自分の行動を棚に上げて非難だなんていい度胸じゃねえか……!」

モノクマ「……っ!」

ルカ「いいか、さっきも言ったが今回の犯人はエグイサルの脱出にエレクトボムを用いた。内部で電波障害、動作不良を引き起こすことで緊急事態だとシステムに誤認させたんだよ」

ルカ「そのエレクトボムは、浅倉透に手渡されたお守りそのものだったんだ。だからこそ、あの時レストランに居合わせていた月岡恋鐘は脱出することができたし、私たちの中に擬態することができた」

ルカ「でもそれは反対に言えば……今この場で脱出できない人間こそが犯人であることの証拠になる。だって犯人は既に一人一個しかないエレクトボムを使ってしまっているんだからな!」



ルカ「さあ、私たちの手で暴き出してやろうぜ! 月岡恋鐘が……狸が、どのエグイサルに潜んでいやがるか!」


293 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:19:46.11 ID:O/LSqR+T0


私は力一杯浅倉透から受け取ったお守り、その中のエレクトボムを地面に叩きつけた。


バァァァァァァン…!!


けたたましい音と共に閃光が飛び出し、思わず私は目を自分の右腕で覆う。
いくら爆ぜたと言っても、そこにあるのは熱でも風でもなく電波の嵐。
身に感じる衝撃はそれ以上のものは何もなく、やがて光と音とが消え失せるのに合わせるように私は腕を下ろしていく。
その腕の動きとは対照的に……いよいよその幕が上がっていった。



「……よう、だいたい予想通りだったな」



久しぶりにソールで床を叩いてみれば、目の前には見覚えのある顔ぶれが並ぶ。

294 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:20:56.02 ID:O/LSqR+T0

透「……どう言えばいいんだろうね。この事件、私は当事者でも、無関係でもないし」

青いエグイサルの前に立つのは【浅倉透】。
眉を顰め、胸元を抑える。
他の連中の顔を見たことで、改めて市川雛菜の死を確認した表情。


智代子「間違った道じゃないって……そう思ってるよ。ルカちゃんのことを、信じてるから」

桃色のエグイサルの前に立つのは【園田智代子】。
自分が今こうして立っていることもまだ飲み込めていない、月岡恋鐘の糾弾はなおさら。


あさひ「ルカさん、すごいっす。わたしの考えた通りっすよ」

白のエグイサルの前に立つのは【芹沢あさひ】。
いつもの元気溌剌な笑顔はどこへやら、その肩を縮こませる。
ただ、その中でも私を見据えるその瞳から光は消えてはいない。

議論の流れからしても、概ね想像通りの組み合わせが並んだ。



モノクマ「うぷぷぷぷ……」



……【概ね】。

295 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:22:09.40 ID:O/LSqR+T0





ルカ「……美琴?」



想像と違っていたのは、あと一人……そこにいるべきその人が、いなかったこと。





296 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:23:01.25 ID:O/LSqR+T0

ルカ「お、おい……美琴……? で、出てこいよ……」

あさひ「……っ! そんな……」

ルカ「何やってんだよ、相変わらず変なとこで抜けてんだから……ほら、エレクトボムをぶつけるだけでいいんだからさ」

ルカ「落ち着いて、な?」

あさひ「……ルカさん」

ルカ「ああ? なんだよ、心配すんなって……すぐに美琴も出てくるからよ」

あさひ「ルカさん!」

ルカ「……!」

あさひ「ルカさん……わたしは、今の今まですっぽ抜けちゃってたっすけど……エレクトボムを使う方法は万能じゃないんっすよ……」

あさひ「ルカさん……それに、気づいててあえてスルーしてたっすよね……?」

ルカ「……」

-------------------------------------------------
【正しい選択肢を選べ!】

・美琴は既にエレクトボムを使っている
・美琴はエレクトボム
・美琴はエレクトボムを受け取っていない

↓1
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/01(金) 23:26:45.90 ID:kQM60gRt0
美琴はエレクトボムを受け取っていない
298 :なんか選択肢ミスってましたね……すみません ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:29:16.60 ID:O/LSqR+T0

ルカ「……」

【解!】

透「……渡せてないよ、美琴さんだけには」

ルカ「……っ!」

あさひ「第4の島から美琴さんはわたしたちとずっと別行動だったっす。レストランで食事も一緒に食べないし、探索も同行してない。当然、透ちゃんがお守りを配ったタイミングでもその時レストランにはいなかったっす」

智代子「唯一、エレクトボムを持ってなかったのが美琴さんなんだね……」

あさひ「そう、だからわたしたちは恋鐘ちゃんが乗っているエグイサルを二択にまで絞ることはできてもそこから先は分からないっす」

透「あさひがエグイサルにみんなを乗せたんだったら、わかんないの。どれがどれか」

あさひ「……わかんないっす、わたしはガスマスクをつけてたし、区別がつかないっすよ」

モノクマ「もうルカ、トラファルガー狸の皮算用とはまさにこのことたい!」

智代子「取らぬ狸の、だよ! それだとシャンブルズだよ!」

ルカ「んなもん言ってる場合かよ……!」

299 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:30:23.30 ID:O/LSqR+T0

(クソ……クソッ、クソッ、クソッ……! なんで、なんでこうなんだよ……!)

(やっと、たどり着いたと思ったのに……やっとその影を掴んだって言うのに……!)

(どうしてあと一歩届かない……!)

モノクマ「ふ〜、流石にひやひやしとったと……うちがどっちに乗っとるか、バレてしまうかと心臓バクバクやったばい」

モノクマ「ルカ、残念やったね」

ルカ「テメェ……おちょくってやがんのか……!」

モノクマ「も〜、そんなわけなか! うちはただ」



モノクマ「ルカがちゃんと美琴の事、救ってあげられとったらうちの負けやったとに」



モノクマ「……って言いたかだけやけん!」

ルカ「……っ!」


全く持って月岡恋鐘の言う通りだった。
こんなに美琴との仲がこじれることもなければ、ちゃんと美琴の手にもエレクトボムは渡っていただろうし、
市川雛菜の右手も無傷で、なんなら被害者になることを防げていたかもしれない。

むしろ、この現状に至った責任は……私にこそあるのではないか。
全身の血の気が一気に引く、膝は腿より上を抱えるには脆弱で、思わず腰が曲がる。
痙攣したような吐息を手のひらにぶつけて、なんとか意識を保つ。
300 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:31:50.36 ID:O/LSqR+T0

モノクマ「さてさて、残ったのは緑のエグイサルと赤のエグイサルの二つ! さあ、どっちにうちがおって、どっちに美琴がおるとやろ〜?」


エグイサル緑『ルカ、こっちだよー! こっちにわたしがいるよー!』

エグイサル赤『凛世ならば……ここに……』


未だにエグイサルの中に残る二人の声は、スピーカーのフィルター越し。
調子や抑揚と言った、その人ならではの要素は極限までそぎ落とされていて、誰かなんてことはここから予測を立てることは不可能だ。


智代子「ど、どうしよう……全然わかんないよ……」

透「あさひがリモコン使って無理矢理に開けたりはできないの?」

あさひ「ダメっす……今みんなでエレクトボムを使って脱出したんっすから、リモコンも影響を受けて使えなくなってるっすよ」

モノクマ「学級裁判の設備はモノクマと同じようにエレクトボムん影響ば受けんように改造をしとるけん、進行にはな〜んも問題なか!」

モノクマ「つまり、当てれんかったらみんなはここで死ぬし、当てられたらうちが死ぬ! このルールはちゃ〜んと守られるとよ!」


明朗快活な喋り口からは、絶対に突き止められないだろうという自負が見てとれた。
圧倒的優勢な立場にいる時ほど人は饒舌になるものだ。
その反対は、上唇すら重たい。
下唇に前歯を食い込ませながら、恨めしそうにエグイサルの機体を仰いだ。


智代子「恋鐘ちゃん、本気で私たちに勝って……私たちを殺そうとしてる」

あさひ「確率は二分の一っす、材料がなくても投票自体はできるし……」

ルカ「ざけんな! ここまで来て、運に託すなんてそんなの……!!」
301 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:32:33.88 ID:O/LSqR+T0





透「……ダメだよ、諦めるとか」




302 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:34:16.72 ID:O/LSqR+T0

ルカ「ああ……?」


波紋がそこかしこから広がりを見せる中、突然にその水面は凪いだ。
もっと大きな波紋が、小さな波紋を丸々飲み込む形で中央から外側へ。
そこに立つのは、誰よりも淡くて、誰よりも濃い……彼女だった。


透「考えなきゃ、だってうちらは生きてるんだしさ。どんな時でも道はどこかにあるはずだって、偉い人だって言ってるし」

透「絶対、あるはずだって。ここからでも、狸を突き止めるための方法が。何か」

モノクマ「透にしては随分とあきらめが悪かね〜、やっぱりコピーになると人格もちょっと変わるとやろか?」


認めたくはないが、私もそういう認識だった。
浅倉透と言うアイドルを、テレビ越しやラジオ越しに観測する限りだとどんな局面でも熱く血潮をたぎらせるようなタイプとは真逆。
どんな時でも飄々としていて、こんな時に奮起の言葉を出すようなものとは思っていなかった。

303 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:35:14.18 ID:O/LSqR+T0

……それは、この島に来るまでの話。
先入観で練り上げられた、粘土で出来たイメージと想像だけのマガイモノ。

私が接した浅倉透は、目の前に立つ浅倉透に相違なかった。
勿論、こいつは浅倉透本人ではない。
あくまで本人の人格をもとに作られたコピー、それでも私はその名を冠するに値するだけの人間だと思う。
人並みに苦心して、人並みに悩んで、人並みに不器用で。
そういう人間くささも併せ持つ、浅倉透が……私の知る浅倉透なのだ。


透「……それならそれでいいよ。私は、ノクチルの浅倉透じゃなくて……ここにいる『浅倉透』だから」

透「そう、胸を張って言えるようにしてくれたのが……雛菜なんだ」


瞳に、私自身の姿が映る。
正面から、頭の隅からつま先まで、楕円の黒丸の中にすっぽりと納まった私は不細工な面をしていた。
掻きむしった髪の枝毛が、口に入りそうな乱れ方をしていて、瞳孔は収まり悪くだらしなく開いている。
その瞳を持つ女とは、大違いだ。
凛として立つ、その背筋には少しのブレも感じない。
一本の芯、市川雛菜と過ごした時間が、そこには通っていた。

304 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:37:30.12 ID:O/LSqR+T0

透「雛菜、本物が死んでるって聞いてからも私に気を使わせないように、下手に傷つけないように必死に気を回してくれてた」

透「私のことを、『先輩』じゃなくて……『ちゃん』にしたのだって。私を、私という一人の存在と認めてくれたから」

透「私は雛菜のために、負けられない。雛菜の死は無駄だったなんて……そんなの、嫌じゃん」


綴られるのは、この島で過ごしてきた蓄積。
特異な立場の彼女の、並みならぬ思いと記憶の奔流。
私たちは息継ぎをする間もなく、その激流に呑まれてしまう。


透「……これまでずっと、他のみんなに自分のことすら黙ってて。都合が良い話だとは思うけどさ」

透「本当に、反省してるんだ。にちかちゃんのこと、それに美琴さんのこと。シーズのこと」

エグイサル緑『……』

エグイサル赤『……』
305 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:38:18.65 ID:O/LSqR+T0


透「自分かわいさで、にちかちゃんの言葉にちゃんと答えられなくて。そのせいで、美琴さんをずっと傷つけた」

透「苦しめ続けたのは、私だよ」

透「みんなを信用してなかったわけじゃ、なくて」

透「みんなを信じてたからこそ……言えなかった、言いたくなかった」

透「私が全部偽物で、この島の秘密に関わってるなんて」

透「みんなが浅倉透に抱いてくれた気持ちを、全部台無しにするみたいで」

(それって……)


浅倉透が口にしているのは、七草にちかがおしおきの間際にみせた感情の発露と同じ。
美琴にぶつけた、どっちつかずな美しいまでに不格好なアンビバレンス。
最後まで答えを選び取らなかった彼女は、むしろ図々しいまでに一本気ですらあった。


透「……死にたくない、以上に裏切りたくない」



透「だから、高望みするよ。勝つって、黒幕ぶっ倒すって」


306 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:39:35.44 ID:O/LSqR+T0

本物の浅倉透だったなら、こんな風な演説を口にするだろうか。
エゴイズムが先に立つ、我欲剥き出しの演説なんて。

……もう、その答えはどうでもよかった。
私にもスタンスは既に固まっていた。
私たちにはこの島が世界のすべて、ここで生きている人間が住人のすべて。
外の世界だとか、立場だとかはもはやどうでもいい。
何よりも優先されるべきは、自分自身の欲求。
浅倉透のエゴイズムに共振した私のエゴイズムが、今再び顔を覗かせた。


ルカ「……何こっちが諦めてるって決めつけてんだ」

透「ふふ、やるじゃん」

ルカ「二択まで絞り込んでやったんだぞ? だったら、ここから先を進めるのはさっきより簡単だ。狸を見つけ出すんじゃなくて、美琴を見つけ出すのでも消去法でいける!」


ルカ「オマエら、知恵を貸せ! あと一歩、あと一歩で黒幕をぶん殴れるぞ!」


あさひ「……ルカさん」

あさひ「そうっすね、冬優子ちゃんならこんな時はすごい顔になって食らいつくっす。愛依ちゃんも、そんな冬優子ちゃんに信じてついていく」

あさひ「わたしも、負けたくない」

智代子「果穂と夏葉ちゃんに託されたんだもん」

智代子「私だって譲る気は全くないよ! 最後の最後まで……推して参ります!」

307 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:40:24.96 ID:O/LSqR+T0

モノクマ「も〜! 諦めが悪かやね!」

モノクマ「でも、それでこそ283プロのアイドルばい! そのしつこさが、次世代のアイドルの輝きを産むとよ!」


私たちは再び立ち上がる。
受け継いだもの、築いたもの、導いたものを守り抜くために。
亡くしたもの、奪われたもの、積み重ねたものに報いるために。

横を見れば、壮観なツラが並ぶ。
学級裁判は私たちが票を入れるその瞬間まで終わらない。
どれだけ苦戦しようが、どれだけ時間がかかろうが、その結論が出るまでは諦めてやるものか。
もう認めるしかないかもな、その不恰好で暑苦しい生き方を。


智代子「でもどうしようか、情報は正直出尽くしてるような気もするし……」

透「エレクトボムもこれ以上はもうないよ」

あさひ「わたしも、知っていることは全部喋ったっす」

ルカ「クソ……何か、何か方法はないか……?!」
308 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:41:34.93 ID:O/LSqR+T0





『ほ、方法なら……ないわけじゃ、ないですよ……!』

ルカ「……え?」





309 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:43:10.04 ID:O/LSqR+T0

裁判場内に、声が響いた。
困窮する私たちにとって最高に都合のいい文言は福音のようで。
実際称するように、その福音は私たちの頭上から聞こえてきた。


エグイサル赤『なんつーか、方法自体は最初っからアタシたちの前にあったんだよ』

エグイサル緑『きゅ、急に何? 何を勝手な______』

エグイサル赤『でも、その方法は……ちょっとだけ、勇気が必要で……』

エグイサル赤『覚悟もめっちゃ必要だから、なかなか踏み切れなかったんだよね』


でも、それは福音なんかじゃなかった。
キンキンと耳から全身に突き抜ける、終末を告げる喇叭。
その音色は醜悪な不協和音で、そして、聴き慣れていた。


エグイサル赤『でも、今の透ちゃんの言葉を聞いて……心臓がトクンって……』

ルカ「お、おい……オマエ、何を言い出してんだよ……!!」

エグイサル赤『どうやら、私も腹を括ることができたようなんだ』

エグイサル赤『みなさまに……お別れを告げる覚悟……』

エグイサル赤『そして、みんなに全部を託す覚悟ができたんだよ!』

ルカ「おい、やめろ!! それ以上喋んじゃねーよ!!」

エグイサル赤『カーテンコールは必要ありません。これは一瞬で終わる、単純な幕引き』

ルカ「口を閉じろ、やめろ、やめてくれよ!!」



エグイサル赤『私が……この、赤いエグイサルに乗っているのが……っ!』



310 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:44:04.07 ID:O/LSqR+T0





『緋田美琴だから』



ルカ「美琴______________!!」





311 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:45:56.30 ID:O/LSqR+T0





_____音が戻ってきたのは、それから数十秒の後の事。





312 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:47:09.28 ID:O/LSqR+T0

目も開けられない程の爆風に運ばれて、額や頬には細々した塵が何度もぶつかった。
有していた熱がチリチリと肌を焼き、思わず袖で顔を拭った。
次に袖を下ろしたとき、世界は様変わりしていた。
木っ端微塵というわけではなく、それなりの頑丈な作りで大きさもある。
内側からの衝撃を受けたとしても、その面影はそれなりに残る。
でも、それ故に痛々しさと虚しさは克明すぎるまでに型取られてしまう。

呆然と立ち尽くす私は、山火事が起きた後を見ている時のような、脱力感と煙たさを感じていた。


モノクマ「な、なんてことをしてくれたばい……?! こげんこつしてしもうたら、ルールが根底から崩れ去ってしまうとよ!」

あさひ「違うっすよ、美琴さんはルールに則った上で恋鐘ちゃんを倒そうとしたっす」

あさひ「恋鐘ちゃんの提示した、自分の名前を言えば即爆死のルールを、逆に利用した。それって何かに違反してるっすか?」

モノクマ「ぐぬぬぬ……」

智代子「だとしても……そんな……自分の命と引き換えだなんて……!!」

透「……最後に、聞いてくれたってことなのかな。私の言葉」
313 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:48:10.78 ID:O/LSqR+T0

あまりに突然の出来事に、感情の行き場は分からなかった。
きっと、もっと悲嘆すべきなのだろうとは思う。

でも、頭の中に浮かんだ無数の疑問符がその感情をぼやけさせる。
真っ白な視界に真っ白な頭の中、空洞を覗き込んだような、頭から足先まで落下していくような感覚。
実際、私は膝から崩れ落ちていて、コンクリートの床の下、マントルより奥深くに強く引き寄せられていた。
なんとかその場に留まろうとして、証言台の手すりを下から上に掴む。
木を加工した梁は、すべすべとした感触がした。
そこに熱など、ない。


透「……ありがとうございます。雛菜の仇を……みんなの仇をこれでとれる」

智代子「……美琴さん、ごめんなさい。後でちゃんとしっかり、あなたの死に向き合います。でも今は、美琴さんが繋いでくれたこの命の灯火を絶やさないために……戦います」

あさひ「……これがいい方法だったのか、他にも方法があったのか、わたしにはわからないっす。でも、進むしかないっすから。今は、それだけっす」

モノクマ「こがん……こがん終わり方でうちが負けるなんて……」
314 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:48:56.90 ID:O/LSqR+T0





「最高に絶望的ば〜〜〜〜〜い!!!」





315 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:50:59.82 ID:O/LSqR+T0

それは嬌声に近しかった。
歓喜というのには複雑なものを内包しすぎていて、それでいて奥底にはドロドロとした血生臭さも混じる。
齢20程度で経験してきたものでは全てを推し量り兼ねる、そんな文脈の上に乗る声だった。
その声を発した人物は体操選手のように軽やかに降り立って、興奮で鼻息を荒げていた。
私たちの顔を一通り舐め回すようにすると、頰に手を当て今度は恍惚の表情。
よほど気に入ったのか知らないが、体をくねらせて飛び跳ねる。
その姿は私たちの見慣れたものとは、かけ離れて見えた。


智代子「緑のエグイサル……そこに恋鐘ちゃんはいたんだね」

恋鐘「そ〜! 二択で持ち堪えたときは凌げるかと思うとったとに、美琴の覚悟には腰ば抜かしてしまったと!」

恋鐘「まあ腰を抜かしとるのはうちだけじゃなかけど」

あさひ「……」

あさひ「ルカさん、いつまでもそうしてたってしょうがないっすよ。ちゃんと終わらせないと、美琴さんの死だって無駄になるっすよ」

(……あ?)

(……あいつ今、なんつった? 美琴が……)

(……………………………)

(いや、そんなわけねーって聞き間違いだよ、聞き間違い)

(美琴が死ぬわけ、死ぬわけ……死ぬ、わけ……)

(美琴が??? 死んだ???????????)


(美琴美琴美琴美琴美琴美琴????????? 死死死死死死死死死死死?????????????????)


316 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:52:10.39 ID:O/LSqR+T0

智代子「……ダメだよ、今のルカちゃんに言葉は届かない」

あさひ「たとえそうでもわたしたちの勝ちは変わらないっすよ」

あさひ「わたし、透ちゃん、智代子ちゃんの3人で過半数っす。これで恋鐘ちゃんに投票すれば全部終わりっす」

恋鐘「……」


恋鐘「うん〜〜〜!! そうして〜〜〜!!」


智代子「……え?」

智代子「な、何を言ってるの……? この投票が決まれば、あなたは死んじゃうんだよ……? どうして、そんなに嬉しそうなの……?」

恋鐘「智代子こそ何を言うとるばい! うちという強大な壁を、味方の死を踏み台にして乗り越える! こげん美しかアイドルがどこにおるばい!」

恋鐘「うちは、うちの目指した理想のアイドルに大きく近づくことができたけんね!」

あさひ「話を聞くだけ無駄っすよ。だって恋鐘ちゃんはこのコロシアイを始めた人間っす。そんな相手に、言葉が通じるわけないっす」

恋鐘「もう、あんまりな言い方やね」

恋鐘「でも、あさひの言う通りばい。もう勝敗は決したけんね、ちゃんと終わらせて次のステップに進まんといけん!」

透「次のステップ? もう、これで終わりじゃん」


恋鐘「さ〜〜〜〜〜! そうと決まったら早速投票タイムば〜〜〜〜〜い!」



恋鐘「みんなが議論の結果導き出したクロは誰なのか! そしてその答えは正解なのか不正解なのか〜〜〜〜〜!」




恋鐘「さあ、どがんね〜〜〜?」



317 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:53:10.91 ID:O/LSqR+T0
-------------------------------------------------


    【VOTE】
〔恋鐘〕〔恋鐘〕〔恋鐘〕

 CONGRATULATIONS!!!!

    パッパラー!!!


-------------------------------------------------
318 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:53:57.16 ID:O/LSqR+T0





【学級裁判 閉廷!】





319 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/01(金) 23:58:24.56 ID:O/LSqR+T0

というわけで5章学級裁判、これにて完結です。
被害者、クロだけでなく裁判中にも仲間との別れが起きてしまいました。
ルカのメンタルの明日はどっちだ。

※終わった後に気づいたのですが完全にスキル【アンシーン・ダブルキャスト】を更新中忘れていましたね、すみません。

次回更新は7/3(日)21:00〜を予定しています。
安価はありませんが、最後までご覧いただけますと幸いです。
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/02(土) 00:03:42.48 ID:hPaB7siZ0
>>1乙
カメラの映像で美琴が写ってた時は生き残るって確信してたのに
いきなりアッパー食らったようなこの展開・・・まさに絶望的だ・・・
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/02(土) 00:04:46.17 ID:miWmVQnt0
なんですかこの展開は……(語彙力不足)
乙乙です
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/02(土) 00:08:03.99 ID:KeYNDTJY0
>>1
勝ちはしたけど大事なものを失ったルカ……他のみんなみたいに立ち上がって欲しいな。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/02(土) 03:03:01.46 ID:s6c4W5uI0
最近リアタイできてないから読み返してたらなんかすごいことになってる……
どういう結末にたどり着くんだろう……
ところで学級裁判終わってるから今更な疑問なんですけど、集中力って上限12じゃなくて7じゃないんですか?
習得してるスキル効果の勘違いとかだったら申し訳ないんですけど、集中力っておみくじの+2しかされてないような気がします
もしかして他に集中力に関係してるスキルのジャンプスタッグが集中効果強化だけじゃなくて上限+もついてるとかなんですか?
それとも特定スキルの組み合わせで隠し効果が発揮されるとかそういう感じなんですか?
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/02(土) 10:52:58.76 ID:s6c4W5uI0
ふと思った疑問なんですけど、前作組だと甘奈甜花凛世あたりの一人称が自分の名前呼びの子って、
仮に今回の裁判に参加してたら一人称発言した瞬間に爆発するんですか?
流石にAIがいい感じに解釈してくれてこれは一人称だからセーフ!って判定になりますかね?
325 : ◆vqFdMa6h2. [sage saga]:2022/07/02(土) 12:11:59.46 ID:0AWqA7iq0

>>323
集中力に関しては完全にガバです
今初めて気づきました、すみません!
スキル管理全然できてなかった……

>>324
ご都合解釈AIくんなので流石に一人称では爆発しないですね……
一人称もダメだと殺意が高すぎる……
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/02(土) 19:51:46.81 ID:AqPxR8rD0
1でも生還して2でもここまで生き残ってるちょこ先輩強すぎるな…
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/03(日) 04:00:27.55 ID:2PG/VjAfO
首ちょんぱって残酷なようでいて一番苦しまずにいける合理的な処刑方法って言うから、市川さんはせめて苦しまずにいけたと思いたいんだけどネ。
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/03(日) 14:44:12.04 ID:gzlLhrtM0
意味なくスレ上げるガイジを首ちょんぱしたいなぁ
329 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:00:48.68 ID:kq3pidQz0





扉を開ける前から、部屋の外に床と靴が擦れる音が響いていた。





330 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:01:55.57 ID:kq3pidQz0

ああ、相変わらずだな。
こいつは私のことを待ってはくれないんだなとため息をつくが、その変わらなさにはそれなりの愛着もある。
むしろそれに期待すらして、私はドアノブを引く。

ラッチが穴ぼこから外れて音を立てるも、彼女はこちらに目もくれない。
多分本気で気づいていない。
自分自身を磨くと決めた時間には、ラジカセの音楽と靴の音以外は全てノイズになる。
彼女の耳には相当優秀なノイズキャンセラーがついているらしい。


「……ったく」


私はそれをいいことに、更衣室にも行かずにその場で着替えてみせる。
最悪見られても別に構わないし、自分自身その手間を厭う気持ちがあった。
そそくさにレッスン着に着替えると、私は彼女のそばに立った。


「おい、美琴。相方が来たぞ」
「……」


……返事はない。
息を荒げながら、鏡の中の自分にご執心。
同じ一枚に写り込んでいるはずなのに、私はよっぽど背景と同化しているらしい。


「はぁ……しょうがねえ、一曲終わるまで待つか」


こうなったからにはいくら言葉を投げかけても無駄。
私はその場に座り込んで、1分2分を待つことにした。

331 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:03:30.08 ID:kq3pidQz0

「……あれ、ルカ。来てたんだ。お疲れ様」
「お疲れ様……じゃねーよ、ちょっと前からいたわ」
「ごめんね、自主練に夢中だったから」


表情がそこまで豊かでない美琴の釈明は、謝意をそこまで感じない。
もうお互いにとって、『よくあること』の認知になっているが故に私もそこまで気にしているわけではないが。
罰悪そうに後頭部を掻く私の横で、汗で張り付いたシャツを剥がす美琴。


「それにしても、ルカ。どうして」
「どうしてもこうしてもねーって。美琴は待っちゃくれないから、私がこうやって追いかけるしかないんだろ?」
「……えっと」
「いい、いい。私が美琴の横に立ちたいってことだから。研究生時代からずっと一緒にやってんだ、今から取り残されるなんてダセーってだけの話だよ」


美琴は同期の中でもずば抜けていた。
歌、ダンス、ビジュアル。そのいずれも私よりも高水準だし、そこらのアイドル崩れと圧倒的に違うのがプロ意識。
一つ大きな仕事を終えたところで息抜きなんか求めない。
332 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:04:48.28 ID:kq3pidQz0

次、さらにその次。
次はもっと高く、もっと広い場所へ。
どこまでも緋田美琴という人間は満足することがなかった。
私は気がついた時には、美琴のその欲望に中てられていた。

美琴が最後の最後に目にする景色はどんなものなのか、同じ場所から見たいと思った。


「そう……それじゃあ、一言いいかな?」
「あ?」
「一曲目のフリ、いつも左足軸のターンになるとブレてる。体幹を意識してほしいな、右手がそれに振り回されてるから」


美琴はそれに悪びれもしない、改めようともしない。
パフォーマンスという括りになった途端に人が変わったように饒舌になる。
でも、美琴はそれでいい。
そうじゃなきゃ美琴じゃない。
私たちのことなんか、ただの舞台装置だと思って、自分のパフォーマンスを磨き上げるための道具として消費してくれればいい。


「お、おう……! わかった、意識する……!」
「うん、ありがとう」


それで少しばかり、笑顔を見せてくれれば私は満足だ。

333 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:06:39.40 ID:kq3pidQz0

「よし、それじゃあ早速合わせようか。そのために来てくれたんだよね?」
「ん、もちろん」


ラジカセにスイッチが入る。
私の中にも、電気を通わせる。
緋田美琴の隣に立つ人間になるのには、ただの斑鳩ルカじゃいられない。
私もずば抜けて、イカれた存在にならないと。


「1、2、3、4……」
「1、2、3、4……」


美琴の後を追う、それじゃダメ。
美琴の先を行かないと、美琴はすぐに私を置いて行ってしまう。
彼女には、最高のパフォーマンスという概念しか頭にないのだから。
ベタ踏みしたアクセルのほかに、ブレーキなど積まれていない。


「次、ターン」
「左、軸……!!」
「……そう、その感じ」


先ほど指摘されたばかりの傾向をなんとか修正。
美琴にも及第点をいただけた。
でも、胸を撫で下ろすような時間などない。
そうこうしている間に、美琴の思考は次へと移り変わる。
334 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:07:38.13 ID:kq3pidQz0


「……違う、1テンポ遅い」
「ん……!」


私の安堵に透けて出たのか、露骨にズレが生じた。
鏡に映る姿が、途端に美琴の影のようにぼやける。


「悪い、追いつく……!」
「……」


美琴は言葉を返さなかった。


「1、2、3、4……」
「1、2、3、4……」


言葉を交わすこともなく、ラジカセとシューズの音だけが響く空間。
時計の針の音は聞こえない。
時間の経過は、汗と疲労にかき消される。
幸か不幸か、私たちには時間がある。
空間を同じくするこの時間は、まだ堪能できる。


キュキュ……バターン!


脚がもつれでもしない限り。
335 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:08:39.47 ID:kq3pidQz0

「痛……ッ!」
「……転んじゃったね」


私が失敗した時、美琴はため息なんてつかない。
落胆などはなからしていないから。


「悪い……」
「今のところ、少し詰めすぎてるのかな。もう少し余裕を持ってペース取ろうか」


そんな時間があるのなら、今できるうちでも最良を。


「い、いや! 悪い、ちょっとミスっただけだから! すぐに出来るようになるって!」
「……その保証はないでしょ?」
「……ッ!」
「理想を追うよりも必要なこと、あるんじゃないかな」


美琴は選択肢をその場ですぐに切り替えられる虚しい果断さすら持っていた。


「……」
「……ルカ?」


二人ともでできない部分があれば、見苦しいから切り捨てる。
思うように伸び切らなかったから、ほかの芽ごと摘みとる。
私には、その剪定された鉢植えが何よりも惨くみえるのだ。


「もう一度、もう一度だけやらせてくれ。次はできる、ちゃんとやるから」


だから、できる限り枝切り鋏は持たせないようにした。
美琴の隣に立つ人間として、完璧であろうとした。


「……そう、わかった」

336 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:09:32.64 ID:kq3pidQz0





____私の10年間は、それが全てだ。





337 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:10:18.20 ID:kq3pidQz0
------------------------------------------------



CHAPTER 05

Killer×Miss-aiōn

裁判終了



------------------------------------------------
338 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:11:54.13 ID:kq3pidQz0

恋鐘「大正解〜〜〜! 雛菜の首ば刎ねて命奪ったクロはうち!」

恋鐘「そいでこのコロシアイを仕掛けた元凶もうち!」

恋鐘「月岡恋鐘ば〜〜〜〜〜い!」


月岡恋鐘はなおも明朗快活に宣言した。
口のする言葉の残虐さとは対照的なまでに朗らかな表情。
声も下手に取り繕ったような上擦り声ではなく、子供が公園で遊ぶ時のような無邪気なもの。
本当に、何も悪いとも思っていない。
心中に一点の迷いもないことがそれだけで見て取れた。


あさひ「恋鐘ちゃん、だったんっすね。全部、全部……」

智代子「なんでこんなこと……って聞いたところで、きっと私たちには理解もできないことしか返ってこないよね」

恋鐘「智代子は賢かね〜、うちも同意見ばい! 今生き残っとるめちゃくちゃ輝いとるアイドルのみんなは、心の底からコロシアイを憎み、恨み、嫌っとる! うちん心に共感ばしとったらそれは逆に目論みから外れてしまうことになるけんね!」
339 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:12:41.58 ID:kq3pidQz0


透「……ねえ、さっきも言ってたけど。それ、何」

透「輝き、とか。アイドル、とか。人の命と関係ないよね」


浅倉透は侮蔑にも近い視線を向けていた。
眉を顰め、口元を固く結んでいる。
かつての仲間に向けるには、あまりにも露骨な敵意。
市川雛菜を殺されたという事実が彼女に顔をしかめさせるには十分な理由すぎた。
しかし、一方の月岡恋鐘はそれを意に解するような素振りすらなく、身勝手な物言いを続ける。


恋鐘「人の命はあくまで踏み台やけんね。犠牲のもとで輝くのなら、うちはそれを厭わんだけ」

恋鐘「実際、今のみんなは輝いとるよ! うちが【あん時見たアイドル】にまた一歩、大きく近づいたばい!」

あさひ「あの時見た、アイドル……っすか?」

智代子「だ、誰のことを言ってるの……?」

恋鐘「んふふ〜〜〜、そこまで急かされたらうちがコロシアイば始めた動機を教えた方がよさそうやね!」


待ってましたと言わんばかりに指をパチンと鳴らす。


恋鐘「よかよか! 耳の穴ばかっぽじってよく聞かんね!」

340 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:14:37.23 ID:kq3pidQz0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆

実家の小料理屋の壁棚には、古ぼけたテレビが飾ってあった。

決まったチャンネルの番組をシャッターを上げてから下ろすまで延々と流し続ける置物。
土日の昼間には競馬中継を前に中年男性がたむろして、平日の夜は野球中継に酒を飲み交わす。
別にそれが嫌なわけじゃなかったけど、時間の流れが止まったような空間には息苦しさを感じていた。
高校も卒業して、この家を継いで、この停滞に飲まれていくと思うと、声を上げずにはいられないのだ。


どこかの会社の上司と部下の客が出て行った後だったと思う。

偉そうにふんぞりかえるくせに、皿の上には箸で爪弾きにしたカシューナッツ。
これを片付けるのかと思うと辟易する。


___ため息をつきながら皿を持ち上げた、その時。


341 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:15:45.88 ID:kq3pidQz0

ちょうど、テレビで懐かしのアイドル特集をやっていた。

今の自分とそう年齢も変わらないだろう少女たちが、華々しいステージでたくさんの人に囲まれて、手放しの賞賛をシャワーのように浴びている。
彼女が歌えば誰しもが耳を傾け、彼女が踊れば誰しもが拍手する。
アイドルでいること、は人間にとって一番の肯定を得られるものだろうと思った。

でも、別に彼女たちはただくじ運がよかったという話ではない。

専門的なことは分からない、でも彼女たちの笑顔や歌声に心が惹きつけられるのは確かにアイドルとしての実力なんだろう。
歌詞に託されるメッセージを、胸へと浸透させる歌い方。
私たちに夢と希望を与える仕事というのはあながち綺麗事でもない。
少なくとも、私が今この食べ残しを片付けるのに必要な分のエネルギーを得るには十分なだけのものがあった。

それからは、その時間が一週間の楽しみになった。
チャンネルを触ることは許されないが、それは逆にこの番組を視聴するのに制限もかからないということ。
決まった時間になると積極的にホールに出るようになり、合間合間でアイドルの観察を始めた。
時には歌を口ずさみ、時には軽やかなステップを真似て。
少しずつ生活の中のアイドルが占める割合も増えていった。
342 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:16:59.94 ID:kq3pidQz0



「目障りなんだよ」



でも、止まった秒針がそれを許さなかった。
酒がよほど回っていたのか、凝り固まった男は突然に声を荒げた。
鼻歌混じりに食器を片付けていたところに、突然の怒号。
思わず手を滑らせて皿を割ってしまった。


「もうガキじゃねえんだし、夢なんか見てんじゃねーよ」


男は、軽々しく夢を否定した。
私の抱いていたこれは、夢と言うほど大層なものではなかった。
埃被ったこの街から出て行きたい、という漠然とした願望にすぎない。

でも、それすらも許されなかったのである。
男はつらつらと罵声を並べた。
鼻歌は蠅の羽音と大差ない、見様見真似のステップは老人の健康運動。油と埃に塗れてビジュアルなど論じるまでもない。
人の悪意というものを真正面から浴びたのはこれが初めてだった。
343 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:19:24.71 ID:kq3pidQz0

「ははは、お客さんキツイですよ。うちの娘なんだし多めに見てやって」

父は、罵倒に正面から立ち向かおうとはしなかった。
夢をビリビリに引き裂こうとする言葉を否定すらせずに、苦笑いして誤魔化す。
父親とはそういうものだろうか。
ステレオタイプの押し付けになるのだろうけど、矢面に立って娘のことを守るのが父親なのではないだろうか。
途端に目の前の父の姿が、うっすらとぼやけて見えてくる。





「まあ今だけですよ、今に腹括ってここを継ぐんで」





何よりも酷かったのは父のその言葉。
私の意思の一切を問わず、無自覚に無遠慮に、私の体を硬らせた。
もうここから逃すことはないぞ、とばかりにその場に縛り付ける言葉が私の中で無限に反響する。
父と客との会話はもはや耳には入ってこない。
先の閉ざされた真っ暗な道だけが、私の前には横たわっていた。
344 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:20:25.45 ID:kq3pidQz0

その瞬間に悟ったのだ。


この場所に居続けてはならない。


私の肩には既に埃が積もり始めているし、今にも足の甲には釘が打たれようとしている。
ここから逃げ出すなら、もう今しかない。

私は考えるよりも先に駆け出していた。
乱雑に荷物をカバンに押し込んで、とにかく遠くへ逃げた。
テレビの中の世界を夢見て、東の方へ。
あの時に目を奪われた眩さに、少しでも近づきたくて。
その輝きに人生そのものを救われたくて。
夜灯に集う羽虫のように、光に引き寄せられていた。

でも、どこまでも羽虫と同じだった。
月光に吸い寄せられる羽虫と同じ、私が夢見ていた光は遥か遠く。
あまりの眩さに隅々まで届いていただけのこと、実像などどこにもありはしない。

345 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:21:39.72 ID:kq3pidQz0

両手で数えきれないだけのオーディションを受けた。
しかし、その悉くで向けられたのは好奇の視線。
わざわざ長崎から出てきたというのに、アイドルとしての技量で秀でたものは見出されず。
急に飛び出してきた人間で、後ろ盾も何もない。


「何しに来たの?」


苦笑混じりにそう言われたのも一度や二度ではない。
これもまだマシな方。
人格を否定するような言葉も何度もぶつけられた。
それは面接官だけでなく、隣に座る受験者にも。


「田舎臭さが染み付いてる」
「アイドルになろうなんて何様?」
「あなたは“ない”方の人間だということを自覚すべき」


私が夢見ていた桃源郷なんて、どこにもない。
テレビの中で歌い踊っていた彼女たちは、どす黒い地獄の上に立っている。
他の人間の不幸を踏み倒して、死屍累々の上に立つ。
それでようやっと輝きを得ることができるのだ。
346 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:22:49.07 ID:kq3pidQz0

そしてその認識は、芸能界に入ってからも変わることなく。
むしろより一層強まったとも言える。

身内のスキャンダルをバラして椅子を勝ち取るディレクター、
出演のために自分の恋人を抱かせることも厭わない芸人、
オーディションの最中に下剤を仕込むアイドル……

どこまでも救いなんてない。

それでも、私はその憧れを捨てきれなかった。

地の底のような田舎の料理屋で、人生を削りながら汚れていくばかりだった私の心をいとめたあのパフォーマンスは本物だったから。
その裏に何があろうとも、少なくとも私の見たパフォーマンスはそれが全てだったから。
夢と勇気と希望を彼女が与えてくれたのは間違いない。
347 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:24:13.61 ID:kq3pidQz0


地獄を踏み倒した上で与えてくれた僅かな力________



もし、もっともっと凄惨で、劣悪で、澱み切って、目も当てられないような、全てをもって否定したくなるような_____





そんな地獄からアイドルが生まれたら、そこに宿るものは私があの日見たものとは比べ物にならないだろう。






348 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:26:00.46 ID:kq3pidQz0
◆◇◆◇◆◇◆◇

月岡恋鐘の口から語られた、事の経緯と彼女の心境を前に私たちは非難の手を緩めてしまっていた。
今この場にいる人間の誰よりも、月岡恋鐘は人の営みの歪さを、誰しもが有する悪意を、夢の舞台の澱んだ地盤を知っていたからだ。

私だって苦労をしてこなかったわけじゃない。
義務教育もそこそこに早いうちから研究生として人生の多くの時間をアイドル活動に割いてきた。
大人たちのやりとりだって、他の子供に比べると早くに目にすることになる。
でも、それは芸能界での話であり、外の世界の悪意となると下手すれば普通に育った連中よりも耐性はないのかもしれない。
私のようなアイドルは、温室育ちだ。
美しく咲くことだけを求められるがゆえに、水も温度も陽の光も、管理された上で与えられる。

ただ、月岡恋鐘は元々そうではなかった。
私たちが豊かな土で育ったのなら、彼女はコンクリートの上。
舗装という名目で頭から押さえつけられる、抑圧の環境下でなんとか芽吹かせた。
不可能を可能にした彼女の持つ芯の強さは、確かなものだったろう。

でも、彼女は真っ直ぐに芽を出したわけではなかったのだ。

349 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:27:02.28 ID:kq3pidQz0

恋鐘「そがん時ばい、うちが『あの人』に話を聞いたんは」

あさひ「あの人……その人が、このコロシアイを企てたっすか?」

智代子「そ、それって誰のことなの……!?」

恋鐘「誰も何も、みんなよう知っとる人ばい! それに、そのヒントどころか答えまでうちは渡したはずやけど……」

透「……そうだね」

透「隠してたのに、勝手にバラしちゃうんだもん。やってくれるよね」

あさひ「それって、前回のコロシアイのことっすか?」

智代子「……!!」

恋鐘「さすがあさひ! よう分かったね! この島におらん、他のみんなが参加したコロシアイ、その首謀者とうちは仲間……同じ組織の人間なんよ!」



あさひ「天井社長……っすか」



恋鐘「そう! うちも社長も、チームダンガンロンパのメンバーやけんね!」


月岡恋鐘がポケットから自信満々に取り出したピンバッジには赤でレタリングされたDとRの2文字。
左右の白黒ツートンはモノクマを彷彿とさせるデザインで悪趣味だ。
350 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:28:05.67 ID:kq3pidQz0

智代子「チーム……ダンガンロンパ?」

あさひ「ダンガン、ロンパ……」

透「……ちょっと待ってそれって」


聞いたこともないような組織が飛び出してきて、反芻するしかない私たち。
説明を求めて手を伸ばしたが、月岡恋鐘はなぜかそこには極めて冷淡だった。


恋鐘「まあ、そん辺りのややこしか話はうちが死んだ後の真相究明編でやればよかとやけん、割愛するばい」

智代子「え、ええっ?! そんな勝手な……?!」

恋鐘「チームダンガンロンパはあくまで裏方、メインはコロシアイに参加しとるみんなやけんね。そこに割くべき尺も文量もなかよ」

あさひ「……もしかして、このコロシアイの黒幕って一人じゃないんっすか?」


月岡恋鐘の物言いはあさひの解釈を可能にした。
目の前の狸はチームダンガンロンパという母体に属する一構成員、こいつが死んでもこのコロシアイは続く。
だからこそこれほどまでに饒舌に、堂々と彼女はしゃべっているのか。
そう勘繰るのも無理はない。

351 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:29:01.60 ID:kq3pidQz0

恋鐘「う〜ん……そう言われると解答には困ってしまうとね……うちがここで死ぬことでこのコロシアイ自体には決着がつくのは間違いなかやけん」

あさひ「よくわかんないっす……チームダンガンロンパのことも教えてもらってないし……」

恋鐘「ま、うちが死んだら全部わかるけん、ちょっとの辛抱たい!」

智代子「そ、そんな明るく言い放つことじゃないよ……」

恋鐘「それよりうちは、みんなと話がしたか!」


極めて無邪気に、笑顔を振りまいた。
ほんの少し前屈みになって、小ぶりな二人にもその目線を合わせる。
母が子供の話を聞くように、優しく、そして無遠慮に彼女は解答を求めた。


恋鐘「こん島での暮らし……色んなことがあったばい。たくさんのもんを得て、たくさんのもんを失って、今みんなはどんな気持ちか聞かせて欲しか〜!」


それは、先の独白で語られた彼女自身の理想。
このコロシアイの中で、私たちは何を感じて、どう変化をしたのか。
それを死の間際になって、見極めようとしている。
352 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:30:00.96 ID:kq3pidQz0

恋鐘「あさひ! 愛依はあさひの大好きな果穂に殺されて、冬優子は一人突っ走って人の命を奪ってしまったけど、どがんね?」

あさひ「……」


恋鐘「智代子! 果穂も夏葉も、智代子に色んなもんを託して逝ってまったけど、なんか変わったことはあったばい? 変わらないものがあるから、変わっていける……そうやろ?」

智代子「……その言葉を、こんな形で言わないでよ……」


恋鐘「透……のパチモン! 自分のせいでみんなが色んなもんを失って、いよいよ信じてくれた雛菜もうちが殺した! どがん気持ちになっとーと?」

透「……樋口じゃないけどさ、言いたくなるよ。最悪って」


一人一人、触れてほしくないところを的確に刺激する。
傷跡を人差し指でほじくったような物言いに、苦々しい表情を浮かべざるを得ない面々。

それをみて、月岡恋鐘はまたご満悦。
証言台をフラフラと歩き回って顔を覗き込んだり、鼻歌を口ずさんだり。
決着がついたことで彼女のタガは完全に外れてしまったようだ。

353 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:31:11.80 ID:kq3pidQz0

恋鐘「……で、いつまでそうやってスライムやっとるつもりばい? ルカ、いい加減起きんね!」

(…………)


月岡恋鐘は私の背後で立ち止まった。
他の連中の投げたものとは違う、叱咤するような声量。
それでも私は反応を返さない。


恋鐘「美琴はどげん思いで自分の命を懸けてまで、ルカたちを守ったと思っとるん?! そんな風に、へしゃげてほしいって美琴が思いよっと?!」

(………………)


恋鐘「美琴もずっと苦しんどった……にちかの言葉に縋り続ける自分と、一緒に暮らしとる仲間と……そのぶつかり合いがしんどかったはずばい」

(……………………)


恋鐘「それでも、ルカたちの姿に胸を打たれて、最後にみんなにその命を託したばい! そげなことじゃいかんよルカ!」


異常な光景だった。
自分の相方の命を奪ったばかりの仇に、なぜか逆に励まされている。
自分の罪を棚に上げたその言葉は悉くが癪に触る。
354 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:32:30.16 ID:kq3pidQz0

しかし、苛立ちだけで立ち直れるほど私は単純じゃない。
私の中を埋め尽くす感情は、ちゃちな起爆剤じゃ吹き飛ばせない。


(………………)

恋鐘「……ルカにはガッカリばい、コロシアイが始まってから一番変わってきとったのに、こげんクライマックスで躓くなんて想定外ばい」

智代子「人の感情はそう簡単に割り切れるものじゃない……なのに、なんでそんなに酷い言い方ができるの……」

あさひ「……恋鐘ちゃん、このコロシアイの目的はそこなんすか? わたしたちが、コロシアイを経て成長することが目的なんっすか?」

恋鐘「大体は正解ばい。うちはこのコロシアイで、うちに夢ば見せてくれたあのアイドルと同じ輝きを持ったアイドルに出会いたかったとよ」

恋鐘「あと少し……あと少しで完成するはずだったとに……」


恋鐘「ま、うちん続きはまた別に引き継いでくれればよか!」


あさひ「……え?」

恋鐘「あんまり喋りすぎたら後の楽しみがなくなってしまうけんね! そろそろ区切りにせんといかん!」

355 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:33:32.54 ID:kq3pidQz0





恋鐘「ワックワクドッキドキのおしおきタイムば〜い!」





356 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:36:10.58 ID:kq3pidQz0

コロシアイの黒幕による、自分自身のおしおきの宣言。
それはあまりにも多くの重要性を帯びている。
コロシアイの終幕、私たちの勝利、仲間達の敵討ち、真実の迷宮化、そして


……かつての仲間との別離。


突然にそんなものが言い渡されて、黙って飲み込めるはずなどない。


智代子「ちょ、ちょっと待ってよ! まだ何も聞けてない……恋鐘ちゃんは黒幕で、このコロシアイを仕掛けたんでしょ?!」

智代子「だったら、どうしておしおきなんて……死ぬかどうかも自分次第でしょ、だったらちゃんと喋ってからにしてよ……!」

恋鐘「そげんこつ言われても……あんまりうちが喋っても助長とやろ?」

透「ジョチョー……死ぬのに早いも遅いもなくない?」

恋鐘「チッチッチッ……死もコロシアイ全体を作る上での材料の一つに過ぎんとよ。どんな食材も新鮮さが命! 人だって死ぬべき時に死なんと意味がなか!」

恋鐘「うちが散るべきタイミングは今! 今ここで死ぬことこそが、ひいてはコロシアイ全体を盛り立てることになるけん!」


月岡恋鐘は異常なまでの強情だった。
死ぬと決めたからにはその意志固く、他の連中の言葉には全く耳を貸していない。
それどころか自分にこれから先待ち受けている死をどこか楽しみにしているような、恍惚とした表情を浮かべているのが異様に不気味だった。
瞳が渦巻いて見えるような、狂気じみた態度。
こちらが勝者であちらが敗者という絶対的優位にありながらも、背筋を虫が這うのを止められないだけの嫌な気迫を滲ませた。
357 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/07/03(日) 21:37:22.87 ID:kq3pidQz0

月岡恋鐘は証言台を離れ、元々モノクマの座っていた裁判長席へ。
他よりも高い位置に椅子のある台は、一通り全員の顔が見渡せた。
月岡恋鐘はわざとらしく咳払いを一つすると、朝礼でもするかのように声高々に辞世の句を綴った。


恋鐘「それより、次のステップにさっさと進まんといかん! 残った4人……いや、3人! みんなは新世代のアイドルになれるチケットを手にしとるばい!」


最後までこいつは、激励の言葉をかけた。
コロシアイといういつ終わりがやってくるともわからない場に無理やり連れ出したくせして、“今後”のことを語る。


恋鐘「うち、それに雛菜と美琴! 3人とのお別れを踏み台にすることでみんなはもっともっと輝けるはずた〜い!」


ただこいつはその倒錯に気づいていない。
気づく余地などない。
自分自身の計画を、理想を、憧憬を盲信している彼女からすれば“輝き”こそが絶対のものであり、そのための布石もまた間違いのないものなのだ。


恋鐘「みんな、うちん死を乗り越えてもっともっと輝いてほしか!」


だからそこにある言葉は、たくさんの人間の命を奪い、絶望を振り撒いた存在とは到底思い難いほどに……

759.54 KB Speed:1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)