星の陽炎型

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1 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:28:23.86 ID:CIciDLhWo


陽炎から秋雲まで。

陽炎型姉妹実装17人分。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1653276503
2 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:32:32.71 ID:CIciDLhWo


【 陽炎 】


『 鶯餡に鶯(うぐいす)の肉は入ってない 』

間宮さんを恐れる雪風に、真実を告げられないままでいる。


『 鹿の子餅に鹿の肉は入ってない 』

伊良湖さんに怯える時津風に、未だ言えないままでいる。


駄目なお姉ちゃんを、許してほしい。
陽炎はまだまだ未熟です。



黒潮「陽炎」

不知火「陽炎」

陽炎「これは無理。 普通に無理。 とても無理」

黒潮「だって言わんと」

不知火「恥をかくのは雪風達です」

陽炎「だから無理って! うなぎパイの時だって、大変な騒ぎになったじゃない」

不知火「うなぎパイには入ってますよ。 うなぎ」

陽炎「えっ」

黒潮「絶賛うなぎ祭りやで」

陽炎「えっ」

不知火「うなぎパイの常識です」

黒潮「知らんのは陽炎だけやで」

陽炎「ええぇーーっ!?」

3 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:36:39.59 ID:CIciDLhWo


【 不知火 】


漣「うなぎパイキターー!!」

巻雲「うなぎパイ大好き」

春雨「うなぎパイ美味しいね」

野分「もっと食べたいです」

卯月「おかわりするぴょん!」

子日「うなぎパイ最高だよー!」

国後「もう、うなぎパイしか見えないから」



陽炎「何でこんなに人気なのよ」

陽炎「そんなメチャクチャ美味しいものでもないでしょ?」

陽炎「そもそも、何でうなぎなんか入れてるのよ」

黒潮「そら、夜のお菓子やし」

陽炎「は?」

初風「うなぎには滋養強壮の効果がね」

親潮「男の人が元気になっちゃう的な……」

陽炎「えっ」

陽炎「えっ? 夜のお菓子って、そういう…… ///」

不知火「うなぎパイ美味しいですね」サクサク

不知火「不知火も大好きです」モグモグ

初風「……」(ピンク……)

親潮「……」(ピンクは淫r…)

不知火「? どうかしましたか」

黒潮「いや、うん。 せやな、美味しいわな」

陽炎「美味しいわよねー」

4 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:38:56.46 ID:CIciDLhWo


【 黒潮 】


陽炎「明日は休日ね」

不知火「不知火は買い物に行ってきます」

陽炎「アンタはどこか行かないの」

黒潮「行かへんでー」

陽炎「何でよ、せっかくの休みなのに」

黒潮「だってウチ、出不精やから」チラッ

陽炎「……」

不知火「……」

黒潮「出不精やからなー、これはしゃーないわー」

陽炎「自虐ネタを織り込んできたわね」

不知火「そこまでして笑いが欲しいんでしょうか」

陽炎「ツッコんだら負けよ」
5 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:39:29.72 ID:CIciDLhWo

黒潮「最近ウエストきつなってきたなー、何でやろ」

黒潮「やっばデブ症やからかなー」チラッチラッ

陽炎「容赦ないわね、このデブ」

不知火「激しくツッコミたいです……」

親潮「黒潮さん! 明日は親潮も家にいます! 一緒にゲームしましょう」

黒潮「えっ、ああ、うん」

親潮「親潮も部屋にいる方が好きです!」

陽炎「う〜ん、このボケ殺し」

不知火「親潮つよいです」

黒潮「親潮。 ヒント、ヒントやで」

親潮「ヒント?」

黒潮「カタカナや。 片仮名で言うんや」

親潮「片仮名……」

黒潮「ウチ、出不精やねん」

親潮「ワタシもー、出不精デース!」ヘーイ!

黒潮「いや、カタコトやなくてな」

親潮「イツデモ、一緒デース!」ニコーッ

6 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:41:17.34 ID:CIciDLhWo


【 親潮 】


黒潮「親潮ー、紅茶淹れてきたで」

親潮「わぁ、ありがとうございます」

黒潮「今日はダージリンやでー」

親潮「ふふ、おしゃれですね」

黒潮「親潮、何してたん」

親潮「星を見てました。 綺麗ですよ」

黒潮「何や、ロマンチックやん」

親潮「あ、紅茶美味しいですね」

黒潮「せやろ? ちょっとブランデー入れてみたんや」

親潮「でも夜中に紅茶なんて、眠れなくなりませんか」

黒潮「少しだけやから平気やでー」

親潮「ふふ、そうですね」

黒潮「シュークリームもあるから」ガサゴソ

親潮「こんな時間に食べて大丈夫でしょうか」

黒潮「少しだけやから平気やで」ニコ
7 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:42:00.34 ID:CIciDLhWo

黒潮「そういえば不知火は」

親潮「さっき窓から抜け出してましたね」

親潮「きっと司令の所でしょう」

黒潮「あー、初風と天津風もコソコソどっか行ってたな」

親潮「これは鉢合わせのパターンですね」

黒潮「また一騒動ありそうやな」

親潮「困ったものです」ヤレヤレ

黒潮「紅茶おかわりしよ。 親潮、タルトもあるで」

親潮「タルトまで食べて大丈夫でしょうか」

黒潮「少しだけやから平気やで」モグモグ
8 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:42:46.70 ID:CIciDLhWo





親潮「私たちも」

黒潮「ん」

親潮「私たちも、いつか恋をするのでしょうか」

親潮「あんな風に誰かに心を奪われて、胸を焦がしたりするのでしょうか」

黒潮「そらするやろ」

親潮「想像つきませんね」

黒潮「せやなー、実感湧かへんわ」

親潮「黒潮さんはモテそうですね」

黒潮「何やの、急に」

親潮「美人で可愛いですし、性格も明るくて社交的で」

黒潮「いやいや、褒めすぎや」

親潮「いえ! 黒潮さんは素敵です! 世界で一番、魅力的です!」

親潮「私がもしも男性だったら、出会ったその日に求婚します!」

黒潮「何やの? メッチャ情熱的やん」

親潮「うふふ、美味しい紅茶のせいですね」

黒潮「えっ? あっ! ブランデーか」

黒潮「えー、嘘やん、こんなんで酔うの」

親潮「身体がー、ぽかぽかしますー」
9 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:43:30.23 ID:CIciDLhWo

黒潮「それやったら親潮もやで」

親潮「私ですか」

黒潮「清楚やし、物静かで可愛いし」

親潮「わ、私はそういうのは、あまり……」モジモジ

黒潮「親潮の場合はリードしてくれる人がええかもな」

親潮「リード?」

黒潮「そや、グイグイ引っ張ってくれて、黙って俺について来い! みたいな」

親潮「男らしいですね」

黒潮「亭主関白タイプやな」

親潮「黒潮さんはどんな人がタイプですか」

黒潮「ウチは優しい人がええなー」

黒潮「そない格好ようなくてええから」

黒潮「優しくて、ウチの事をずーっと大切にしてくれる人がええわー」

親潮「わー、ずるいです。 私もそっちがいいです」

黒潮「アカンねん、もう黒潮ちゃんに売約済みや」

親潮「えーっ、そんなー」

黒潮「恋は早い者勝ちやねん」

親潮「世知辛いですねぇ」シクシク
10 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:44:36.03 ID:CIciDLhWo

親潮「ところで司令はどうなんでしょう」

黒潮「どう、って」

親潮「未だに誰ともケッコンしてませんが」

黒潮「あー、それな」

黒潮「なかなか難しいんちゃうかな」

黒潮「何や言うて、大きな組織の長やからな」

黒潮「誰かを選べば、陰で泣く娘も出る訳やし」

親潮「でも、こんなに沢山の女の子に囲まれて」

黒潮「まあ、ちょっとくらいお手つきしても、誰も責めんと思うんやけど」

親潮「鋼の意志ですね」

黒潮「それか、他に要因が」

親潮「それは……やはり噂の」

黒潮「女の人には興味がなくて、男同士の方がええとか」

秋雲「話は聞かせてもらったよ!」ドアガチャバターン!

秋雲「誰と誰とがホモだってぇ!?」

黒潮「また騒がしいのが来た」

親潮「何でこんな時間に起きてるんですか」

秋雲「なに言ってんのさ! 夜は秋雲さんの領域だよ」

秋雲「さあさあ、ホモバn……恋バナの続きをしようともさー!」

黒潮「メッチャ元気や」

親潮「水を得た魚ですね」
11 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:45:17.13 ID:CIciDLhWo

秋雲「あ、黒潮。 紅茶貰うね」

黒潮「チョコクロもあるで」

秋雲「いいねー!」

親潮「夜中なんですけど大丈夫でしょうか」

黒潮「少しだけやから平気やで」ニカッ

秋雲「やでー」ニコッ

12 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:46:42.66 ID:CIciDLhWo


【 初風 】


秘書艦は日替わり制

本日の担当は天津風



天津風「あなた、ほら襟が曲がっているわ」

提督「ああ、すまない」

天津風「資料は全部用意してあるから目を通しておいてね」

提督「いつもありがとう」

天津風「はい、これお弁当」

天津風「い、一応……手作りなんだから……ね ///」

提督「わあ、嬉しいなぁ」



初風「……」

13 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:47:55.93 ID:CIciDLhWo


初風「……」

傘太郎「アレハ?」

初風「妹の天津風よ。 とっても優秀なの」

傘太郎「イモウト」

初風「美人だし優しいし気も利くし、自慢の妹よ」

傘太郎「ソウナノカ」

初風「自慢の……妹なんだけどね」

傘太郎「?」

初風「優秀過ぎて……私じゃちょっと、敵わない、かな」ジワッ

傘太郎「……」

初風「あ、あはは、何でもない、何でもないわよ」ゴシゴシ

傘太郎「ゴシュジンサマ……」

初風「さっ、遠征行ってくるわ。 留守番お願いね、傘太郎」

傘太郎「……」
14 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:48:54.54 ID:CIciDLhWo





深夜



傘太郎「……」

傘太郎「ゴシュジンサマ、ナイテタ」

傘太郎「……」

傘太郎「……」

傘太郎「アイツサエ、イナクナレバ」

傘太郎「……」

15 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:49:29.55 ID:CIciDLhWo





天津風「ちょっとコンビニに行ってくるわね」

舞風「暗いから気をつけてね」

天津風「大丈夫よ、すぐそこだし」

時津風「ついでにアイス買ってきてー」

谷風「谷風さんのもー」

天津風「ハイハイ」





天津風「〜〜♪」


傘太郎「……」スーッ

傘太郎「アイツサエ、イナクナレバ……!」グワッ!



   ガシィッ!!


16 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:50:37.92 ID:CIciDLhWo

足柄「そこまでよ」

傘太郎「!!?」

足柄「ズルは駄目」

足柄「アンタのご主人様を、卑怯者にするつもり?」

傘太郎「ア…ァア……」

足柄「好きなだけじゃ駄目なの。 大切なだけじゃ駄目なの」

傘太郎「オ、オレ、ゴシュジンサマニ……シアワセニ……」

足柄「こんな事、もう二度としないと自分自身に誓いなさい」

傘太郎「オレ……オレハ……」

足柄「一度だけ、見逃してあげる」

足柄「これから先、どうやって生きるのかは、アナタ自身が決めなさい」

傘太郎「ァ……ウゥ……」ガクッ
17 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:52:02.64 ID:CIciDLhWo





那智「甘いな」

足柄「誰にだって間違いはあるわ」

那智「正さねば、またやるぞ」

足柄「えー、正してるつもりだけどなー」

那智「もっと骨身に刻むべきだ」

足柄「姉さんはちょっと厳しすぎ」

那智「それが優しさだ」

足柄「そうだけどさー」

那智「まあいい、次に何かあればお前が責任をとれ」

足柄「大丈夫だって」

足柄「次、は ないから」

那智「……」

足柄「さ、飲みに行きましょ」

那智「まだ飲むのか!?」

足柄「夜はこれからよー」ワオーン!

18 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:53:18.59 ID:CIciDLhWo


【 雪風 】


どんな絶望の死地からも、必ず生還を成し遂げる。

そんな偉業は畏怖となり、いつしか彼女に異名がついた。


陽炎型 八番艦 駆逐艦 “ 雪風 ”



艦隊の── “死神”


19 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:54:39.52 ID:CIciDLhWo


陽炎「別にそれほど強くないわよ」

野分「強くない?」

陽炎「綾波なり夕立なり、あの子より強い艦娘はいくらでもいるわ」

野分「では何故雪風だけが、あんなにも戦果をあげられるのでしょうか」

野分「どうして彼女だけが、あんなにも生き残る事が出来たのでしょう」

陽炎「経験ね」

野分「経験」

陽炎「縁側で茶を啜っているだけじゃ、人は強くなれないわ」

陽炎「踏んだ場数の分だけ、潜った修羅場の数だけ、理由があるのよ」

陽炎「それこそ本当に死んでしまうような、全てが終わってしまうような死線をね」

野分「死線……ですか」

陽炎「そんな経験、私だって数えるほどしかしてないわ」

陽炎「でも、あの子は違うの」

陽炎「駆逐艦雪風の毎日は、常に死と隣合わせよ」

野分「……」ゾクッ

20 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:56:00.27 ID:CIciDLhWo





不知火「陽炎、大変です! 雪風がブランコから落ちました!」

黒潮「アカン、頭打っとる! 意識がない」

陽炎「しっかりしなさい雪風! 雪風ーっ!」





不知火「陽炎、大変です! 雪風が飴を喉に詰まらせました!」

黒潮「アカン、白目むいとる! 意識がない」

陽炎「しっかりしなさい雪風! 雪風ーっ!」





不知火「陽炎、大変です! 雪風がドブに嵌まりました」

黒潮「アカン、腰まで浸かっとる! 意識がない」

陽炎「しっかりしなさい雪風! 雪風ーっ!」





陽炎「……」

野分「……」

陽炎「常に死と隣合わせよ」

野分「えー……」


21 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:57:27.28 ID:CIciDLhWo


【 天津風 】


天津風「いい風」サアアァ

天津風「空気が澄んでいるわね」

天津風「星がこんなに綺麗に見えるなんて珍しいわ」

白雪「そうですか?」

深雪「普通じゃね」

初雪「むしろ……霞んでる」

天津風「ええー?」

綾波「ウチの村だともっと鮮やかに見えますよ」

敷波「街灯もコンビニもないしなー」

吹雪「夜の濃さが違うよね」

天津風「どんだけ田舎に住んでるのよ」
22 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:58:04.65 ID:CIciDLhWo

磯波「でも、いい所だよ」

浦波「空気は美味しいし、水は綺麗だし」

敷波「いつか遊びに来なよ」

吹雪「収穫したての野菜食べたら驚くよ」

初雪「味が……全然違うから」

白雪「タヌキも時々見れるしね」

深雪「あいつら可愛いよな」

天津風「ふ、ふ〜ん、いいかも」

叢雲「虫も沢山いるわよ」ヒソヒソ

天津風「えっ」

叢雲「蛭とかムカデとかも」ボソボソ

天津風「うわ、それは無理かも」

浦波「慣れたら平気だべさー」

磯波「んだんだー」

23 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:58:57.74 ID:CIciDLhWo


【 時津風 】



今は昔。



陸奥「長門、あなたいい加減にしなさいよ」

長門「む」

陸奥「昼は間宮さんでもぐもぐ、夜は鳳翔さんでもぐもぐ」

陸奥「いつも食べてばっかりじゃない! 何かしなさいよ」

長門「執務ならちゃんとしているが」

陸奥「仕事以外で!」

陸奥「おしゃれなり、買い物なり、あるでしょう」

長門「そんな事を言われてもな」

長門「服は制服があるし、買い物も支給品で事足りる」

陸奥「じゃあ遊んできなさいよ、スポーツでもいいわ」

長門「ジムなら早朝行ってきたぞ」

陸奥「筋トレじゃないわよ」

陸奥「それ以上ゴリラになってどうすんのよ」
24 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 12:59:38.18 ID:CIciDLhWo

陸奥「そもそも何で鎮守府にいるのよ。 今日は非番でしょ」

長門「それは有事の際に備えてだな」

陸奥「あなた以外にも艦娘はいるの!」

陸奥「それとも何? そんなに他の娘が信用出来ないの」

長門「いや、そういう訳では」

陸奥「最後に私用で外出したのはいつ?」

陸奥「最後に私達以外と話をしたのは?」

長門「む」

陸奥「真面目なのもいいけど、度を過ぎればそれは正しい事ではないわ」

長門「むむ……」

陸奥「出掛けてらっしゃい。 夜まで帰ってこなくていいからね」
25 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:00:07.31 ID:CIciDLhWo





長門「出掛けろと言われてもな……」スタスタ

長門「……」

長門「……あれ?」

長門「何をすればいいんだ」

長門「……」

長門「思い浮かばないぞ」

26 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:01:04.77 ID:CIciDLhWo





陽炎「あーっ、もう! 毎日毎日訓練訓練! 厳し過ぎでしょ」

不知火「先週は五回ほど死にかけました」

陽炎「そのうち二回は実際に死んでるからね」

不知火「何と! そうなのですか」

陽炎「誰が蘇生呼吸したと思ってんのよ」

不知火「知らない間に不知火のファーストキスを」

陽炎「文句は鬼通さんに言って」

不知火「文句は別に。 お互い様ですし」

陽炎「えっ」

ときつかぜ「あそんでー」

陽炎「ん?」

不知火「時津風」

ときつかぜ「おねえちゃん」

陽炎「あー、ゴメンね。 お姉ちゃん今から訓練なのよ」

不知火「申し訳ありません。 時津風はいい子だから大丈夫ですよね」

ときつかぜ「あうー……」

陽炎「ゴメンね。 帰ったらおやつあげるから」

不知火「なるべく急いで戻ります」

ときつかぜ「う、うん……」


長門「……」
27 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:01:54.04 ID:CIciDLhWo





ときつかぜ「……」ショボーン

長門「おい」

ときつかぜ「!」ビクンッ!

長門「ひとりなのか」

ときつかぜ「う、うん」

長門「……」

ときつかぜ「……?」

長門「今から外に出掛けるが、一緒に来るか」

ときつかぜ「遊んでくれるの!?」

長門「まあ、暇だからな。 遊んでやってもいい」

ときつかぜ「やったー!」

長門「どこか行きたい所はあるか? どこでもいいぞ」

ときつかぜ「う〜んとね〜」
28 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:02:33.80 ID:CIciDLhWo



〜 河川敷 〜



長門「こんな所でいいのか」

ときつかぜ「遊んで、遊んで!」

長門「遊ぶと言っても何もないぞ」

ときつかぜ「これ投げて!」

長門「ゴムボールか」

長門「別に構わんが……そら、取ってこーい」

ときつかぜ「わーい」タタターッ

ときつかぜ「もう一回!もう一回!」キャンキャン



長門(かれこれ50回くらい投げたが……)

ときつかぜ「もっと、もっと!」ワンワン

長門(飽きないのか、こいつは)
29 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:03:12.90 ID:CIciDLhWo





長門「よし、飯にしよう」

長門「何か食べたいものはあるか」

ときつかぜ「う〜んとね、はんばーぐ!」

長門「ハンバーグか。 近くにファミレスあったかな」

ときつかぜ「あれ、あれ!」

長門「む、あれはハンバーグではなくてハンバーガーだ」

ときつかぜ「?」キョトン

長門「そうか、分からないか」
30 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:04:18.81 ID:CIciDLhWo





長門「どれが食べたい」

ときつかぜ「あのね、たまごのやつ」

長門「これか、よし」

長門「む、そういえば注文の仕方が分からんな」

長門「まあ何とかなるか」

店員「いらっしゃいませー、ご注文はお決まりですかー」

長門「このタマゴのやつを一つと」

店員「てりタマですねー、おひとつー」

長門「あと、こっちの一番デカいのを20個くれ」

店員「はい、ジャンボマックを20……20個ぉ!!?」
31 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:04:59.22 ID:CIciDLhWo





ときつかぜ「おいしい、おいしい」モグモグ

長門「一つでいいのか。 何個でもいいんだぞ」

ときつかぜ「そんなに食べれないよー」

長門「やれやれ、随分と燃費がいいな」

赤城「それではジャンボマックを20個ほど、遠慮なく」

加賀「こちらはテリヤキとグラコロを10個ずつ いただくわ」

長門「お前らには言ってないぞ」
32 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:05:35.06 ID:CIciDLhWo

加賀「珍しい組み合わせね」

長門「む、まあな」

長門「やはり変か」

赤城「いえ、いい事だと思います」

長門「む」

赤城「長門さんの優しい顔が見れましたし」

長門「なっ!?」

加賀「そんな顔も出来るのね」

長門「バカな、何を言って……」

赤城「ふふ、いいと思いますよ。 本当に」

加賀「あなたは少し堅苦しいわ。 表情も、性格もね」

長門「お前が言うのか」
33 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:06:24.65 ID:CIciDLhWo





赤城「それではお先に」

加賀「ええ、行きましょう。 赤城さん」

ときつかぜ「ばいばーい、あかぎー」

長門「こら」ペシッ

ときつかぜ「あうっ」

長門「赤城さん、だ」

ときつかぜ「あかぎさん?」

赤城「ふふ、あかぎでいいですよ」

ときつかぜ「あかぎー」

赤城「友達ですもんね」ニコ

長門「いや赤城、それは困るぞ。 示しがつかん」

赤城「そうですか」

加賀「私の事は、レディーカガと呼んで下さい」

長門「ちょっと待て、お前本当に加賀か!?」

加賀「あなたは堅苦し過ぎなのよ」フッ

ときつかぜ「かがー」ニコーッ
34 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:07:43.31 ID:CIciDLhWo





長門「さて、飯は食ったが……帰るにはまだ早いな」

長門「ふむ、何か欲しいものはないか」

ときつかぜ「ほえ?」

長門「ゲームでもオモチャでも何でもいいぞ」

ときつかぜ「これがいい!」

長門「なわとび? こんなものでいいのか」

ときつかぜ「わーい」





ときつかぜ「見ててね、見ててね」ピョンピョン

長門「同じ事を何度も何度も……」

長門「飽きもせずよく続くものだ」

ときつかぜ「……」チラッチラッ

長門「ああ、見てるぞ。 なわとび上手いな」

ときつかぜ「!!」ペカーッ

ときつかぜ「えっとね、後ろ跳びもできるよ!」

ときつかぜ「これはね、ちょっと難しいんだよ」

長門「ほお、それは是非見てみたいな」

ときつかぜ「跳ぶからね、見ててね!」ニコーッ
35 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:08:27.31 ID:CIciDLhWo





長門「遊び疲れて眠ったか」

長門「起こすのも可哀想だし、おぶって帰るか」

長門「よいしょっ……と」

長門「!!」

長門「……軽いな」

長門「こんなにも軽いのか」

長門「こんなにも小さな身体で、これから戦うのか」

長門「あの、海の化け物達と」

長門「……」


36 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:09:15.14 ID:CIciDLhWo



◇◇◇



後日。



陽炎「失礼します」

長門「駆逐艦か。 どうした」

陽炎「陽炎型一番艦陽炎です」

不知火「陽炎型二番艦不知火です」

陽炎「先日は妹の時津風と遊んでいただいたとの事で」

陽炎「大変喜んでいました。 ありがとうございます」

長門「む、いや別に大した事はしてないぞ」

不知火「帰ってからもずっと、長門さんに遊んでもらったとはしゃいでいました」

不知火「よほど楽しかったのでしょう」

長門「そ、そうか……? まあ、それは良かった」

陽炎「それで……図々しいお願いではあるのですが」

長門「ん?」
37 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:09:58.03 ID:CIciDLhWo





ゆきかぜ「ずるいです! ずるいです! ときつかぜばっかり!」

ゆきかぜ「ゆきかぜも、ゆきかぜも、ながとさんと遊びたいです!」

ときつかぜ「なわとび買ってもらった」ンフー

ゆきかぜ「むうう〜」

ゆきかぜ「ときつかぜはずるっ子です! ゆきかぜも! ゆきかぜも!」


陽炎「時間のある時で構わないので、あの子とも遊んでやってもらえませんか」

不知火「何卒宜しくお願いします」


ときつかぜ「この持つ所がね、ピカッて光るんだよ〜」ドヤァ

ゆきかぜ「うわああーん! ときつかぜの馬鹿ー!」


長門「あ、ああ。 考えておこう」

陸奥「考えておこうじゃないわよ」バシッ!

長門「!?」

陸奥「今すぐやるから大丈夫よ。 どうせ暇だからね」

長門「な、何を? 暇ではないぞ」

陸奥「いいからほらほら、後は私がやっておくから」

陽炎「あ、あの、えっと」

陸奥「連れてっていいからね〜、こき使ってあげて頂戴」

長門「おい、陸奥!」

陸奥「夕方まで戻ってこなくていいから、じゃあね!」バタン!

長門「」
38 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:10:45.21 ID:CIciDLhWo





提督「いい傾向だね」

陸奥「これで姉さんが、少しでも変わるきっかけになれば」

提督「しかし、想像つかないな」

提督「あの長門が駆逐艦と一緒に遊ぶだなんて」

陸奥「まったくだわ。 けしかけておいて何だけど、上手くいくかしら」

提督「最初はかくれんぼとかかな」

陸奥「いきなりハードルが高いわね」

提督「かくれんぼでも無理なの?」

陸奥「だって、長門よ」

提督「あー、うん。 長門だもんね」

陸奥「はてさて、どうなる事やら」







長門「長門だ」

ときつかぜ「ながとキター!」ワオーン!

ゆきかぜ「やったー!」キャッキャッ


39 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:13:40.17 ID:CIciDLhWo


【 浦風 】


香る紅茶に美味しいお菓子。
金剛主催のお茶会は、いつでも誰でもウェルカム。



浦風「今日は妹を連れてきたんよ」

比叡「わあ、ようこそ」

榛名「いらっしゃいませ。 歓迎します」

萩風「みなさんこんにちは、萩風です」

嵐「みなさん初めまして! 陽炎型 十六番艦 駆逐艦 嵐 です!」ビシィッ!

嵐「本日はお招き頂きまして、ありがとうございます!!」

浦風「」

萩風「」

比叡「ひ、ひえ〜?」

榛名「ず、随分礼儀正しい方ですね」

浦風「あ、嵐?」

萩風「ど、どうしちゃったのかな」

嵐「これ、つまらない物ですが、どうぞ」ササッ

金剛「あ、ありがとデース……」

霧島「ふむ……嵐、ですか」キラーン
40 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:14:17.17 ID:CIciDLhWo


〜 回想 〜


摩耶「いよいよ霧島姐さんに謁見かー」

天龍「くれぐれも粗相の無いようにな」

木曾「手土産を忘れるな」

嵐「そんなに怖い人なんスか」

摩耶「いや、普段は優しいぞ」

天龍「そうそう、口調も丁寧だしな」

木曾「ただ、キレたらヤバい」

嵐「摩耶さんよりもッスか」

摩耶「馬鹿、あたしなんか話になるかよ」

摩耶「姐さんがキレたら、ここにいる全員でも止めらんねーよ」

木曾「あれはマジでヤバい」

嵐「そ、そんな人とどうやって話を」

摩耶「金剛だ。 とにかく金剛をもてなせ」

嵐「金剛さん?」

摩耶「とりあえず他の奴らはどうでもいい」

摩耶「金剛が全てのトリガーだ」

摩耶「金剛さえ笑顔なら、姐さんがキレる事はない」

嵐「じゃあ、もし金剛さんに何かあったら」

摩耶「……」

天龍「……」

木曾「……」

摩耶「あ、ヤバい。 膝が震えてきた」

天龍「俺も、ちょっと吐きそう」

木曾「気持ち悪い、ヤバい、頭痛い」

嵐「そんなに!? そんなにヤバいんスか!?」


41 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:15:22.90 ID:CIciDLhWo


◇◇◇


浦風「萩風はハーブを植えとるんよ」

比叡「ハーブですか!」

榛名「それは素敵ですね」

萩風「無農薬で有機栽培なんです」

萩風「ジャスミンやカモミールなんかも」

萩風「今度みなさんにお持ちしますね」

比叡「いいんですか!?」

榛名「わぁ、嬉しい」

金剛「それでは今度のお茶会はハーブティーにするデース」

霧島「とてもいい考えですね」

嵐(さすが萩風。 あっという間に場が和やかな雰囲気に)

嵐(よし、このいい流れに乗って……!)
42 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:16:22.08 ID:CIciDLhWo

嵐「吹雪から聞きました! 第五遊撃部隊の時の話」

金剛「ブッキー、ですか」

榛名「どんな話なんです」

嵐「『金剛さん、初めて会った時も気さくに話し掛けてくれてすっごく優しい』」

嵐「『戦闘も強くてカッコいいし、私がピンチの時はすぐ駆け付けてくれて、すっごく頼りになる人だよ』 って」

浦風「おおー」

比叡「流石です! お姉さま!」

金剛「いや〜、照れるデース ///」

金剛「私はただ、当たり前の事をしただけデスから〜 ///」テレテレ

霧島「嵐」

嵐「はっ、はいっ!?」ビクッ

霧島「紅茶のおかわりはいかが?」

霧島「あと、こないだビスマルクから強奪……いえ、プレゼントされたシュトレンもあるけど」

嵐「あ、ありがとうございます」

43 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:16:51.59 ID:CIciDLhWo

嵐「あと、摩耶さんや天龍センパイからも色々」

霧島「続けて」

嵐「『金剛さんは英国からの帰国子女でセンスがある』」

嵐「『美人だし気品もあって正直憧れるわー』 と」

榛名「よく見ていますね」

比叡「金剛お姉さまの魅力が分かってます」

金剛「彼女達は霧島のお友達デスね?」

霧島「はい、仲良くさせてもらっています」

金剛「では、今度お茶会に招待したいデース」

金剛「たくさんお話してみたいデース」

霧島「それは……摩耶たちもきっと喜ぶと思います」

金剛「あー、楽しみデース」ニコニコ

霧島「嵐」

嵐「は、はいっ!」

霧島「先日ローマから略奪……いえ、プレゼントされたティラミスがあります。 食べていいですよ」

嵐「は、はいっ」

霧島「沢山あるから良かったらお土産にも、どうぞ」

嵐「ありがとうございます。 戴きます」
44 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:17:32.65 ID:CIciDLhWo

金剛「もっとお話を聞きたいデスね」

霧島「嵐、他に何かありますか」

嵐「えっと……司令が」

金剛「テイトク!?」ガタッ!

嵐「『金剛は古くからこの鎮守府を支えてくれて、みんなからの信頼も厚い』」

嵐「『もちろん俺も頼りにしているし、彼女には感謝しかない』」

嵐「『艦隊には欠かす事の出来ない、とても大切な女性だよ』 ……って、こないだ言ってました」

金剛「〜〜〜!!?」ガタガタッ!

金剛「テ、提督が私をそんな風に!!?」

比叡「やりましたね!お姉さま!」

榛名「これはもうプロポーズなのでは!?」

霧島「早急にハネムーンの準備を進めるべきですね」
45 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:18:02.14 ID:CIciDLhWo

霧島「あと、嵐」

嵐「はいっ!」

霧島「貴方、今日は泊まっていきなさい」

嵐「えっ」

霧島「リシュリューを呼びつけて高級フランス料理を作らせ……」

霧島「いえ、夕食を用意するから一緒に食べましょう」

霧島「貴方とはもっとお話がしてみたいわ」ニッコリ

嵐「はっ、光栄であります!」ビシッ!



浦風「霧島姉さんが上機嫌すぎて何か怖いのぉ」

萩風「言葉の端々に不穏な単語が混じるのはどうしてなのかな」

46 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:18:47.57 ID:CIciDLhWo


【 磯風 】



◇ 三途の河原 ◇



死神「何や、またキミか。 皆勤賞やな」

雪風「はわわ、真っ暗です」

死神「ほな、一緒に河を渡ろか」

雪風「嫌です! 雪風は渡りません!」

死神「ええやんか、お花畑綺麗やで〜」

雪風「雪風はみんなの所に帰ります!」

死神「しゃーないな、ほなまた今度にしよか」

雪風「えっ? いいんですか」

死神「まあ、どの道いつかは渡るしな」

雪風「ありがとうございます!」

死神「ほら帰り。 出口はあっちやで」

雪風「はーい!」
47 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:43:05.52 ID:CIciDLhWo

死神「あ、ちょい待ち。 お土産や」

雪風「何ですか」

死神「“経験値”や」

雪風「けいけんち?」

死神「いやキミ、毎回貰とるやろ」

雪風「どうやって使うんですか」

死神「これがあるとな、明るくなるんや」ピカーッ

雪風「はわわっ! 眩しいです」

死神「これなら道を踏み外さんと帰れるで」

雪風「踏み外すとどうなるんですか」

死神「奈落やな。 二度と戻れへん」

雪風「ふわあー、怖いですー」

死神「せやろ? 気いつけて帰りや」

雪風「ありがとうございます! また来ます」

死神「いや、来んでええから」

48 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:43:33.37 ID:CIciDLhWo



◇◇◇



提督「戦況はどうなったかな」

大淀「大逆転勝利です」

大淀「絶体絶命の状況から、瀕死の雪風がカットインを連続で決めました」

大淀「ありえない動きだったそうです」

提督「そうか。 あの不落の海域を攻略したか」

大淀「あんなに小さな身体で……本当に末恐ろしい子です」

提督「うん、よし。 とにかく皆にはゆっくり休んでもらおう」

提督「補給も順次、滞りなくね」

大淀「はい、早急に手配します」

49 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:44:01.42 ID:CIciDLhWo



◇◇◇



磯風「……」

神通「眠らないのですか」

磯風「神通」

神通「自信を……失いましたか」

磯風「……」

磯風「どんな魔法を使えば、あの域にまで達するんだろうな」

磯風「アイツは……化け物だ」

神通「言葉が過ぎますよ」

磯風「化け物じゃなければ神様だ。 どう考えても、あんな動きは人には無理だ!」

神通「……」

磯風「……」
50 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:44:38.23 ID:CIciDLhWo

神通「魔法なんて使えませんが、努力なら教える事が出来ます」

磯風「努力ならしている! 毎日、毎日! 毎日だ!」

磯風「無理だ!そんなもので! 努力だけであの雪風を超える事なんて……!」

神通「本当に?」

磯風「ッ!」

神通「努力で彼女を超える事は出来ないと、本当に、思っていますか」

磯風「……」

神通「それは努力をやり尽くした人間だけが言える言葉です」

磯風「……」

磯風「だって……これ以上……どうすれば」ポロポロ

神通「魔法など知りません。 奇跡など分かりません」

神通「教える事が出来るのは努力だけです」

神通「それだけです」

神通「気が変わったら来て下さい。 演習場で待っています」

磯風「ううっ……」

51 : ◆36RVFTz/1g [saga]:2022/05/23(月) 13:45:10.42 ID:CIciDLhWo



◇ 三途の河原 ◇



死神「よー、姉ちゃん。 久しぶり」

磯風「またお前か」

死神「ほな、一緒に河を渡ろか」

磯風「誰が渡るか!」

磯風「それよりも早く土産をよこせ」

死神「何や、つれないなー。 もう帰るんか」

磯風「当然だ、こんな場所いつまでもいられるか」

磯風「ん? これっぽっちか。 もっとよこせ、ほら」

死神「死神相手にムチャ言うな、キミ」

死神「お土産持って早よ帰り」

磯風「言われなくてもこんな場所……」クルッ

神通「……」

磯風「ッッ!?!」

磯風「じ、神通!? 何でお前ここに」

神通「まだ息があるんですね」ジャキッ!

磯風「ちょ!? 神通? 待っ……ッ!!」

磯風「……! ……!!!」
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