【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」吹雪「その4です!」

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42 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:41:18.05 ID:/FOkV/ZAo

隼鷹「……それを差し置いても、妖精と会話できる人間て珍しいんだろ? 人材としても、もっと大事にされなきゃ駄目なんじゃないの?」

提督「艦娘を大事に思ってる奴なら、そう思うだろうな」

提督「だが、そうじゃない人間にとっては、妖精から何を言われるかわからなくて疑心暗鬼になるってもんだぜ?」

隼鷹「……」

提督「ましてや後ろめたいことをしている連中にとっちゃあ、妖精から余計な情報を掴むかもしれないんだ。邪魔でしかないと思わねえか?」

隼鷹「……そういうこと、しなきゃいいじゃん……」

提督「生憎と、そういう上司にしか恵まれたことがなかったんでね。ま、そんなもんだと思って、諦めな」

隼鷹「はあ……とんでもない人のところに来ちゃったもんだねぇ、あたしも」

如月「……ねえ司令官? この島にミサイルを落とすとか言う話、いつごろ知ったの?」

提督「いつだったかな? 大和が来て、N中佐が捕まって……たしかその辺りだったと思うが」

提督「あっちの鎮守府の赤城からか、中佐が電話でぎゃーぎゃー喚いてるのを聞いたらしい」

如月「そういうお話、どうして早くして下さらなかったんですか」ズイ

隼鷹「ま、まあまあ、落ち着きなよ! 普通はミサイル落ちてくるかも、なんて物騒な話、そうそう話せたもんじゃないよ」

隼鷹「秘密にされたことを信頼されてないって思うのもしょうがないかもしれないけど」

隼鷹「みんながみんな如月みたいに動じないわけじゃないし、噂だけ独り歩きしても危ないじゃないか?」
43 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:42:03.30 ID:/FOkV/ZAo

隼鷹「少なくとも、あたしゃ今の話を聞いて、とんでもないところに来ちゃった、って素直に思ったわけだしさあ」

隼鷹「心配性な子とかがいれば、不安がたちまち艦隊に伝播しちゃう恐れもあるんだから、緘口令もしかたないよ。ねぇ?」

如月「……それはそうなんですけど。司令官はいつも一人で溜め込む人だから、相談くらいはあっても良かったのに、って」

如月「いつまでも私たちを保護対象だと思ってるのが、ちょっと不満なだけなんですっ」

提督「お前ひとりに話すわけにもいかねえだろ」

如月「そんなのわかってますっ!」ツーン

提督「なんで怒るんだよ……」

隼鷹「なんでって、そりゃ提督、如月は特別扱いされたいんだよ〜。なぁ〜?」ニッ

如月「!?」セキメン

隼鷹「ほら、赤くなった。提督も、もうちょっと女心ってのを理解しなよ〜?」

提督「そりゃ無理だ、俺にそういうもんを求めんな。好いた惚れたの話は、俺には理解できないと思ってくれって、何度も……」

隼鷹「っかぁ〜、身も蓋もないねぇ……! そんなんじゃあ、そのうち艦娘に愛想を尽かされちまうよ?」

提督「……お前、意外と世話焼きだな?」

隼鷹「ちょっ!? 意外ってなんだよ、意外って! 失礼しちゃうねえ!?」
44 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:42:48.44 ID:/FOkV/ZAo

提督「ああ、悪いな。世の中の酔っ払いは、手前と酒のことしか頭にねえと思ってたもんでなあ」

隼鷹「そりゃーお酒の部分は否定しないけどさあ! 言い方ってもんがあるでしょうよ! 言い方ってもんが!」

如月「唐突にイチャイチャし始めないでもらえます?」ジトッ

隼鷹「してないよ!? 今のやり取りをイチャイチャって言うの!?」ガビーン

龍驤「ええツッコミが聞こえてきたで!」ドアガチャー

隼鷹「どっから出てきたんだよぉ!?」

提督「俺が呼んだんだよ。同じ空母だからな」

龍驤「あ、ノック忘れとったわ。ごめんね?」

提督「いいけどよ。入ってくるタイミング良すぎだろ」

龍驤「いやぁ〜、なんか痴話喧嘩っぽい空気だったもんで、まだ入っちゃまずいかなあ、って」アハハー

隼鷹「だからそういうんじゃないんだってば〜。あたしにはR提督っていう、ちゃんと心に決めた人がいるんだからさあ」ポ

龍驤「ほーん? そかそか」ニヤニヤ

提督「とりあえず、そのR提督のもとに隼鷹を送り届けるのが目的になるんだが……」

提督「それまでの間、どんな風に過ごしてもらうか、実力の程はどんなもんか、龍驤に見てもらいたくてな」

龍驤「ほほーん。ええで、うちにまかしとき!」ムネポーン
45 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:43:33.05 ID:/FOkV/ZAo

龍驤「じゃあ早速、工廠へ……」

隼鷹「あ、ごめん。悪いんだけど、できたらもうひとつお願いしたいことがあるんだけど、頼めるかなあ」

提督「? なんだ?」

隼鷹「できたらでいいんだけど……飛鷹のことも調べて欲しいんだ」

提督「飛鷹? お前の言ってた姉妹艦のことか?」

隼鷹「そう。あたしがR提督と言い争ってビンタしたせいで、あたしたちが散り散りになった、って話したと思うけど」

隼鷹「飛鷹も同じように……いや、同じじゃなくて、あたしのとばっちりかな。飛鷹も余所の鎮守府に飛ばされたはずなんだ」

提督「……なるほど。お前としては、姉妹が心配だと」

隼鷹「R提督の居場所だけでも苦労すると思うのに、飛鷹のことまでお願いするのは……ちょっとどころじゃなく図々しいとは思うけどさ」

隼鷹「R提督のことは、飛鷹とあたしで支えてきた自負があるんだ。だから、R提督のところへ行くときは、飛鷹も一緒にって思ってるんだよ」

隼鷹「当然のように一緒にいた二人と会えないのがこんなにつらいだなんて、思ってもみなかったしさぁ……」

提督「R提督については当てがあるんだが、飛鷹のほうは一から調べねえと駄目そうだな」

隼鷹「あ、当てがあんのかい!?」パァッ!

提督「R提督だけだぞ?」

隼鷹「それだけでも良かったよぉ……なんせあれから全然情報が入ってこなかったしさあ!」ウルッ
46 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:44:19.99 ID:/FOkV/ZAo

隼鷹「とにかく、今は二人が無事でいて欲しいねえ……それがわかれば、あとは時間がかかっても会いに行くだけさ」

如月「……」

龍驤「……」

提督「……そう思うんなら、まずはお前がしっかりしねえとな」

隼鷹「そうだねえ。その通りだよ」ニッ

提督「龍驤、隼鷹の艦載機、選んでやってくれ」

龍驤「了解! ほな行こか!」

 扉<パタム

如月「……」

提督「? どうした?」

如月「え? な、なんでもないわ?」

提督「そうか? ……ならいいんだが」
47 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:45:36.09 ID:/FOkV/ZAo

提督「さて、あいつも約束を守ったことだし、こっちも約束のブツを取りに行くか」

如月「約束?」

提督「ああ、L大尉から預かった大量の酒を食堂に運ばなきゃな。足柄と千歳にも禁酒を強いたわけだし」

提督「ご協力感謝します、のアルコールを提供してやんねえと……」

如月「そうね……千歳さんたち、どんなテンションになるのかしら」フゥ…

提督「そういや、如月は酒は飲めるのか?」

如月「えっ? え、ええっと……そういえば、飲んだこと自体、なかったかも?」

提督「そうか……考えて見りゃあ、酒なんて必要ないと思ってたもんなあ。うちの連中、どのくらい飲むんだ?」

如月「うーん、そもそもみんな飲んでるところ自体、見てないかも……??」

提督「……もしかしてこの鎮守府、全員酒のことを忘れてるくらい健全だったのか? それもすげえ話だな」

如月「そ、そうね……」

提督「そう考えると、改めて酒が入ったときが怖いな」

如月「……どうなるのかしら」
48 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2022/05/22(日) 12:46:17.71 ID:/FOkV/ZAo
今回はここまで。

次回は恐怖の酒宴の予定。
49 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:19:23.81 ID:iURvGzhHo
久々に平和なのを書いてるなあ、と思いつつ。

続きです。
50 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:21:16.14 ID:iURvGzhHo

 * その日の夜 *

 * 食堂 *

山城「はぁ……耳が幸せだったわ……」ウットリ

扶桑「お酒と一緒に、那珂ちゃんのライブまでいただけるなんて、幸せね」ウフフ

那珂「たっだいまー! 山城ちゃん、今日のステージどうだった!?」

山城「幸せよ……那珂ちゃんの歌を聞いてる時間は至福の時だわ」

山城「それなのに……」

明石「はーい、それでは引き続き、ビール早飲み競争でーす」

山城「そういう昭和的なくだらない催し物を、なんでライブの後にぶちこむのよっ!? ああ、不幸だわぁ……!!」

那珂「じゃあ、那珂ちゃんも出番だから行ってくるねー!」

山城「いやああああ! 那珂ちゃんは歌とダンスで売れればいいのよ!?」

山城「そんなバラドルか地下ドルかわからないようなことしなくていいのよぉおお!! お酒で喉がどうにかなったらどうするのおおお!!」

 ガヤガヤ…

 アハハハ…

提督「……盛り上がってんなあ」
51 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:22:01.51 ID:iURvGzhHo

如月「あらぁ、司令官〜」

提督「如月か。お前も飲んでるのか?」

如月「ええ。司令官もいかが?」

提督「いや、俺はいい……つうか思ってた以上に騒々しいな。いつの間にこんな企画してたんだ」

如月「こんなにみんなが騒いでるの、滅多にないからいいと思うんだけど?」

提督「まあ、そうだな……こんな馬鹿騒ぎ、そうそうやる機会もなかったしなあ」

如月「司令官はぁ、静かなのがお好み?」

提督「どっちかと言えばな。俺が大口開けて笑うようなタイプに見えるか?」

如月「ふふっ、そうね。それじゃ、見回りが終わったら、一緒に飲みません? 二人でゆっくり……」

提督「あんまり飲む気はないんだが……気が向いたらな」

如月「ええ、待ってるわ。うふふふっ」
52 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:22:45.87 ID:iURvGzhHo

 *

初雪「司令官、誘ってこなかったの……?」

如月「ええ。あとでゆっくり、お話しましょ、って」

初雪「ふぅん……」チビチビ

隼鷹「ふたりはお酒飲めるんだねえ」

如月「初めて飲んだんですけれど、ワインっておいしいのね、うふふっ」

初雪「悪くは……ない……」チビチビ

隼鷹「白ワインは魚料理に合うし、赤みたいに渋みもないからねえ。馴染んで来るとクセになるよぉ」ニヒヒ

隼鷹「けど、ビールとかと比べるとアルコール度数が高いから、チーズとか食べながらゆっくり飲むんだよー?」

大和「うふふ。うふふふふ……」ポヤー

隼鷹「って、ちょっとぉ!? なんで大和ができあがっちゃってんの!?」

陸奥「美味しいからってあっと言う間に飲んじゃったのよ……ほら大和、水飲んで、少し目を覚ましなさいよ」

大和「うふっ、うふふふひっく、んふふふっ」

榛名「こうならないように、二人は気を付けてくださいね」

如月「ええ、気を付けます」ニコニコ

初雪「はい……」コク
53 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:23:31.19 ID:iURvGzhHo

 *

利根「おお、提督、貴様も来ておったか」

神通「んぎゅ……」

提督「うん? お前が神通に肩を貸すなんて、どうしたんだ?」

利根「どうも酒に弱いようでな。しかも泣き上戸ときておる。少し外の空気に触れさせてやろうと思ったのだ」

利根「昔の話を語りだそうとしているし、ここでそれを言わせるのはよろしくなかろう」ヒソヒソ

提督「……大っぴらに話せる話でもねえしな。まかせていいか?」

利根「うむ、任せよ」ニッ

利根「それから、テレビ局の人間がこの島で亡くなった件、提督にはお咎めはなかったそうじゃな?」

提督「ああ、注意喚起をして、かつこちらの指示に背いた上での事故、って扱いになったからな。中佐がうまくやったんだろうよ」

利根「その朗報も、この馬鹿騒ぎの一因である。みなのことは大目に見てやってくれ」

提督「……ああ」アタマガリガリ

神通「んぅう……とねさぁん……」ヒック

利根「おお、では行くとするか」

提督「……」
54 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:24:15.92 ID:iURvGzhHo

 *

龍驤「おぉ〜、提督も来たんか。たこ焼き食べる?」

提督「んん……珍しいな、龍驤が厨房に入ってるのか」

龍驤「うち、下戸なんよ。お酒入ると気持ち悪くなってなあ……」

龍驤「飲んで一緒に騒いだりはできひんから、うちはこっちでお役立ちやー、っと」クルクルッ

提督「おお、うまいな。手慣れたもんだ」

龍驤「よっし! ほい、一皿分できたでー」

三隈「はーい、お持ちますね」

提督「三隈? お前が手伝ってるのか」

三隈「私もアルコールは苦手でして。消毒薬のにおいとか、そういうのでもちょっと……」

提督「なんだ、それで酒飲みの場所にいて大丈夫なのか?」

三隈「最上さんが羽目を外さないか心配なので、そこは我慢ですわ」

提督「過保護だな……そういやだいたい龍驤と一緒にいる雲龍はどうした?」

三隈「あちらで妖精さんたちと一緒に、龍驤さんが焼いたたこ焼きを召し上がってます」
55 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:25:00.70 ID:iURvGzhHo

提督「うん? 妖精たちもいんのか」

島妖精A「遅かったな提督」モグモグ

島妖精C「雲龍と一緒にお先にいただいてるよ!」グビッ

島妖精H「たまにはこういうのもいいね〜」

提督「お前らも酒飲んでんのか」

島妖精E「雲龍とシェアしながらね」

島妖精D「命の水だよ!」グビグビグビ!

提督「お前は水みたいに飲んでんじゃねえよ」

島妖精B「あ、提督、妖精ちゃん借りてるよー」

提督「ああ、うちの妖精もいるのか」

妖精「」スヤァ…

提督「……って、おい」

島妖精A「お前の連れは酒に弱すぎだ……」

提督「ま、いいけどよ……」
56 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:25:47.01 ID:iURvGzhHo

雲龍「……」モッキュモッキュ

提督「雲龍はくっそ幸せそうな顔してんな」

三隈「そ、そうなんですか? あんまり変わってない気がするんですけど……」

提督「雲龍はあんまり表情の起伏がないっつうか……ちょっとわかりづらいかもな」

三隈「……ちょっと??」クビカシゲ

龍驤「けどまあ、あんな嬉しそうな顔で食べてるの見たら、作る方も力が入るっちゅーもんや」

三隈(全然わかりませんわ……)

龍驤「実はうち、料理自体あんまりやったことなかったんよ」

提督「そうなのか?」

龍驤「先生の腕と教え方がええから、ぶっつけ本番でもやっていけてる感じやね!」

提督「へえ。誰に習ったんだ」

龍驤「長門!」

提督「ああ、なるほど。あいつも料理好きだしな」

龍驤「今回も長門がいろいろ作ってたから、うちが引き留めたんよ。厨房はいいから、飲めへんちびっ子集めて話し相手になれ、って」

三隈「正直、意外でしたわ。あんな風に駆逐艦に慕われる長門さん、少なくとも私は初めてお会いしましたから」

提督「長門は酒を飲んでるのか?」

三隈「どうでしょう? 見た感じウーロン茶のようでしたけど」

提督「ちょっと見てくるか」

三隈「はい、いってらっしゃいませ」
57 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:26:31.72 ID:iURvGzhHo

 *

提督「よう」

長門「おお、提督か」

朝潮「司令官! お疲れ様です!」ビシッ

暁「司令官もお酒を飲みに来たの?」

提督「いや、俺は飲む気はねえぞ。長門もそうなんだろ?」

長門「ああ、見ての通りウーロン茶だ。このテーブルは飲まない艦娘で集まっている」

電「電も、お酒は好きじゃないのです」

島風「酔って走ると気持ち悪くなりますしー」

敷波「飲めるって言えば飲めるんだけど、あんまりおいしいと思わないんだよねー」

長門「私もそのくちだ」

朝潮「私もです!」キョシュ!

潮「わ、私は、飲むと気持ち悪くなっちゃいますので……」

霞「私もまあ……似たようなものね」

提督「体調崩してまで飲むもんじゃねえからな。無理に飲ませようとする奴がいるなら俺が追い払うぞ」

長門「ああ、それならさっき暁がやってくれたぞ」

提督「なに?」
58 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:27:15.80 ID:iURvGzhHo

長門「私たちに千歳が酒を勧めてきたんだが、その返しが鮮やかでな」

暁「千歳さんが、お酒はレディーの嗜み、って言ってきたの。なんでもかんでもレディーにかこつけるのはどうかと思うんだけど」

提督「だな」

暁「それに、私の体はどう見ても子供でしょ? 私のような明らかな子供に向かってお酒を勧めるのは、大人としてどうなのかしら?」

提督「大人扱いはまだ早い、ってか?」

暁「ええ、自分のことなんだもの、レディーを自覚するなら私自身の体も正しく自覚するべきだと思わない?」

長門「と、まあ、私がフォローを入れるまでもなく、ぐうの音も出なくなった千歳は引き下がらざるを得なかったわけだ」

提督「何やってんだあいつは……」

長門「それに、私も誘われたんだが丁重にお断りしたばかりだ。素直に聞いてくれる相手で良かったぞ、なあ初春?」

初春「まったく……」ヌッ

提督「初春?」フリムキ

初春「なんじゃ、貴様もシラフか。長門が無理なら貴様とと思ったが……」

提督「初春は飲んでんのか」

初春「うむ。まあまあ、人並みには飲めると言うたところかの。できれば騒々しくない酒を、と思って来たんじゃが……あれを見よ」

提督「?」フリムキ
59 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:28:01.02 ID:iURvGzhHo

吹雪「あっはっはっは! 不知火ちゃん顔真っ赤!!」

不知火「……」カオマッカ

黒潮「あかんやん! いつゆでだこになったん! あはははは!!」

白露「たこ焼き食べながらお酒飲んで、ゆでだこ! あっはっはっは!」

朝雲「こーらー! みんな不知火で遊んでちゃだめでしょー!?」

山雲「あさぐもね〜ぇ〜、おちついて〜〜?」マッカ

吹雪「山雲ちゃんも赤い!! あはははは!」

白露「あっはっはっは、赤いのに3倍遅い!!」

黒潮「これがほんとの逆シャアやな! ナイチンゲールや!!」

朝雲「ま、まあ、確かに山雲は癒し系だけどぉ……」ニヨニヨ

不知火「朝雲、そのナイチンゲールはそういう意味ではありませんよ」

吹雪「不知火ちゃんツッコミが冷静!!」

黒潮「ぶはははは、笑かさんといて!!」

白露「あはははは! ところでナイチンゲールってそれ何のネタ?」

黒潮「知らんで笑っとったんかい!」ツッコミー

白露「逆シャアって言ったらサザビーじゃないの?」

黒潮「サザビーktkr!!」

不知火「黒潮。それは漣です」

吹雪「冷静! 不知火ちゃん冷静!! あっははははは!」
60 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:28:46.02 ID:iURvGzhHo

初春「わらわの傍には、どうも笑い上戸が固まったみたいでのう……」

提督「不知火と山雲は大丈夫なのかよ……」

初春「見た感じあまり飲んでおらんのだが、顔に出やすいタイプなんじゃろうなあ」

初春「あの手合いに酒を勧めるのも気が引けるしのう。もう少しじっくり話せる相手が欲しくて、提督はどうかと思ったんじゃ」

提督「飲まずに話を聞くだけなら……ん? なんだ?」

初春「あれは若葉じゃな。呼んでおるようじゃが、行ってみんか」

提督「そうだな。あんまり気乗りしねえが」

 *

武蔵「おい、あまり飲ませすぎるんじゃないぞ」

千歳「大丈夫ですよ、ささ、もう一杯」

筑摩「んふ、んふふふふっ」ヒック

最上「あはははは!」ヒック

比叡「あはははは!」ヒック

古鷹「楽しいですね!」ヒダリメピカーー

五十鈴「古鷹さん眩しい!?」

武蔵「本当に大丈夫なのか……?」

千歳「うふふふ、楽しい……!」ポワワー

武蔵「……ああ、千歳は自分が飲むより他人に飲ませるのが好きなのか。厄介だな」アタマオサエ
61 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:29:30.76 ID:iURvGzhHo

 *

若葉「……来てもらえたか、助かる」

大淀「うぐぅ……」グデェ

朧「んむう……」グデェ

初春「なんじゃこの有様は」

若葉「二人に絡まれて延々と愚痴を聞かされた。二人とも然程お酒には強くないようで、酔い潰れてしまったが」

提督「あー……どっちも内に溜め込みそうなタイプだからな」

若葉「それでだ、提督にこの二人を部屋へ連れて行ってほしいんだが」

提督「俺がか?」

若葉「ああ、是非。愚痴の大半は提督のことで、もう少しコミュニケーションを取ってもらいたい旨の話だった」

若葉「提督が部屋までエスコートしてくれれば、溜め込んだ不満も多少は解消されるだろう」

提督「朧はともかく、大淀に愚痴られてたってマジか? そこまで愛想悪くした気はねえんだが……」

若葉(……なるほど、これが朴念仁というやつか)

五月雨「て、提督! こっちも助けてもらえませんか……!」

提督「そっちはなんだ?」

由良「んゆへへへえ〜、提督さぁん? んが、んふゅ〜……」グデェェン

初春「由良殿……? これはまたひどいのう」ヒキッ
62 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:30:18.90 ID:iURvGzhHo

提督「おいおい、べろんべろんじゃねえか……どんだけ飲ませたんだよ」アタマオサエ

五月雨「こちらの缶チューハイを一本だけ……」

提督「マジか。ロング缶ですらねえのかよ」

摩耶「提督ー、こっちもなんとかしてくれよー」

提督「うん?」

霧島「うっうっ、ぐすぐす……」ヒシッ

鳥海「むにゃあ……まやあ……」ヒシッ

提督「両手に花ならぬ両手に眼鏡か。モテモテだな」

摩耶「そういう冗談はいいから、どっちか引き受けてくれよ。霧島さんこんなに泣き上戸だったなんて思ってもなかったしさ」

提督「引き受けろっつっても、見る限り、どっちもお目当てはお前じゃねえか。鳥海はともかく、霧島は他の金剛型呼ぶか?」チラッ

金剛「Hey テートク ? Would you call me ?」ヌゥッ

提督「うお。急に背後に現れるなよ……まあ探してたのは事実だが」

摩耶「もしかして金剛さんも酔ってんのか?」

金剛「Non-non-non ! I'm not drunk yet...」セナカニダキツキー

提督「……こりゃこっちも相当酔ってるな。ほれ、しっかりしろ」ナデナデ
63 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:31:16.84 ID:iURvGzhHo

金剛「Hmm... what a pleasant smell...」スリスリ

提督「鼻をこすりつけるな、犬か猫かお前は。それより金剛、霧島と鳥海と、どっちでもいいから見てやってくれよ」

金剛「? 霧島……? Why don't you cry ?」

霧島「金剛、お姉様……?」グスン

金剛「霧島……こんなに泣き腫らして……つらかったんデスネ。さぁ……Please come in」リョウテヒロゲ

霧島「こ……金剛お姉様ー!」ヒシッ

鳥海「んぅ……あ、いいなあ……」ヨロフラ

金剛「Okey, 鳥海も来るデース……!」

鳥海「……ふあぁい……」フラフラ ヒシッ

摩耶「……なんか、これはこれで面白くねーな?」

提督「金剛のハグは凶悪だからなあ。摩耶もいっぺん体験してみな、びっくりするぞ? 俺も溺れかけたからな」

摩耶「はぁあ!? ちょっと待て、お前もやってもらったってぇ!?」

提督「有無を言わさず頭をがっちりホールドされてな。途中で抜け出せてなかったら、俺もどうなっていたか……」

摩耶「それ、本気で言ってんのか?」

提督「ああ本気だ。真面目に恐怖を覚えたぞ? 嘘だと思うんならお前もやられて来い。耐えきったら手放しで称賛すっから」
64 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:32:01.37 ID:iURvGzhHo

摩耶「……どこまで本気かわかんねーけど、やべーんだな?」

提督「ああ。真面目にくそやべえ。なあ、五月雨? 金剛に頭なでてもらったとき、すごかったろ?」

五月雨「えっ? 金剛さんの……あ、はい、その、すごかったです……」ポ

摩耶「マジかよ……そこまで言うんなら、本当に洒落になんねーんだろーな」

提督「とりあえず霧島と鳥海の二人は金剛に任せて、由良を部屋に連れてくか。こん中じゃ一番重症っつうか見るに堪えねえ」

五月雨「は、はい、お願いします……ふわぁ」

提督「……五月雨も眠そうだな? お前も休むか?」

五月雨「え? あ、はい……そう、します……」

提督「ああ、その前に少し水飲んでこい。水分摂って体内のアルコール分を薄めると酒が抜けやすいって聞いたことがある」

五月雨「わかり、ました……」フラフラ

提督「あいつ大丈夫か?」

初春「ふむ、由良殿のことで安心して気が抜けたら睡魔がやってきた感じかの?」

若葉「そのようだな。五月雨も由良さんにすすめられるがまま同じものを飲んでいたが、お酒は初めてだったんだろう」

初春「しかし、すすめた当人があの弱さではのう……」

由良「えへぁ……」グデーン
65 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:32:45.94 ID:iURvGzhHo

摩耶「……あたしも鳥海を部屋に連れてくかぁ。どう見ても眠たそーだしなあ」ガタッ

提督「その方が良さそうだな。ほれ、由良起きろ。背負ってくからこっち向け」

由良「んふぇ〜」セオワレ

朧「……」ジロォ

大淀「……」ジトォ

若葉「……」ゾク

提督「若葉、悪いが朧と大淀は後で連れて行く。もうしばらく相手しててやってくれ」

若葉「……わかった。早めに頼む」

五月雨「お、お待たせしました」

摩耶「よーし、鳥海! 一緒に行くぞ!」

鳥海「ふわぁぁ……まやぁ……むにゃ……」ヨロヨロ

提督「じゃあ行くか」スクッ

由良「ん……んふっ、すん、すんすんすん……くふん」クンクン

 スタスタ…

若葉「由良さん、滅茶苦茶鼻を鳴らしてたな……」

初春「貪るように提督の背中の匂いを嗅いでおったのう」

若葉「……ところで、金剛さんは何を飲んでるんだ? 紅茶のカップで飲んでいたはずだが……」

初春「む、あれじゃな。ティーポットの傍らにブランデーが置いてある」

初春「うむ……ティーカップからもブランデーのにおいがするな。さては紅茶にブランデーを混ぜて飲んでおるのか」

若葉「さすが、金剛さんもしゃれたお酒を嗜むものだな」フーム
66 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:33:30.51 ID:iURvGzhHo
今回はここまで。しばらく酒飲みが続きます。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/07(火) 06:52:30.19 ID:FTiIddoO0
新しいスレになってた!
ずっと前のスレのレス番動かんなーって思ってよく確認してなかった更新有難い
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/07(火) 09:27:26.60 ID:IAnEq8n40
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>>67みたいな低脳荒らしは日本語読めないのか
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/08(水) 14:00:54.65 ID:QkBe3r++0
乙です。あの、そろそろ罠だらけの方を…‥
70 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:25:15.25 ID:dPdn6WLgo
>68
冒頭のお断りは、私がレスを返すかどうかの最低限の基準として書いたつもりです。
なので、気に入らなくとも触らずスルーしていただけると助かります。

>69
少しずつ話がまとめられそうになってきたので、
先ほど少し落として参りました。

では続きです。
71 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:26:02.42 ID:dPdn6WLgo

 *

筑摩「利根姉さんはどこか抜けてて、すぐ私に『ちくまあああ!』って涙目で走ってくるイメージがあったんです」

最上「うんうん」

筑摩「余所で会う私はいつも利根姉さんを心配してて、嬉しそうに利根姉さんをお世話してたんです」

最上「うんうん」

筑摩「それが、こちらの鎮守府ではとても頼りにされてて、どんなときでも落ち着いてるって言うから驚きで」

最上「そーだねー」

筑摩「あれ以来、一緒にいて優しく声をかけてもらえて……まさか甘やかさせてもらえる日々が来るなんて、もう幸せで幸せで」キラキラッ

最上「うんうん」

古鷹「あ、甘やかしすぎは良くないです! 鎖で縛られて介護されちゃいますよ!?」

最上「何の話だい?」

五十鈴「唐突過ぎるわ……」
72 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:26:46.64 ID:dPdn6WLgo

武蔵「おい千歳、ちょっと飲ませ過ぎじゃないか」

千歳「いいんですよ、楽しいお酒なら飲み過ぎってことはないんです」

武蔵「どういう理屈だ」

千歳「私、悲しいときとか、怒っているときは、お酒を飲まないようにしてるんですよ」

武蔵「んん? それもどういう意味だ」

千歳「お酒を飲むと、その前にお酒を飲んだ時の記憶がよみがえるらしいんです」

千歳「泣きながらお酒を飲むと、次に飲んだ時にその記憶がよみがえって、楽しい席でも思い出して泣いてしまう、という……」

武蔵「それは本当か?」

千歳「泣き上戸とか怒り上戸とかあるじゃありませんか。説教を始める人もそういうことなんですよ」

武蔵「……むう」

千歳「そういうわけなので、楽しいお酒はじゃんじゃん勧めるのがいいんです!」ギャンッ!

武蔵「ほどほどにしてやれと言うんだ!」

三隈(武蔵さんも苦労人の一人になりそうですわね)
73 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:27:31.01 ID:dPdn6WLgo

 *

初春「おお、早いな。戻って来たか……って、上着はどうしたんじゃ」

提督「由良に取られた」

若葉「……それでTシャツ一枚なのか」

提督「取り返す時間も惜しいんで諦めて来たんだ。ともかく次は朧を連れて行くぞ」

若葉「摩耶さんはどうしたんだ?」

提督「五月雨を部屋に連れてってもらってる。由良を背中から引っぺがすのに手間取ったもんで、見かねて助け船出してくれたんだよ」

朧「……」

提督「ほれ、朧、こっち向け。部屋まで連れて行くぞ」シャガミ

朧「! ……んふ……」セオワレ

提督「じゃ、行ってくる」

初春「うむ。気を付けてな」

朧「……んん……」スリスリ

潮「朧ちゃん、嬉しそう……」

敷波(朧のあんな笑顔、見たことないんだけど)

霞(ったく、だらしないわね……)ムスー

電(電も、おんぶしてほしいのです……)ムスー
74 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:28:16.83 ID:dPdn6WLgo

 *

扶桑「ふふふ……少し、飲み過ぎたかしら」

山城(ああ、お酒を飲んでほんのり赤くなってる扶桑お姉様……なんてお美しい)ウットリ

扶桑「あら。朧ちゃん、提督に背負ってもらってるなんて、羨ましいわ」ホゥ…

山城「扶桑お姉様!? えも言われぬ色気を振りまきながら何を言ってるんですかぁ!? ああ、不幸だわ……!!」アタマカカエ

那珂「山城ちゃん、大丈夫? お酒で気分悪くなったりしてない?」

山城「え? え、ええ、大丈夫、大丈夫よ。私は大丈夫……はぁ」

那珂「すっごい落ち込んでるように見えるんだけどなあ」

山城「大丈夫よ……それより那珂ちゃんこそ、ステージ終わってから結構飲んでたじゃない。無理してないでしょうね?」

那珂「ふふふっ、だーいじょーうぶ!」

那珂「アイドルたるもの、ちょっとくらいのお酒で我を忘れたり、みっともない姿は見せたりはしないんだよーっ!」ビシッ

那珂「でも、山城ちゃんが心配してくれて嬉しいなっ! いつもありがとーー!」ダキツキー

山城「ふぉああああ!? ちょっ、ちょっとぉぉ!?」ギュー

扶桑「まあ、那珂ちゃんったら、羨ましいわ。私も山城に抱き着こうかしら」ダキツキー

山城「どういう理屈ですか扶桑お姉さむほぁあああ!?」ギュギュー

扶桑「あら、嫌だった?」

山城「嬉しくてどうにかなっちゃいそうです……」カオマッカ

那珂「嬉しいんだ! やったねっ!」ムギュー

山城「何? なんだか幸せ過ぎて揺り返しが怖いんですけど。私、死ぬの?」
75 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:29:16.32 ID:dPdn6WLgo

 *

明石「山城さんは相変わらずねえ。いい加減自分の幸せを素直に認めればいいのに」

伊8「……ああ言うのを尊死(とうとし)って呼ぶんでしたっけ」

足柄「……」グッタリ

明石「ほらー、足柄さん飲み過ぎですよー。しっかりしてください」

足柄「ぐう……なんで二人ともそんなにお酒が強いのよぉ……」

伊8「うーん……体質、ですかね?」

明石「私もそうかなあ。それよりも、この程度のお酒で手元が狂ったなんて言ってられませんからね、工作艦として自負と言いますか!」フンス

明石「こういうのは確固たる意志というか、自制心っていうか……セルフコントロールっていうものが大事なんじゃないかなぁ」

明石「その意味では、提督もお酒強そうなんだけど?」

伊8「……なんか、まだ一緒に飲める感じじゃないみたい」

明石「飲めるんだったらお相手してほしいなあ」

伊8「ねー」

足柄「……ね、ねえ……おみずちょうだい……」

明石「ロシア語でウォッカは水って意味でしたっけ?」

足柄「……そういうボケはいいから……」
76 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:30:00.97 ID:dPdn6WLgo

 *

摩耶「うーっす、戻ったぜ……って」

金剛「Zzz...」

霧島「むにゃぁ……」

比叡「すやすや……」

榛名「あら、摩耶さんおかえりなさい」

摩耶「金剛型が固まって寝てる……榛名さんは大丈夫なんすか?」

榛名「ええ、榛名は大丈夫です! いまのところは!」

摩耶「いまのところっすか……霧島さん、霧島さん、こんなところで寝ちゃ駄目っすよ」ユサユサ

霧島「ん……摩耶……?」

摩耶「大丈夫っすか? 霧島さん、酔って寝てたんですよ」

霧島「……わ、私としたことが……」カオマッカ

榛名「とりあえず、金剛お姉様たちも起こして部屋に連れて行かないと……」
77 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:30:45.76 ID:dPdn6WLgo

霧島「そ、そうね。金剛お姉様、比叡お姉様!」

比叡「……ふにゃ?」

金剛「Hmm... Goog morning...」メコスリ

霧島「金剛お姉様、ここは食堂です。お部屋に戻っておやすみしましょう」

金剛「Woo... Okey. Follow me everyone, let's go to our bed...」ヨロフラ

霧島「金剛お姉様、本当に大丈夫ですか……?」ヨコカラササエ

比叡「私も眠くなっちゃったし……一緒に行きます!」ヨコカラササエ

榛名「私もご一緒します!」

摩耶「あ、榛名さんはいいっすよ。あたしが霧島さんたちについていきますんで」

摩耶「あっちのテーブルの隼鷹さん、誰か見てないと駄目なんすよね?」

摩耶「ぱっと見、みんな酔ってるっぽいし、万が一のために榛名さんはあっちのテーブルについてて大丈夫っすよ」ニッ

榛名「それは確かに……では、お姉様たちはお願いしますね」ペコリ

金剛「テートクゥ〜、ドォコ、デースカァ〜、ひっく」フラフラー

霧島「こ、金剛お姉様! しっかりしてください!」

摩耶「やべっ、もう行っちまったのか! おーい、金剛さーん!」タタッ

榛名「……ふふっ」ニコニコ
78 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:32:00.86 ID:dPdn6WLgo

 * *

白露「すかー……」Zzz...

吹雪「ふぴゅー……」Zzz...

黒潮「んすー……」Zzz...

朝雲「むにゃあ……」Zzz...

山雲「くー……」Zzz...

不知火「……」チビチビ


隼鷹「なあなあ、あの辺のちびっ子たちが揃って酔い潰れてんだけど、大丈夫?」

榛名「お酒飲んで大笑いしてましたから、笑い疲れて寝てしまったんでしょうね。後でお部屋に連れて行きましょう」

如月「うふふー、みんなハイペースで飲むからぁ、すーぐ酔っちゃうのよね〜」ポワワ〜

初雪「うん……」カクンカクン

隼鷹「かくいうこの子たちも怪しくないかい?」ヒソヒソ

榛名「はい……でも、こちらのほうがもっと心配です」ヒソヒソ

大和「うう、提督……早く戻ってきてえ……」メソメソ

陸奥「……」ナデナデ

隼鷹「そうだねえ……大和は子供っぽいし、陸奥もやたらと大人しいし……見たことないよ、こんな菩薩みたいに悟り開いたような陸奥」
79 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:32:46.07 ID:dPdn6WLgo

榛名「そうなのですか?」

隼鷹「うん、余所で会った陸奥ってば、お酒入るとお色気マシマシだよ?」

榛名「マシマシですか」

隼鷹「なんかここの陸奥はそういう感じじゃないんだよねえ……にしても、榛名は全然変わんないねえ?」

榛名「うーん……これまでお酒をこんなに飲んだことはなかったのですが、強かったのかもしれませんね」ニコー

隼鷹「そっかあ……お、提督戻ってきたねえ……って、えええ?」

榛名「!?」




提督「はー、やれやれ……」

初春「む、戻っ……どうしたんじゃその恰好は!?」

若葉「なんで上半身裸なんだ」

 ドヨッ!

提督「朧にTシャツ奪われた。面倒臭ぇからそのままにしてきただけだ」
80 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:33:46.26 ID:dPdn6WLgo

 *

伊8「オゥ、提督、大胆……」ポ

扶桑「まあ。うふふ、提督ったら……」ウットリ

山城「んな、なああああ!?」カオマッカ

那珂「はわわわわ……!」カオマッカ

明石「あー、あれが噂の。確かに全体的に見ても細いなあ、あの体のどこにあの握力があるんだろ……」

伊8「あとで調べてあげたら? 定期的に検査してあげるとか。はっちゃん、お手伝いしますよ?」

那珂「そ、そういえば、提督さんが医療船に行ったとき、明石ちゃんがお医者さんしてたよね〜?」アセアセ

明石「残念だけど、私には人間の医療に関する知識がないからできないよ。ほら、個体によって得意分野が違うし、ね?」

那珂「うーん、そっか〜」

扶桑「あら、残念。私も白衣を着てお手伝いできればと思ったんだけど」ウフフ

山城「扶桑お姉様のナース姿……!? ああああ、駄目、駄目よ山城!! 一瞬でも看てもらいたいだなんて思っちゃ駄目ぇぇ!!」ブンブン

伊8「山城さん、さっきから煩悩垂れ流しなんだけど?」

扶桑「可愛いでしょう? 山城はとっても素直なの」ナデナデ

山城「あ、あの、扶桑お姉様、冷静に言われると大変恥ずかしいのでご容赦願いたいのですが」カオマッカ
81 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:34:30.77 ID:dPdn6WLgo

 *

敷波「あーあ、司令官、また上着取られちゃったみたいだねー」チラチラ

島風「うっわぁ、提督ほっそーい!」

朝潮「おお……司令官の体は引き締まっていますね! 初めて拝見しました!」キラキラキラッ

暁「こんなところで脱ぐなんて、司令官、お行儀が悪いわ!」プンスカ

敷波「それ、お行儀って言うのかな……」

潮「ふああ……!?」カオマッカ

電「はわわわわ……!?」カオマッカ

霞「んななな、なにやってんのよあいつは……っ!?」カオマッカ

長門「……ここにいる面子には、少し刺激が強すぎたみたいだな?」

敷波「電はなんで恥ずかしがってんのさ。この前、電が司令官の服を脱がしたじゃない?」

電「ほえっ!?!?」

島風「えっ、それ本当!?」

暁「それはそうだけど、あの時、電は寝てたから見てないわよ?」

敷波「あ、そっか。あの時は寝惚けてて服掴んで離さなかっただけだもんね」

電「そ、それでお部屋に司令官さんの服が……は、はわわ……」ユゲボシューーー

長門「返してなかったのか……」
82 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:35:17.43 ID:dPdn6WLgo

島風「それじゃ、提督には代わりに私の服の替えを貸してあげるといいかな?」

長門「何故そうなる!?」

島風「提督も足が速そうだよ? 陸上選手みたいで風を切って走りそう! お揃いの服でかけっこしたーい!」ガタッ

長門「着せるのはやめておけ……」

朝潮「司令官は短距離走は苦手だそうですよ?」

島風「なーんだ、つまんない」ストン

島風「あっ、でも私の服を着せたら速く走れるかも!」ガタタッ

朝潮「その服にそんな効果が!?」ガタガタッ

霞「そんなわけないでしょっ!? 座んなさい!!」
83 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:36:00.95 ID:dPdn6WLgo

 *

雲龍「龍驤、大変」

龍驤「うん? なにしたん?」

雲龍「三隈が上半身裸の提督を見たら固まって動かなくなったの」

三隈「」コウチョク

龍驤「なんや、おぼこいなあ」アハハ

龍驤「って、裸やて!?」バッ

雲龍「ええ。ほら、あそこ」

龍驤「うわ、ほんまや! 提督なにしとん! つうかほっそ!! 細すぎやん!?」

雲龍「そうなの?」

龍驤「え? そうなの……って言われると……うーん」

龍驤「うちが前にいた鎮守府の男どもが軒並みデブやったからなあ。提督くらいが標準? いやでもちょっと細いよなあ?」

雲龍「……ごめんなさい、今の時代の普通というのがわからないから、私はなんとも……」

龍驤「あ、そっか、ごめんな?」

雲龍「ううん、いいの、大丈夫。私こそごめんなさい」
84 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:37:00.47 ID:dPdn6WLgo

雲龍「それより。提督、確かに痩せてはいるけど、不健康な感じはしないと思う」

龍驤「そう、やなあ。細っこい割りに大淀背負えてるし……て、裸で背負うんかい。大淀がパニクっとるで」

雲龍「龍驤もおんぶしてあげようか?」

龍驤「んー、おんぶより抱っこの方がええなあ。おんぶやと雲龍の顔が見えへんし」

雲龍「」キューン

雲龍「もう……好き」

龍驤「だからなんやねんこの流れ」


妖精「仲がいいのは良いことだね」←起きた

島妖精H「尊いとも言うね」ポワァァ

島妖精B「これはあれだな。ご馳走様という奴だな」

島妖精D「ごっちそーさまが聞っこえない〜」ヒック

島妖精E「Dちゃん飲み過ぎ……」タラリ

島妖精A「何杯目だ……」
85 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:37:45.88 ID:dPdn6WLgo

 *

若葉「ここに来る前に何か羽織るものを持ってくるとか、できなかったのか」

提督「急いでくれっつったのはお前だろ。俺の部屋回ったんじゃ遠回りだからな。それにあとは大淀だけなんだし」

若葉「それは、まあそうだが」

大淀「……」ウツラウツラ

提督「おい、大淀、こっち向け」

大淀「ふぁ……あ……!?」ボフッ

提督「大淀、顔赤えな。飲み過ぎたか? 大丈夫か」

大淀「ふぇっ、ひょ、ほえええ!?」オロオロアタフタ

提督「なにやってんだ、落ち着け」

初春(提督が裸だからじゃろうにのう?)

若葉(あれだけ提督のことで管を巻いておいて、いざ目の前にすると怖じ気づくというのはどうなんだろうな……)
86 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:38:30.67 ID:dPdn6WLgo

 *

明石「うわー、大淀テンパってるなあ」

伊8「意外とウブだったんですねえ。狼狽えてないで、そのまま襲えばいいのに。まどろっこしい」

那珂「!?」

山城「!?」

扶桑「まあ、はっちゃんは過激ね。うふふ」

伊8「そうかなあ。据え膳だと思うけど?」

明石「足柄さんはどう思います?」

足柄「……」グロッキー

那珂「足柄ちゃん、お部屋に連れて行って寝かせたほうがいいと思うなー」

足柄「ちゃ、ちゃん付けはやめて……うぐぅ」
87 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:39:31.70 ID:dPdn6WLgo

 *

隼鷹「戻ってくるたびに脱げてるとか、なんのコントだよ……ねえ榛名?」

榛名「……」ガンミ

隼鷹「目が血走ってる……」

如月「んもう、司令官ったらぁ……そういうのは、安売りしないで取っておいて欲しいのにっ」ジッ

隼鷹「駆逐艦の口からこういうコメントが出てくるのってーのは、どうなんだい……?」

大和「……」ウットリ…ジュルリ

隼鷹「ちょっ、大和、よだれよだれ!」

陸奥「……///」

隼鷹「陸奥もなんで両手で顔を隠してんのさ……」

陸奥「……」ユビノスキマカラ チラッ

陸奥「……!///」カオヲカクシテウズクマリ

隼鷹(なに? ここの陸奥って乙女なの?)

初雪「……隼鷹、さん」クイクイ

隼鷹「んお? な、なに?」

初雪「そろそろ、寝ます。おやすみなさい……」ペコリ

隼鷹「お、おお、おやすみぃ……って、ちゃんと部屋に戻れんの?」

初雪「司令官に……ついてく……」ヨロヨロ

隼鷹「あー……気をつけてなー?」

榛名「……」ハナヂポタポタ

隼鷹「ああ、榛名ってば見過ぎ見過ぎ! 鼻血出てるぞー!?」
88 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:40:30.60 ID:dPdn6WLgo

 *

提督「ほれ、大淀、背負って部屋まで連れてくから、早く乗れ」

大淀「へ、ほぇっ……っ!?」

提督「ここで寝ても面倒見切れねえんだ。早くしろ」グイ

大淀「!? !?!?」キョロキョロ

初春「鳩が機銃掃射食らったような狼狽っぷりじゃな」ポツリ

若葉「口をぱくぱくさせて金魚か鯉のようだが」ボソッ

提督「おい大淀、背中であんまり動くな。しっかりつかまってろ」グイ

大淀「〜〜〜〜〜!?!?!?!?」カオマッカ

初春「おお、提督の背中に密着じゃな」

提督「あと、肩を掴むんじゃなくて、腕は俺の首の前に回せ。落ちるぞ」グイ

大淀「」シロメ

若葉「背中とはいえ、抱き着きたいという希望は達成できたようだな。良かった良かった」ウンウン

初雪「……」ヨロヨロ

提督「ん? どうした初雪」
89 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:41:15.97 ID:dPdn6WLgo

初雪「……眠いから……お部屋に、戻る……」

提督「そうか。よし、んじゃあ初雪も一緒に部屋まで送ってくる」

初春「む、少し待て。大淀殿、背負われてるときに気を失っておると危ないぞ」オシリペチーン

大淀「はうっ!?」

提督「お、悪いな。んじゃ、行ってくる」

初春「うむ、気をつけてな」

若葉「初雪もいることだし、慌てないでゆっくり行ってきていいぞ」

提督「おう。じゃ、行くか」

初雪「……」コクン

大淀「え、ちょ」

 スタスタ…

初春「……ふむ、行ったのう」

若葉「これで一安心だ。さて、飲み直すか……初春姉、付き合ってくれ」

初春「うむうむ。ゆるりと語り合おうではないか」
90 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:42:15.66 ID:dPdn6WLgo

 *

長門「……私もそろそろ行くか」ガタッ

潮「えっ?」

長門「ああ、みんなはまだ食べててもいいぞ。酔い潰れた吹雪たちを部屋に連れて行こうかと思ったんだ」

敷波「あー……」

朝潮「そういうことでしたらお手伝いします!」ガタッ

霞「そうね、朝潮型もいることだし、手伝うわ」スクッ

島風「私も競争したい!」ガタッ

敷波「やめときなよ、走って運んだら気持ち悪くして吐いちゃうかもよ?」

島風「おう……っ」

敷波「あたしが行くから、代わりにあのテーブルの上を片付けといてよ。ね?」

暁「そうね、お片付けは引き受けるわ。こっちのテーブルのごみも一緒にまとめましょ?」

長門「そうしてもらえると助かる。朝潮と霞、敷波は一人ずつ背負って行ってくれ。私は二人抱きかかえて行こう」

朝潮「了解です!」ビシッ

電「それじゃあ、私たちは飲みかけのジュース以外を片付けるのです!」
91 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/08(水) 22:43:15.82 ID:dPdn6WLgo

吹雪「すぴーー……」

敷波「あー、みんな寝入っちゃってるなあ」

長門「不知火は大丈夫か?」

不知火「……はい」ハナヂポタポタ

長門「不知火!?」

霞「鼻血出てるわよ!?」ティッシュサシダシ

不知火「不知火に何か落ち度でも」ヒック

敷波「落ち度しかないんだけど?」
92 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2022/06/08(水) 22:44:02.02 ID:dPdn6WLgo
今回はここまで。
酒飲み回は結構長くなりそうです。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/11(土) 14:03:18.84 ID:p+NTkysTO
初投稿−!更新お疲れ様です。まとめて読んだので少し前になるのですが、龍驤がたこ焼き作って雲龍が食べる……あり?イメージできるのに同時にうちの脳内で笠松食堂を壊滅したあの馬娘と面倒見の良い小さな雷馬娘も脳内で……次回作、のんびり待ってます!
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/11(土) 15:16:29.41 ID:GWpf1e8z0
アゲガイジはなぜ学習できないのか
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/12(日) 04:23:33.58 ID:K8LjNZPs0
今時半年ROMれと言っても通じないだろうから
そもそも学ぶ気も機会も無いようにも思う
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/15(水) 18:05:37.60 ID:tT2QQd0w0
作者が気に入らなくとも触らずスルーしていただけると助かります。 って言ってるにも関わらずこれだもんなぁ
自治ガキに粘着されて可哀想すぎる むしろスルー力を学ぼうとしない低脳ヤバすぎだろ
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/15(水) 22:06:29.52 ID:sa6gmUZg0
別にもう無視すればいいじゃん相手するだけ無駄腹立つなら枕でもサンドバッグにして殴ればいい
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/15(水) 23:05:14.89 ID:XfqUe6BL0
ここのスレ見て楽しみたいのはageてくる奴含め皆同じなんだからそういう奴いたら即sageてわかってねえなって思っとけ
噛みつかなけりゃ空気も悪くならんやろ
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 10:59:05.16 ID:3KiZDclU0
作者さんが大人過ぎて好き発狂したい
100 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:33:47.01 ID:zdm+Pb74o
鼻で嗤っておきましょう。

では続きです。
101 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:35:47.98 ID:zdm+Pb74o

 *

如月「ああ〜ん、やっと戻って来てくれたぁ、しれぇか〜ん」フラフラッ

提督「……おいおい、すっかりできあがってんじゃねえか」

隼鷹「提督が来るのが遅いからだよ〜。駄目だよ、お酒弱い子を待たせちゃあ」

提督「その如月より弱い奴等をケアしてきてたんだが……」

如月「なんでシャツを着ちゃってるのぉ〜? 脱いでてくれて良かったのにぃ〜」ピトッ

陸奥「……」ポ

提督「陸奥も顔が赤いな。大丈夫か?」

隼鷹(さっき裸を見せてた男が何を寝惚けてんだかねえ……)

如月「んふふふ〜、しれいかぁん……」ヨリカカリ

提督「っと、如月も大丈夫か? 気持ち悪くはないか?」ダキヨセ

如月「あっ……うん、しばらくこのままで……」ポ

大和(羨ましい……!)

榛名(羨ましい……!)

提督「気持ち良さそうにしてんな……悪酔いはしてなさそうだし、如月は割と酒は大丈夫そうだな」ダキカカエタママチャクセキ

如月「うん……」スリスリ
102 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:36:47.34 ID:zdm+Pb74o

隼鷹「……ちょっとだけ羨ましい」ボソッ

提督「は?」

榛名「えっ?」

大和「えっ?」

隼鷹「あ、いや、准尉にそういうことしたいって意味じゃなくてさ。ほら、あたし体が大きいっていうか、結構背が高いっしょ?」

隼鷹「だから、そうやって椅子に座って、その膝の上に乗っかって体を預けるとか、この図体じゃあしてもらえないし、できないよねえ……って」

隼鷹「そういうのは駆逐艦たちみたいな小さい子の特権だよねえ、って、思ったんだよー」

提督「ああ、なるほど。そりゃまあ確かにな」

隼鷹「そもそもそういうのってあたしのキャラじゃないしねえ?」

隼鷹「そういうのなしにしても、さすがにR提督と離れて長いし……如月みたいに甘える様子すら羨ましくなっちゃってねえ」

大和「それは確かに……」

隼鷹「それでつい、口に出ちゃったんだよねえ。ヤキが回ったもんだよ、あたしもさ」ハァ

榛名「胸中お察しします……」

陸奥「……」ナデナデ

隼鷹「うおっ!? なんで頭撫でられてんのあたし!?」ビクッ
103 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:37:46.63 ID:zdm+Pb74o

提督「陸奥はどうしたんだ?」

榛名「お酒を飲み始めてしばらくしてから、ずっとあんな感じでして……」

提督「菩薩か観音みてーな顔してんな。こんな酔い方してる奴、初めて見たぞ」

隼鷹「陸奥も何かあったの?」

提督「おう、あったぞ。むしろある奴しかいねえ。何があったかは各々の名誉のために伏せておくが」

榛名「そうなんですか……」

隼鷹「榛名も知らないの?」

大和「陸奥さんに関しては知らない人の方が多いのでは? 確か、暴食を強いられた、という話しか……」

提督「……それか?」

榛名「?」

提督「陸奥がいた前の鎮守府の提督が筋肉ダルマの格闘家だったんだが、そいつの方針で異常な量の食事を強いられてたんだよ」

提督「それがなくなって落ち着いて食事できるようになったから、安心しきってるのが表に出てきたんじゃねえかな」

隼鷹「うわあ……」
104 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:38:33.41 ID:zdm+Pb74o

榛名「あの、提督? 伏せておく話ではなかったんですか?」アセアセ

提督「大和が知ってる話から、差し支えなさそうな範囲で話したつもりだったんだが……まずかったかな」

陸奥「……」ニコニコ

隼鷹「めっちゃ穏やかだねえ……」

榛名「問題ないとみていいんでしょうか」

提督「さっきから一言も喋ってねえのは問題じゃねえのか。おい、陸奥、大丈夫か? 眠い時はちゃんと部屋で寝ろよ?」

陸奥「……」コクン

大和「頷いてる……一応、聞こえてるみたいですね?」

如月「……」ウトウト…

提督「如月も眠そうだな。このまま部屋に連れてくか……」スクッ

陸奥「……」スクッ

隼鷹「うおっ、びっくりしたぁ!」

提督「陸奥も寝るのか?」

陸奥「……」コクン

提督「そういうことなら送るか……一緒に行くか?」

陸奥「……」ニコ…

提督「そうか。んじゃ、ふたりを部屋に連れてくぞ」

榛名(……陸奥さん、さり気なく提督の服の裾を掴んでる……)
105 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:39:16.86 ID:zdm+Pb74o

隼鷹「はぁ〜、ここの提督も大変だねえ。これだけ大勢に頼りにされてちゃ、おちおち送り狼もできたもんじゃないね、いひひっ」

榛名「送り……狼、ですか?」クビカシゲ

隼鷹「ありゃ。もしかして、送り狼って言葉自体知らない?」

榛名「はい、恥ずかしながら……」

隼鷹「別に恥ずかしくもないよ〜、言葉自体がちょっとアレなんだから」

榛名「と、言いますと?」キョトン

隼鷹「送り狼ってのはさ、酔っ払った子をお見送りするだけじゃなくて、その先で食べちゃうってことだよ、性的にさ」ガオー

榛名「……」クビカシゲ

榛名「……!!」ボフッ!

隼鷹「ひひっ、反応がお子様だねえ」
106 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:40:01.98 ID:zdm+Pb74o

榛名「そ、そそ、そういう意味だったんですねっ」アセアセ

大和「……」ズーン

隼鷹「あれ? 大和はなんで落ち込んでんだい」

榛名「いえ、わかります。大和さんがなぜ落ち込んでいるのか……」

榛名「提督は……性行為を嫌悪してらっしゃるので……そのような事態は起こってほしくても起こりえません」ズーン

隼鷹「え、なにそれ」

大和「提督は、過去のトラウマで……そういうことが全部駄目なんです」グスッ

榛名「聞いた話では、そういう漫画を読んだだけで嘔吐したとも……!」プルプル

大和「なんで提督のような方がそのような目に!!」ナミダジョバーー

榛名「榛名も大丈夫じゃありませぇぇん!!」ナミダジョバーー

隼鷹(思わぬところで地雷踏んじゃったよ……)
107 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:41:01.68 ID:zdm+Pb74o

 *

川内「ふわぁ〜、おはよー……ってなにここお酒臭い!!」

加古「なんだ、もうみんな出来上がっちゃってるねえ」

那智「お前たちは寝すぎだ。川内は夜戦ばかりで昼夜逆転しているから仕方ないかもしれないが……」

加古「酒盛りするんだったら、もうちょっと早く起きてりゃ良かったねえ」

那智「無理だろう。爆睡してたじゃないか」ジトメ

川内「あたしは夜戦できなくなるからお酒はパスだね。食べ物だけ貰ってこようっと」

加古「あたしも残ってるお酒、もらってこようかね〜」

那智「それでは私は……」

武蔵「悪いが、シラフなら手伝ってもらえないか」

那智「ん?」

武蔵「ここのテーブルの酔った艦娘を、部屋に連れていきたいんだ」

千歳「んふふ……」ウトウト

最上「えへへへ……」ムニャー

筑摩「すー……」

足柄「ぐー……」

古鷹「スヤァ……」

那智「これはこれは……惨憺たる光景だな」
108 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:41:46.86 ID:zdm+Pb74o

三隈「最上さん、こんなところで寝るなんて無防備が過ぎますわ……!」

五十鈴「筑摩さんのお部屋ってどこだったかしら……」

武蔵「筑摩は私が運ぼう、五十鈴には自分で歩けそうな千歳を任せたい。那智には足柄を頼みたいんだが」

那智「構わないが……どれだけ飲んだんだ? 一升瓶やら四合瓶やらの空瓶がずらりと並んでいるんだが」

伊8「あ、それは、私と明石さんとで飲んだお酒です」

那智「……」

明石「いやあ、久々にがっつり飲んだなあ〜」ノビー

武蔵「足柄も一緒に飲んでいたんだが、早々に脱落してな。私も見ていたが、顔色も変えずに飲むわ飲むわ……」

伊8「武蔵さんも飲んでたでしょ?」

武蔵「お前たちほどではない。私も酒は好きな方だが、この二人の前に並んだ瓶を見るとな……」

那智「それにしても……汚い話で悪いが、これだけ酔い潰れてて誰も気分を悪くしていないというのもすごいな?」

明石「ああ、それに関しては提督から釘を刺されてて」

伊8「酔って吐くようなことがあったら、顔を掴んでジャイアントスイングする、ってお達しがありました」

那智「は?」

明石「うちの提督、握力がとんでもないんですよ」

伊8「本気出したら、頭骨も砕いちゃうかもってくらい」

那智「なんだそれは……」

明石「なのでみんな、セーブして飲んでましたねえ」

伊8「すごく健全な酒飲みでしたね」

那智「……」
109 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:42:31.64 ID:zdm+Pb74o

 *

隼鷹「ああもう、どうすりゃいいのさー!」

加古「なんかここだけ騒々しいね……なにがあったの?」

隼鷹「あ、加古……」

榛名「提督がもう不憫で不憫で……」グスグス

大和「いったいどれだけ不幸を背負えばいいのかと!」グスグス

加古「この二人はなんで泣きまくってんの?」

隼鷹「いやあ、ここの提督、性欲ってものがないとかって話になってねー」

大和「そうなんです!!」

加古「うおっ」

榛名「愛情も良くわからないと仰るんですよ!? あんなにお優しいのに!!」

加古「……そんなに泣くほど優しいの?」

大和「優しいですよ!? ちょっと口が悪いですけど!」プンスカ

隼鷹「そこは否定しないんだ」

大和「不器用なだけなんです!!」
110 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:43:17.08 ID:zdm+Pb74o

榛名「提督は、幼少のころから妖精さんとお話しできていたために、ご家族からすらも疎み蔑まれ……」

榛名「まともな愛情を受けることなく大人になったと聞いています。提督はそのためにあのような性格になったと……」

加古「うへえ……よくグレなかったねえ?」

大和「それは、提督と一緒にいた妖精さんが見守ってくれていたおかげだと思います……」

大和「ですが、人を好きになるという感覚を一度も理解することなく、提督は今日(こんにち)まで……」ウルッ

加古「そんじゃあ、なに? あの人は、あたしたちに愛情を持ってるわけじゃーなくて、憐れに思って助けてるってこと?」

大和「」

榛名「」

隼鷹「あー、そういうふうにもとれるねえ」

大和「け、決してそんなことはありません!!」

榛名「ないと思います!!」ブンブン

加古「そうは言うけどさ、来たばっかりの部外者って立場から見てみると……ねえ?」

隼鷹「ってーかさ? 提督がそういうコトに興味ないのを嘆いてるってことは、二人とも提督とそういうコトをしたいってことだよねえ?」ニチャア

大和「……それは、まあ、その、はい……」カオマッカ

榛名「……否定は、しません、けど……」カオマッカ
111 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:44:01.97 ID:zdm+Pb74o

隼鷹「二人とも、なんでそんなに提督が好きなのさ? 教えてちょうだいよ〜」ニヒヒ

大和「私は、その……一目惚れと言うか……最初はお写真だったんだけど、見た瞬間に、こう、昂ったというか……」モジモジ

隼鷹「ほうほう?」ニヤニヤ

大和「この離島の鎮守府で、提督の階級も准尉ということで、最初はものすごく落ち込んだのだけれど……」

大和「提督のお顔を見たときに、それを忘れるほどの衝動というか……この人のために、という思いが沸き上がってきまして……」ポ

大和「これまで提督とご一緒して参りましたが、提督はいつも艦娘が抱えた問題をすべて取り払おうとしてくださってて……」

大和「提督ほど私たちの身を案じ、そして我儘を聞いてくださる素敵な方は、ほかにいないと思います!」キラキラッ

隼鷹「それでアタックしてるんだねえ!」

大和「ええ、一度はこの身を捧げようとしたんですけれど、お断りされまして……後から話を聞いたら、そういう話だった、と……」ションボリ

隼鷹「えっ、提督に迫ったことあるの!?」ガタッ

加古(隼鷹の目が輝いてる……)

大和「はい……提督が、『俺の大和』と仰ってくださって……」ポ

隼鷹「マジで!?」

榛名「」ハイライトオフ

加古(こっちは目から光が消えた……!)タラリ
112 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:44:48.78 ID:zdm+Pb74o

大和「はい、あの時、提督があの男に向かって……あの男に……」ビク

大和「……あのおとこ……」アオザメトリハダ

隼鷹「ちょっ、どうしたの!? 顔色悪くない!?」

大和「ご、ごめんなさ……う゛っ」ガタッ

 タタタタッ…

隼鷹「な、なんだあ? 大和ってば、どうしたの?」

榛名「」ハイライトオフ

加古「こっちは目から光が消えたままになってるし……」

明石「あらら、大和さんたらトイレに行っちゃいましたか。提督のアイアンクローの犠牲者第一号かな?」

隼鷹「あっ、明石! 今、大和から聞いたんだけどさぁ、提督が大和のことを、俺のだー、って言ったのって本当?」

明石「え、そうなんですか?」

隼鷹「ありゃ? 明石も知らないんだ」

伊8「……それって、もしかして」

隼鷹「お、何か知ってる?」

伊8「多分なんですけど……」
113 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:45:32.82 ID:zdm+Pb74o

 * 中佐のことを説明中 *

隼鷹「ははぁ……そいつを思い出して大和がトイレに駆け込んだってことかあ」

明石「朝潮ちゃんも、中佐の見た目やらなにやらが気持ち悪かったって言ってたっけなあ」

伊8「あのあとですよね、大和さんを利用したみたいな気分になって、それで提督が落ち込んでたの」

明石「あぁ、あったあった、大和さんやら如月ちゃんやらが工廠の隅っこで体育座りしてたあの事件!」

加古「んーと……つまり、提督は中佐って奴を追っ払うために『俺の大和だ』って言ったんだね?」

伊8「結果的にはそうですね」

榛名「……!」ハイライトオン

加古(あ、戻って来た)

明石「まあ、たとえ提督の都合のいいように利用されたとしても、大和さんは提督のことを好きでい続けるんでしょうねえ……」

隼鷹「お、そこまで言う? なんでなんで? 教えてよ〜」

明石「……この島には、轟沈した艦娘が漂着してくるって言いましたよね」

明石「提督は昔、着任以前に漂着して長らく放置されてきた艦娘たちを、全員丘の上に埋葬してあげたんだそうです」

明石「その埋葬した艦娘の艤装の一部を妖精さんが集めて資材にして、その資材から建造されたのが大和さんなんですよ」

隼鷹「へええ!?」
114 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:46:18.02 ID:zdm+Pb74o

明石「しかも、その建造は提督じゃなくて、この島の妖精さんたちが建造ボタンを押したって言うんですから」

明石「それで建造された大和さんが最初から提督に好意を持っていても、まあ当然かなあ、って思うわけですよ」

加古「うわあ……」

隼鷹「榛名もそうなの?」

榛名「あ、いえ、私は違いまして……ここではない、別の場所の出身です……」

隼鷹「うん? なんでまた言い淀んでんの」

明石「なんか、鎮守府とはまた違う施設らしいんですけどね。胡散臭い施設なんで、あまり他言するなと提督から言われてまして」

加古「……」

明石「そこで、死ぬまで戦えみたいな指示が出てたらしいんですよ」

隼鷹「は? マジ?」

榛名「……本当です。その施設の人たちは、榛名たち艦娘を道具としてしか見ていませんでした……」

榛名「でも、この鎮守府の提督は、艦娘たちのことを……私のことを、ちゃんと『榛名』として見てくださいました……!」

榛名「榛名は、提督のお傍にいたい、少しでもお役に立ちたいと思って、この鎮守府にお世話になることに決めたんです」

加古「思ってた以上にハードな昔話ばかりで、ちょっと引くんだけど……」

隼鷹「はぁぁ……なんか、あたしがこの島に辿り着いた理由が、ちっぽけに思えて情けなくなってきたよ」
115 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:47:16.73 ID:zdm+Pb74o

隼鷹「もっと軽い理由でこの島に来た子とかいないの? 駆逐艦とかでさあ、そこまで重たい理由背負ってない子。いない?」

明石「うーん……セクハラから逃げてきたとか?」

隼鷹「それも十分重いよ〜。逃げなきゃいけない上官とかないよ〜」

伊8「じゃあ、訓練中に勝手に除名処分とか」

隼鷹「なにそれ!?」

伊8「沈んだ僚艦の捜索中に除名されちゃった子もいるんでしたっけ? 轟沈扱いにされちゃったって」

隼鷹「だからなにそれ!? 聞いたことないよ!? ひどくない!?」

榛名「捨て艦にされた子も何人かいましたよね?」

隼鷹「最悪なの来たよ!? しかも一人じゃないの!?」

加古「一応訊くけど、あくまで軽い方から言ってんだよね?」

明石「んー、まあ、悲惨じゃないほうから、かなあ。加古さんと同じで、大破進軍の子もいるし……」

加古「いるんだ……」

明石「あ、あと他に喋っても良さそうなのは大淀かな?」

明石「大淀は、日々の任務の中で解体任務がありますけど、あれをどうしてやらなきゃいけないのか、って、不思議に思っちゃったんですよ」

隼鷹「あー……」
116 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:48:02.69 ID:zdm+Pb74o

明石「だったら最初から艦娘を建造も解体もすることのない鎮守府へ行け、ということになりまして」

加古「それでここに来たってかあ」

伊8「それ、私も初めて知りました」

明石「あれっ、そうだった?」

伊8「はい。それが理由で、この鎮守府では建造任務も解体任務もないんですね」

明石「そうそう。それでこの鎮守府で建造された艦娘も、大和さんと武蔵さんだけ、っていう」

隼鷹「引き運、強すぎない?」

明石「さっきも言いましたけど、妖精さんが建造ボタンを押してますからね」

加古「ある意味、チートしてるってこと?」

明石「かもしれませんねえ」

伊8「あ、大和さん戻って来た」

大和「……はぁ、せっかくおいしくいただいていたのに」トボトボ

大和「あの男のことを思い出したら台無しになりました……」ガックリ

隼鷹「まあまあ、そういうのは飲んでパーッと忘れちゃおう!」

大和「……はい、そのように努めます」
117 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:50:17.02 ID:zdm+Pb74o

提督「やっと戻って来たぜ……ん? 加古も起きてきたのか」

加古「うん、ついさっきね〜」

提督「そうか……うん? 誰だ? 胃液臭えな」スン

大和「う……わ、私です。ここでお話ししていて、中佐のことを思い出してしまいまして……」シュン

提督「中佐? あー、そりゃお前にはどうしようもねえな……」

隼鷹「おや、明石の言った通りだ。理解あるねえ?」

提督「俺だとしても吐きたくなる相手だ。あれだけは悪い意味で特別扱いしねえとな……」

大和「うう……申し訳ありません」

提督「その辺を汚したりしたわけじゃねえなら、そこまで咎めねえよ。次から気ぃつけな」

提督「さてと……だいぶまばらになって来たな、そろそろお開きか。大和が戻ったのはついさっきか?」

大和「は、はい」

提督「てことは、腹が空っぽになったんだろ? 厨房行って、そばかうどんでも茹でてくるから、好きなの言いな」

大和「提督……!!」パァァッ

提督「酒飲みたちの締めにもなるだろ。どっちをどのくらい食べるか、紙に書いて誰か厨房まで持ってきてくれ」

明石「それなら、かけそば1人前お願いします!」ワーイ!

伊8「はっちゃんは、ざるうどん半玉で」

大和「私はおうどん二玉でお願いします!!」キャー!

提督「紙に書けっつったろ! 紙に! 覚えてらんねーよ!」

隼鷹「……なるほどねえ。こんだけ面倒見がいいんじゃ好かれるわ」

加古「そうかもしんないねー……」
118 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/19(日) 22:51:49.34 ID:zdm+Pb74o
今回はここまで。

遅くなりましたが大和改二おめでとう! アーケードにも早く来てください!
119 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:03:04.77 ID:wYAXYJaXo
それでは続きです。
120 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:04:01.92 ID:wYAXYJaXo

 * 執務室 *

提督「やれやれ……やっと解放されたか」

 扉<コンコン

提督「うん? 誰だ」

那智「那智だ。加古も一緒だが、いいだろうか」

提督「おう」

那智「失礼する。大変だったな」ガチャ

加古「お邪魔〜」

提督「……なんだその酒瓶」

加古「いやあ、提督が飲んでないっていうからさ。ちょっと付き合ってくんない?」

提督「俺か?」

那智「私は禁酒中なのでな。話に付き合うのは構わないが、酒は無理だぞ、と言ったところ、貴様はどうかという話になったんだ」

加古「日本酒とウヰスキーとどっちがいいかなあ?」

提督「……」
121 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:04:47.27 ID:wYAXYJaXo

加古「前の鎮守府の話を愚痴りたくなってさあ。聞いて欲しいんだよねえ」

提督「俺はそんなに飲めないぞ?」

加古「いいよいいよ、グラス置いとくだけでいいから。雰囲気でさ!」コトッ

提督「そういうもんか?」

加古「とりあえずウヰスキーでいい?」トクトクッ

提督「注いでから訊くなよ……ま、いいけどよ」

那智「おっと、私の分はいらないぞ。飲まないのに酒を開けてはもったいない」

加古「そう?」

那智「ああ。それに私は麦茶を持ってきている」

加古「んー、まあいいか。そんじゃあ、乾杯!」

提督「ん……」チン

那智「うむ、乾杯」チン
122 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:05:31.71 ID:wYAXYJaXo

提督「……」ペロッ

提督「くあっ!! ……やっぱ舐めただけでもきついな」

那智「水割りにするか? 氷と水を持ってくるが」

提督「いや、いい。水割りなんざ、もっとうまいと思った記憶がねえ……あんなもん水で薄めたコーヒーと一緒だ」

那智「ほう……!」

加古「提督ってば辛党?」

提督「いいや、好みは薄味だが」

加古「ってことは、作り方がまずかったんだろうねえ……」

提督「そういうもんなのか?」
123 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:06:31.64 ID:wYAXYJaXo

 *

加古「はー……今だから言うけどさ。遠大佐の変貌は本っ当ショックだったね、改めて考えても」

提督「そいつはまったくだ。ありゃあ、あんな奴の下で働いてたのが運の尽きだとしか言えねえな」

加古「今思うと、あんな連中のために轟沈したのも馬鹿みたいだねえ……」

提督「しょうがねえよ。誰だって追い込まれりゃあ正常な判断なんてできなくなるもんだ。まして歯向かえる立場でもねえしな」

加古「……そりゃあねえ」

提督「あいつ、もともとは留提督が加古や鳥海を轟沈させた尻拭いのために、この島に来たんだよな?」

加古「うん。ぶっちゃけ、雷の話で頭からぶっ飛んでたけど……」

提督「もし、あいつがお前たちを轟沈させてなかったら、そのまま提督の交代劇が始まってたってことだよな?」

加古「あーそっか、あいつがずっと提督になってたのかぁ……うあぁ、絶対やだなあそれ。鹿島が可哀想なことになってるよ」

提督「とはいえ、遠大佐のままでもまずかったんじゃねえの?」

加古「うーん……それもそうだね。遠大佐のままでも、ストレスたまってただろうねえ」

提督「ついでに足柄と千歳も、L大尉と一緒に神戸に行ってた可能性があるわけだな」

加古「うん? そりゃまたなんで?」

提督「留提督たちがこの島の案内役としてあの二人を連れてきたんだ。どういう経緯で声をかけたのかはわかんねえが……」
124 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:07:16.62 ID:wYAXYJaXo

那智「加古たちが轟沈していなければ、いろいろと結果が変わっていた、ということか……」

提督「沈んだのが加古だけとか、鳥海だけとかでも、少し変わっていたかもな」

那智「……しかし、面識がないから訊くが、遠大佐とはどんな人物なんだ?」

提督「駆逐艦にうつつを抜かした挙句、童子返りを起こしたおっさん」

那智「……」

加古「人柄ってだけで言えば、面白みの少ない真面目なおじさんだね。ちょっと意固地で融通の利かない、小難しいところもあるかな」

那智「真面目なのに駆逐艦にべったりになったのか?」

加古「駆逐艦って言うより、過度に甘やかしてくれた相手にべったりになっちゃったんだろねえ、遠大佐は」

那智「むう……甘えて欲しいなどと言う駆逐艦の方が希少ではあるか」

加古「それでさあ、あたし、実は二、三度、駆逐艦の言うこと聞き過ぎじゃないか、って感じに、軽ーく窘めたことあるんだけどさ」

加古「その時に、親の仇かってくらいの目で睨まれたんだよね」

那智「その駆逐艦に、すっかり丸め込まれてたと?」

加古「丸め込まれたっていうか、望んで依存してたんじゃない?」

加古「睨んできたときの顔を見て『あー、こりゃ何を言っても駄目だ』って思っちゃったのは確かだね」
125 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:08:01.68 ID:wYAXYJaXo

提督「それで早々に見切りをつけたと。お前は遠大佐のところに着任してどのくらいだ? 雷は長いのか?」

加古「あたしは半年よりちょっと長いくらいかな。雷はほぼ最初からいた最古参の一人らしいよ」

提督「実力的に、あの艦隊じゃあ五指に入るとかって聞いたが?」

加古「そりゃ重巡があたししかいなかったからだよ。それで出番が多くなって、その結果、練度も高くなったんだよね」

加古「重巡2人目の鳥海が来たのもあたしの2か月後くらいだったから、一応、重巡のなかじゃああたしが一番古株になるかな?」

那智「少なかったのは重巡だけか?」

加古「そうだねー。他の艦種は満遍なく……あ、でも、空母は意外と多かったかな? 駆逐艦も多いけどそれはそれである意味普通だし」

加古「主力が駆逐艦と軽巡洋艦、航空母艦だったんだ。だからボーキサイトも不足してて、後から来た空母の人たちも暇してたっけなあ」

那智「私がそちらに着任していれば、出撃できていたということか……」

加古「そうだったらあたしも助かってたねえ」

提督「そういう話だと、ガンビアベイも暇してたってことか。鹿島たちの着任時期はいつごろだった?」

加古「あの3人の着任は割と最近かな、来て2か月経ってないはずだよ。鹿島は来た当初はすっごい張り切ってたっけなあ」

加古「それがいつごろからか顔つきが険しくなってて、笑ってるところを見なくなっちゃったんだよねえ」

提督「鹿島が遠大佐の育成方針に危機感を抱いてたとか言う話をどっかで聞いたな……山風だったか?」

加古「ってーことは、鹿島もどこかで遠大佐と雷がべたべたしてるところを見ちゃったのかな」

提督「かもな」
126 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:08:46.70 ID:wYAXYJaXo

那智「加古、お前からは鹿島に何か助言してやれなかったのか?」

加古「うーん、それはちょっと難しいと思うよ。ぶっちゃけ助言してやれそうなことがなにもないんだから」

那智「ふむ……」

加古「それにあたし、出撃するとき以外は寝てたから」

加古「一応主力だったし、割と特別扱いしてもらってたこともあって、そもそも鹿島と接点少なすぎたんだよね」

加古「個人的に遠大佐には少し意見も言うときがあったけど、あんまり聞き入れてもらえなかったしねえ……」

那智「どんなことを進言したんだ」

加古「もうちょっと巡洋艦増やしてほしいとか、駆逐艦増えるだけ増やしてて練度が上がってないから育てて欲しいとか……」

加古「ま、あたしが忙しかったから、その負荷軽減をお願いしてたわけよ。全然聞いてもらえなかったけど」

加古「そういうわけでさあ。ぶっちゃけ遠大佐に対する信頼っていうの? それが薄れまくっちゃってねえ……」

提督「しかもあのちびっ子をママ呼ばわりだからな」

加古「うん……まあ、薄々感付いてはいたけど。あれ聞いたときは真っ白になったねえ……」

那智「ママ……とは、どういうことだ?」

提督「さっき言ったろ、童子返りって。雷って駆逐艦を、遠大佐がママ呼ばわりして抱き着いてたみたいなんだよ」

那智「……」ヒキッ
127 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:09:31.75 ID:wYAXYJaXo

加古「ん? ……みたい、って、提督ってその場に居合わせてたんじゃないの? マイク持ってったっしょ?」

提督「ああ、俺はその場に居合わせてはいた。いたんだが、その辺覚えてねえっつうか覚えていたくねえっつうか……」

加古「……あ、ああ、そういう……」

那智「ここで聞いているだけでひどいと思うのだから、目の前で見ていたのでは相当にショックだっただろうな……」

提督「俺以外であの場面見てたのは……暁と霧島だったっけか? 詳しくはあの二人に聞いてくれ。俺は見てなかったことにしたい」

提督「ま、どうせもうあいつらと顔を合わせることもねえんだ。遠大佐は降格ののち左遷されるって話だからな」

加古「そうなんだ。どこへ行くんだろうね」

提督「端っこだってんなら、南西海域ならブインかショートランド。東ならリンガ、北なら幌筵ってとこか?」

那智「……駆逐艦に甘えるような男を、激戦区へ放り込むのか? 士気に関わりそうだぞ」

提督「そう考えると、比較的安定してる地域に送られる可能性のほうが高えか。リンガは割と穏やからしいから、そっちかもな」

那智「それより、そもそもその男の暴走をどうにかして止める方法はなかったんだろうか、とも思うが」

提督「そいつはなかったんじゃねえの? それが隠れてた本性だったんだろ、早かれ遅かれ暴走してたと思うぞ」

加古「……かもねえ。その暴走を喜んで受け入れるような艦娘に出会っちゃったのも、良くなかったんだろうし」

那智「ふむ……」
128 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:10:17.05 ID:wYAXYJaXo

加古「提督は甘やかされたいタイプじゃなさそうだねえ?」

提督「ああ、俺は世話を焼かれたくねえな。っつうか、世話を焼かれたから焼き返してやったこともあったな、そういや」

那智「なんだそれは」

提督「この鎮守府に古鷹がいるだろ? あいつ、だいぶ前にその問題の雷と出会ってんだよ」

那智「なに?」

加古「あー……」

提督「その古鷹はこの前来ていたL大尉……その時はあいつ少佐だったな、あいつの部下だったんだ」

提督「で、おそらくだが、L大尉が遠大佐と演習したときに、雷から古鷹がいろいろ教えてもらったらしい」

那智「いろいろ?」

提督「ああ。いろいろ」

加古「……」アタマオサエ

提督「で、L大尉がやらかして少佐から中尉に降格して、そん時に古鷹と朝雲をこの鎮守府で引き取ることになって」

提督「それで古鷹を試しに秘書艦付きにしてみたら、俺の風呂から布団から、トイレにまで入ってきて世話を焼こうとしやがった」

那智「と、トイレ……?」

加古「……」アタマカカエ
129 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:11:01.75 ID:wYAXYJaXo

提督「だから俺は吹雪をけしかけて、古鷹をベッドに縛り付けて介護かってくらいの世話をさせて、俺が嫌がってることを理解してもらったわけだ」

提督「吹雪も吹雪で暴走したから大変だったけどな……」

加古「……」テーブルニツップシ

那智「何をしたんだ何を……」タラリ

提督「詳細は本人に訊け」

提督「ともかく、程度に差はあれ、お世話を焼くのが好きな艦娘は思ったよりも多いからな」

提督「俺としちゃあ、甘えてくる分には構わねえが、どっちにしても俺は少しドライなほうが気楽で助かる」

加古「いやあ……古鷹も人がいいっていうか……まあ、うん……」

提督「ちなみに、朝雲は前の鎮守府から古鷹をフォローしてたから、いろいろ知ってるはずだぞ」

加古「雷のことに気付いたのも朝雲だったねえ、そういえば」

提督「あいつ、とにかく気が利くんだよ……マジで頼りになる。と言っても駆逐艦だからな、あいつに頼りすぎるのも問題だ」

那智「戦艦はどうなんだ? 見る限り数は揃っているじゃないか」

提督「戦艦なら長門が一番頼りになるな。来てから一番長いから、この鎮守府の大半のことは知ってるし、面倒見もいい。何を任せても安心できる」

加古「え、長門さん最初なの」

提督「ああ、その次が比叡か。あいつには厨房を任せてるから他のことは二の次にしてるが、よく笑うもんで、いるだけで雰囲気が良くなるな」
130 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:12:03.57 ID:wYAXYJaXo

提督「次に来た大和はちょっと子供っぽいところがあるし、俺を過剰評価しすぎて盲信的になってるんで心配になる」

那智「順番が滅茶苦茶だ」タラリ

加古「そういやここの大和さん、提督のことべた誉めしてたねえ?」

那智「そうなのか?」

加古「そうそう。あ、そうだ提督、中佐って奴相手に『俺の大和だ』って言ったこともあったらしいけど、本当?」

那智「なっ!?」

提督「……ああ、言ったな。そこまで聞いたのか」アタマガリガリ

提督「そいつは『あれ』が大和に執着してたんで、一番ダメージ与えられそうな言葉を探してた時に言った俺の失言だ」ハァ…

那智「貴様は上官を『あれ』呼ばわりか……」

提督「ああ。『あれ』は俺をこの島に追いやった、俺にしてみりゃ恨み骨髄、不倶戴天の相手だ。気遣いなんざしてたまるかよ」

提督「それに、この島の艦娘の何人かは『あれ』と因縁があるんだ。そいつが俺の直の上官だぞ? 忌々しいことこの上ねえ」

提督「大和も大和で、出会ってすぐ主砲をぶっ放したくらいには毛嫌いしてるからな?」

那智「そこまでやったのか!?」

提督「やったよ。会った瞬間、嫌いとか憎いとか言う声が聞こえた、みたいなことを言ってたんだ」
131 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:13:34.17 ID:wYAXYJaXo

提督「その一方であの野郎は、大和に一目惚れしたとか抜かしてやがった」

加古「そこであのセリフってわけだね」

提督「ああ……そのせいで、大和に変に気を持たせたというか、大和の気持ちを弄んじまったんだから、そこは俺が悪いとしか言いようがない」

那智「そう思うのなら、貴様が男として責任を取るべきじゃないのか」

提督「男としての責任ね……そりゃ娶るって意味でか? そんなことしたら不幸にしかならねえぞ?」

那智「なぜだ」

提督「俺がまともな親に育てられてねえんだ、夫としても父としても、まともに務められねえと思ってる。つうかまず父親になるのが無理か」

加古「それ、性欲がないって話?」

提督「ああ。その手の漫画見ただけで気持ち悪くしたこともあったし、そもそもコレが勃たねえからな」

那智「……」

加古「じゃあ、女性の裸も駄目なの?」

提督「それだけならまあ、多少は慣れたな。裸よりひどい姿の奴もたくさん見てきたってのもあるが」

那智「……」

加古「……提督さあ? やっぱり、提督はあたしたちに憐れんでるんじゃないの? 愛情ってものがわからないって言ってんでしょ?」
132 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:15:02.49 ID:wYAXYJaXo

加古「あたしたちを可哀想だと思ってるから、あたしたちの言うことを聞いてんじゃない?」

那智「おい、加古……!」

提督「……そりゃちょっと違うな。可哀想だから助けようだなんて、俺は考えてねえぞ。そいつは傲慢が過ぎる」

提督「助けて欲しけりゃ自分の口から助けてと言え、ってのが俺のスタンスだ」

提督「俺以外の艦娘が助けようとしたとしても、その言葉を当人から聞かない限り、俺が出しゃばるようなことはしないようにしてる」

提督「ただまあさすがに、轟沈して砂浜に流れ着いて、そのまま野晒しになってた艦娘たちだけは、俺の判断で埋葬させてもらった」

提督「そいつらを可哀想だと思うくらいは、いいよな?」

加古「まあ……そりゃあ、ね」

提督「ま、あいつらに対しては、人間のために戦って死んだんだから、人間の俺がちゃんと弔わないと失礼だ、ってのもあったけどな」

提督「それとは別に、轟沈するような指揮を執る人間への怒りと……うまく言えないが、嫌悪感、って言えばいいのか?」

那智「嫌悪感?」

提督「ああ。俺は単純に、お前ら艦娘に対する、人間どもの理不尽な仕打ちを、嫌だと感じてるんだと思う」

提督「俺がそうだったからな。人間の都合に振り回されて、人間に嫌気がさして、それでもなお迂闊に信じちまったせいでこの島に追いやられて」

加古「……」

提督「俺が人間社会でうまくいかなかったのは、俺自身の問題だ。他人に反抗的なのが悪いんだろう」
133 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:16:31.97 ID:wYAXYJaXo

提督「で、俺がそうなったのは、妖精の存在を否定したくなかったからだ」

提督「だが、あいつらは妖精の存在を信じないし、嘘をつくなと言うんだよ。俺だって嘘なんかついてねえってのによ」

提督「それでお互い受け入れられなくなって、俺は人間を信じられなくなった」

提督「お前らもそうだろ? 人間を信じられなくなったから、望む望まないに関わらず、ここに来たんだろ?」ニヤッ

加古「……」

那智「……否定できないな」

提督「俺も、何言っても無駄だったことが多かった。だから、俺はお前らに同情している、と言った方が適切かもな」

加古「……同情、ねえ」

提督「他に言い方というか、他にもっと適当な言葉があるかもしれねえが……ま、所詮は自己満足のためだし、なんでもいいさ」

提督「お前らが、人間から受けてきた嫌な思いを少しでも解消できてて、いま笑えてるんなら、俺はそれでいいと思ってる」

提督「俺もこの島に来た直後なら、人間に対する憤りの方が強かったな。半ばやけくそ気味で、中佐とは刺し違える気でもいた」

提督「今は今で、艦娘たちにこれ以上なく良くしてもらってるからな……それが嬉しくて、単純にその礼を返したいつもりでいる」

提督「こうやって酒飲んで駄弁ったり、笑って話すなんて、あっちじゃあなかったからな」フフッ

加古「なるほどねえ……」

那智「……」
134 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:17:31.74 ID:wYAXYJaXo

提督「そういうわけなんで、欲しいものがあるとか、これを直してほしいとか、そういう話はできるだけかなえたいと思ってる」

加古「へーぇ……それじゃあ、ふかふかのベッドが欲しいとか、そういう話もしていいの?」

提督「おう、いいぞ。むしろそういう話なら遠慮すんな。財布と相談になるが、言うだけ言ってみな」

加古「んへへえ、いいこと聞いちゃった」

那智「それでいいのか……?」

提督「いいさ。お前らは命懸けて人間のために戦ってるんだ。そのくらいの見返り、あっても罰は当たらねえだろ」

那智「むう……」

加古「見返りかあ……そういうの、考えたことなかったねえ」

提督「……」

加古「……どしたの?」

提督「いや。俺たちは、自分たちの身や財産を守るために戦ってる、って認識は間違ってはいないよな?」

加古「うん……まあ、そうだねえ?」

提督「今、俺が見返りって言ったけど、深海の連中はどうなんだ? なんで連中はこっちに攻めてきてるんだ? って、ふと思ってなあ……」

提督「あいつらがどんな見返りが欲しいのか……あいつらの目的が、改めて考えてみてもわからねえ」

加古「……うーん、あたし、そういうことは考えたことなかったねえ。攻めてきたから追っ払う、みたいな感じだったし」
135 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:18:33.06 ID:wYAXYJaXo

那智「……恨みじゃないのか? 人間に対する……」

提督「恨みって何の恨みだ?」

那智「……むう」

提督「海を汚されたとか、そういう恨みだけとは思えねえんだよな。根っこがわかんねえ……」

提督「仕方ねえ、あまり訊きたくねえが……今度ル級に訊いてみるか」

加古「……え?」

那智「ル級? 敵方の戦艦のことか……?」

提督「ああ。深海棲艦の戦艦ル級だ」

加古「……」

那智「……」

加古「ええええええええ!!??」ガタガタッ

那智「ちょっ、ちょっと待て貴様!?」ガタガタッ

提督「んん? なんだ?」

那智「今、深海棲艦に訊くと言ったな!? どうやってだ!?」
136 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:19:17.06 ID:wYAXYJaXo

加古「すっごい気軽に言うけど知り合いでもいるの!?」

提督「いるぞ」

那智「」

加古「」

提督「たまに飯を食いに来る」

加古「うっそだぁ……あたしたち、あいつらと戦ってるんだよ? 話はできても、話が通じたことがない相手だよ?」

那智「どんな手を使ったんだ」

提督「ル級も砂浜に流れ着いてきたんだよ、加古みたいにな。向こうにもそういう不幸な奴がいるってことさ」

加古「……なんか、びっくりしすぎて酔いも眠気も覚めちゃったよ」

那智「私も、自分が素面なのか信じられなくなってきたぞ。貴様、酔っ払っての戯言じゃないだろうな?」

提督「本当だよ。今度会ったら紹介してやるよ、誤射させたくねえしな」
137 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:20:16.78 ID:wYAXYJaXo

 * ブイン泊地 *

日向「そうだ。深海棲艦とは、いったい何者なんだ?」

加提督「……」

日向「私たちは、なぜあいつらと戦っている?」

加提督「……」

日向「私たちは、いったい何者なんだ?」

加提督「うるせえええええ!!」

加提督「そんなことに疑問を持ってる場合じゃねえっつーの!」

加提督「戦況を見ろ! お前がぼんやりと考え込んでる間に敵の艦載機にぼっこぼこにされて!」

加提督「全員撤退してからぶっ放しても意味ないんだよ!!」

日向「君の指示通り、旗艦は沈めたぞ」

加提督「遅すぎるんだよ!! ただでさえ鈍足艦なのに、考え事をして艦隊においていかれたりしてんじゃねえよ!!」

加提督「もう限界だ! 次が最後だ! 次でまた足を引っ張ったら、お前は左遷だ!!」

日向「……」
138 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:21:01.56 ID:wYAXYJaXo

加提督「なんだその顔は! お前の建造のためにどんだけ資材を投じたか、わかってんのか!」

加提督「それに見合う働きができないんなら、当然だろうが!」

日向「それは君の指示が悪いんだろう?」

加提督「俺の話を聞いてないやつが言っていい台詞じゃねえよ!! もういい!!」

日向「……」

 * *

日向「敵を知ろうともせずに戦いに勝とうだなんて、無理難題もいいところだ」

日向「今の戦力では海域の突破は無理だな。敵航空戦力を無力化する方法がなさすぎる」

日向「こちらの航空母艦は満身創痍。まともに太刀打ちできる艦戦も少ない」

日向「根性論など以ての外……もう、潮時か」

日向「……」

日向「本当に……」

日向「深海棲艦とはいったい何者なんだろうか」
139 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/06/27(月) 23:21:49.98 ID:wYAXYJaXo
というところで今回はここまで。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/02(土) 11:09:11.04 ID:5crQp9Zw0
哲学日向いいですなぁ瑞雲教祖もいいけど
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/05(火) 22:16:05.81 ID:1I/nSYiw0
暑い日が続きますが作者氏水分補給取って更新おねがいします
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