【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」吹雪「その4です!」

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1 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:04:03.83 ID:sLwV0S9To

前スレはこちら

提督「墓場島鎮守府?」
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476202236/
【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529758293/
【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1583941702/

時系列的にはここがこのスレ。

【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」【×影牢】
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467129172/
【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515056068/

「鎮守府が罠だらけ?」スレッドの番外編(前日譚)です。

・舞台になっている鎮守府、通称『墓場島鎮守府』の過去の話になります。
 提督の着任から、各艦娘がこの島へ着任するに至った経緯を書いていきます。

・艦娘の殆どが不幸な目に遭っておりますので、そういう話が嫌な方は閉じてください。

・影牢のキャラは出てきません。


・感想、雑談など、書き込みの際はメールアドレス欄に「sage」と入れてください。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1652576643
2 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:06:20.71 ID:sLwV0S9To
舞台の「墓場島」について
 作中の表記は「××国××島」、通称「墓場島」。太平洋上にあるとある無人島、パラオ泊地が一番近いと思われる。
 島の北側には海底火山があり、潮流が強く流れが特殊なため、普通の船舶は近寄れない。
 そのためか深海棲艦も寄り付かず、轟沈した艦娘の亡骸がよく島の北東に流れ着いている。
 島の北部は火山活動によってできた岩場。西側は手つかずの林に包まれ、小さいながら切り立った崖がある。
 島の南から北東にかけては、なだらかな丘陵と砂浜が続いており、島の東側に鎮守府が建てられている。

 墓場島と呼ばれるようになった所以は、提督が流れ着いた艦娘を埋葬し、墓標代わりに艤装を並べたことから。
 最近では、問題を起こした艦娘を送り込む墓場、という意味に勘違いした海軍から、艦娘を送り付けられている。


艦娘以外の主要な登場人物

・提督
 階級は准尉。一般人には見ることすら出来ない妖精と話が出来たせいで
 親からも変人扱いされたため、人間嫌いをこじらせる。結構な不幸体質持ち。
 中佐の補佐官として海軍に入ったが、無人島の鎮守府に幽閉同然の扱いで着任した。

・中佐(前スレ初登場時は少佐)
 戦争は金儲けの道具と考え、中将の威光を傘に暗躍。後に大佐にまで昇進する。
 妖精と会話できる提督の存在に危機感を覚え、離島の鎮守府に封じ込めた。

・中将
 中佐の父親。有能だったらしいが息子が絡むと駄目になるらしい。
 足を悪くしており、本営の自室でデスクワークが日常。

・そのほか、たくさんの『提督』
3 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:07:23.39 ID:sLwV0S9To
登場艦娘一覧

如月:試作の新兵器の実験台にされていたところを脱走し大破、島に漂着
不知火:もと少佐の部下。解体前提で如月捜索に駆り出されるが、提督の計らいで中将麾下に
朧、吹雪:捨て艦で轟沈後、島に流れ着く(二人とも別の鎮守府出身)
由良、電:大破進軍で轟沈し、島に流れ着く(同じ鎮守府出身)
神通:慕っていた司令官を謀殺され、その復讐の途中で左遷させられる
大淀:日々の解体任務に疑問を覚えて仕事が手につかなくなり異動してきた
敷波:由良と電の捜索を命じられそのままMIA
明石:提督に帳簿の不正を強いられ、そのまま首犯扱いで雷撃処分
朝潮、霞:提督の不正の内部告発を計画するも逆に犯人扱いされ雷撃処分
暁:信頼していた提督の変貌に錯乱して敵陣特攻し記憶喪失に
初春:捨て艦で轟沈後、暁に助けられ島に漂着
潮、長門:変態の上官に迫られ耐え切れなくなり家出、長門はその護衛
比叡:料理上手なのに認めてもらえずご飯を投げ捨てられて鬱に
古鷹:お人よし過ぎて自分の練度が上がらず観艦式において行かれる
朝雲:観艦式に向かう途中で艦隊を離脱して古鷹を追いかけてきた
利根:司令官の猟奇趣味に巻き込まれ死にかける
ル級:オリョールで毎日毎日潜水艦に小突かれる日々に嫌気がさし脱走
伊8:オリョールに行ったら逃げたル級の代わりの軽巡に轟沈させられる
大和:妖精が提督に内緒で大張り切りで大型建造したら作られた
初雪:艦娘管理ツール使いの提督に昼夜問わずこき使われ失神後漂着
金剛:愛情から目を背ける提督を説得し続け、煙たがられて左遷
五月雨:玉砕覚悟の敵討ちを望むも、仲間を沈めた濡れ衣を着せられて追い出される
榛名、那珂:養成所の訓練と称して轟沈するまで戦わされ島に流れ着く
扶桑、山城:理由もなく疫病神扱いされ、戦況不利な海域に誘導され轟沈する
龍驤:暴食を強要され体形を馬鹿にされ、ブチ切れて鎮守府を火の海に
陸奥:龍驤と同じく暴食を強要され、かつ度重なるセクハラで男性不信に
雲龍:特別海域で艦隊に邂逅できず、餓死寸前だったところを龍驤に保護される
島風:スピードを追い求める姿勢を疎まれて、訓練中に除名される
白露:島風と一緒に特訓するため艤装を改造、同じく訓練中に除名される
黒潮:姉妹艦を人身御供にした司令官にぶち切れて、犯人もろとも海に投げ捨て離反
山雲:ドロップ直後に、黒潮を探す雪風が起こした深海勢に激突される
最上、三隈:最上にベタベタし続けたことに三隈が切れて提督の股間を破壊
摩耶、霧島:理不尽な防戦指示を無視して戦況を好転させたため、提督に激怒される
川内、若葉:夜戦禁止の腰抜け提督の下で輸送部隊の撃破のため夜戦したら馘になった
武蔵:またも妖精が提督に内緒で大張り切りで大型建造して作られた
五十鈴、筑摩:テレビの取材で舞い上がった前提督の散財で赤札を貼られた鎮守府から脱走
加古、鳥海:一日提督の無茶のために、加古の大破進軍を轟沈させまいと鳥海が庇って揃って轟沈
千歳、足柄:婚活したがっている女提督と喧嘩別れ後、墓場島への案内を任されそのまま着任
隼鷹:ケッコンカッコカリ間近で提督の頬を叩いたところを上官に見られて更迭後、脱走
那智:酒飲みの愚痴聞き係で戦線に立たせてもらえなかったため脱走

注:ル級は島の北の離れ小島近辺に住んでいます。この鎮守府所属ではありません。
4 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:08:33.08 ID:sLwV0S9To
以上テンプレ。長くなりすぎだ……。

では本編の続きです。
5 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:18:18.34 ID:sLwV0S9To

 * 翌日 執務室 *

武蔵「……というわけでな」

龍驤「ふーん、利根と筑摩はまだぎこちない感じやったんやねえ。利根だけだと平然としとるんやけど」

提督「そういうわけで、龍驤と雲龍に、意見っつうか、今の筑摩たちの状況をどう打開したらいいか、経験者の話を聞かせて欲しくてな」

龍驤「なんでうちらを呼んだかと思えば、そういうことやったんか。まあ、確かにシチュエーションとしては似とるかなあ?」

武蔵「そうなのか?」

龍驤「うちが一方的にブチ切れて、雲龍を困らせたってのは事実や」

雲龍「そうじゃないわ。私が悪かったから龍驤を怒らせたの」

龍驤「うちやろ?」

雲龍「私よ?」

武蔵「唐突にイチャイチャし始めないくれ」

龍驤「イチャイチャしてるように見えるんか、これ」

雲龍「嬉しいわ」ポ

龍驤「うちら言い争ってたんちゃうんかい」ツッコミ

武蔵「仲が良くないと、そんな言い争いはできないだろう」
6 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:19:17.22 ID:sLwV0S9To

提督「だよな。でだ、今でこそこのくらい仲が良いんだが、あの時は俺もどう手を付けたらいいかわからないくらいにはなってたよな?」

龍驤「んー……まあ、そうやねえ」

筑摩「……」

提督「なあ雲龍?」

雲龍「はい」

提督「もし、お前が龍驤に許してもらえなかったら、どうしてた?」

雲龍「……あまり、考えたくはないけれど」

雲龍「その時は、龍驤の前から消えようと思ったわ」

雲龍「私が龍驤に嫌われるのは仕方なかったと思うし、私は龍驤を嫌いになりたくなかったから」

提督「……そうか。龍驤もよく受け入れられたもんだと思うぜ」

龍驤「あー、まあね……その、悔しいとかってのは確かにあったんやけど、それで雲龍に文句言うのも、それはそれで理不尽やんな、って」

提督「そこで冷静になれるからすげえって話だ。俺なんざ一度嫌いになると二度と話したくなくなるしな。おとなだぜ」

雲龍「ええ。素敵でしょう?」ドヤ

龍驤「雲龍がドヤるんかい」ツッコミ
7 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:20:01.94 ID:sLwV0S9To

武蔵「となると、やはり利根から筑摩をどう思うか聞いた方がいいと思うんだが」

雲龍「そうかしら。私は、そこまでしなくてもいいと思うけど」

武蔵「どうしてそう思う」

雲龍「相手が許すか許さないかは関係ないわ。悪いと思ったから、頭を下げる。それだけじゃないの?」

武蔵「む……」

筑摩「……」

雲龍「ねえ、筑摩」

筑摩「は、はい」

雲龍「多分だけれど、あなたの好きな人は、あなたが傷付くことを望んではいないと思うわ。だって、私もそうだったもの」

筑摩「そ……そうでしょうか」

雲龍「あなたはきっと、『好き』の伝え方を間違えただけ」

筑摩「……」

雲龍「私も、私を助けてくれた人のために、独り善がりで自分を傷付けようとして、逆に怒らせてしまったの」

雲龍「自分のしようとしたことが、本当に相手が望むことなのか。自分の思い込みだけで、相手の幸せを決めつけていないか」

雲龍「それをしっかり考えることができるようになれば、また、向き合ってくれると思うわ」

筑摩「……」
8 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:21:17.36 ID:sLwV0S9To

龍驤「そうそう、うちも殺したいほど雲龍が憎いわけやなかったし、利根も同じやと思うで」

雲龍「そのためにも、改めてちゃんと謝るべきね」

龍驤「せやなあ、それは最低限かな。もし利根が、筑摩を心底嫌ってなければ、時間はかかるやろうけど、許してくれると思うけどなあ」

提督「だから俺は時間をかけるしかねえと思ってんだよな。けど、武蔵はそろそろ筑摩がやばいと思ってんだろ?」

武蔵「ああ。私自身がじれったく思うからというのもあるが、ここ最近の筑摩の意気消沈ぶりを見ると特にな」

提督「……利根がどう思っているか、というのが案外重要になるわけか」

武蔵「龍驤の場合はどうだったんだ。どういう経緯で雲龍を受け入れようと思ったんだ?」

龍驤「んーとねえ……うちは前の鎮守府で、このちんちくりんな体を馬鹿にされ続けてきててなあ」

龍驤「せやから、胸の大きい子とかは、ぶっちゃけ憎悪の対象やったんよ。だから、自分が助けた雲龍もそうやったんや」

龍驤「けど、扶桑が言っとったんよ。辛いことから目を背けてたら、大事なものを失うことになる、て」

龍驤「それから扶桑は、うちが雲龍を助けたことを羨ましい、って言うとった。自分がそれをできひんかったから、て……」

提督(時雨のことか……)

龍驤「そん時の扶桑の笑顔がえらい寂しそうでなあ……そう言われると、うちのやってることが途端に小ぃちゃく思えて」

龍驤「だから、カラダ抜きにして雲龍と向き合おうと思たんよ」

武蔵「……」

龍驤「そういうことを最初から理解してたら、雲龍とも喧嘩せんかったのになあ……」アハハー
9 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:22:03.04 ID:sLwV0S9To

提督「おいおい、最初からそうだったら雲龍との邂逅もなかっただろ」

提督「忘れたか? お前、自分の体のことで思い詰めて鎮守府飛び出してったんだろが」

龍驤「あー……!」

提督「お前が悩んでなかったら、雲龍も海の藻屑になってた」

提督「おそらく、お前にとっても雲龍にとっても、その悩みは必要なものだったのかもな。好意的に捉えれば、の話だが」

雲龍「それってもしかして、運命……?」

龍驤「うーん、それを運命って呼ぶのは嫌やなあ……雲龍が骨だけになってたのが運命やなんて、酷くない? あんまりやで」

雲龍「……好き」ヒシッ

龍驤「んなっ!? なんなん!? なにしたん!?」

武蔵「そういうところだぞ、龍驤」

龍驤「どういうとこやねん!」ツッコミ

提督「……どうだ、筑摩。少しは参考になったか」

龍驤「いやそこで筑摩に振るんかい」ツッコミ

筑摩「……」

武蔵「まだ迷ってるみたいだな」
10 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:23:02.17 ID:sLwV0S9To

提督「無理もねえさ。筑摩としちゃあこれ以上利根に嫌われたくないからな。臆病にもなる」

提督「けど、利根だって筑摩を避けたくて避けてるわけじゃねえはずだ。俺だって仲直りできりゃあいいなとは思ってる」

提督「ただ、こればっかりは当人同士が納得しねえと、余計にぶっ壊れて修復不能になるだろうからな。俺が口を挟んで好転するとも思えねえ」

武蔵「……そう、だな。利根のことを考えれば、無理強いはできないな」

龍驤「せやねえ……あれは思い出しとうないなあ」

提督「ああ、あれか」

雲龍「?」

龍驤「雲龍は覚えてなくてええんやで」ナデナデ

 コンコン

提督「うん? 誰だ」

神通「神通です。提督、少しお時間よろしいでしょうか」

提督「ああ、とりあえず入ってくれ」

神通「失礼いたします」チャッ パタン

提督「何かあったのか?」

神通「……あの、まだお話の途中でしたでしょうか」

提督「いや、一区切りついた、よな?」

武蔵「ああ」

神通「でしたら、恐れ入りますが提督にご足労いただけないでしょうか」

提督「俺か?」

神通「はい」
11 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:23:47.24 ID:sLwV0S9To

 * 島の南東 丘の上 *

神通「こちらです」

提督「……利根?」

利根「うむ、すまぬな神通。引き続き人払いを頼む」

神通「はい」

提督「……話ってのは、お前か?」

利根「うむ。単刀直入に言おう、筑摩は今どうしておる?」

提督「……一言で言えば、滅入っているな」

利根「そうか……」

提督「……」

利根「提督よ。吾輩は、ケリをつけようと思う」

 * * *

 * *

 *
12 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:24:32.80 ID:sLwV0S9To

 * しばらく後 埠頭 *

武蔵「ふむ……」

筑摩「武蔵さん、大和さんからのお話というのはいったい……」

武蔵「私も心当たりはないが……なんでも、準備がいると言っていたからな。装備の話だろうか」

筑摩「……」

武蔵「とはいえ、約束の時間を10分遅刻か。一度戻ったほうがいいか……?」

 ザッ

武蔵「!」

大和「ごめんなさい、お待たせしました」

武蔵「おお、大和、遅かったな。それで、私に話というのは……?」

利根「……」ス…

筑摩「!」ビクッ

大和「ごめんなさい。話があるのは私から武蔵へではなく、利根さんから筑摩さんへ、です。五十鈴さんにもご同席をお願いしました」

五十鈴「大和さんたちがいるんだから、私がどのくらいお役に立てるかわかんないですけど……」

武蔵「なるほど……いや、こういう状況なら助かるぞ。筑摩のことを一番よく知っているのはお前だろうからな」
13 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:25:17.67 ID:sLwV0S9To

筑摩「……」メソラシ

利根「筑摩」

筑摩「……姉さん」

利根「吾輩のほうを向いてくれ。筑摩」

筑摩「……」チラッ

利根「……」

筑摩「あの、利根姉さんは、大丈夫……なん、ですか?」

利根「ああ。その……今まで、すまなかった」

筑摩「ね、姉さん……!」

利根「吾輩が醜態を曝したばかりに、筑摩につらい思いをさせたこと……吾輩の未熟ゆえの」

筑摩「ち、違います! それは違います!! 醜態だなんて……姉さんが悪いなんて!!

筑摩「利根姉さんに悪いところなんてありません! 私が……私が、自分勝手な思いを押し付けたのが……」

筑摩「嫌がっていた姉さんのことを、心配しなかった私が悪いんです!」

利根「……」

筑摩「利根姉さんが……私の前で、つらそうにしているのは、全部、私のせいです……」
14 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:26:17.50 ID:sLwV0S9To

筑摩「だから……利根姉さんは、無理をしないでください。私は、姉さんがいるだけで、いいんです」

筑摩「あんなことをした利根姉さんが、普通にしてくれているだけで……」

利根「いいわけがなかろう!!」

筑摩「!」ビクッ

利根「筑摩は、吾輩の、自慢の妹だぞ……! その妹に、いつまでも避けられる姉がいてたまるものか!!」

筑摩「ね……姉さん……!」

利根「……筑摩」スッ

筑摩「……」ビクッ

武蔵「筑摩。下がるな」

筑摩「で、でも、姉さんがまた倒れたりしたら……」

利根「そうはならん。情けない姉は、今日で返上じゃ」

筑摩「利根姉さん……!」

 (筑摩にゆっくりと利根が歩み寄る)

五十鈴「利根さん、筑摩さんに近寄るだけで緊張してるみたいですけど……本当に大丈夫なんですか」ヒソヒソ

大和「信じましょう。利根さんも、必死なんですから」

五十鈴「……そうね、そうだわ。利根さん、頑張って……!」
15 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:27:03.38 ID:sLwV0S9To

利根「……筑摩」

筑摩「利根、姉さん……」

利根「……」

筑摩「……」

利根「大丈夫。大丈夫だとも」ニコ…

筑摩「……!」ウルッ

利根「しかし、やはり吾輩は情けないな」

 (そっと筑摩の頬に手を触れようとする利根)

利根「……筑摩に触れるのさえ、躊躇うとは」

筑摩「……」

利根「そのように泣きそうな顔をするな、筑摩。吾輩は大丈夫だと言ったであろう」

筑摩「はい……私は、利根姉さんを信じています」

 (祈るように胸の前で手を組む筑摩)

筑摩「私も、利根姉さんに、信じてもらいたい……!」

筑摩「二度と、同じ過ちは犯さないと……!」
16 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:27:47.23 ID:sLwV0S9To

利根「筑摩……」

 (利根の手が筑摩の頬をそっとなでる)

筑摩「……!!」

利根「……やっと……やっとじゃな」

筑摩「利根姉さん……!」

利根「待たせて、すまなかった」

筑摩「そんな……私のせいで、ごめんなさい……!」ポロポロ…

武蔵(いや、まだだ……まだだぞ、筑摩。慌てるな……決して、手を出すなよ、筑摩……!)ジリッ

利根「……なあ、筑摩よ」

筑摩「は、はい」グスッ

利根「その……」

 (利根が筑摩を抱き寄せる)

筑摩「!?」セキメン

武蔵「な……っ!?」

利根「今は、これで、我慢してもらえんか」

筑摩「○※▲×◇!?」
17 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:28:32.59 ID:sLwV0S9To

武蔵「が、我慢!? ……というのは、どういうことだ!?」

利根「筑摩は、おそらくこうしたかったんではないか、と思っていてな」

筑摩「」コクコク

利根「しかし、吾輩がそれを恐れたが故に、筑摩は今も吾輩に手を出すまいと胸の前で組んでおる」

利根「吾輩は、筑摩のことは決して嫌いではない。嫌いではないんじゃ」

利根「その、強引に迫られるというか、目の色を変えられるというか、そういうのが苦手というだけで、吾輩は、筑摩が決して嫌いなわけではない」

筑摩「……」ジワッ

利根「何度でも言うぞ。筑摩は、吾輩の自慢の妹である」

利根「こんなに吾輩を心配してくれていた筑摩を、恐ろしいと思っていたこと……許してほしい」ギュ…

筑摩「姉さん……!!」

筑摩(ああ……触れることすらかなわないと思っていた姉さんの手が……顔が、こんなに近くに!)

筑摩(自分から触れるよりも遙かに嬉しくて……こんなに昂ぶるなんて!!)プルプル

筑摩(……)

筑摩(……もしかして、このまま私が利根姉さんに手を出さずにいたら、もっといろんなことを利根姉さんにしてもらえるのでは?)

利根「……筑摩?」
18 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:29:32.56 ID:sLwV0S9To

筑摩「え? だ、大丈夫ですよ姉さん。姉さんこそ、大丈夫なんです……よね?」

利根「ああ。心配させてすまなかった」ギュ

筑摩「……!!!」

筑摩(ああああ! 利根姉さん可愛い! 笑顔が! 柔らかい感触が!)プルプルプル

五十鈴「ねえ……筑摩さんの様子がおかしくない?」

大和「えっ? まさか……」

筑摩(利根姉さんに初めて会ったときは、嬉しくて全部欲しくて襲いかかってしまったけど……)

筑摩(もしかして、私がこのまま我慢し続ければ……私から手を出さなければ、利根姉さんのほうから襲ってきてくれる可能性も!?)

筑摩(……私が、利根姉さんになすがままに……!?)

筑摩(……それは……!)

筑摩「はぷあ!」ハナヂブシャアアア!

利根「ふおわ!?」

大和「ぬお!?」

武蔵「きゃっ!?」

五十鈴「筑摩さんっ!?」

利根「ち、ちくま!?」

筑摩「ら、らいひょ……っし、しあっ、しあわひぇ、すぎ……」

利根「し、しっかりするんじゃ筑摩!!」
19 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:30:17.70 ID:sLwV0S9To

大和「い、いったいどういうことなの……」

武蔵「うーん……もしかしたら、我慢しすぎたんじゃないか?」

大和「が、我慢しすぎた?」

武蔵「反動が来たというか……利根が倒れた一件以来、筑摩は利根との接触を極力避けてきたからな」

武蔵「おそらく、筑摩が我慢に我慢を重ねた結果、利根に対して強烈な片思いを抱くようになり……それが突然成就した結果で、ああなったと」

五十鈴「……それであの鼻血?」

武蔵「ではないかな、と思ったんだ……自信はない」

武蔵「いずれにせよだ、あの二人はもうしばらく様子を見たほうが良さそうだ」

大和「そ、そうね……」

利根「筑摩! しっかりするんじゃ! ちくまぁぁ!!」ナミダメ

筑摩「だいひょうぶ、だい……じょうぶ、です、利根姉さん……!」ウフフ…

五十鈴「まあ、筑摩さんも嬉しそうだし、いいんじゃない?」ニガワライ
20 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:31:32.28 ID:sLwV0S9To

 * その後 執務室 *

提督「……」

神通「……」

大和「というわけで、利根さんは筑摩さんをドックへ運んで、しばらく看病? するということでした」

提督「……訳わかんねえな。どういうこった?」

大和「えぇと……拒絶されていた相手からいきなり抱きつかれたら、嬉しいのと戸惑うのとで混乱するだろう、」

大和「というところまでは、私もなんとか『そうかもしれない』と考えることまではできましたが……」

提督「鼻血ってのはなんなんだ?」

大和「……興奮しすぎたか、感極まったか……」ウーン

提督「まあいいや、大和に理解できねえもんを俺が理解できると思えねえ」

提督「ともかく、利根が襲われたときのことを想定してお前に行ってもらったが、杞憂で済んで良かったぜ。ありがとな」

大和「いえ、艦隊のお役に立てて何よりです。また困ったことがありましたら、大和をお呼びください」ニコ

 扉<チャッ パタン

提督「神通、お前は利根のところに行かなくてよかったのか?」

神通「はい。あのときは、利根さんの決意を私も信じてましたから」

提督「……無理すんなよ? 利根でも俺でも、頼りたいときは頼れよ。お前みたいになまじ強い奴ほど、ストレスため込むからな」

神通「ありがとうございます」ニコ
21 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/15(日) 10:32:38.30 ID:sLwV0S9To
というわけで今回はここまで。
掘り下げて書き出した結果、4スレ目にまで突入してしまいました。
不定期更新ですが、本スレでもお付き合いよろしくお願い致します。

よく見る二次創作だと、利根が筑摩に泣きつくパターンが多いので、
逆にしっかりお姉さんしてる利根を描きたくなってこうなったのですが……。
筑摩をここまでクサレっぽくする気はなかったんだけど……どうしてこうなった。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/16(月) 04:22:39.95 ID:s5cPbESt0

ついに4になったか…5まで付き合う覚悟はできてるから頑張って書いてください!
23 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:00:08.34 ID:0QNRcKgBo
続キデス。
24 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:01:02.58 ID:0QNRcKgBo

 * 夜 提督の寝室 *

提督「……」

提督「……」ムクリ

提督「……眠れねえな……」

敷波「……」スヤァ…

提督「今日は敷波か? ……珍しいな」

提督「目が覚めたのは、珍しい奴が隣にいるから……じゃねえな」

提督「……くそ、眠れねえ」



 * 北東の海岸 *

提督「……」

(提督が空を見上げると、月が煌々と輝いている)

提督「……月か」

提督「久し振りだな。こんなふうに夜空を眺めるのは」

 ザザァ…

ル級「珍シイナ。コンナ時間ニ散歩ダナンテ」

提督「よう。確かに珍しいな」
25 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:01:48.26 ID:0QNRcKgBo

ル級「服装ガイツモト違ウナ……?」

提督「ああ、こりゃ寝間着だ。こんな時間に目が覚めて、眠れなくてこんなところまで足を運んだんだ」

ル級「ネマキ?」

提督(あー……もしかして、深海棲艦に睡眠の概念とかねえのか?)

提督「えーとな、人間は普通、夜中は横に寝転がって眠ってんだ。堅苦しい服だと眠れないんで、こういう楽な服を着てんだよ」

ル級「……眠レナイ? トイウコトハ、目ノ覚メルヨウナコトデモ、アッタノカ?」

提督「いや? むしろ疲れてて眠りたいはずなんだけどな……なんか、気分がザワザワするっつうか……」

提督「おそらく、ここ最近この島に来てた人間どもにイライラさせられて、それがすっきりしてねえんだろうな」

ル級「……人間……」

提督「まあ、いろいろありすぎだ。とっとと寝て忘れたいところだが……」

ル級「……」

提督「……ル級?」

ル級「提督。コノ島ニ、人間ドモガ来テイタダロウ?」

提督「ああ。見たのか?」

ル級「私ガ、ソイツラヲ、殺シタ」

提督「お前が……?」
26 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:02:33.85 ID:0QNRcKgBo

ル級「ソウダ」

提督「あいつらに何かされたのか? 攻撃されたとか……なにか撮られたとか」

ル級「……? 何モ、サレテイナイ。アイツラハ、私ニ怯エテイタダケダ」

提督「何もされてないんだな? ……そうか。なら良かった」

ル級「……」

提督「なんだ? 不思議そうな顔をして」

ル級「提督。オマエハ、私ヲ咎メナイノカ?」

提督「咎める? なんでだ?」

ル級「……」

提督「……?」

ル級「オ前ニハ、都合ガ悪クナイノカ?」

提督「俺? ……あ、ああ、そういう意味か」

提督「俺の立場って意味じゃあ、確かに、良いとは言いづれえな……」

提督「けどよ、そんなの関係なく、お前を責める気はねえよ。悪いのは、勝手にこの島に乗り込んできた、あの人間どもだ」

提督「だいたい、お前にとって人間は敵だろ? だからお前が人間を殺すのくらい当たり前だろうし、それを咎めるなんて意識はなかったな」

ル級「……」
27 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:03:17.84 ID:0QNRcKgBo

提督「まさか俺のことを心配してくれてるとは思わなかった。悪いな」

ル級「……イヤ、イイ」

提督「ところで、お前はいつもこの時間に島に来てるのか?」

ル級「イイヤ? 今夜ハ、気マグレダ」

提督「そうか、そりゃ運が良かった」

ル級「? ドウイウ意味ダ」

提督「もしこの場に艦娘がいたら、今のことを話してくれてたか、って思ったんだ」

提督「深海棲艦と人間は敵対関係だ。逆に艦娘は人間の味方で、深海棲艦は人間と共通の敵……しかも、深海棲艦に対する攻撃能力もある」

提督「鎮守府は艦娘の拠点で、そこで不祥事を起こせば艦娘の生活にも少なからず影響が出る」

提督「それを引き起こしたのが深海棲艦のお前とあっては、うちの艦娘であっても、お前に悪い印象を抱くかもしれない」

提督「ま、お前との仲が険悪になるような話を聞かせたくなかったんで、好都合だったな、って話さ」

ル級「……提督ハ、ツクヅク変ナ人間ダナ」

提督「そうか? はっちゃんの時とか扶桑の時とか、お前には何度か助けられてるんだ。このくらいの礼儀はあって当たり前だろ?」

ル級「敵ニ、礼儀ヲ尽クスノカ?」

提督「俺はお前を敵だと思っちゃいねえぞ?」

ル級「……」
28 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:04:02.43 ID:0QNRcKgBo

提督「ここには俺とお前だけ。俺はお前の敵のはずの人間だ。なのに、お前は俺を殺そうとしてねえじゃねえか」

提督「それどころか、わざわざ自分のやったことを教えてくれた上に、俺の心配までしてくれた」

提督「もしかしてお前、俺より優しいんじゃねえか?」

ル級「……オ前ノセイダナ」

提督「うん?」

ル級「オ前ガ、人間ノクセニ、深海棲艦ト馴レ馴レシクスルカラダ」

提督「……そうか。ククッ、それもそうか」

ル級「フフ……ソウダ。オ前ハ悪イ奴ダ」

提督「違いない……!」フフッ

ル級「提督」

提督「ん?」

ル級「……深海ニ来ルカ?」

提督「!」

ル級「提督ハ、人間ノ世界デハ生キニクソウニシテイル。私ト……深海ニ来ル気ハ、ナイカ?」

提督「……それも、いいかもしれねえな」
29 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:04:47.16 ID:0QNRcKgBo

提督「だが、まだやることが残ってる。俺が身軽になったとき、まだ待っててくれるなら……それも考えてみよう」

ル級「……ソウカ。早クシテクレ。私ノ気ガ変ワラナイウチニ、ナ」

提督「また難しいこと言いやがって……」ククッ

提督「なあ、ル級?」

ル級「……ナンダ?」

提督「お前が……あいつらを殺したとき、お前はどう思ったんだ?」

ル級「……?」

提督「深い意味はねえよ。単純にどう思ったかが知りたい」

ル級「……私ハ、邪魔ダト思ッタダケダ」

ル級「アイツラガ、コノ砂浜デ言イ争ッテイタトコロヲ見ツケテ……目障リダト思ッタ。ソレデ、沖ヘ掴ンデ放リ投ゲタノヨ」

提督「そうだったのか。すまなかったな、手を煩わせちまって」

ル級「提督以外ノ人間ハ信用ナラナイ。ダカラ、邪魔ダト思ッテ、始末シタ。スッキリサセタ……ソレダケダ」

提督「なるほど……」

ル級「提督ハ、違ウノカ?」

提督「……ちょっとな。正直、これは俺自身が変なんじゃねえかって話なんだけど……」

ル級「提督ガ?」
30 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:05:32.62 ID:0QNRcKgBo

提督「ああ。俺はあいつらが死んでるのを見つけたとき……」

提督「なんとも、思わなかったんだ」

ル級「……」

提督「ああ、死んだのか、と。ただその事実を認識しただけで、なんの感情も生まれなかった」

提督「この島で初めてこの砂浜に来て、たくさんの艦娘の遺体を見て、ショックを受けたことを、俺は覚えてる」

提督「それ以降も、この砂浜で艦娘が息絶えているのを見つけて、そのたびに腹ん中に黒い感情が渦巻いていたのを、俺は覚えてる」

提督「嫌な相手が死ねば『ざまあみろ』くらいは思うだろう。そうでなければ『残念だ』くらいは思うだろう」

提督「けど、あいつらが死んでたのを見ても、俺はなんとも思わなかった」

提督「何も、感じなかったんだ」

ル級「……」

提督「まあ、そんな感じで、俺も人間としては少なからずおかしくなったのか、と、思ってな」

提督「参考までに、お前がどう思ったのか、聞きたかったんだ」

ル級「……」

提督「深海か……俺は、そこでやっていけんのかねえ」

ル級「……ユックリ、考エレバイイ」
31 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:06:17.65 ID:0QNRcKgBo

ル級「マダ、時間ハアルノダカラ」スッ

 ザザァ…

提督「ル級?」

ル級「戻ッテ、早ク眠レ。サモナクバ、私ガ深海ヘ連レテ行クゾ」

提督「……そうだな。少し楽になったし、そろそろ眠れるか」

ル級「ソウダ。地上ノ未練ヲ全部清算シテ、早ク、コチラニ来イ……!」

提督「急かすなよ。つうか、たった今ゆっくり考えろっつったろ、どっちなんだお前……」

ル級「両方ダ。ユックリ考エテ、急イデ来イ。オ前ガ来ル未来ヲ、私ハ待ッテイルダケダ」

提督「……もう行くのか」

ル級「コレ以上ココニイタラ、オ前ヲ攫ッテ行キタクナルカラナ……!」ニヤリ

提督「……」

ル級「デハ、マタナ。オヤスミ、提督」クルッ

提督「……ああ、おやすみ」

 ザザァ…ン

提督「……」

提督「あいつ、俺より人間くさくなってきてんな」

提督「……」

提督「俺は……」
32 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:07:02.43 ID:0QNRcKgBo

 * 提督の寝室 *

 扉<チャッ

敷波「あ、おかえり」

提督「なんだ、敷波、起きたのか」

敷波「……目が覚めちゃった」

提督「俺が起こしたか? だとしたら悪いな」

敷波「多分、司令官のせいじゃないよ。ほら、月が明るいし」

提督「ああ……確かになあ」

敷波「目が覚めたとき、司令官がいなかったからびっくりしたんだけど」

提督「眠れなくてな。ちょっと外を歩いてきたんだ」

敷波「……誰かと会ってきたの?」

提督「ああ。ル級とな、少し立ち話をしてきた」

敷波「ふーん」

提督「なあ……誰かと会った、って、なんでそう思った?」

敷波「なんとなく。なんか、嬉しそうだったから」

提督「……そうか?」

敷波「それより司令官も早く寝たら? いつも早起きなんでしょ」

提督「ああ……」
33 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:08:03.41 ID:0QNRcKgBo

敷波「あたしも寝るね。おやすみ」コロン

提督「……ああ、おやすみ」

提督「……」

敷波「……」

敷波(なんだろ、この、嫌な気持ち)

敷波(司令官が、どこかへ行っちゃいそうな……どこかへ消えちゃいそうな)

敷波(やだなあ……なんでこんなに不安になるんだろ)

敷波「……」チラッ

提督「……」スー

敷波(ル級さんか……明日になったら、深海に行くとか言わないよね……?)

 (敷波が隣で眠る提督の腕にそっと手を乗せ、少しだけ力を込めて腕を握る)

敷波「司令官……勝手に、どっかに行っちゃだめなんだからね」ヒソッ

提督「……」スー

敷波「はぁ……寝よ」

敷波「……」

敷波「……」スヤ…

提督「……」
34 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/19(木) 01:09:03.32 ID:0QNRcKgBo
今回はここまで。
35 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:35:47.74 ID:/FOkV/ZAo
前スレ読み直してたら致命的なミスしてた……。
どっかの機会で修復します……あれほど読み返して見落とすなんて不覚。

では続きです。
36 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:36:33.16 ID:/FOkV/ZAo

 * 執務室 *

 扉<トントン

如月「司令官? 隼鷹さんをお連れしました」

提督「おう」

如月「失礼しますね」チャッ

隼鷹「お邪魔しまー……す」

提督「よう、酒は抜けたか?」

隼鷹「んー……まあ、そうだね」

提督「随分大人しいな」

隼鷹「そりゃー、そうもなるよぉ。あれだけ脅されて神妙にしてなかったら、それこそ酒が抜けてないと思われそうじゃないか?」

提督「それもそうか。とにかく、酒が抜けたってことは、お前はまだ希望を捨てたくない、ってこったな?」

隼鷹「うん、あたしは……R提督のもとに生きて帰りたいんだ。あの人と一緒にいたいんだよ」

如月「……」

提督「よし。そんじゃあ、とりあえずR提督の足取りを追うところから始めるか。で、隼鷹を送り届けていい環境かどうかを確認だな」

隼鷹「調べてもらえるのかい……!?」
37 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:37:17.83 ID:/FOkV/ZAo

提督「それがお前の望みならな。それまでの間、お前にはこの鎮守府で過ごしてもらう。必要に応じて出撃を依頼するかもしれねえが……」

隼鷹「ああ、調べてもらえるんなら、出撃くらいお安い御用だよ! と言っても、艦載機がないから、その準備からお願いしたいけどね?」

提督「その辺は明石に面倒見てもらうさ。ついでに預かってた酒も開放してやらねえとな」

隼鷹「いやぁ、それもありがたいねえ。ここ2、3日は、千歳と足柄が怖かったからねえ……」アハハ…

提督「……あんまり嬉しそうじゃねえな?」

隼鷹「いや、嬉しいには嬉しいよ? けど、せっかく悪い酒が抜けたんだしね。しばらくの間は飲む量も少しは控えてみようかな? ってさ」

隼鷹「離島の鎮守府だってことなら、物流自体少なさそうだし……酒保も覗いてみたけど、あんまりお酒もないんでしょ?」

隼鷹「酒で失敗したんだからねぇ……少しは反省しないと。また変なとこに異動させられても困るしさぁ」

如月「……ここからの異動を受け入れてくれるところ、あるかしら?」

提督「どうだろうな……やらかしの程度にもよるが、ここに居場所がないなら、あとはO中尉くらいしか話せそうなとこはねえし」

提督「変なとこ紹介してもらいたくもねえしな。行った先がそのまま溶鉱炉とか海の底とかじゃあ、さすがに気分が悪い」

隼鷹「あの、ちょっといいかな……?」

提督「ん? なんだ」
38 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:38:03.62 ID:/FOkV/ZAo

隼鷹「なんか、ここってすごい場所って聞いてんだよね。轟沈した艦娘が着任してるとか、普通ないよね?」

提督「まあな。お前は轟沈艦の扱いを知ってんのか?」

隼鷹「一応ね。で、しかも提督の階級、准尉って聞いたんだけど」

提督「おう」

隼鷹「不躾に聞くけど……不愉快になったらごめんよ? なんで提督は階級が准尉なんだい?」

提督「ん? どういう意味だ」

隼鷹「普通、轟沈経験艦の保護なんて重要な任務、尉官どころか見習い扱いにやらせるのはおかしいよ? 責任取れないじゃんか」

隼鷹「そうじゃなきゃ、あんたの階級を佐官以上にしてもらわないと、割に合わないっていうか、やらせてもらえないと思うんだけど?」

提督「そういう意味か。どうせ昇進なんて無理だからいいだろ、俺も望んでねえし」

隼鷹「なんだいそれ!? どういうこと!?」

提督「……俺の着任の経緯から話すか。如月もいいか?」

如月「ええ」コク

提督「まず、俺は妖精たちと話ができる。姿も見えるし声も聴ける」

隼鷹「え……えぇえ!?」
39 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:38:47.43 ID:/FOkV/ZAo

提督「そのせいで、俺が見習いで最初に行くことになった鎮守府の主に厄介者扱いされて、妖精と一緒に准尉の階級のままここに来た」

如月「……秘書艦もつけてもらえずに、ね」

隼鷹「はぁあ……!? この島に? 他に誰かいなかったの?」

提督「いたのは妖精たちだけだったな。艦娘もいないし人間は俺一人、あとは妖精たちしかいなかった」

隼鷹「……」ポカーン

提督「で、この島には轟沈した艦娘が流れ着く砂浜がある。俺はそいつらを埋葬してたんだが、ある日その中で生き残った艦娘を保護してな」

提督「その当時、俺は、轟沈した艦娘が深海棲艦になる、って話を知らなくて……」

提督「電話で中将に、流れ着いた艦娘をうちで引き取るって話をしたら大袈裟に驚くもんで、その時に初めてその話を知ったんだ」

如月「……」

提督「でだ、実際にそういうことがあったのか、本当にそうなるかを誰かが確認したのか……中将に訊いたら、そういうことではないらしい」

提督「だったら、この島に轟沈経験艦に住まわせて様子を見よう。ここは幸いにも離島の鎮守府、戦術的にもそこまで重要な場所でもない」

提督「俺が艦娘たちの保護と監視をするから、どうだろうか……と、提案して通してもらったわけだ」

提督「轟沈経験艦を保護するようになったのは、それからさ。おかげで、俺以外に島に住む人間が誰もいない。憲兵にも特警にも常駐を断られた」

隼鷹「無茶するねえ……そこまでする人間、そうそういないよ?」

提督「……そうかもな」
40 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:39:47.53 ID:/FOkV/ZAo

隼鷹「けど、だったらなおのこと、昇進があってもいいんじゃないの? 重要任務だと思うんだけど?」

提督「そいつは多分、中将の馬鹿息子の中佐の仕業だと思ってる」

提督「俺をこの島に封じ込めたあの男が、余所に余計なことを喋らせないため……俺に権限を与えないために邪魔してるんだと思う」

提督「個人的にはありがたいぜ、人間なんざこの島に来ないほうが楽でいいからな」

隼鷹「うへぇ……」

提督「あとは、さっきも言ったが、轟沈した艦娘が深海棲艦になるって言う話のおかげで、誰も寄り付かねえんだよ」

提督「それをいいことに、手前んとこのいらない艦娘を俺に押し付ける奴が出てきた」

提督「問題はあるが、処断するとまではいかない艦娘を、俺に預かれ、と。預かれと言うか……まあ、そういうことだな、腹立たしいことに」

提督「その時に、押し付けたい相手が上官だったらやりづらいだろ? 奴らにとってそういう扱いなのさ、俺は」

隼鷹「……」

提督「そもそも、この島の存在自体がどうも本営の連中には疎ましいようでな。関わり合いになりたくない、と思ってる奴が大多数だ」

提督「だから、仮にこの島で何か問題が起こったとしても、関わり合いになりたくない、と思ってる奴が大多数」

提督「責任を取ろうなんて奴が本営の中将以外にいねえから、明確な功績があっても誰も褒めようとしない」

提督「だからこそ、俺の昇進も発生してない、と思ってる」

如月「司令官? ……それは、本当なの?」

提督「確かめてはいないがな。中将も言いづらそうにしてたが、俺のやってることに賛同する人間が上にあまりいないらしい」
41 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:40:34.68 ID:/FOkV/ZAo

提督「現場の連中からは、自分の育てた艦娘が戻ってくるのなら、という声もあるが……」

提督「その一方で、艦娘が深海棲艦になるかもしれないリスクに釣り合わない、って意見も多いそうだ」

隼鷹「そうかあ……そうだね、自分が育てて強くなった艦娘がいきなり深海棲艦になったら、倒すの大変そうだもんねえ。心情的にもさ」

提督「海軍の上の一部の連中に支持されてるのは、艦娘の存在そのものに不確かな部分が多いから、っつう話だ」

提督「この島でやっていることは、連中にとっては実験……それも長期的な、優先度の低い内容だ」

提督「無為ではないが、有意義ではない。関わるだけ時間の無駄。そういう扱いなんだろうさ」

提督「もしも深海化する艦娘が現れたら、ミサイル落として島ごと焼き払えなんて過激なこと言う奴もいたらしい」

如月「そ、そんなの初耳よ!?」

提督「そりゃこれまで言ってなかったからな。下手に喋ってお前らの不安を煽りたくねえ」

如月「そ、それはそうかもだけど……」

提督「とにかく、不要な艦娘を押し付けるにしても、島ごと切り捨てるにしても……」

提督「俺が佐官や将官では具合が悪いんだ。あいつらは絶対に、俺に頭を下げたくないだろうからな」

隼鷹「だから、提督は准尉のままだってことかい」

提督「ああ。で、何かあったら中将に俺を処断させりゃあいい、というのが連中の思惑だろう」

提督「俺としても下手に昇進して人間どもとの付き合いを増やしたくねえし、現状維持が丁度いいと思ってる」
42 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:41:18.05 ID:/FOkV/ZAo

隼鷹「……それを差し置いても、妖精と会話できる人間て珍しいんだろ? 人材としても、もっと大事にされなきゃ駄目なんじゃないの?」

提督「艦娘を大事に思ってる奴なら、そう思うだろうな」

提督「だが、そうじゃない人間にとっては、妖精から何を言われるかわからなくて疑心暗鬼になるってもんだぜ?」

隼鷹「……」

提督「ましてや後ろめたいことをしている連中にとっちゃあ、妖精から余計な情報を掴むかもしれないんだ。邪魔でしかないと思わねえか?」

隼鷹「……そういうこと、しなきゃいいじゃん……」

提督「生憎と、そういう上司にしか恵まれたことがなかったんでね。ま、そんなもんだと思って、諦めな」

隼鷹「はあ……とんでもない人のところに来ちゃったもんだねぇ、あたしも」

如月「……ねえ司令官? この島にミサイルを落とすとか言う話、いつごろ知ったの?」

提督「いつだったかな? 大和が来て、N中佐が捕まって……たしかその辺りだったと思うが」

提督「あっちの鎮守府の赤城からか、中佐が電話でぎゃーぎゃー喚いてるのを聞いたらしい」

如月「そういうお話、どうして早くして下さらなかったんですか」ズイ

隼鷹「ま、まあまあ、落ち着きなよ! 普通はミサイル落ちてくるかも、なんて物騒な話、そうそう話せたもんじゃないよ」

隼鷹「秘密にされたことを信頼されてないって思うのもしょうがないかもしれないけど」

隼鷹「みんながみんな如月みたいに動じないわけじゃないし、噂だけ独り歩きしても危ないじゃないか?」
43 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:42:03.30 ID:/FOkV/ZAo

隼鷹「少なくとも、あたしゃ今の話を聞いて、とんでもないところに来ちゃった、って素直に思ったわけだしさあ」

隼鷹「心配性な子とかがいれば、不安がたちまち艦隊に伝播しちゃう恐れもあるんだから、緘口令もしかたないよ。ねぇ?」

如月「……それはそうなんですけど。司令官はいつも一人で溜め込む人だから、相談くらいはあっても良かったのに、って」

如月「いつまでも私たちを保護対象だと思ってるのが、ちょっと不満なだけなんですっ」

提督「お前ひとりに話すわけにもいかねえだろ」

如月「そんなのわかってますっ!」ツーン

提督「なんで怒るんだよ……」

隼鷹「なんでって、そりゃ提督、如月は特別扱いされたいんだよ〜。なぁ〜?」ニッ

如月「!?」セキメン

隼鷹「ほら、赤くなった。提督も、もうちょっと女心ってのを理解しなよ〜?」

提督「そりゃ無理だ、俺にそういうもんを求めんな。好いた惚れたの話は、俺には理解できないと思ってくれって、何度も……」

隼鷹「っかぁ〜、身も蓋もないねぇ……! そんなんじゃあ、そのうち艦娘に愛想を尽かされちまうよ?」

提督「……お前、意外と世話焼きだな?」

隼鷹「ちょっ!? 意外ってなんだよ、意外って! 失礼しちゃうねえ!?」
44 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:42:48.44 ID:/FOkV/ZAo

提督「ああ、悪いな。世の中の酔っ払いは、手前と酒のことしか頭にねえと思ってたもんでなあ」

隼鷹「そりゃーお酒の部分は否定しないけどさあ! 言い方ってもんがあるでしょうよ! 言い方ってもんが!」

如月「唐突にイチャイチャし始めないでもらえます?」ジトッ

隼鷹「してないよ!? 今のやり取りをイチャイチャって言うの!?」ガビーン

龍驤「ええツッコミが聞こえてきたで!」ドアガチャー

隼鷹「どっから出てきたんだよぉ!?」

提督「俺が呼んだんだよ。同じ空母だからな」

龍驤「あ、ノック忘れとったわ。ごめんね?」

提督「いいけどよ。入ってくるタイミング良すぎだろ」

龍驤「いやぁ〜、なんか痴話喧嘩っぽい空気だったもんで、まだ入っちゃまずいかなあ、って」アハハー

隼鷹「だからそういうんじゃないんだってば〜。あたしにはR提督っていう、ちゃんと心に決めた人がいるんだからさあ」ポ

龍驤「ほーん? そかそか」ニヤニヤ

提督「とりあえず、そのR提督のもとに隼鷹を送り届けるのが目的になるんだが……」

提督「それまでの間、どんな風に過ごしてもらうか、実力の程はどんなもんか、龍驤に見てもらいたくてな」

龍驤「ほほーん。ええで、うちにまかしとき!」ムネポーン
45 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:43:33.05 ID:/FOkV/ZAo

龍驤「じゃあ早速、工廠へ……」

隼鷹「あ、ごめん。悪いんだけど、できたらもうひとつお願いしたいことがあるんだけど、頼めるかなあ」

提督「? なんだ?」

隼鷹「できたらでいいんだけど……飛鷹のことも調べて欲しいんだ」

提督「飛鷹? お前の言ってた姉妹艦のことか?」

隼鷹「そう。あたしがR提督と言い争ってビンタしたせいで、あたしたちが散り散りになった、って話したと思うけど」

隼鷹「飛鷹も同じように……いや、同じじゃなくて、あたしのとばっちりかな。飛鷹も余所の鎮守府に飛ばされたはずなんだ」

提督「……なるほど。お前としては、姉妹が心配だと」

隼鷹「R提督の居場所だけでも苦労すると思うのに、飛鷹のことまでお願いするのは……ちょっとどころじゃなく図々しいとは思うけどさ」

隼鷹「R提督のことは、飛鷹とあたしで支えてきた自負があるんだ。だから、R提督のところへ行くときは、飛鷹も一緒にって思ってるんだよ」

隼鷹「当然のように一緒にいた二人と会えないのがこんなにつらいだなんて、思ってもみなかったしさぁ……」

提督「R提督については当てがあるんだが、飛鷹のほうは一から調べねえと駄目そうだな」

隼鷹「あ、当てがあんのかい!?」パァッ!

提督「R提督だけだぞ?」

隼鷹「それだけでも良かったよぉ……なんせあれから全然情報が入ってこなかったしさあ!」ウルッ
46 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:44:19.99 ID:/FOkV/ZAo

隼鷹「とにかく、今は二人が無事でいて欲しいねえ……それがわかれば、あとは時間がかかっても会いに行くだけさ」

如月「……」

龍驤「……」

提督「……そう思うんなら、まずはお前がしっかりしねえとな」

隼鷹「そうだねえ。その通りだよ」ニッ

提督「龍驤、隼鷹の艦載機、選んでやってくれ」

龍驤「了解! ほな行こか!」

 扉<パタム

如月「……」

提督「? どうした?」

如月「え? な、なんでもないわ?」

提督「そうか? ……ならいいんだが」
47 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/22(日) 12:45:36.09 ID:/FOkV/ZAo

提督「さて、あいつも約束を守ったことだし、こっちも約束のブツを取りに行くか」

如月「約束?」

提督「ああ、L大尉から預かった大量の酒を食堂に運ばなきゃな。足柄と千歳にも禁酒を強いたわけだし」

提督「ご協力感謝します、のアルコールを提供してやんねえと……」

如月「そうね……千歳さんたち、どんなテンションになるのかしら」フゥ…

提督「そういや、如月は酒は飲めるのか?」

如月「えっ? え、ええっと……そういえば、飲んだこと自体、なかったかも?」

提督「そうか……考えて見りゃあ、酒なんて必要ないと思ってたもんなあ。うちの連中、どのくらい飲むんだ?」

如月「うーん、そもそもみんな飲んでるところ自体、見てないかも……??」

提督「……もしかしてこの鎮守府、全員酒のことを忘れてるくらい健全だったのか? それもすげえ話だな」

如月「そ、そうね……」

提督「そう考えると、改めて酒が入ったときが怖いな」

如月「……どうなるのかしら」
48 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2022/05/22(日) 12:46:17.71 ID:/FOkV/ZAo
今回はここまで。

次回は恐怖の酒宴の予定。
49 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:19:23.81 ID:iURvGzhHo
久々に平和なのを書いてるなあ、と思いつつ。

続きです。
50 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:21:16.14 ID:iURvGzhHo

 * その日の夜 *

 * 食堂 *

山城「はぁ……耳が幸せだったわ……」ウットリ

扶桑「お酒と一緒に、那珂ちゃんのライブまでいただけるなんて、幸せね」ウフフ

那珂「たっだいまー! 山城ちゃん、今日のステージどうだった!?」

山城「幸せよ……那珂ちゃんの歌を聞いてる時間は至福の時だわ」

山城「それなのに……」

明石「はーい、それでは引き続き、ビール早飲み競争でーす」

山城「そういう昭和的なくだらない催し物を、なんでライブの後にぶちこむのよっ!? ああ、不幸だわぁ……!!」

那珂「じゃあ、那珂ちゃんも出番だから行ってくるねー!」

山城「いやああああ! 那珂ちゃんは歌とダンスで売れればいいのよ!?」

山城「そんなバラドルか地下ドルかわからないようなことしなくていいのよぉおお!! お酒で喉がどうにかなったらどうするのおおお!!」

 ガヤガヤ…

 アハハハ…

提督「……盛り上がってんなあ」
51 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:22:01.51 ID:iURvGzhHo

如月「あらぁ、司令官〜」

提督「如月か。お前も飲んでるのか?」

如月「ええ。司令官もいかが?」

提督「いや、俺はいい……つうか思ってた以上に騒々しいな。いつの間にこんな企画してたんだ」

如月「こんなにみんなが騒いでるの、滅多にないからいいと思うんだけど?」

提督「まあ、そうだな……こんな馬鹿騒ぎ、そうそうやる機会もなかったしなあ」

如月「司令官はぁ、静かなのがお好み?」

提督「どっちかと言えばな。俺が大口開けて笑うようなタイプに見えるか?」

如月「ふふっ、そうね。それじゃ、見回りが終わったら、一緒に飲みません? 二人でゆっくり……」

提督「あんまり飲む気はないんだが……気が向いたらな」

如月「ええ、待ってるわ。うふふふっ」
52 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:22:45.87 ID:iURvGzhHo

 *

初雪「司令官、誘ってこなかったの……?」

如月「ええ。あとでゆっくり、お話しましょ、って」

初雪「ふぅん……」チビチビ

隼鷹「ふたりはお酒飲めるんだねえ」

如月「初めて飲んだんですけれど、ワインっておいしいのね、うふふっ」

初雪「悪くは……ない……」チビチビ

隼鷹「白ワインは魚料理に合うし、赤みたいに渋みもないからねえ。馴染んで来るとクセになるよぉ」ニヒヒ

隼鷹「けど、ビールとかと比べるとアルコール度数が高いから、チーズとか食べながらゆっくり飲むんだよー?」

大和「うふふ。うふふふふ……」ポヤー

隼鷹「って、ちょっとぉ!? なんで大和ができあがっちゃってんの!?」

陸奥「美味しいからってあっと言う間に飲んじゃったのよ……ほら大和、水飲んで、少し目を覚ましなさいよ」

大和「うふっ、うふふふひっく、んふふふっ」

榛名「こうならないように、二人は気を付けてくださいね」

如月「ええ、気を付けます」ニコニコ

初雪「はい……」コク
53 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:23:31.19 ID:iURvGzhHo

 *

利根「おお、提督、貴様も来ておったか」

神通「んぎゅ……」

提督「うん? お前が神通に肩を貸すなんて、どうしたんだ?」

利根「どうも酒に弱いようでな。しかも泣き上戸ときておる。少し外の空気に触れさせてやろうと思ったのだ」

利根「昔の話を語りだそうとしているし、ここでそれを言わせるのはよろしくなかろう」ヒソヒソ

提督「……大っぴらに話せる話でもねえしな。まかせていいか?」

利根「うむ、任せよ」ニッ

利根「それから、テレビ局の人間がこの島で亡くなった件、提督にはお咎めはなかったそうじゃな?」

提督「ああ、注意喚起をして、かつこちらの指示に背いた上での事故、って扱いになったからな。中佐がうまくやったんだろうよ」

利根「その朗報も、この馬鹿騒ぎの一因である。みなのことは大目に見てやってくれ」

提督「……ああ」アタマガリガリ

神通「んぅう……とねさぁん……」ヒック

利根「おお、では行くとするか」

提督「……」
54 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:24:15.92 ID:iURvGzhHo

 *

龍驤「おぉ〜、提督も来たんか。たこ焼き食べる?」

提督「んん……珍しいな、龍驤が厨房に入ってるのか」

龍驤「うち、下戸なんよ。お酒入ると気持ち悪くなってなあ……」

龍驤「飲んで一緒に騒いだりはできひんから、うちはこっちでお役立ちやー、っと」クルクルッ

提督「おお、うまいな。手慣れたもんだ」

龍驤「よっし! ほい、一皿分できたでー」

三隈「はーい、お持ちますね」

提督「三隈? お前が手伝ってるのか」

三隈「私もアルコールは苦手でして。消毒薬のにおいとか、そういうのでもちょっと……」

提督「なんだ、それで酒飲みの場所にいて大丈夫なのか?」

三隈「最上さんが羽目を外さないか心配なので、そこは我慢ですわ」

提督「過保護だな……そういやだいたい龍驤と一緒にいる雲龍はどうした?」

三隈「あちらで妖精さんたちと一緒に、龍驤さんが焼いたたこ焼きを召し上がってます」
55 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:25:00.70 ID:iURvGzhHo

提督「うん? 妖精たちもいんのか」

島妖精A「遅かったな提督」モグモグ

島妖精C「雲龍と一緒にお先にいただいてるよ!」グビッ

島妖精H「たまにはこういうのもいいね〜」

提督「お前らも酒飲んでんのか」

島妖精E「雲龍とシェアしながらね」

島妖精D「命の水だよ!」グビグビグビ!

提督「お前は水みたいに飲んでんじゃねえよ」

島妖精B「あ、提督、妖精ちゃん借りてるよー」

提督「ああ、うちの妖精もいるのか」

妖精「」スヤァ…

提督「……って、おい」

島妖精A「お前の連れは酒に弱すぎだ……」

提督「ま、いいけどよ……」
56 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:25:47.01 ID:iURvGzhHo

雲龍「……」モッキュモッキュ

提督「雲龍はくっそ幸せそうな顔してんな」

三隈「そ、そうなんですか? あんまり変わってない気がするんですけど……」

提督「雲龍はあんまり表情の起伏がないっつうか……ちょっとわかりづらいかもな」

三隈「……ちょっと??」クビカシゲ

龍驤「けどまあ、あんな嬉しそうな顔で食べてるの見たら、作る方も力が入るっちゅーもんや」

三隈(全然わかりませんわ……)

龍驤「実はうち、料理自体あんまりやったことなかったんよ」

提督「そうなのか?」

龍驤「先生の腕と教え方がええから、ぶっつけ本番でもやっていけてる感じやね!」

提督「へえ。誰に習ったんだ」

龍驤「長門!」

提督「ああ、なるほど。あいつも料理好きだしな」

龍驤「今回も長門がいろいろ作ってたから、うちが引き留めたんよ。厨房はいいから、飲めへんちびっ子集めて話し相手になれ、って」

三隈「正直、意外でしたわ。あんな風に駆逐艦に慕われる長門さん、少なくとも私は初めてお会いしましたから」

提督「長門は酒を飲んでるのか?」

三隈「どうでしょう? 見た感じウーロン茶のようでしたけど」

提督「ちょっと見てくるか」

三隈「はい、いってらっしゃいませ」
57 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:26:31.72 ID:iURvGzhHo

 *

提督「よう」

長門「おお、提督か」

朝潮「司令官! お疲れ様です!」ビシッ

暁「司令官もお酒を飲みに来たの?」

提督「いや、俺は飲む気はねえぞ。長門もそうなんだろ?」

長門「ああ、見ての通りウーロン茶だ。このテーブルは飲まない艦娘で集まっている」

電「電も、お酒は好きじゃないのです」

島風「酔って走ると気持ち悪くなりますしー」

敷波「飲めるって言えば飲めるんだけど、あんまりおいしいと思わないんだよねー」

長門「私もそのくちだ」

朝潮「私もです!」キョシュ!

潮「わ、私は、飲むと気持ち悪くなっちゃいますので……」

霞「私もまあ……似たようなものね」

提督「体調崩してまで飲むもんじゃねえからな。無理に飲ませようとする奴がいるなら俺が追い払うぞ」

長門「ああ、それならさっき暁がやってくれたぞ」

提督「なに?」
58 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:27:15.80 ID:iURvGzhHo

長門「私たちに千歳が酒を勧めてきたんだが、その返しが鮮やかでな」

暁「千歳さんが、お酒はレディーの嗜み、って言ってきたの。なんでもかんでもレディーにかこつけるのはどうかと思うんだけど」

提督「だな」

暁「それに、私の体はどう見ても子供でしょ? 私のような明らかな子供に向かってお酒を勧めるのは、大人としてどうなのかしら?」

提督「大人扱いはまだ早い、ってか?」

暁「ええ、自分のことなんだもの、レディーを自覚するなら私自身の体も正しく自覚するべきだと思わない?」

長門「と、まあ、私がフォローを入れるまでもなく、ぐうの音も出なくなった千歳は引き下がらざるを得なかったわけだ」

提督「何やってんだあいつは……」

長門「それに、私も誘われたんだが丁重にお断りしたばかりだ。素直に聞いてくれる相手で良かったぞ、なあ初春?」

初春「まったく……」ヌッ

提督「初春?」フリムキ

初春「なんじゃ、貴様もシラフか。長門が無理なら貴様とと思ったが……」

提督「初春は飲んでんのか」

初春「うむ。まあまあ、人並みには飲めると言うたところかの。できれば騒々しくない酒を、と思って来たんじゃが……あれを見よ」

提督「?」フリムキ
59 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:28:01.02 ID:iURvGzhHo

吹雪「あっはっはっは! 不知火ちゃん顔真っ赤!!」

不知火「……」カオマッカ

黒潮「あかんやん! いつゆでだこになったん! あはははは!!」

白露「たこ焼き食べながらお酒飲んで、ゆでだこ! あっはっはっは!」

朝雲「こーらー! みんな不知火で遊んでちゃだめでしょー!?」

山雲「あさぐもね〜ぇ〜、おちついて〜〜?」マッカ

吹雪「山雲ちゃんも赤い!! あはははは!」

白露「あっはっはっは、赤いのに3倍遅い!!」

黒潮「これがほんとの逆シャアやな! ナイチンゲールや!!」

朝雲「ま、まあ、確かに山雲は癒し系だけどぉ……」ニヨニヨ

不知火「朝雲、そのナイチンゲールはそういう意味ではありませんよ」

吹雪「不知火ちゃんツッコミが冷静!!」

黒潮「ぶはははは、笑かさんといて!!」

白露「あはははは! ところでナイチンゲールってそれ何のネタ?」

黒潮「知らんで笑っとったんかい!」ツッコミー

白露「逆シャアって言ったらサザビーじゃないの?」

黒潮「サザビーktkr!!」

不知火「黒潮。それは漣です」

吹雪「冷静! 不知火ちゃん冷静!! あっははははは!」
60 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:28:46.02 ID:iURvGzhHo

初春「わらわの傍には、どうも笑い上戸が固まったみたいでのう……」

提督「不知火と山雲は大丈夫なのかよ……」

初春「見た感じあまり飲んでおらんのだが、顔に出やすいタイプなんじゃろうなあ」

初春「あの手合いに酒を勧めるのも気が引けるしのう。もう少しじっくり話せる相手が欲しくて、提督はどうかと思ったんじゃ」

提督「飲まずに話を聞くだけなら……ん? なんだ?」

初春「あれは若葉じゃな。呼んでおるようじゃが、行ってみんか」

提督「そうだな。あんまり気乗りしねえが」

 *

武蔵「おい、あまり飲ませすぎるんじゃないぞ」

千歳「大丈夫ですよ、ささ、もう一杯」

筑摩「んふ、んふふふふっ」ヒック

最上「あはははは!」ヒック

比叡「あはははは!」ヒック

古鷹「楽しいですね!」ヒダリメピカーー

五十鈴「古鷹さん眩しい!?」

武蔵「本当に大丈夫なのか……?」

千歳「うふふふ、楽しい……!」ポワワー

武蔵「……ああ、千歳は自分が飲むより他人に飲ませるのが好きなのか。厄介だな」アタマオサエ
61 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:29:30.76 ID:iURvGzhHo

 *

若葉「……来てもらえたか、助かる」

大淀「うぐぅ……」グデェ

朧「んむう……」グデェ

初春「なんじゃこの有様は」

若葉「二人に絡まれて延々と愚痴を聞かされた。二人とも然程お酒には強くないようで、酔い潰れてしまったが」

提督「あー……どっちも内に溜め込みそうなタイプだからな」

若葉「それでだ、提督にこの二人を部屋へ連れて行ってほしいんだが」

提督「俺がか?」

若葉「ああ、是非。愚痴の大半は提督のことで、もう少しコミュニケーションを取ってもらいたい旨の話だった」

若葉「提督が部屋までエスコートしてくれれば、溜め込んだ不満も多少は解消されるだろう」

提督「朧はともかく、大淀に愚痴られてたってマジか? そこまで愛想悪くした気はねえんだが……」

若葉(……なるほど、これが朴念仁というやつか)

五月雨「て、提督! こっちも助けてもらえませんか……!」

提督「そっちはなんだ?」

由良「んゆへへへえ〜、提督さぁん? んが、んふゅ〜……」グデェェン

初春「由良殿……? これはまたひどいのう」ヒキッ
62 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:30:18.90 ID:iURvGzhHo

提督「おいおい、べろんべろんじゃねえか……どんだけ飲ませたんだよ」アタマオサエ

五月雨「こちらの缶チューハイを一本だけ……」

提督「マジか。ロング缶ですらねえのかよ」

摩耶「提督ー、こっちもなんとかしてくれよー」

提督「うん?」

霧島「うっうっ、ぐすぐす……」ヒシッ

鳥海「むにゃあ……まやあ……」ヒシッ

提督「両手に花ならぬ両手に眼鏡か。モテモテだな」

摩耶「そういう冗談はいいから、どっちか引き受けてくれよ。霧島さんこんなに泣き上戸だったなんて思ってもなかったしさ」

提督「引き受けろっつっても、見る限り、どっちもお目当てはお前じゃねえか。鳥海はともかく、霧島は他の金剛型呼ぶか?」チラッ

金剛「Hey テートク ? Would you call me ?」ヌゥッ

提督「うお。急に背後に現れるなよ……まあ探してたのは事実だが」

摩耶「もしかして金剛さんも酔ってんのか?」

金剛「Non-non-non ! I'm not drunk yet...」セナカニダキツキー

提督「……こりゃこっちも相当酔ってるな。ほれ、しっかりしろ」ナデナデ
63 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:31:16.84 ID:iURvGzhHo

金剛「Hmm... what a pleasant smell...」スリスリ

提督「鼻をこすりつけるな、犬か猫かお前は。それより金剛、霧島と鳥海と、どっちでもいいから見てやってくれよ」

金剛「? 霧島……? Why don't you cry ?」

霧島「金剛、お姉様……?」グスン

金剛「霧島……こんなに泣き腫らして……つらかったんデスネ。さぁ……Please come in」リョウテヒロゲ

霧島「こ……金剛お姉様ー!」ヒシッ

鳥海「んぅ……あ、いいなあ……」ヨロフラ

金剛「Okey, 鳥海も来るデース……!」

鳥海「……ふあぁい……」フラフラ ヒシッ

摩耶「……なんか、これはこれで面白くねーな?」

提督「金剛のハグは凶悪だからなあ。摩耶もいっぺん体験してみな、びっくりするぞ? 俺も溺れかけたからな」

摩耶「はぁあ!? ちょっと待て、お前もやってもらったってぇ!?」

提督「有無を言わさず頭をがっちりホールドされてな。途中で抜け出せてなかったら、俺もどうなっていたか……」

摩耶「それ、本気で言ってんのか?」

提督「ああ本気だ。真面目に恐怖を覚えたぞ? 嘘だと思うんならお前もやられて来い。耐えきったら手放しで称賛すっから」
64 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:32:01.37 ID:iURvGzhHo

摩耶「……どこまで本気かわかんねーけど、やべーんだな?」

提督「ああ。真面目にくそやべえ。なあ、五月雨? 金剛に頭なでてもらったとき、すごかったろ?」

五月雨「えっ? 金剛さんの……あ、はい、その、すごかったです……」ポ

摩耶「マジかよ……そこまで言うんなら、本当に洒落になんねーんだろーな」

提督「とりあえず霧島と鳥海の二人は金剛に任せて、由良を部屋に連れてくか。こん中じゃ一番重症っつうか見るに堪えねえ」

五月雨「は、はい、お願いします……ふわぁ」

提督「……五月雨も眠そうだな? お前も休むか?」

五月雨「え? あ、はい……そう、します……」

提督「ああ、その前に少し水飲んでこい。水分摂って体内のアルコール分を薄めると酒が抜けやすいって聞いたことがある」

五月雨「わかり、ました……」フラフラ

提督「あいつ大丈夫か?」

初春「ふむ、由良殿のことで安心して気が抜けたら睡魔がやってきた感じかの?」

若葉「そのようだな。五月雨も由良さんにすすめられるがまま同じものを飲んでいたが、お酒は初めてだったんだろう」

初春「しかし、すすめた当人があの弱さではのう……」

由良「えへぁ……」グデーン
65 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:32:45.94 ID:iURvGzhHo

摩耶「……あたしも鳥海を部屋に連れてくかぁ。どう見ても眠たそーだしなあ」ガタッ

提督「その方が良さそうだな。ほれ、由良起きろ。背負ってくからこっち向け」

由良「んふぇ〜」セオワレ

朧「……」ジロォ

大淀「……」ジトォ

若葉「……」ゾク

提督「若葉、悪いが朧と大淀は後で連れて行く。もうしばらく相手しててやってくれ」

若葉「……わかった。早めに頼む」

五月雨「お、お待たせしました」

摩耶「よーし、鳥海! 一緒に行くぞ!」

鳥海「ふわぁぁ……まやぁ……むにゃ……」ヨロヨロ

提督「じゃあ行くか」スクッ

由良「ん……んふっ、すん、すんすんすん……くふん」クンクン

 スタスタ…

若葉「由良さん、滅茶苦茶鼻を鳴らしてたな……」

初春「貪るように提督の背中の匂いを嗅いでおったのう」

若葉「……ところで、金剛さんは何を飲んでるんだ? 紅茶のカップで飲んでいたはずだが……」

初春「む、あれじゃな。ティーポットの傍らにブランデーが置いてある」

初春「うむ……ティーカップからもブランデーのにおいがするな。さては紅茶にブランデーを混ぜて飲んでおるのか」

若葉「さすが、金剛さんもしゃれたお酒を嗜むものだな」フーム
66 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2022/05/29(日) 22:33:30.51 ID:iURvGzhHo
今回はここまで。しばらく酒飲みが続きます。
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