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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3

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837 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:58:23.91 ID:hWUH9Ue/0

美琴「邪魔しないで……!」

雛菜「痛い痛い痛い……!」


肉に深く突き刺さり刃先は貫通している。
だがそれが却って刃にとっては返しとなって、ナイフを抜き取るには障害となっているようだ。
美琴は二の手が撃てない焦りを額の汗で滲ませた。


ルカ「……畜生……!!」

ドンッ


その不意を突いて私は頭から美琴の脇腹に突っ込んだ。
838 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:59:29.34 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「お、おい……大丈夫か!?」


すぐに私は能天気女の手を取った。
ひどい有様だ、血は止まらないし、断面からはもはや骨が見えてしまっている。
しかも、この刺さり方はまずい。指の根本の神経が密集する部分を狙っているかのような突き刺さり方。
激痛を感じるどころではないはずだ。


透「雛菜……?」


まるで魂が抜けてしまったかのようにへたり込んでいる浅倉透。
彼女はまだ事態が飲み込めていない様子だった。


ルカ「クソ……何がどうなってやがる……! とりあえず、包帯……なんか応急処置できるもんはねえのか……!」

雛菜「痛い……痛いよ……」


私は突然居合わせただけの存在。
夜に照明と赤とが混ざるこの異様な空間に身を置いて、体を火照らせる以外の反応が未だ示せずにいた。
839 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:00:27.31 ID:hWUH9Ue/0

その一方で、一度強制的に隔絶を行われたせいで襲撃者は冷静さを取り戻しつつあった。


美琴「……ルカ、邪魔しないで」

ルカ「み、美琴……!」


美琴はゆっくりと体を起こしたかと思うと、そのまま二本目を取り出した。
能天気女の手に刺さっているナイフと同等かそれ以上の刃渡り。
そんなナイフを両手で持って、浅倉透に向き直る。


雛菜「だ、ダメ……」

美琴「……今度こそ、必ず」

ルカ「バカ……何やってんだ……! 落ち着けって……!」


慌てて遮るようにして前に出る私と能天気女。
能天気女は傷の手当ても何もしていない。体を少しよじるだけでパタタッと音を立てて血のしずくが床に落ちる。
でも、そんな痛切な状態でさえも美琴の視界には入らない。
美琴が見ているのはただ一つ、憎しみを向けるべき存在。

____標的の、浅倉透だけだ。

840 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:01:20.50 ID:hWUH9Ue/0

美琴「……私は冷静だよ。むしろ他のみんなの方がおかしいんじゃないかな。自分は浅倉透を騙る偽物、更にはこの島に私たちを連れてきた張本人だっていう本人の証言もある」

美琴「にちかちゃんは最初から、ずっと……この子の怪しさに気づいていたのに」

美琴「……どうして、どうして……この子を受け入れて、にちかちゃんを拒絶するの……!?」

ルカ「ち、違う……! 私たちは七草にちかを拒んだりなんかしてねぇ、こいつも……それだから敵になるってわけじゃない、私たちに協力を宣言してくれてんだ……!」

美琴「言葉なんか何の信用になるの……!」


聞く耳を持たない人間に説得なんか無意味だ。
言葉は万能じゃない。
燃え盛る油に水を注げば却って激しく燃え盛る様に、美琴は私の言葉で逆上する。
ヘビが獲物を締め上げるような動作で、柄を持つ手にぎゅっと力がこもる。
841 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:02:05.90 ID:hWUH9Ue/0




美琴「私は……こんなところで止まっていられないの!」



身体の震えが、止まった。


(……来る!)


踵が床から離れた。
この部屋はそう大きなスペースではない。
美琴のすらりと長い脚ならば、ほんの数歩のうちに私たちのもとに到達するだろう。
ナイフを持った手なら更に前に伸ばすことだって。
刃が届くまでの時間となると、もはやコンマの世界だったのだろう。
そんな世界、感知しえない。
人間の反射神経ぎりぎりの世界は本能で観測するほかない。
842 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:03:17.33 ID:hWUH9Ue/0





____私の本能は、ギリギリまだ生きていた。





843 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:04:16.66 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「……痛ェな……」

美琴「ルカ……!?」


不思議な感覚だった。
こんなにも冷たいものを触っているのに、両手は焼け落ちそうなくらいに熱い。
掌では生暖かいものが蠢いて、ぐじゅぐじゅと音を立てる。
その生暖かい何かは散々蠢いたかと思うと、わずかな隙間から零れ落ちて、床で破裂し、赤く染め上げる。
それを見ているうちに、じんわりと、それでいて確実に。
ズキズキとした感覚が腕を伝って、全身の力を抜いていく。

両手で、ナイフの刃先を掴んでいた。


ルカ「痛いんだよ、バカ野郎……!!」


砕けそうな腰を軸にして、弱弱しく美琴の腹を蹴った。
美琴はさっき以上の軽さで吹き飛んだ。

844 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:05:55.64 ID:hWUH9Ue/0

透「ちょっ、なんで……なんでそんな……」

ルカ「ああ?! 知らねーよ……私だってなんでこんな真似してんのか……」


浅倉透に手首を掴まれた。
翻して証明の元に晒された掌はパックリと切れており、血に塗れていた。


ルカ「それに、私より市川雛菜だろうが……!」


でも、私の切り傷はあくまで表面上にとどまる。
肉を多少割いていたとしても、まだリカバリーは効く。
市川雛菜のそれは、レベルが違った。
ナイフを掴んだことに当惑するばかりの私たちをよそに、市川雛菜はその場にうずくまる。
ナイフの突き刺さった手を腹部の下に隠すようにして、背中を丸めている。


ルカ「クソ……ナイフを下手に抜くわけにもいかねえ……モノミ、モノクマでもいい……! 早く治療してやってくれ……!」

雛菜「うぅ……」


私が余裕なく叫ぶと、すぐにトテトテと場に不似合いな素っ頓狂な足音とともにモノミが姿を現した。

845 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:07:07.31 ID:hWUH9Ue/0

モノミ「な、何が起きてるんでちゅか……!? 市川さんに斑鳩さん……いや〜〜〜〜〜! スプラッタでちゅ〜〜〜〜!」

ルカ「スプラッタでもオモプラッタでもねえ! さっさと治療しろ! このままじゃ市川雛菜の手は……!」

モノミ「は、はい! わかりまちた……斑鳩さんも、治療しまちゅから一緒に病院に行きまちゅよ!」


モノミは市川雛菜に肩を貸すようにしておぶると、私に同行を促した。
見た目の割に力はある、モノケモノを撃退していただけのことはあるらしい。


透「雛菜、しっかり……大丈夫だから」


モノミの背中で浅く呼吸をする市川雛菜に声をかける。
それに応じて、首をしんどそうに傾げて浅倉透の方を見た。


雛菜「透ちゃん……怪我はない〜……?」

透「ないよ、ありがとう……その、だから」


浅倉透の言葉はたどたどしい。
いつも多くを語るような人間ではなかったが、それに動揺が拍車をかけていた。
846 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:08:45.75 ID:hWUH9Ue/0


雛菜「あは〜……それならまあいいや〜……」

透「なんで……私、本当の『浅倉透』じゃないんだよ……ただのコピーでさ、雛菜が体を張ってまで守る意味なんて……」


いつものような余裕がその言葉からは感じられなかった。
自分自身の存在と言う負い目が、この恩義を否定しようとしていた。


雛菜「ん〜……よくわかんないけど〜……」

雛菜「幼馴染だからとか、透先輩と同じ見た目だからとか、そういう理由じゃなくて」



雛菜「雛菜が守りたいと思ったから! それだけじゃダメ〜?」



失血していくさなか、顔色の悪い笑顔だった。
痛々しいその右手で不格好なピースをつくり、プルプルと持ち上げて。
私でも、その光景には感じ入るものがあった。

847 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:09:48.24 ID:hWUH9Ue/0

___でも、あいつはそうではなかった。


美琴「……」


美琴はお腹を抑えるようにして気配無く立ち上がり、そのまま私たちの横をすり抜けていく。


ルカ「ま、待て……美琴!」


掴んだ裾に、私の手のひらの血がべったりと付着した。


美琴「……ルカ、ごめんね」

ルカ「謝んのは私じゃねえだろ……!」



美琴「……もう、目の前に姿は現さないから」


848 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:10:28.83 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「……あ?」

美琴「……それじゃあ」


どうやら私の傷も浅くはないらしい。
がっちりと指で挟んで掴んでいたはずの裾はスルリと離れ、その影はすぐに夜の闇と馴染んでしまった。
あいつだって何度も突き飛ばされて無傷でもないはず、それなのに全く追いつけなかったのはその体に背負い込んでいるものの重量の差。
私の足は部屋の内側には軽いが、外側には重たかった。


モノミ「……これ以上の危害を加えてくる気はないんでちゅかね……?」

透「……多分、相方を傷つけたからじゃないかな」

ルカ「……」

透「雛菜を刺したことよりも、多分そっちの方がずっとずっと……痛いんだと思う」

ルカ「……チッ」


私たちはモノミのすぐ後に続いて、部屋を後にした。

849 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:13:28.83 ID:hWUH9Ue/0
------------------------------------------------
【第3の島 病院】

私の傷はナイフを掴んだために皮膚がぱっくりと切れ、一部筋肉を傷つけた程度。
気が飛ぶほど沁みる消毒をした後に、包帯をぐるぐる巻きにすることで何とかなった。

だが、問題は市川雛菜。
明らかに貫通していたナイフを、美琴は抜き取ろうとあがいたことで更に傷を広げていた。
不幸なことに骨とぶつかることもなく突き刺さってしまったがゆえに、出血も激しく病院に着くころには市川雛菜は気を失ってしまっていた。
モノミにとりあえず委ねるほかなく、私と浅倉透はロビーの椅子に腰かけてその時を待った。


ルカ「……突然、押し入ってきたのか」

透「うん……二人で部屋にいたところに、インターホンが鳴って」

ルカ「扉、開けたのか? 不用心だな」

透「……実は、これ」


懐からくしゃくしゃになった紙を目の前で広げる。
罫線が数本横にひかれた長方形の紙、手紙の様式だ。
私はそれを引っ手繰るようにして目を落とした。
850 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:15:24.97 ID:hWUH9Ue/0



『今晩大事な話がある。夜のアナウンスが鳴ってから十分ほど経ったら部屋に行くから入れてくれ』



ルカ「……は?」


成程二人はあらかじめアポイントを受けていたのだ。
これを受け入れてしまっていたがために、美琴の来訪だというのに不用心にも扉を開けてしまい、結果として刺されてしまった。
その流れは飲み込めた。
でも、どうしても飲み込めない一つの事実がある。

それはどれだけ頭を捻ろうとも答えが見つからない、嚥下するにはあまりにも大きくていびつな形をした謎。



_____その手紙は、完全に私の筆跡だったのだ。


851 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:17:07.86 ID:hWUH9Ue/0

どこの教室に通ってもいない、誰にも師事をしていない、ぶっきらぼうで直線的なボールペンの字は私がスケジュール帳に殴り書いた文字と完全に同一。
だが、当然ながら身に覚えなんてない。
私はあの時扉を開けたのは、あさひの様子を見に行くため。
それにアポイントなんかとるつもりもなかったし、そもそも人の都合を伺って訪問をするような几帳面な人間でもない。
それなのに、その筆跡には数年着古したジャケットにそでを通した時のような順応感があった。


透「……この手紙があったから、きっとルカさんが来るもんだと思って」

ルカ「違う、私はこんなの出しちゃいねえ……」

透「……えっ」

ルカ「意味わかんねえ……なんで、なんで私の文字でこんなのが書かれてやがんだ……!」


夢遊病の類いだろうか。それとも別人格?
私が無自覚なうちにこんな手紙を書き記して、浅倉透の部屋に投函してしまったのかもしれない。
……そんなわけない、あるはずがない。

まだ傷がふさがっちゃいない、手のひらの包帯はすっかり血に染まって真っ赤だった。


ルカ「……わけわかんねえ……これを美琴が用意したってのか……?」

透「……」
852 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:18:35.73 ID:hWUH9Ue/0
____
______
________

モノミ「……手術は終わりまちた」


それから数十分後、モノミがようやっと姿を現した。
ピンクと白のツートンの毛はすっかり血の赤色に染まっており、B級ホラー映画の殺人人形のような見た目だ。
だが、そんな映画の中の人形のように狂気的な笑顔を浮かべるでもなく、モノミはただ俯いている。
言葉など聞かずとも、その意味は理解できる。


ルカ「ダメ、だったのか……?」

透「そん、な……」

モノミ「……命を落とすようなことはありまちぇん。輸血も間に合ったので、失血死なんてこともないでちゅ」

モノミ「……でも、市川さんに重篤な後遺症が残ることは間違いないでちゅ。右手の神経は、もうどうしようもありまちぇんでちた」
853 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:19:45.17 ID:hWUH9Ue/0





モノミ「市川さんは今後もう自分の手でお箸を握ることも、誰かと手をつなぐこともできないでちゅ」




854 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:20:57.70 ID:hWUH9Ue/0

言葉を失う、という表現はきっとこの場にはふさわしくない。
もっと前から言葉を咽喉から持ち上げることは出来かねていたし、頭に浮かんだ言葉はシューティングゲームのようにその悉くを撃ち落としていた。
私がこの場において、言うべき言葉なんて何一つない。
喋るべきでない。
だから、多分正しい表現は呼吸をすることも忘れる、なのだと思う。
一人の人生が大幅に歪められてしまった、その場に居合わせることの重大さを前に、私は口を固く締めあげて、空気をかみちぎった。


透「……う、そ」

モノミ「……あちしには、義手に挿げ替える技術はないでちゅ……モノクマのように大幅な人体改造もできないんでちゅ……本当に、ごめんなちゃい……」


地面に額を擦り合わせるようにして許しを求めるモノミ。
本当に不細工なマスコットだ。こいつがしているのはただの自己満足。
自分の実力及ばずと言うのを、悲劇のヒロインぶることで解消しようとしている。
人間の醜さを体現したような在り方に虫唾が走った。

855 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:21:47.25 ID:hWUH9Ue/0

透「……」


浅倉透もそれは感じ取っていたのか、モノミに言葉をかけようとはしなかった。
背を向けて、力なく再び椅子に落ちるようにして腰かけた。


透「何やってるんだろ、私」

透「……みんなを守るために、ここにいるのに」

透「何も守れず、私のせいで……失って」

透「……キツイなー、人生」


煙のように天井に吐き出した言葉に、天井が軋んだ。
856 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:24:15.46 ID:hWUH9Ue/0

というわけで本日はここまで。
あさひの親愛度がマックスになったり、夜襲があったり、色々と起きましたね……

次回更新は明日21:30頃を予定しています
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 23:28:50.69 ID:oOVPKMGo0
>>1
好感度マックスになったのは確かなんだけど
>>1がここであさひの名前を出すのなんか不穏なんだけどまさかね・・・
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 01:04:55.29 ID:EQ8hP+wk0
大胆な邪推はイナゴの特権・・・(迫真)
859 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/19(日) 03:01:06.44 ID:mMoGzpGu0
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860 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:34:28.25 ID:zQ5P2I1e0
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≪island life:day 24≫
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【第3の島 病院】

……徹夜だ。
市川雛菜の顛末を訊き遂げてから、この場を離れようにも靴底がのり付けされたように動かず。
そして掌の痛みも相まってすっかり目も醒めてしまっていた。
眠気を全く感じることもなく、気が付けば真っ暗な空がすっかり太陽の熱で溶け消えてしまっていた。


ルカ「……朝らしいな」

透「……」

ルカ「メシ、取ってこようか? オマエ、ここから離れる気ないんだろ」

透「……ん」

ルカ「……わかった、ちょっと待ってろよ」


こいつの気持ちも察して余りある。
流石にここで黙って飯を食いに離れられるほど私も血の通っていない人間ではない。
浅倉透は目線をこちらにくれることもなく、幽かな声量で返事した。
私もそれ以上は言わず、ゆっくりと立ち上がる。
長く座った膝は、それだけでパキッと鳴った。
861 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:36:27.25 ID:zQ5P2I1e0

その瞬間、



「あれ〜? ご飯食べに行くんですか〜? 雛菜もそろそろお腹すいた〜〜〜〜!」



廊下には、あいつが立っていた。
いつものようにキンキンとうるさいトーンとボリューム。
あからさまなくらいな笑顔で、ブンブンと左手をこちらに向かって振っている。
昨日とほとんど相違ない市川雛菜が、そこにいた。

862 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:38:46.17 ID:zQ5P2I1e0

ルカ「お、オマエ……! 目、覚ましたのか……!」


駆け寄る私に先行して浅倉透が肩を揺さぶった。


透「雛菜……雛菜……!」

雛菜「あは〜、透ちゃん痛い〜」


でも、その手を払いのけることはしない。
いや、できないんだろう。
ここまでのわずかなやりとりでもわかる、体はどこか傾いたようになっていて比重がうまくのっていない。
完全に動かなくなってしまった右手との帳尻が合わない体は、見ていてもどこか違和感を孕んでいた。


雛菜「起きたのはついさっきで〜、アナウンスが聞こえたんで朝ごはん食べに行こ〜って!」

ルカ「だ、大丈夫なのか……? その、昨日の今日で……」

雛菜「ん〜、大丈夫じゃないですね〜。お箸もスプーンも持てないし、ごはんは雛菜一人じゃ食べれないので〜」

透「……っ!」
863 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:39:41.37 ID:zQ5P2I1e0


雛菜「だから、透ちゃんは雛菜にあ〜んしてね〜?」



ちょっと転んで擦りむいたぐらいのテンションだった。
これ見よがしに傷を見せびらかすこともせず、なんなら話題をさっさと流そうとすらしていた。
今後一生に関わる話を、日常会話のようなトーンで話す。
彼女のスタンスには従いたいのも山々だが、当事者足る私たちはそれに流石にただ乗りはできず。


ルカ「ちょ、ちょっと待て……その傷、痛むんだろ? 無茶すんなって……」

雛菜「痛いことは痛いですけど〜……え、雛菜がご飯食べちゃなんかまずいんですか〜?」

ルカ「いや、そうじゃなくて……私たちにもなんか……言いたいこととかあんじゃねえのか……?」

透「私は……雛菜の一生を傷つけたんだ」

雛菜「え〜?」

864 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:42:38.07 ID:zQ5P2I1e0

でも、むしろそれを市川雛菜は鬱陶しそうにあしらった。


雛菜「ん〜、これ昨日も言ったと思うんですけど〜。雛菜は雛菜が守りたいと思ったからやっただけなので、別に透ちゃんもあなたも悪く思う必要なんてないですよ〜」


雛菜「結果として、誰も死ななかったしそっちの方が雛菜はしあわせですよ〜?」


どこまでも単純な論理だった。
市川雛菜にはずっと迷いがない。仲間のことで思い悩むことはあっても、そこから導き出される結論に、彼女自身が絶対の信頼を置いている。

だからぶれない、悔やまない、立ち止まらない。
この島にいる誰よりも、自分自身の在り方と歩み方を持っているのだと今この瞬間に理解した。
ジェットコースターで浅倉透を『透ちゃん』と呼んだ時のような爽やかさが頬を撫でる。


865 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:45:29.42 ID:zQ5P2I1e0

透「……雛菜」

雛菜「ん〜?」

透「朝ごはん食べたら作ったげる。特大のバケツで、プリン」

透「醤油もかけ放題」

雛菜「あは〜〜〜〜〜♡」


私はこの島に来る前の283プロの連中のことはそこまで知らない。
でも、この二人を見ていたらどんなものだったのか察しはある程度つく。

ノクチルとかいうグループはとんだ問題児の集まりだったんだろう。
等身大の彼女たちがぶつかり合って、補い合って。
他の何かで形を変えない、変えようとしない、それぞれがそれぞれを繋ぎ止めて、他が割って入れないほどの結束感のあるグループ。

そういう厄介な集まりだったのだろうと得心がいった。


866 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:46:15.86 ID:zQ5P2I1e0

雛菜「じゃ、そういうわけで雛菜たちは行きますね〜!」

透「アデュー」

ルカ「おう……じゃあな、気をつけろよ」

雛菜「は〜い!」


ルカ「……」


ルカ「…………」



ルカ「…………………………………………ん?」

867 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:48:05.68 ID:zQ5P2I1e0
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【ホテル レストラン】

一人取り残されたことに納得のいかなさをはじめは感じていたが、二人だけの時間が必要だったのだろうということで折り合いをつけた。
それに前もって二人がレストランに行っておいてくれたおかげでことの説明の手間も省けた。
私がついた頃には既に後の3人も昨晩の襲撃のこと、そして市川雛菜の手のことも一応情報としては飲み込んでいた。


智代子「そんな……雛菜ちゃん、大丈夫……じゃあないよね、そんな状態じゃ……」

雛菜「まあ不自由は不自由ですけど〜、放クラのお姉さんに比べたら雛菜は生身のままですし〜」

透「ほら、雛菜。あーん」

雛菜「あ〜ん♡」

恋鐘「うちらで雛菜の生活も面倒見てあげんといかんね……片手だけだとシャワーもまともに浴びれんたい」

あさひ「もう手は痛くないっすか?」

雛菜「今は鎮痛剤打ってるのでマシですね〜。でも、薬が切れた瞬間多分凄まじい痛みなので!」

智代子「そんな明るく言うことじゃないよ……」


やはりここでも当事者より周囲の方が事態を重く捉えている様子。
陽の光が差し込んで明るく照らされているはずのテラスで、なぜか陰陽を感じてしまう程。
あっけらかんとした様子に、なんだか私も心配するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

868 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:49:39.70 ID:zQ5P2I1e0

ルカ「おら、私たちも飯食うぞ飯。片腕使えねえやつより食い終わるのが遅いとかお笑いかよ」

智代子「ル、ルカちゃん流石にそんな言い方って……」

雛菜「あは〜、そうですね〜! 雛菜もう腹六分くらい来ちゃってますよ〜?」

あさひ「あ! 朝ご飯冷えてきちゃってる!」

透「食べて食べて。ほら、遠慮せずに」

恋鐘「もう、透? そいは朝ご飯作ったうちん台詞たい!」

智代子「……うぅ」


段々と市川雛菜の作り出す空気に満ちていく。
心配する方が悪いと言う心情が声のトーンを無理矢理に引き上げる。


雛菜「この傷跡は、犯行を食い止めることができた証拠なんですよ〜?」

雛菜「そんなに憐れむような視線向けないで欲しいかも〜」

雛菜「みんなが笑顔で食べてくれないと、ご飯も美味しくないですし〜!」


これには流石に甘党女も観念した様子。
それ以上市川雛菜に同情をかけるような素振りを見せるのはやめた。
私としても、いい形に落ち着いたとは思う。
ここまでに私たちは多くのものを失いすぎた。
塞ぎ込む時間なら、既に供給過多。そこにカロリーを割いている余裕は私たちにはない。

869 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:50:29.01 ID:zQ5P2I1e0

あさひ「それにしても、美琴さんはどうやって透ちゃんの部屋に入ったっすか?」

雛菜「ん〜、雛菜はそこの人だと思って扉を開けちゃったんですよね〜」

智代子「え? ルカちゃん?」

ルカ「……美琴が来る前に、ポストにコレが投函されてたらしい」

恋鐘「なんね? ……こいはルカの筆跡じゃなか?」

ルカ「……ああ、どっからどうみても私の字だ」

ルカ「でも生憎私にこんなの書いた覚えなんて全くない。そもそも人の部屋に行くのにアポ取ったりしないっつーの」

智代子「それはそれで問題だね……」

あさひ「じゃあ、この手紙はなんなんすか?」

ルカ「……」

恋鐘「美琴に聞いてみるしかなさそうたい……こいを投函したのは美琴とやろ?」

ルカ「どうだろうな……」


当然ながら私たち以外の人間にも心当たりなどない。
この手紙はどこで生まれ、誰が投函したのか。
どれだけ時間が経とうとも、答えが提示されることはなかった。
870 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:53:39.14 ID:zQ5P2I1e0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

市川雛菜はあの後浅倉透に介助されながら部屋に戻っていった。
とりあえずのところは、浅倉透に任せておけば問題はないだろう。
改めて二人には誰がきても扉を開けないようにと釘も刺して置いたし、今日のところは安心していいはずだ。

「……気が落ち着いたら、眠たくなってきたな」

徹夜明け、朝食も食べたばかり。
瞼はだいぶん重たくなってきた。

……今日はどう過ごそうか。


【自由行動開始】

【事件発生前最終日の自由行動です】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…18個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 22:05:26.62 ID:jmo6JafG0
1 智代子
872 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 22:10:08.27 ID:zQ5P2I1e0
1 智代子選択

【第3の島 病院】

朝飯を食った時は市川雛菜に言われるがまま、無理やりにお気楽なムードを作ってやり過ごした。
だけど、やっぱりあいつはそのまま飲み込めていたわけではない。
つい数日前に、自分の大切な存在が肉体を失ってしまったことを重ね合わせていたのか。
いつになく遅いペースで食事を口に運んだかと思うと、食後はふらふらとどこかへ一人で歩いて行ってしまった。

その後を追ってたどり着いたのが、ここだ。


ルカ「……何する気だよ」

智代子「あ、あれ……? あはは、私も自分で気づかないうちにここに来ちゃってたみたい……?」

ルカ「……」


……痛々しいな。

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 22:14:45.47 ID:5gQxeq7s0
1:マリンスノー
874 :開幕寝落ちかまして申し訳ありませんでした ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:04:31.99 ID:lnzqQySY0
1 選択

【マリンスノーを渡した……】

智代子「わぁ……! ルカちゃん、すごくキレイだよこれ!」

ルカ「ハッ、こんなので目を輝かせちまってガキじゃあるまいし」

智代子「純粋にプレゼントを喜んでるだけなんだけど……」

ルカ「どのみち私にはいらねえもんだ。欲しいんならくれてやるよ」

智代子「ルカちゃん、ありがたく頂戴します!」

(……まあ、普通に喜んだか)

-------------------------------------------------

ルカ「やっぱり、思い出しちまうか。有栖川夏葉の事」


本人は無自覚にふらふらとたどり着いた認識なのだろうが、私からすればなぜ甘党女が病院にまでやってきたのかの理由など想像にたやすい。
肉体の欠損、それを一番間近で見ていたのは彼女だ。


智代子「思い出す、っていうのは多分違うかな。夏葉ちゃんのこと、一秒だって忘れるわけないし、どっちかと言えば『重なった』んだと思う」

ルカ「……そうだな」

智代子「今朝の雛菜ちゃん、本当に夏葉ちゃんにそっくりだったんだ。右手が使えなくなっちゃったこと、とかじゃなくてね」

智代子「何よりも自分が一番不安なはずなのに、それを周りに悟らせないように強い姿を見せているところとか」

ルカ「……!」


≪夏葉「智代子に果穂……そして、283プロのみんな……この島にいるのは多くが私よりも年下でしょ……?」

夏葉「だから……私が、守らないと……助けてあげないと……その責任があるって言うのに……」

夏葉「こんな、病気なんかに……侵されて……」

ルカ「……お前」≫


私は絶望病の騒ぎがあった頃を思い出す。
寝台の上、高熱にうなされ朦朧とする中であいつが初めて漏らした本音。
年長者として感じている責任、そして不安。私だけの秘密にしておくつもりだったが、そもそもの前提からして違っていたらしい。


ルカ「やっぱり、よく見てんな」

智代子「そりゃあ私たちは友達だもん!」

友達、だなんて用地が過ぎる関係性。波長が合うというだけで何の拘束力も実効性もない結びつき。それをどうしてこうも自信満々に言い放てるのだろう。

智代子「友達ってね、言葉や行動にしなくても分かっちゃうんだよ。今日はいいことあったんだ!とか逆に何か嫌なことでもあったんだ!とか〜」


1.オマエにはそれほどまでに大きい存在だったんだな
2.それだけのことを思われてあいつも幸せだろうよ

↓1
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 21:24:07.99 ID:HSLKjFms0
2
876 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:35:50.07 ID:lnzqQySY0
2 選択


ルカ「それだけのことを思われて有栖川夏葉も幸せだろうよ」

ルカ「死んでなお、オマエは友達だって胸を張って言えるんだからな。……まあ、私からすれば荒唐無稽な話だけどな」

智代子「ううん、夏葉ちゃんだけじゃないよ。放クラのみんな、283プロのみんな、この島のみんな。ルカちゃんだってそれには入っちゃってるからね!」

ルカ「はあ? 私はそんなの認めた覚え……」

智代子「ルカちゃんが私のことを励まそうとしてくれてること、分かってるよ」

ルカ「……ッ!」


俄かに顔が熱くなる。
別にこれは自分の感情とかではない。
何を勝手に勘違いしているのか知らないが、さも見透かしていますとでも言いたそうな言葉を臆面もなく出してきたことに対する共感性羞恥だ。


智代子「ごめんね、ルカちゃんにも心配かけちゃったよね」

智代子「雛菜ちゃん本人はああ言ってたけど、弱音を中々はけない人のことを私も知っちゃってるから。つい勘ぐりすぎちゃったのかな」


本当にこいつはお人よしだ。
友達と言う関係性に落とし込むハードルが低いせいで、余計なところまで気を回し、自分自身が追い詰められてしまう。



ルカ「……ハッ」



≪ルカ「……お前は確かに立派だよ、自分だけじゃなくいつも他の連中のことも気にかけて。そんだけの責任感があってこその行動なんだろうなって私でも思う」

ルカ「だけど……だからこそ、そんな風に自分を追い込む必要なんかないんじゃねーのか」≫


ルカ「……なんつーか、似た者同士だよな。オマエら」

智代子「き、急にどうしたの!?」


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【園田智代子の親愛度レベル…9.5】
877 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:36:53.75 ID:lnzqQySY0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】


類は友を呼ぶ、なんて言葉があるが実際のところ「類」と「友」はどちらが先に立つのだろうか。
ふと自分のことを思い返してみると、美琴に出会ってからは染め上げられた自覚は多分にあった。
必死に美琴の後を追い、横に立とうと努めて来れば、それも当然の事か。

……今はどうなんだろう。
二人の関係性は一言で称するにはこんがらがりすぎる。

その志向性は、今や。

【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…18個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 21:59:50.76 ID:HSLKjFms0
1 雛菜
879 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:09:51.89 ID:lnzqQySY0
1 雛菜選択

【第1の島 ロケットパンチマーケット】


甘党女と別れてから、なぜだか喉の渇きのようなものを感じてスーパーマーケットへと足を運んだ。
別にのどを潤すだけならレストランでも事足りるのだが、私の無意識はなぜだかそれを拒んだ。
見えない糸に引っ張られるようにして足を踏み入れた先で目にしたのは、目を背けたくなるようなその姿。


雛菜「あっ、こんにちは〜。お買い物ですか〜?」

ルカ「お、オマエ……なんでこんなところに……」

雛菜「なんで、って買い物以外何かあります〜?」


動かない右手をカートの上に添えるようにして、もう片方の手で商品を持つ。
何不自由してません、といった顔とは対照的に痛ましいが過ぎるだけの不自由が曝け出されていた。


雛菜「何か勘違いしてそうですけど、透ちゃんと一緒ですよ〜? 今はちょっとトイレに行ってるんでいませんけど〜」

ルカ「そ、そうか……そうだよな……」

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【絶対音叉】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 22:24:28.07 ID:HSLKjFms0
1 【絶対音叉】
881 :書いてたら安価とるべき部分もない感じになったのでもうこのまま行きます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:40:07.13 ID:lnzqQySY0
1 選択

【絶対音叉を渡した……】

雛菜「なんですか、これ〜? サスマタ〜?」

ルカ「一応音楽用品だよ、共振を起こして医療の現場で使ったりするやつの強化版だ」

雛菜「ふ〜ん……」

雛菜「あは〜、でも雛菜今この音叉を持ったら手いっぱいなんで共振どころじゃないかもですね〜」

ルカ「えっ」

雛菜「まあ透ちゃんに叩くなりしてもらえばいっか〜」

(……背筋が凍るようなこと言うなよ)

(……まあ、普通に喜んだ……よな?)

-------------------------------------------------

……一応は、解決のかたちを見た。
浅倉透のことを守れたので満足はしている、手を失ったことよりもその方がメリットとしても大きい。
何よりも、これ以上自分の手のことで落ち込むのを良しとしない。
こういうもの、としてその場を流すことを何よりも本人が求めているのだ。


雛菜「ん〜? なにか言いたいことでもあります〜?」

ルカ「……その」


でも、いざこうして二人きりになると私としては言葉に詰まらざるを得ない。
だってこの惨状をもたらしたのは他でもない自分の相方。更には自分自身がその場に居合わせていたのだから。

拳を握り込んで肩を震わせる私を見れば、流石のこいつも私の心境を理解したらしい。


雛菜「あは〜……」


こいつは普段あっけらかんとして、ワガママに生きている……様に見える。
でもその実誰よりも客観的な姿勢で、今の世の中にそうあるべきものとして認識されている固定概念だって捉えなおせる。
明確な我の中から、正しいものを見定めることができる。
そのしたたかさこそが、市川雛菜がアイドルたる所以なのだと思う。


雛菜「……朝も言いましたけど、あなたのことを恨んだりとかはないです〜」


だからこいつは、今この局面においてもなあなあになっている現状を確かめ直すことができた。
私が胸に抱える罪悪感と、実際自分の身に起きた出来事。
それと釣り合うだけの回答を淀んだ水面の奥底から掬い上げる。
882 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:41:32.83 ID:lnzqQySY0



雛菜「でも、相方さんのことは雛菜だって恨んでますよ〜」



ルカ「……えっ」


何が「えっ」なのか、自分の口から出た音に吐き気を催す。
それは腐った現実世界で生きていたがゆえに浸されていた詭弁の味。
私自身も腐っている。どんな状況でも許されることに、慣れてしまっていた。


雛菜「雛菜だって、まだまだ二十にもなってないんですからやりたいことは山ほどあった。でも、その悉くは奪われちゃったわけですし」

ルカ「……」


でも、そうじゃない。
加害側だって本当は許されることを求めているわけじゃない。
むしろその逆、憎まれて憎まれて、一生許されないことで初めて割に合う。
だからこそ現実では残酷なことに許しが与えられてしまうのだ。
それが一番加害側にとって苦しいことだから。


雛菜「そこに嘘はつけないですし〜、ついたところで嘘って丸わかりだもんね〜」


だから私からすれば事なかれ主義が横行する世の中で黙殺され続けてきた感情、それをこうして曝け出してくれたことに感謝こそしていた。
883 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:43:50.26 ID:lnzqQySY0


しかし、私はこれでもなお市川雛菜を見誤っていた。



雛菜「でも、恨んでるからってそれが全部憎しみになるわけじゃないと思うんですよね〜」



市川雛菜はそれでは終わらない。


雛菜「雛菜だって、シーズの人たちと仲良くしてもらった時間はあるし、この島での暮らしのこともあっておかしくなっちゃう気持ちは分からなくもないです〜」

雛菜「だから雛菜は、『今』じゃなくて『次』の話がしたいかな〜」


やっぱりなんだかんだ言ってワガママではあるんだと思う。
ただ、それは独善とは違う。自分の都合で動きながらも、それに振り回される人間も彼女の持つ幸福の軌道上に載せられる。
884 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:44:25.29 ID:lnzqQySY0


雛菜「この恨みに見合うだけの、『次』。雛菜のために何かしてくれないかな〜って! ほら、芸能界でも悪いことをしたら代わりに良いことをして補填しますよね〜!」


彼女は自分自身の幸福を追うと同時に、周囲に幸福を振りまく存在でもある、ということらしい。
私と美琴がまさにそう、許されないという最高の利益を被ると同時に、喜びの共有と言う贖罪の機会まで与えられる。


雛菜「一緒に甘いもの食べに行ったり、雛菜を遠くに連れてったり! 右手を失った“おかげで”できる体験が雛菜は欲しいかな〜」


これほどの回答が果たしてあっただろうか。


ルカ「……は、ハハッ……オマエ、やっぱバケモンじみてるよ」


私より年下で、ここまでのことが言えるなんて末恐ろしいとしみじみと感じた。


透「……あれ、なんかいる」

ルカ「……悪い、邪魔した」

雛菜「……? さよなら〜」


浅倉透が戻って来るのに合わせて背を向けた。
これ以上あの場所にいるのはまずい。

今の顔を見られるのは、ひどく恥ずかしいからだ。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【市川雛菜の親愛度レベル…7.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…19個】
885 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:47:23.00 ID:lnzqQySY0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】


部屋に戻ってからもなんだか体が震えていた。
市川雛菜の発した言葉が、妙に私の中に響いていた。

美琴の発した言葉、起こした行動。
その一つ一つに市川雛菜の言葉がぶつかって跳ね返り、私の中で乱反射している。

能天気能天気とひとり脳内で悪態をついていたが、あいつはそんな器じゃない。

……本当に、化け物だ。


【自由行動開始】

【事件発生前最後の自由行動です】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…19個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:06:14.14 ID:HSLKjFms0
1 智代子
887 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:15:43.91 ID:lnzqQySY0
1 智代子選択

【第1の島 ロケットパンチマーケット】

そういえば前回の事件の騒ぎでコテージの備蓄もなくなっていたなとふと思い出す。
別に今行かなくてもいい用事、それなのになぜわざわざこのタイミングを選ぶのだろう。
自分でも分からない答えを、棚の中に探す。
でも見つかったのはその答えではなく、向こうの棚の奥に切り取られた甘党女の顔。


智代子「あ、ルカちゃん! ルカちゃんもお菓子?」

ルカ「……別に、暇だっただけだよ」


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:31:13.08 ID:HSLKjFms0
1 【ジャバの天然塩】
889 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:36:21.38 ID:lnzqQySY0

【ジャバの天然塩を渡した……】

智代子「おぉ……まさに塩、そのもの……」

ルカ「……流石に直は行くなよ?」

智代子「い、行かないよ! こういうのは料理にちょいたしするからこそ美味しいんだって、ちゃんと知ってますから!」

ルカ「あぁ……天ぷらにつけたりな」

智代子「そうそう! 調味料をちゃんと使えてこそいっぱしの料理人だよ!」

ルカ「どこに料理人がいんだよ」

(まあ、普通に喜んだか……)

-------------------------------------------------

智代子「クッキーもいいな〜、でもやっぱり定番のアーモンドチョコも外せないし……」

ルカ「……太るぞ?」

智代子「太らないよ! ……いや、太るんだけど……!!」

ルカ「……はぁ」


そういえば、花火大会の時もこいつはこんな具合だったか。
ほんの一晩の催しだというのに、食いきれないほどのお菓子をこれでもかとカゴに放り込んで。
それが本当に一晩でなくなってしまったのだから驚きだ。


智代子「だ、大丈夫! ばっちり運動すればいくら食べても大丈夫だって、昔の偉い人が言ってたし……!」

ルカ「どこの誰が言うんだ、そんな煩悩丸出しの言葉」

智代子「ま、松平……定信……さん……?」

ルカ「大飢饉凌いだ偉人に何言わせてんだ」


ふざけたことをしゃべりながらもお菓子をカゴにぶち込む手は止まらない。
いつものこいつなら、ただ欲望のままに動いているだけとしてみるのだが。


ルカ「……」

智代子「とにかく元気をつけなくっちゃ! 甘いものはいつだって私たちの味方だよ!」


……流石に今回限りは、私も邪推してしまう。
ついさっきまでの表情を裏返したような明るい言動。
自分の好きなものを選び取ったかごに入れていくその動作が、なんだかいつも以上に幼く見えた。
きっとそれは私の目が曇っているから。
先入観や偏見と言ったものを捨てきれない私だから、こいつの動作を『痛ましい』と感じてしまうのだろう。


ルカ「……なあ」


1.吹っ切れたのか?
2.もう全部、解決したのか?

↓1
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:47:30.32 ID:HSLKjFms0
1
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/21(火) 23:47:59.86 ID:vKEXs3me0
2
892 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:51:36.30 ID:lnzqQySY0
1 選択


ルカ「……吹っ切れたのか?」


私の問いかけに、甘党女の手が止まる。
私がこの質問に込めた意味を確かめているのか、息を一つついてから、斜め上を見つめた。
ついさっきのことだ、仲間と過ごした記憶やそこから生じる感傷に囚われ、引き摺られ続けて気を病んでいるところを目撃したばかり。
そんな最中で鉢合わせるなりに私を引っ張ってお菓子の棚に来て、何も思うところがないとは言わせない。


智代子「……ううん、まだ。というよりも、私はずっと吹っ切れるなんてことはないと思う。果穂のことも、夏葉ちゃんのことも……前回のコロシアイで命を落とした樹里ちゃんと凛世ちゃんのことも……何もかも」

智代子「それに、私自身このことで吹っ切れるなんてしたくないんだ。私で勝手にひと段落つけるのって、なんだか寂しい気がして」

智代子「だからね、決めたんだ。私は変わらなくていい、無理に前に進まなくたっていいって。ほら、チョコレートだって甘い物だけじゃなくて、ビターなものだってあるよね?」


はじめこいつの肩書を見た時に抱いたのは『くだらない』という感想。
名前をもじってその場でぱっと思いついたような『チョコアイドル』、どうせそこに大した戦略も展望もない、キャラ付けどまりの記号なんだと思っていた。

でも、こうしてこいつと直面するとその認識は誤りだったと思わされる。

ただ甘いだけじゃない、どれだけ厳しい現実だろうと、どれだけの苦境に立たされようとも、
向き合い続けることができる。向き合う誰かを支えることができる。

それだけの覚悟とともに背負い込んだのが『チョコアイドル』という看板だったんだろう。



智代子「私は、チョコアイドルだから。ちょっとくらい苦いぐらいが隠し味だよ!」



……こうも誇らしげに言われれば、その看板も認めざるを得ないだろう。


ルカ「……ハッ」


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【園田智代子の親愛度レベル…11.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…20個】
893 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:53:50.66 ID:lnzqQySY0

というわけで自由行動終了にて本日はここまで。
突発的な更新となったのにお付き合いいただきありがとうございました。
次回はいよいよ事件発生、捜査パートまで進みます。
第4章が長かった分若干駆け足っぽく感じますが、その分事件や裁判パートは濃くなっていると思うので対戦よろしくお願いします。

次回更新は6/22(水)21:00ごろで予定しています。
それではお疲れさまでした。
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:59:05.29 ID:HSLKjFms0
お疲れさまでした
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 12:18:26.09 ID:75KkGKZ/0
突発的とはいえ更新に気づかなかったとは不覚……
最終日の自由行動、てっきり残りで唯一コミュ完走できそうなちょこ先輩連打してスキルもらいに行くのかと思ってたから雛菜行っててびっくりした
でもそういう個人の勝手な思い込み通りに動かないのが安価スレの醍醐味だし、それに雛菜、かわいいしつよいから仕方ないか〜

ところで多分6章だと自由行動がないと思っているので個人的な興味から作者の方に質問なんですけど、
【Scoop up Scrap】の効果でわかるアイドルに喜んでもらえるプレゼントって全部終わった後にでも一覧などで公開するつもりってありますか?
単純にどういうプレゼントだと喜ぶ想定だったのかとか逆にマイナスだったのかとかちょっと気になるので可能であれば前作のもの含めて知りたいです。
それと可能であればコミュを完走したときにもらえるアイテムとスキルについても、こちらは金の鍵の使用に影響するのでフェアに行くためにも全部完結してからでいいので、前作含めて知りたいです。
これは単純にデータベースを眺めるのが好きだから知りたいだけなので、無理にとは言わないのでよろしければ一考のほどよろしくお願いいたします。
896 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:19:26.74 ID:SuCOeezb0
>>895
【Scoop up Scrap】のアイテム判定はその場その場で持っているアイテム内で考える予定だったので特にリストとかはないですね
100個のアイテムに15人の判定つけるのは流石に無理でした
コミュ完走時のアイテムとスキルは用意してあるので、物語が終わったら載せたいですね〜
最後の一章がまた長いんですけどね……


それではそろそろ再開します
897 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:21:52.36 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

昨日の今日で、夜はまだ熱を持っているように感じた。
まだ目や耳に焼き付いている昨夜の衝突。
飛び散る血と汗、苦悶の叫び、掌の痛み、そして美琴の独白。
下手なドラマよりもよっぽど壮絶だ。
あの光景が未だこの夜に混じっているような錯覚が、喉元に汗を伝わせた。


ルカ「……美琴」


美琴が別れ際に言い残した「もう姿を見せることはない」、という宣言。
それが妙に奥深くに突き刺さって、忘れられない。
もしかして本当に、今度こそ美琴は遠くに行ってしまうんじゃないか。
この絶海の孤島、逃げ道などどこにも無いというのにその危惧が付き纏って離れない。


嫌に冴えた瞳孔に、無理やり瞼で蓋をした。

898 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:23:43.10 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

【???】


「……冬優子ちゃんは、これでもダメって言うのかな」

「わたしが、狸を止めなかったから……美琴さんは誑かされて、雛菜ちゃんとルカさんを刺しちゃった」

「雛菜ちゃんはもう右手が動かなくなっちゃった」

「もう一生、動かない」

「今回はコレで済んだけど……狸はきっとこれじゃ終わらない」

「次は守れるかどうかもわからない。次はどんな犠牲を払わなきゃいけないかもわからない」

「……わたしは、これ以上失いたくない」

「これ以上さみしくなりたくない」

「わたしは……わたしは……!」
899 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:24:51.50 ID:SuCOeezb0





「そのためなら、命だってかけてもいい」




900 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:26:03.42 ID:SuCOeezb0
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______
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≪island life:day 25≫
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【ルカのコテージ】

一晩経ったが、まだナイフで裂けた傷は塞がらない。
寝起き早々に手が真っ赤に染まっていて言葉を失った。
自分でやったことではあるものの、傷としては残りそうだし、少し憂鬱になる。
顔を洗おうにも両の手で水を掬ったりはしづらいし、物を握るのも痛みが伴う状態。
どうしたものかと首をもたげた。


「……まあ、あいつはそれどころじゃないんだろうけど」


市川雛菜のことを思うと、そんな嘆きもしょうもなくかんじられる。
私は一時的でも、あいつは一生。
ずっとずっと不便がつきまとう。
それだけでなく、安息を不意に奪うような痛みも不定期に現れる。
この先数十年の人生に落とした影は、思う以上に濃い。


「……それでも、あいつはきっと笑顔なんだろうな」


レストランで待ち受けているだろう顔を想像しても、曇っているものは考え付かなかった。
901 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:27:34.90 ID:SuCOeezb0
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【ホテル レストラン】

恋鐘「おはようルカ〜〜〜!」

智代子「おはようルカちゃん!」

ルカ「よう……」


出迎えた二人にも、その表情に曇りはない。
むしろうざったいくらいの声量で、こちらの表情が曇るくらいだ。


恋鐘「今日は何でか知らんけど、厨房の冷蔵庫は使えんくなっとったばい……故障ばしとるとやろか?」

智代子「えっ……それじゃあ今日の朝ごはんは……」

恋鐘「ばってん、うちに妥協はなか! 冷蔵庫の食材は使えんくても、他のもんで何とでもなるけん! 新鮮なフルーツでとっておきの朝ごはんを用意しておいたばい!」

智代子「いよっ! その言葉を待っていた〜!」

ルカ「……相変わらずオマエらは能天気だな」


連中はすっかり市川雛菜のペースに飲まれてしまったらしい。
昨日は後遺症やら襲撃やらでとても笑顔なんて余裕がなかったというのに、今ではすっかり元の調子。
体中の力が抜ける、間の抜けた食卓が帰ってきていた。
902 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:28:31.45 ID:SuCOeezb0

恋鐘「ほら、ルカもた〜んと食べんね! 料理は食べられてこそばい!」


相変わらず問答無用で朝食を皿に盛り付ける長崎女。


智代子「ルカちゃん、そのベーコンエッグ……要らないなら助太刀致しますぞ」


やたら仰々しい口調で余り物にありつこうと集ってくる甘党女。


雛菜「次はヨーグルトが食べたいかな〜」

透「ウィウィ、ちょっと待って。箸だとなかなかむずいから」

雛菜「透ちゃん、スプーン使わないの〜?」

透「あー……あったんだ」


ギャグ漫画でもないようなやり取りでこちらの頭を痛くするノクチルの二人組。

レストランの卓には、私が苦手で苦手で仕方ない、それでも無いなら無いで違和感を覚える喧しさがあった。




……一部分を失した形で。




903 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:30:10.85 ID:SuCOeezb0

智代子「……あれ、そういえばルカちゃん」

ルカ「あ? どうしたよ」

智代子「あさひちゃん、今日は一緒じゃないんだね」

ルカ「あさひ……?」


今朝の私は完全に抜けていた。
傷ついた自分の体を慰めるのに夢中だったのか、
荒れ果てたかつての相方を見て傷心を引き受けたからか、
悲運を悲運と見ない滑稽とすら感じる開き直りに感化されたからか、
この日ばかりの私は、かつての鋭さの全てを失った形でここに座っていた。
絶対に見落としてはいけないものに、視界の外にいることを許可してしまった。


ルカ「だ、大丈夫だろ……すぐに来るって」

智代子「……行ってあげて、ルカちゃん。不安な気持ちを隠す必要なんかないよ!」

ルカ「……誰が」

恋鐘「素直にならんね、もううちらん前でカッコつける必要なんかなか!」

ルカ「……チッ!」


なぜ手綱を離してしまったのだろう。
散々冬優子から聞かされていた『神出鬼没』、行動の予測がまるでつかない芹沢あさひという存在。
誰よりも彼女の理解者たる冬優子ですら、匙を投げていた。
それにこの島のルールという危険因子が絡んでいる今、ほんのわずかな間の所在なさですら私たちの血の気を引かせるには十分すぎた。

音を立てて引いた椅子、その足を蹴飛ばすようにして入り口へ。
もつれかける足取りも他所に、ドアノブに手をかけた。
そこで思いっきり引けば、あの嫌味ったらしい快晴の太陽が私たちを見下ろしている。
904 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:31:03.51 ID:SuCOeezb0


_____そのはずだった。



「……え?」




ガスマスクの向こう側、ガラス玉のような碧い瞳は、私のことを見上げていた。



905 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:31:44.01 ID:SuCOeezb0



ブシュウウウウウウ!!



906 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:32:49.80 ID:SuCOeezb0

(なんだ……何が起きた……?)

真正面から煙を浴びて、後退。
もといた机の足元に不格好にも尻餅をつく形で倒れ込む。
どうして私がこうも不細工な転倒を晒したといえば、手足の末梢から徐々に弛緩を始めていたため。
口から入った煙は一瞬で全身に行き届き、既に体は言うことを訊かなくなっていた。

ガッシャーン!!

おかげさまで机の上のコーヒーまでひっかけてしまった。
ただ、もうそれを拭うほどの力も手には籠らない。
お腹のあたりにコーヒーの温度を感じながら、悶える声だけを漏らす。
徐々に意識と体をつなぐ縄は解け、糸になり、やがて宙ぶらりん。

頬に感じるフローリングの冷たさと低空の埃っぽい空気を感じながら、閉じゆく瞼に彼女の姿を捉えていた。

顔は見えずとも、小柄な彼女のシルエットは見紛うはずもない。

907 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:33:43.70 ID:SuCOeezb0





_____あさひそのものだった。





908 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:34:42.28 ID:SuCOeezb0


_____


_______


__________


909 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:36:41.12 ID:SuCOeezb0
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【???】


「う、うぅ……」



まず感じたのは居心地の悪さ。

自分の意思でなく折り畳まれた体はそれだけで痛むし、この狭っ苦しい空間ではすぐに手脚を伸ばすこともできず。
身を捩っただけで筋肉痛のようなものが走る。

体をあちこちにぶつけながら夜目ができてくると共に、自分のいるこの空間もその正体がわかってきた。
やけに頑丈なつくりで、洞穴のようにゴツゴツとした表面。
それでいて私が横になってちょうどくらいのサイズ感の空間。
そこら中でネオン色の部品が発光していることを見ても、
今私がいる空間を称するのにふさわしい言葉は【コックピット】というものだと納得した。
910 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:39:13.31 ID:SuCOeezb0

頭をぶつけないように、ゆっくりと前屈みに身を起こした。
よくみるとすぐそばに操縦桿と座席とが一体になったコーナーがある。
ずっと床に転がっていたせいで体がバキバキだ。
少しでも柔らかい材質に触れたくて、私は椅子の上に腰掛けた。

所詮は乗り物のシート。
そこまで上等な感触では無かったが、床に転がっているよりはマシだ。
ふぅっと息をついて、やっと事態を把握する気が起きた。


……さて、これはどうしたことだろうか。


レストランで何者かが突然姿を表したかと思うと、私の意識はすぐに体を離れていき、体中を暗黒が浸した。
かと思うと、次に瞼を開けたときには既にこのコックピットの中。
全身に鈍い痛みを走らせながら、ここでどれほどの時間を過ごしたのだろう。

911 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:40:19.13 ID:SuCOeezb0

それに大体、誰が私をここに?
なんのために? どうやって?
そして、ここは一体なんのコックピットなんだ?

冷静が疑問の五線譜を作り出し、私の神経回路は脳髄の指示に従って活動を開始。
五感でコックピットのその先を手繰り寄せる。

聞こえてくる音は、火花の音。
機械のメンテナンスをどこかでしているのか、バチバチとした音が遠くに聞こえる。

感じる匂いは、オイルの匂い。
私が今いる場所は、どうやら何かの整備場のよう、ガソリンスタンドで嗅いだ匂いが鼻をくすぐる。

触れる機械は、初めてのもの。
見たこともない操縦桿はちゃんとした手順を踏まないと動作しそうにない。
私では一ミリ前に進めることすらできなさそうだ。



……そして何よりも。



912 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:41:08.34 ID:SuCOeezb0

私のいるコックピットの上半分はガラス張りになっていた。
私の乗る『何か』の状態に応じて視認性は良くなるらしい。
今はスリープ状態なのか、ガラスは少しすりガラスのようで薄靄のかかったような視界だ。
それでも一番の情報は目から入る。
とにかく事態を見極めるべく、眼球がガラスにぶつかるぐらいの距離まで目をそこに近づけた。
細めにして、片開き。

ガラス一枚隔てた世界を見定めるべく、近づけて……



___【それ】を、見た。



913 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:42:39.64 ID:SuCOeezb0





【首のない死体が、エグイサルの取り囲む中央で椅子に座っていた】





914 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:43:44.33 ID:SuCOeezb0
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CHAPTER 05

Killer×Miss-aiōn

非日常編



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915 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:45:10.52 ID:SuCOeezb0


昏く、狭い、箱舟の中。


大波に揺られ、嵐に押され、その中に大事に保管された命をどこまでも運んでいく。
外からの声など届くはずもなく、外からの光だけがわずかに差し込んでくる。
内側から外側を見ることも許されず、運ばれる者はただ、その暗闇と静寂の中で己自信と対峙して時間を流れるのを待つだけ。

永遠とも一瞬ともとれるだけの時間が経って、ようやく。

天板が外れ、やっと陽の光を浴びるときがやってくる。
箱舟を出、手を天に向かって掲げ、うんと伸びをして初めて。


____運ばれた者は、滅んだ世界を目にすることになる。


916 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:46:38.11 ID:SuCOeezb0
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厚みはどれほどだろうか。

私の通う事務所の窓は多分1cmの厚さもない。
小動物や風に運ばれた小石が部屋に侵入するのを防げさえすればいい、それだけの窓なのだからそれで十分なのだ。

では、この窓はどうだろう。
おそらく軍用の機体であるこの『エグイサル』のコックピットを覆う窓がそんなやわなものと一緒で許されるはずもない。
きっと多少の銃弾なら防げるぐらいには分厚くて、特殊な加工もなされているはず。
その甲斐あって私はこのコックピットの中で、外の世界で何が起きているのかを悟ることすらなく、
そしてすべてが起き、終わった後でも……近づくことすらできなかった。


「おい……なんだよ、あれ……何が起きてんだ……誰が死んでんだ……!!」


エグイサルが取り囲む中、椅子に座って無い首から血をだくだくと流している変死体。
コックピットの中で狼狽えるほかない私を嘲笑うように、アナウンスが鳴った。
917 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:48:38.44 ID:SuCOeezb0


ピンポンパンポ-ン!!

『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』


3人以上の人間が死体を発見すると鳴るアナウンス。
これが鳴り響いたということは、私で3人目にカウントされるということだろうか。
その推理すら成立しないほど、このコックピットからでは状況がまるで見えてこない。

そしてモノクマはどこから姿を現すかと思うと……

ザザッ……

『……大丈夫? 相当参ってるみたいだね。無理もないか……突然こんなことに巻き込まれちゃって』


コックピットのガラスの表面に突然に浮かび上がってきた。
918 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:51:17.24 ID:SuCOeezb0

ロボットアニメなんかで見たことがある、このガラスはスクリーンモニタも兼ねているのだ。
同じ舞台を組む仲間や、戦闘中に地図を画面上に展開して戦闘を補助する近未来的な技術。
それが標準搭載されているらしく、モノクマは悠々とワイングラスを傾けながら私たちの前に姿を現した。


「モノクマ……! これはどういうことなんだ、説明しやがれ!」


画面にかじりついて問いただすも、モノクマはその表情を少し動かさない。


『やれやれ……説明だなんだと言われましても、それはこっちのセリフなんだよね。ボクはこのコロシアイのゲームマスターではあるけど参加者ではないんだ』

「だからって……オマエには説明義務があるだろ! コロシアイを……学級裁判を強いるんだったら、自分たちの置かれている状況を知る権利が私たちにはあるはずだ!」

『……まあ、最小限の情報だけ教えてやるけどさ。お察しの通り、オマエラは今、全員エグイサルのコックピットの中にいます。きっかり一台につき一人ね』


なるほど、死体発見アナウンスが流れたのはそう言うことか。
このガラスは外から内側が見えにくい作り。今こうして他の機体のガラスが真っ暗に見えていてもその裏には見知った顔の誰かが潜んでいるという訳だ。
919 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:52:55.67 ID:SuCOeezb0


『そして、エグイサルが収められているのは探索の時と同じくワダツミインダストリアルだよ。ここの整備工場の中で事件は起きたんだ』


遠くに聞こえる火花を散らすような音の正体もこれで説明がついた。
あの工場では常に軍用兵器と思しきものを取り扱っており、耳を劈くような音がそこら中で鳴り響いていた。
この遮音性の高そうなコックピットでもその音が聞こえてくるのは、今も工場が稼働中だからなのだろう。


『オマエラの目の前……中央で座っている首のない死体。これから始まる学級裁判ではオマエラにこの死体を殺したクロを議論してもらいます』

「……ちょっと待て、なんだその口ぶりは」

『ん?』

「あの死体は誰なんだ? それを知らないことには学級裁判なんて____」
920 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:54:09.08 ID:SuCOeezb0





『さあね? その死体が誰かなんて……ボクも教えられないな』




921 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:55:01.62 ID:SuCOeezb0

「……は? オマエ、何言って……」

『うぷぷぷ……今回のクロには、ボクはすごくす〜ごく感謝してるんだ。これで事件も5つ目、展開的にも誰が死ぬかなんて見えすいてきたし、いい加減事件もマンネリ』

『そんなところで、こんなスパイスを混ぜてくれるんだから!』


モノクマは私の狼狽っぷりを認めるなり矢継ぎ早に言葉を並べ立てる。
命を己が掌に載せ、圧倒的優位に立っている側だからこその余裕綽々っぷりで悦に浸る。
その言葉が続くたびに私の胸は不愉快な鼓動を繋ぎ、そしてそのたびに不穏な埃が心臓を包んだ。

そして、モノクマの浸っていた悦の正体が徐々に姿を現していく。
未就学児のような無邪気さで、嬉々として命を弄ぶ残酷さで、空想小説のように突き抜けた突拍子のなさで塗り固められた、ガチガチの『悦』。

それを一言で称するなら、『好奇心』なんだと思う。
私たちが命を懸けて臨む場で、どう転がるのかを見て、笑ってやろうというのがあまりにも透けて見えているのが不愉快を極めた。
922 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:56:34.02 ID:SuCOeezb0





『今回の学級裁判は誰が死んだのか、そして誰が生き残っているのかもわからない状態で議論をしてもらいまーす!』





923 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:58:10.09 ID:SuCOeezb0

「……は?」

『今言った通りだよ! オマエの他にも、ここにあるエグイサルにはそれぞれ生存者が一人ずつ搭乗しております。ですが、その正体を見た目からは勿論、声からも当てることは不可能です!』

『学級裁判ではそんなアンノウンな状態の相手と舌戦を行い、時には協力して、推理を行い犯人を明らかにしてもらいます!』


……馬鹿げている。
あまりにも、馬鹿げすぎている。
これまでに挑んだ4つの学級裁判だって荒唐無稽な話だ。
齢20前後の女を集めて、その中に潜む殺人犯を見つけ出す……なんてどこのB級映画だという話。
それなのに、誰が死んだか誰が生きているかも話からに状態から犯人を見つけ出せ……なんて。


「いい加減にしろよテメェ……!」

『ん?』

「ただでさえ博打みたいなもんなのに、そんな目に賭けてられっかよ……!」

『ふーん、もしかして自信がないの? お仲間の顔を見ながらじゃないと安心して議論ができないの?』

「そんな安い挑発に乗るかよ……私たちは自分の命を懸けて学級裁判をやってんだ、そんなオマエの一回の思いつきに振り回されるわけにゃいかねえんだよ」
924 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:59:30.23 ID:SuCOeezb0

『そんなこと言われてもなぁ……今のこの状況に持ち込んだのはオマエラの中のクロなんだよ?』

「あ?」

『あの死体が誰かわからないように細工をしたのも、エグイサルの中に他の人間を乗せたのも、ぜ〜んぶやったのはオマエラの中に潜むクロ! ボクの思いつきっていうよりはクロの犯行計画なんだよね』

『ボクはその意思を汲んで、このルールを提示しただけ。むしろここでオマエラの要求する情報を開示するとフェアじゃなくなると思うけど』


もはや公平だとか不公平だとかそういう議論の上にはないのだが、モノクマは譲る気はなかった。
そりゃそうだ、こいつからすればクロのこの一策は最高の酒のつまみ。
私がいくら正当な主張をしても認めないのは目に見えた。


「……でも、どうやって学級裁判なんかやるんだよ。このコックピットからじゃ議論なんかできねえし、動くことだってままならねえぞ」

『ああ、それは大丈夫だよ。エグイサルはリモートコントロールが可能だからね。すぐに外が見れるように電気もつけてあげるし、時間になれば裁判場まで連れて行ってあげる』

『それに議論は……うぷぷぷ、とっておきの機能があるからお楽しみに!』

925 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:00:36.75 ID:SuCOeezb0

神経を逆撫でする喋り方だが、どうやら学級裁判の進行には問題なし、捜査もできるとのことらしい。
ウダウダいう前にとにかくやれ、と言わんばかりにすぐに電子生徒手帳にはモノクマファイルの情報がダウンロードされた。


『今回の被害者は不明。死亡推定時刻は午前10時前後、殺害現場となったのはワダツミインダストリアル内エグイサル整備工場。首は根本から両断されており、頭部は確認できず。体の部分にはローブのようなものが被さられ、シルエットが見えなくなっている。胴と首を切り離した瞬間に即死だったと断定』


……まあそりゃそうだよな。
首をぶった切られて生きていられる生物はもはや生物ですらない。
しかし、犯人の奴はどうやって首を切ったというんだろう。
人間の首には人体でも随一の太さと強度を誇る骨が通っているはずだ。
生半可な刃物では骨に傷をつけることもままならない。
無論それでも動脈を傷つければ失血死には足ると思うが、わざわざ犯人は切り離すところまでやっている。
凶器を特定することが、解明への大きな一歩となりそうだ。


コトダマゲット!【モノクマファイル5】
〔今回の被害者は不明。死亡推定時刻は午前10時前後、殺害現場となったのはワダツミインダストリアル内エグイサル整備工場。首は根本から両断されており、頭部は確認できず。体の部分にはローブのようなものが被さられ、シルエットが見えなくなっている。胴と首を切り離した瞬間に即死だったと断定〕

926 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:02:01.19 ID:SuCOeezb0
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「で、捜査ってのはどうやればいいんだよ。まさかこのエグイサルを操縦しろっていうんじゃないだろうな」

『そんなことは言わないって。エグイサルの操縦には専用のリモコンが必要だしね、内部のマニュアル操作は……なんかめんどくさいからパス!』

「はぁ……」

『その代わり、エグイサルアイは自由自在に使えるよ! 窓から見たいところをピンチアウトしてくれれば自動でズームするから、隅々まで見てやってちょうだいな!』

『あと動かしてみたいとか要望があればその都度ボクを呼んでね! できる範囲で協力するよ!』


本当にこの状態のまま操作を行うんだな…

……今頃他の連中もエグイサルの中で同じ説明を受けているんだろう。
コミュニケーションどころか言葉を交わすこともできないんじゃ協力は難しいが、戦っているのは私一人じゃない。
それぞれがこの手足を伸ばしてやっとの空間で出来ることをやる。

……他のことなど何もできないんだから。

927 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:03:05.40 ID:SuCOeezb0

流石に不可解な状況では私にも蒙昧とした不安が付きまとった。
こんなところで得られる情報でどこまで戦えるのか、自分の手で触れぬ証拠に信用ができるのか。
そして、これから先に待ち受ける学級裁判がどんなものになるのか。
何よりも怖いのは、『わからない』ことだと嫌でも痛感する。
人は指針に縋って生きている。
依り代らしい依り代が無い状況下では、何も無くとも胸がざわついて、呼吸が浅くなるらしい。

そこで私は、昔気まぐれに読んだ小説を思い出した。
イギリスかどこかの国で、脚を弱らせた老人がパイプをふかしながら探偵業を営む。
狭い居住空間から一歩も出ることもなく、椅子の上で論理を転がして事件を解決する。
そんな話だった。
確かガキの頃に、ママにたまには活字でも読んでみろと渡された本だったように思う。

どうしてこんなものを思い出したのか、それは目先の縋るものを失った本能が、過去に縋るものを求めたから。
ただその見苦しい姿勢はこの局面ではある種正解だったのかもしれない。

安楽椅子に腰かけた老爺の姿を思い浮かべると、体の震えが止んだからだ。

……あんな耄碌一歩手前のジジイにできること、私にできないはずもない。

私が座っているのはコックピット。
古ぼけた木製の椅子に比べると、随分と座り心地もいいし、この椅子は機能性だって抜群だ。




____上等。




【捜査開始】


928 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:04:55.77 ID:SuCOeezb0
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さて、どうやって調べたものか。
エグイサルの操作ができないのは再三確認している通り。
あくまでここから動かないで捜査を行うのが今回のスタンスだ。
つまり基本的には『視る』ことに頼らねばならない。
ここから目視で調べるべきだと思うのは……

やはり【死体】は外せない。
……ここからも首の断面が確認できて少し気分が良くないが、致し方ないだろう。

そして、今自分たちの乗るエグイサルもいる工場、その【工場内設備】は調べたいな。
ワダツミインダストリアルも何度か足を踏み入れてはいるが、そこまで入念に調べたことはない。

工場を調べるなら、今のコックピットからは死角になっている【エグイサルの背後】も見ておきたいな。
モノクマは要望さえ出せば応じてくれそうな態度だったし、これくらいなら許されるだろう……

加えて、私の乗っている以外の【並んでいるエグイサル】も注視しておこう。
自分の乗っている機体と同機種、外観を見ておくことは意味があるはずだ。

忘れちゃいけないのが、この【コックピット内部】の捜査だ。
私たちの放り込まれているこの空間だって、何の意味もないはずがない。
出来る範囲で情報を拾い集めるぞ。

更には、今回の事件は【私自身】も当事者なんだ。
自分が知らずのうちに情報を握っている可能性も十分にある。服とかポケットとか、忘れずに確認しておこうか。

大体調べられるのはこのあたりか?
調べ忘れが無いように、入念に当たっていくとするか……

1.死体
2.工場内設備
3.エグイサルの背後
4.並んでいるエグイサル
5.コックピット内部
6.ルカ自身

↓1
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:08:40.34 ID:Z9qDEv5C0
1
930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:10:03.41 ID:Lqsa33W30
1
931 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:13:33.51 ID:SuCOeezb0
1 選択
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【死体】

まあまずはあの死体をよく見てみないことには何も始まらないよな……
顔を窓に近づけて、死体を指でピンチアウト。
窓の液晶には凄惨な首無し死体がデカデカと映し出された。


「……チッ」


見れば見るほどに異様だ。
首は見事なキレ筋というべきか、一切乱れのない直線ですっぱりと切れている。
どれほど切れ味のいい刃物でも、なかなかこうはならない。
それに、死体の身元特定を妨げるためか全身にローブのようなものがかけられてシルエットが隠されている。


「あの布……何だか妙だな」


しかし、シルエットを隠す目的にしては布は妙にぎらついていた。
天井の照明をこちらに反射させ、擦れた時にはかしゃかしゃという音が立つ。


「あれ……アルミシートか」

932 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:14:31.93 ID:SuCOeezb0


≪「大丈夫、このシートの裏に隠れていれば見つからないから」
「な、何を……」
「夏葉さんと同じ……赤外線カメラは、アルミシートの裏にあるものを判別できない」
「……!」
「……静かにしてて」≫


つい最近、私はあのシートを見た。
それどころかあれを被りすらした。
第5の島が解禁されて間も無く、当日夜。
このワダツミインダストリアルに忍び込んだ私はエグイサルに存在を感知され、あわや襲われかけた。
そこを赤外線センサーを無効化するアルミシートを美琴に被せられ九死に一生を得たのだった。


「あのシート、この工場の中に置いてあったのか……?」


工場に置いてあったからうってつけ、ということなのだろうか?
死体の素性を隠すための布にしては、目立つすぎるような気もするが……気にしすぎだろうか?


コトダマゲット!【死体上のシート】
〔死体のシルエットを隠して素性を隠す目的でかけられたアルミのシート。数日前に美琴がこのシートをエグイサルの索敵から逃れるために用いた〕

933 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:15:33.99 ID:SuCOeezb0
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「しかし犯人はどういうつもりなんだろうな……」


学級裁判で争われるのは犯人が誰か、ということ。
被害者が誰であろうとその中身を問われることはない。
無論、候補者の選定に一定の妨害効果はあるだろうが……ここまでして隠蔽を行う必要はあるのだろうか。


「……周到だな」


特に手袋まで死体に着用させている辺り、余念がない。
市川雛菜と私は掌にあからさまな傷跡がある。
死体の掌を明らかにすればそれが私たちかそうでないかすぐに分かり、候補を絞ることになりかねない。
ちゃんとそこまで考えられているようだ。


「……ん?」


レザー製の手袋を観察すると、一部分に気になった場所がある。
あらためてそこをピンチアウト。
ズームにズームを重ねることで流石に解像度は落ちるが……私の違和感を明らかにするにはそれでも足りた。

その手袋は、左手の一部分、指先だけが少しだけ破れているのだ。
本当に少し、糸のほつれぐらいの違いだが……新品同然に見える手袋だと際立って見える。


「……一応、覚えておくか」


コトダマゲット!【死体の手袋】
〔首のない死体の着用していた手袋。レザー製で新品同然だが、左手の指先だけ破れている〕

934 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:16:54.87 ID:SuCOeezb0
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捜査の基本と言えば死体から流れた血、その跡を辿ること。
これまでの事件でも、死体が動かされた可能性や別の場所で争った可能性を検討するうえで何度も調べてみたものだが今回はどうだろうか。

今回の死体は見た目の異様さも際立つ。
死因となったであろう首の両断はかなりの血しぶきも跳んだだろう。
不自然な血痕の流れがあればすぐにわかるはずだ。
死体の足元付近からその周りを指先でピンチアウトする。

何かを引きずったり、持ち出したりしたような分かりやすい形跡は見当たらない。
死体の首はなくなっているし、持ち出した時に血が垂れたりしそうなものだがそれがないということは、
犯人は布か何かにくるんでどこかによこしたのだろうか?


「しかし、この犯行でこうも証拠を残さないなんてことがあり得るのか?」


私が引っ掛かるのは手口の割に証拠が少なすぎること。
先ほども言及したが、首を両断すればそれだけの返り血を受けるのは必然。
レインコートを着ていようがなんだろうが、液体が付着すれば当然滴り落ちる。
犯人の行動を示す何らかのものは残らねばいけないのだ。

だが、まるで犯人はその場で忽然と姿を消したようで、靴の痕も全く残っちゃいない。
935 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:18:32.36 ID:SuCOeezb0

「どうやって犯人は首を刎ねたっつーんだ……?」


まさか遠距離で首を刎ねるような方法でもあるのだろうか。
結局、今回もその手口を明らかにせねば真実に近づくことは難しそうだ。


「……ん?」


はじめは気づかなかったが、よく見ると証拠がないわけではない。
靴のような分かりやすい形状でないし、他の血しぶきと混ざっているから分かりづらいが……一部だけ、散らばっている『点』に不自然なものがある。
同じ大きさの『点』の血痕が部分的に連なっている箇所があるのだ。
しかもその『点』はどこに辿り着くでもなく、突然に終わりを迎える。
そこにはエグイサルは勿論扉などもなく、見上げた先にダクトがあるだけ。
人間の力じゃどうやっても辿り着かない場所だ。

これも犯人の工作の一部なのだろうか……?


コトダマゲット!【点の血痕】
〔死体発見現場にあった不自然な血痕。同じ大きさの点が連なり血だまりから伸びているかと思うと、ダクトの下で突然に消えていた〕

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さて、ここで調べられるのはこれくらいか……

1.工場内設備
2.エグイサルの背後
3.並んでいるエグイサル
4.コックピット内部
5.ルカ自身

↓1
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:21:09.88 ID:Z9qDEv5C0
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