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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3

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795 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:38:39.73 ID:LUS5eqqE0

壁にもたれかかって、ズルズルとその場に座りこんだ。
私を見下ろす美琴の背後で満月が笑っている。


「美琴……」


名前を呟くしかできなかった。
手足から力が抜けきってしまっていたから。


「それじゃあ、おやすみ。ルカ」


アルミシートを乱雑にまとめ上げて、背を向けた。
美琴の姿はすぐに闇夜に呑まれて輪郭を見失う。


「……」


30分ほど、そこに座っていた。
796 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:47:00.09 ID:LUS5eqqE0

というわけで本日はここまで、物語の終わりの始まり、5章がついに幕をあけました。
なかなか5章は事件もその後の展開も考えるのにカロリーを使いましたが、楽しんでいただけるものになっていると思います……!
どうかお付き合いください!
余談ですが今章のチャプタータイトルは「アイオーン」のラテン語表記と言う力技です。
滅茶苦茶好きな曲なので、なんとか章題にねじ込みたかった……

次回更新は6/13(月)の21:30前後を予定しています。
それではまたよろしくお願いします、お疲れさまでした。
797 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:48:14.60 ID:LUS5eqqE0

【5章段階での主人公の情報】

‣習得スキル
・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕

・【アンシーン・ダブルキャスト】
〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕

・【つづく、】
〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕

・【cheer+】
〔発言力ゲージを+5する〕

・【ピトス・エルピス】
〔反論ショーダウン・パニックトークアクションの時コンマの基本値が+15される〕

‣現在のモノクマメダル枚数…102枚

‣現在の希望のカケラ…15個

‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【ジャパニーズティーカップ】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

798 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:48:41.02 ID:LUS5eqqE0

‣通信簿および親愛度

【超高校級の占い師】風野灯織…0【DEAD】
【超社会人級の料理人】 月岡恋鐘…5.5
【超大学生級の写真部】 三峰結華…0【DEAD】
【超高校級の服飾委員】 田中摩美々…0【DEAD】
【超小学生級の道徳の時間】 小宮果穂…1.0【DEAD】
【超高校級のインフルエンサー】 園田智代子…6.0
【超大学生級の令嬢】 有栖川夏葉…12.0【DEAD】
【超社会人級の手芸部】 桑山千雪…10.5【DEAD】
【超中学生級の総合の時間】 芹沢あさひ…8.0
【超専門学校生級の広報委員】 黛冬優子…12.0【DEAD】
【超高校級のギャル】 和泉愛依…0【DEAD】
【超高校級の???】 浅倉透…12.0
【超高校級の帰宅部】 市川雛菜…5.5
【超高校級の幸運】 七草にちか…0【DEAD】
【超社会人級のダンサー】 緋田美琴…4.0
799 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:21:46.54 ID:/lNWkEhY0
____
______
________

=========
≪island life:day 23≫
=========

------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

ようやっと手足の実感が戻ってきた。
萎びてしまった気力から、シワシワにでもなっていないかと思ったがさすがにそれは無かった。
ただ、手足はなんだかいつも以上に細く見えて血管が鮮明に見えた。


「……気色悪い」

ピンポーン


そう呟いたところでインターホンが鳴る。
気色悪い指で髪をかき上げながらドアを開けた。


あさひ「ルカさん、おはようっす!」

ルカ「……あ?」

800 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:22:51.48 ID:/lNWkEhY0

あさひ「なんでそんな不思議そうなんっすか? 朝ご飯食べないっす?」

ルカ「いや、そりゃオマエ……つい昨日お迎えはいらねえって」

あさひ「冬優子ちゃんはしてなかったってだけっすよ? ルカさんは一緒に行きたいのかなって」

ルカ「……そんなわけねーから、その言いぐさはやめろ。気色悪い」

あさひ「……?」

ルカ「わかった、わかった。とりあえず準備するから、中で待っとけ」

あさひ「はいっす!」


無邪気な返事をするあさひ。
こいつに絡まれているところをほかの人間に見られたくないからあわてて部屋の中にしまい込んだ。
……もう見るようなやつもそんなに残っちゃいないのに。

801 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:25:34.68 ID:/lNWkEhY0

ルカ「いいか? どこも触んなよ、準備はすぐ終わんだから!」

あさひ「はいっす!」


相変わらず信用の置けない明朗な返事にため息。
ベッドの上に座り込ませてそそくさと支度を開始した。


あさひ「……」

あさひ「……」

あさひ「……」


ずっと背後のあさひが気にかかって仕方ない。
別に見られて困るようなものもないのだけど、自分の空間に人が割り込むというのはそれだけでかなりの異物感だ。
ましてこいつともなるとその異物感も倍に増す。
どこかで爆発でも起きるんじゃないかというざわつきばかりが加速した。


ルカ「……あ」

あさひ「ルカさん、どうしたっすか?」
802 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:26:29.12 ID:/lNWkEhY0

見られちゃまずいもの……あった。
裁判終わり、ポストに投函されていた冬優子からの手紙。
あれに同封されていた写真……
見られるわけにはいかない。
コロシアイを防ぐのを本格化しようという段階で、前回のコロシアイの生き残り連中が私たちに何かを仕掛けていた写真は不信を振りまく種になりうる。
まだことの詳細がわからぬうちに見せびらかすわけにはいかない。


ルカ「別に、なんでもねーよ」

あさひ「……? そっすか?」


とはいいつつ強引にベッドの脇のキャビネットから封筒を引っ張り出して自分の懐に忍ばせた。
ガッツリその動作を見られはしたものの、中身は見られていないはず。


ルカ「おら、準備できたぞ。さっさと出ろ」

あさひ「入れって言ったり出ろって言ったりよくわからないっす」

ルカ「飯食うんだよ、ほら!」


そしてとにかく秘密からは目を逸らさせる。
準備は中途半端になってしまったが、まあこの島にはパパラッチなんかもいない。
多少不恰好でも許されるだろう。
今はあさひの関心をよそに飛ばす方が優先される。

私はあさひの背中を無理に押して、後ろ手に扉を閉めた。


ルカ「ついてきな」

あさひ「……? はいっす」
803 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:28:11.73 ID:/lNWkEhY0





あさひ「……ルカさんも、もらってたんだ」




804 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:29:40.15 ID:/lNWkEhY0
------------------------------------------------

【ホテル レストラン】

恋鐘「おはよ〜、ルカ! 今日もあさひと一緒ばい?」

あさひ「恋鐘ちゃんおはようっす! 今朝はわたしが迎えに行ったっすよ!」

透「おー、懐かれてるじゃん。やるね、女ったらし」

ルカ「最悪の言葉選びだな」


レストランに着くと昨日と同じ8人掛けの机に既に他の連中が腰掛けていた。
私とあさひも促されるままに席に着く。


ルカ「……そういえば、昨日あの後美琴に会った」

智代子「えっ?! 美琴さんと?!」

ルカ「ワダツミインダストリアル、あそこで開発されてたエグイサルが夜の間に誰かに動かされててよ。その現場で美琴に鉢合わせた」

智代子「じゃ、じゃあ美琴さんがエグイサルを操縦してたの……?」

ルカ「いや、そうじゃねえ。あいつは私が見つかりかけたところを守ってくれた。操縦してたのはまた別の誰かだ」


一応は昨日のことを報告することにした。
エグイサルが既に実用段階であることは周知しておかなくてはならないし、美琴への対策もやはり必要なのを確認した。
これ以上の死者を出さないと冬優子の裁判で決意したからには、誤魔化すわけにはいかないのだ。



805 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:31:39.66 ID:/lNWkEhY0

恋鐘「そ、そがん危なかこと……一人でそげなところに行ったらいかんばい!」

ルカ「……悪い」

あさひ「なんで美琴さんはそんなところにいたっすかね。操縦してたわけでもないのに」


瞬間、あのときの美琴の荷物を想起する。
鞄から見える柄のような物、その先にはきっと肉を割くには十分すぎる刃物。


ルカ「浅倉透」

透「……うん」

ルカ「美琴は、本気だからな」

雛菜「透ちゃん、大丈夫だよ。雛菜がずっと一緒にいるから……絶対、守ってみせるから」

透「雛菜……サンキュ。でも私だってただお姫様やるわけにはいかないし」

透「争うよ」

ルカ「……下手な接触はしないようにな」

透「分かってるって」

恋鐘「透、困ったときはルカだけじゃなくてうちらにも遠慮なく言って!」

智代子「わ、私も微力ながら助太刀いたしますよ!」

透「やば。めっちゃいるじゃん、用心棒」

ルカ「だからって気抜くなよ、美琴は私たちの誰よりも背丈だって高い。そう簡単に抑え込めるわけじゃない」

智代子「それに美琴さんはファイナルデッドルームもクリアしてるし、武器だって私たちの予想以上のものを持ってるかもしれないよ!」

恋鐘「毒薬だってドラッグストアから調達しとったけん、不意打ちにも注意せんばね!」

ルカ「……そう考えると、恐ろしいな。美琴のやつ」

雛菜「あなたが弱気になっちゃ一番ダメじゃないですか〜?」


806 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:33:23.63 ID:/lNWkEhY0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

何も一人じゃないんだ。
私たちは全員が全員、協力する下地ができている。
誰かが狙われようものなら、きっと他の全員で守ることができる。
私も本気でそう考えている。

考えている、のに……


『無理だと思う、私は』


「……チッ」


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 21:47:44.31 ID:HICo9pII0
1 智代子
808 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:54:56.94 ID:/lNWkEhY0
1 智代子選択

【第5の島 屋台村】


ルカ「……まあ、オマエはここだろうと思ったよ」

智代子「あ、ルカちゃん! ちょうどよかった、いい感じにここのおでん煮えてきてるよ!」

ルカ「さっき朝飯食ったばっかじゃねえのか……?」

智代子「おでんは別腹と昔の偉い人も言ってたじゃないですか!」

ルカ「どこの誰が言ってたんだよ……」


暖簾に油煙が纏う空間は、朝だろうと爽やかさとは無縁だ。
よくもまあこんなところで朝の日差しを浴びることが出来るものだといっそ感嘆した。

……これくらいの気丈さが、自分にも欲しいところだ。

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【ジャパニーズティーカップ】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:00:23.69 ID:ryCc/2O30
1:【ジャパニーズティーカップ】
810 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:05:50.82 ID:/lNWkEhY0

【ジャパニーズティーカップを渡した……】

智代子「こ、これは……?! ただの水をも、至極の一杯に変えてしまうという伝説の……?!」

ルカ「……いや、知らねえけど……そんなすげえもんなのか?」

智代子「こ、これを私がちょうだいしても……よろしいんですか?」

ルカ「やたら仰々しくなるのは何なんだ……」

智代子「ははーっ!」

ルカ「……」

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより親愛度が多めに上昇します】

-------------------------------------------------

智代子「いやぁ〜、やっぱりおでんは大根が正義だねぇ! 味が染み染みで口当たりもまろやか……!」

ルカ「私は牛筋のが好きだけどな」

智代子「お、ルカちゃんも通だね! さてはお酒のあてにしてちょくちょく楽しんでたり?」

ルカ「……私はそんな、酒とか」


呑まなくはないが、そんな加齢臭の染みつくような飲み方はまだ未経験だ。
……おっさんくさいのみかたなんて、チャンチャラ御免。


智代子「……どうしたの、ルカちゃん?」

ルカ「……いや、別によ」


でも、こう酒に浸されたような淀んだ空気の漂うところでは、飲み交わさずとも変な酔いが回る。
ジジイ連中が酒の席でぐだぐだと愚痴をこぼすのにも、この時ばかりはある程度の理解を示すことができた。
言わなくてもいいのに、言わない方がいいだろうに、口が勝手に暴れ出す。


ルカ「……冬優子の事件、悪かった」

智代子「やだなあ、もうあの事件はふゆちゃんと手討ちにしたんだし、終わったことでしょ?」

ルカ「……あれは、オマエの本意なのか?」


聞かなくたっていい。そんなの答えは分かり切っている。


智代子「……本意かそうじゃないかって言われたら……そりゃ、ね……」

ルカ「……だよな」


なんのための確認なんだ。
……この確認に、一体何の意味がある?


つくづく自分の身勝手さ、不器用さには辟易する。


1.自分のおでんを一本やる
2.無言でおでんを食べる

↓1
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:11:51.18 ID:HICo9pII0
1
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:13:19.16 ID:ryCc/2O30
1
813 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:20:30.21 ID:/lNWkEhY0
1 選択

まずいことを言った、という自覚がある。
口に入れていた筋が妙に固くて、なかなか飲み込めない。
目の前にある数本が、とてもじゃないが食べきれないことに気づいた。


ルカ「……悪い、これ詫びな」

智代子「……ルカちゃん」


詫び、と言うかたちで一本を甘党女の皿の上に置く。
キョトンとした顔でそれを甘党女はしばらく眺めていたが、すぐに何を思ったのか急にべらべらとしゃべり始めた。


智代子「お別れってね、残されるほうが辛いんだって最近知ったんだ」

智代子「向こうはあえなくなるってのを知ったままでいけるけど、こっちはそれすらも知らないから……突然に全部を奪われてしまう」

智代子「……夏葉ちゃんと交わしたい言葉、夏葉ちゃんから聞きたい言葉」

智代子「見たい夏葉ちゃんの姿だって、色々いっぱいあったんだ」


どうやらこいつも暖簾が吸い上げたアルコールに中てられているらしい。
梁の向こう、遠いものを見つめながら話す、その口調には回顧が染みついている。


智代子「本当なら、それをどこまで追求したかったし。それを奪った相手を糾弾したかった」

智代子「でもね、そんなことをすれば……その相手に遺される人に、申し訳ないかなって」

智代子「別れは人の数だけ、無限にあるから……誰かがちょっとでも声を挙げちゃったら全部に伝播しちゃう。それは必ずしもプラスじゃないのかなって」


お人よし、とはこういう奴のことを指すのだろうと悟った。
こいつは二回も奪われた。理不尽の前に目の前でユニットのメンバーが二回も命を散らした。
だったら、少しぐらいわがままを言ったところで罰は当たらないだろうに。
それでもこいつは、『甘口』であり続けた。


智代子「……なんだか私も変なこと口走っちゃったかも」


徹底したチョコアイドルっぷりに、私は思わず息を漏らす。


ルカ「……ハッ」

智代子「もう! なんで笑うの、ルカちゃん!」

ルカ「……別に、こんな場で自分の意志と別に本音を漏らすなんて。ジジくせえなっていう自虐だよ」


……やっぱり、私じゃ283プロのアイドルにはなれやしない。


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【園田智代子の親愛度レベル…8.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…16個】
814 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:23:43.95 ID:/lNWkEhY0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

後になってさっき口にしたおでんが効いてきた。
寝起きに、しかも朝飯をある程度食ったうえで口に入れるものは、少なくとも普通おでんではない。

こってりとした味付けに、煙の独特な香りが染みついて、後悔を覚えずにはいられなかった。

余計なことを言ってしまったのに関しても、余計なことを訊いてしまったのにも関しても。

あれを聞いてしまったからには、見て見ぬふりなんてもう出来やしない。


「……面倒だよな」


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…16個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:30:21.05 ID:ryCc/2O30
1:あさひ
816 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:33:06.11 ID:/lNWkEhY0
早いですが、本日はここまででお願いします。
次回あさひ選択より再開します……
817 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:34:13.01 ID:/lNWkEhY0
次回更新は6/18(土)の21:00前後と少し先になります、申し訳ない……!
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:36:46.31 ID:HICo9pII0
お疲れ様でした
819 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/14(火) 03:15:50.58 ID:1GjQUioD0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/15(水) 16:18:11.77 ID:3BnpKID90
5章更新始まってるのに気づくのめっちゃ遅れた……
冬優子のおしおきが仮に完遂されたらハリボテの教会との板挟みで圧死するの、
ハリボテの教会の飾り付けられた表側とそうじゃない裏側が冬優子の二面性の写像とすると、
救いを求めた結果取り繕った面に阻まれて死ぬことになるわけだし、
最後は壊れたセットのきれいじゃない裏側をメインに映す感じでカメラが抜かれて映像が終わりそうで、
情景を想像してたら悪趣味でとてもおいしいと思った
なんだったら圧死した後に冬優子だったものの跡とかハリボテの教会とかに一切フォーカスすることなく、
衝突したチャリオットを心配する感じとか何も関係ない光景とかをカメラが抜いたりするのも、
みんなを魅了しようとしてた冬優子という存在を映す価値なしみたいにめちゃくちゃ愚弄してる感じがあってそれもそれでおいしい
821 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 21:31:25.04 ID:hWUH9Ue/0
1 あさひ選択

【第5の島 ワダツミインダストリアル】

昼の自由時間、何かと手持ち無沙汰になることはあったがこんなふうにソワソワと落ち着かないことはあまりなかった。
美琴がどこにいるのか、何をしているのかその懸念こそずっと抱いてはいるものの。
私にはそれ以上には目下の不安材料がその未体験のざわつきを抱かせていた。

ルカ「……勝手に一人でぶらついてんじゃねーよ」

あさひ「あっ、ルカさん! どしたっすか?」

ルカ「どしたっすか、じゃねえ。こんな危ねえところ、一人で来ちゃダメだろ」

あさひ「……? 危ない、っすか?」

ルカ「テメェの後ろにあるそいつはなんだ? ただの置物か?」

あさひ「あはは、エグイサルはロボットっす。置物じゃないっすよ、ルカさん変なこと言うっすね」

……もう説得なんかも面倒だ。
いっそ首輪でもつけちまうか?

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 21:41:13.31 ID:t+E20L+80
1 【多面ダイスセット】
823 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 21:47:37.04 ID:hWUH9Ue/0
1 選択

【多面ダイスセットを渡した……】

あさひ「何っすか? これ、さいころ?」

ルカ「おう、ただのさいころじゃなくて複数面……かなり多い数だろ。私には使い道はよくわからねえがオマエならなんか適当に暇つぶしに使えるかと思ってよ」

あさひ「……これ、出る目の確率とかってどうなるっすかね」

ルカ「……随分知的な好奇心だな」

あさひ「あはは、最近学校で習ったっす!」

(……確率の計算、か。もう忘れちまったな)

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより多めに親愛度が上昇します!】

-------------------------------------------------

あさひ「あっ、あっちの機械見てみたい!」

ルカ「おいコラ、だから勝手に行くなって!」


あさひの関心のスイッチはいつ何に向けられるのか分からない。
目を離した隙に姿を消すし、触れてはいけないものほどよく触る。
この危機管理能力でよくもここまで生き残っているものだともはや感心する。


ルカ「……はぁ、なんでオマエはこう自由なんだ」

あさひ「ルカさん?」


……その感心は、慢心にも似ていた。


ルカ「……ったく、冬優子のやつはどうやってこいつの面倒を」

あさひ「……冬優子ちゃん」

ルカ「……ッ!」


迂闊だった。
自分の中だけに押しとどめているつもりだった言葉が漏れ出ていた。
きっとあさひ本人も無自覚にやっていたこと。
自分の関心にいつも以上に従順になって走り回っているのはその喪失を僅かにでも忘れるため。
気を紛らわさせるために、直視をさせないために別のものを自らに仕向けているはずだったんだろう。
でも、私が手綱を握ろうとするあまり、余計なものまで引っ張り出してしまった。
剥き出しになった喪失感が、あさひの手を緩め、床に金属が衝突する音を響き渡らせる。


ルカ「……悪い、オマエだって辛いのに思い出させちまった」


とりあえずの弁解。
されどあさひの水面には重たく大きな石が既に投げ込まれた。
波紋はそう簡単には止まない。


あさひ「……」


俯いたまま、言葉を発さない。
自分の影を見つめるまま、その奥にないものを探す。

……これは、まずったよな。


1.今は辛いけど、前に進むしかない
2.いつまでも目を背けてても仕方ないだろ

↓1
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:01:24.53 ID:t+E20L+80
1
825 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:10:36.19 ID:hWUH9Ue/0
1 選択

どう申し開きをすればいいのか、というところから思考は始まった。
でも、それは私向けじゃない。
直面し続けた美琴との軋轢から目を背け、逃げ出した人間がどう謝るというんだ?
私は逃げて逃げて逃げた末になんとかそのチャンスをつかんだだけの事。
しかもそれを、既に逃してしまっている。


ルカ「……うざってえな」


なら、私がすべきことは申し開きじゃなくて、開き直りだ。
自分の口から出た言葉を無責任に肯定して、押し付ける。
それで乗り切るほかない、無茶するしかない。
そんな無茶でもしない限りは、この少女を救い上げられない。


ルカ「いつまでも他人に気を遣わせてんじゃねえ。ここは外の世界じゃねえんだ、オマエだって他の連中と同じ一つの数頭に入ってる」

ルカ「現実に目を向けられない、そんなの甘えに過ぎねえんだよ。どれだけ辛くても前に進まなきゃならねえ、実際冬優子はそうしてただろうが」

あさひ「……冬優子ちゃん、が」

ルカ「せっかく救い出した三峰結華は死んだ、長い間ユニットを組んだ仲間の和泉愛依も死んだ。それでもオマエと言う存在がいたから、あいつは凹む時間も惜しんで前に進んだ」

ルカ「あいつがその感情を乗り切ったかと言われれば答えはノーだ。でも、だとしてもあいつは前に進むことを選んだ。引きずりながらでも前に進むことを選んだ」

ルカ「オマエもあいつを慕ってんなら……その後ろ姿を見習うぐらいしやがれ」


本当に無責任な言葉だ。
自分にもできていないことを相手に要求する、ここにインターネットの眼なんてあろうものなら大炎上だろうな。
でも、ここは絶海の孤島。
誰にも干渉されない、干渉を求めることもできない。
自分に向けられた言葉は、自分で噛み砕くほかない。


あさひ「……難しいっす」

ルカ「……」

あさひ「ルカさんの言葉、難しいんですぐには分からないっす。……でも、分かりたい、理解したいって思ったっす」

あさひ「……だから、ちょっとだけ待ってもらっていいっすか?」

ルカ「……ちょっとだけな」


……言葉が響いたのかどうか、感触は分からない。
ただ、彼女が俯いていた顔を面に上げたのだけは確かだった。

私とあさひはそのまま、言葉を交わすことなくホテルへと戻った。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【芹沢あさひの親愛度レベル…10.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…17個】
826 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:12:50.51 ID:hWUH9Ue/0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

分かれるその瞬間まで、珍しくあいつは押し黙っていた。
帰り道をきょろきょろと見まわしていたのは、そこに幻影を追っていたからなのか。
流石にそれを問いただすような残酷な真似はやめておいた。

あさひが自分の中で冬優子の背中らから何を学ぼうとするのか、その答えを見つけるまで私は待つだけだ。

「……私も、いい加減答えを」

無責任さには、目を伏せて。


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…17個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:15:00.27 ID:Lq4Dl7En0
1.あさひ
828 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:21:29.50 ID:hWUH9Ue/0
1 あさひ選択

【あさひのコテージ】

解答をせかすようで、少しだけ悪いと思った。
でも、きっとどれだけ時間を与えても同じことだ。
頭がどれだけいい人間でも、この問題の答えは分からないだろうし、それに自身も持てまい。

だとしたら、私たちがすべきはその正誤の判定ではない。
解答を練り上げるための議論、検討なんだ。

そのためには、同じ空間にいること、同じ時間を過ごすことこそが重要なのだと思う。

ピンポーン


あさひ「ルカさん、早いっすよ。まだモヤモヤしたままで、よくわかんないままっす」

ルカ「……悪い」

あさひ「……」

ルカ「……」

あさひ「……帰らないっすか?」

ルカ「……とりあえずの答えを聞こうと思ってな」

あさひ「……っす」


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:31:32.84 ID:Lq4Dl7En0
1.【絶対音叉】
830 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:48:23.23 ID:hWUH9Ue/0
1 選択

【絶対音叉を渡した……】

あさひ「わっ、何これ! 見たことない!」

ルカ「おいやめろ、鼻に突っ込む道具じゃねえ。音叉……一応音楽関連のもんだが、まあアイドルとはあんまり関係ないからな。音同士が共鳴した時に生じる振動を利用して医療とかに活用しているらしいぞ」

あさひ「へぇ……音で、すごい発想っすね」

ルカ「まあこれは破壊兵器として使うみたいだけどな。音で色々ぶっ壊しちまうみたいだから、使い方には気を付け……」

あさひ「透ちゃ〜〜〜〜〜ん! これ一緒に叩いてみるっすよ〜〜〜〜〜〜〜!」

ルカ「バッカ……!!!! おい、やめろ!!!! やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

【PERFECT COMMUNICATION】

【親愛度がいつもより多めに上昇します!】

-------------------------------------------------

あさひの部屋は、案の定片付いてはいない。
そこらの床には乱雑に紙が散らばり、彼女の関心が尽きたであろう使い道も分からない機材の数々は適当に箱に突っ込まれている。
そこに、彼女に対する認識のずれはない。
私も芹沢あさひと言う少女はそう言うものだと思うし、彼女がここで過ごす時間があったならおのずとそうなるだろう。
それでも違和感がぬぐえないのは、ここに出入りしたであろう人間ならこのままにしていなかっただろう、というところから。


ルカ「……どうだ、冬優子と向き合ってみて」


尖った言い方をした。冬優子はもういない、あくまであさひが向き合うべきなのは『今は亡き冬優子』、あさひの中にいる冬優子、そしていない冬優子だ。


あさひ「ルカさんの言ってることはなんとなくだけど、分かった気がするっすよ。確かに冬優子ちゃんはどんな事件があった後でも、落ち込んだり、凹んだり……じっとしていることはなかったっす」

あさひ「きっと、ルカさんの言うように、わたしのためにそうしてくれてたんっすよね。愛依ちゃんがいなくなってからは、余計に」


冬優子の死に際の光景がどうしても蘇る。
あの不器用すぎる頭を撫でる動作、冬優子の思いの丈がそこに滲み出ていた。


ルカ「……冬優子は、最後になんて言っていた?」

あさひ「自分の想いを、汲み取ってくれって」

ルカ「……そうだったな」


では果たして……冬優子の最後の想い、とはなんなのだろうか。
私がさっき投げかけた言葉のように、辛くても前に進めということなのか。
それとも自分を代償に生きているのだと自覚しろと言うこと?


ルカ「あさひは、冬優子はどう思ってると思う?」


私にも、その答えは測りかねる。
だから、それはあさひに託した。
私よりもよっぽど長い時間を共に過ごして、熱心に彼女の観察を続けてきたあさひなら、きっと納得のいく答えを見つけられる。
それは私が冬優子から引き継いだ、『信頼』だった。




あさひ「……わかんないっすね」



831 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:50:01.45 ID:hWUH9Ue/0

あっけらかんとして、あさひはそう答えた。
それは何も、解答の放棄ではない。
むしろ考えて、考え抜いたからこそ見つけられた答え。
自分の都合に無理やり手繰り寄せた、恩着せがましい責任感ではない。


あさひ「あはは、他の人がどう考えてるのか、どう思ってるのか、なんてことはわたしもわかんないっす」

あさひ「でも、それって悪いことじゃない。当り前じゃないっすか。冬優子ちゃんもよく言ってたっす。他人なんて何を思ってるのか分かんないんだから、用心なさいって」

あさひ「だから、わたしも冬優子ちゃんの考えてることなんてわからないっす。わたしが冬優子ちゃんのために何をすればいいのか、なんて」

あさひ「あ、でもこれじゃ答えにならないっすよね。ちょっと待ってくださいっす、解答を用意するんで」


あさひがあさひらしくある所以、彼女のアイデンティティとも言うべき無責任だった。
誰かにゆだねられて生きるなんて、あさひらしくない。
そんな生き方を、冬優子が望むわけない。
冬優子は誰よりもそばであさひを見続けて、誰よりもねたみ続けてきて、誰よりもその生き方を理解しようとしていた人間だ。
だとしたら、その羽に枷をはめようなんざ思うはずもない。


あさひ「冬優子ちゃんが最期に行っていたのは自分の命を雑に使うなってことだったっす。それなら、わたしは……後悔の無いように生きる。自分は自分のしたいように生きる」

あさひ「冬優子ちゃんがやってたのと似てるかもしれないっすけど、これは私の生き方っす。ちょっとだけ違うんっすよ」

あさひ「えっと、だから……引きずる、とも違うし……えっと」


偶然にも私と同じ結論に帰結していたことに、少しだけ口角を上げながら私は苛立った。
きっとこれは、冬優子の読み通りなんだろうから。
冬優子と私は同族、ということはつまり……その理解者であるあさひもまた同族なのだ。
遺される同族を守れるのは同じ同族だけ、そういう意味で私をあてがっていたのだろう。
ヤロウ、どこまでも私を利用しやがって、気に食わねえやつだ。


ルカ「……ハッ、わかったよ。もうそれ以上は、いい」

ルカ「オマエの言葉なんて元々よくわからねえんだ。無理やり言葉を紡がれても不格好でいけねえ」

あさひ「……? そうっすか?」

ルカ「……これは、私の決めた生き方だ」


そう言って私は掌を差し出した。
こいつと同じく無責任に、その場だけの感情で差し向けた掌。
そこに引き継ぎも何もあったもんじゃない。いますぐにだってこの鎖をほどこうと思えば、ほどいてやれる。

……でも、それをしない。
今は、私がこれをしたいから、それだけの理由だ。


あさひ「あはは、ルカさんの手のひら、冷たいっす!」


偶然、こいつともその『やりたいこと』は今、一致していたらしい。

-------------------------------------------------

【芹沢あさひとの間に確かなつながりを感じる……】

【芹沢あさひの親愛度レベルがMAXに到達しました!】

【アイテム:遊園地のぬいぐるみを獲得しました!】

・【遊園地のぬいぐるみ】
〔いつか遊園地に行ったときに持ち帰ったぬいぐるみ。ウサギとネコとクマ、さんたいのぬいぐるみに愛を注いでいたら、不思議なことに一瞬だけ一人でに彼女たちが動いたとあさひは語る〕

【スキル:ジャンプ!スタッグ!!!を習得しました!】

・【ジャンプ!スタッグ!!!】
〔集中力を使用した際の効果が増幅する〕
832 :あさひのイベントと少し表現に矛盾が出る部分が出てくるかと思いますがご容赦ください ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:51:12.48 ID:hWUH9Ue/0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

閉塞とした空気感が時計をせっつかす。
いつもよりも早く進んだ時計の針が、太陽を地中に埋めて一度の夜がやって来る。
今日と言う日はあっという間に過ぎてしまった。


「……そういえば、あさひのやつはどうしてんだ」


冬優子に名指しで託された手前、どうしても思考の片隅にあいつの存在がある。
憎たらしい言葉に自分勝手な行動、正直愛想をつかすには十分すぎるほどの理由があるのだが、それ以上の義務感がそれをせき止める。
多分冬優子も生前は一緒だったんだろう。
鬱陶しさと煩わしさと同じくらいに、放っておけない感じが付きまとって仕方がない。


「……顔見るだけ、な」


あいつ自身もこれまでの生活で変化して、多少は聞き訳は良くなったんだと思う。
今朝も部屋に入れたところで好き勝手荒らす様子はなかったし、必要以上に出歩きはしないし、危険に身は置かないとは思う。
それでも、過去の前例から得られた信頼の値のあまりの低さに、黙っていることはできなかった。

833 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:52:54.72 ID:hWUH9Ue/0
------------------------------------------------

【ホテル】

部屋を出る。
コテージの個室はこう見えて防音性が高いらしく、窓を閉めていると風の音すらまるで聞こえてはこない。
今こうして外に出ることで初めて虫が鳴いていることに気が付くくらいだ。


「……何の虫だろうな、これ」


都会の私たちは虫の名前を知らない。
どれだけ心地の良い声であろうとも、その持ち主は永久に分からないままだ。


「……あさひなら、知ってるか」


照れ隠しの言い訳にちょうどいい都合が見つかったとばかりに左を向いた。
あさひの個室はこの向こう。
中央の桟橋を挟んだ別ブロックに彼女の部屋はある。

ぎしぎしと音を立てて板橋の上を歩き始めたその先。
834 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:54:26.49 ID:hWUH9Ue/0





「……やめて〜〜〜!!」





835 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:55:55.62 ID:hWUH9Ue/0

向こうの木に留まっていた鳥たちが一斉に散っていった。
夜を引き裂くばかりの絶叫は、私の背後から。
ソールを横にすり減らして方向転換。
奥歯をバネに、その声のした方へと即座に駆け出した。

声に混ざっていた怒り、憎しみ、悲しみ、苦しみ……それらをすべて絞り出したような切迫。
一秒を争う事態が起きているのは、耳から脳へと情報を明け渡すよりも先にわかった。



そして本能が嗅ぎつけた緊急は、実際間違ってなどいなかった。


836 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:57:16.15 ID:hWUH9Ue/0



「……な、何やってんだよ……オマエ……!」



半開きの扉から明かりが漏れ出していた。
コテージは入ってすぐに生活空間が見える間取り、廊下らしい廊下もないボックス型の部屋は、その事態を観測するには優れたつくりだった。



美琴が、



____その手に持ったサバイバルナイフで、能天気女の左手をぶっ刺していることがすぐに見て取れたのだから。



837 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:58:23.91 ID:hWUH9Ue/0

美琴「邪魔しないで……!」

雛菜「痛い痛い痛い……!」


肉に深く突き刺さり刃先は貫通している。
だがそれが却って刃にとっては返しとなって、ナイフを抜き取るには障害となっているようだ。
美琴は二の手が撃てない焦りを額の汗で滲ませた。


ルカ「……畜生……!!」

ドンッ


その不意を突いて私は頭から美琴の脇腹に突っ込んだ。
838 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:59:29.34 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「お、おい……大丈夫か!?」


すぐに私は能天気女の手を取った。
ひどい有様だ、血は止まらないし、断面からはもはや骨が見えてしまっている。
しかも、この刺さり方はまずい。指の根本の神経が密集する部分を狙っているかのような突き刺さり方。
激痛を感じるどころではないはずだ。


透「雛菜……?」


まるで魂が抜けてしまったかのようにへたり込んでいる浅倉透。
彼女はまだ事態が飲み込めていない様子だった。


ルカ「クソ……何がどうなってやがる……! とりあえず、包帯……なんか応急処置できるもんはねえのか……!」

雛菜「痛い……痛いよ……」


私は突然居合わせただけの存在。
夜に照明と赤とが混ざるこの異様な空間に身を置いて、体を火照らせる以外の反応が未だ示せずにいた。
839 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:00:27.31 ID:hWUH9Ue/0

その一方で、一度強制的に隔絶を行われたせいで襲撃者は冷静さを取り戻しつつあった。


美琴「……ルカ、邪魔しないで」

ルカ「み、美琴……!」


美琴はゆっくりと体を起こしたかと思うと、そのまま二本目を取り出した。
能天気女の手に刺さっているナイフと同等かそれ以上の刃渡り。
そんなナイフを両手で持って、浅倉透に向き直る。


雛菜「だ、ダメ……」

美琴「……今度こそ、必ず」

ルカ「バカ……何やってんだ……! 落ち着けって……!」


慌てて遮るようにして前に出る私と能天気女。
能天気女は傷の手当ても何もしていない。体を少しよじるだけでパタタッと音を立てて血のしずくが床に落ちる。
でも、そんな痛切な状態でさえも美琴の視界には入らない。
美琴が見ているのはただ一つ、憎しみを向けるべき存在。

____標的の、浅倉透だけだ。

840 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:01:20.50 ID:hWUH9Ue/0

美琴「……私は冷静だよ。むしろ他のみんなの方がおかしいんじゃないかな。自分は浅倉透を騙る偽物、更にはこの島に私たちを連れてきた張本人だっていう本人の証言もある」

美琴「にちかちゃんは最初から、ずっと……この子の怪しさに気づいていたのに」

美琴「……どうして、どうして……この子を受け入れて、にちかちゃんを拒絶するの……!?」

ルカ「ち、違う……! 私たちは七草にちかを拒んだりなんかしてねぇ、こいつも……それだから敵になるってわけじゃない、私たちに協力を宣言してくれてんだ……!」

美琴「言葉なんか何の信用になるの……!」


聞く耳を持たない人間に説得なんか無意味だ。
言葉は万能じゃない。
燃え盛る油に水を注げば却って激しく燃え盛る様に、美琴は私の言葉で逆上する。
ヘビが獲物を締め上げるような動作で、柄を持つ手にぎゅっと力がこもる。
841 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:02:05.90 ID:hWUH9Ue/0




美琴「私は……こんなところで止まっていられないの!」



身体の震えが、止まった。


(……来る!)


踵が床から離れた。
この部屋はそう大きなスペースではない。
美琴のすらりと長い脚ならば、ほんの数歩のうちに私たちのもとに到達するだろう。
ナイフを持った手なら更に前に伸ばすことだって。
刃が届くまでの時間となると、もはやコンマの世界だったのだろう。
そんな世界、感知しえない。
人間の反射神経ぎりぎりの世界は本能で観測するほかない。
842 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:03:17.33 ID:hWUH9Ue/0





____私の本能は、ギリギリまだ生きていた。





843 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:04:16.66 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「……痛ェな……」

美琴「ルカ……!?」


不思議な感覚だった。
こんなにも冷たいものを触っているのに、両手は焼け落ちそうなくらいに熱い。
掌では生暖かいものが蠢いて、ぐじゅぐじゅと音を立てる。
その生暖かい何かは散々蠢いたかと思うと、わずかな隙間から零れ落ちて、床で破裂し、赤く染め上げる。
それを見ているうちに、じんわりと、それでいて確実に。
ズキズキとした感覚が腕を伝って、全身の力を抜いていく。

両手で、ナイフの刃先を掴んでいた。


ルカ「痛いんだよ、バカ野郎……!!」


砕けそうな腰を軸にして、弱弱しく美琴の腹を蹴った。
美琴はさっき以上の軽さで吹き飛んだ。

844 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:05:55.64 ID:hWUH9Ue/0

透「ちょっ、なんで……なんでそんな……」

ルカ「ああ?! 知らねーよ……私だってなんでこんな真似してんのか……」


浅倉透に手首を掴まれた。
翻して証明の元に晒された掌はパックリと切れており、血に塗れていた。


ルカ「それに、私より市川雛菜だろうが……!」


でも、私の切り傷はあくまで表面上にとどまる。
肉を多少割いていたとしても、まだリカバリーは効く。
市川雛菜のそれは、レベルが違った。
ナイフを掴んだことに当惑するばかりの私たちをよそに、市川雛菜はその場にうずくまる。
ナイフの突き刺さった手を腹部の下に隠すようにして、背中を丸めている。


ルカ「クソ……ナイフを下手に抜くわけにもいかねえ……モノミ、モノクマでもいい……! 早く治療してやってくれ……!」

雛菜「うぅ……」


私が余裕なく叫ぶと、すぐにトテトテと場に不似合いな素っ頓狂な足音とともにモノミが姿を現した。

845 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:07:07.31 ID:hWUH9Ue/0

モノミ「な、何が起きてるんでちゅか……!? 市川さんに斑鳩さん……いや〜〜〜〜〜! スプラッタでちゅ〜〜〜〜!」

ルカ「スプラッタでもオモプラッタでもねえ! さっさと治療しろ! このままじゃ市川雛菜の手は……!」

モノミ「は、はい! わかりまちた……斑鳩さんも、治療しまちゅから一緒に病院に行きまちゅよ!」


モノミは市川雛菜に肩を貸すようにしておぶると、私に同行を促した。
見た目の割に力はある、モノケモノを撃退していただけのことはあるらしい。


透「雛菜、しっかり……大丈夫だから」


モノミの背中で浅く呼吸をする市川雛菜に声をかける。
それに応じて、首をしんどそうに傾げて浅倉透の方を見た。


雛菜「透ちゃん……怪我はない〜……?」

透「ないよ、ありがとう……その、だから」


浅倉透の言葉はたどたどしい。
いつも多くを語るような人間ではなかったが、それに動揺が拍車をかけていた。
846 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:08:45.75 ID:hWUH9Ue/0


雛菜「あは〜……それならまあいいや〜……」

透「なんで……私、本当の『浅倉透』じゃないんだよ……ただのコピーでさ、雛菜が体を張ってまで守る意味なんて……」


いつものような余裕がその言葉からは感じられなかった。
自分自身の存在と言う負い目が、この恩義を否定しようとしていた。


雛菜「ん〜……よくわかんないけど〜……」

雛菜「幼馴染だからとか、透先輩と同じ見た目だからとか、そういう理由じゃなくて」



雛菜「雛菜が守りたいと思ったから! それだけじゃダメ〜?」



失血していくさなか、顔色の悪い笑顔だった。
痛々しいその右手で不格好なピースをつくり、プルプルと持ち上げて。
私でも、その光景には感じ入るものがあった。

847 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:09:48.24 ID:hWUH9Ue/0

___でも、あいつはそうではなかった。


美琴「……」


美琴はお腹を抑えるようにして気配無く立ち上がり、そのまま私たちの横をすり抜けていく。


ルカ「ま、待て……美琴!」


掴んだ裾に、私の手のひらの血がべったりと付着した。


美琴「……ルカ、ごめんね」

ルカ「謝んのは私じゃねえだろ……!」



美琴「……もう、目の前に姿は現さないから」


848 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:10:28.83 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「……あ?」

美琴「……それじゃあ」


どうやら私の傷も浅くはないらしい。
がっちりと指で挟んで掴んでいたはずの裾はスルリと離れ、その影はすぐに夜の闇と馴染んでしまった。
あいつだって何度も突き飛ばされて無傷でもないはず、それなのに全く追いつけなかったのはその体に背負い込んでいるものの重量の差。
私の足は部屋の内側には軽いが、外側には重たかった。


モノミ「……これ以上の危害を加えてくる気はないんでちゅかね……?」

透「……多分、相方を傷つけたからじゃないかな」

ルカ「……」

透「雛菜を刺したことよりも、多分そっちの方がずっとずっと……痛いんだと思う」

ルカ「……チッ」


私たちはモノミのすぐ後に続いて、部屋を後にした。

849 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:13:28.83 ID:hWUH9Ue/0
------------------------------------------------
【第3の島 病院】

私の傷はナイフを掴んだために皮膚がぱっくりと切れ、一部筋肉を傷つけた程度。
気が飛ぶほど沁みる消毒をした後に、包帯をぐるぐる巻きにすることで何とかなった。

だが、問題は市川雛菜。
明らかに貫通していたナイフを、美琴は抜き取ろうとあがいたことで更に傷を広げていた。
不幸なことに骨とぶつかることもなく突き刺さってしまったがゆえに、出血も激しく病院に着くころには市川雛菜は気を失ってしまっていた。
モノミにとりあえず委ねるほかなく、私と浅倉透はロビーの椅子に腰かけてその時を待った。


ルカ「……突然、押し入ってきたのか」

透「うん……二人で部屋にいたところに、インターホンが鳴って」

ルカ「扉、開けたのか? 不用心だな」

透「……実は、これ」


懐からくしゃくしゃになった紙を目の前で広げる。
罫線が数本横にひかれた長方形の紙、手紙の様式だ。
私はそれを引っ手繰るようにして目を落とした。
850 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:15:24.97 ID:hWUH9Ue/0



『今晩大事な話がある。夜のアナウンスが鳴ってから十分ほど経ったら部屋に行くから入れてくれ』



ルカ「……は?」


成程二人はあらかじめアポイントを受けていたのだ。
これを受け入れてしまっていたがために、美琴の来訪だというのに不用心にも扉を開けてしまい、結果として刺されてしまった。
その流れは飲み込めた。
でも、どうしても飲み込めない一つの事実がある。

それはどれだけ頭を捻ろうとも答えが見つからない、嚥下するにはあまりにも大きくていびつな形をした謎。



_____その手紙は、完全に私の筆跡だったのだ。


851 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:17:07.86 ID:hWUH9Ue/0

どこの教室に通ってもいない、誰にも師事をしていない、ぶっきらぼうで直線的なボールペンの字は私がスケジュール帳に殴り書いた文字と完全に同一。
だが、当然ながら身に覚えなんてない。
私はあの時扉を開けたのは、あさひの様子を見に行くため。
それにアポイントなんかとるつもりもなかったし、そもそも人の都合を伺って訪問をするような几帳面な人間でもない。
それなのに、その筆跡には数年着古したジャケットにそでを通した時のような順応感があった。


透「……この手紙があったから、きっとルカさんが来るもんだと思って」

ルカ「違う、私はこんなの出しちゃいねえ……」

透「……えっ」

ルカ「意味わかんねえ……なんで、なんで私の文字でこんなのが書かれてやがんだ……!」


夢遊病の類いだろうか。それとも別人格?
私が無自覚なうちにこんな手紙を書き記して、浅倉透の部屋に投函してしまったのかもしれない。
……そんなわけない、あるはずがない。

まだ傷がふさがっちゃいない、手のひらの包帯はすっかり血に染まって真っ赤だった。


ルカ「……わけわかんねえ……これを美琴が用意したってのか……?」

透「……」
852 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:18:35.73 ID:hWUH9Ue/0
____
______
________

モノミ「……手術は終わりまちた」


それから数十分後、モノミがようやっと姿を現した。
ピンクと白のツートンの毛はすっかり血の赤色に染まっており、B級ホラー映画の殺人人形のような見た目だ。
だが、そんな映画の中の人形のように狂気的な笑顔を浮かべるでもなく、モノミはただ俯いている。
言葉など聞かずとも、その意味は理解できる。


ルカ「ダメ、だったのか……?」

透「そん、な……」

モノミ「……命を落とすようなことはありまちぇん。輸血も間に合ったので、失血死なんてこともないでちゅ」

モノミ「……でも、市川さんに重篤な後遺症が残ることは間違いないでちゅ。右手の神経は、もうどうしようもありまちぇんでちた」
853 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:19:45.17 ID:hWUH9Ue/0





モノミ「市川さんは今後もう自分の手でお箸を握ることも、誰かと手をつなぐこともできないでちゅ」




854 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:20:57.70 ID:hWUH9Ue/0

言葉を失う、という表現はきっとこの場にはふさわしくない。
もっと前から言葉を咽喉から持ち上げることは出来かねていたし、頭に浮かんだ言葉はシューティングゲームのようにその悉くを撃ち落としていた。
私がこの場において、言うべき言葉なんて何一つない。
喋るべきでない。
だから、多分正しい表現は呼吸をすることも忘れる、なのだと思う。
一人の人生が大幅に歪められてしまった、その場に居合わせることの重大さを前に、私は口を固く締めあげて、空気をかみちぎった。


透「……う、そ」

モノミ「……あちしには、義手に挿げ替える技術はないでちゅ……モノクマのように大幅な人体改造もできないんでちゅ……本当に、ごめんなちゃい……」


地面に額を擦り合わせるようにして許しを求めるモノミ。
本当に不細工なマスコットだ。こいつがしているのはただの自己満足。
自分の実力及ばずと言うのを、悲劇のヒロインぶることで解消しようとしている。
人間の醜さを体現したような在り方に虫唾が走った。

855 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:21:47.25 ID:hWUH9Ue/0

透「……」


浅倉透もそれは感じ取っていたのか、モノミに言葉をかけようとはしなかった。
背を向けて、力なく再び椅子に落ちるようにして腰かけた。


透「何やってるんだろ、私」

透「……みんなを守るために、ここにいるのに」

透「何も守れず、私のせいで……失って」

透「……キツイなー、人生」


煙のように天井に吐き出した言葉に、天井が軋んだ。
856 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:24:15.46 ID:hWUH9Ue/0

というわけで本日はここまで。
あさひの親愛度がマックスになったり、夜襲があったり、色々と起きましたね……

次回更新は明日21:30頃を予定しています
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 23:28:50.69 ID:oOVPKMGo0
>>1
好感度マックスになったのは確かなんだけど
>>1がここであさひの名前を出すのなんか不穏なんだけどまさかね・・・
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 01:04:55.29 ID:EQ8hP+wk0
大胆な邪推はイナゴの特権・・・(迫真)
859 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/19(日) 03:01:06.44 ID:mMoGzpGu0
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860 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:34:28.25 ID:zQ5P2I1e0
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≪island life:day 24≫
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【第3の島 病院】

……徹夜だ。
市川雛菜の顛末を訊き遂げてから、この場を離れようにも靴底がのり付けされたように動かず。
そして掌の痛みも相まってすっかり目も醒めてしまっていた。
眠気を全く感じることもなく、気が付けば真っ暗な空がすっかり太陽の熱で溶け消えてしまっていた。


ルカ「……朝らしいな」

透「……」

ルカ「メシ、取ってこようか? オマエ、ここから離れる気ないんだろ」

透「……ん」

ルカ「……わかった、ちょっと待ってろよ」


こいつの気持ちも察して余りある。
流石にここで黙って飯を食いに離れられるほど私も血の通っていない人間ではない。
浅倉透は目線をこちらにくれることもなく、幽かな声量で返事した。
私もそれ以上は言わず、ゆっくりと立ち上がる。
長く座った膝は、それだけでパキッと鳴った。
861 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:36:27.25 ID:zQ5P2I1e0

その瞬間、



「あれ〜? ご飯食べに行くんですか〜? 雛菜もそろそろお腹すいた〜〜〜〜!」



廊下には、あいつが立っていた。
いつものようにキンキンとうるさいトーンとボリューム。
あからさまなくらいな笑顔で、ブンブンと左手をこちらに向かって振っている。
昨日とほとんど相違ない市川雛菜が、そこにいた。

862 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:38:46.17 ID:zQ5P2I1e0

ルカ「お、オマエ……! 目、覚ましたのか……!」


駆け寄る私に先行して浅倉透が肩を揺さぶった。


透「雛菜……雛菜……!」

雛菜「あは〜、透ちゃん痛い〜」


でも、その手を払いのけることはしない。
いや、できないんだろう。
ここまでのわずかなやりとりでもわかる、体はどこか傾いたようになっていて比重がうまくのっていない。
完全に動かなくなってしまった右手との帳尻が合わない体は、見ていてもどこか違和感を孕んでいた。


雛菜「起きたのはついさっきで〜、アナウンスが聞こえたんで朝ごはん食べに行こ〜って!」

ルカ「だ、大丈夫なのか……? その、昨日の今日で……」

雛菜「ん〜、大丈夫じゃないですね〜。お箸もスプーンも持てないし、ごはんは雛菜一人じゃ食べれないので〜」

透「……っ!」
863 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:39:41.37 ID:zQ5P2I1e0


雛菜「だから、透ちゃんは雛菜にあ〜んしてね〜?」



ちょっと転んで擦りむいたぐらいのテンションだった。
これ見よがしに傷を見せびらかすこともせず、なんなら話題をさっさと流そうとすらしていた。
今後一生に関わる話を、日常会話のようなトーンで話す。
彼女のスタンスには従いたいのも山々だが、当事者足る私たちはそれに流石にただ乗りはできず。


ルカ「ちょ、ちょっと待て……その傷、痛むんだろ? 無茶すんなって……」

雛菜「痛いことは痛いですけど〜……え、雛菜がご飯食べちゃなんかまずいんですか〜?」

ルカ「いや、そうじゃなくて……私たちにもなんか……言いたいこととかあんじゃねえのか……?」

透「私は……雛菜の一生を傷つけたんだ」

雛菜「え〜?」

864 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:42:38.07 ID:zQ5P2I1e0

でも、むしろそれを市川雛菜は鬱陶しそうにあしらった。


雛菜「ん〜、これ昨日も言ったと思うんですけど〜。雛菜は雛菜が守りたいと思ったからやっただけなので、別に透ちゃんもあなたも悪く思う必要なんてないですよ〜」


雛菜「結果として、誰も死ななかったしそっちの方が雛菜はしあわせですよ〜?」


どこまでも単純な論理だった。
市川雛菜にはずっと迷いがない。仲間のことで思い悩むことはあっても、そこから導き出される結論に、彼女自身が絶対の信頼を置いている。

だからぶれない、悔やまない、立ち止まらない。
この島にいる誰よりも、自分自身の在り方と歩み方を持っているのだと今この瞬間に理解した。
ジェットコースターで浅倉透を『透ちゃん』と呼んだ時のような爽やかさが頬を撫でる。


865 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:45:29.42 ID:zQ5P2I1e0

透「……雛菜」

雛菜「ん〜?」

透「朝ごはん食べたら作ったげる。特大のバケツで、プリン」

透「醤油もかけ放題」

雛菜「あは〜〜〜〜〜♡」


私はこの島に来る前の283プロの連中のことはそこまで知らない。
でも、この二人を見ていたらどんなものだったのか察しはある程度つく。

ノクチルとかいうグループはとんだ問題児の集まりだったんだろう。
等身大の彼女たちがぶつかり合って、補い合って。
他の何かで形を変えない、変えようとしない、それぞれがそれぞれを繋ぎ止めて、他が割って入れないほどの結束感のあるグループ。

そういう厄介な集まりだったのだろうと得心がいった。


866 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:46:15.86 ID:zQ5P2I1e0

雛菜「じゃ、そういうわけで雛菜たちは行きますね〜!」

透「アデュー」

ルカ「おう……じゃあな、気をつけろよ」

雛菜「は〜い!」


ルカ「……」


ルカ「…………」



ルカ「…………………………………………ん?」

867 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:48:05.68 ID:zQ5P2I1e0
------------------------------------------------

【ホテル レストラン】

一人取り残されたことに納得のいかなさをはじめは感じていたが、二人だけの時間が必要だったのだろうということで折り合いをつけた。
それに前もって二人がレストランに行っておいてくれたおかげでことの説明の手間も省けた。
私がついた頃には既に後の3人も昨晩の襲撃のこと、そして市川雛菜の手のことも一応情報としては飲み込んでいた。


智代子「そんな……雛菜ちゃん、大丈夫……じゃあないよね、そんな状態じゃ……」

雛菜「まあ不自由は不自由ですけど〜、放クラのお姉さんに比べたら雛菜は生身のままですし〜」

透「ほら、雛菜。あーん」

雛菜「あ〜ん♡」

恋鐘「うちらで雛菜の生活も面倒見てあげんといかんね……片手だけだとシャワーもまともに浴びれんたい」

あさひ「もう手は痛くないっすか?」

雛菜「今は鎮痛剤打ってるのでマシですね〜。でも、薬が切れた瞬間多分凄まじい痛みなので!」

智代子「そんな明るく言うことじゃないよ……」


やはりここでも当事者より周囲の方が事態を重く捉えている様子。
陽の光が差し込んで明るく照らされているはずのテラスで、なぜか陰陽を感じてしまう程。
あっけらかんとした様子に、なんだか私も心配するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

868 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:49:39.70 ID:zQ5P2I1e0

ルカ「おら、私たちも飯食うぞ飯。片腕使えねえやつより食い終わるのが遅いとかお笑いかよ」

智代子「ル、ルカちゃん流石にそんな言い方って……」

雛菜「あは〜、そうですね〜! 雛菜もう腹六分くらい来ちゃってますよ〜?」

あさひ「あ! 朝ご飯冷えてきちゃってる!」

透「食べて食べて。ほら、遠慮せずに」

恋鐘「もう、透? そいは朝ご飯作ったうちん台詞たい!」

智代子「……うぅ」


段々と市川雛菜の作り出す空気に満ちていく。
心配する方が悪いと言う心情が声のトーンを無理矢理に引き上げる。


雛菜「この傷跡は、犯行を食い止めることができた証拠なんですよ〜?」

雛菜「そんなに憐れむような視線向けないで欲しいかも〜」

雛菜「みんなが笑顔で食べてくれないと、ご飯も美味しくないですし〜!」


これには流石に甘党女も観念した様子。
それ以上市川雛菜に同情をかけるような素振りを見せるのはやめた。
私としても、いい形に落ち着いたとは思う。
ここまでに私たちは多くのものを失いすぎた。
塞ぎ込む時間なら、既に供給過多。そこにカロリーを割いている余裕は私たちにはない。

869 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:50:29.01 ID:zQ5P2I1e0

あさひ「それにしても、美琴さんはどうやって透ちゃんの部屋に入ったっすか?」

雛菜「ん〜、雛菜はそこの人だと思って扉を開けちゃったんですよね〜」

智代子「え? ルカちゃん?」

ルカ「……美琴が来る前に、ポストにコレが投函されてたらしい」

恋鐘「なんね? ……こいはルカの筆跡じゃなか?」

ルカ「……ああ、どっからどうみても私の字だ」

ルカ「でも生憎私にこんなの書いた覚えなんて全くない。そもそも人の部屋に行くのにアポ取ったりしないっつーの」

智代子「それはそれで問題だね……」

あさひ「じゃあ、この手紙はなんなんすか?」

ルカ「……」

恋鐘「美琴に聞いてみるしかなさそうたい……こいを投函したのは美琴とやろ?」

ルカ「どうだろうな……」


当然ながら私たち以外の人間にも心当たりなどない。
この手紙はどこで生まれ、誰が投函したのか。
どれだけ時間が経とうとも、答えが提示されることはなかった。
870 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:53:39.14 ID:zQ5P2I1e0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

市川雛菜はあの後浅倉透に介助されながら部屋に戻っていった。
とりあえずのところは、浅倉透に任せておけば問題はないだろう。
改めて二人には誰がきても扉を開けないようにと釘も刺して置いたし、今日のところは安心していいはずだ。

「……気が落ち着いたら、眠たくなってきたな」

徹夜明け、朝食も食べたばかり。
瞼はだいぶん重たくなってきた。

……今日はどう過ごそうか。


【自由行動開始】

【事件発生前最終日の自由行動です】

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【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…18個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 22:05:26.62 ID:jmo6JafG0
1 智代子
872 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 22:10:08.27 ID:zQ5P2I1e0
1 智代子選択

【第3の島 病院】

朝飯を食った時は市川雛菜に言われるがまま、無理やりにお気楽なムードを作ってやり過ごした。
だけど、やっぱりあいつはそのまま飲み込めていたわけではない。
つい数日前に、自分の大切な存在が肉体を失ってしまったことを重ね合わせていたのか。
いつになく遅いペースで食事を口に運んだかと思うと、食後はふらふらとどこかへ一人で歩いて行ってしまった。

その後を追ってたどり着いたのが、ここだ。


ルカ「……何する気だよ」

智代子「あ、あれ……? あはは、私も自分で気づかないうちにここに来ちゃってたみたい……?」

ルカ「……」


……痛々しいな。

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‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 22:14:45.47 ID:5gQxeq7s0
1:マリンスノー
874 :開幕寝落ちかまして申し訳ありませんでした ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:04:31.99 ID:lnzqQySY0
1 選択

【マリンスノーを渡した……】

智代子「わぁ……! ルカちゃん、すごくキレイだよこれ!」

ルカ「ハッ、こんなので目を輝かせちまってガキじゃあるまいし」

智代子「純粋にプレゼントを喜んでるだけなんだけど……」

ルカ「どのみち私にはいらねえもんだ。欲しいんならくれてやるよ」

智代子「ルカちゃん、ありがたく頂戴します!」

(……まあ、普通に喜んだか)

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ルカ「やっぱり、思い出しちまうか。有栖川夏葉の事」


本人は無自覚にふらふらとたどり着いた認識なのだろうが、私からすればなぜ甘党女が病院にまでやってきたのかの理由など想像にたやすい。
肉体の欠損、それを一番間近で見ていたのは彼女だ。


智代子「思い出す、っていうのは多分違うかな。夏葉ちゃんのこと、一秒だって忘れるわけないし、どっちかと言えば『重なった』んだと思う」

ルカ「……そうだな」

智代子「今朝の雛菜ちゃん、本当に夏葉ちゃんにそっくりだったんだ。右手が使えなくなっちゃったこと、とかじゃなくてね」

智代子「何よりも自分が一番不安なはずなのに、それを周りに悟らせないように強い姿を見せているところとか」

ルカ「……!」


≪夏葉「智代子に果穂……そして、283プロのみんな……この島にいるのは多くが私よりも年下でしょ……?」

夏葉「だから……私が、守らないと……助けてあげないと……その責任があるって言うのに……」

夏葉「こんな、病気なんかに……侵されて……」

ルカ「……お前」≫


私は絶望病の騒ぎがあった頃を思い出す。
寝台の上、高熱にうなされ朦朧とする中であいつが初めて漏らした本音。
年長者として感じている責任、そして不安。私だけの秘密にしておくつもりだったが、そもそもの前提からして違っていたらしい。


ルカ「やっぱり、よく見てんな」

智代子「そりゃあ私たちは友達だもん!」

友達、だなんて用地が過ぎる関係性。波長が合うというだけで何の拘束力も実効性もない結びつき。それをどうしてこうも自信満々に言い放てるのだろう。

智代子「友達ってね、言葉や行動にしなくても分かっちゃうんだよ。今日はいいことあったんだ!とか逆に何か嫌なことでもあったんだ!とか〜」


1.オマエにはそれほどまでに大きい存在だったんだな
2.それだけのことを思われてあいつも幸せだろうよ

↓1
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 21:24:07.99 ID:HSLKjFms0
2
876 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:35:50.07 ID:lnzqQySY0
2 選択


ルカ「それだけのことを思われて有栖川夏葉も幸せだろうよ」

ルカ「死んでなお、オマエは友達だって胸を張って言えるんだからな。……まあ、私からすれば荒唐無稽な話だけどな」

智代子「ううん、夏葉ちゃんだけじゃないよ。放クラのみんな、283プロのみんな、この島のみんな。ルカちゃんだってそれには入っちゃってるからね!」

ルカ「はあ? 私はそんなの認めた覚え……」

智代子「ルカちゃんが私のことを励まそうとしてくれてること、分かってるよ」

ルカ「……ッ!」


俄かに顔が熱くなる。
別にこれは自分の感情とかではない。
何を勝手に勘違いしているのか知らないが、さも見透かしていますとでも言いたそうな言葉を臆面もなく出してきたことに対する共感性羞恥だ。


智代子「ごめんね、ルカちゃんにも心配かけちゃったよね」

智代子「雛菜ちゃん本人はああ言ってたけど、弱音を中々はけない人のことを私も知っちゃってるから。つい勘ぐりすぎちゃったのかな」


本当にこいつはお人よしだ。
友達と言う関係性に落とし込むハードルが低いせいで、余計なところまで気を回し、自分自身が追い詰められてしまう。



ルカ「……ハッ」



≪ルカ「……お前は確かに立派だよ、自分だけじゃなくいつも他の連中のことも気にかけて。そんだけの責任感があってこその行動なんだろうなって私でも思う」

ルカ「だけど……だからこそ、そんな風に自分を追い込む必要なんかないんじゃねーのか」≫


ルカ「……なんつーか、似た者同士だよな。オマエら」

智代子「き、急にどうしたの!?」


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【親愛度が上昇しました!】

【園田智代子の親愛度レベル…9.5】
877 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:36:53.75 ID:lnzqQySY0
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【ルカのコテージ】


類は友を呼ぶ、なんて言葉があるが実際のところ「類」と「友」はどちらが先に立つのだろうか。
ふと自分のことを思い返してみると、美琴に出会ってからは染め上げられた自覚は多分にあった。
必死に美琴の後を追い、横に立とうと努めて来れば、それも当然の事か。

……今はどうなんだろう。
二人の関係性は一言で称するにはこんがらがりすぎる。

その志向性は、今や。

【自由行動開始】

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【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…18個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 21:59:50.76 ID:HSLKjFms0
1 雛菜
879 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:09:51.89 ID:lnzqQySY0
1 雛菜選択

【第1の島 ロケットパンチマーケット】


甘党女と別れてから、なぜだか喉の渇きのようなものを感じてスーパーマーケットへと足を運んだ。
別にのどを潤すだけならレストランでも事足りるのだが、私の無意識はなぜだかそれを拒んだ。
見えない糸に引っ張られるようにして足を踏み入れた先で目にしたのは、目を背けたくなるようなその姿。


雛菜「あっ、こんにちは〜。お買い物ですか〜?」

ルカ「お、オマエ……なんでこんなところに……」

雛菜「なんで、って買い物以外何かあります〜?」


動かない右手をカートの上に添えるようにして、もう片方の手で商品を持つ。
何不自由してません、といった顔とは対照的に痛ましいが過ぎるだけの不自由が曝け出されていた。


雛菜「何か勘違いしてそうですけど、透ちゃんと一緒ですよ〜? 今はちょっとトイレに行ってるんでいませんけど〜」

ルカ「そ、そうか……そうだよな……」

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‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【絶対音叉】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 22:24:28.07 ID:HSLKjFms0
1 【絶対音叉】
881 :書いてたら安価とるべき部分もない感じになったのでもうこのまま行きます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:40:07.13 ID:lnzqQySY0
1 選択

【絶対音叉を渡した……】

雛菜「なんですか、これ〜? サスマタ〜?」

ルカ「一応音楽用品だよ、共振を起こして医療の現場で使ったりするやつの強化版だ」

雛菜「ふ〜ん……」

雛菜「あは〜、でも雛菜今この音叉を持ったら手いっぱいなんで共振どころじゃないかもですね〜」

ルカ「えっ」

雛菜「まあ透ちゃんに叩くなりしてもらえばいっか〜」

(……背筋が凍るようなこと言うなよ)

(……まあ、普通に喜んだ……よな?)

-------------------------------------------------

……一応は、解決のかたちを見た。
浅倉透のことを守れたので満足はしている、手を失ったことよりもその方がメリットとしても大きい。
何よりも、これ以上自分の手のことで落ち込むのを良しとしない。
こういうもの、としてその場を流すことを何よりも本人が求めているのだ。


雛菜「ん〜? なにか言いたいことでもあります〜?」

ルカ「……その」


でも、いざこうして二人きりになると私としては言葉に詰まらざるを得ない。
だってこの惨状をもたらしたのは他でもない自分の相方。更には自分自身がその場に居合わせていたのだから。

拳を握り込んで肩を震わせる私を見れば、流石のこいつも私の心境を理解したらしい。


雛菜「あは〜……」


こいつは普段あっけらかんとして、ワガママに生きている……様に見える。
でもその実誰よりも客観的な姿勢で、今の世の中にそうあるべきものとして認識されている固定概念だって捉えなおせる。
明確な我の中から、正しいものを見定めることができる。
そのしたたかさこそが、市川雛菜がアイドルたる所以なのだと思う。


雛菜「……朝も言いましたけど、あなたのことを恨んだりとかはないです〜」


だからこいつは、今この局面においてもなあなあになっている現状を確かめ直すことができた。
私が胸に抱える罪悪感と、実際自分の身に起きた出来事。
それと釣り合うだけの回答を淀んだ水面の奥底から掬い上げる。
882 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:41:32.83 ID:lnzqQySY0



雛菜「でも、相方さんのことは雛菜だって恨んでますよ〜」



ルカ「……えっ」


何が「えっ」なのか、自分の口から出た音に吐き気を催す。
それは腐った現実世界で生きていたがゆえに浸されていた詭弁の味。
私自身も腐っている。どんな状況でも許されることに、慣れてしまっていた。


雛菜「雛菜だって、まだまだ二十にもなってないんですからやりたいことは山ほどあった。でも、その悉くは奪われちゃったわけですし」

ルカ「……」


でも、そうじゃない。
加害側だって本当は許されることを求めているわけじゃない。
むしろその逆、憎まれて憎まれて、一生許されないことで初めて割に合う。
だからこそ現実では残酷なことに許しが与えられてしまうのだ。
それが一番加害側にとって苦しいことだから。


雛菜「そこに嘘はつけないですし〜、ついたところで嘘って丸わかりだもんね〜」


だから私からすれば事なかれ主義が横行する世の中で黙殺され続けてきた感情、それをこうして曝け出してくれたことに感謝こそしていた。
883 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:43:50.26 ID:lnzqQySY0


しかし、私はこれでもなお市川雛菜を見誤っていた。



雛菜「でも、恨んでるからってそれが全部憎しみになるわけじゃないと思うんですよね〜」



市川雛菜はそれでは終わらない。


雛菜「雛菜だって、シーズの人たちと仲良くしてもらった時間はあるし、この島での暮らしのこともあっておかしくなっちゃう気持ちは分からなくもないです〜」

雛菜「だから雛菜は、『今』じゃなくて『次』の話がしたいかな〜」


やっぱりなんだかんだ言ってワガママではあるんだと思う。
ただ、それは独善とは違う。自分の都合で動きながらも、それに振り回される人間も彼女の持つ幸福の軌道上に載せられる。
884 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:44:25.29 ID:lnzqQySY0


雛菜「この恨みに見合うだけの、『次』。雛菜のために何かしてくれないかな〜って! ほら、芸能界でも悪いことをしたら代わりに良いことをして補填しますよね〜!」


彼女は自分自身の幸福を追うと同時に、周囲に幸福を振りまく存在でもある、ということらしい。
私と美琴がまさにそう、許されないという最高の利益を被ると同時に、喜びの共有と言う贖罪の機会まで与えられる。


雛菜「一緒に甘いもの食べに行ったり、雛菜を遠くに連れてったり! 右手を失った“おかげで”できる体験が雛菜は欲しいかな〜」


これほどの回答が果たしてあっただろうか。


ルカ「……は、ハハッ……オマエ、やっぱバケモンじみてるよ」


私より年下で、ここまでのことが言えるなんて末恐ろしいとしみじみと感じた。


透「……あれ、なんかいる」

ルカ「……悪い、邪魔した」

雛菜「……? さよなら〜」


浅倉透が戻って来るのに合わせて背を向けた。
これ以上あの場所にいるのはまずい。

今の顔を見られるのは、ひどく恥ずかしいからだ。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【市川雛菜の親愛度レベル…7.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…19個】
885 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:47:23.00 ID:lnzqQySY0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】


部屋に戻ってからもなんだか体が震えていた。
市川雛菜の発した言葉が、妙に私の中に響いていた。

美琴の発した言葉、起こした行動。
その一つ一つに市川雛菜の言葉がぶつかって跳ね返り、私の中で乱反射している。

能天気能天気とひとり脳内で悪態をついていたが、あいつはそんな器じゃない。

……本当に、化け物だ。


【自由行動開始】

【事件発生前最後の自由行動です】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…19個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:06:14.14 ID:HSLKjFms0
1 智代子
887 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:15:43.91 ID:lnzqQySY0
1 智代子選択

【第1の島 ロケットパンチマーケット】

そういえば前回の事件の騒ぎでコテージの備蓄もなくなっていたなとふと思い出す。
別に今行かなくてもいい用事、それなのになぜわざわざこのタイミングを選ぶのだろう。
自分でも分からない答えを、棚の中に探す。
でも見つかったのはその答えではなく、向こうの棚の奥に切り取られた甘党女の顔。


智代子「あ、ルカちゃん! ルカちゃんもお菓子?」

ルカ「……別に、暇だっただけだよ」


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:31:13.08 ID:HSLKjFms0
1 【ジャバの天然塩】
889 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:36:21.38 ID:lnzqQySY0

【ジャバの天然塩を渡した……】

智代子「おぉ……まさに塩、そのもの……」

ルカ「……流石に直は行くなよ?」

智代子「い、行かないよ! こういうのは料理にちょいたしするからこそ美味しいんだって、ちゃんと知ってますから!」

ルカ「あぁ……天ぷらにつけたりな」

智代子「そうそう! 調味料をちゃんと使えてこそいっぱしの料理人だよ!」

ルカ「どこに料理人がいんだよ」

(まあ、普通に喜んだか……)

-------------------------------------------------

智代子「クッキーもいいな〜、でもやっぱり定番のアーモンドチョコも外せないし……」

ルカ「……太るぞ?」

智代子「太らないよ! ……いや、太るんだけど……!!」

ルカ「……はぁ」


そういえば、花火大会の時もこいつはこんな具合だったか。
ほんの一晩の催しだというのに、食いきれないほどのお菓子をこれでもかとカゴに放り込んで。
それが本当に一晩でなくなってしまったのだから驚きだ。


智代子「だ、大丈夫! ばっちり運動すればいくら食べても大丈夫だって、昔の偉い人が言ってたし……!」

ルカ「どこの誰が言うんだ、そんな煩悩丸出しの言葉」

智代子「ま、松平……定信……さん……?」

ルカ「大飢饉凌いだ偉人に何言わせてんだ」


ふざけたことをしゃべりながらもお菓子をカゴにぶち込む手は止まらない。
いつものこいつなら、ただ欲望のままに動いているだけとしてみるのだが。


ルカ「……」

智代子「とにかく元気をつけなくっちゃ! 甘いものはいつだって私たちの味方だよ!」


……流石に今回限りは、私も邪推してしまう。
ついさっきまでの表情を裏返したような明るい言動。
自分の好きなものを選び取ったかごに入れていくその動作が、なんだかいつも以上に幼く見えた。
きっとそれは私の目が曇っているから。
先入観や偏見と言ったものを捨てきれない私だから、こいつの動作を『痛ましい』と感じてしまうのだろう。


ルカ「……なあ」


1.吹っ切れたのか?
2.もう全部、解決したのか?

↓1
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:47:30.32 ID:HSLKjFms0
1
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/21(火) 23:47:59.86 ID:vKEXs3me0
2
892 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:51:36.30 ID:lnzqQySY0
1 選択


ルカ「……吹っ切れたのか?」


私の問いかけに、甘党女の手が止まる。
私がこの質問に込めた意味を確かめているのか、息を一つついてから、斜め上を見つめた。
ついさっきのことだ、仲間と過ごした記憶やそこから生じる感傷に囚われ、引き摺られ続けて気を病んでいるところを目撃したばかり。
そんな最中で鉢合わせるなりに私を引っ張ってお菓子の棚に来て、何も思うところがないとは言わせない。


智代子「……ううん、まだ。というよりも、私はずっと吹っ切れるなんてことはないと思う。果穂のことも、夏葉ちゃんのことも……前回のコロシアイで命を落とした樹里ちゃんと凛世ちゃんのことも……何もかも」

智代子「それに、私自身このことで吹っ切れるなんてしたくないんだ。私で勝手にひと段落つけるのって、なんだか寂しい気がして」

智代子「だからね、決めたんだ。私は変わらなくていい、無理に前に進まなくたっていいって。ほら、チョコレートだって甘い物だけじゃなくて、ビターなものだってあるよね?」


はじめこいつの肩書を見た時に抱いたのは『くだらない』という感想。
名前をもじってその場でぱっと思いついたような『チョコアイドル』、どうせそこに大した戦略も展望もない、キャラ付けどまりの記号なんだと思っていた。

でも、こうしてこいつと直面するとその認識は誤りだったと思わされる。

ただ甘いだけじゃない、どれだけ厳しい現実だろうと、どれだけの苦境に立たされようとも、
向き合い続けることができる。向き合う誰かを支えることができる。

それだけの覚悟とともに背負い込んだのが『チョコアイドル』という看板だったんだろう。



智代子「私は、チョコアイドルだから。ちょっとくらい苦いぐらいが隠し味だよ!」



……こうも誇らしげに言われれば、その看板も認めざるを得ないだろう。


ルカ「……ハッ」


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【園田智代子の親愛度レベル…11.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…20個】
893 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:53:50.66 ID:lnzqQySY0

というわけで自由行動終了にて本日はここまで。
突発的な更新となったのにお付き合いいただきありがとうございました。
次回はいよいよ事件発生、捜査パートまで進みます。
第4章が長かった分若干駆け足っぽく感じますが、その分事件や裁判パートは濃くなっていると思うので対戦よろしくお願いします。

次回更新は6/22(水)21:00ごろで予定しています。
それではお疲れさまでした。
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:59:05.29 ID:HSLKjFms0
お疲れさまでした
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