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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3

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738 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:18:13.10 ID:QNk4OO930

市民たちの怒りはどんどんヒートアップ!
それもそのはず、こちとら炭水化物で腹を満たしたいのに、あんなザラついた液体で飢えを凌げだなんて納得できるはずもありません!
ギロチンが最高地点に到達した時、市民から聞こえてくるのも別れを惜しむものではなく、むしろ歓声すら上がります。

ええい、ままよ!処刑人のモノクマが紐を手放した、その瞬間!


____その瞬間でさえも、有栖川さんは諦めてなどいませんでした。


やはり筋肉、筋肉はすべてを解決する!

有栖川さんの火事場の馬鹿力、筋肉が全身で隆起したかと思うと、バキバキと音を立てて枷の一切が破壊されてしまったではありませんか!
ギロチンは宙を掠め、首を切り落とすことなく断頭台に突き刺さる!

739 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:19:05.66 ID:QNk4OO930



☆有栖川夏葉、奇跡の生還……!?



暴徒たちもさすがにこれには大歓声! 筋肉をほめたたえ、手を叩いて大喜び!



…パンッ!



ですが、拍手に交じって乾いた音が響きました。
有栖川さんは生存を誇ったポーズのまま、何が起きたのかもわからずその場に倒れ込みます。
群衆に交じっていたスナイパー、凶弾には流石の筋肉も無力だったのです。
拿捕の網も被せられ、有栖川案の死体をずるずると退場。

悪嬢の処刑、もとい鬼退治は呆気ない幕引きとなりましたとさ。
740 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:26:43.07 ID:QNk4OO930

というわけで二週間と少しぶりでしょうか、お久しぶりです。
いつもより少し早めですが5章更新の準備が出来てきましたので報告にやって参りました。


>>737
久しぶりに早速ガバ、「超高校級」ではなくて「超大学生級」ですね……

>>735
冬優子のおしおきは「冬優子が途中で台無しにする」前提で考えていたので、最後まで細かなことは特に考えてませんでしたかね……
ロンパらしい終わり方となると逃げこもうとする教会はハリボテで、チャリオットと板挟みになって圧死がそれらしいような気もします
「SOS」はソロ曲からとったタイトルですが、歌詞の恋の苦しみのサインが物理的な苦しみのサインに代わる意味合いでつけてます
何かの略にするのもありですね……また考えてみます。


さて、5章は特に問題がなければ6/11(土)の21:00あたりからの更新を考えています。
ストーリーも佳境、どうかお付き合いください。
それではまたよろしくお願いします。
741 :一時間も遅刻してしまいましたが始めます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:02:50.96 ID:LUS5eqqE0

〇保護観察対象者:風野灯織

保護観察を開始してから二週間余りが経過。
フラッシュバックなど精神衛生に支障をきたす症状は期間中確認されず。
観察者との対話も特に問題なし。
事態認識も正常。事件で命を落とした友人らも正確に把握しており、記憶の自主改竄など自己防衛に走る様子もない。
日常生活の復帰に十分な回復を認めるものとし、保護観察を本日打ち切ると決定。

742 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:04:09.61 ID:LUS5eqqE0

〇283プロダクション連続殺人事件の捜査状況について

主犯格とみられる天井努の経営していた芸能プロダクション『283プロダクション』から社用PCならびに私用PCを押収。
情報捜査担当者に回し、解析結果が本日到着したため、報告に挙がっていた情報をここに記す。

・本連続殺人事件を『コロシアイ合宿生活』と題して外部に公開していた確定的な証拠は発見されなかった。
海外サーバーを経由していたものと思われ、その履歴も消去されてしまっているため復元はほぼ不可能。
保護観察対象者から得られた証言の裏付けとなる根拠には欠ける。
『チーム:ダンガンロンパ』と呼ばれる組織の特定を急ぐ。

・芸能事業とは別の帳簿データを確認。
巨額が闇口座に注ぎ込まれている不正な流れがあり、当事務所の従業員・七草はづきに確認をしたところ、完全に知覚していないものだとの証言が取れる。
天井努が事務所の経営資金と別に蓄えていた金についても、その入手手段、流用先を調査するものとする。

・外部との通信履歴に不審な送信先を確認。
連絡は数度に渡り、一定の頻度で行われている様子。
主要通信業大手に照会するも該当はなし。
位置情報を解析し、送信先の人物と事件との関連性について追求していくことが目下の捜査方針となる。

743 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:05:12.23 ID:LUS5eqqE0





・本件が発生してより行方不明となっている10名との関連も併せて調査する。




744 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:05:48.95 ID:LUS5eqqE0
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CHAPTER 05

Killer×Miss-aiōn

(非)日常編



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745 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:07:06.57 ID:LUS5eqqE0
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______
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=========
≪island life:day 22≫
=========

【ルカのコテージ】

「……朝か」

冬優子の裁判の翌朝。
私の肩は妙に重たくて、少しだけベッドから身を起こすのに時間がかかった。
肩にのしかかっているのは、いくつもの責任、タスクともいうべきか。
ガキのお守りに美琴との和解、そして私たちの前に横たわる展望の見えない大きく、深い謎。
一方的に押しつけて自分は早々に退場だなんて、最後の最後まで自分勝手な女だったと思う。
私がそういうのを拒絶できない人間だとわかってやっているのが余計に癪だ。

「……」

まあ、それは私も同じなのだが。
私が美琴に無理やり背負わせたものもそれなりにあるし、その背負わせ合いが人と人との繋がりというものなんだろう。
つくづく煩わしいな、と思う。

「行くか」

とりあえずはすぐ手につくところから、ガキのお守りという一番身近なタスクからやっていくことにした。

746 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:08:22.86 ID:LUS5eqqE0
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【あさひのコテージ】

あさひ「あれ、ルカさん。どうしたっすか?」

ルカ「メシだメシ。ついてこい」


未だ冬優子の代わりを私が務めることに慣れていないのか、あさひは私の顔を見て目をパチクリさせた。
ガラス玉のように綺麗な瞳に見つめられると、なんだかたじろいでしまう。


ルカ「冬優子の代わりだよ、私が面倒みなきゃだろ」

あさひ「ふーん……でも、冬優子ちゃんそんなお迎えなんかしてなかったっすよ?」

ルカ「……それは、知らん」

あさひ「そういうのは愛依ちゃんがやってたっす」


聞いているだけで切なくなるようなことを、本人はこともなげに言う。


あさひ「とりあえず準備するっすね。ちょっと待ってて欲しいっす!」


その小さな背中が部屋の奥に消えていくのを見つめていた。


ルカ「……」


本当に、この島に来る前とは大違いだ。
283プロと馴れ合うどころか、こんな風に故人との約束を律儀に守ろうとしているだなんて。
自分の変貌ぶりにウッとなるのを堪えていた。


あさひ「お待たせっす! さ、行くっすよ! 今日は恋鐘ちゃん、どんなご飯を作ってくれてるっすかね!」

ルカ「……うるせえ、朝からキャンキャン騒ぐな。頭が痛くなる」

747 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:11:06.90 ID:LUS5eqqE0
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【ホテル レストラン】

透「おはよう、二人仲良しだね」

あさひ「透ちゃんおはようっす!」

ルカ「……よう」


冬優子の死に際に見せたあの姿には一定の効用があったらしい。
これまでの裁判の翌日は、どこか取り繕ったような重たい空気が朝食会にも漂っているものだったが、今回はそんなことはない。
全員が全員吹っ切れたような様子で、変わらぬ日常を過ごしている。

……ただ、そこに美琴の姿がないだけだ。


ルカ「……」

あさひ「……? どうしたっすか?」


あさひの顔を見つめてつい考え込む。
……私はどこに座るべきなのだろう。
別に真隣に座る必要もないんだろうが、かと言って美琴の隣(だった)席に座るのもなんとなくバツが悪い。


智代子「ねえ、もう人数もだいぶ減っちゃったし、今日からはこっち側の机でみんなで食べない?」

恋鐘「8人掛け……うちも賛成たい、どうしても空席があると寂しくなっちゃうけん」

(……助かったな)
748 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:14:08.10 ID:LUS5eqqE0

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


あさひ「恋鐘ちゃん、今日の朝ごはんも美味しいっすね! これ、なんて料理っすか?」

恋鐘「ふふーん、今日のはタプシログばい! この前一緒に図書館に行ったとやろ? その時に読んだ本に書いてあったフィリピンの朝ごはんを作ってみたとよ!」

智代子「このお肉、醤油の風味ですごく美味しいよ!」

あさひ「ほうっふね!」

(……口周りすげえソースで汚れてるんだけど、これを拭き取るのは流石に過保護か……?)

(ああクソ……冬優子はどうしてたっけ……!?)

恋鐘「ふふ! あさひ、口周り汚れとるよ!」

あさひ「……? あ、恋鐘ちゃんありがとうっす!」

(どれぐらい世話を焼いていいのかわかんねえ……)

(283の連中、元々距離感が近いから余計に……)


長崎女の作った朝食を口に運びながら今後の相談。
4回目の事件をくぐり抜け、私たちの状況はまた変わった。
そしてそれは、島の状況も同じはずだ。

749 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:15:14.69 ID:LUS5eqqE0

ルカ「今回はモノミのやつ、ちゃんと働いてくれるといいんだが……」

あさひ「この前は夏葉さんのおかげで助かったっすけど、どうっすかね?」

智代子「島も残すところあと一つ、だもんね」

雛菜「でもそこに手がかりがなかったらしんどいですね〜」

恋鐘「そんなことなか! 絶対にこの島を出るためのヒントは眠っとるばい!」

透「……第5の島、か」


新エリアの解放を待ち侘びて、手をこまねくばかりの私たち。
そんな雑談ばかりの時間を数十分過ごしたところで、やつはようやっと姿を表した。


バビューン!!

モノミ「ミナサン! お待たせしました! いや、お待たせしすぎたのかもしれまちぇん……」

ルカ「お、来たな……どうだった」

モノミ「話が早いでちゅ……そうでちゅよね、あたちとミナサンの間にもう言葉なんて要らない……それが信頼ってやつでちゅ」

透「あー……うん、そうだね」

モノミ「適当に流されまちた……」
750 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:18:13.63 ID:LUS5eqqE0

あさひ「そんなことより新しい島に行けるようになったのかどうなのか聞かせて欲しいっす!」

恋鐘「そうばい! どがんね、モノミ!」

モノミ「結論からいいまちゅ……」

モノミ「あちしはモノケモノに…………」

モノミ「勝てま…………」

モノミ「…………………………………」

モノミ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」






ガチャ

美琴「新しい島、行けるようになってるよ」

ルカ「み、美琴……!?」


モノミのクソみたいな溜めをぶった斬って登場したのは美琴。
レストランの入り口の扉にもたれ掛かるようにして、私たちに話しかける。

751 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:19:21.63 ID:LUS5eqqE0

美琴「……その様子だと、やっぱり知らなかったんだね」

ルカ「いや、それはそうだけど……お前……」

美琴「勘違いしないで、ただ伝達に来ただけ。私は今もその子と一緒に行動する気はないよ」

透「……」

美琴「それじゃあ、また」


私たちが言葉を返す暇も与えずに、美琴はすぐに姿を消した。


智代子「……まだ、一緒に行動はしてくれないんだね」

ルカ「……悪い」

恋鐘「ルカはなんも悪くなかよ!」

透「……私、だもんね」

ルカ「……」
752 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:20:52.31 ID:LUS5eqqE0

雛菜「でも、なんでわざわざレストランに顔を見せたんですかね〜? 透ちゃんがいるのなんてわかりきってるのに〜」

あさひ「だからこそ、じゃないっすか? 美琴さんは透ちゃんを殺そうとした過去もある、そんな相手が何度も目の前に現れたら普通嫌っすよね?」

ルカ「嫌がらせ、ってか……」

あさひ「んー……というよりは、透ちゃんが弱るのを待ってるとかっすかね」


精神的に衰弱するのを待っている、なんてまるで狩りみたいだ。
今か今かとその隙を狙いすまして、弱った瞬間を討つ。
サバンナに潜むライオンのように、その牙を研ぎ澄まして目を凝らしているのが今の美琴。
アイドルとしてパフォーマンスを磨き上げていた時と同じ集中が、あらゆる干渉を拒んでしまっている。


雛菜「透ちゃん、大丈夫だよ! 雛菜がず〜っと一緒にいて、守ってあげるから〜!」

透「……ごめん、雛菜」

(……)

753 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:21:30.43 ID:LUS5eqqE0

モノミ「あ、あの〜……ミナサン、あちしのことお忘れじゃないでちゅかね……?」

あさひ「あ、まだいたんだ」

モノミ「ぐすん……決死の思い出モノケモノにリベンジしたのに……完全にいいところを持っていかれちゃったでちゅ……」

智代子「そんなことないよ! 私たち、自力じゃ島の解放なんて出来ないんだから……モノミにはすごく助けられてるよ!」

雛菜「モノミちゃん、ありがとね〜〜〜〜〜!!」

モノミ「ミナサンの優しさがフェルトの五臓六腑に染み渡りまちゅ……」

ルカ「……まあ、とりあえず新しい島には行けるようになったんだ。とりあえず行ってみようぜ」

あさひ「はいっす!」


美琴のことで少し不穏な空気は流れたが、それよりも今は目の前の新しい手がかり。
美琴に対する何か対抗策もあるかもしれない、今はとにかく新しい一歩。
私たちはすぐにレストランを後にした。

754 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:22:34.31 ID:LUS5eqqE0
------------------------------------------------

【第5の島】

「これが第5の島……なんていうか、ラスボスって感じだな……」


新しく踏み入れた島は、比較的私たちの日常に近しい形をしていた。
コンクリートで整えられた地面、並ぶ高層の建造物。
だが、それがかえってこの南国の諸島では不気味な雰囲気を漂わせる。
あれほど照り付けていた太陽も、工場から噴き出す排気が光を遮り、目にやさしかった緑を上塗りするような灰色が気分を僅かばかりに沈めてくる。
何とはなしに騒つく胸に、思わず手を当ててしまうような光景だ。


「……美琴は、既にここにいるんだろうか」


レストランで私たちに情報を与えてきた辺り、美琴は私たちより先に立とうとしている。
もしかすると、この島にある何かで害をなそうとしている可能性もある。
七草にちかの遺志に、殉じるために。


(そんなものが、本当にあいつの遺志だって……本気で思ってるのかよ)

755 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:25:14.30 ID:LUS5eqqE0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆

電子生徒手帳のマップに目を通す。
この島はやはり他の島とは異なった文明レベルのようだ。
自然や海といったものは全く存在していない隔絶された空間。
【軍事施設】なんてものがあるのがその象徴だろう。
暴と知を体現する施設、これまでになかった情報が眠っているかもしれないな。

【ワダツミインダストリアル】は工場のようなものらしい。マップ上ではその全貌は全く見えない、調査の必要があるだろう。
それとは別に【モノクマ工場】もある。
モノクマ管轄の工場といったところなんだろうが、流石にこの文字列は私でも不安になるな。
比較的平穏なのは【屋台村】か?
とはいえこんな島に設けられた施設、まともなもんは期待できそうにないか……


ルカ「今回は一緒に来てもらうぞ、あさひ」

あさひ「ルカさんと一緒に調べるっすか? 別にいいっすけど」

ルカ「お前一人にしたらどこで怪我するかもわからねーからな、私の目の届くところに居てくれ」

あさひ「……? そうっすか」

(……やっぱ、過保護なのか?)


さて、どこから調べるか。

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【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.軍事施設
2.ワダツミインダストリアル
3.モノクマ工場
4.屋台村

↓1
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/11(土) 22:27:13.39 ID:JBBrDmjn0
1
757 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:33:18.95 ID:LUS5eqqE0
1 選択

【コンマ判定39】

【モノクマメダル9枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数……94枚】

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【軍事施設】

この国にも一応軍隊はある。
名義を違えているので、あくまで国防のためであり、原義での暴力的な意味合いには薄いが……

でも、多分この島にあるこれは原義寄りの方だろう。
必要以上に大きな砲台を携えたヘリコプター、家ごと押し潰してしまいそうなほどに大きなキャタピラの戦車、宝石箱のように手榴弾の詰め込まれたクランク……
『制圧』という言葉が目的にふさわしいであろうだけのものがその場には並んでいた。


あさひ「すごいっす! これ、全部動かせるっすかね〜?!」

ルカ「おい、むやみに触んな……危ねえだろ」


肩にランチャーを抱え込んだあさひから慌ててひったくる。
なるほど冬優子の生前の気苦労がよく知れる。
こいつの手綱を握るのはなかなかハードなことだろう。
……いや、あいつもしっかりと握れていたのかと言われると疑問符が浮かぶのだが。

758 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:35:51.81 ID:LUS5eqqE0

透「よっす」

ルカ「浅倉透、お前らもここの調査中か?」

透「まあね、あれ……見てよ」


浅倉透が親指で後方を指差す。
促されるままに視線をやると、そこにあったのは巨大な送風機。
船のプロペラと言われても信じるような、あれほど大きな物は_______



______以前にも見たことがある。



小宮果穂の命を奪ったあの悪趣味なおしおき。
命の灯火を掻き消そうとしたあの送風機にどう見ても相違なかった。
759 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:37:04.66 ID:LUS5eqqE0

ルカ「な、なんでこれが……こんなところに……?!」

透「……ここにある兵器っていうのは人の命を奪うためにあるんだろうね」

雛菜「もしかして、この戦車とかもおしおきに使うようなの〜?」

透「かもね」


あんな砲身から放たれた弾に当たればひとたまりもないだろう。
それこそ一瞬で消し炭に、生命というものを軽んじて弄ぶ、モノクマらしい趣向だ。


あさひ「……? これ、なんっすかね?」


並んでいる残虐な兵器に目を奪われていると、あさひが奥から何か手のひら大の大きさのものを引っ張り出してきた。
先ほどの手榴弾の入っていたものとはまた別の収納からの様子。実際、その武器の色合いや形状も異なっている。


ルカ「……あ?」


手に取ってみると、ふざけた塗装。
ネズミをモチーフにしただろうマスコットが下品な笑顔を浮かべていた。
ジョークグッズか何かの類いだろう。

そう思って放ろうとした、その時。

760 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:37:54.07 ID:LUS5eqqE0



透「_____待って」


浅倉透がそれを制した。




ルカ「なんだよ」

透「それ……私のだ」

ルカ「は? これが?」

透「私の……黒幕への対抗策。ほら、前に話したでしょ、電波を断絶する、黒幕の干渉を拒むアイテム。それが、これ」


≪透「……そもそも、私が連絡取れてたのはモノクマからの干渉を拒める手段があったからなんだよね」

透「この島にいる限り、モノクマには全部知られちゃうんだよね。何をしてるか、何を話してるのかも。全部」

透「だから、そこら辺をクリアにする機能を持ったのがあったんだけど……今はもう使えない、取り上げられちゃったから」≫


761 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:38:57.02 ID:LUS5eqqE0

透「それは『エレクトボム』って言って、炸裂すると辺り一体に妨害電波を発生させてさ。電子機器の類は使えなくなるし、特定の電波以外は通さなくなっちゃう」

ルカ「マジか……んなもんあったら、モノクマの監視カメラも」

透「そういうこと。島の中に安息地が作れちゃう」

透「大体半径百メートル? しかも球でね」

ルカ「ドローンなんかが飛んでても、落ちちまうのか……」

雛菜「でも、それモノクマに奪われてたんだよね〜? なんでこんなところにあるの〜?」

あさひ「黒幕が研究し尽くした後、とかなんすかね?」

ルカ「もう対処法を見つけて用済みだってことか?」

あさひ「かもしれないっすね、わたしたちに返す理由が特にないっすから」

ルカ「じゃあこれは無用の長物ってやつか……」

透「……」

雛菜「透ちゃん〜?」

透「これ、とりあえず預かってていい?」

ルカ「ん? まあ、元々お前のやつだしな……でも、むやみに使うなよ、さっきあさひが言った通り手の内は知られてるんだ」

透「ん、オッケー」

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ワダツミインダストリアル
2.モノクマ工場
3.屋台村

↓1
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/11(土) 22:47:20.52 ID:G6swC7Fw0
1
763 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:49:11.66 ID:LUS5eqqE0
1 選択

【コンマ判定52】

【モノクマメダル2枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数……96枚】

------------------------------------------------

【ワダツミインダストリアル】

ルカ「ここは、なんだ……?」


外観は昔見た洋画に出てくる敵組織のアジトのようだった。
蜂の巣のようにくっついた立方体の装飾が前衛的で、まるで内装を窺わせない。
恐る恐る壁に取り付けられたボタンを押すと、仰々しい音と共にシャッターが持ち上がった。


あさひ「中、入ってみるっすよ! ルカさん!」

ルカ「あっ、コラ、走んな!」


あさひが我先にと潜って駆けていくので慌てて跡を追う。
金網と鉄板で作られた足場を勢いに任せて登っていく。
天井の中央に取り付けられた大きな電灯に近づくにつれて、やがて視界は開け……ついに建物の中の全貌が私の視界に飛び込んできた。

764 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:49:47.60 ID:LUS5eqqE0

天井から垂れ下がる巨大なロボットアームは忙しなくその巨体に何か機械をあてがい火花を散らす。
足元のケーブルは極太の静脈のように複雑に絡み合い、ネオン色の発光をしている。
そうやって壮大で丁重な世話を受けているのは、私たちの背丈の何倍はあろうかというような人柄の機械。


ルカ「なんだよ、これ……」

モノケモノとはまた別の機体がそこに6体も並んでいたのである。

あさひ「なんなんすかね、このロボット」

ルカ「……碌なもんじゃねーのは確かだ」


災害救助用なんかでは間違ってもない。
人間で言う手と思しき部分にはガトリング銃のようなものが備わっており、足の部分はスプリンターのように異常な形状をしている。
血に飢えた悪魔がこんな姿だと言われたら、すぐに飲み込めそうな悍ましき造形だ。


智代子「このロボット……『エグイサル』って言うんだって」

ルカ「なんだ、その……どこぞの男性グループを敵に回したようなネーミングは」

765 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:50:19.09 ID:LUS5eqqE0

智代子「あっちのコンピュータにあったデータなんだけど……どうやらコロシアイに私たちが従わなかった時の強要の武力手段みたい」

智代子「通常モードとは別に嬲るための手加減モードまであって……用意周到って感じだったよ……」

あさひ「モノケモノの改良版、みたいなもんっすかね」

ルカ「……改悪だよ、こんなの」


赤、緑、青、ピンク、黄色、白。
ハの字に並んだ機体が私たちを見下ろしているこの空間はなんとも居心地が悪い。


あさひ「……」

ルカ「おい、もういいだろ。いくぞ」


あさひは、私とは魔反対の反応を見せていたが。
一体、このロボットの何がそんなに心を射止めたのか。
本当に、よくわからないガキだな。

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.モノクマ工場
2.屋台村

↓1
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/11(土) 22:58:37.94 ID:G6swC7Fw0
1
767 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:00:02.52 ID:LUS5eqqE0
1 選択

【コンマ判定 94】

【モノクマメダル4枚獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数……100枚】

------------------------------------------------

【モノクマ工場】

もしこの世界に醜悪な建造物を決めるコンテストがあるなら、この建物はかなり上位に食い込むだろう。
モノクマそのものを象ったドーム状の天井が、汚く濁った黒い煙を吐き出して空を穢す。
見ているだけで胸やけがしそうな光景だ。


あさひ「これ、何作ってるっすかね?」

ルカ「……まあ、碌なもんじゃねえだろうな」


工場には倉庫も隣接して建てられているらしい。
一応後で確認しておいた方がいいか?
768 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:01:07.92 ID:LUS5eqqE0
------------------------------------------------

【工場内部】

ルカ「な、なんだよ……これ……!?」


工場に大蛇のように縦横無尽に張り巡らされたベルトコンベア。
その上に載せられているのは寸胴な形をした素体。
それがコンベアを進むにつれて毛を纏い、彩色され、そして頭部や手足を身につけて行く。
最後には腹部に不細工な臍を取り付けて完成。


そこで作られていたのは_____




あさひ「モノクマの工場っす!」

ルカ「おいおい……なんだよこれ……」



確かにあいつはスペアの存在を仄めかしてはいたが、そんなレベルの話じゃない。
私たちの頭数の何十倍かという数のモノクマが息を吸って吐いての間に量産されているのだ。

769 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:02:48.92 ID:LUS5eqqE0

あさひ「あれ、全部一つ一つに爆弾が埋め込まれてるっすよ?」

ルカ「……」

あさひ「それに、武器もちゃんと全部に取り付けられてるし……あ、カメラもスピーカーも!」


立ち眩みがした。
この島に逃げ場はない。そんなことは分かり切っていることだと思っていた。
でも、まだまだ認識が甘かった。
私たちに課せられているのは制限付きの区画ではなく、絶対的な監視と拘束に紐づけられた、檻。
視界の端々まで連なる格子が、途端に実態を伴って現れたのだ。
その壮大さと荒唐無稽さの前に、膝を折る以外の反応など示せようもない。


モノクマ「やあやあ! ボクの生まれ故郷にようこそ!」

あさひ「あ、モノクマ! ここで作られてるのって……」

モノクマ「うん、ボクそのものだよね。いまこうやってお話している『ボク』と性能に何ら遜色ないボクが今この瞬間も量産されているんだよ」

あさひ「じゃあ、モノクマはいくら破壊しても意味ないってことっすか?」

モノクマ「なんでそんな物騒な質問をするのかは置いといて、実際その通りだね。ゴキブリ以上の繁殖能力を持つボクを一体一体潰しても無駄だし、そもそも校則違反でオマエラが死んじゃうよ」

ルカ「……こんなに量産して、お前はいったい何を企んでんだよ……!」

モノクマ「企む? うーん、何って言われてもなぁ……しいて言うなら、世界デビューかな?」

ルカ「はぁ?」

モノクマ「これだけの数があれば、世界中にばらまいても足りるでしょ? モノクマの名をワールドワイドにするその足掛かりにでもしようかな!」

(こいつは何を言ってるんだ……)

あさひ「……」

あさひ「ねえ、モノクマ。あっちの部屋は何っすか?」

モノクマ「ん? ああ、あれはバックヤードで、別に何も面白いものはないよ? 掃除用具とか、そういうのの簡易的な物置さ」

あさひ「へぇ……」


モノクマの馬鹿げた数と、馬鹿げた展望とに頭痛を起こしながら私は工場を後にした。

-
770 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:03:29.40 ID:LUS5eqqE0
------------------------------------------------

【工場倉庫】


ルカ「……あいつの言ってた世界進出とやら、案外本気なのか」


倉庫を開けた瞬間にげんなりする。
そこら中に転がるのはモノクマの等身大パネルに、マスコットサイズのぬいぐるみ。
雑多な用品も並んではいるものの、埃をかぶっているあたり普段から使われてはいない様子。


あさひ「何か使えそうなものとかないっすかね?」

ルカ「……特にはない、か」


辺りを一応調べては見るが、何も実用的なものはなさそうだ。
工具などの専門的なものはそもそも使い方も分からない。
ここは、そういう空間があったで納得するしかなさそうだ。

771 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:04:43.88 ID:LUS5eqqE0

そう諦めて、出ようとしたその時だった。
1枚のすすけたファイルが視界に入る。
青色のファイルには、簡素なテープが貼り付けられ、マーカーペンで何か書かれてある。


ルカ「『ジャバウォック島再開発計画』……?」

あさひ「……? 変っすね、この島ってもともと観光地だったっすよね? そんな場所で再開発をするっすか?」

ルカ「……ちょっと読んでみるか」


パラパラとめくって確かめていく。
そういえば、この島に来てまだ日も浅い時……風野灯織が何か言っていた気がする。、


≪灯織「皆さんは中央の島の公園には行かれましたか?」

夏葉「ええ、確か巨大な銅像が置いてあったわね。動物を模したものだったはずよ」

愛依「あー! あのあさひちゃんが登ってたやつ!」

にちか「えぇ……?」

灯織「あの銅像を見た時に、以前聞いた話を思い出したんです。太平洋に浮かぶ小さな島で、風光明媚な常夏の楽園という呼び方をされるにふさわしい島の存在を……」

灯織「中央の小さな島を中心にして、“5つの島”から構成されるその島々は同じく“神聖な5体の生物”を島の象徴にしているらしいんです」

にちか「えっ……?! そ、それって……」

灯織「確か、その名前は【ジャバウォック島】」

雛菜「ふ〜ん? 雛菜はあんまり聞き覚えない感じですね〜」

夏葉「……以前父の海外赴任の際に一度耳にした名前だわ。でも灯織、それっておかしくないかしら」

果穂「おかしい……ですか?」

灯織「はい……ジャバウォック島は確か……もう人が住んでいないはずなんです」

恋鐘「ふぇ? でも実際島には誰もおらんよ?」

摩美々「そうじゃなくて、管理する人間もいないぐらいの廃島ってことでしょー?」

灯織「はい……こんなに環境が整備されているというのがなんだか気になって」≫

772 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:05:28.65 ID:LUS5eqqE0

この島はもともと廃島になっていた、それなのにこれほどの設備環境が、手入れをされた状態で残っている。
希望ヶ峰学園歌姫計画とやらで連れてこられたと聞いていた私たちは、あれほどの資金のある組織ならと納得していたのだが……

このファイルに記されている開発元の名前は『希望ヶ峰学園』ではない。


ルカ「……『未来機関』ってのはなんだ?」

あさひ「……このロゴ、何かで見たことあるっすね」

ルカ「私もだ……でも、一体……どこで見た?」


妙に角ばった書式の2文字。
それとにらめっこすること数十秒。
凝り固まった記憶の奥底に、該当するものを掘り出すことに成功する。


≪ルカ「とりあえず近づいてみるぞ」

千雪「あっ……待って!」


近づいてみたが、あるのは私の身長を優に超す大きさの扉。
しかもドアノブがあってそれをひねって開けるような単純な扉ではなく、もっと電子的で近未来的な……全く見なれない扉だ。


ルカ「……これ、なんなんだ?」


しかもその扉の表面にはデカデカと『未来』の二文字。
私たちの良く知る漢字で掘られている……ということは、この遺跡は私たちと同じ文化圏のものだということになる。それもまた妙な話だ。≫


773 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:06:32.87 ID:LUS5eqqE0

ルカ「……第二の島の、遺跡か……!」

あさひ「ああ、あのツタの絡まってたところっすね!」

ルカ「あの遺跡……何やら厳重な装備がされてたよな……そういえば、あそこのパスワードも結局分からずじまいだよな」

あさひ「……ルカさん、これどういう意味っすかね?」

あさひ「ジャバウォック島の中央に位置する行政施設を改築し、未来機関の活動拠点にする……そんな建物、中央の島にあったっすか?」

ルカ「……いや、あの島にはモノクマロックと、モノケモノの入ってた銅像しかない。それ以外には、何も無いぞ」

あさひ「……それに、ほかにもおかしなところがあるっすよ。手付かずの無人島になっていたこの島で、被検体を見つけたとか……敵対組織が根城にしてたとか……ちんぷんかんぷんっす」

ルカ「被検体……何か実験でもしてたのか?」

ルカ「……」

ルカ「……!」


実験、その言葉を口にした瞬間に昨夜の写真がフラッシュバックする。
あそこに収められていたのは、前回のコロシアイとやらで生き残ったとされる連中が昏睡している私たちを眼前に白衣を着こんだ姿。
実験と言う言葉に当てはめるならあれ以上にうってつけの材料はない。


そしてそうなると、ここにあるもう一つの言葉『敵対組織』というものが当然紐づいてくる。
もしかすると、あのコロシアイを生き延びた5人はその組織とやらに所属していて未来機関との間に何か衝突を起こしていたのではないか?



となると……私たちにとって味方となるのは、そのどちらなんだ?



774 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:06:59.64 ID:LUS5eqqE0

ルカ「……」


でも、その疑問を口にすることはできない。
冬優子が託した手掛かりは不安と疑念を振りまくためのものではない。
真実にたどり着くための一ピース、切りどころはしっかりと見極めないと。


まだ、あさひにも言うべきじゃない。


ルカ「それにしても、聞いてた話とあまりにも違うな……この様子だと、無人島ですらなさそうだよな」

あさひ「うーん……人が過ごしてたっぽい形跡……あんまり感じなかったっすけどね……」

ルカ「この島で言ってるジャバウォック島と、私たちのいるジャバウォック島って本当に同じものなのか……?」


ふつふつと湧き上がる疑問を前に、首をひねるしか出来ないのがはがゆい。
せめてこの島の事を知っていた風野灯織か有栖川夏葉でも残っていれば話はまた違ったんだが……

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【残り選択肢が一つになったので自動で進行します】

【コンマ判定によりモノクマメダルの獲得枚数を決定します】

↓1
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/11(土) 23:14:49.42 ID:G6swC7Fw0
むん
776 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:20:06.90 ID:LUS5eqqE0

【コンマ判定 42】

【モノクマメダル2枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数……102枚】

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【屋台村】


恋鐘「あ、二人とも〜! ちょっと食べて行かんね〜?」


黒と灰色で作られた無機質な街並みの中に突然姿を現す、人々の活気ある声が聞こえてきそうな軒の数々。
そこかしこから香ばしい香りが鼻をくすぐり、提灯の明かりも目を引いた。


ルカ「よう……ここは?」

恋鐘「見ての通りたい。でも、お祭りとかをやっとる雰囲気じゃなかね」

あさひ「とんこつラーメン、おでん、焼き鳥……なんだか社長さんが好きそうなものばっかりっす」

ルカ「梯子酒でもしろってか……?」

恋鐘「別にここにならんどる食べ物に害はなかよ、小腹が空いたらつまんでもいいと思うばい」


試しに近くのおでんの屋台から大根を引き抜いて口に運ぶ。
……うまい。
出汁がよく染み込んでいるし、型崩れもしていない。
島の外の店にも全く引けを取らない味だ。

……でも、どうして?
なんでこんなところに食べ物を用意する必要が?


ルカ「何か手掛かりの類いはなかったのか?」

恋鐘「んー……ざっと見た感じは特にはなさそうたい」

ルカ「おいおい……いよいよなんのためなんだ、これ」

あさひ「モノクマ、無意味なことも好きっすからね」

ルカ「にしてもなぁ……」
777 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:21:10.92 ID:LUS5eqqE0

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

最後の島の探索は私たちに更なる謎と威圧感とを齎した。
圧倒的な武力を前にして私たちに抵抗の手段などないだろうし、この島の暮らしに希望的な展開は待っていない。
それを改めてまざまざと見せつけられたような気分だ。


あさひ「うーん、手がかりないっすね……」


冬優子に押しつけられたガキの世話にも手応えがないし、美琴のことは言うまでもない。
私たちの背中にのしかかるものばかりが増えていく。
パンクしてしまうのも時間の問題といったところか。


ルカ「……病んだ」


口癖のように、乾いた悲鳴をあげた。


あさひ「ルカさん?」

ルカ「ああいや……とりあえずレストランに戻るか、情報共有だろ」

あさひ「はいっす」

778 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:22:26.99 ID:LUS5eqqE0
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【ホテル レストラン】

智代子「モノクマ……黒幕は、モノケモノ以上の武力を持ってたよ。量産されるモノクマに、新型の人型破壊兵器……軍事基地のものも合わせたらひとたまりもないかも」

恋鐘「それとは対照的になぜか屋台が並んでいる区画があったばい、何の目的があってあんなもん作ったとやろ」


レストランに持ち帰った情報も、どれも不穏なものばかり。
口々の報告のいずれもその言葉尻は重たい。


あさひ「そういえばルカさん、あの工場の倉庫で見たファイルの話はいいんすか?」

ルカ「……! ああ、そうだったな」

雛菜「ファイルですか〜?」

ルカ「ああ、あの悪趣味な造形した工場。そのすぐ隣にはちいさな倉庫があってな、そんなかで見つけたやつなんだよ」

ルカ「『ジャバウォック島再開発計画』、ってな」

智代子「再開発……? あれ、でもジャバウォック島はそもそも廃島だったんだよね?」

恋鐘「そいを希望ヶ峰学園が買い取って改造した島とやろ?」
779 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:22:56.68 ID:LUS5eqqE0

ルカ「だが、そこに書いてあった内容は大違いだ。どうみてもこの島には人が住んでいるコミュニティが存在していたし、更には……未来機関の敵対組織もいたらしい」

雛菜「未来機関……なんか聞いたことだけはあるかも〜」

透「第二の島の遺跡、あれだよね」

ルカ「ああ、厳重なロックでとても出入りはできやしねーけどな。浅倉透、お前は何か知ってるか?」

透「……未来機関自体はあんまり。島の外のことはあまり知らないし」

雛菜「ふ〜ん……」

あさひ「なんだかわたしたちの知ってる情報とチグハグな感じがして気持ちが悪いっす」

ルカ「だな……まあ分かっちゃいたが、答えを与えてはくれないのがこの島だ。手がかりを探しながら考えるしかねー」


未来機関の話を持ち出しては見るものの、それを知っている人間など要るはずもなく。
結局のところ私たちはただ行動範囲を広げただけで、それ以上の意味もそれ以下の価値もない。
結局はこの鬱屈とした南国生活を延長するほかないのである。

780 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:24:08.43 ID:LUS5eqqE0

ルカ「……なあ」

ルカ「誰か、美琴の姿は……見なかったか?」


そんな中で私は切り出した。
聞いたところでどうにかなるわけでもないのに、それでも縋ってしまうのは我ながら情けないと思う。
第4の島ではジェットコースターと言う明確な協力の動機があったが故、あいつの姿を追うことができたが、今回はあいつの影を掴むことすらできなかった。
今朝がたレストランで見てから、それっきり。
今のあいつは、あれだけの物騒な品の数々を見て何を思っているのだろうか。


智代子「……ごめん、ルカちゃんには悪いけど美琴さんは見かけてないよ」

恋鐘「美琴も第5の島の探索はしとったはずやけん、誰か一人でも見とってもおかしくなかと思うけど……」

透「……見てないかな」

雛菜「うん、ここの人たち以外は見かけてないです〜」

あさひ「わたしたちもっすよね」

ルカ「……チッ」


闇の中に身を隠す美琴、それが異様に不気味で胸がざわついた。
かつての相方に向ける感情としてはあまりにもそれはザラついていた。



781 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:24:59.08 ID:LUS5eqqE0

ルカ「……こんなこと言いたかねーけどよ、今の美琴はマジで狂ってる。どこで誰に刃を向けるとも限らねーんだ。警戒しとけよ」

あさひ「……」


無意識なんだろう、あさひは私の裾を握っていた。
ユニットの仲間の死を2回も経験したこいつも、自覚しないうちに精神の衰弱を迎えている。
他の連中も下唇を少し強く嚙んだようにして、身を寄せ合う。
どこからやってくるかもしれない外敵に対する、生物の本能から来る防衛機制だ。


透「あ、それじゃあ」


そんな空気の重たいレストランで、浅倉透が一歩踏み出した。
懐を少しまさぐって、少し大きめな石ぐらいの大きさの巾着をいくつか取り出した。
それを机の上に並べて、私たちを見やった。


透「これ、お守り……全員分あるからさ、使ってよ」


不細工な装丁には283プロダクションのマークが縫い付けてある。
これは、こいつ本人がやったのだろうか?
私はその所属ではないのだが、一応は手に取って証明に掲げてみる。

782 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:25:54.20 ID:LUS5eqqE0

あさひ「これ、何が入ってるっすか?」

透「中は……今は見ないで、いざというときに使ってほしい」

智代子「いざというときって……」

恋鐘「自分の命ば危なくなったときってことたい……?」

透「それは……任せた。でもきっと、みんなの役に立つから」


開けるなのお達し通り、かなり厳重に巾着の口も縫い付けてある。
よほどがない限りはこのままにしておけと言うことなのだろう。
私は素直に従い、懐にしのばせることにした。


透「……前に言ってたでしょ。もう事件は起こさせないって」


≪ルカ「言っただろ、お前の目論み通りにはならねえって」

モノクマ「なぬ?」

ルカ「例えこの中にまだ殺しを企んでる奴がいようとも、他の6人でそれを封殺する。私たちはもう誰も死なさない、事件なんて起こさせない」》

783 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:26:38.02 ID:LUS5eqqE0

透「私も、そうしたい。もう誰にも死んでほしくなんかないから」

透「生き残ろ。絶対」

智代子「うんうん! 透ちゃん、ありがとう! 透ちゃんの想いのつまったお守りがあると心強いよ!」

恋鐘「うちもおんなじ気持ちばい! ここにいるみんなで揃って島を出る、これはもう確定事項やけんね!」


ここにいるみんな、にここにいない一人が含まれるのか尋ねるのはやめておいた。
もしそれに漏れているのなら、枠に戻してやるのはそもそも私の役目だから。

それができるのかどうか、正直なところ自身は毛ほどもないが……


ルカ「このお守りが、それを助けてくれる……だろ?」

透「うん、神様が見てくれるよ。プリーズ、ご加護」



……自覚がない皮肉が、少しだけ胸を刺した。



784 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:27:26.90 ID:LUS5eqqE0
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【ルカのコテージ】

日が沈んで夜が覆い、外は草木の息吹だけが響く。
この島に私たち以外の人気はない。
人数が少なくなるにつれ、その静寂は増す一方だった。

そんな静寂の中に、身を隠して殺意を研ぎ澄ます。
あいも変わらずも眩い満月を見上げると、自然とお守りを握る手にも力がこもった。

神頼み、ではないが標にはなる。
私は一人で戦っているわけではないというだけの指標で、心もとはない。
それでも妥協して、私は扉に手をかけた。

785 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:28:45.44 ID:LUS5eqqE0
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【第5の島】

この島はやっぱり異様だ。
他の島と違って草木が風に靡くような音は聞こえてこない。
コンクリートで取り囲まれた環境は、うるさすぎるほどの静寂を生む。
自分の靴音だけが響く静けさに、思わず耳を覆った。


______ガガ


音が指の隙間から飛び込んできた。
遠くの方から、怪獣が一歩を踏み出したような音。
思わず首を振り回して音の主を探してしまう。

何度首を振ってもどれだけ目を凝らそうともすぐにはわからない異音に、自然と足が動き出す。

その音は少しずつ、ゆっくりと大きくなり、近づいている。

「……美琴!」

その名前を口にしながら、駆け出した。

786 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:29:15.48 ID:LUS5eqqE0
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【ワダツミインダストリアル】

その音は、夜の裂け目から。
高く高いシャッターの隙間から見える光の奥で影が動くのが目に入る。
照明を足元から浴びているのか、その影は異様に大きく、そしておおよそ人とは思えない輪郭をしていた。
妙に角ばった形に、細長い線が付きまとう。
シルエットだけでは何か伺い知れず、息を殺しながらシャッターに近づいた。
気取られないように、そっと首を伸ばした。

____ガガ

聞こえていた異音は機械音。
ゆっくりと動かすその腕と、処理をするCPUが呟く声。

____ガガ

悠然と我が物顔で手足を動かしているそれは、先ほど称した通り怪物そのものに見えた。
腕の先には尖った爪のような備わり、どっしりとしたその脚は家屋も踏み倒してしまいそう。
その怪物に、私は見おぼえがあった。

つい昼方に初めて見たばかり……
私たちが黒幕の持つ力について、その認識と恐怖とを新たにした火付け役。



……エグイサルが、動いていた。


787 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:30:01.58 ID:LUS5eqqE0

「……こ、こいつ動くのかよ……!?」

まだ実践で投入されることはないだろうと高をくくっていた。
反抗的な口は聞きつつも、コロシアイには参加してしまっていた私たちは黒幕にとって脅威でも何でもないはず。
そう思っていた。

でも、とっくにお相手は痺れを切らしていたようだ。
今すぐにでもと言わんばかりの暴力を目の前にして、思わずその場にへたり込む。

一瞬にして全身の血の気が引いた。
と、同時に冷めていく体温の中で少しだけ脳は醒めていた。
ここまでの生活の中で麻痺していた部分が、かえって役に立つ。
恐怖よりも先に立った冷静が、眼球を動かした。

今エグイサルが動いているということは、動かしている人間がいるということ。

そして、それは私たちにとっての敵に他ならないだろう。
狸なのか、はたまた黒幕なのか……なんにせよそれを知っておくことには大きな意味がある。
息を呑んで目を見張った。

……でも、そこに人の影はなかった。
エグイサルの足元、奥、整備のための鉄橋、隅々まで目を凝らしても人の姿はない。


「もしかして……入ってやがんのか?」


となると、残される空間はただ一つ。
エグイサル、そのものの内部だ。
コックピットの中になら、その姿を潜ませることができる。
でも、どうやってその正体を探ればいいというのだろうか。
今ここにいるのだって危険なのに、そもそも近づくなんて自殺行為。
788 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:31:13.78 ID:LUS5eqqE0


「……チッ」

歯がゆさに舌打ちした。




……それがまずかった。




_____ブー! ブー!


「な、なんだ……?!」

何がきっかけになったのかはわからない。
だが、私の舌内を皮切りに辺り一帯に鳴り響きだすブザー音。
侵入者を感知したと声高に叫ぶそれに呼応して、地響きが始まった。


エグイサルが、こちらに近づき始めていた。
789 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:32:40.69 ID:LUS5eqqE0

(ま、まずい……!)

見つかったら私なんて二秒で肉塊だ。
慌てて辺りに身を隠せるところを探す。

……が、見つからない。
そんなもの、あるはずがない。
この島には自然がそもそも無いのだから。
開けた無機質な視界には、障害物と呼べそうなもの一つ見当たらなかった。

(……終わった)

万事休す、その言葉が脳裏によぎった瞬間。





バッ!!




「……!?」


私の身体は強い力で引っ張られ、その場に崩れ落ちた。
790 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:33:45.36 ID:LUS5eqqE0


そしてその直後、真っ暗闇に染まる視界。
思わず抵抗しようともがく。



「……動かないで、じっとして」



そんな私を厳しく諭すように、耳元で呟いた。



「……美琴」




その声には、聞き覚えがあった。


「大丈夫、このシートの裏に隠れていれば見つからないから」
「な、何を……」
「夏葉さんと同じ……赤外線カメラは、アルミシートの裏にあるものを判別できない」
「……!」
「……静かにしてて」


私に覆いかぶさるようにしているその重みに、身をゆだねた。

791 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:34:12.87 ID:LUS5eqqE0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

そこから何分が経っただろうか。
辺りに鳴り響いていたブザーが鎮まり、地響きも完全に収まった。
とりあえずは、凌いだということなのだろう。

私の視界にもゆっくりと星明りが差し込んでくる。


「……危ないところだったね」


ゆっくりと視界がその明るさに慣れていく。
目の前に立つ長身のシルエット、その全貌も見えてきた。
グラデーションがかった毛先、赤と黒のブルゾン、あのころと変わらないペンダント……


「美琴……オマエ、どうしてこんなところに」


やっぱり緋田美琴に変わりない。


「ちょうど用事があって立ち寄ったところだったの。でもちょうどよかった、ルカには死んでほしくないから」
(私、には……)


その瞳には、かつてのハイライトはもう灯っちゃいない。


「用事ってなんなんだよ、こんな島に何の用事があるって……」
「分かってるでしょ?」
「……!」


美琴の肩には頑丈なつくりをしていそうなバッグがかかっていた。
最近はやりのフードデリバリーのカバンを小ぶりにした代わりにポケットを増やした感じだ。
そのポケットの所々から、何か柄のようなものが見えているのが、嫌。


「私も口だけじゃいられないから。そろそろちゃんとしないと」
「ざけんな……冬優子の裁判の時の私の言葉、忘れたとは言わせねえぞ……!」
「殺しを誰かが企んでも、残りの6人で止める、だっけ?」
「そうだよ! だから、美琴もいい加減に____」
792 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:35:28.40 ID:LUS5eqqE0






「本当に止められると思ってる?」





793 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:36:08.09 ID:LUS5eqqE0

美琴はこれまでと違って、私の前から逃げようとはしなかった。
むしろその逆、覗き込むようにしながら、一歩ずつ距離を詰めてくる。
思わず私はその迫力の前にあとずさり。


「あ、当たり前だろ……! 美琴だって、体格は私たちより大きいかもしれないけど全員で押さえつけられたらどうしようもないし……!」
「……ルカ。さっきの、見たよね?」


一歩、一歩。


「さっきの……だと……?」
「エグイサル。もし、あれを使って誰かが誰かを殺そうとしたとして、止められるの?」
「は、ちょっと待て……」
「ファイナルデッドルームなんかもあったよね、あそこにも武器は沢山」
「み、美琴……!」


いよいよ背中に壁がぶつかった。
794 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:37:06.53 ID:LUS5eqqE0





「無理だと思う。私は」





795 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:38:39.73 ID:LUS5eqqE0

壁にもたれかかって、ズルズルとその場に座りこんだ。
私を見下ろす美琴の背後で満月が笑っている。


「美琴……」


名前を呟くしかできなかった。
手足から力が抜けきってしまっていたから。


「それじゃあ、おやすみ。ルカ」


アルミシートを乱雑にまとめ上げて、背を向けた。
美琴の姿はすぐに闇夜に呑まれて輪郭を見失う。


「……」


30分ほど、そこに座っていた。
796 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:47:00.09 ID:LUS5eqqE0

というわけで本日はここまで、物語の終わりの始まり、5章がついに幕をあけました。
なかなか5章は事件もその後の展開も考えるのにカロリーを使いましたが、楽しんでいただけるものになっていると思います……!
どうかお付き合いください!
余談ですが今章のチャプタータイトルは「アイオーン」のラテン語表記と言う力技です。
滅茶苦茶好きな曲なので、なんとか章題にねじ込みたかった……

次回更新は6/13(月)の21:30前後を予定しています。
それではまたよろしくお願いします、お疲れさまでした。
797 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:48:14.60 ID:LUS5eqqE0

【5章段階での主人公の情報】

‣習得スキル
・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕

・【アンシーン・ダブルキャスト】
〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕

・【つづく、】
〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕

・【cheer+】
〔発言力ゲージを+5する〕

・【ピトス・エルピス】
〔反論ショーダウン・パニックトークアクションの時コンマの基本値が+15される〕

‣現在のモノクマメダル枚数…102枚

‣現在の希望のカケラ…15個

‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【ジャパニーズティーカップ】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

798 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 23:48:41.02 ID:LUS5eqqE0

‣通信簿および親愛度

【超高校級の占い師】風野灯織…0【DEAD】
【超社会人級の料理人】 月岡恋鐘…5.5
【超大学生級の写真部】 三峰結華…0【DEAD】
【超高校級の服飾委員】 田中摩美々…0【DEAD】
【超小学生級の道徳の時間】 小宮果穂…1.0【DEAD】
【超高校級のインフルエンサー】 園田智代子…6.0
【超大学生級の令嬢】 有栖川夏葉…12.0【DEAD】
【超社会人級の手芸部】 桑山千雪…10.5【DEAD】
【超中学生級の総合の時間】 芹沢あさひ…8.0
【超専門学校生級の広報委員】 黛冬優子…12.0【DEAD】
【超高校級のギャル】 和泉愛依…0【DEAD】
【超高校級の???】 浅倉透…12.0
【超高校級の帰宅部】 市川雛菜…5.5
【超高校級の幸運】 七草にちか…0【DEAD】
【超社会人級のダンサー】 緋田美琴…4.0
799 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:21:46.54 ID:/lNWkEhY0
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______
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≪island life:day 23≫
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【ルカのコテージ】

ようやっと手足の実感が戻ってきた。
萎びてしまった気力から、シワシワにでもなっていないかと思ったがさすがにそれは無かった。
ただ、手足はなんだかいつも以上に細く見えて血管が鮮明に見えた。


「……気色悪い」

ピンポーン


そう呟いたところでインターホンが鳴る。
気色悪い指で髪をかき上げながらドアを開けた。


あさひ「ルカさん、おはようっす!」

ルカ「……あ?」

800 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:22:51.48 ID:/lNWkEhY0

あさひ「なんでそんな不思議そうなんっすか? 朝ご飯食べないっす?」

ルカ「いや、そりゃオマエ……つい昨日お迎えはいらねえって」

あさひ「冬優子ちゃんはしてなかったってだけっすよ? ルカさんは一緒に行きたいのかなって」

ルカ「……そんなわけねーから、その言いぐさはやめろ。気色悪い」

あさひ「……?」

ルカ「わかった、わかった。とりあえず準備するから、中で待っとけ」

あさひ「はいっす!」


無邪気な返事をするあさひ。
こいつに絡まれているところをほかの人間に見られたくないからあわてて部屋の中にしまい込んだ。
……もう見るようなやつもそんなに残っちゃいないのに。

801 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:25:34.68 ID:/lNWkEhY0

ルカ「いいか? どこも触んなよ、準備はすぐ終わんだから!」

あさひ「はいっす!」


相変わらず信用の置けない明朗な返事にため息。
ベッドの上に座り込ませてそそくさと支度を開始した。


あさひ「……」

あさひ「……」

あさひ「……」


ずっと背後のあさひが気にかかって仕方ない。
別に見られて困るようなものもないのだけど、自分の空間に人が割り込むというのはそれだけでかなりの異物感だ。
ましてこいつともなるとその異物感も倍に増す。
どこかで爆発でも起きるんじゃないかというざわつきばかりが加速した。


ルカ「……あ」

あさひ「ルカさん、どうしたっすか?」
802 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:26:29.12 ID:/lNWkEhY0

見られちゃまずいもの……あった。
裁判終わり、ポストに投函されていた冬優子からの手紙。
あれに同封されていた写真……
見られるわけにはいかない。
コロシアイを防ぐのを本格化しようという段階で、前回のコロシアイの生き残り連中が私たちに何かを仕掛けていた写真は不信を振りまく種になりうる。
まだことの詳細がわからぬうちに見せびらかすわけにはいかない。


ルカ「別に、なんでもねーよ」

あさひ「……? そっすか?」


とはいいつつ強引にベッドの脇のキャビネットから封筒を引っ張り出して自分の懐に忍ばせた。
ガッツリその動作を見られはしたものの、中身は見られていないはず。


ルカ「おら、準備できたぞ。さっさと出ろ」

あさひ「入れって言ったり出ろって言ったりよくわからないっす」

ルカ「飯食うんだよ、ほら!」


そしてとにかく秘密からは目を逸らさせる。
準備は中途半端になってしまったが、まあこの島にはパパラッチなんかもいない。
多少不恰好でも許されるだろう。
今はあさひの関心をよそに飛ばす方が優先される。

私はあさひの背中を無理に押して、後ろ手に扉を閉めた。


ルカ「ついてきな」

あさひ「……? はいっす」
803 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:28:11.73 ID:/lNWkEhY0





あさひ「……ルカさんも、もらってたんだ」




804 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:29:40.15 ID:/lNWkEhY0
------------------------------------------------

【ホテル レストラン】

恋鐘「おはよ〜、ルカ! 今日もあさひと一緒ばい?」

あさひ「恋鐘ちゃんおはようっす! 今朝はわたしが迎えに行ったっすよ!」

透「おー、懐かれてるじゃん。やるね、女ったらし」

ルカ「最悪の言葉選びだな」


レストランに着くと昨日と同じ8人掛けの机に既に他の連中が腰掛けていた。
私とあさひも促されるままに席に着く。


ルカ「……そういえば、昨日あの後美琴に会った」

智代子「えっ?! 美琴さんと?!」

ルカ「ワダツミインダストリアル、あそこで開発されてたエグイサルが夜の間に誰かに動かされててよ。その現場で美琴に鉢合わせた」

智代子「じゃ、じゃあ美琴さんがエグイサルを操縦してたの……?」

ルカ「いや、そうじゃねえ。あいつは私が見つかりかけたところを守ってくれた。操縦してたのはまた別の誰かだ」


一応は昨日のことを報告することにした。
エグイサルが既に実用段階であることは周知しておかなくてはならないし、美琴への対策もやはり必要なのを確認した。
これ以上の死者を出さないと冬優子の裁判で決意したからには、誤魔化すわけにはいかないのだ。



805 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:31:39.66 ID:/lNWkEhY0

恋鐘「そ、そがん危なかこと……一人でそげなところに行ったらいかんばい!」

ルカ「……悪い」

あさひ「なんで美琴さんはそんなところにいたっすかね。操縦してたわけでもないのに」


瞬間、あのときの美琴の荷物を想起する。
鞄から見える柄のような物、その先にはきっと肉を割くには十分すぎる刃物。


ルカ「浅倉透」

透「……うん」

ルカ「美琴は、本気だからな」

雛菜「透ちゃん、大丈夫だよ。雛菜がずっと一緒にいるから……絶対、守ってみせるから」

透「雛菜……サンキュ。でも私だってただお姫様やるわけにはいかないし」

透「争うよ」

ルカ「……下手な接触はしないようにな」

透「分かってるって」

恋鐘「透、困ったときはルカだけじゃなくてうちらにも遠慮なく言って!」

智代子「わ、私も微力ながら助太刀いたしますよ!」

透「やば。めっちゃいるじゃん、用心棒」

ルカ「だからって気抜くなよ、美琴は私たちの誰よりも背丈だって高い。そう簡単に抑え込めるわけじゃない」

智代子「それに美琴さんはファイナルデッドルームもクリアしてるし、武器だって私たちの予想以上のものを持ってるかもしれないよ!」

恋鐘「毒薬だってドラッグストアから調達しとったけん、不意打ちにも注意せんばね!」

ルカ「……そう考えると、恐ろしいな。美琴のやつ」

雛菜「あなたが弱気になっちゃ一番ダメじゃないですか〜?」


806 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:33:23.63 ID:/lNWkEhY0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

何も一人じゃないんだ。
私たちは全員が全員、協力する下地ができている。
誰かが狙われようものなら、きっと他の全員で守ることができる。
私も本気でそう考えている。

考えている、のに……


『無理だと思う、私は』


「……チッ」


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…15個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 21:47:44.31 ID:HICo9pII0
1 智代子
808 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 21:54:56.94 ID:/lNWkEhY0
1 智代子選択

【第5の島 屋台村】


ルカ「……まあ、オマエはここだろうと思ったよ」

智代子「あ、ルカちゃん! ちょうどよかった、いい感じにここのおでん煮えてきてるよ!」

ルカ「さっき朝飯食ったばっかじゃねえのか……?」

智代子「おでんは別腹と昔の偉い人も言ってたじゃないですか!」

ルカ「どこの誰が言ってたんだよ……」


暖簾に油煙が纏う空間は、朝だろうと爽やかさとは無縁だ。
よくもまあこんなところで朝の日差しを浴びることが出来るものだといっそ感嘆した。

……これくらいの気丈さが、自分にも欲しいところだ。

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【ジャパニーズティーカップ】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:00:23.69 ID:ryCc/2O30
1:【ジャパニーズティーカップ】
810 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:05:50.82 ID:/lNWkEhY0

【ジャパニーズティーカップを渡した……】

智代子「こ、これは……?! ただの水をも、至極の一杯に変えてしまうという伝説の……?!」

ルカ「……いや、知らねえけど……そんなすげえもんなのか?」

智代子「こ、これを私がちょうだいしても……よろしいんですか?」

ルカ「やたら仰々しくなるのは何なんだ……」

智代子「ははーっ!」

ルカ「……」

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより親愛度が多めに上昇します】

-------------------------------------------------

智代子「いやぁ〜、やっぱりおでんは大根が正義だねぇ! 味が染み染みで口当たりもまろやか……!」

ルカ「私は牛筋のが好きだけどな」

智代子「お、ルカちゃんも通だね! さてはお酒のあてにしてちょくちょく楽しんでたり?」

ルカ「……私はそんな、酒とか」


呑まなくはないが、そんな加齢臭の染みつくような飲み方はまだ未経験だ。
……おっさんくさいのみかたなんて、チャンチャラ御免。


智代子「……どうしたの、ルカちゃん?」

ルカ「……いや、別によ」


でも、こう酒に浸されたような淀んだ空気の漂うところでは、飲み交わさずとも変な酔いが回る。
ジジイ連中が酒の席でぐだぐだと愚痴をこぼすのにも、この時ばかりはある程度の理解を示すことができた。
言わなくてもいいのに、言わない方がいいだろうに、口が勝手に暴れ出す。


ルカ「……冬優子の事件、悪かった」

智代子「やだなあ、もうあの事件はふゆちゃんと手討ちにしたんだし、終わったことでしょ?」

ルカ「……あれは、オマエの本意なのか?」


聞かなくたっていい。そんなの答えは分かり切っている。


智代子「……本意かそうじゃないかって言われたら……そりゃ、ね……」

ルカ「……だよな」


なんのための確認なんだ。
……この確認に、一体何の意味がある?


つくづく自分の身勝手さ、不器用さには辟易する。


1.自分のおでんを一本やる
2.無言でおでんを食べる

↓1
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:11:51.18 ID:HICo9pII0
1
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:13:19.16 ID:ryCc/2O30
1
813 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:20:30.21 ID:/lNWkEhY0
1 選択

まずいことを言った、という自覚がある。
口に入れていた筋が妙に固くて、なかなか飲み込めない。
目の前にある数本が、とてもじゃないが食べきれないことに気づいた。


ルカ「……悪い、これ詫びな」

智代子「……ルカちゃん」


詫び、と言うかたちで一本を甘党女の皿の上に置く。
キョトンとした顔でそれを甘党女はしばらく眺めていたが、すぐに何を思ったのか急にべらべらとしゃべり始めた。


智代子「お別れってね、残されるほうが辛いんだって最近知ったんだ」

智代子「向こうはあえなくなるってのを知ったままでいけるけど、こっちはそれすらも知らないから……突然に全部を奪われてしまう」

智代子「……夏葉ちゃんと交わしたい言葉、夏葉ちゃんから聞きたい言葉」

智代子「見たい夏葉ちゃんの姿だって、色々いっぱいあったんだ」


どうやらこいつも暖簾が吸い上げたアルコールに中てられているらしい。
梁の向こう、遠いものを見つめながら話す、その口調には回顧が染みついている。


智代子「本当なら、それをどこまで追求したかったし。それを奪った相手を糾弾したかった」

智代子「でもね、そんなことをすれば……その相手に遺される人に、申し訳ないかなって」

智代子「別れは人の数だけ、無限にあるから……誰かがちょっとでも声を挙げちゃったら全部に伝播しちゃう。それは必ずしもプラスじゃないのかなって」


お人よし、とはこういう奴のことを指すのだろうと悟った。
こいつは二回も奪われた。理不尽の前に目の前でユニットのメンバーが二回も命を散らした。
だったら、少しぐらいわがままを言ったところで罰は当たらないだろうに。
それでもこいつは、『甘口』であり続けた。


智代子「……なんだか私も変なこと口走っちゃったかも」


徹底したチョコアイドルっぷりに、私は思わず息を漏らす。


ルカ「……ハッ」

智代子「もう! なんで笑うの、ルカちゃん!」

ルカ「……別に、こんな場で自分の意志と別に本音を漏らすなんて。ジジくせえなっていう自虐だよ」


……やっぱり、私じゃ283プロのアイドルにはなれやしない。


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【園田智代子の親愛度レベル…8.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…16個】
814 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:23:43.95 ID:/lNWkEhY0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

後になってさっき口にしたおでんが効いてきた。
寝起きに、しかも朝飯をある程度食ったうえで口に入れるものは、少なくとも普通おでんではない。

こってりとした味付けに、煙の独特な香りが染みついて、後悔を覚えずにはいられなかった。

余計なことを言ってしまったのに関しても、余計なことを訊いてしまったのにも関しても。

あれを聞いてしまったからには、見て見ぬふりなんてもう出来やしない。


「……面倒だよな」


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…16個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:30:21.05 ID:ryCc/2O30
1:あさひ
816 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:33:06.11 ID:/lNWkEhY0
早いですが、本日はここまででお願いします。
次回あさひ選択より再開します……
817 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/13(月) 22:34:13.01 ID:/lNWkEhY0
次回更新は6/18(土)の21:00前後と少し先になります、申し訳ない……!
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 22:36:46.31 ID:HICo9pII0
お疲れ様でした
819 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/14(火) 03:15:50.58 ID:1GjQUioD0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/15(水) 16:18:11.77 ID:3BnpKID90
5章更新始まってるのに気づくのめっちゃ遅れた……
冬優子のおしおきが仮に完遂されたらハリボテの教会との板挟みで圧死するの、
ハリボテの教会の飾り付けられた表側とそうじゃない裏側が冬優子の二面性の写像とすると、
救いを求めた結果取り繕った面に阻まれて死ぬことになるわけだし、
最後は壊れたセットのきれいじゃない裏側をメインに映す感じでカメラが抜かれて映像が終わりそうで、
情景を想像してたら悪趣味でとてもおいしいと思った
なんだったら圧死した後に冬優子だったものの跡とかハリボテの教会とかに一切フォーカスすることなく、
衝突したチャリオットを心配する感じとか何も関係ない光景とかをカメラが抜いたりするのも、
みんなを魅了しようとしてた冬優子という存在を映す価値なしみたいにめちゃくちゃ愚弄してる感じがあってそれもそれでおいしい
821 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 21:31:25.04 ID:hWUH9Ue/0
1 あさひ選択

【第5の島 ワダツミインダストリアル】

昼の自由時間、何かと手持ち無沙汰になることはあったがこんなふうにソワソワと落ち着かないことはあまりなかった。
美琴がどこにいるのか、何をしているのかその懸念こそずっと抱いてはいるものの。
私にはそれ以上には目下の不安材料がその未体験のざわつきを抱かせていた。

ルカ「……勝手に一人でぶらついてんじゃねーよ」

あさひ「あっ、ルカさん! どしたっすか?」

ルカ「どしたっすか、じゃねえ。こんな危ねえところ、一人で来ちゃダメだろ」

あさひ「……? 危ない、っすか?」

ルカ「テメェの後ろにあるそいつはなんだ? ただの置物か?」

あさひ「あはは、エグイサルはロボットっす。置物じゃないっすよ、ルカさん変なこと言うっすね」

……もう説得なんかも面倒だ。
いっそ首輪でもつけちまうか?

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 21:41:13.31 ID:t+E20L+80
1 【多面ダイスセット】
823 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 21:47:37.04 ID:hWUH9Ue/0
1 選択

【多面ダイスセットを渡した……】

あさひ「何っすか? これ、さいころ?」

ルカ「おう、ただのさいころじゃなくて複数面……かなり多い数だろ。私には使い道はよくわからねえがオマエならなんか適当に暇つぶしに使えるかと思ってよ」

あさひ「……これ、出る目の確率とかってどうなるっすかね」

ルカ「……随分知的な好奇心だな」

あさひ「あはは、最近学校で習ったっす!」

(……確率の計算、か。もう忘れちまったな)

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより多めに親愛度が上昇します!】

-------------------------------------------------

あさひ「あっ、あっちの機械見てみたい!」

ルカ「おいコラ、だから勝手に行くなって!」


あさひの関心のスイッチはいつ何に向けられるのか分からない。
目を離した隙に姿を消すし、触れてはいけないものほどよく触る。
この危機管理能力でよくもここまで生き残っているものだともはや感心する。


ルカ「……はぁ、なんでオマエはこう自由なんだ」

あさひ「ルカさん?」


……その感心は、慢心にも似ていた。


ルカ「……ったく、冬優子のやつはどうやってこいつの面倒を」

あさひ「……冬優子ちゃん」

ルカ「……ッ!」


迂闊だった。
自分の中だけに押しとどめているつもりだった言葉が漏れ出ていた。
きっとあさひ本人も無自覚にやっていたこと。
自分の関心にいつも以上に従順になって走り回っているのはその喪失を僅かにでも忘れるため。
気を紛らわさせるために、直視をさせないために別のものを自らに仕向けているはずだったんだろう。
でも、私が手綱を握ろうとするあまり、余計なものまで引っ張り出してしまった。
剥き出しになった喪失感が、あさひの手を緩め、床に金属が衝突する音を響き渡らせる。


ルカ「……悪い、オマエだって辛いのに思い出させちまった」


とりあえずの弁解。
されどあさひの水面には重たく大きな石が既に投げ込まれた。
波紋はそう簡単には止まない。


あさひ「……」


俯いたまま、言葉を発さない。
自分の影を見つめるまま、その奥にないものを探す。

……これは、まずったよな。


1.今は辛いけど、前に進むしかない
2.いつまでも目を背けてても仕方ないだろ

↓1
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:01:24.53 ID:t+E20L+80
1
825 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:10:36.19 ID:hWUH9Ue/0
1 選択

どう申し開きをすればいいのか、というところから思考は始まった。
でも、それは私向けじゃない。
直面し続けた美琴との軋轢から目を背け、逃げ出した人間がどう謝るというんだ?
私は逃げて逃げて逃げた末になんとかそのチャンスをつかんだだけの事。
しかもそれを、既に逃してしまっている。


ルカ「……うざってえな」


なら、私がすべきことは申し開きじゃなくて、開き直りだ。
自分の口から出た言葉を無責任に肯定して、押し付ける。
それで乗り切るほかない、無茶するしかない。
そんな無茶でもしない限りは、この少女を救い上げられない。


ルカ「いつまでも他人に気を遣わせてんじゃねえ。ここは外の世界じゃねえんだ、オマエだって他の連中と同じ一つの数頭に入ってる」

ルカ「現実に目を向けられない、そんなの甘えに過ぎねえんだよ。どれだけ辛くても前に進まなきゃならねえ、実際冬優子はそうしてただろうが」

あさひ「……冬優子ちゃん、が」

ルカ「せっかく救い出した三峰結華は死んだ、長い間ユニットを組んだ仲間の和泉愛依も死んだ。それでもオマエと言う存在がいたから、あいつは凹む時間も惜しんで前に進んだ」

ルカ「あいつがその感情を乗り切ったかと言われれば答えはノーだ。でも、だとしてもあいつは前に進むことを選んだ。引きずりながらでも前に進むことを選んだ」

ルカ「オマエもあいつを慕ってんなら……その後ろ姿を見習うぐらいしやがれ」


本当に無責任な言葉だ。
自分にもできていないことを相手に要求する、ここにインターネットの眼なんてあろうものなら大炎上だろうな。
でも、ここは絶海の孤島。
誰にも干渉されない、干渉を求めることもできない。
自分に向けられた言葉は、自分で噛み砕くほかない。


あさひ「……難しいっす」

ルカ「……」

あさひ「ルカさんの言葉、難しいんですぐには分からないっす。……でも、分かりたい、理解したいって思ったっす」

あさひ「……だから、ちょっとだけ待ってもらっていいっすか?」

ルカ「……ちょっとだけな」


……言葉が響いたのかどうか、感触は分からない。
ただ、彼女が俯いていた顔を面に上げたのだけは確かだった。

私とあさひはそのまま、言葉を交わすことなくホテルへと戻った。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【芹沢あさひの親愛度レベル…10.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…17個】
826 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:12:50.51 ID:hWUH9Ue/0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

分かれるその瞬間まで、珍しくあいつは押し黙っていた。
帰り道をきょろきょろと見まわしていたのは、そこに幻影を追っていたからなのか。
流石にそれを問いただすような残酷な真似はやめておいた。

あさひが自分の中で冬優子の背中らから何を学ぼうとするのか、その答えを見つけるまで私は待つだけだ。

「……私も、いい加減答えを」

無責任さには、目を伏せて。


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…17個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:15:00.27 ID:Lq4Dl7En0
1.あさひ
828 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:21:29.50 ID:hWUH9Ue/0
1 あさひ選択

【あさひのコテージ】

解答をせかすようで、少しだけ悪いと思った。
でも、きっとどれだけ時間を与えても同じことだ。
頭がどれだけいい人間でも、この問題の答えは分からないだろうし、それに自身も持てまい。

だとしたら、私たちがすべきはその正誤の判定ではない。
解答を練り上げるための議論、検討なんだ。

そのためには、同じ空間にいること、同じ時間を過ごすことこそが重要なのだと思う。

ピンポーン


あさひ「ルカさん、早いっすよ。まだモヤモヤしたままで、よくわかんないままっす」

ルカ「……悪い」

あさひ「……」

ルカ「……」

あさひ「……帰らないっすか?」

ルカ「……とりあえずの答えを聞こうと思ってな」

あさひ「……っす」


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 22:31:32.84 ID:Lq4Dl7En0
1.【絶対音叉】
830 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:48:23.23 ID:hWUH9Ue/0
1 選択

【絶対音叉を渡した……】

あさひ「わっ、何これ! 見たことない!」

ルカ「おいやめろ、鼻に突っ込む道具じゃねえ。音叉……一応音楽関連のもんだが、まあアイドルとはあんまり関係ないからな。音同士が共鳴した時に生じる振動を利用して医療とかに活用しているらしいぞ」

あさひ「へぇ……音で、すごい発想っすね」

ルカ「まあこれは破壊兵器として使うみたいだけどな。音で色々ぶっ壊しちまうみたいだから、使い方には気を付け……」

あさひ「透ちゃ〜〜〜〜〜ん! これ一緒に叩いてみるっすよ〜〜〜〜〜〜〜!」

ルカ「バッカ……!!!! おい、やめろ!!!! やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

【PERFECT COMMUNICATION】

【親愛度がいつもより多めに上昇します!】

-------------------------------------------------

あさひの部屋は、案の定片付いてはいない。
そこらの床には乱雑に紙が散らばり、彼女の関心が尽きたであろう使い道も分からない機材の数々は適当に箱に突っ込まれている。
そこに、彼女に対する認識のずれはない。
私も芹沢あさひと言う少女はそう言うものだと思うし、彼女がここで過ごす時間があったならおのずとそうなるだろう。
それでも違和感がぬぐえないのは、ここに出入りしたであろう人間ならこのままにしていなかっただろう、というところから。


ルカ「……どうだ、冬優子と向き合ってみて」


尖った言い方をした。冬優子はもういない、あくまであさひが向き合うべきなのは『今は亡き冬優子』、あさひの中にいる冬優子、そしていない冬優子だ。


あさひ「ルカさんの言ってることはなんとなくだけど、分かった気がするっすよ。確かに冬優子ちゃんはどんな事件があった後でも、落ち込んだり、凹んだり……じっとしていることはなかったっす」

あさひ「きっと、ルカさんの言うように、わたしのためにそうしてくれてたんっすよね。愛依ちゃんがいなくなってからは、余計に」


冬優子の死に際の光景がどうしても蘇る。
あの不器用すぎる頭を撫でる動作、冬優子の思いの丈がそこに滲み出ていた。


ルカ「……冬優子は、最後になんて言っていた?」

あさひ「自分の想いを、汲み取ってくれって」

ルカ「……そうだったな」


では果たして……冬優子の最後の想い、とはなんなのだろうか。
私がさっき投げかけた言葉のように、辛くても前に進めということなのか。
それとも自分を代償に生きているのだと自覚しろと言うこと?


ルカ「あさひは、冬優子はどう思ってると思う?」


私にも、その答えは測りかねる。
だから、それはあさひに託した。
私よりもよっぽど長い時間を共に過ごして、熱心に彼女の観察を続けてきたあさひなら、きっと納得のいく答えを見つけられる。
それは私が冬優子から引き継いだ、『信頼』だった。




あさひ「……わかんないっすね」



831 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:50:01.45 ID:hWUH9Ue/0

あっけらかんとして、あさひはそう答えた。
それは何も、解答の放棄ではない。
むしろ考えて、考え抜いたからこそ見つけられた答え。
自分の都合に無理やり手繰り寄せた、恩着せがましい責任感ではない。


あさひ「あはは、他の人がどう考えてるのか、どう思ってるのか、なんてことはわたしもわかんないっす」

あさひ「でも、それって悪いことじゃない。当り前じゃないっすか。冬優子ちゃんもよく言ってたっす。他人なんて何を思ってるのか分かんないんだから、用心なさいって」

あさひ「だから、わたしも冬優子ちゃんの考えてることなんてわからないっす。わたしが冬優子ちゃんのために何をすればいいのか、なんて」

あさひ「あ、でもこれじゃ答えにならないっすよね。ちょっと待ってくださいっす、解答を用意するんで」


あさひがあさひらしくある所以、彼女のアイデンティティとも言うべき無責任だった。
誰かにゆだねられて生きるなんて、あさひらしくない。
そんな生き方を、冬優子が望むわけない。
冬優子は誰よりもそばであさひを見続けて、誰よりもねたみ続けてきて、誰よりもその生き方を理解しようとしていた人間だ。
だとしたら、その羽に枷をはめようなんざ思うはずもない。


あさひ「冬優子ちゃんが最期に行っていたのは自分の命を雑に使うなってことだったっす。それなら、わたしは……後悔の無いように生きる。自分は自分のしたいように生きる」

あさひ「冬優子ちゃんがやってたのと似てるかもしれないっすけど、これは私の生き方っす。ちょっとだけ違うんっすよ」

あさひ「えっと、だから……引きずる、とも違うし……えっと」


偶然にも私と同じ結論に帰結していたことに、少しだけ口角を上げながら私は苛立った。
きっとこれは、冬優子の読み通りなんだろうから。
冬優子と私は同族、ということはつまり……その理解者であるあさひもまた同族なのだ。
遺される同族を守れるのは同じ同族だけ、そういう意味で私をあてがっていたのだろう。
ヤロウ、どこまでも私を利用しやがって、気に食わねえやつだ。


ルカ「……ハッ、わかったよ。もうそれ以上は、いい」

ルカ「オマエの言葉なんて元々よくわからねえんだ。無理やり言葉を紡がれても不格好でいけねえ」

あさひ「……? そうっすか?」

ルカ「……これは、私の決めた生き方だ」


そう言って私は掌を差し出した。
こいつと同じく無責任に、その場だけの感情で差し向けた掌。
そこに引き継ぎも何もあったもんじゃない。いますぐにだってこの鎖をほどこうと思えば、ほどいてやれる。

……でも、それをしない。
今は、私がこれをしたいから、それだけの理由だ。


あさひ「あはは、ルカさんの手のひら、冷たいっす!」


偶然、こいつともその『やりたいこと』は今、一致していたらしい。

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【芹沢あさひとの間に確かなつながりを感じる……】

【芹沢あさひの親愛度レベルがMAXに到達しました!】

【アイテム:遊園地のぬいぐるみを獲得しました!】

・【遊園地のぬいぐるみ】
〔いつか遊園地に行ったときに持ち帰ったぬいぐるみ。ウサギとネコとクマ、さんたいのぬいぐるみに愛を注いでいたら、不思議なことに一瞬だけ一人でに彼女たちが動いたとあさひは語る〕

【スキル:ジャンプ!スタッグ!!!を習得しました!】

・【ジャンプ!スタッグ!!!】
〔集中力を使用した際の効果が増幅する〕
832 :あさひのイベントと少し表現に矛盾が出る部分が出てくるかと思いますがご容赦ください ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:51:12.48 ID:hWUH9Ue/0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

閉塞とした空気感が時計をせっつかす。
いつもよりも早く進んだ時計の針が、太陽を地中に埋めて一度の夜がやって来る。
今日と言う日はあっという間に過ぎてしまった。


「……そういえば、あさひのやつはどうしてんだ」


冬優子に名指しで託された手前、どうしても思考の片隅にあいつの存在がある。
憎たらしい言葉に自分勝手な行動、正直愛想をつかすには十分すぎるほどの理由があるのだが、それ以上の義務感がそれをせき止める。
多分冬優子も生前は一緒だったんだろう。
鬱陶しさと煩わしさと同じくらいに、放っておけない感じが付きまとって仕方がない。


「……顔見るだけ、な」


あいつ自身もこれまでの生活で変化して、多少は聞き訳は良くなったんだと思う。
今朝も部屋に入れたところで好き勝手荒らす様子はなかったし、必要以上に出歩きはしないし、危険に身は置かないとは思う。
それでも、過去の前例から得られた信頼の値のあまりの低さに、黙っていることはできなかった。

833 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:52:54.72 ID:hWUH9Ue/0
------------------------------------------------

【ホテル】

部屋を出る。
コテージの個室はこう見えて防音性が高いらしく、窓を閉めていると風の音すらまるで聞こえてはこない。
今こうして外に出ることで初めて虫が鳴いていることに気が付くくらいだ。


「……何の虫だろうな、これ」


都会の私たちは虫の名前を知らない。
どれだけ心地の良い声であろうとも、その持ち主は永久に分からないままだ。


「……あさひなら、知ってるか」


照れ隠しの言い訳にちょうどいい都合が見つかったとばかりに左を向いた。
あさひの個室はこの向こう。
中央の桟橋を挟んだ別ブロックに彼女の部屋はある。

ぎしぎしと音を立てて板橋の上を歩き始めたその先。
834 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:54:26.49 ID:hWUH9Ue/0





「……やめて〜〜〜!!」





835 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:55:55.62 ID:hWUH9Ue/0

向こうの木に留まっていた鳥たちが一斉に散っていった。
夜を引き裂くばかりの絶叫は、私の背後から。
ソールを横にすり減らして方向転換。
奥歯をバネに、その声のした方へと即座に駆け出した。

声に混ざっていた怒り、憎しみ、悲しみ、苦しみ……それらをすべて絞り出したような切迫。
一秒を争う事態が起きているのは、耳から脳へと情報を明け渡すよりも先にわかった。



そして本能が嗅ぎつけた緊急は、実際間違ってなどいなかった。


836 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:57:16.15 ID:hWUH9Ue/0



「……な、何やってんだよ……オマエ……!」



半開きの扉から明かりが漏れ出していた。
コテージは入ってすぐに生活空間が見える間取り、廊下らしい廊下もないボックス型の部屋は、その事態を観測するには優れたつくりだった。



美琴が、



____その手に持ったサバイバルナイフで、能天気女の左手をぶっ刺していることがすぐに見て取れたのだから。



837 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:58:23.91 ID:hWUH9Ue/0

美琴「邪魔しないで……!」

雛菜「痛い痛い痛い……!」


肉に深く突き刺さり刃先は貫通している。
だがそれが却って刃にとっては返しとなって、ナイフを抜き取るには障害となっているようだ。
美琴は二の手が撃てない焦りを額の汗で滲ませた。


ルカ「……畜生……!!」

ドンッ


その不意を突いて私は頭から美琴の脇腹に突っ込んだ。
838 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 22:59:29.34 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「お、おい……大丈夫か!?」


すぐに私は能天気女の手を取った。
ひどい有様だ、血は止まらないし、断面からはもはや骨が見えてしまっている。
しかも、この刺さり方はまずい。指の根本の神経が密集する部分を狙っているかのような突き刺さり方。
激痛を感じるどころではないはずだ。


透「雛菜……?」


まるで魂が抜けてしまったかのようにへたり込んでいる浅倉透。
彼女はまだ事態が飲み込めていない様子だった。


ルカ「クソ……何がどうなってやがる……! とりあえず、包帯……なんか応急処置できるもんはねえのか……!」

雛菜「痛い……痛いよ……」


私は突然居合わせただけの存在。
夜に照明と赤とが混ざるこの異様な空間に身を置いて、体を火照らせる以外の反応が未だ示せずにいた。
839 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:00:27.31 ID:hWUH9Ue/0

その一方で、一度強制的に隔絶を行われたせいで襲撃者は冷静さを取り戻しつつあった。


美琴「……ルカ、邪魔しないで」

ルカ「み、美琴……!」


美琴はゆっくりと体を起こしたかと思うと、そのまま二本目を取り出した。
能天気女の手に刺さっているナイフと同等かそれ以上の刃渡り。
そんなナイフを両手で持って、浅倉透に向き直る。


雛菜「だ、ダメ……」

美琴「……今度こそ、必ず」

ルカ「バカ……何やってんだ……! 落ち着けって……!」


慌てて遮るようにして前に出る私と能天気女。
能天気女は傷の手当ても何もしていない。体を少しよじるだけでパタタッと音を立てて血のしずくが床に落ちる。
でも、そんな痛切な状態でさえも美琴の視界には入らない。
美琴が見ているのはただ一つ、憎しみを向けるべき存在。

____標的の、浅倉透だけだ。

840 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:01:20.50 ID:hWUH9Ue/0

美琴「……私は冷静だよ。むしろ他のみんなの方がおかしいんじゃないかな。自分は浅倉透を騙る偽物、更にはこの島に私たちを連れてきた張本人だっていう本人の証言もある」

美琴「にちかちゃんは最初から、ずっと……この子の怪しさに気づいていたのに」

美琴「……どうして、どうして……この子を受け入れて、にちかちゃんを拒絶するの……!?」

ルカ「ち、違う……! 私たちは七草にちかを拒んだりなんかしてねぇ、こいつも……それだから敵になるってわけじゃない、私たちに協力を宣言してくれてんだ……!」

美琴「言葉なんか何の信用になるの……!」


聞く耳を持たない人間に説得なんか無意味だ。
言葉は万能じゃない。
燃え盛る油に水を注げば却って激しく燃え盛る様に、美琴は私の言葉で逆上する。
ヘビが獲物を締め上げるような動作で、柄を持つ手にぎゅっと力がこもる。
841 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:02:05.90 ID:hWUH9Ue/0




美琴「私は……こんなところで止まっていられないの!」



身体の震えが、止まった。


(……来る!)


踵が床から離れた。
この部屋はそう大きなスペースではない。
美琴のすらりと長い脚ならば、ほんの数歩のうちに私たちのもとに到達するだろう。
ナイフを持った手なら更に前に伸ばすことだって。
刃が届くまでの時間となると、もはやコンマの世界だったのだろう。
そんな世界、感知しえない。
人間の反射神経ぎりぎりの世界は本能で観測するほかない。
842 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:03:17.33 ID:hWUH9Ue/0





____私の本能は、ギリギリまだ生きていた。





843 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:04:16.66 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「……痛ェな……」

美琴「ルカ……!?」


不思議な感覚だった。
こんなにも冷たいものを触っているのに、両手は焼け落ちそうなくらいに熱い。
掌では生暖かいものが蠢いて、ぐじゅぐじゅと音を立てる。
その生暖かい何かは散々蠢いたかと思うと、わずかな隙間から零れ落ちて、床で破裂し、赤く染め上げる。
それを見ているうちに、じんわりと、それでいて確実に。
ズキズキとした感覚が腕を伝って、全身の力を抜いていく。

両手で、ナイフの刃先を掴んでいた。


ルカ「痛いんだよ、バカ野郎……!!」


砕けそうな腰を軸にして、弱弱しく美琴の腹を蹴った。
美琴はさっき以上の軽さで吹き飛んだ。

844 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:05:55.64 ID:hWUH9Ue/0

透「ちょっ、なんで……なんでそんな……」

ルカ「ああ?! 知らねーよ……私だってなんでこんな真似してんのか……」


浅倉透に手首を掴まれた。
翻して証明の元に晒された掌はパックリと切れており、血に塗れていた。


ルカ「それに、私より市川雛菜だろうが……!」


でも、私の切り傷はあくまで表面上にとどまる。
肉を多少割いていたとしても、まだリカバリーは効く。
市川雛菜のそれは、レベルが違った。
ナイフを掴んだことに当惑するばかりの私たちをよそに、市川雛菜はその場にうずくまる。
ナイフの突き刺さった手を腹部の下に隠すようにして、背中を丸めている。


ルカ「クソ……ナイフを下手に抜くわけにもいかねえ……モノミ、モノクマでもいい……! 早く治療してやってくれ……!」

雛菜「うぅ……」


私が余裕なく叫ぶと、すぐにトテトテと場に不似合いな素っ頓狂な足音とともにモノミが姿を現した。

845 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:07:07.31 ID:hWUH9Ue/0

モノミ「な、何が起きてるんでちゅか……!? 市川さんに斑鳩さん……いや〜〜〜〜〜! スプラッタでちゅ〜〜〜〜!」

ルカ「スプラッタでもオモプラッタでもねえ! さっさと治療しろ! このままじゃ市川雛菜の手は……!」

モノミ「は、はい! わかりまちた……斑鳩さんも、治療しまちゅから一緒に病院に行きまちゅよ!」


モノミは市川雛菜に肩を貸すようにしておぶると、私に同行を促した。
見た目の割に力はある、モノケモノを撃退していただけのことはあるらしい。


透「雛菜、しっかり……大丈夫だから」


モノミの背中で浅く呼吸をする市川雛菜に声をかける。
それに応じて、首をしんどそうに傾げて浅倉透の方を見た。


雛菜「透ちゃん……怪我はない〜……?」

透「ないよ、ありがとう……その、だから」


浅倉透の言葉はたどたどしい。
いつも多くを語るような人間ではなかったが、それに動揺が拍車をかけていた。
846 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:08:45.75 ID:hWUH9Ue/0


雛菜「あは〜……それならまあいいや〜……」

透「なんで……私、本当の『浅倉透』じゃないんだよ……ただのコピーでさ、雛菜が体を張ってまで守る意味なんて……」


いつものような余裕がその言葉からは感じられなかった。
自分自身の存在と言う負い目が、この恩義を否定しようとしていた。


雛菜「ん〜……よくわかんないけど〜……」

雛菜「幼馴染だからとか、透先輩と同じ見た目だからとか、そういう理由じゃなくて」



雛菜「雛菜が守りたいと思ったから! それだけじゃダメ〜?」



失血していくさなか、顔色の悪い笑顔だった。
痛々しいその右手で不格好なピースをつくり、プルプルと持ち上げて。
私でも、その光景には感じ入るものがあった。

847 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:09:48.24 ID:hWUH9Ue/0

___でも、あいつはそうではなかった。


美琴「……」


美琴はお腹を抑えるようにして気配無く立ち上がり、そのまま私たちの横をすり抜けていく。


ルカ「ま、待て……美琴!」


掴んだ裾に、私の手のひらの血がべったりと付着した。


美琴「……ルカ、ごめんね」

ルカ「謝んのは私じゃねえだろ……!」



美琴「……もう、目の前に姿は現さないから」


848 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:10:28.83 ID:hWUH9Ue/0

ルカ「……あ?」

美琴「……それじゃあ」


どうやら私の傷も浅くはないらしい。
がっちりと指で挟んで掴んでいたはずの裾はスルリと離れ、その影はすぐに夜の闇と馴染んでしまった。
あいつだって何度も突き飛ばされて無傷でもないはず、それなのに全く追いつけなかったのはその体に背負い込んでいるものの重量の差。
私の足は部屋の内側には軽いが、外側には重たかった。


モノミ「……これ以上の危害を加えてくる気はないんでちゅかね……?」

透「……多分、相方を傷つけたからじゃないかな」

ルカ「……」

透「雛菜を刺したことよりも、多分そっちの方がずっとずっと……痛いんだと思う」

ルカ「……チッ」


私たちはモノミのすぐ後に続いて、部屋を後にした。

849 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:13:28.83 ID:hWUH9Ue/0
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【第3の島 病院】

私の傷はナイフを掴んだために皮膚がぱっくりと切れ、一部筋肉を傷つけた程度。
気が飛ぶほど沁みる消毒をした後に、包帯をぐるぐる巻きにすることで何とかなった。

だが、問題は市川雛菜。
明らかに貫通していたナイフを、美琴は抜き取ろうとあがいたことで更に傷を広げていた。
不幸なことに骨とぶつかることもなく突き刺さってしまったがゆえに、出血も激しく病院に着くころには市川雛菜は気を失ってしまっていた。
モノミにとりあえず委ねるほかなく、私と浅倉透はロビーの椅子に腰かけてその時を待った。


ルカ「……突然、押し入ってきたのか」

透「うん……二人で部屋にいたところに、インターホンが鳴って」

ルカ「扉、開けたのか? 不用心だな」

透「……実は、これ」


懐からくしゃくしゃになった紙を目の前で広げる。
罫線が数本横にひかれた長方形の紙、手紙の様式だ。
私はそれを引っ手繰るようにして目を落とした。
850 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:15:24.97 ID:hWUH9Ue/0



『今晩大事な話がある。夜のアナウンスが鳴ってから十分ほど経ったら部屋に行くから入れてくれ』



ルカ「……は?」


成程二人はあらかじめアポイントを受けていたのだ。
これを受け入れてしまっていたがために、美琴の来訪だというのに不用心にも扉を開けてしまい、結果として刺されてしまった。
その流れは飲み込めた。
でも、どうしても飲み込めない一つの事実がある。

それはどれだけ頭を捻ろうとも答えが見つからない、嚥下するにはあまりにも大きくていびつな形をした謎。



_____その手紙は、完全に私の筆跡だったのだ。


851 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:17:07.86 ID:hWUH9Ue/0

どこの教室に通ってもいない、誰にも師事をしていない、ぶっきらぼうで直線的なボールペンの字は私がスケジュール帳に殴り書いた文字と完全に同一。
だが、当然ながら身に覚えなんてない。
私はあの時扉を開けたのは、あさひの様子を見に行くため。
それにアポイントなんかとるつもりもなかったし、そもそも人の都合を伺って訪問をするような几帳面な人間でもない。
それなのに、その筆跡には数年着古したジャケットにそでを通した時のような順応感があった。


透「……この手紙があったから、きっとルカさんが来るもんだと思って」

ルカ「違う、私はこんなの出しちゃいねえ……」

透「……えっ」

ルカ「意味わかんねえ……なんで、なんで私の文字でこんなのが書かれてやがんだ……!」


夢遊病の類いだろうか。それとも別人格?
私が無自覚なうちにこんな手紙を書き記して、浅倉透の部屋に投函してしまったのかもしれない。
……そんなわけない、あるはずがない。

まだ傷がふさがっちゃいない、手のひらの包帯はすっかり血に染まって真っ赤だった。


ルカ「……わけわかんねえ……これを美琴が用意したってのか……?」

透「……」
852 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:18:35.73 ID:hWUH9Ue/0
____
______
________

モノミ「……手術は終わりまちた」


それから数十分後、モノミがようやっと姿を現した。
ピンクと白のツートンの毛はすっかり血の赤色に染まっており、B級ホラー映画の殺人人形のような見た目だ。
だが、そんな映画の中の人形のように狂気的な笑顔を浮かべるでもなく、モノミはただ俯いている。
言葉など聞かずとも、その意味は理解できる。


ルカ「ダメ、だったのか……?」

透「そん、な……」

モノミ「……命を落とすようなことはありまちぇん。輸血も間に合ったので、失血死なんてこともないでちゅ」

モノミ「……でも、市川さんに重篤な後遺症が残ることは間違いないでちゅ。右手の神経は、もうどうしようもありまちぇんでちた」
853 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:19:45.17 ID:hWUH9Ue/0





モノミ「市川さんは今後もう自分の手でお箸を握ることも、誰かと手をつなぐこともできないでちゅ」




854 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:20:57.70 ID:hWUH9Ue/0

言葉を失う、という表現はきっとこの場にはふさわしくない。
もっと前から言葉を咽喉から持ち上げることは出来かねていたし、頭に浮かんだ言葉はシューティングゲームのようにその悉くを撃ち落としていた。
私がこの場において、言うべき言葉なんて何一つない。
喋るべきでない。
だから、多分正しい表現は呼吸をすることも忘れる、なのだと思う。
一人の人生が大幅に歪められてしまった、その場に居合わせることの重大さを前に、私は口を固く締めあげて、空気をかみちぎった。


透「……う、そ」

モノミ「……あちしには、義手に挿げ替える技術はないでちゅ……モノクマのように大幅な人体改造もできないんでちゅ……本当に、ごめんなちゃい……」


地面に額を擦り合わせるようにして許しを求めるモノミ。
本当に不細工なマスコットだ。こいつがしているのはただの自己満足。
自分の実力及ばずと言うのを、悲劇のヒロインぶることで解消しようとしている。
人間の醜さを体現したような在り方に虫唾が走った。

855 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:21:47.25 ID:hWUH9Ue/0

透「……」


浅倉透もそれは感じ取っていたのか、モノミに言葉をかけようとはしなかった。
背を向けて、力なく再び椅子に落ちるようにして腰かけた。


透「何やってるんだろ、私」

透「……みんなを守るために、ここにいるのに」

透「何も守れず、私のせいで……失って」

透「……キツイなー、人生」


煙のように天井に吐き出した言葉に、天井が軋んだ。
856 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/18(土) 23:24:15.46 ID:hWUH9Ue/0

というわけで本日はここまで。
あさひの親愛度がマックスになったり、夜襲があったり、色々と起きましたね……

次回更新は明日21:30頃を予定しています
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/18(土) 23:28:50.69 ID:oOVPKMGo0
>>1
好感度マックスになったのは確かなんだけど
>>1がここであさひの名前を出すのなんか不穏なんだけどまさかね・・・
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 01:04:55.29 ID:EQ8hP+wk0
大胆な邪推はイナゴの特権・・・(迫真)
859 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/19(日) 03:01:06.44 ID:mMoGzpGu0
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860 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:34:28.25 ID:zQ5P2I1e0
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=========
≪island life:day 24≫
=========

------------------------------------------------

【第3の島 病院】

……徹夜だ。
市川雛菜の顛末を訊き遂げてから、この場を離れようにも靴底がのり付けされたように動かず。
そして掌の痛みも相まってすっかり目も醒めてしまっていた。
眠気を全く感じることもなく、気が付けば真っ暗な空がすっかり太陽の熱で溶け消えてしまっていた。


ルカ「……朝らしいな」

透「……」

ルカ「メシ、取ってこようか? オマエ、ここから離れる気ないんだろ」

透「……ん」

ルカ「……わかった、ちょっと待ってろよ」


こいつの気持ちも察して余りある。
流石にここで黙って飯を食いに離れられるほど私も血の通っていない人間ではない。
浅倉透は目線をこちらにくれることもなく、幽かな声量で返事した。
私もそれ以上は言わず、ゆっくりと立ち上がる。
長く座った膝は、それだけでパキッと鳴った。
861 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:36:27.25 ID:zQ5P2I1e0

その瞬間、



「あれ〜? ご飯食べに行くんですか〜? 雛菜もそろそろお腹すいた〜〜〜〜!」



廊下には、あいつが立っていた。
いつものようにキンキンとうるさいトーンとボリューム。
あからさまなくらいな笑顔で、ブンブンと左手をこちらに向かって振っている。
昨日とほとんど相違ない市川雛菜が、そこにいた。

862 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:38:46.17 ID:zQ5P2I1e0

ルカ「お、オマエ……! 目、覚ましたのか……!」


駆け寄る私に先行して浅倉透が肩を揺さぶった。


透「雛菜……雛菜……!」

雛菜「あは〜、透ちゃん痛い〜」


でも、その手を払いのけることはしない。
いや、できないんだろう。
ここまでのわずかなやりとりでもわかる、体はどこか傾いたようになっていて比重がうまくのっていない。
完全に動かなくなってしまった右手との帳尻が合わない体は、見ていてもどこか違和感を孕んでいた。


雛菜「起きたのはついさっきで〜、アナウンスが聞こえたんで朝ごはん食べに行こ〜って!」

ルカ「だ、大丈夫なのか……? その、昨日の今日で……」

雛菜「ん〜、大丈夫じゃないですね〜。お箸もスプーンも持てないし、ごはんは雛菜一人じゃ食べれないので〜」

透「……っ!」
863 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:39:41.37 ID:zQ5P2I1e0


雛菜「だから、透ちゃんは雛菜にあ〜んしてね〜?」



ちょっと転んで擦りむいたぐらいのテンションだった。
これ見よがしに傷を見せびらかすこともせず、なんなら話題をさっさと流そうとすらしていた。
今後一生に関わる話を、日常会話のようなトーンで話す。
彼女のスタンスには従いたいのも山々だが、当事者足る私たちはそれに流石にただ乗りはできず。


ルカ「ちょ、ちょっと待て……その傷、痛むんだろ? 無茶すんなって……」

雛菜「痛いことは痛いですけど〜……え、雛菜がご飯食べちゃなんかまずいんですか〜?」

ルカ「いや、そうじゃなくて……私たちにもなんか……言いたいこととかあんじゃねえのか……?」

透「私は……雛菜の一生を傷つけたんだ」

雛菜「え〜?」

864 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:42:38.07 ID:zQ5P2I1e0

でも、むしろそれを市川雛菜は鬱陶しそうにあしらった。


雛菜「ん〜、これ昨日も言ったと思うんですけど〜。雛菜は雛菜が守りたいと思ったからやっただけなので、別に透ちゃんもあなたも悪く思う必要なんてないですよ〜」


雛菜「結果として、誰も死ななかったしそっちの方が雛菜はしあわせですよ〜?」


どこまでも単純な論理だった。
市川雛菜にはずっと迷いがない。仲間のことで思い悩むことはあっても、そこから導き出される結論に、彼女自身が絶対の信頼を置いている。

だからぶれない、悔やまない、立ち止まらない。
この島にいる誰よりも、自分自身の在り方と歩み方を持っているのだと今この瞬間に理解した。
ジェットコースターで浅倉透を『透ちゃん』と呼んだ時のような爽やかさが頬を撫でる。


865 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:45:29.42 ID:zQ5P2I1e0

透「……雛菜」

雛菜「ん〜?」

透「朝ごはん食べたら作ったげる。特大のバケツで、プリン」

透「醤油もかけ放題」

雛菜「あは〜〜〜〜〜♡」


私はこの島に来る前の283プロの連中のことはそこまで知らない。
でも、この二人を見ていたらどんなものだったのか察しはある程度つく。

ノクチルとかいうグループはとんだ問題児の集まりだったんだろう。
等身大の彼女たちがぶつかり合って、補い合って。
他の何かで形を変えない、変えようとしない、それぞれがそれぞれを繋ぎ止めて、他が割って入れないほどの結束感のあるグループ。

そういう厄介な集まりだったのだろうと得心がいった。


866 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:46:15.86 ID:zQ5P2I1e0

雛菜「じゃ、そういうわけで雛菜たちは行きますね〜!」

透「アデュー」

ルカ「おう……じゃあな、気をつけろよ」

雛菜「は〜い!」


ルカ「……」


ルカ「…………」



ルカ「…………………………………………ん?」

867 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:48:05.68 ID:zQ5P2I1e0
------------------------------------------------

【ホテル レストラン】

一人取り残されたことに納得のいかなさをはじめは感じていたが、二人だけの時間が必要だったのだろうということで折り合いをつけた。
それに前もって二人がレストランに行っておいてくれたおかげでことの説明の手間も省けた。
私がついた頃には既に後の3人も昨晩の襲撃のこと、そして市川雛菜の手のことも一応情報としては飲み込んでいた。


智代子「そんな……雛菜ちゃん、大丈夫……じゃあないよね、そんな状態じゃ……」

雛菜「まあ不自由は不自由ですけど〜、放クラのお姉さんに比べたら雛菜は生身のままですし〜」

透「ほら、雛菜。あーん」

雛菜「あ〜ん♡」

恋鐘「うちらで雛菜の生活も面倒見てあげんといかんね……片手だけだとシャワーもまともに浴びれんたい」

あさひ「もう手は痛くないっすか?」

雛菜「今は鎮痛剤打ってるのでマシですね〜。でも、薬が切れた瞬間多分凄まじい痛みなので!」

智代子「そんな明るく言うことじゃないよ……」


やはりここでも当事者より周囲の方が事態を重く捉えている様子。
陽の光が差し込んで明るく照らされているはずのテラスで、なぜか陰陽を感じてしまう程。
あっけらかんとした様子に、なんだか私も心配するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

868 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:49:39.70 ID:zQ5P2I1e0

ルカ「おら、私たちも飯食うぞ飯。片腕使えねえやつより食い終わるのが遅いとかお笑いかよ」

智代子「ル、ルカちゃん流石にそんな言い方って……」

雛菜「あは〜、そうですね〜! 雛菜もう腹六分くらい来ちゃってますよ〜?」

あさひ「あ! 朝ご飯冷えてきちゃってる!」

透「食べて食べて。ほら、遠慮せずに」

恋鐘「もう、透? そいは朝ご飯作ったうちん台詞たい!」

智代子「……うぅ」


段々と市川雛菜の作り出す空気に満ちていく。
心配する方が悪いと言う心情が声のトーンを無理矢理に引き上げる。


雛菜「この傷跡は、犯行を食い止めることができた証拠なんですよ〜?」

雛菜「そんなに憐れむような視線向けないで欲しいかも〜」

雛菜「みんなが笑顔で食べてくれないと、ご飯も美味しくないですし〜!」


これには流石に甘党女も観念した様子。
それ以上市川雛菜に同情をかけるような素振りを見せるのはやめた。
私としても、いい形に落ち着いたとは思う。
ここまでに私たちは多くのものを失いすぎた。
塞ぎ込む時間なら、既に供給過多。そこにカロリーを割いている余裕は私たちにはない。

869 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:50:29.01 ID:zQ5P2I1e0

あさひ「それにしても、美琴さんはどうやって透ちゃんの部屋に入ったっすか?」

雛菜「ん〜、雛菜はそこの人だと思って扉を開けちゃったんですよね〜」

智代子「え? ルカちゃん?」

ルカ「……美琴が来る前に、ポストにコレが投函されてたらしい」

恋鐘「なんね? ……こいはルカの筆跡じゃなか?」

ルカ「……ああ、どっからどうみても私の字だ」

ルカ「でも生憎私にこんなの書いた覚えなんて全くない。そもそも人の部屋に行くのにアポ取ったりしないっつーの」

智代子「それはそれで問題だね……」

あさひ「じゃあ、この手紙はなんなんすか?」

ルカ「……」

恋鐘「美琴に聞いてみるしかなさそうたい……こいを投函したのは美琴とやろ?」

ルカ「どうだろうな……」


当然ながら私たち以外の人間にも心当たりなどない。
この手紙はどこで生まれ、誰が投函したのか。
どれだけ時間が経とうとも、答えが提示されることはなかった。
870 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 21:53:39.14 ID:zQ5P2I1e0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

市川雛菜はあの後浅倉透に介助されながら部屋に戻っていった。
とりあえずのところは、浅倉透に任せておけば問題はないだろう。
改めて二人には誰がきても扉を開けないようにと釘も刺して置いたし、今日のところは安心していいはずだ。

「……気が落ち着いたら、眠たくなってきたな」

徹夜明け、朝食も食べたばかり。
瞼はだいぶん重たくなってきた。

……今日はどう過ごそうか。


【自由行動開始】

【事件発生前最終日の自由行動です】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…18個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 22:05:26.62 ID:jmo6JafG0
1 智代子
872 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/19(日) 22:10:08.27 ID:zQ5P2I1e0
1 智代子選択

【第3の島 病院】

朝飯を食った時は市川雛菜に言われるがまま、無理やりにお気楽なムードを作ってやり過ごした。
だけど、やっぱりあいつはそのまま飲み込めていたわけではない。
つい数日前に、自分の大切な存在が肉体を失ってしまったことを重ね合わせていたのか。
いつになく遅いペースで食事を口に運んだかと思うと、食後はふらふらとどこかへ一人で歩いて行ってしまった。

その後を追ってたどり着いたのが、ここだ。


ルカ「……何する気だよ」

智代子「あ、あれ……? あはは、私も自分で気づかないうちにここに来ちゃってたみたい……?」

ルカ「……」


……痛々しいな。

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‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【絶対音叉】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/19(日) 22:14:45.47 ID:5gQxeq7s0
1:マリンスノー
874 :開幕寝落ちかまして申し訳ありませんでした ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:04:31.99 ID:lnzqQySY0
1 選択

【マリンスノーを渡した……】

智代子「わぁ……! ルカちゃん、すごくキレイだよこれ!」

ルカ「ハッ、こんなので目を輝かせちまってガキじゃあるまいし」

智代子「純粋にプレゼントを喜んでるだけなんだけど……」

ルカ「どのみち私にはいらねえもんだ。欲しいんならくれてやるよ」

智代子「ルカちゃん、ありがたく頂戴します!」

(……まあ、普通に喜んだか)

-------------------------------------------------

ルカ「やっぱり、思い出しちまうか。有栖川夏葉の事」


本人は無自覚にふらふらとたどり着いた認識なのだろうが、私からすればなぜ甘党女が病院にまでやってきたのかの理由など想像にたやすい。
肉体の欠損、それを一番間近で見ていたのは彼女だ。


智代子「思い出す、っていうのは多分違うかな。夏葉ちゃんのこと、一秒だって忘れるわけないし、どっちかと言えば『重なった』んだと思う」

ルカ「……そうだな」

智代子「今朝の雛菜ちゃん、本当に夏葉ちゃんにそっくりだったんだ。右手が使えなくなっちゃったこと、とかじゃなくてね」

智代子「何よりも自分が一番不安なはずなのに、それを周りに悟らせないように強い姿を見せているところとか」

ルカ「……!」


≪夏葉「智代子に果穂……そして、283プロのみんな……この島にいるのは多くが私よりも年下でしょ……?」

夏葉「だから……私が、守らないと……助けてあげないと……その責任があるって言うのに……」

夏葉「こんな、病気なんかに……侵されて……」

ルカ「……お前」≫


私は絶望病の騒ぎがあった頃を思い出す。
寝台の上、高熱にうなされ朦朧とする中であいつが初めて漏らした本音。
年長者として感じている責任、そして不安。私だけの秘密にしておくつもりだったが、そもそもの前提からして違っていたらしい。


ルカ「やっぱり、よく見てんな」

智代子「そりゃあ私たちは友達だもん!」

友達、だなんて用地が過ぎる関係性。波長が合うというだけで何の拘束力も実効性もない結びつき。それをどうしてこうも自信満々に言い放てるのだろう。

智代子「友達ってね、言葉や行動にしなくても分かっちゃうんだよ。今日はいいことあったんだ!とか逆に何か嫌なことでもあったんだ!とか〜」


1.オマエにはそれほどまでに大きい存在だったんだな
2.それだけのことを思われてあいつも幸せだろうよ

↓1
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 21:24:07.99 ID:HSLKjFms0
2
876 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:35:50.07 ID:lnzqQySY0
2 選択


ルカ「それだけのことを思われて有栖川夏葉も幸せだろうよ」

ルカ「死んでなお、オマエは友達だって胸を張って言えるんだからな。……まあ、私からすれば荒唐無稽な話だけどな」

智代子「ううん、夏葉ちゃんだけじゃないよ。放クラのみんな、283プロのみんな、この島のみんな。ルカちゃんだってそれには入っちゃってるからね!」

ルカ「はあ? 私はそんなの認めた覚え……」

智代子「ルカちゃんが私のことを励まそうとしてくれてること、分かってるよ」

ルカ「……ッ!」


俄かに顔が熱くなる。
別にこれは自分の感情とかではない。
何を勝手に勘違いしているのか知らないが、さも見透かしていますとでも言いたそうな言葉を臆面もなく出してきたことに対する共感性羞恥だ。


智代子「ごめんね、ルカちゃんにも心配かけちゃったよね」

智代子「雛菜ちゃん本人はああ言ってたけど、弱音を中々はけない人のことを私も知っちゃってるから。つい勘ぐりすぎちゃったのかな」


本当にこいつはお人よしだ。
友達と言う関係性に落とし込むハードルが低いせいで、余計なところまで気を回し、自分自身が追い詰められてしまう。



ルカ「……ハッ」



≪ルカ「……お前は確かに立派だよ、自分だけじゃなくいつも他の連中のことも気にかけて。そんだけの責任感があってこその行動なんだろうなって私でも思う」

ルカ「だけど……だからこそ、そんな風に自分を追い込む必要なんかないんじゃねーのか」≫


ルカ「……なんつーか、似た者同士だよな。オマエら」

智代子「き、急にどうしたの!?」


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【園田智代子の親愛度レベル…9.5】
877 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 21:36:53.75 ID:lnzqQySY0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】


類は友を呼ぶ、なんて言葉があるが実際のところ「類」と「友」はどちらが先に立つのだろうか。
ふと自分のことを思い返してみると、美琴に出会ってからは染め上げられた自覚は多分にあった。
必死に美琴の後を追い、横に立とうと努めて来れば、それも当然の事か。

……今はどうなんだろう。
二人の関係性は一言で称するにはこんがらがりすぎる。

その志向性は、今や。

【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…18個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 21:59:50.76 ID:HSLKjFms0
1 雛菜
879 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:09:51.89 ID:lnzqQySY0
1 雛菜選択

【第1の島 ロケットパンチマーケット】


甘党女と別れてから、なぜだか喉の渇きのようなものを感じてスーパーマーケットへと足を運んだ。
別にのどを潤すだけならレストランでも事足りるのだが、私の無意識はなぜだかそれを拒んだ。
見えない糸に引っ張られるようにして足を踏み入れた先で目にしたのは、目を背けたくなるようなその姿。


雛菜「あっ、こんにちは〜。お買い物ですか〜?」

ルカ「お、オマエ……なんでこんなところに……」

雛菜「なんで、って買い物以外何かあります〜?」


動かない右手をカートの上に添えるようにして、もう片方の手で商品を持つ。
何不自由してません、といった顔とは対照的に痛ましいが過ぎるだけの不自由が曝け出されていた。


雛菜「何か勘違いしてそうですけど、透ちゃんと一緒ですよ〜? 今はちょっとトイレに行ってるんでいませんけど〜」

ルカ「そ、そうか……そうだよな……」

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【絶対音叉】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 22:24:28.07 ID:HSLKjFms0
1 【絶対音叉】
881 :書いてたら安価とるべき部分もない感じになったのでもうこのまま行きます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:40:07.13 ID:lnzqQySY0
1 選択

【絶対音叉を渡した……】

雛菜「なんですか、これ〜? サスマタ〜?」

ルカ「一応音楽用品だよ、共振を起こして医療の現場で使ったりするやつの強化版だ」

雛菜「ふ〜ん……」

雛菜「あは〜、でも雛菜今この音叉を持ったら手いっぱいなんで共振どころじゃないかもですね〜」

ルカ「えっ」

雛菜「まあ透ちゃんに叩くなりしてもらえばいっか〜」

(……背筋が凍るようなこと言うなよ)

(……まあ、普通に喜んだ……よな?)

-------------------------------------------------

……一応は、解決のかたちを見た。
浅倉透のことを守れたので満足はしている、手を失ったことよりもその方がメリットとしても大きい。
何よりも、これ以上自分の手のことで落ち込むのを良しとしない。
こういうもの、としてその場を流すことを何よりも本人が求めているのだ。


雛菜「ん〜? なにか言いたいことでもあります〜?」

ルカ「……その」


でも、いざこうして二人きりになると私としては言葉に詰まらざるを得ない。
だってこの惨状をもたらしたのは他でもない自分の相方。更には自分自身がその場に居合わせていたのだから。

拳を握り込んで肩を震わせる私を見れば、流石のこいつも私の心境を理解したらしい。


雛菜「あは〜……」


こいつは普段あっけらかんとして、ワガママに生きている……様に見える。
でもその実誰よりも客観的な姿勢で、今の世の中にそうあるべきものとして認識されている固定概念だって捉えなおせる。
明確な我の中から、正しいものを見定めることができる。
そのしたたかさこそが、市川雛菜がアイドルたる所以なのだと思う。


雛菜「……朝も言いましたけど、あなたのことを恨んだりとかはないです〜」


だからこいつは、今この局面においてもなあなあになっている現状を確かめ直すことができた。
私が胸に抱える罪悪感と、実際自分の身に起きた出来事。
それと釣り合うだけの回答を淀んだ水面の奥底から掬い上げる。
882 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:41:32.83 ID:lnzqQySY0



雛菜「でも、相方さんのことは雛菜だって恨んでますよ〜」



ルカ「……えっ」


何が「えっ」なのか、自分の口から出た音に吐き気を催す。
それは腐った現実世界で生きていたがゆえに浸されていた詭弁の味。
私自身も腐っている。どんな状況でも許されることに、慣れてしまっていた。


雛菜「雛菜だって、まだまだ二十にもなってないんですからやりたいことは山ほどあった。でも、その悉くは奪われちゃったわけですし」

ルカ「……」


でも、そうじゃない。
加害側だって本当は許されることを求めているわけじゃない。
むしろその逆、憎まれて憎まれて、一生許されないことで初めて割に合う。
だからこそ現実では残酷なことに許しが与えられてしまうのだ。
それが一番加害側にとって苦しいことだから。


雛菜「そこに嘘はつけないですし〜、ついたところで嘘って丸わかりだもんね〜」


だから私からすれば事なかれ主義が横行する世の中で黙殺され続けてきた感情、それをこうして曝け出してくれたことに感謝こそしていた。
883 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:43:50.26 ID:lnzqQySY0


しかし、私はこれでもなお市川雛菜を見誤っていた。



雛菜「でも、恨んでるからってそれが全部憎しみになるわけじゃないと思うんですよね〜」



市川雛菜はそれでは終わらない。


雛菜「雛菜だって、シーズの人たちと仲良くしてもらった時間はあるし、この島での暮らしのこともあっておかしくなっちゃう気持ちは分からなくもないです〜」

雛菜「だから雛菜は、『今』じゃなくて『次』の話がしたいかな〜」


やっぱりなんだかんだ言ってワガママではあるんだと思う。
ただ、それは独善とは違う。自分の都合で動きながらも、それに振り回される人間も彼女の持つ幸福の軌道上に載せられる。
884 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:44:25.29 ID:lnzqQySY0


雛菜「この恨みに見合うだけの、『次』。雛菜のために何かしてくれないかな〜って! ほら、芸能界でも悪いことをしたら代わりに良いことをして補填しますよね〜!」


彼女は自分自身の幸福を追うと同時に、周囲に幸福を振りまく存在でもある、ということらしい。
私と美琴がまさにそう、許されないという最高の利益を被ると同時に、喜びの共有と言う贖罪の機会まで与えられる。


雛菜「一緒に甘いもの食べに行ったり、雛菜を遠くに連れてったり! 右手を失った“おかげで”できる体験が雛菜は欲しいかな〜」


これほどの回答が果たしてあっただろうか。


ルカ「……は、ハハッ……オマエ、やっぱバケモンじみてるよ」


私より年下で、ここまでのことが言えるなんて末恐ろしいとしみじみと感じた。


透「……あれ、なんかいる」

ルカ「……悪い、邪魔した」

雛菜「……? さよなら〜」


浅倉透が戻って来るのに合わせて背を向けた。
これ以上あの場所にいるのはまずい。

今の顔を見られるのは、ひどく恥ずかしいからだ。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【市川雛菜の親愛度レベル…7.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…19個】
885 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 22:47:23.00 ID:lnzqQySY0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】


部屋に戻ってからもなんだか体が震えていた。
市川雛菜の発した言葉が、妙に私の中に響いていた。

美琴の発した言葉、起こした行動。
その一つ一つに市川雛菜の言葉がぶつかって跳ね返り、私の中で乱反射している。

能天気能天気とひとり脳内で悪態をついていたが、あいつはそんな器じゃない。

……本当に、化け物だ。


【自由行動開始】

【事件発生前最後の自由行動です】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…19個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:06:14.14 ID:HSLKjFms0
1 智代子
887 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:15:43.91 ID:lnzqQySY0
1 智代子選択

【第1の島 ロケットパンチマーケット】

そういえば前回の事件の騒ぎでコテージの備蓄もなくなっていたなとふと思い出す。
別に今行かなくてもいい用事、それなのになぜわざわざこのタイミングを選ぶのだろう。
自分でも分からない答えを、棚の中に探す。
でも見つかったのはその答えではなく、向こうの棚の奥に切り取られた甘党女の顔。


智代子「あ、ルカちゃん! ルカちゃんもお菓子?」

ルカ「……別に、暇だっただけだよ」


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【ジャバイアンジュエリー】
【オスシリンダー】×2
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【七支刀】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:31:13.08 ID:HSLKjFms0
1 【ジャバの天然塩】
889 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:36:21.38 ID:lnzqQySY0

【ジャバの天然塩を渡した……】

智代子「おぉ……まさに塩、そのもの……」

ルカ「……流石に直は行くなよ?」

智代子「い、行かないよ! こういうのは料理にちょいたしするからこそ美味しいんだって、ちゃんと知ってますから!」

ルカ「あぁ……天ぷらにつけたりな」

智代子「そうそう! 調味料をちゃんと使えてこそいっぱしの料理人だよ!」

ルカ「どこに料理人がいんだよ」

(まあ、普通に喜んだか……)

-------------------------------------------------

智代子「クッキーもいいな〜、でもやっぱり定番のアーモンドチョコも外せないし……」

ルカ「……太るぞ?」

智代子「太らないよ! ……いや、太るんだけど……!!」

ルカ「……はぁ」


そういえば、花火大会の時もこいつはこんな具合だったか。
ほんの一晩の催しだというのに、食いきれないほどのお菓子をこれでもかとカゴに放り込んで。
それが本当に一晩でなくなってしまったのだから驚きだ。


智代子「だ、大丈夫! ばっちり運動すればいくら食べても大丈夫だって、昔の偉い人が言ってたし……!」

ルカ「どこの誰が言うんだ、そんな煩悩丸出しの言葉」

智代子「ま、松平……定信……さん……?」

ルカ「大飢饉凌いだ偉人に何言わせてんだ」


ふざけたことをしゃべりながらもお菓子をカゴにぶち込む手は止まらない。
いつものこいつなら、ただ欲望のままに動いているだけとしてみるのだが。


ルカ「……」

智代子「とにかく元気をつけなくっちゃ! 甘いものはいつだって私たちの味方だよ!」


……流石に今回限りは、私も邪推してしまう。
ついさっきまでの表情を裏返したような明るい言動。
自分の好きなものを選び取ったかごに入れていくその動作が、なんだかいつも以上に幼く見えた。
きっとそれは私の目が曇っているから。
先入観や偏見と言ったものを捨てきれない私だから、こいつの動作を『痛ましい』と感じてしまうのだろう。


ルカ「……なあ」


1.吹っ切れたのか?
2.もう全部、解決したのか?

↓1
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:47:30.32 ID:HSLKjFms0
1
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/21(火) 23:47:59.86 ID:vKEXs3me0
2
892 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:51:36.30 ID:lnzqQySY0
1 選択


ルカ「……吹っ切れたのか?」


私の問いかけに、甘党女の手が止まる。
私がこの質問に込めた意味を確かめているのか、息を一つついてから、斜め上を見つめた。
ついさっきのことだ、仲間と過ごした記憶やそこから生じる感傷に囚われ、引き摺られ続けて気を病んでいるところを目撃したばかり。
そんな最中で鉢合わせるなりに私を引っ張ってお菓子の棚に来て、何も思うところがないとは言わせない。


智代子「……ううん、まだ。というよりも、私はずっと吹っ切れるなんてことはないと思う。果穂のことも、夏葉ちゃんのことも……前回のコロシアイで命を落とした樹里ちゃんと凛世ちゃんのことも……何もかも」

智代子「それに、私自身このことで吹っ切れるなんてしたくないんだ。私で勝手にひと段落つけるのって、なんだか寂しい気がして」

智代子「だからね、決めたんだ。私は変わらなくていい、無理に前に進まなくたっていいって。ほら、チョコレートだって甘い物だけじゃなくて、ビターなものだってあるよね?」


はじめこいつの肩書を見た時に抱いたのは『くだらない』という感想。
名前をもじってその場でぱっと思いついたような『チョコアイドル』、どうせそこに大した戦略も展望もない、キャラ付けどまりの記号なんだと思っていた。

でも、こうしてこいつと直面するとその認識は誤りだったと思わされる。

ただ甘いだけじゃない、どれだけ厳しい現実だろうと、どれだけの苦境に立たされようとも、
向き合い続けることができる。向き合う誰かを支えることができる。

それだけの覚悟とともに背負い込んだのが『チョコアイドル』という看板だったんだろう。



智代子「私は、チョコアイドルだから。ちょっとくらい苦いぐらいが隠し味だよ!」



……こうも誇らしげに言われれば、その看板も認めざるを得ないだろう。


ルカ「……ハッ」


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【園田智代子の親愛度レベル…11.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…20個】
893 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/21(火) 23:53:50.66 ID:lnzqQySY0

というわけで自由行動終了にて本日はここまで。
突発的な更新となったのにお付き合いいただきありがとうございました。
次回はいよいよ事件発生、捜査パートまで進みます。
第4章が長かった分若干駆け足っぽく感じますが、その分事件や裁判パートは濃くなっていると思うので対戦よろしくお願いします。

次回更新は6/22(水)21:00ごろで予定しています。
それではお疲れさまでした。
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 23:59:05.29 ID:HSLKjFms0
お疲れさまでした
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 12:18:26.09 ID:75KkGKZ/0
突発的とはいえ更新に気づかなかったとは不覚……
最終日の自由行動、てっきり残りで唯一コミュ完走できそうなちょこ先輩連打してスキルもらいに行くのかと思ってたから雛菜行っててびっくりした
でもそういう個人の勝手な思い込み通りに動かないのが安価スレの醍醐味だし、それに雛菜、かわいいしつよいから仕方ないか〜

ところで多分6章だと自由行動がないと思っているので個人的な興味から作者の方に質問なんですけど、
【Scoop up Scrap】の効果でわかるアイドルに喜んでもらえるプレゼントって全部終わった後にでも一覧などで公開するつもりってありますか?
単純にどういうプレゼントだと喜ぶ想定だったのかとか逆にマイナスだったのかとかちょっと気になるので可能であれば前作のもの含めて知りたいです。
それと可能であればコミュを完走したときにもらえるアイテムとスキルについても、こちらは金の鍵の使用に影響するのでフェアに行くためにも全部完結してからでいいので、前作含めて知りたいです。
これは単純にデータベースを眺めるのが好きだから知りたいだけなので、無理にとは言わないのでよろしければ一考のほどよろしくお願いいたします。
896 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:19:26.74 ID:SuCOeezb0
>>895
【Scoop up Scrap】のアイテム判定はその場その場で持っているアイテム内で考える予定だったので特にリストとかはないですね
100個のアイテムに15人の判定つけるのは流石に無理でした
コミュ完走時のアイテムとスキルは用意してあるので、物語が終わったら載せたいですね〜
最後の一章がまた長いんですけどね……


それではそろそろ再開します
897 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:21:52.36 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

昨日の今日で、夜はまだ熱を持っているように感じた。
まだ目や耳に焼き付いている昨夜の衝突。
飛び散る血と汗、苦悶の叫び、掌の痛み、そして美琴の独白。
下手なドラマよりもよっぽど壮絶だ。
あの光景が未だこの夜に混じっているような錯覚が、喉元に汗を伝わせた。


ルカ「……美琴」


美琴が別れ際に言い残した「もう姿を見せることはない」、という宣言。
それが妙に奥深くに突き刺さって、忘れられない。
もしかして本当に、今度こそ美琴は遠くに行ってしまうんじゃないか。
この絶海の孤島、逃げ道などどこにも無いというのにその危惧が付き纏って離れない。


嫌に冴えた瞳孔に、無理やり瞼で蓋をした。

898 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:23:43.10 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

【???】


「……冬優子ちゃんは、これでもダメって言うのかな」

「わたしが、狸を止めなかったから……美琴さんは誑かされて、雛菜ちゃんとルカさんを刺しちゃった」

「雛菜ちゃんはもう右手が動かなくなっちゃった」

「もう一生、動かない」

「今回はコレで済んだけど……狸はきっとこれじゃ終わらない」

「次は守れるかどうかもわからない。次はどんな犠牲を払わなきゃいけないかもわからない」

「……わたしは、これ以上失いたくない」

「これ以上さみしくなりたくない」

「わたしは……わたしは……!」
899 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:24:51.50 ID:SuCOeezb0





「そのためなら、命だってかけてもいい」




900 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:26:03.42 ID:SuCOeezb0
____
______
________

=========
≪island life:day 25≫
=========
------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

一晩経ったが、まだナイフで裂けた傷は塞がらない。
寝起き早々に手が真っ赤に染まっていて言葉を失った。
自分でやったことではあるものの、傷としては残りそうだし、少し憂鬱になる。
顔を洗おうにも両の手で水を掬ったりはしづらいし、物を握るのも痛みが伴う状態。
どうしたものかと首をもたげた。


「……まあ、あいつはそれどころじゃないんだろうけど」


市川雛菜のことを思うと、そんな嘆きもしょうもなくかんじられる。
私は一時的でも、あいつは一生。
ずっとずっと不便がつきまとう。
それだけでなく、安息を不意に奪うような痛みも不定期に現れる。
この先数十年の人生に落とした影は、思う以上に濃い。


「……それでも、あいつはきっと笑顔なんだろうな」


レストランで待ち受けているだろう顔を想像しても、曇っているものは考え付かなかった。
901 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:27:34.90 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

【ホテル レストラン】

恋鐘「おはようルカ〜〜〜!」

智代子「おはようルカちゃん!」

ルカ「よう……」


出迎えた二人にも、その表情に曇りはない。
むしろうざったいくらいの声量で、こちらの表情が曇るくらいだ。


恋鐘「今日は何でか知らんけど、厨房の冷蔵庫は使えんくなっとったばい……故障ばしとるとやろか?」

智代子「えっ……それじゃあ今日の朝ごはんは……」

恋鐘「ばってん、うちに妥協はなか! 冷蔵庫の食材は使えんくても、他のもんで何とでもなるけん! 新鮮なフルーツでとっておきの朝ごはんを用意しておいたばい!」

智代子「いよっ! その言葉を待っていた〜!」

ルカ「……相変わらずオマエらは能天気だな」


連中はすっかり市川雛菜のペースに飲まれてしまったらしい。
昨日は後遺症やら襲撃やらでとても笑顔なんて余裕がなかったというのに、今ではすっかり元の調子。
体中の力が抜ける、間の抜けた食卓が帰ってきていた。
902 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:28:31.45 ID:SuCOeezb0

恋鐘「ほら、ルカもた〜んと食べんね! 料理は食べられてこそばい!」


相変わらず問答無用で朝食を皿に盛り付ける長崎女。


智代子「ルカちゃん、そのベーコンエッグ……要らないなら助太刀致しますぞ」


やたら仰々しい口調で余り物にありつこうと集ってくる甘党女。


雛菜「次はヨーグルトが食べたいかな〜」

透「ウィウィ、ちょっと待って。箸だとなかなかむずいから」

雛菜「透ちゃん、スプーン使わないの〜?」

透「あー……あったんだ」


ギャグ漫画でもないようなやり取りでこちらの頭を痛くするノクチルの二人組。

レストランの卓には、私が苦手で苦手で仕方ない、それでも無いなら無いで違和感を覚える喧しさがあった。




……一部分を失した形で。




903 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:30:10.85 ID:SuCOeezb0

智代子「……あれ、そういえばルカちゃん」

ルカ「あ? どうしたよ」

智代子「あさひちゃん、今日は一緒じゃないんだね」

ルカ「あさひ……?」


今朝の私は完全に抜けていた。
傷ついた自分の体を慰めるのに夢中だったのか、
荒れ果てたかつての相方を見て傷心を引き受けたからか、
悲運を悲運と見ない滑稽とすら感じる開き直りに感化されたからか、
この日ばかりの私は、かつての鋭さの全てを失った形でここに座っていた。
絶対に見落としてはいけないものに、視界の外にいることを許可してしまった。


ルカ「だ、大丈夫だろ……すぐに来るって」

智代子「……行ってあげて、ルカちゃん。不安な気持ちを隠す必要なんかないよ!」

ルカ「……誰が」

恋鐘「素直にならんね、もううちらん前でカッコつける必要なんかなか!」

ルカ「……チッ!」


なぜ手綱を離してしまったのだろう。
散々冬優子から聞かされていた『神出鬼没』、行動の予測がまるでつかない芹沢あさひという存在。
誰よりも彼女の理解者たる冬優子ですら、匙を投げていた。
それにこの島のルールという危険因子が絡んでいる今、ほんのわずかな間の所在なさですら私たちの血の気を引かせるには十分すぎた。

音を立てて引いた椅子、その足を蹴飛ばすようにして入り口へ。
もつれかける足取りも他所に、ドアノブに手をかけた。
そこで思いっきり引けば、あの嫌味ったらしい快晴の太陽が私たちを見下ろしている。
904 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:31:03.51 ID:SuCOeezb0


_____そのはずだった。



「……え?」




ガスマスクの向こう側、ガラス玉のような碧い瞳は、私のことを見上げていた。



905 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:31:44.01 ID:SuCOeezb0



ブシュウウウウウウ!!



906 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:32:49.80 ID:SuCOeezb0

(なんだ……何が起きた……?)

真正面から煙を浴びて、後退。
もといた机の足元に不格好にも尻餅をつく形で倒れ込む。
どうして私がこうも不細工な転倒を晒したといえば、手足の末梢から徐々に弛緩を始めていたため。
口から入った煙は一瞬で全身に行き届き、既に体は言うことを訊かなくなっていた。

ガッシャーン!!

おかげさまで机の上のコーヒーまでひっかけてしまった。
ただ、もうそれを拭うほどの力も手には籠らない。
お腹のあたりにコーヒーの温度を感じながら、悶える声だけを漏らす。
徐々に意識と体をつなぐ縄は解け、糸になり、やがて宙ぶらりん。

頬に感じるフローリングの冷たさと低空の埃っぽい空気を感じながら、閉じゆく瞼に彼女の姿を捉えていた。

顔は見えずとも、小柄な彼女のシルエットは見紛うはずもない。

907 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:33:43.70 ID:SuCOeezb0





_____あさひそのものだった。





908 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:34:42.28 ID:SuCOeezb0


_____


_______


__________


909 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:36:41.12 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

【???】


「う、うぅ……」



まず感じたのは居心地の悪さ。

自分の意思でなく折り畳まれた体はそれだけで痛むし、この狭っ苦しい空間ではすぐに手脚を伸ばすこともできず。
身を捩っただけで筋肉痛のようなものが走る。

体をあちこちにぶつけながら夜目ができてくると共に、自分のいるこの空間もその正体がわかってきた。
やけに頑丈なつくりで、洞穴のようにゴツゴツとした表面。
それでいて私が横になってちょうどくらいのサイズ感の空間。
そこら中でネオン色の部品が発光していることを見ても、
今私がいる空間を称するのにふさわしい言葉は【コックピット】というものだと納得した。
910 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:39:13.31 ID:SuCOeezb0

頭をぶつけないように、ゆっくりと前屈みに身を起こした。
よくみるとすぐそばに操縦桿と座席とが一体になったコーナーがある。
ずっと床に転がっていたせいで体がバキバキだ。
少しでも柔らかい材質に触れたくて、私は椅子の上に腰掛けた。

所詮は乗り物のシート。
そこまで上等な感触では無かったが、床に転がっているよりはマシだ。
ふぅっと息をついて、やっと事態を把握する気が起きた。


……さて、これはどうしたことだろうか。


レストランで何者かが突然姿を表したかと思うと、私の意識はすぐに体を離れていき、体中を暗黒が浸した。
かと思うと、次に瞼を開けたときには既にこのコックピットの中。
全身に鈍い痛みを走らせながら、ここでどれほどの時間を過ごしたのだろう。

911 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:40:19.13 ID:SuCOeezb0

それに大体、誰が私をここに?
なんのために? どうやって?
そして、ここは一体なんのコックピットなんだ?

冷静が疑問の五線譜を作り出し、私の神経回路は脳髄の指示に従って活動を開始。
五感でコックピットのその先を手繰り寄せる。

聞こえてくる音は、火花の音。
機械のメンテナンスをどこかでしているのか、バチバチとした音が遠くに聞こえる。

感じる匂いは、オイルの匂い。
私が今いる場所は、どうやら何かの整備場のよう、ガソリンスタンドで嗅いだ匂いが鼻をくすぐる。

触れる機械は、初めてのもの。
見たこともない操縦桿はちゃんとした手順を踏まないと動作しそうにない。
私では一ミリ前に進めることすらできなさそうだ。



……そして何よりも。



912 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:41:08.34 ID:SuCOeezb0

私のいるコックピットの上半分はガラス張りになっていた。
私の乗る『何か』の状態に応じて視認性は良くなるらしい。
今はスリープ状態なのか、ガラスは少しすりガラスのようで薄靄のかかったような視界だ。
それでも一番の情報は目から入る。
とにかく事態を見極めるべく、眼球がガラスにぶつかるぐらいの距離まで目をそこに近づけた。
細めにして、片開き。

ガラス一枚隔てた世界を見定めるべく、近づけて……



___【それ】を、見た。



913 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:42:39.64 ID:SuCOeezb0





【首のない死体が、エグイサルの取り囲む中央で椅子に座っていた】





914 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:43:44.33 ID:SuCOeezb0
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CHAPTER 05

Killer×Miss-aiōn

非日常編



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915 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:45:10.52 ID:SuCOeezb0


昏く、狭い、箱舟の中。


大波に揺られ、嵐に押され、その中に大事に保管された命をどこまでも運んでいく。
外からの声など届くはずもなく、外からの光だけがわずかに差し込んでくる。
内側から外側を見ることも許されず、運ばれる者はただ、その暗闇と静寂の中で己自信と対峙して時間を流れるのを待つだけ。

永遠とも一瞬ともとれるだけの時間が経って、ようやく。

天板が外れ、やっと陽の光を浴びるときがやってくる。
箱舟を出、手を天に向かって掲げ、うんと伸びをして初めて。


____運ばれた者は、滅んだ世界を目にすることになる。


916 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:46:38.11 ID:SuCOeezb0
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厚みはどれほどだろうか。

私の通う事務所の窓は多分1cmの厚さもない。
小動物や風に運ばれた小石が部屋に侵入するのを防げさえすればいい、それだけの窓なのだからそれで十分なのだ。

では、この窓はどうだろう。
おそらく軍用の機体であるこの『エグイサル』のコックピットを覆う窓がそんなやわなものと一緒で許されるはずもない。
きっと多少の銃弾なら防げるぐらいには分厚くて、特殊な加工もなされているはず。
その甲斐あって私はこのコックピットの中で、外の世界で何が起きているのかを悟ることすらなく、
そしてすべてが起き、終わった後でも……近づくことすらできなかった。


「おい……なんだよ、あれ……何が起きてんだ……誰が死んでんだ……!!」


エグイサルが取り囲む中、椅子に座って無い首から血をだくだくと流している変死体。
コックピットの中で狼狽えるほかない私を嘲笑うように、アナウンスが鳴った。
917 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:48:38.44 ID:SuCOeezb0


ピンポンパンポ-ン!!

『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』


3人以上の人間が死体を発見すると鳴るアナウンス。
これが鳴り響いたということは、私で3人目にカウントされるということだろうか。
その推理すら成立しないほど、このコックピットからでは状況がまるで見えてこない。

そしてモノクマはどこから姿を現すかと思うと……

ザザッ……

『……大丈夫? 相当参ってるみたいだね。無理もないか……突然こんなことに巻き込まれちゃって』


コックピットのガラスの表面に突然に浮かび上がってきた。
918 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:51:17.24 ID:SuCOeezb0

ロボットアニメなんかで見たことがある、このガラスはスクリーンモニタも兼ねているのだ。
同じ舞台を組む仲間や、戦闘中に地図を画面上に展開して戦闘を補助する近未来的な技術。
それが標準搭載されているらしく、モノクマは悠々とワイングラスを傾けながら私たちの前に姿を現した。


「モノクマ……! これはどういうことなんだ、説明しやがれ!」


画面にかじりついて問いただすも、モノクマはその表情を少し動かさない。


『やれやれ……説明だなんだと言われましても、それはこっちのセリフなんだよね。ボクはこのコロシアイのゲームマスターではあるけど参加者ではないんだ』

「だからって……オマエには説明義務があるだろ! コロシアイを……学級裁判を強いるんだったら、自分たちの置かれている状況を知る権利が私たちにはあるはずだ!」

『……まあ、最小限の情報だけ教えてやるけどさ。お察しの通り、オマエラは今、全員エグイサルのコックピットの中にいます。きっかり一台につき一人ね』


なるほど、死体発見アナウンスが流れたのはそう言うことか。
このガラスは外から内側が見えにくい作り。今こうして他の機体のガラスが真っ暗に見えていてもその裏には見知った顔の誰かが潜んでいるという訳だ。
919 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:52:55.67 ID:SuCOeezb0


『そして、エグイサルが収められているのは探索の時と同じくワダツミインダストリアルだよ。ここの整備工場の中で事件は起きたんだ』


遠くに聞こえる火花を散らすような音の正体もこれで説明がついた。
あの工場では常に軍用兵器と思しきものを取り扱っており、耳を劈くような音がそこら中で鳴り響いていた。
この遮音性の高そうなコックピットでもその音が聞こえてくるのは、今も工場が稼働中だからなのだろう。


『オマエラの目の前……中央で座っている首のない死体。これから始まる学級裁判ではオマエラにこの死体を殺したクロを議論してもらいます』

「……ちょっと待て、なんだその口ぶりは」

『ん?』

「あの死体は誰なんだ? それを知らないことには学級裁判なんて____」
920 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:54:09.08 ID:SuCOeezb0





『さあね? その死体が誰かなんて……ボクも教えられないな』




921 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:55:01.62 ID:SuCOeezb0

「……は? オマエ、何言って……」

『うぷぷぷ……今回のクロには、ボクはすごくす〜ごく感謝してるんだ。これで事件も5つ目、展開的にも誰が死ぬかなんて見えすいてきたし、いい加減事件もマンネリ』

『そんなところで、こんなスパイスを混ぜてくれるんだから!』


モノクマは私の狼狽っぷりを認めるなり矢継ぎ早に言葉を並べ立てる。
命を己が掌に載せ、圧倒的優位に立っている側だからこその余裕綽々っぷりで悦に浸る。
その言葉が続くたびに私の胸は不愉快な鼓動を繋ぎ、そしてそのたびに不穏な埃が心臓を包んだ。

そして、モノクマの浸っていた悦の正体が徐々に姿を現していく。
未就学児のような無邪気さで、嬉々として命を弄ぶ残酷さで、空想小説のように突き抜けた突拍子のなさで塗り固められた、ガチガチの『悦』。

それを一言で称するなら、『好奇心』なんだと思う。
私たちが命を懸けて臨む場で、どう転がるのかを見て、笑ってやろうというのがあまりにも透けて見えているのが不愉快を極めた。
922 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:56:34.02 ID:SuCOeezb0





『今回の学級裁判は誰が死んだのか、そして誰が生き残っているのかもわからない状態で議論をしてもらいまーす!』





923 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:58:10.09 ID:SuCOeezb0

「……は?」

『今言った通りだよ! オマエの他にも、ここにあるエグイサルにはそれぞれ生存者が一人ずつ搭乗しております。ですが、その正体を見た目からは勿論、声からも当てることは不可能です!』

『学級裁判ではそんなアンノウンな状態の相手と舌戦を行い、時には協力して、推理を行い犯人を明らかにしてもらいます!』


……馬鹿げている。
あまりにも、馬鹿げすぎている。
これまでに挑んだ4つの学級裁判だって荒唐無稽な話だ。
齢20前後の女を集めて、その中に潜む殺人犯を見つけ出す……なんてどこのB級映画だという話。
それなのに、誰が死んだか誰が生きているかも話からに状態から犯人を見つけ出せ……なんて。


「いい加減にしろよテメェ……!」

『ん?』

「ただでさえ博打みたいなもんなのに、そんな目に賭けてられっかよ……!」

『ふーん、もしかして自信がないの? お仲間の顔を見ながらじゃないと安心して議論ができないの?』

「そんな安い挑発に乗るかよ……私たちは自分の命を懸けて学級裁判をやってんだ、そんなオマエの一回の思いつきに振り回されるわけにゃいかねえんだよ」
924 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 21:59:30.23 ID:SuCOeezb0

『そんなこと言われてもなぁ……今のこの状況に持ち込んだのはオマエラの中のクロなんだよ?』

「あ?」

『あの死体が誰かわからないように細工をしたのも、エグイサルの中に他の人間を乗せたのも、ぜ〜んぶやったのはオマエラの中に潜むクロ! ボクの思いつきっていうよりはクロの犯行計画なんだよね』

『ボクはその意思を汲んで、このルールを提示しただけ。むしろここでオマエラの要求する情報を開示するとフェアじゃなくなると思うけど』


もはや公平だとか不公平だとかそういう議論の上にはないのだが、モノクマは譲る気はなかった。
そりゃそうだ、こいつからすればクロのこの一策は最高の酒のつまみ。
私がいくら正当な主張をしても認めないのは目に見えた。


「……でも、どうやって学級裁判なんかやるんだよ。このコックピットからじゃ議論なんかできねえし、動くことだってままならねえぞ」

『ああ、それは大丈夫だよ。エグイサルはリモートコントロールが可能だからね。すぐに外が見れるように電気もつけてあげるし、時間になれば裁判場まで連れて行ってあげる』

『それに議論は……うぷぷぷ、とっておきの機能があるからお楽しみに!』

925 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:00:36.75 ID:SuCOeezb0

神経を逆撫でする喋り方だが、どうやら学級裁判の進行には問題なし、捜査もできるとのことらしい。
ウダウダいう前にとにかくやれ、と言わんばかりにすぐに電子生徒手帳にはモノクマファイルの情報がダウンロードされた。


『今回の被害者は不明。死亡推定時刻は午前10時前後、殺害現場となったのはワダツミインダストリアル内エグイサル整備工場。首は根本から両断されており、頭部は確認できず。体の部分にはローブのようなものが被さられ、シルエットが見えなくなっている。胴と首を切り離した瞬間に即死だったと断定』


……まあそりゃそうだよな。
首をぶった切られて生きていられる生物はもはや生物ですらない。
しかし、犯人の奴はどうやって首を切ったというんだろう。
人間の首には人体でも随一の太さと強度を誇る骨が通っているはずだ。
生半可な刃物では骨に傷をつけることもままならない。
無論それでも動脈を傷つければ失血死には足ると思うが、わざわざ犯人は切り離すところまでやっている。
凶器を特定することが、解明への大きな一歩となりそうだ。


コトダマゲット!【モノクマファイル5】
〔今回の被害者は不明。死亡推定時刻は午前10時前後、殺害現場となったのはワダツミインダストリアル内エグイサル整備工場。首は根本から両断されており、頭部は確認できず。体の部分にはローブのようなものが被さられ、シルエットが見えなくなっている。胴と首を切り離した瞬間に即死だったと断定〕

926 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:02:01.19 ID:SuCOeezb0
-------------------------------------------------

「で、捜査ってのはどうやればいいんだよ。まさかこのエグイサルを操縦しろっていうんじゃないだろうな」

『そんなことは言わないって。エグイサルの操縦には専用のリモコンが必要だしね、内部のマニュアル操作は……なんかめんどくさいからパス!』

「はぁ……」

『その代わり、エグイサルアイは自由自在に使えるよ! 窓から見たいところをピンチアウトしてくれれば自動でズームするから、隅々まで見てやってちょうだいな!』

『あと動かしてみたいとか要望があればその都度ボクを呼んでね! できる範囲で協力するよ!』


本当にこの状態のまま操作を行うんだな…

……今頃他の連中もエグイサルの中で同じ説明を受けているんだろう。
コミュニケーションどころか言葉を交わすこともできないんじゃ協力は難しいが、戦っているのは私一人じゃない。
それぞれがこの手足を伸ばしてやっとの空間で出来ることをやる。

……他のことなど何もできないんだから。

927 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:03:05.40 ID:SuCOeezb0

流石に不可解な状況では私にも蒙昧とした不安が付きまとった。
こんなところで得られる情報でどこまで戦えるのか、自分の手で触れぬ証拠に信用ができるのか。
そして、これから先に待ち受ける学級裁判がどんなものになるのか。
何よりも怖いのは、『わからない』ことだと嫌でも痛感する。
人は指針に縋って生きている。
依り代らしい依り代が無い状況下では、何も無くとも胸がざわついて、呼吸が浅くなるらしい。

そこで私は、昔気まぐれに読んだ小説を思い出した。
イギリスかどこかの国で、脚を弱らせた老人がパイプをふかしながら探偵業を営む。
狭い居住空間から一歩も出ることもなく、椅子の上で論理を転がして事件を解決する。
そんな話だった。
確かガキの頃に、ママにたまには活字でも読んでみろと渡された本だったように思う。

どうしてこんなものを思い出したのか、それは目先の縋るものを失った本能が、過去に縋るものを求めたから。
ただその見苦しい姿勢はこの局面ではある種正解だったのかもしれない。

安楽椅子に腰かけた老爺の姿を思い浮かべると、体の震えが止んだからだ。

……あんな耄碌一歩手前のジジイにできること、私にできないはずもない。

私が座っているのはコックピット。
古ぼけた木製の椅子に比べると、随分と座り心地もいいし、この椅子は機能性だって抜群だ。




____上等。




【捜査開始】


928 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:04:55.77 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

さて、どうやって調べたものか。
エグイサルの操作ができないのは再三確認している通り。
あくまでここから動かないで捜査を行うのが今回のスタンスだ。
つまり基本的には『視る』ことに頼らねばならない。
ここから目視で調べるべきだと思うのは……

やはり【死体】は外せない。
……ここからも首の断面が確認できて少し気分が良くないが、致し方ないだろう。

そして、今自分たちの乗るエグイサルもいる工場、その【工場内設備】は調べたいな。
ワダツミインダストリアルも何度か足を踏み入れてはいるが、そこまで入念に調べたことはない。

工場を調べるなら、今のコックピットからは死角になっている【エグイサルの背後】も見ておきたいな。
モノクマは要望さえ出せば応じてくれそうな態度だったし、これくらいなら許されるだろう……

加えて、私の乗っている以外の【並んでいるエグイサル】も注視しておこう。
自分の乗っている機体と同機種、外観を見ておくことは意味があるはずだ。

忘れちゃいけないのが、この【コックピット内部】の捜査だ。
私たちの放り込まれているこの空間だって、何の意味もないはずがない。
出来る範囲で情報を拾い集めるぞ。

更には、今回の事件は【私自身】も当事者なんだ。
自分が知らずのうちに情報を握っている可能性も十分にある。服とかポケットとか、忘れずに確認しておこうか。

大体調べられるのはこのあたりか?
調べ忘れが無いように、入念に当たっていくとするか……

1.死体
2.工場内設備
3.エグイサルの背後
4.並んでいるエグイサル
5.コックピット内部
6.ルカ自身

↓1
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:08:40.34 ID:Z9qDEv5C0
1
930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:10:03.41 ID:Lqsa33W30
1
931 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:13:33.51 ID:SuCOeezb0
1 選択
------------------------------------------------

【死体】

まあまずはあの死体をよく見てみないことには何も始まらないよな……
顔を窓に近づけて、死体を指でピンチアウト。
窓の液晶には凄惨な首無し死体がデカデカと映し出された。


「……チッ」


見れば見るほどに異様だ。
首は見事なキレ筋というべきか、一切乱れのない直線ですっぱりと切れている。
どれほど切れ味のいい刃物でも、なかなかこうはならない。
それに、死体の身元特定を妨げるためか全身にローブのようなものがかけられてシルエットが隠されている。


「あの布……何だか妙だな」


しかし、シルエットを隠す目的にしては布は妙にぎらついていた。
天井の照明をこちらに反射させ、擦れた時にはかしゃかしゃという音が立つ。


「あれ……アルミシートか」

932 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:14:31.93 ID:SuCOeezb0


≪「大丈夫、このシートの裏に隠れていれば見つからないから」
「な、何を……」
「夏葉さんと同じ……赤外線カメラは、アルミシートの裏にあるものを判別できない」
「……!」
「……静かにしてて」≫


つい最近、私はあのシートを見た。
それどころかあれを被りすらした。
第5の島が解禁されて間も無く、当日夜。
このワダツミインダストリアルに忍び込んだ私はエグイサルに存在を感知され、あわや襲われかけた。
そこを赤外線センサーを無効化するアルミシートを美琴に被せられ九死に一生を得たのだった。


「あのシート、この工場の中に置いてあったのか……?」


工場に置いてあったからうってつけ、ということなのだろうか?
死体の素性を隠すための布にしては、目立つすぎるような気もするが……気にしすぎだろうか?


コトダマゲット!【死体上のシート】
〔死体のシルエットを隠して素性を隠す目的でかけられたアルミのシート。数日前に美琴がこのシートをエグイサルの索敵から逃れるために用いた〕

933 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:15:33.99 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

「しかし犯人はどういうつもりなんだろうな……」


学級裁判で争われるのは犯人が誰か、ということ。
被害者が誰であろうとその中身を問われることはない。
無論、候補者の選定に一定の妨害効果はあるだろうが……ここまでして隠蔽を行う必要はあるのだろうか。


「……周到だな」


特に手袋まで死体に着用させている辺り、余念がない。
市川雛菜と私は掌にあからさまな傷跡がある。
死体の掌を明らかにすればそれが私たちかそうでないかすぐに分かり、候補を絞ることになりかねない。
ちゃんとそこまで考えられているようだ。


「……ん?」


レザー製の手袋を観察すると、一部分に気になった場所がある。
あらためてそこをピンチアウト。
ズームにズームを重ねることで流石に解像度は落ちるが……私の違和感を明らかにするにはそれでも足りた。

その手袋は、左手の一部分、指先だけが少しだけ破れているのだ。
本当に少し、糸のほつれぐらいの違いだが……新品同然に見える手袋だと際立って見える。


「……一応、覚えておくか」


コトダマゲット!【死体の手袋】
〔首のない死体の着用していた手袋。レザー製で新品同然だが、左手の指先だけ破れている〕

934 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:16:54.87 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

捜査の基本と言えば死体から流れた血、その跡を辿ること。
これまでの事件でも、死体が動かされた可能性や別の場所で争った可能性を検討するうえで何度も調べてみたものだが今回はどうだろうか。

今回の死体は見た目の異様さも際立つ。
死因となったであろう首の両断はかなりの血しぶきも跳んだだろう。
不自然な血痕の流れがあればすぐにわかるはずだ。
死体の足元付近からその周りを指先でピンチアウトする。

何かを引きずったり、持ち出したりしたような分かりやすい形跡は見当たらない。
死体の首はなくなっているし、持ち出した時に血が垂れたりしそうなものだがそれがないということは、
犯人は布か何かにくるんでどこかによこしたのだろうか?


「しかし、この犯行でこうも証拠を残さないなんてことがあり得るのか?」


私が引っ掛かるのは手口の割に証拠が少なすぎること。
先ほども言及したが、首を両断すればそれだけの返り血を受けるのは必然。
レインコートを着ていようがなんだろうが、液体が付着すれば当然滴り落ちる。
犯人の行動を示す何らかのものは残らねばいけないのだ。

だが、まるで犯人はその場で忽然と姿を消したようで、靴の痕も全く残っちゃいない。
935 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:18:32.36 ID:SuCOeezb0

「どうやって犯人は首を刎ねたっつーんだ……?」


まさか遠距離で首を刎ねるような方法でもあるのだろうか。
結局、今回もその手口を明らかにせねば真実に近づくことは難しそうだ。


「……ん?」


はじめは気づかなかったが、よく見ると証拠がないわけではない。
靴のような分かりやすい形状でないし、他の血しぶきと混ざっているから分かりづらいが……一部だけ、散らばっている『点』に不自然なものがある。
同じ大きさの『点』の血痕が部分的に連なっている箇所があるのだ。
しかもその『点』はどこに辿り着くでもなく、突然に終わりを迎える。
そこにはエグイサルは勿論扉などもなく、見上げた先にダクトがあるだけ。
人間の力じゃどうやっても辿り着かない場所だ。

これも犯人の工作の一部なのだろうか……?


コトダマゲット!【点の血痕】
〔死体発見現場にあった不自然な血痕。同じ大きさの点が連なり血だまりから伸びているかと思うと、ダクトの下で突然に消えていた〕

------------------------------------------------

さて、ここで調べられるのはこれくらいか……

1.工場内設備
2.エグイサルの背後
3.並んでいるエグイサル
4.コックピット内部
5.ルカ自身

↓1
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:21:09.88 ID:Z9qDEv5C0
1
937 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:23:04.96 ID:SuCOeezb0
1 選択
------------------------------------------------
【工場内設備】

工場内の設備を観察する。
コックピットのガラスがあるので流石に360度まるまるというわけにはいかないが、天井を仰ぎ見ることぐらいはできた。

エグイサルを収容するだけあり天井はかなりの高さ。
高校の体育館、あるいはそれ以上の高さがあるだろう。
そんな高みを支えているのが分厚い鉄板と太い鉄骨。
灰色の骨組みが剥き出しになった構造は、マニアからすれば垂涎ものの建築だろう。
でも、この時私の目を引いたのはその無骨な作りではなく、それに付随するもの。
蝿が料理に止まったかのように、さりげなく、そこにあった。


「……監視カメラか」


私たちを見下ろすように取り付けられたカメラ。
その画角からして、エグイサル六台をしっかりととらえた上で、中央の死体の座る椅子も収められていることが予測できた。
938 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:24:10.08 ID:SuCOeezb0


「おい、モノクマ! あの監視カメラの映像……見られるか?」

『はいはい、ちょっと待ってね! コックピットのモニターと同期いたしますぞ!』


ブブ……ブーン


暫く待つと、目の前の窓に私たち自身が乗るエグイサルを見下ろす構図の映像が流れ始めた。
時刻は午前9時半ごろ、レストランでの騒動が起きてから暫く経った時刻で、モノクマファイルに記載されていた事件発生時刻から少し前の時刻に当たる。

この場にいるエグイサル全員を俯瞰するような構図。
エグイサルが円形に並んでいることもあり、画角として収まりは悪くない。
その中にぽつんと置かれたアルミ製の椅子。

そこに腰掛けているのが……



「あさひ、か……?」


939 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:25:36.55 ID:SuCOeezb0

私たちをレストランで襲った時と同じくガスマスクを装着した状態であさひはそこにいた。
顔の前面が覆われてはいるものの、髪色や服装、それに小ぶりなシルエットからしても本人まず間違いはないだろう。
あさひはあさひらしからぬ大人しさで、そこにじっとしていた。


「何やってんだ……?」


何も起きていない、ただ座っているだけなのになぜか胸がざわついた。
このまま映像を見ていると、きっと良くないことが起きる。
そんな予感が走ったのも束の間。


ザザザザザ…!!!

映像に亀裂が走る。
突如として砂嵐に覆われ、エグイサルもろともあさひも闇の中へ。


「お、おい……!? なんで……!?」


画面に抗議の声を上げるも無論私の意思は跳ね除けて、モニターは黙り込む。
940 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:26:39.12 ID:SuCOeezb0

苛立ちが募る最中、モノクマが画面に割って姿を表した。


『あー、映像データが破損しちゃってますねこりゃ』
「ふざけんな! 破損も何も、オマエの恣意的な編集なんじゃねーのか?!」


当然の帰結だ。
こんな状況下で、与えられる情報にさらに制限がかかるようなら私だって黙っちゃいられない。
でも、モノクマは平然と真っ向から私の訴求を棄却する。


『それは言いがかりというやつだよ。根拠もない、ただの感情の当てつけで罪を被せられても参っちゃうなあ』
「じゃあこりゃ一体何なんだ! 説明しろ!」
『最初に言ったでしょ? 映像データが破損しちゃってるって。これは誰かが意図的に切り取ったんじゃなくて、カメラ側のアクシデント! わかる? ドゥユーアンダスタン?』


確かに誰かが編集したにしてはお粗末すぎる。
砂嵐で画面を覆い尽くして不都合を消す、なんてこの部分を疑ってほしいと言っているようなもの。
やるならちゃんとしたカット編集なりなんなりを施すはずだ。
モノクマの主張には一定の妥当性が認められた。
941 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:28:15.33 ID:SuCOeezb0

『破損している部分を確認するのは諦めてもらうしかないけどさ、続きなら見れそうだからそれで勘弁してよ』
「……チッ、だったらその続きとやらをさっさと見せな。これ以上イラつかせるなよ」
『はいはーい』


モノクマが姿を消すと、砂嵐は倍速で流れていった。
そのまま待つこと数十秒、モニターには再びあの構図の映像が流れ始めた。


「……は?」


でも、砂嵐で途切れる前と後では、大きな違いがあった。
それは……エグイサルに取り囲まれた中心。
あの椅子に腰掛けている人物。



芹沢あさひが先ほどまで腰掛けていた椅子には、首のない死体が鎮座していたのである。



「お、おい……これって……!?」


コトダマゲット!【監視カメラ:ワダツミインダストリアル内部】
〔ワダツミインダストリアルの工場天井に取り付けられていた監視カメラ映像。エグイサルが一つの椅子を取り囲む画角で撮影されており、はじめはあさひがその椅子に腰掛けていた。途中で映像データの破損を挟むと、その椅子に座っていた人間が首のない死体にすり替わっていた〕

942 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:29:59.50 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

「モノクマ……これ、どういう意味だよ!? この映像……まるで、あさひが死んだみたいな……!」
『映像の解釈に関してはノーコメント! そこから先の領分はオマエラで話し合うことでしょ?』
「……クソッ!」


違う、そんなわけない。
そうと分かっていながらも、この映像を見せられると流石に私も正気じゃいられない。
叫び出しそうな気持ちをなんとか抑え込みながら、改めて映像を検証する。
重要なのは、この破損した部分のデータであるのは間違いない。
この空白の時間のうちに、椅子の上には首のない死体が現れる。
つまり本来は殺害現場もその証拠が撮影されていたはずなのである。
なのに、都合よくそこだけ映像データが破損するなんて……

どうにか破損部分に繋がる情報がないか、映像を巻き戻したり早送りしたり、あれこれ試行錯誤していると私はあるものが気になった。


「そういえばあさひのやつ……このガスマスク、どうしたんだろうな」

943 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:31:30.76 ID:SuCOeezb0

それは本筋とは異なった関心。
何度も映像を繰り返すうちに、あさひの顔を隠しているそれが気になった。
死体では頭部が消失していることもおそらく起因するのだろうが、
天衣無縫な彼女がゴテゴテとしたものを身につけていることがもの珍しく、私にはその理由が気になって仕方なかった。


「なあ、モノクマ。このガスマスク……詳細はわかるか?」

『ガスマスク? ああ、この人がつけているマスクのことだね?』

(個人名はあくまで伏せるんだな……)

『このマスクはロケットパンチマーケットで購入可能なもので何も特別なものではないよ。呼吸フィルターに灰色のガラス、強化プラスチックとご家庭にご用意可能な素材で製作されております!』

「どこがだよ……」


材料のことはさておいて、あさひが私たちを眠らせてからワダツミインダストリアルにいる時もずっとガスマスクをつけていたことは記憶しておいた方がいいかもな。
この映像も裏付けになるし、あさひの行動を辿るヒントになりそうだ……!


コトダマゲット!【ガスマスク】
〔ロケットパンチマーケットで入手可能なガスマスク。呼吸フィルターに灰色のガラス、強化プラスチックで作られている。レストランの襲撃時から事件当時まで、あさひはずっとマスクをつけていた〕

------------------------------------------------

さて、ここで調べられるのはこれくらいか……

1.エグイサルの背後
2.並んでいるエグイサル
3.コックピット内部
4.ルカ自身

↓1
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:33:00.72 ID:J6Y7OAnE0
4
945 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:35:15.46 ID:SuCOeezb0
4 選択
------------------------------------------------

【ルカ自身】

エグイサルを出て捜査は出来ずとも、今私自身が何か証拠を持っている可能性はないだろうか?
レストランで意識を失ってここに至るまで、結構大掛かりな移動をしているわけで。
無意識のうちに何かを掴んでいたり、ポケットに突っ込んでおいて何かが役に足ったり、そんなことに縋らざるを得ない状況下だ。
ごそごそと自分の懐をまさぐってみると、指の先に服の元は違った布地が当たる。
すべすべとして上質な布は、つぼみのように物を包み込んで上部で口を閉じている。


「……これは、浅倉透にもらったお守りか」

946 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:36:09.08 ID:SuCOeezb0

第五の島が解禁されてすぐ、浅倉透が生き残っている面々に手作りのお守りをプレゼントした。
私たちが無事にこの難局を乗り切れるように、もう誰も欠けることがないように。
神にも縋る気持ちで作ったんだろう。
そんなものを大事に持っている私も、いつからか考えると信じがたいものだ。


「……」


こんなことを思うのも不躾だとは思う。
願掛けに実際の効用なんて期待する方が悪い。
それは当然その通りではあるのだが……


「全く、お守りの効果はなかった……な」


コトダマゲット!【透のお守り】
〔第五の島が解禁されてすぐに浅倉透が生き残りのメンバーに手渡したお手製のお守り〕

947 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:37:21.12 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

他に何かないかともう片方のポケットも探ってみる。
すると今度はカサッという音を立てて乾いた感触が指先を刺激した。
折り目正しくきっちりと折られていて、それでいて私自身も丁寧に取り扱っているので汚れひとつない。


「冬優子……オマエの期待に応えられなくて、悪かったな」


あさひが私の部屋に入ってきてやむなくポケットに突っこんだままだった冬優子の黄泉からの手紙が、まだそこにあった。
前回の事件、有栖川夏葉殺しの裁判終わりに私のコテージ前ポストに投函されていた1通の手紙は冬優子が裁判に挑む前に遺したもの。
最後の最後まで冬優子らしく、有無を言わさず私に無理やり謎を押し付ける手紙。
なかなかカチンとくる文面ではあるのだが、冬優子亡き今、私とあいつとを繋ぐものはこれ1枚きり。
そう雑に扱うことなどできないのだ。


「……あさひを、私に託してくれたのに」


他ならぬ存在となった私と冬優子。その別れ際に目にかけてきた大切な妹分を私に託してくれた。
私なら、あさひを冬優子に代わって守れると信じてくれた。
948 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:38:09.32 ID:SuCOeezb0

でも、実際はどうだ?
あいつの手綱を握るどころか御しきれず、しまいにはこんな事件まで引き起こされてしまった。
もしこれで裁判に負けて私が死にでもしたら、地獄行きは免れられないことだろう。

……いや、その前に冬優子にひっぱたかれるだろうな。


「チッ……」


冬優子のやつにひっぱたれるのも癪だし、やはり私には生き残る以外の選択肢はないらしい。
そうでないと、あいつが託したもう一つの物も報われないからだ。
それは……写真。
前回のコロシアイの生き残りとされる五人、そして私をはじめとした今回の参加者。
それが一枚に収まったあの写真を検証もまだしていないし、検証すべきかどうかも分からない。
ただ、謎を謎のままで終わらせるべきでないことだけは確かだ。



____やっぱり、死ぬわけにはいかない。



コトダマゲット!【冬優子の手紙】
〔前回の事件終わり、ルカの部屋のポストに投函されていた冬優子からの手紙。裁判前に書かれたもので、詳細不明の一枚の写真も同封されていた〕

949 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:39:24.11 ID:SuCOeezb0
------------------------------------------------

そういえば……私は意識を失う直前に卓上のコーヒーを引っかけたんじゃなかったか?
催眠ガスを吸い込んですぐに力を失って手がぶつかり、腹のあたりにコーヒーをかけてしまった。
意識があればすぐにぬぐったんだが、時間も経ってしまっているだろうし、もう落ちないシミになっているだろうな……

そう思って自分の腹のあたりに手を触れる。
経った時間がどれほどかは分からないが、流石にコーヒーが渇くほどではないらしく、すぐに布の湿った感触がした。

ああ、結構気に入っている服ではあったのに……
今度は目視でそのシミを確認してやろうとした。

でも、私の目が捉えたのはコーヒーの黒茶色のシミなんかではなかった。


「な、なんだよこれ……」

950 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:40:23.54 ID:SuCOeezb0

そこにあったのは、こすれた部分が青色に変色していた異常なシミ。
凡そコーヒーからは抽出できないだろう色素がそこに鎮座していたのである。

思わずさっき触れた手を鼻のあたりに近づける。
香りは確かにコーヒーだ。
だが、よく味わってみるとなんだか匂いの中には異物が混ざり込んでいるような気もする。
妙な甘ったるさと言うか、コーヒーとは決して相いれない風味だ。

「これは一体……?」

私があの時口にしようとしていたコーヒー……なんだか妙だぞ……


コトダマゲット!【コーヒーのシミ】
〔ルカが意識を失う直前に、自分の服に引っ掛けて作ったコーヒーのシミ。なぜか青色の色素の混じったシミになっていて、匂いも純粋なコーヒーのものではない〕

------------------------------------------------

さて、ここで調べられるのはこれくらいか……

1.エグイサルの背後
2.並んでいるエグイサル
3.コックピット内部

↓1
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:43:01.27 ID:J6Y7OAnE0
1
952 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:45:41.22 ID:SuCOeezb0
1 選択

------------------------------------------------
【乗っているエグイサルの背後】

エグイサルは死体を取り囲むようになっているので、自然と目線カメラもその方向に向く。
全員で死体を見下ろすような視点と考えればいい。
とはいえ、ここはワダツミインダストリアルという建物の中。
エグイサルが見ている場所以外にも当然空間は広がっている。


「背後の検証がしたい……視点を変えることはできるか?」


モノクマに協力を要請。
他の部屋への移動とまではいわずとも、視界を変えることぐらいは許してもらえるはずだ。
普通に立っていれば振り向くことなんて日常動作だし、捜査のためにモノクマも加担しすぎというほどではない。


『エグイサル自体を動かすわけにはいかないから……別カメラを同期して、それをモニターに映させてもらうね?』


するとモノクマがどこからともなくエグイサルの見下ろす先で姿を現した。
私の腹の高さほどの身長でバズーカ砲のようにテレビカメラを抱え込み、私に向かって飛び跳ねて手を撥ねる。
あんなに小さな身体のくせに、どこからその出力が来るのだろうか……
953 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:47:07.98 ID:SuCOeezb0

モノクマはトテトテのエグイサルの足の間を抜けていった。
すぐにモニターにもモノクマが撮影しているだろう映像が流れだす。


『気軽に気になるところを指示してね! 接写なり調査なりなんなりとお申し付けください!』


妙に協力的過ぎて気持ちが悪いが、せっかく利用できるなら利用しない手はない。
モノクマの流している映像を隅々まで丁寧に確かめる。
工場内には特に変わった様子はなさそうだ。
設備の破損や見慣れない物資の出現と言った露骨な証拠はない。


「視点、もう少し上にしてくれ」


それなら普段見ないところを確かめてみる。
エグイサルを収容可能な建造物ということで天井はかなり高め。
照明もその分いかつい見た目の高出力なものになっている。
その陰に隠れているのが、小型ながら高範囲をとらえる監視カメラ。
この工場内ではエグイサルを見下ろすものともう一つ、入り口を監視するカメラが取り付けられているようだ。

954 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:48:11.78 ID:SuCOeezb0

「モノクマ、今度はあの監視カメラの映像をよこせ」

『もう、クマづかいが荒いんだから……ちょっと待ってね、すぐ送ってあげるから』


暫くするとモニターの映像は全くの別角度に移り変わる。
ワダツミインダストリアルの入り口の巨大スライドドアをとらえた定点カメラだ。
録画開始時刻は午前9時前、私たちがレストランで眠らされる前だ。
代り映えのしない映像をじっと見つめていると、動きがあった。
扉を開いて工場を出ていく何者かが、バッチリとその姿をとらえられていたのである。


「……おいおい、特撮映像でも見てるわけじゃねえよな」


その姿はあまりにも巨大、そしてあまりにも角ばっている。
金属製でケーブルの通った指で取っ手を掴み、仰々しい動作で腕を動かした。




「エグイサルが……出て行ってる……!?」




白いエグイサルの退室シーン、この監視カメラはその衝撃的なシーンをとらえていた。
955 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:49:44.65 ID:SuCOeezb0

そして、衝撃はそれだけでは終わらない。
大体一時間ほど後だろうか、開けっぱなしになっていた扉の隙間から、影が姿をのぞかせた。
そのシルエットはつい先ほど見たばかり、それと異なるのは、その掌に何かを載せ帰ってきたということ。

長細く、起伏あるシルエット。
それぞれ別な格好で、手足を投げ出して転がっている。
そのいずれも瞼を下ろして、ほかに反応を示さない。


「これ、私たちか……!?」


意識を失った状態の私たち六人の姿がそこにあった。
私たちを落としてしまわないようにか、お盆を運ぶような動作でエグイサルは画面を抜けていった。
956 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:50:40.78 ID:SuCOeezb0

時間の表示を確かめる。
丁度事件発生の一時間ほど前、そして私たちが眠らされた後の時間帯。
つまり、この映像は昏睡状態の私たちをレストランからワダツミインダストリアルに運んだ時の映像と言うことになる。
どうやって六人もの人間を移動させたのかとずっと疑問に思っていたがこれなら納得もいく。
どれほど非力な人間だろうが、これほどの重機を用いることができたなら地平線の果てまでだって連れて行くことが可能だろう。

そして、この映像はそれを実行した人間をも炙りだす。



____芹沢あさひ



あの映像に唯一映っていなかったのは彼女だけだった。

レストランでガスを散布したのも彼女だったので当然と言えば当然なのだが、この映像によってその行動の多くの裏付けが取れたことになるだろう。
となると、白いエグイサルのコックピット内にいたのも必然的に彼女になる。
各色エグイサルに誰が乗っているのか分からない現在、大きなヒントとなる情報を手にすることができた。
957 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:51:31.47 ID:SuCOeezb0

監視カメラの映像検証は一定の結果を得ることができた。
その一方、一つ浮上するのが大きな疑問。


「というか、あさひのやつはなんでエグイサルを操縦できてるんだ……?」


エグイサルは第五の島が解禁されてからずっと誰でも触れられる場所に保管されていた。
とはいえ、ほかで見たこともない新開発の軍事兵器。
操縦方法はおろか、乗り方すら知らないのが私たちの共通ステータスのはずだ。
それなのにあさひは細やかな操作で工場を出入りし、更には私たちの運搬なんて作業すらこなしているではないか。

ふと脳によぎるのは、一度完全に放棄した可能性。




___芹沢あさひは“狸”である





……いや、まさかな。


コトダマゲット!【監視カメラ映像:ワダツミインダストリアル入り口】
〔事件現場のワダツミインダストリアル工場入り口に設置された定点カメラの映像。白いエグイサルが工場を自分の手で退室し、ルカたちを掌に載せて戻ってくるまでがバッチリ記録されていた〕

------------------------------------------------

さて、ここで調べられるのはこれくらいか……

1.並んでいるエグイサル
2.コックピット内部

↓1
958 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 22:54:27.21 ID:J6Y7OAnE0
2
959 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/22(水) 22:57:20.94 ID:SuCOeezb0

行動選択したところで本日はここまで。
ついに第五章の事件発生です。
だいぶ挑戦的な事件になっています、裁判を書くのもいつも以上に頭を悩ませました。
毎度のことながら、核心的なネタバレ予測コメントは控えていただけると助かります。

さて、次回更新は6/23(木)21:30ごろを予定しています。
捜査パートのおしまいまで、短めの更新になると思います。

次回更新時にスレ立てもしておいて、学級裁判は新スレで進めていく形にしたいですね。
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いいたします。
960 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 23:05:20.59 ID:J6Y7OAnE0
>>1
エグイサル出てきた時点で被害者クロが誰かわからないパターンは
予想してたけどその更に斜め上の展開が待ってるとは思わなかった
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 23:09:24.19 ID:Z9qDEv5C0
お疲れさまでした
前作の5章が1の5章と2の5章の合わせ技みたいな味わいだったから今度はV3の5章みたいに
被害者とクロが分からない裁判かと思ってたらもっと斜め上ですごくびっくりした
これ、学級裁判中のセリフ管理とかそもそもの学級裁判の組み立てとかめっちゃ大変そう……
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/22(水) 23:13:29.40 ID:Lqsa33W30
最高に悪趣味な事件をありがとうございます(褒め言葉)
963 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/06/23(木) 02:59:56.00 ID:k+R7HOdm0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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964 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 05:32:56.04 ID:K4oZ0RWt0
褒め言葉と言い訳すれば煽っても許されるって風潮
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 09:57:07.46 ID:l0HY+ZumO
962ですが、別に作者さんを煽るつもりはありませんでした。ただダンガンロンパの2-5事件や作者さんの前作の5の事件のように無惨で悪趣味な殺害方法だとこの先どうなるんだろうとワクワクするので、単なる褒め言葉として書き込んだつもりでした。誤解を招く表現をして申し訳ありませんでした。最後に、前作からずっと応援しています、これからの展開が楽しみです!!
966 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 18:17:17.72 ID:vQfUQJ9QO
>>964
ダンガンロンパは初めてか? 力抜けよ
967 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:34:31.95 ID:5L/Kr65C0
>>964
ロンパスレなので悪趣味の言葉の指すところは分かってます、大丈夫ですよ!
意地の悪さを褒めていただけて嬉しいです。

予定よりずいぶんと早くなりましたが、安価もないですし始めてしまいますね。
次スレも立てておきました、非日常編がこのスレ内で終われば学級裁判からの開始となります。
とりあえずはこのスレでの再開です。

【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1655983861/
968 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:35:52.98 ID:5L/Kr65C0
2 選択
------------------------------------------------
【コックピット内部】

しかしこのコックピットでの捜査は慣れない。
結局自分の手で何かを触ることもできないというのはそれだけで情報にも制限がかかるし、自分の手元に武器が揃っている実感に乏しい。


「せめてこのエグイサルをどうにか操縦できればな……」


適当にあちらこちらを弄ってみるものの、反応はなし。
そもそもボタンを押していいものかの躊躇いもあって、触れられないところも多々ある。
構造も理解しないままに裁判に挑んでいいものかと首を捻ったその時。


「……ん?」


座席の左手にグローブボックスのようなものが見つかった。
特に鍵などもかかっておらず、取っ手を引けばすぐに開きそうだ。
969 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:37:29.90 ID:5L/Kr65C0

考える間も無く私はすぐにその中を確かめる。
左上をホッチキスで閉じてあるリーフレット。
どうやらこれは画像付きで説明文の書き添えられた説明書であるらしい。
エグイサルの操作についての基礎的な事項が書き連ねられている。


『自立二足型戦闘重機:モデルAX-00 通称【エグイサル】
ワダツミインダストリアルがこれまでに開発してきたモノケモノなどの戦闘重機のノウハウを結集して作り上げた最新兵器。脚部を重点的に強化したことにより、悪路でも問題なく戦闘できるほか、跳躍により多次元的な戦闘やこれまでネックだった輸送の困難さの解消を可能にした」

『そして操作にも専門的な技術を要さない。専用のリモコンを使えば未経験者でも直感操作で殺戮が可能。即実践投入が図れる。リモコンはユーザー設定のパスコードセキュリティによって外部の人間に不用意に乗っ取られる心配もない』

『コックピット内部でのマニュアル操作も可能だが、特殊重機操縦免許第1級相当の技術が必要。緊急の用事に迫られない限りはリモコンでの操作を推奨』

『装甲も前回モデルより大幅に強化。防弾性は勿論のこと、防炎性、電波干渉防止も性能上昇。コックピットに搭乗中のパイロットの身の安全を徹底的に確保するつくり。また、コックピット内部で動作不良などの緊急事態が感知された場合にはメインシステムとは別付けの単独機構が作動し、オートマチックにコックピットが展開し、脱出できるようになる』


なるほどエグイサルの操作にはリモコンが必要になるらしい。
コックピット内部を見回してみてもそれらしきものは見当たらないし、私が今すぐにどうこう出来るものではないというのが結論のようだ。
パスコード付きのリモコン……か、そんなものどこで手に入れるんだろうな。


コトダマゲット!【エグイサルのリモコン】
〔エグイサルの操縦に必須のリモコン。ユーザー設定のパスコードセキュリティを採用しているらしい〕
970 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:38:14.05 ID:5L/Kr65C0

そして、見た目通りの頑丈な作りをしているらしいな。
そりゃこれだけ装甲が分厚ければよっぽどのことがない限りは中は安全だろう。
そのせいで外で何が起きてしまったのか私たちは知ることもできなかったとも言えるし、
今の私たちからすればその頑丈さが外に逃さない檻としても機能している。


「動作不良などの緊急事態……ねぇ」


リモコンはなくとも外に出ること自体は可能。
とはいえそう都合よくエグイサルが壊れているはずもないわけで……
今はこのまま操作を続けるしかないみたいだな。


コトダマゲット!【エグイサル・アーマー】
〔改良に改良を重ねたエグイサルの装甲。防弾性、防炎性、対電波干渉機能に優れている〕

コトダマゲット!【緊急脱出システム】
〔エグイサルに標準搭載されている緊急脱出機構。内部の動作不良などの緊急事態を感知するとメインシステムとは別のシステムでコックピットが展開して脱出が可能になる〕

971 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:39:46.49 ID:5L/Kr65C0
------------------------------------------------

コックピット内部の装置を自分から操作はし兼ねる、がモニターのように常時稼働しているものならそこから情報を得ること自体は可能だろう。
操縦席向かって下側、球状になっている装置には十字の表示が覆いかぶさり、そこにいくつかのマークが浮かんでいる。
同じ赤丸のマークが円を描くように六つ並ぶ。


「……これは、エグイサルを指してるのか?」


こんな並びのもの、この工場内では他にない。
このマークをエグイサルと仮定して、他のマークを確かめてみるとそれらはいずれも電子機器類に反応しているようだった。


『それはエグイサルに標準搭載されている高機能レーダーだよ。電波感知に赤外線感知、さらにはサーモグラフィーまで切り替え可能で索敵性能も抜群なんだ!』


なるほど、センサーの切り替えには特別な操作は必要ないようだ。
ガイドに従って画面端のボタンをおせばすぐに切り替わる様子。
これを使えば工場内に誰かが潜んでいても見落とすことは基本的にないと言えるだろう。
972 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:41:25.40 ID:5L/Kr65C0

適当にセンサーを弄り、工場内設備と見比べる。
今この状況で有用なのは電波感知だろうか。
私たちの知らない機械を犯人が使った可能性だってある。
そう思って確かめていたのだが、私の目に留まったのは別の異常。


「……ん? モノクマ、オマエだけ表示がなんかおかしいな」

『そりゃそうさ! ボクはとっておきのオーダーメイド、他の鉄屑連中とは異なった電波波長で動いてるんだよ!』


まあ、それもその通りか。
モノクマのあの俊敏な動きが他の機械と同じように作動しているとは思い難い。
どれだけ高性能な技術が無駄に注ぎ込まれているのだろうか。

……なんかため息が出てきたな。


コトダマゲット!【エグイサルのセンサーシステム】
〔エグイサルは電波感知、赤外線感知、サーモグラフィーの三種類のセンサーが使用可能。これによるとモノクマは他の機械とは異なった電波の波長で動いているらしい〕

------------------------------------------------

【選択肢が残り一つになったので自動進行します】

973 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:42:32.94 ID:5L/Kr65C0
------------------------------------------------
【他のエグイサル】

そういえば私以外のエグイサルを観察して見て……何かわかるところがないだろうか?
それこそ、エグイサルが犯行に使われていたのならば、何か証拠が残っていてもおかしくない。
死体の首をはねるなんて芸当、人間の力じゃ及ばぬところであり、エグイサルという手段を真っ先に思いつくわけだが……


「……どれもこれも、気味悪いぐらいに綺麗なもんだな」


並んでいるエグイサルは赤、青、緑、桃色、白色の5色。
確かこの工場内にはあと黄色のエグイサルがあった気がするが……多分それは私が今載せられているものだろう。
そのいずれも、特に汚れているような痕跡はない。
人の首を刎ねれば返り血が付着しそうなものだが、そんなものはほんの少しも見当たらない。


「エグイサルは犯行には利用されなかったってことか……?」


コトダマゲット!【並んでいるエグイサル】
〔ワダツミインダストリアルに並んでいる五体のエグイサルはいずれも返り血が付着していない。死体の首をはねるのに利用したとは考えづらい〕

974 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:44:14.82 ID:5L/Kr65C0

とはいえ返り血なら拭きとった可能性もないわけではない。
そうなると私たちには証拠を見つけることが困難なはず。
もっと別の手がかりはどこかにないだろうか?


「……ん?」


観察を続けると、どのエグイサルにも共通する要素が見つかった。
全体的な見た目もそうだが、背中に繋がれているケーブルが目につくのだ。
確か最初にこの工場に足を踏み入れた時には、こんなものはついていなかったはずだ。
ケーブルの先を辿ってみると、大きなコンピュータへと繋がっているではないか。


「モノクマ、このケーブルは何だ?」

『はいはい! えっと……これはですね……ちょっと解析しますよ……』

「……? オマエもわかってないのか?」

『元々ボクが付けてたものじゃないからね、全くどこからもって来たんだか……』


ぶつくさ言いながら数十秒。
向こうに見えるコンピュータがモノクマの手で起動され、内部の情報がモニタに開示された。
975 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:45:06.26 ID:5L/Kr65C0


「これは……動作ログ、か?」


そこにあったのは各エグイサルの機体番号と起動状態のステータス表示。
エグイサルが動いた時にはその時間と共に記録されるらしい。
実際、白いエグイサル……機体番号05のエグイサルはレストランの襲撃前に動作のログが入っていた。
そのあと、事件が発生した11時前後でワダツミインダストリアル内に収容されて、それ以降の動きはない。


「……何の情報も入っちゃねえな」


しかし、他にも特に怪しいデータが記録されているわけでもない。
これが示しているのは、ただどのエグイサルもいい子して動かなかったという事実。
いよいよもってこのエグイサルは犯行には用いられなかったことになる。
全く、見かけの割に使えない機械みたいだな。


コトダマゲット!【動作ログ】
〔ワダツミインダストリアル内に並ぶエグイサルはいずれも動いた時にはログがとられるようになっていた。白いエグイサルの他には特に動かされたログは残っていない〕

976 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:46:29.29 ID:5L/Kr65C0
------------------------------------------------

なんとも実感も得られない捜査がひと段落ついたタイミング。
私が息をついた瞬間を狙ったかのように、それは始まった。


キーンコーンカーンコーン……

『世間でもてはやされて、テレビや各種メディアに引っ張りだこになった人のことを時の人って呼ぶけどさ。あれって本当に残酷な表現だよね』

『時は流れる、その人の人気は必ずいつか途絶えて、没落するところまで織り込み済みでそんな表現をしてるわけでしょ? それを褒め言葉として使ってる現代人の認識ってガチヤバだよね』

『だから我々が目指すべきなのは時の人なんかではなく、時代そのものを作るクリエイターなのです!』

『HeyHeyHey! You、時にはムーブメント起こしちゃいなよ!』

『学級裁判場で、オマエラが起こす一大ムーブメント、見せてくれYO!』


モノクマのいつも通り何が言いたいのかいまいち芯を食わないアナウンス。
この聴後のいい知れぬ不快感を感じると、いよいよその時が来たのだと認識するのだが今回はどうしたものか。
学級裁判場に来いと言われても、私たちはここから身動きが取れない。
手足を動かしたところでどこへもいけない、エグイサルのコックピットで完全な監禁状態にあるのだから。

977 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:48:14.52 ID:5L/Kr65C0

『あれあれ、オマエラ早く行かないと! 遅刻はペナルティものですよ!』

「わかり切ったこと抜かしてんじゃねえ、私たちがどうやって裁判場に行くってんだよ」

『そりゃ両足でしっかりと地面を踏みつけて、手を振り回した勢いでえっちらおっちらと前に進んでいただいて……』

「……」

『……もう、わかってるよ! 分かってます! なんだよノリ悪いな! オマエラ全員、ボクがちゃんと裁判場までお連れしてあげますので、そこで待機!』

『座席について、シートベルトを装着してください! 総員衝撃に備える準備!』


モノクマに促されるまま、コックピットの座席に腰を下ろし、シートベルトをつけた。
座席は新幹線のシートぐらいにはやわらかい。
まあ寛ぐような余裕も時間も私たちにはないのだけれど。

そのまま待つこと数十秒。
978 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 20:48:24.30 ID:K4oZ0RWt0
無惨で悪趣味とか褒め言葉として使うなんてどんな家庭で育ったんだか
まぁ虐待されて育った者は自身も虐待に走るって言われてるしそういう事なんかね
979 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:49:10.52 ID:5L/Kr65C0


_______ブゥゥゥゥン


コックピット内部の装置の数々が突然に息を吹き返した。
外殻を覆っているネオン管が俄に灯り出し、中からは駆動音も聞こえ出す。
途端に熱を持った装置の数々が内部の空気を一変させた。


『今、中央制御に切り替えたからオマエラの乗っているエグイサルは全てボクの支配下にあります! 後はどこへ連れて行くもボクの思いのままってわけ!』


その言葉通り、これまで仏像のように微動だにもしなかったエグイサルがいよいよ体勢を変えた。
手足を小刻みに動かして旋回、私の眼前には開け開かれたワダツミインダストリアルの入口が姿を現した。


『それでは地の底の学級裁判場まで、283プロご一行をご招待〜〜〜!!』


エグイサルの性能を侮っていたのだと悟った。
私があの晩に見た姿はまだ試運転レベルの話。
エグイサルの兵器としての性能の1割も見てはいなかったのだろう。

私たちを乗せたエグイサルは、宙を飛んだ。

歩くでもなく、走るでもなく、【跳んだ】のだ。
俊敏な動きで連続して跳ね、外の景色はみるみるうちに変わっていき、あっという間にモノクマロックへとたどり着いた。

980 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:50:40.53 ID:5L/Kr65C0
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【中央の島:モノクマロック】


「……あ?」


もう見慣れたはずのモノクマロック。
どこかの国の観光資源並みに巨大な岩山は見上げるほどで、そうそう様相など変わるはずもない……そう思っていたのだが。
私たちがこれまでの四回の裁判で足を踏み入れた時とは明らかにその見た目が変わっていた。
並んだモノクマの石像の、懐のあたり。
鋼鉄製の格子の向こうには複雑そうな機械やワイヤーが顔をのぞかせている。
いつの間にこしらえたのか、モノクマロックの動体部は綺麗に繰り抜かれ、エレベーターになっていたのだ。
エグイサルが6体入っても大丈夫なほどの空間のそれはもはや部屋というよりも洞穴の規模。


「これに乗るってのか……」


ガッチャガッチャと轟音をたてながら私たちを乗せた機体が乗り込むと、



____いつも以上の揺れとと共に、下降が始まった。


981 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:52:07.16 ID:5L/Kr65C0
------------------------------------------------

【モノクマロック エレベーター】


ゴウンゴウンと大きな音を立てて下降するエレベーター。
コックピットの強化ガラス越しでも聞こえているのだから、その音はいつもの数倍どころではないんだろう。

もう5回目になる音と重力とを感じながら、これまでと違う今回の状況を噛み締めていた。
これまでには、裁判場……戦いの舞台に赴くのでもいつも誰かしらがそばにいた。
別に私はそれを頼るわけではないし、自分以上に信じられるものもない。

でも、他の連中の存在で死なずに済んだ場面があったことは否定できない。
きっとそれは今生き残っている全員がそうなのだと思う。
誰かしらが知らずのうちに他の誰かが生き残ることに貢献して、それが輪廻のようにつながったことで今この瞬間がある。

だというのに、今回の裁判ばかりはその連鎖を無理やりに断ち切られてしまう。
私が今このエレベーターに同乗しているのは誰なのか、そして共に行くことができなくなってしまったのは誰なのか。
それを知らないことがここまで恐ろしいとは思いもしなかった。
982 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:53:25.77 ID:5L/Kr65C0

コックピットの中は空調も完備されている、熱くなりすぎることも寒くなりすぎることもない。
それなのに寒気を感じるのは、きっと内側からの底冷え。
臓器がきゅっと軋むような鈍い痛みが肉を突き抜け、肌を震えさせている。

……以前までなら、誰かがそんな私に上着を一枚貸してくれたかもしれない。
千雪なら自分の来ているものを脱いででも押し付けてくるだろう。
冬優子は多分震える私を小ばかにしてくる、でもそのおかげで緊張は解けるだろう。


美琴は……気づいてくれるんだろうか。


少なくとも、シーズになる前の美琴は多分気づかない。
あの頃の美琴は、自分のパフォーマンス、自分の立つステージ以外は眼中になかった。
命のかかった場面でも、生き残った先のことしか頭にない。
983 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:55:20.94 ID:5L/Kr65C0

この島で七草にちかを喪ったことで皮肉にも美琴は他の人間の存在に気づくことができた。
だから私は今度こそ存在を認知され、再び手をつなぎ直すことができた。

でも、美琴は自分の目で周りを見ていたわけではなかった。
七草にちかが最期に託したもの、七草にちかの眼から通してみる世界を美琴は引き継いだだけ。
死に際に遺した禍根は美琴の奥深くに浸透し、気づけば私たちとの間に軋轢を生むまでになった。

浅倉透への不信はいつしか浅倉透を受け入れた私たちへも広がりを見せ、美琴は単独行動をするように。
その単独行動の裏では、美琴は着々と浅倉透殺害の準備を進めていた。
私は夜のたびに美琴の後を追い、すんでのところでそれを食い止めてきたが……
市川雛菜の右手への凶刃は防ぐことができなかった。

……ダメだな、一人でいるとどうしても思考がマイナスに偏る。

いつかの自分の部屋にこの空間が似ているからというのもあるだろう。
人一人寝転がってやっとの空間でスマホをつついて、嘆きの言葉ばかりを吐き出していたあの頃。
984 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:56:35.15 ID:5L/Kr65C0




私は……あの時と変わることができたのだろうか?




コトダマゲット!【美琴との軋轢】
〔透への不信を募らせた美琴は、ルカたちのことも信用をしなくなっていた。単独行動を繰り返し、夜ごとに透の殺害計画を推し進めていた〕

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チーン!

目的地に着いたことに気づいたのは、それからしばらくしてからだった。

985 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:58:24.18 ID:5L/Kr65C0
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【学級裁判場】


モノミ「い、いや〜〜〜〜〜! なんでちゅか、これ! エグイサルが大量に入ってきまちたよ!? 血の七日間でちゅか!?」

モノクマ「おお……さすがにこうやって並んでみると壮観な光景だね」


コックピットから見下ろす裁判場はいつもより手狭に見えた。
特に証言台も変わったわけではない、いつもの私たちの席が用意されているだけ。


モノクマ「えーっと……意思疎通は今はできそうにないし、一方的にこちらから話させてもらうね」

モノクマ「エグイサルに乗ってはいるけど、学級裁判自体は普段のルールと何ら変わりなく行うよ。議論もしっかりとそのエグイサルに乗ったまま行ってもらうから!」

モノクマ「当然、今のままじゃ議論どころじゃないけど……対処法も用意してあるからそこは安心しておいて!」

モノミ「た、対処法……まさかジェスチャークイズでちゅか!?」

モノクマ「あのバカウサギは放っておいて、とりあえずは証言台につこうか。オマエラも仲間同士で会話できないんじゃ、そこで突っ立ってる理由も特にはないでしょ?」

986 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 20:59:53.04 ID:5L/Kr65C0

モノクマの確認に肯定も否定も示す方法はなく、向こうで勝手に了承として受理する様子。
またエグイサルは私たちの意志とは無関係に動き出し、証言台の前まで歩みを進めた。
席の配置はいつもと違う、今回は奥まったところに立たされた。
とことん中身をひた隠しにしたい、ということなのだろう。


モノクマ「さ、それじゃあもうちょっとしたら始めちゃうからね。今のうちにトイレとか深呼吸とか済ませといてね〜」

モノミ「トイレ……機体の中にあるんでちゅか?」

モノミ「そりゃもうディスカバリーチャンネル方式でヨロ!」

モノミ「それって要は大自然スタイルってことでちゅよね……」

987 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 21:01:15.88 ID:5L/Kr65C0


……始まる。


被害者も生存者も不明の前代未聞の学級裁判が。
今こうして向き合っている相手も、分厚いガラスの向こう側で表情一つ伺い知れない。

相手からしても、私は得体のしれない存在に映るはずだ。
そこにいるのは、この島で暮らしを同じくしてきた連中であることには間違いない。

なのにこんなにも不安を感じてしまうのは、きっとこの隠匿性の裏に確かに見え隠れしている人間の悪意のせい
仲間として同じ時間を過ごした相手を椅子に縛り付けて首を刎ねたという、悪意と言う言葉でも生易しいほどの凶行を私たちは知ってしまっている。
その認知が、私たちの心中に影を落として、これまでにあった信頼を掴ませるのに躊躇をさせているのだ。

988 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 21:02:55.19 ID:5L/Kr65C0



「だったら、何だよ」



それは最初の事件の時に七草にちかにも誓ったこと。
人間結局は一人なのだ。生まれてから死にいくときまでずっと誰かと一緒にいるなんてことは不可能だ。
だから、別にいまの隔絶だって、元あるべき姿に戻っただけともとれる。
信頼が見込めないのなら、今自分の持てるものを振るうしかない。
縋るものが無いだけに、百パーセントを超えた自分自身を出すことができる。
その理由づけには最適という言葉すら持ちだせた。

私ははじめっからこのスタンスだったはずだ。
牙を抜かれて、弱さを覚えて、すっかり忘れてしまっていた。

【私は、私のやりたいようにやる】

どんなに謎に満ちた裁判だろうと、どんなに悪意に満ちた犯人だろうと、関係ない。

今の私は……この状況が気持ち悪いから、全部全部ぶっ飛ばしてやりたい。
秩序も、責任も、柵も何も関係ない。
私が苛立っているから。
理由はそれだけ。それだけあれば、私は戦える。
989 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 21:03:56.62 ID:5L/Kr65C0





_____それが、斑鳩ルカだったはずだろ?





990 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/23(木) 21:07:44.49 ID:5L/Kr65C0

というわけで本日の更新はここまで。
なんとかスレ中に非日常編が終わりました。
残り10レスほどは次回の裁判までの準備パートの投票に使ってください。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【裁判前準備パート】
☆裁判を有利に進めるアイテムを獲得することができます
 何か購入したいものがある場合は次回までにその旨を書き込んでください。
 指定が多ければ多数決、特に購入指定が無ければ何も購入せず裁判を開始します。

‣ルカの現在の状況
【現在のモノクマメダル枚数…102枚】
【現在の希望のカケラ…20個】

〇スキル
・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕

・【アンシーン・ダブルキャスト】
〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕

・【つづく、】
〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕

・【cheer+】
〔発言力ゲージを+5する〕

・【ジャンプ!スタッグ!!!】
〔集中力を使用した際の効果が増幅する〕

-------------------------------------------------

【自動販売機】
≪消耗品≫
【ヒーリングタルト】…5枚
〔誰の口にも合いやすいマイルドな口当たりの優しい甘さ。裁判中に使用すると発言力を2回復できる〕

【ヒーリングフルーツタルト】…10枚
〔フルーツをトッピングして満足感アップ。裁判中に使用すると発言力を4回復できる〕

【高級ヒーリングタルト】…15枚
〔国産フルーツを贅沢にトッピングした高級タルト。裁判中に使用すると発言力が最大まで回復する〕

【プロデュース手帳】…15枚
〔これは彼と彼女たちが過ごしてきた美しき日々の証。誰よりも理解者たる彼は、いつだってそばで戦ってくれる。裁判中に使用するとノンストップ議論・反論ショーダウンを無条件クリアする〕


≪希望のカケラ交換≫

【Scoop up Scrap】必要な希望のカケラの数…30個
〔他のアイドルとの交流時に、所持品の中で何が渡すと喜ばれるプレゼントなのか分かる〕

【霧・音・燦・燦】必要な希望のカケラの数…10個
〔発言力ゲージが+2される〕

【幸福のリズム】必要な希望のカケラの数…30個
〔他のアイドルとの交流時の親愛度上昇が+0.5される〕

【I・OWE・U】必要な希望のカケラの数…20個
〔発言力ゲージが+3される〕

【われにかへれ】必要な希望のカケラの数…20個
〔集中力ゲージが+3される〕

【おみくじ結びますか】必要な希望のカケラの数…10個
〔集中力ゲージが+2される〕

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
991 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 21:13:14.04 ID:3mK3pNHb0
>>1
消耗品高級タルト2個、プロデュース手帳2個はあってもいい気はする
992 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/23(木) 21:45:11.39 ID:s2S+H5vn0
>>1
「霧・音・燦・燦」と「おみくじ結びますか」は1つずつあったほうがいいと思う。どっちも減る時はすごい減るし
993 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/23(木) 21:59:26.25 ID:4qpedlZq0
ノーコンテで安定させるための高級タルト2個と難易度高いところ飛ばせる用のプロデュース手帳2個はとても同意見
余ったら多分次回に持ち越せるだろうし損がない

後はラインナップからTシャツ消えてるからこれ以上希望のカケラの追加はなさそうだし、
集中力はそんな枯渇するぐらいには使われてないから【I・OWE・U】で発言力伸ばしてもいいんじゃないかしらとも思ってたんだけど、
確かに集中力は減るときは一気に減ってたし、途中で回復するとは言ってもややこしいのが連続で来られたら困るし、
【霧・音・燦・燦】と【おみくじ結びますか】のほうが良さげっすね
994 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/24(金) 22:02:37.43 ID:RvQZmCc90
>>1を急かすつもりはないけど次の更新日書いてもらえると非常に助かるんですがいつになりますか?
995 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/24(金) 22:13:04.22 ID:D5O6sUjG0

アイテムとスキルの購入を一晩待ってから改めて更新の連絡はするつもりでした。
自分の中で勝手に決めて、何も言ってませんでしたね。申し訳ない……
学級裁判パートの更新は新スレッドにて6/25(土)22:00〜を予定しています。

◇新スレッド◇
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1655983861/

そしてスキルの表記にピトスが消えてましたが、ちゃんと習得していますのでご安心ください。

購入するのは
【高級ヒーリングタルト】×2、【プロデュース手帳】×2
【霧・音・燦・燦】、【おみくじ結びますか】で良さそうですかね。
特に異論なければこの状態で学級裁判を開始します。
996 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/24(金) 22:54:19.49 ID:RvQZmCc90
>>1
報告ありがとうございます
997 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/27(月) 21:19:24.58 ID:vRycRthN0
998 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/27(月) 21:19:58.73 ID:vRycRthN0
999 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/27(月) 21:20:42.60 ID:vRycRthN0
1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/27(月) 22:53:18.74 ID:vRycRthN0
1001 :1001 :Over 1000 Thread
               | ///////i!、\ \ ヽ
   、 ,          |/// / ツ/// /i 1!、 \ ヽ ヽ
  エIIエ ふ イ 大. お  |// //// // /.| ||i;゛、   ヽ ヽ  、
  .Eヨ     | .申 , れ  .|/ /リ{ {{{{// / i | ||i .!ヾ   ヽ `、 ヽ
           ̄    |.//{ Y'''''/ /ノ |.|!||! 、i ヽ    `、 、
  、 ァ .つ | 十    |///| { ,,;;;;i :: |.|ii ii、 i  !    i  i
  ┐用 .う  .レ.cト、   |シ从|.|,,,;;;" ̄~"|.|.ii ヾ、、 ヽ    i  i|
  ~ー‐ 、、    、、  |//i、.|| ii!' ,,, -‐.|.| 乂 \  \   i
  ┼ __  -|―|‐    |i i.i|. r| li!く  ゚ |ト /  i;; \  \  i
  ノ 、__   !_    | ii ||/"| l!`ミニ=ニ||'  /;;;;;: \  `、、_
              { |、{{..(| ll! i!;;;;;;; /|  '、:::...:  \  `ー-
   |-    /       | i!|1ト、|lili! !;;;;;;;/ .!  ii|il= il!   .` ー
  .cト、   /⌒し    |!i从/i∧i! i::::    ili!'__iI!--―'' ナ`-ト
          、、   |/いi|l!∧ ::  ー'''''二 ==--一"ヲ/  ||
    O  -|―|‐    .|./i i i|/∧ : :: ヾ-'"        / ;;;::リ'
         !_       | .|/i i!!リi ヽ:: :: ::|li、´ ̄ ̄ ̄ ̄ン ;;;: /
               | .i! i| /i| |、ヾ、.ィi' Tー-―テI|、  ;/:::
        /      |  /リ、| | ||.\i! l! ー‐キil!:::|/::::::::_
        /⌒し    |/ / i!.!;!ii|| |!::::` 、i!  " リ:/-‐''' ̄      SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
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1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
かき氷にかけるシロップなに派? @ 2022/06/27(月) 18:51:48.67 ID:VKtufNUqO
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【ウマ娘】トレセン学園にて その4【安価・コンマ】 @ 2022/06/27(月) 16:10:37.25 ID:H8srecP/0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1656313836/

歌丸「山田君みんなに例のもの配ってください」 @ 2022/06/27(月) 09:38:26.13 ID:MmiiN2L10
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1656290305/

未定 アークナイツss @ 2022/06/26(日) 23:11:53.93 ID:EbrPSmQr0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1656252713/

かのん「ブレイクダンスのしすぎでちぃちゃんの髪がなくなっちゃった…」 @ 2022/06/26(日) 17:55:19.35 ID:lokFIoaJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1656233718/

テオノーマルさんの集い @ 2022/06/25(土) 18:43:01.87 ID:9Q9bjZ6c0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1656150181/

【ジゴロと】実は百合だった親友と一緒に生きる12【女神様】 @ 2022/06/25(土) 18:27:10.97 ID:H/qVvXJ+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1656149230/

【プロセカ】奏「いまこたつだすね」まふゆ「奏は休んでて」 @ 2022/06/25(土) 06:39:45.02 ID:02GEEtLi0
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