このスレッドは1000レスを超えています。もう書き込みはできません。次スレを建ててください

【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

4 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/12(火) 21:03:27.14 ID:4+2O+BxJ0
‣コロシアイ南国生活のしおり

【ルール その1 この島では過度の暴力は禁止です。みんなで平和にほのぼのと暮らしてくださいね】
【ルール その2 お互いを思いやって仲良く生活し、“希望のカケラ”を集めていきましょう】
【ルール その3 ポイ捨てや自然破壊はいけませんよ。この島の豊かな自然と共存共栄しましょう】
【ルール その4 引率の先生が生徒達に直接干渉する事はありません。ただし規則違反があった場合は別です】

【ルール その5 生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます】
【ルール その6 学級裁判で正しいクロを指摘した場合はクロだけが処刑されます】
【ルール その7 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、校則違反とみなして残りの生徒は全員処刑されます】
【ルール その8 生き残ったクロは歌姫計画の成功者として罪が免除され、島から脱出してメジャーデビューが確約されます】
【ルール その9 3人以上の人間が死体を最初に発見した際に、それを知らせる“死体発見アナウンス”が流れます】
【ルール その10 監視カメラやモニターをはじめ、島に設置されたものを許可なく破壊することを禁じます】
【ルール その11 この島について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません】
【ルール その12 “コロシアイ南国生活”で同一のクロが殺せるのは2人までとします】

【注意 なお、修学旅行のルールは、学園長の都合により順次増えていく場合があります】
5 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/12(火) 21:04:22.69 ID:4+2O+BxJ0
以上スレ立てまで。
4章の更新はこちらのスレッドで行います。
6 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:25:33.95 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------



CHAPTER 04

アタシザンサツアンドロイド

(非)日常編



-------------------------------------------------
7 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:26:51.90 ID:s0CqhW+t0


有栖川夏葉。


明朗快活とした自身の性格は老若男女の支持を集め、放課後クライマックスガールズの最年長としてメンバーからの信頼も厚い。
アイドルとしてのパフォーマンスのレベルの高さはさることながら、自身のストイックさに裏打ちされた圧倒的な肉体美も評価が高い。
全身の筋肉はバランスよく鍛えられており、立つ座るの佇まいや歩く走るといった簡単な動作でも彼女の抜群のプロポーションを感じ取れる。

筋肉は全てを解決する、そう息巻く彼女の体は……今。



____カチコチの鋼に変わり果てていた。



8 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:28:16.39 ID:s0CqhW+t0

夏葉「みんな、どうしたの? そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」

ルカ「どうしたもこうしたもねーよ……お、お前……その体、どうなってんだ?!」

夏葉「体……? ああ、私の体のことね。ルカ、あなた見かけのわりに随分と細かなところを気にするのね」


そうは言うが、頭から足の先まで全てを範囲とした時、それは細かなところだと言えるだろうか。
あの艶やかな長髪はワイヤーのようなものに作り変わり、くりりとした瞳は何かLED照明のようなものに付け変わっている。
全身の何が変わったかと挙げていけば何日あっても足りやしないだろう。
そこにはもはや、人間だった頃の有栖川夏葉のパーツは何一つとして存在していない。


智代子「ぶくぶくぶくぶく……夏葉ちゃんが、夏葉ちゃんがロボットになってしまった……」

透「え、やば。気絶した」

夏葉「もう……智代子、大袈裟ね。それにロボットだなんて無粋な呼び方はやめてほしいわね。私には人間の有栖川夏葉と何一つ変わらない自我がある……それはロボットというよりも、アンドロイドと呼んだ方が適切な状態ではないかしら」

あさひ「す、すごいっす! 中に夏葉さんが入ってるっすか?!」

夏葉「いえ、そうではないわ。この機体に私が入っているのではなく、私自体がこの機体なのよ」

あさひ「じ、人格が丸ごと機械に入ってるんっすね! すごい技術……!」


恍惚として会話を続ける中学生に私たちは完全に置いてけぼりだった。
突如として現れたモノクマロック、パンデミックの急な発生と鎮静、そして小宮果穂の人格復旧。
これまでにも非現実的なことは起きていたが、その中でも今回ばかりは次元があまりにも違う。
人がそっくりそのままアンドロイドに変わってしまうなんて、SF小説の中でしか起きちゃいけないことだ。
9 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:30:14.12 ID:s0CqhW+t0

夏葉「機械の体というのも便利なものよ。今の私は視力が光学望遠鏡並みにあるもの」

あさひ「本当っすか?! それじゃ、星も見放題っすね!」

夏葉「ええ……あれは、シリウスね」

冬優子「い、いやいや……星見たとこで名前がわかるわけでもないでしょうが」

あさひ「あ、それじゃああっちは!?」

夏葉「あれは……M78星雲ね」

冬優子「え、ウソ……本当に?」

雛菜「まあこの際機械になってるのは一旦置いとくとして〜、本当にあなたは放クラの最年長さんで変わらないんですか〜?」

夏葉「雛菜? それはどういう意味かしら」

雛菜「今はさも同一人物のようにお話ししてますけど、今雛菜たちの前にいるロボットさんが本当にそうなのかなって」

ルカ「……そうプログラムされただけのロボット、ってことか」

夏葉「……難しい話ね。私からすれば、私が私であることに疑いようはないのだけど、あなたたちからすれば私が有栖川夏葉だという確証は持てない」


残酷な話ではあるが、それは実際その通りだ。
今目の前にいるのは有栖川夏葉の見た目を模倣して設計されたアンドロイド。
喋り方、思考、佇まいの随所に彼女を感じることはできるが、もしそう動くために設計されたアンドロイドだというのならそれはそれで納得がいく。
いや、むしろ本人の人格を移し替えたなんて奇想天外な話よりも筋が通った話だと言えるかもしれない。
あまりの非現実を前にして、慎重になってしまうのは致し方がない。
10 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:32:27.14 ID:s0CqhW+t0


夏葉「……わかった、それならば私が有栖川夏葉であるということを証明してみせるわ」


そう言うとアンドロイドはベッドの上から立ち上がり、気絶して倒れている甘党女を引き起こした。
証明と簡単にいうが、かなりの難題のはずだ。
一体どうするというのか、黙って見守っていると、甘党女の耳元で何かを囁いた。すると目をパチリとさせて瞬時に目を覚ますではないか。
甘党女の目は点のようになり、耳から入った情報に戸惑っている様子。


智代子「ほ、本物だ……! 本物の夏葉ちゃんだよ!!」

夏葉「どうやらわかってもらえたみたいね」

恋鐘「な、なんば言いよっと……?」

夏葉「それは、智代子の合意が必要かしらね」

智代子「い、いや……別にそんな隠すほど恥ずかしいものではないんですが……みんな、コロッケって何をかけて食べる?」

冬優子「何って言われても……ソースの種類が違うくらいの話でしょ? ウスター、中濃、BBQ……」

雛菜「あとケチャップ混ぜて特製ソース作ったりとかですかね〜?」




智代子「……うち、醤油をかけるんだ」




ルカ「……は?」

11 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:33:26.29 ID:s0CqhW+t0

ルカ「しょ、醤油……?」

智代子「ほら〜! やっぱりそういう反応だ! そんなに変わってますかね?! コロッケに醤油?!」

ルカ「いや、ねーだろ……」

あさひ「合わない気がするっす」

美琴「コロッケは揚げ物だし、炭水化物だからあまり食べないかな」

透「えー、どうだろ。案外ありなんじゃん?」

智代子「心の友は透ちゃんだけだよ……!」

夏葉「……とまあ、智代子の変わった食べ方を知っていることで証明に代えさせてもらったわ」

智代子「あのね! この食べ方は放クラの5人が寮にいるときに話した事で……この5人以外は知らない情報なんだよ!」

恋鐘「たしかに……うちもそがん食べ方は初耳やったばい」

雛菜「なるほど〜、人格を移し替えてたからこそわかる情報って事ですね〜」


もっと平たく言えば合言葉みたいなものだ。
当の本人同士しか知り得ない情報、モノクマが知る由もない情報を持ち出せたのならたしかに信憑性は高まる。
12 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:34:23.61 ID:s0CqhW+t0

夏葉「確かに私は前とは姿が変わってしまって……もはや面影もないかもしれない。でもね、果穂から受け継いだもの……この胸に燃えたぎるもののためにあなたたちと一緒に戦わせてもらいたいのよ」

智代子「夏葉ちゃん……」

あさひ「燃えてるってエネルギー炉っすか?」

冬優子「あんたはちょっと空気を読みなさい」

夏葉「……どうか改めて仲間に迎え入れてもらえないかしら」


そう言って深々と頭を下げた。
かつてつむじがあった場所も渦巻くこともない鉄板にすり替わっていて、サラサラとその髪が風に靡くこともない。

変わり果てたその姿はどう考えても人間ではない……

13 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:35:34.81 ID:s0CqhW+t0





だが、人間でなくとも『仲間』として承認する事はできるらしい。





14 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:36:46.36 ID:s0CqhW+t0

恋鐘「夏葉、そげな真似をせんでもうちらは変わらんよ! この島で生きていく……283プロの仲間ばい!」

あさひ「あはは、アンドロイドになった夏葉さんがいれば今までできなかったこともできるかもしれないっすね!」

美琴「力を貸してもらえるなら、大歓迎だよ」

夏葉「みんな……ありがとう! たとえこの身が変わろうとも……私たちの想いは一つよ!」


流石にこれまで通り、とはいかないだろうが違和感はグッと押し殺して私も迎え入れることにした。
これ以上ことを複雑にしたくもないし、今のところこちらに害をなす雰囲気はない。
それに非現実を拒むなんて……もう今更だ。


夏葉「改めて仲間として迎え入れてもらえたところで……いいかしら」

ルカ「あ? なんだよ」




夏葉「……果穂のことについて、改めてみんなと話がしたいの」



15 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:38:46.49 ID:s0CqhW+t0

俄かに静まり返る。
有栖川夏葉の生死不明という状況に理由をつけて、必死に遠ざけようとしていた話題が、その張本人から投げ込まれたのだ。
全員の表情が急速にこわばってしまう。
何を口にするのかと思うと、メカ女は冬優子と長崎女の前に歩いていき、そのまま頭をまた下げ直したではないか。


夏葉「恋鐘、それに冬優子……ごめんなさい。あなたたちにはいくら詫びても詫びたりないわ。私が果穂を抑えることができなかったばっかりに二人の命を奪うことになってしまって」


おしおきの直後、病院に運び込まれてから数時間。
誰しもが、その顛末を振り返るだけの時間があった。
小宮果穂との壮絶な別離、それぞれの感情の吐露。
その最終的な終着点だけが、今の今まで持ち越されていた。
でも、この時間がメカ女には冷静な判断を取り戻させてくれたらしい。
冷静な判断が彼女にとらせたのは謝罪という行動。
あの時の狂乱状態では浮かんでこなかった言葉が、今なら口にできる。

当の二人は慌ててその謝罪を取り下げさせようとする。

16 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:40:15.72 ID:s0CqhW+t0

恋鐘「夏葉が謝ることなかよ! 今のこがん島ん暮らしじゃ何が起こるかわからんし、恨んでもなんもならん!」

冬優子「ふゆも同意見。それにあんたは絶望病にかかってたんだから、管理責任を問えるような状態じゃなかったの」


それでもメカ女の気はすまない。
冷静になればなるほど、自分にのしかかる責任と罪の意識が膨れ上がる。
赦しを得るか否かではなく、謝罪をしないことにはその金属製の心臓がどうしようもなく痛んでしまうのだ。
彼女の謝罪は、小宮果穂の殺害行為だけでなくその後の自分自身の言動にまで及んだ。


夏葉「それに、おしおきの執行前。私は果穂のことで頭がいっぱいになって……二人の前で果穂を庇い立てるような発言をして不快な思いをさせてしまったわ。そのことについても改めて謝罪をさせて頂戴」


クロの投票を行い、裁判が終了した直後。
メカ女は私たちに食ってかかってきた。
小宮果穂がクロである事は紛れもない事実、それでも彼女からすれば愛すべき仲間であることには変わりはなく、クロとして指摘を行った私たちに感情を暴走させて当たった。
そのことも彼女は相当に気にしていたらしい。

17 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:42:04.81 ID:s0CqhW+t0

冬優子「それも謝る必要なし。別に気にしちゃいないわよ。ふゆ達はもう気がついたら二人を失ってたけど、これから二人が死にますって言われたらきっと正気じゃいられない」

恋鐘「夏葉のあん時の苦しみは多分うちらの想像以上ばい、気に病まんでほしかよ。それに、あがん熱の入った言葉が言えるのは果穂のことを本当に大好きだった証明ばい。その言葉を自分で無碍にするような発言はしない方がきっと夏葉にとってもよかね」

夏葉「……二人とも、ありがとう」

冬優子「それに、こっちとしても感謝の言葉を言わせてもらうわ。あんたの訴えでモノクマは果穂ちゃんに自我を戻したわけだし……ふゆの感情に折り合いをつける機会をくれたのはあんただわ」

恋鐘「うちも、最後の最後に本当の果穂と話ができてよかったばい!」


喪った者と喪わせた者。両者がこんな形で再び手を握り合わせるとは不思議なものだ。
子ども同士の喧嘩じゃなく、両者の間には明確な罪と罰とが横たわっているのに、それを飛び越えてしまうのだから人の感情というのは分からない。
メカ女が再び顔を上げたとき、人間だったころの笑顔をそこに見たような気がした。
18 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:44:03.31 ID:s0CqhW+t0

智代子「よし、それじゃあ夏葉ちゃんも無事だったことだし……そろそろ行きますか!」

ルカ「あー、そうだな。ド深夜に裁判やってからぶっ続けですっかり日も登ってやがる。いったんコテージでそれぞれ休憩でも取るか?」

透「眠……」

夏葉「そうね、睡眠は健康管理そして精神面においても肝要よ。取れるうちにしっかりとっておきましょう」

あさひ「夏葉さん、アンドロイドになっちゃったけど眠るっすか?」

雛菜「そういえばそうですね〜、体が機械ですけどどこまで人間と一緒なんですか〜?」

夏葉「私もこの体について完全に理解しているわけではないのだけれど……睡眠はとることができるわ。この【おやすみタイマー】機能を使えばいいのよ」

智代子「お、【おやすみタイマー】……?」

夏葉「睡眠時間をあらかじめ設定しておけば、決まった時間内スリープモードにすることが可能よ。終了時刻になれば自動で目を覚ますことができるから、寝坊もなくて安心ね!」

美琴「へぇ……便利だね」

ルカ「そ、それって睡眠って言えるのか……?」

夏葉「背中には強制的にスリープモードにする【おやすみスイッチ】もあるから、そちらでも睡眠を取ることは可能ね」

あさひ「電源ボタンみたいなものっすかね」

冬優子「とりあえず……その右手を引っ込めなさい」

夏葉「ふふっ、こう見えて人並みに夢を見ることもできるのよ。手術中まさにそのスリープモードだったのだけど、智代子が山盛りのドーナツを平らげる夢を見たんだから」

智代子「……!? な、なぜそれを……!?」

夏葉「……正夢だったみたいね」

恋鐘「そいじゃあ今日の所はみんな自分のコテージに好きに睡眠をとって休まんば! 探索再開は明日からにせんね!」

透「ん、そうしよ」


事件発生からぶっ続けで全員の疲労も溜まっている。
私たちはふらつく足取りで第1の島まで戻り、それぞれのコテージへと帰って行った。

19 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:45:32.14 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】


「ふぅ……」


シャワーを浴びて、大きな息をつきながらベッドに横たわった。
瞼は随分と重たい、すぐにでも意識は遠のくことだろう。

ただ、その前の少しばかりの思考の時間……私は裁判のことを考えていた。
それは、小宮果穂のおしおきでも、メカ女の蘇生の事でもない。
この事件全容について改めて振り返っての検証だ。
私が気にかけていたのはクロではなく、その裏に潜んでいたであろう【狸】のことだ。
七草にちかと田中摩美々の犯行は露骨なまでに【狸】によって荒らされた形跡があり、その正体は冬優子の秘密を知り得る女ということで芹沢あさひに断定した。

しかし小宮果穂の犯行についてはどうだろうか。
今回の事件で起きたすべての事態について、あいつ自身の行動で説明がついた。
要は【狸】による介入を感じることができなかったのだ。
もちろんこちらの見落としの可能性もあるが、今までの二件ではあえて【狸】は粗の多い工作を行いこちらに勘づかせているような節があった。
それすらも一切見当たらないというのは流石に不自然だ。

今回の事件では芹沢あさひは事件中ずっと別の島にいたという。
介入することを諦めたり、飽きてしまったりしたのだろうか?
そんな単純な結論なのだろうか。

それに……和泉愛依の亡骸を見た時のあいつの反応。
事件を荒らして、私たちの裁判中の推理を嘲笑っているという【狸】のクソッタレのイメージとはあまりにも乖離している。
小宮果穂との別れもそうだ、あいつは感情をむき出しにして、その別れを心の底から惜しんでいた。


「……あいつじゃ、ないのか……?」


私の中に沸いた一つの疑問が、だんだんと膨れ上がっていくのを感じた。

20 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:46:29.10 ID:s0CqhW+t0
____
______
_________

【ルカのコテージ】

しばらくして目を覚ました。
ベッドに突っ伏してから五、六時間たっただろうか。日は徐々に沈みかけているのか、うっすらと橙色が滲み始めていた。
昼夜逆転の生活にはそれなりの経験がある、これももはや見慣れた光景だ。


「……眠くねえな」


今日はもう探索はしないというのが全体方針。
かといって今から改めて寝直すにしては寝足りている。
完全に時間を持て余してしまった状況で、後ろ手に頭を掻く。


「……あ」


そんな中、一つ思い当たることがあった。
こんな時、時間をつぶすのにうってつけの方法だ。
何年も何年も時間を食いつぶし続けた、体にもはや沁みついた方法。


自然と私の足はその場所へと体を運んでいた。
21 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:49:09.30 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------

【第1の島:ビーチ】


「お、やっぱやってんな」
「……ルカ」

どうせこいつのことだ、探索を行わないと聞いて内心小躍りしていたんだろう。
休憩は最低限で済ませて、残りの時間は練習に充てていることが容易に察しがついた。
実際、既に全身に汗が噴き出していて、タオルはもう二枚目を使おうかという頃合い。
私もその隣に荷物を並べて、すぐに練習に合流した。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「……ったく、時間さえあれば練習すんのはずっと変わんねえんだな」
「うん、最高のパフォーマンスをするための努力は惜しみたくないから」
「妥協もしたくない、っつーわけな……」


そのままぶっ続けで数時間の練習。
日はすっかり沈んで夜空には星が煌めく。
途中途中で水を飲ませたり座らせたりをしたが、普段こいつは一体どうしているんだろうか。
いつか倒れはしないかと余計な気を揉む。


「……ねえ、ルカ」


海岸で隣に座る美琴が私に声をかけた。
22 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:50:46.82 ID:s0CqhW+t0

「……今朝の裁判、その捜査の事なんだけど」
「なんだよ、急に」



「……浅倉透、あの子と何かあった?」



こいつは余計なところで妙に勘が利く。
私との解散までの間、まるで私の心中には目も向けていなかったくせに、パフォーマンスに追いつけていないとか嫌な所ばかりに敏感な節があって今回もその限りだ。
私が病院であいつと交わした言葉、そこから生じた覚悟と歩み寄り、それを悟られてしまったらしい。

「……えっと」

この話は、まだ美琴には話す気はなかった。
美琴は七草にちかの死を未だにずっと引きずり続けている。
あいつが死の間際にぶち撒けた浅倉透への不信と糾弾、それが胸に楔のように打ち込まれており、私と行動する時でも何度も何度もそれが顔を出していた。
だから、あいつが真実を打ち明けない内から美琴が信頼を預けることはまずあり得ないだろうと思った。
私があいつをちゃんと見極めるまで、口にはしまいと思っていた。
23 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:51:46.64 ID:s0CqhW+t0


「……ルカ、話してもらえる? 私が非番のタイミング……事件が起きる前に、何か話したんだよね」
「……」


一体どうしたものか、話すにしたって私も何も聞かされていないのだ。
強いて言うなら、あいつは『元々のこの島での暮らし』を始めた人間の一人だという情報。
今のモノクマに乗っ取られる前の生活の運営者ということだが、これも伝え方に困る。
七草にちかとの敵対というバイアスがかかりまくっている状態の美琴なら更にだ。
コロシアイの元凶だと曲解してしまうことだってあり得るだろう。
私も実際、あいつと積極的に関わって見極めていこうと決めたばかり、胸を張って言えるような情報でもない。


「ルカ、教えてよ」


何を言えば、いいのだろう。
24 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:53:06.53 ID:s0CqhW+t0



「……あいつは敵じゃないって、そう言ってた」



結局、その言葉をなぞるしかできなかった。
今伝えられる情報のプールに、それしかないのだから仕方ない。
そう言い訳したが……美琴の表情は氷のように冷たかった。


「教えてくれないんだ」


光を失ったようなのっぺりとした瞳は、私から視線をずらす。
そしてそのまま数秒の沈黙の後、美琴は立ち上がった。


「……それじゃ」
「お、おい! か、帰んのか?」
「うん、また明日」
25 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:53:48.33 ID:s0CqhW+t0

掌に嫌な感覚があった。
私は何も触っていない、必死に必死に触らないように細心の注意を払っていた。
それなのに、宙を撫でたはずのその手はもっと別のものに触れていた。

海岸に私だけがポツンと残された。
誰も物言わぬ空間に、押し寄せる波音だけが響く。
波が砂を運んで行く度に、私の心にも後悔が募った。


「……七草にちか、面倒なものを遺してくれたよな」


その後悔を他人の責にすることでしか、感情の捌け口は見つからなかった。
26 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:55:17.21 ID:s0CqhW+t0
____
______
________

=========
≪island life:day 16≫
=========

-------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


美琴との練習で体にはいい具合に疲労が溜まっていたので、睡眠自体は割としっかり取れた。
疲労は睡眠で解消できるが、この胸のモヤモヤは寝るだけじゃ払拭できない。

「……チッ」

昨夜のことを思い、舌打ちを一つ。
三峰結華の時は不用意に踏み込んで失敗して、今回は慎重になりすぎて失敗した。
自分のコミュニケーション力の低さがつくづく嫌になる。
解散をしてから他人と関わるのを避け、拒絶し続けた分の負債が今になってやってきたのだと思う。

……千雪の命令を、いつになったら私は守れるんだろうな。

重たい頭を無理やり持ち上げながら、部屋を後にした。

27 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:57:24.84 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】


夏葉「おはようルカ! 1日休んで疲労はすっかりなくなったかしら?」

ルカ「んあ……!? て、てめェか……驚かすなよ」


レストランに入るなりアンドロイドが出迎える。
だがこのアンドロイドは別に寝食の世話をしてくれるような万能コンシェルジュというわけではなく、
朝からうんざりするぐらいに張った声で私の眠気を無理やり引っぺがす動く目覚まし時計みたいなやつだ。

私は挨拶もそこそこに自分の席についた。
隣の席の美琴は、何も言わない。


恋鐘「1日休んでみんな体力は戻ったとね? 今日からまた頑張っていくばい!」

智代子「うん! 果穂のためにも……みんなで協力して脱出しないとね!」

28 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:59:25.62 ID:s0CqhW+t0

先の事件で大切な存在を失った連中も立ち直ったというのに、私と美琴の席だけに妙な不和が漂う。
それに気づいてか冬優子が私の元へとやってきた。


冬優子「ちょっと、なんであんたたちまた空気悪くなってんのよ」

ルカ「い、いやそのだな……」


まだ浅倉透とのやりとりはあまり公にしたくはない。
冬優子に説明しようにもまごついてしまう、ついその直後。


ギィィィィ…

透「おはよ」

夏葉「透……それに雛菜も……」


そうだ、こいつは私との会話で今後仲間からの信頼を勝ち取るために、幼馴染を説得して私たちに積極的に接触すると宣言したばかり。
当然この集まりにも参加してくることは想像できた。
本来なら私はそれを歓待するべきだ。

だが、今日ばかりは……タイミングが悪すぎる。

29 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:00:37.34 ID:s0CqhW+t0

透「来たよ。雛菜も一緒に」

雛菜「透先輩がみんなと協力してって雛菜に言うので、今日からまたよろしくお願いします〜」

ルカ「お、おう……」

美琴「……」


背中に美琴の視線を感じる。
冷たく突き刺すような視線が、私を貫いて浅倉透を刺す。


透「……あの」

夏葉「透、私たちはあなたたちを拒むつもりはないわ。ただ、あなたは外の世界の人間との関与が確定している、そのことについて疑いの目線を向けられていることは理解して頂戴」

透「うん……わかってる。でも、逃げないから。もう」

透「まだ本当のことは言えないけど……信じてもらえるように、頑張る」


浅倉透は覚悟を決めていた。
どれだけ疑いの眼差しを向けられようと、不信をもろに浴びせられようとも正面からぶつかっていく。
全てを話すことは出来ずとも、行動で信頼は勝ち取ることができる。
私が病院で話しただけの思いが、すでに固まっていた。
30 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:03:42.52 ID:s0CqhW+t0



美琴「……」


ガタッ

ルカ「え、ちょっ……美琴……?!」


それでもなお、美琴は受け入れようとはしなかった。
接触すら赦しをしない、七草にちかの遺恨が全てを拒む。
美琴は音を立てて立ち上がり、そのままレストランを後にした。


透「……うちらのせいだよね、絶対」

ルカ「悪いな、美琴のやつまだ七草にちかの死に際の言葉を気にしてるみたいだ」

透「悪いのはこっちだから。わかってもらわなきゃだよね、自分の言葉で」

雛菜「でもなんか一触即発って雰囲気じゃない〜?」


七草にちかとの絆はいつしか呪縛となり、檻となった。
美琴にとってその領域は誰の介入も許さない絶対的な聖域。
浅倉透に対する不信を取り除こうにも、硬く閉ざされたその檻をこじ開けないことにはどうしようもない。



でも、そのための鍵はもはやこの世に存在していない。


ルカ「……クソッ」

31 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:04:38.70 ID:s0CqhW+t0


美琴のことは今すぐに解決できる話でもない。
私たちは一旦話を切り上げ、これからの話へと移る。


冬優子「……ともかく、今はふゆたちに出来ることをやりましょう。まずは探索……これまで通りなら、今頃モノミがモノケモノを倒して新しい島が解禁されてるでしょ」

智代子「そうだよね、事件のたびにモノミが頑張って新しいエリアを解放してくれてたもんね!」

恋鐘「ジャバウォック諸島の島もあと二つばい、そろそろちゃんとした手がかりが欲しかね〜」

バビューン!!

モノミ「ミ、ミナサン……おはようございまちゅ……」

あさひ「あ! モノミ!」


話を聞きつけてか、どこからともなく姿を表すモノミ。
その体は前回同様に血に塗れている。
……だからといって心配などしないが。

32 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:05:50.07 ID:s0CqhW+t0

冬優子「やっと来た……新しい島ね、よくやったわね」

モノミ「あ、あの……それなんでちゅが……」

恋鐘「次の島はどげんもんがあるとやろ〜?」

モノミ「モノケモノ……なんでちゅが……」

雛菜「何か役立つものがあればいいですね〜」




モノミ「あちし……勝てませんでちた……くすん」




ルカ「……は?」

冬優子「あ、あんた……今なんて……?」

モノミ「ミナサンのために、一生懸命戦ったんでちゅが、あちし……あいつに手も足も出なくて……気がついたら目の前が真っ暗になってたんでちゅ」

透「え、それじゃあ今回は……新エリア、なし?」

モノミ「すみまちぇん……あちしが弱いからいけないんでちゅ、この柔肌細腕が非力なのが悪いんでちゅ……中がコットンじゃなくてせめてウールならなんとかなったんでちゅけど……」

(おいおいマジか……)


私たちにとって新エリア開放にモノミの勝利は不可欠。
てっきり今回もやってくれるものだとばかり思っていたが、思いもよらぬ形でその期待は裏切られることとなった。


33 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:06:53.73 ID:s0CqhW+t0



……だが、そんな期待には別の形で答えてくれるものがいた。



夏葉「ふふふ……今こそ私の出番のようね!」




智代子「な、夏葉ちゃんどうしたの?! 急に大きな声を出して!」

夏葉「人間の体では太刀打ちできなかった……でも、今の私なら! モノケモノだろうと、対抗できるのよ!」

ルカ「ま、マジか……?」

夏葉「昨日解散してから色々と試してみたのよ。せっかくのこの体、何か活かす方法ないかと思ってね。すると、ちょうど今の状況にうってつけの機能を発見することができたのよ!」

あさひ「わあ……! 夏葉さん、その機能って何っすか?!」

夏葉「ふふふ……それは実際試してみてのお楽しみね。みんな、早速第4の島に行ってみましょう!」


私たちは顔を見合わせたが、当の本人は気にせずズイズイと足を進めていってしまった。
私たちは半信半疑でその後をついていくこととなった。

34 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:07:55.96 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------
【中央の島 第4の島への橋前】


透「うわー……デッカ」

冬優子「モノミのやつ、ちょっとは善戦できたのかしら……? 全くの無傷に見えるけど」

あさひ「あれ、どうやって動いてるっすかね! ちょっと近づいてみてもいいっすか?!」

恋鐘「こーら! これから夏葉が破壊するから近づいたら危なかよ!」

ルカ「一体どうやってこんなの退けんだよ……」

智代子「夏葉ちゃん……本当に大丈夫? 無茶はしちゃダメだよ?」


モノミの言っていた通り、今もなおモノケモノは堂々たる様子で橋を守っている。
全身金属装甲で私たちの数倍はあろうかと言う巨躯。
とてもじゃないが一人の力でどうにかなるような機体ではない。
しかし、メカ女は全く臆する様子もなく私たちの前に割って出た。


夏葉「さて、それではお見せするわ。私がアンドロイドになって手に入れた、新しい力よ!」

35 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:09:14.72 ID:s0CqhW+t0

メカ女は高らかにそう叫ぶと左脚をI字バランスでもするかのように天高く持ち上げた。
そのままグッと振り下ろし右手に渾身の力を込め、パッと開かずグッと握って……

ダン!
ギューン!
ドカーン!!


夏葉「邪悪を打ち破る、正義の鉄拳を喰らいなさい!」


その体は蒸気が吹き出すほどに熱を帯びていた。
辺りに響くエンジン音と共に右手は振り抜かれ、

……そして、そのまま右手は射出されていた。


夏葉「はあああああああああ!!!!」

智代子「いっけええええええええ!!!!」


まるで少年漫画のような勢いで叫ぶと、その声に応えるようにジェット射出された拳はモノケモノをそのまま宙へとぶっ飛ばしてしまった。
その直後、島を揺らすほどの大爆発。



ドッカーーーーーーン!!!!!


36 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:10:47.08 ID:s0CqhW+t0

何ということだろう、メカ女は宣言通りただの一人でモノケモノを退けてしまったではないか。


夏葉「どうかしら、これが私の手に入れた新しい力……【ロケットパンチ】よ」

あさひ「すごいっす〜〜〜!!!」


宙を舞った右手はそのまましばらく旋回すると、元の位置、腕の接合部にピッタリと収まった。
それをみて爛々と目を輝かせる中学生。
……まあ、こいつからすれば大好物だろうな。


あさひ「それ、どうやってるっすか?! 自分で腕の制御はできるっすか?!」

夏葉「射出してからは標的をオートで追尾するの。もちろんマニュアル操作は可能よ」

あさひ「わたしも撃ってみたい……モノクマに頼めばつけてもらえるのかな」

冬優子「絶対にやんじゃないわよ」

智代子「す、すごい……まだ衝撃でビリビリしてるよ」

夏葉「モノケモノ程度なら簡単に吹き飛ばせる、強力な一撃よ。でもその分連発はできないし、エネルギーの充填と燃料の補充が大事なのだけれど」


何はともあれ、これで目的は達した。
モノケモノがいなくなれば第4の島の探索も可能になる。
私たちはメカ女を褒め称えながら、そのまま島を渡っていった。
37 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:12:02.08 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------
【第4の島】


「ここが第4の島……これまた雰囲気が全く違うな……」


これまでの島とはまた打って変わって大違いの島。
生活感とは完全に切り離された、ファンシーな雰囲気が漂う……一言で言うなら、それはテーマパーク。
そこら中で風船が宙を飛び、コースターのレールが至る所で視界に入り、気の抜けるBGMが大音量でかかっているのだ。


「こんなところに手がかりがあるのか……?」


◆◇◆◇◆◇◆◇


島の探索にあたっての分担。
これまではずっとユニットごとにまとまって行動をしていたが、現段階で生き残りは9人。
もはや分担は分担としての意味を持たない。


夏葉「今回は基本それぞれ個人の調査を行いましょう。手数は多いに越したことがないもの」

智代子「そっか……そうだよね、うん! それぞれの場所で全力を尽くそう!」

夏葉「ただ、その……」

冬優子「ん、あさひはふゆが見ておくわ」

ルカ「……浅倉透、今回は私と一緒に動いてもらうぞ」

透「ん、背中は任せたよ」

雛菜「え〜〜〜! 透先輩は雛菜と一緒に行くよね〜〜〜?」

透「おーおー、千切れるって、腕」

(……これは、引っぺがせそうにないな)

38 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:13:29.20 ID:s0CqhW+t0

さて……第4の島についてもまずはマップを確かめておくか。

パッと目につく【ジェットコースター】はやっぱり大きな面積を占めてるな。もしかして乗れるのか?
だからといってどう、と言うこともないが……

そして遊園地といえばこれも外せないな、【観覧車】だ。
とはいえ、こんなコロシアイの中で悠長に景色を眺める余裕なんかねーか。

【バイキング】……まあそう珍しくもないアトラクションだが、やたらデカイな。
なんか特殊なもんだったりするのか?

この【モノミハウス】ってのはなんだ……?
このテーマパークの中でも異色だが……アトラクションの一つなのか?

【ネズミー城】……多分ここがテーマパークの中心部なんだろう。
テーマパークを象徴する存在っぽいし、手がかりがあるならここか。


透「ついてくよ、どこでも」

雛菜「透先輩、雛菜も行く〜〜〜!」

ルカ「……はぁ」

さて、どこから調べる……?

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ジェットコースター
2.観覧車
3.バイキング
4.モノミハウス
5.ネズミー城

↓1
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:18:14.06 ID:BIXDK5Id0
4
40 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:20:18.10 ID:s0CqhW+t0
4 選択

【コンマ判定 06】

【モノクマメダル枚数6枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…8枚】

-------------------------------------------------

【モノミハウス】

テーマパークの一角に立っている、ピンク色した平屋づくりの一軒家。
……その屋根には巨大なミサイルが突き刺さっていた。


ルカ「……なんだこれ」

雛菜「全然ミサイルと家の色合いが似合ってないし、ナシかな〜」

透「この物件はキープもしない、と……」

ルカ「なんのロケをやってんだてめーらは」


確か電子生徒手帳の情報ではここはモノミハウスとなっていたはずだ。
その字面を追うなら、ここはモノミにとっての居住空間ということだがこんな惨状で果たして本当に住んでいるのか?
そもそもあんなぬいぐるみに家がいるのかというのは甚だ疑問だが。
私はその家に近づいて、ドアノブを捻ろうとした。
その瞬間、どこからともなく大声とともにあいつが姿を現す。

41 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:22:16.15 ID:s0CqhW+t0

モノミ「あーーーー! いけまちぇん、いけまちぇんよ斑鳩さん!」

ルカ「なんだよ、うっせえな……」

モノミ「乙女の秘密を勝手に覗き見るなんて、あんたそれでも女の子でちゅか!」

ルカ「そんな細けぇこと気にしてんな、そんなんだからモノケモノにも負けんだろうが」

モノミ「うぅ……それを突かれると弱いでちゅ……でちゅけど、ここは譲れまちぇん! あちしの目が黒いうちは、中には入れられまちぇん!」

(……チッ)


どうやらここを譲る気は一切ないらしい。
私の前に立ちふさがってまんじりとも動かない。
ここは一度引いた方がよさそうだな。


雛菜「あれ、入らないんですか〜?」

ルカ「モノミの野郎がうるせえからな、いったん引くぞ」

透「うぃー」

(……あれ、そういえば……モノミって、この島の暮らしを元々率いる立場だったんだよな?)

(だったら……浅倉透からすれば仲間、なのか……?)

(……ってことは、このモノミの拒絶って浅倉透の拒絶とイコールなのか……?)

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ジェットコースター
2.観覧車
3.バイキング
4.ネズミー城

↓1
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:25:27.34 ID:BIXDK5Id0
3
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/13(水) 22:25:38.19 ID:9uVqa1cT0
4
44 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:28:20.96 ID:s0CqhW+t0
3 選択

【コンマ判定 34】

【モノクマメダル枚数4枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…12枚】

-------------------------------------------------

【バイキング】

遊園地の中に突然現れる巨大な帆船は、宙に浮いていた。
太くどっしりとした芯にガッチリと固定され、前後にスイングするこのアトラクションは案外絶叫系として一定の人気を獲得している。
だが、この島のそれは普通とは明らかに違う。
やたらデカく見える船は、なにやら尋常でない勢いでスイングして……むしろ一回転すらしていた。


ルカ「おいおい……あれ大丈夫なのか?」

透「安全バーは一応あるみたいだしさ、落下はしないでしょ」

雛菜「やは〜! あれすっごく楽しそう〜〜〜!! 雛菜も乗りたい〜〜〜〜〜!」


安全面には問題はないんだろうが……入り口付近に設けられた異常な数値の身長制限が私の意欲を削いだ。
なんだ、身長制限160cmって……そんなアトラクション聞いたことないぞ。


モノクマ「うちのバイキングはかかるGもかなり大きいからね。安全バーでしっかり固定するにはそれだけの身長が必要なんだよ」

ルカ「これ、中学生と甘党女はNGなのか……」

透「あと、生きてたら灯織ちゃんと結華さんとにちかちゃんもだね」

ルカ「……七草にちか、か」

雛菜「……ま、これはやっぱり乗らなくてもいいや〜」


私もこのアトラクションに乗るようなことは今後一生なさそうだな……

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ジェットコースター
2.観覧車
3.ネズミー城

↓1
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:34:40.07 ID:BIXDK5Id0
3
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/13(水) 22:35:01.96 ID:9uVqa1cT0
2
47 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:36:28.56 ID:s0CqhW+t0
3 選択

【コンマ判定 07】

【モノクマメダル7枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…19枚】

-------------------------------------------------

【ネズミ―城】

テーマパークの中央でひときわ目を引く建造物。
まるで物語の中から切り出してきたような、西洋風の建築をされている立派な城だ。
だが、その入り口らしきものは見当たらない。
城壁を道に従って歩いて行っても、迎え入れるための扉なんかはどこにもない。
私たちより先に来ていたであろう長崎女とメカ女もすっかり困り果てていた。


恋鐘「どこにも入り口が見当たらん……こん城は一体何のための施設ばい……?」

夏葉「謎が多いわね……ただのハリボテ、というわけでもなさそうだけど」

ルカ「よう、二人ともお困りか」

恋鐘「ルカ、透、雛菜〜! こん城、入ろうとしても扉が無いからどうしようもなかよ〜!」

雛菜「ん〜? こんなにお客さんを迎え入れる雰囲気なのにですか〜?」

夏葉「ええ……端から端まで行っても真っ白な壁が延々続くだけ。裏側に回る手段もないから途方に暮れているの」

ルカ「それこそお前のロケットパンチで壁ごと吹き飛ばしゃいいんじゃねーのか?」

夏葉「生憎だけどロケットパンチの射出には燃料と電力が必要よ。モノケモノの撃退で大分消費してしまっているから、準備にも時間がかかるわ」

恋鐘「それに夏葉がしおりのルール違反になることも考慮せんといかん! 不用意に破壊はせん方が賢明たい!」

ルカ「それもそうか……」

48 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:37:41.22 ID:s0CqhW+t0

夏葉「あ、それでも一つだけ手掛かり……というか、気になることがあるの」

透「え、何ですか」

夏葉「この城の敷地内、どうやらモノクマもモノミも足を踏み入れることができないみたいなの」

ルカ「……! それ、マジか……!?」


ここにきて重要な情報だ。
これまでコテージの個室内でもモノクマは平然と姿を現し、そこら中に張り巡らされた監視カメラによって行動はそのすべてが掌握されていた。
だが、唯一この城だけはその監視網から脱することのできる空間。
これを利用しない手はずはない。


夏葉「どうやらネズミ……が苦手みたいで、それをシンボルにしているこの城は近寄りがたい様子で」

雛菜「ネズミが苦手なマスコットってなんだかあれみたいですね〜」

ルカ「おっと……不用意に名前は出すんじゃねーぞ」

透「あ、あれか。どら焼きの」

雛菜「うんうん、ポケットのやつ〜〜〜!」

ルカ「ギリギリセーフか……?」

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ジェットコースター
2.観覧車

↓1
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:39:04.76 ID:BIXDK5Id0
1
50 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:41:48.16 ID:s0CqhW+t0
1 選択

【コンマ判定 76】

【モノクマメダル6枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…25枚】

-------------------------------------------------

【ジェットコースター】

島を一周するほど長いレールが行き着く先、そして次の一週が始まるのがこの搭乗口だ。
カンカンと音を鳴らして階段を登れば、数両つなぎのコースターが安全バーを口のように開けて出迎える。
それに齧り付くようにして騒いでいるのは、案の定中学生だ。


あさひ「乗るっす乗るっす! ここまで来たなら乗らなきゃ勿体無いっすよ〜」

冬優子「あ〜もう、いい加減言うことを聞けっての! 人数揃わなきゃダメってんだから、諦めなさいよ!」

ルカ「よう、冬優子……大変そうだな」

冬優子「ルカ、あんた他人事だと思って……ったく、愛依がいればもうちょっとうまく手懐けるんだろうけど、この!」

あさひ「あ〜、引っ張らないでほしいっす〜」

透「乗りたいの、コースター」

あさひ「はいっす! せっかく遊園地なんすから、乗らなきゃ勿体ないと思うっす」

雛菜「雛菜もコースター乗りたい〜!」

透「じゃ、乗ろっか」

冬優子「は、ちょっ……」

透「あれ、動かない」

冬優子「はぁ……何、こいつらも同レベルなの」

ルカ「か、それ以下かもな。このコースター、さっきも言ってたが人数が必要なのか?」

51 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:42:54.42 ID:s0CqhW+t0

冬優子「みたいよ。さっきモノクマが来て、乗りたければ生存メンバー全員連れて来いって。あんたんとこの緋田美琴も必要ですって」

ルカ「……美琴、も」

冬優子「まあ別にただのジェットコースターなら無視すればいいんだけど……何やら特典があるらしくって」

ルカ「特典?」

冬優子「ええ、この島の暮らしの真実にグッと近づく手がかり……モノクマはそういってたわ」


思わず浅倉透の方を見やった。
あいつもこの島の暮らしの真実、その一端を掴んでいる人間だ。
もしかするとその特典とやらはあいつの秘密を解き明かす鍵になるアイテムかもしれない。
私の中にも、興味の火が急速に灯されるのを感じる。


ルカ「だとしたら、乗るっきゃねえな」

冬優子「一回試してみるだけの価値はあるわね。……そのためにも、ルカ……緋田美琴、頼んだわよ」

ルカ「……あー」

冬優子「何があったのか、詮索はしないけど。せっかく和解出来たってのにまた仲悪くしてんじゃないわよ」

ルカ「おう……悪いな」


流石に少し気が重いが、美琴をここに連れてくるのは私の役目だろう。
他の場所の探索をすべてし終えたら、美琴のもとに行ってみようか。

-------------------------------------------------
【残り選択肢が一つになったので自動で進行します】

【コンマ判定によりモノクマメダルの獲得枚数を決定します】

↓1
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:44:32.10 ID:BIXDK5Id0
はい!
53 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:45:56.27 ID:s0CqhW+t0
【コンマ判定 10】

【モノクマメダル10枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…35枚】

-------------------------------------------------

【観覧車】

ルカ「これまたバカでかいな……何メートルあるんだよ」

透「んー、私10人分?」

ルカ「どころじゃねーぞ、その倍いてもおかしくねえ」


麓から見上げてもその頂点が見えないほどの高さの観覧車は絶えず動き続け、外と隔絶された空間をいくつも引っ提げて回転する。
なるほど確かに見晴らし自体はいいだろうが、こんな四方を海に囲まれた空間じゃ見るべきものも特にはないだろう。


智代子「あっ、ルカちゃんにノクチルの二人も来たんだね! ちょうどよかった、観覧車乗ってかない?」

ルカ「あ? おいおい、これ……一周結構時間かかるんじゃねーか?」


見る限り、その速度は一周数十分がかりか。
観覧車の規模が大きくなればなるほどかかる時間も増す。
今乗ってしまうと、どれだけ時間を食われて探索に遅れが生じるかわかったものではない。


智代子「うぅ……そうだよね。ロマンチックな乗り物だと思ったんだけど今は我慢か……」

雛菜「観覧車って結構恋愛系のお話だとよく出てきますよね〜」

智代子「そうそう! 二人だけの誰にも邪魔されない特別な空間、そこから見える美しき夜景! その瞳に同じ景色を浮かべながら愛を語らうのです……」

ルカ「ケッ、今時そんなベタな展開流行らねーっての」

透「えー、私結構好きだよ。ベタ的なの」
54 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:46:57.40 ID:s0CqhW+t0


バビューン!!

モノクマ「さすがは園田さん! よく分かってますね! 当観覧車も恋人たちの健全なる愛の囁きを大いに応援しておりますぞ!」

ルカ「どっから湧いてきやがったこいつ……」

智代子「うんうん、観覧車と言えばやっぱりカップルだもんね!」

ルカ「この島のどこにカップルがいるんだよ、女しかいねーだろ」

智代子「愛の形は何も男女に限ったものではないんですよ、ルカちゃん……!」

ルカ「ああ……?」

モノクマ「当観覧車はカップルの時間を誰にも邪魔されないようにいろんなサポートをしております。観覧車の中ではロマンチックなBGMをオプションで流すこともできますし、飲食物の持ち込みもOK!」

智代子「いいねえいいねえ、せっかくなら間接キスもつけちゃって……!?」

モノクマ「カプセルは外からの干渉の一切を拒絶できるように、なんとナパーム弾ですら傷をつけられない最新鋭の防衛シェルター仕様!」

智代子「おお……それなら二人の時間を邪魔されない……!!」

ルカ「そんなシェルターが機能するなんてどんな状況だよ……」


そこからしばらく甘党女がひたすら妄想を膨らませ始めたので私は早々に退散。
恋愛映画だとかそういうのは私には間に合ってる。
興味のない分野のことには触れないでおこう。

55 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:48:06.45 ID:s0CqhW+t0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

探索を一通り終えたが、今回はまだ終わらない。
ジェットコースターの特典、それがこの島での暮らしの秘密を解き明かす重要な手がかりである以上スルーはできない。
全員を搭乗口に集めて、乗ってみないといけないな。

そのためにも、まず……私はあいつの元へ行かなくちゃならない。


ルカ「悪い、てめーら二人は先にジェットコースターに行っててくれ」

透「ん。雛菜、行くよ」

雛菜「わかった〜、元相方さんとの仲直り、頑張ってくださいね〜」


まるで他人事のように言ってくれるが、その原因はもろにこの二人にある。
だが浅倉透の覚悟に向き合うと決めた以上はそれをこちらから一方的に唾棄もできはしない。
美琴の説得は私の義務、か。
とはいえ千雪に無理やりやらされた時も、聞く耳を持たない美琴には結局強硬策でなんとかと言ったところ。
今回もどうなることやら。

56 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:49:35.93 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------
【第1の島 ビーチ】

案の定美琴はここにいた。
いつかの時と同じように、感情をぶつけまくって乱暴に手足を振り回しているダンス。
とても直視に耐えられるような代物ではない。
私は悟られないように、息を殺すようにしてゆっくりと近づいていった。
まるで草食動物がライオンにバレないようにサバンナを歩くようで、なんとも情けない光景だ。


「……違う、遅れた」


そんなことを呟きながら振り付けをリアルタイムに修正。
普段ならそれも真摯な態度、真面目なやつだと評価できるポイントかもしれない。
でも、今のこいつはいつのどこを目指してこんなことをしているんだ。
肝心の相方はもう生きちゃいない、この島から帰る目処も立っていない、外の世界のことも何もわからない。
今こうして改めて距離を置いて、美琴の異常さを再認識した。
現実逃避、なんて言葉で括れるものでもない。



こいつは、取り憑かれている。


57 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:51:08.21 ID:s0CqhW+t0

浅倉透のことについてもそうだ、あいつが私たちに敵対している存在ならとっくに仕掛けてきている。
事件をかき乱す狸の方が目に見えてよっぽど凶悪なのに、美琴は未だに浅倉透への僧念を絶やすどころか、その熱量は増している。
もはやここまで来ると呪いだ。

七草にちかの亡霊に、美琴は取り憑かれている。


「……よう、美琴」
「……」


逃げられないように距離を詰めてから話しかけた。
私がずっと気配を消していたので、美琴は本当に今この瞬間まで気づいていなかったらしい。
相当驚いた様子だが、すぐに鉄の仮面のような表情を無理やり戻して私に向き直る。
浅倉透への感情が、私への怒りへと出力されているのを肌でヒリヒリと感じる。


「メカ女がよ、モノケモノをぶっ飛ばしてくれたから第4の島に行けるようになったんだ。それで、美琴にも手伝ってもらいたいことがあるんだよ」


まずはここに来た理由を明らかにした。
下手に浅倉透とのこと、七草にちかとのことを突っつけばその段階で閉ざされてしまうかもしれない。
私だけでなく連中全員にも関わる話で、コースターに連れていくことだけは何よりも優先したかった。

58 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:51:52.49 ID:s0CqhW+t0

「……手伝うって?」
「第4の島にはジェットコースターがあるんだけどさ、それに乗ると島の秘密に関わる特典がもらえるらしくて……その乗るための条件に、残ってる全員が集まる必要があるんだよ」
「……」

(……頼むぞ)

「……わかった、行く」
「……! お、おう! 助かるよ、美琴!」

浅倉透と接触するリスクと貰えるであろう特典とを天秤にかけたようだが、なんとか望ましい方に傾いてくれた。
ホッと胸を撫で下ろす。

「よ、よし……美琴まだ場所わかんねーだろ? 私が連れてくから、用意してくれよ」
「……うん」

美琴は従順な様子で荷物をすぐに片付け始めた。
私が思っていたよりも怒ってはいないのか、そんな風に思ったのも束の間。




「ルカ、昨日の続き。……話してくれる?」


「えっ」

59 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:53:49.76 ID:s0CqhW+t0

なあなあで終わらせてはくれなかった。
まるで時が止まったように私の周りからは音が立ち消えて、美琴の手元の片付けの音だけが響いた。
物を持ち上げて下ろす、それだけの生活音が私の回答を急かす声のよう。
私の首筋を嫌な汗が伝う。

(美琴に、話すべきなのか……)

浅倉透はこの島に私たちを招いた人間の一人。
だが、その目的はまだ私に打ち明けてはいないし、おそらく自分の口からもまだ言うつもりはない。
七草にちかの時の『外部の人間との関与』からはわずかに進展はあったものの、信頼を勝ち取れるほどのものではない。
七草にちかの遺した感情を引き継ぐ美琴からすれば、火に油。
でも、だからと言ってここでまた黙ってしまえば、決定的だ。


「ルカ、教えて」


正解なんてきっと無い。
この状況に追い込まれていた時点で、きっと私は詰んでいたんだ。
私は、観念するしかなかった。

60 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:54:52.68 ID:s0CqhW+t0

「あいつから何か新しいことを聞けたわけじゃない。……でも、あいつは自分の行動で他の連中から信頼を得るために協力するって言ってた。だから、私もそれで見極めようとしている。その最中なんだよ」


あくまで浅倉透の話は隠した上で、あの時の会話をできる限り赤裸々に語った。
何も嘘はついちゃいないし、今の私のスタンスとしては間違っちゃいない。


「別にあいつの肩を持つとかそういうんじゃなくて……ただ、今のままじゃ真実も何もわからねえと思って……!」


狼狽するような言い訳だった。
私の手から美琴がすり抜けていくのが怖くて、嫌われないように言葉を選んだ。


「わかった。ルカはルカなりに一歩進む決断をしたんだよね」
「お、おう……?」


でも、それがまずかった。
61 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:56:03.12 ID:s0CqhW+t0






「にちかちゃんの言葉を、信じないで」






62 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:56:46.80 ID:s0CqhW+t0

「お、おい……ちょっと待て、そうじゃなくて……」
「……ジェットコースターだっけ、早く連れて行ってよ」


もはや美琴は私に聞く耳を持たなかった。
冥府からの囁きで耳の中は既に満席、私の割り込む余地などなくなっている。
浅倉透に歩み寄るという行為自体が既に美琴からすればタブー、そういうことなのだろう。
誤解を解くとかそういう次元の話だと思っていた私の見立てが甘かったわけだ。


「早く」


この世界の全部が全部合理的に進むわけじゃ無いってのはわかっていた。
どうしても無理なものは存在していて、努力だとか理論だとかで埋めることもできない穴は迂回する他ない。
芸能界に身を置く私はそれを一番よく知っていたはずだ。
それなのに、この島で暮らして情に絆されるうちにそんな簡単なことすらも忘れてしまっていた。


「……おう」


私も、もう美琴の目を見れなかった。
63 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:59:06.17 ID:s0CqhW+t0

ここから先、少し長くなるので本日は早めに切り上げてここまで。
次回更新で自由行動パートに移ります。
次回は4/15(金)の21:30〜を予定しています。
それではお疲れさまでした。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 23:01:00.28 ID:BIXDK5Id0
お疲れ様でした!
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/14(木) 18:50:33.80 ID:WVOpkpMw0
乙です
66 :少し早いですが再開します ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:19:44.36 ID:HvMz0mwZ0
-------------------------------------------------
【第4の島 ジェットコースター】


あさひ「あっ、ルカさん、美琴さん! 遅いっすよ〜! 早くジェットコースター乗るっすー!」


搭乗口には私たち以外の全員が既に集まっていた。
中学生以外の連中は、私の沈痛な表情から全て読み取ったらしく、言葉に詰まっていた。


ルカ「わ、悪い悪い。ほら、これで全員だろ、さっさとジェットコースターに乗ろうぜ!」


居心地の悪さを押して、私は連中に乗車を促した。
こんなところで浅倉透と美琴の接触も認めたくない。


バビューン!!

モノクマ「あら、全員お揃いのようですね!」

あさひ「あ、モノクマ! みんな揃ったっすよ、早くジェットコースター動かして欲しいっす」

夏葉「ジェットコースターに搭乗した特典とやら、受け取らせてもらうわよ」

モノクマ「うむ、条件は満たしておるし良いでしょう! それでは皆々様、一列二人ずつで乗り込んで安全バーを下げてお待ちください!」


モノクマに言われるがまま、私たちはジェットコースターに乗り込んだ。
全員が乗り込み、バーを下げるとすぐに動き出した。

67 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:20:57.72 ID:HvMz0mwZ0
◆◇◆◇◆◇◆◇


ルカ「う、うおおおおおおおお?!?!」

(は、速い……!!!!!)

あさひ「あはははは!! すごい!! すっごく速いっす〜〜〜!!」

雛菜「やは〜〜〜〜〜〜♡ 風が気持ちいい〜〜〜〜〜!!」

智代子「わ〜〜〜〜〜〜!? め、目が回るよ〜〜〜〜〜!!」

(ジ、ジェットコースターにしてもこれはやりすぎだろ……!?)


◆◇◆◇◆◇◆◇
68 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:23:51.50 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「や、やっと終わった……吐きそうだ……」

恋鐘「世界がひっくり返っとる……うちが下で、空が上ばい……」

夏葉「みんな、大丈夫? そんなに辛かったのかしら……」

智代子「夏葉ちゃん……今だけは機械の体になっていて正解だよ……わたしたちは足腰がもうおばあちゃんだよ……


思えばレールは島をぐるりと一周するほどあるのを自分の目で確認していた。
全身の臓器を振り回されるような早さと衝撃とからは中々解放もされず、はじめは余裕そうにしていた連中も下車する頃にはすっかりグロッキー。
這いつくばるようにしてなんとか戻ってきた私たちを見て、モノクマは腹を抱えて笑ってきた。


モノクマ「ぶひゃひゃひゃひゃ! 全員芋虫みたいになって出てきたじゃん、ケッサクケッサク!」

ルカ「お前、元からこのつもりで……」

モノクマ「餌さえあればオマエラ無警戒によってきてくれるんだもんなあ! いい見せ物になってくれて感謝感謝!」

美琴「……約束は守ってもらうよ。この島の秘密の手がかり、渡してもらえるんだよね」

モノクマ「散々笑わせてもらったからね、その代金はお支払いしましょう!」
69 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:25:00.94 ID:HvMz0mwZ0


モノクマ「ジャンジャジャーン! お望みのものはこちらかな!」


モノクマが持ち出したのは表紙が黒塗りのファイル。
文字らしきものも一切なく、内容はまるで窺い知れない。
この中に私たちが知りたがっている秘密へと繋がり手がかりがある。
思わず生唾をひとつ飲み込んだ。


モノクマ「ファイルはこの一冊しかないから仲良くみんなで回し読みしてね! それじゃ!」


モノクマは私にそのファイルを手渡すと、そのまま姿を消した。
内容について質問されるのを避けるためか、随分とお早い退散だ。


夏葉「とにかく中身をあらためてみましょう、見ないことには話も進まないわ」

雛菜「なんだかドキドキしますね〜」

冬優子「……ルカ、ページをめくってちょうだい」

ルカ「お、おう……行くぞ」


全員が見守る中、ゆっくりとそのページをめくっていった。

70 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:27:48.41 ID:HvMz0mwZ0
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
283プロダクション連続殺人事件

本記は芸能事務所・283プロダクション所属のアイドルが多数命を落とした一連の事件についてまとめたものである。
事件に関与したとされるのは同プロダクションのアイドル全16名、同プロダクションの社長とその賛同者である。
アイドルのうち11名はなんらかの形で命を落としており、今回の事件の主犯格とその腹心も自殺に及び事件は事実上の未解決となった。

事件の大筋は、社長の天井努による殺人の強制である。
アイドル16名は学校を模して建築された専用施設に拉致監禁、その際に記憶を操作する何らかの手術も行われていたとみられている。
アイドル16名は社長たちによる恐喝・恫喝行為を受けたことにより冷静な判断能力を失い、お互いを手にかけるような一種の洗脳状態に陥っていた。
どうやら犠牲者は相互に加害者と被害者の関係に分かれているようだが、その事の次第は未だ明らかになっていない。

以下、本件における死者および検分に基づく推定死因。

【櫻木真乃】鳥獣に全身を食い荒らされ死亡
【八宮めぐる】服毒または至近距離で爆発を受けたことによる全身致死傷
【白瀬咲耶】水に濡れたところに高圧電流が通電したことによる感電死
【幽谷霧子】全身圧迫による複雑骨折および呼吸困難
【大崎甘奈】首元の裂傷による失血死
【大崎甜花】胸部の刺し傷が心臓にまで到達し死亡
【西城樹里】全身骨折および脳出血
【杜野凛世】爆破(死体の損壊が激しく一部発見できず)
【浅倉透】頭部に強い衝撃を受けたことによる脳挫傷
【樋口円香】腹部に槍のようなものが貫通し臓器を損傷
【福丸小糸】全身圧迫による内臓破裂
【天井努】高所より転落したことによる全身骨折および内臓破裂
【身元不明】事件現場において他のいずれとも違う人物の肉片が確認されている。もはや一人物と特定するのは困難な損傷であるため、身元不明として処理する。

また、事件現場からは生存者として5名の人物が保護された。
いずれも同プロダクションのアイドルであり、連続殺人の渦中に置かれていたため精神面で後遺症があるとみられ、現在では心身のケアが進められている。
彼女たちが無事立ち直ってから同プロダクションのプロデューサーの協力を受けた上で取り調べを行うこととする。

以下現場より保護された生存者
【風野灯織】【田中摩美々】【園田智代子】【和泉愛依】【市川雛菜】

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
71 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:28:43.17 ID:HvMz0mwZ0






「……は?」





72 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:30:43.05 ID:HvMz0mwZ0

書いてあることの、全ての理解を拒んだ。
登場人物、出来事、内容、そのいずれにおいても現実離れしている『あってはならない』こと。
読み進めていくうちに、一人また一人と言葉を失っていき、騒がしいはずの遊園地は気が付けば音が何もしなくなっていた。
やがてめくっていくページもなくなり、固い表紙裏に行きついて、ようやっと言葉を絞り出す。


ルカ「……な、なんだよ……これ……」

あさひ「……」

恋鐘「283のみんなが……死ん、どる……?」

夏葉「天井社長が283のみんなにコロシアイを強要した……? それに、社長も死んでいる……? 樹里と、凛世も命を落としている……?」

73 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:32:04.31 ID:HvMz0mwZ0

でも、誰も『悪い冗談だ』なんて言葉でその中身を否定はしなかった。
それは、そこに書いてあることを誰もが一度想定していたからだ。

千雪が命を落とすこととなった『二つ目の動機』。
そこで一度このコロシアイの可能性は示唆されていた。
この島にいない面々が登場して描かれた凄惨なコロシアイがゲームのシナリオとして私たちの前に出た時、
あのゲームは『ノンフィクション』だと宣言されていた。
そして、画面上に浮かび上がった大崎甜花の死体。

あの写真とここに書かれている死因とは完全に一致していた。
途端に死と喪失が実感を伴って目の前に立ちふさがった。


智代子「そ、それに……これ、どういうこと……? わ、わたしと雛菜ちゃん、それに灯織ちゃんに摩美々ちゃん、愛依ちゃんも……コロシアイの生き残り……?」

雛菜「……あは〜?」

74 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:33:02.73 ID:HvMz0mwZ0

そしてもう一つ私たちの前に現れたのは、大きすぎる謎。
私たちよりも以前に行われたであろうこのコロシアイ……その中にこの島にいた人間の名前も含まれているのだ。
確かにあの『かまいたちの真夜中』でも風野灯織の名前は登場していた。
だが、あいつだけでなく五人の生き残りがそのままこのコロシアイにも参加しているとは思わなかった。
既に三人が命を落として、残るは二人のみ。
だが、園田智代子も市川雛菜も両方ともまるで心当たりがないという様子で目の前の事実に狼狽えている。


あさひ「……もしかして、一つ目の動機の話っすかね」

冬優子「モノミがふゆたちの記憶を奪ったって言うアレ……? それで、この二人もコロシアイの時の記憶を奪われてるの?」

智代子「し、知らない……わたし、こんなコロシアイなんて……知らない……」

智代子「わたしのなくなった記憶の中で……樹里ちゃんも、凛世ちゃんも……死んじゃってるの……?」


何度も頭を掻きむしった。
この脳には、確かにその時の記憶が刻まれていたはず……今もあるはずだ。
それなのに、その記憶は錠前をかけられたかのようにまるで取り出すことができず、自分にもその心当たりがない。
何よりも覚えていなくちゃならない記憶、何よりも忘れちゃいけない記憶なのに、その光景もその息吹も何もかもわからない。
数週遅れで効いてきた動機の圧に、園田智代子はその場にへたり込んだ。

75 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:34:08.19 ID:HvMz0mwZ0

美琴「……それよりも、聞かなくちゃいけないことがあるよね」


冥々たる雰囲気立ち込める中、ナイフのように鋭く冷たい言葉が差し込まれた。


雛菜「雛菜も、これは流石に無視できないですね〜……」






美琴「……【浅倉透】、このコロシアイであなたは命を落としていると書かれているけれど、どうしてここにあなたがいるのかな」




透「……」
76 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:35:56.79 ID:HvMz0mwZ0

私ですら、目で追っているうちにその謎の前に思わず声を漏らしてしまった。
今私たちの目の前にいる、【浅倉透】という人間は既に死んでいた。

何度もファイルの写真と本人とを見比べた。
儚げな雰囲気の割にくりくりとした瞳、肩にかからないほどの長さでまとまった少し青みがかった黒髪。そのいずれも写真と相違ない。
だのに、途端にこの浅倉透という人物に薄靄が罹ったように錯覚する。
それほどまでにこの矛盾は異常、そして看過できないほどに大きい。


ルカ「……前にも一度、聞いたことがあったよな。ちょうど千雪の事件の裁判の後だ。あの時にもお前はコロシアイが以前にも一度あったのか聞かれて、知らないと答えた」

透「……」

ルカ「でも、それって……おかしいよな」


一度、この矛盾には手を触れかけた。
千雪の事件の時には、まだその確証がなかったので、私もその矛盾を前にしても感じたのはせいぜい違和感どまりだったが、
今こうして浅倉透のコロシアイの経験が確定して、それは明らかなものとなった。

こいつは、外の世界の人間との接触を認めている。
七草にちかの糾弾を全面的に認めつつも、あくまで敵ではないと主張した。

そして、千雪の事件の時にはこいつはコロシアイのことなど何も知らないと言った。
こいつが本当に一回目のコロシアイに関与していないのならばまだよかった。
77 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:37:15.39 ID:HvMz0mwZ0



だが、コロシアイの参加が明らかになった以上、『外の世界と通じていながらも記憶を有していない』なんてことは成立しえない明らかな矛盾だ。



ルカ「お前、全部知ってるんじゃないのか……?」



一度は信用しようと、歩み寄った一歩。
それはたった一日のうちに、取り消さざるを得なくなった。
78 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:38:11.59 ID:HvMz0mwZ0





透「そっか……私、死んでたんだ」





79 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:39:51.65 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……は?」

透「……ううん、知らない。私は、何も知らない。聞かされてもいなかったからさ、死んでたってのも」

美琴「ふざけるのもいい加減にしてもらえるかな」

ルカ「お、おい……美琴……」


美琴はどんどんと浅倉透に詰め寄っていき、やがて浅倉透からは見上げねば視界に顔が収まらなくなるほどの距離に。
美琴の頭には完全に血が上っているようだ。


美琴「あなたはにちかちゃんの命をかけた糾弾をどこまで時踏み躙りたいの。答えをいつまでも出さずに、バカにしているとしか思えない」

透「……ごめんなさい」

透「もう、言わざるを得ない……か」


その謝罪は美琴に宛てたものだったのか、別の誰かに宛てたものだったのか。

浅倉透は真上を見上げ、ひとつ息をつく。
宙に吐き出されたその息をしばらく見つめるようにしてから、あらためて美琴の顔を見た。
80 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:41:22.02 ID:HvMz0mwZ0





透「……わかりました、話します。私が何者で、みんながどうしてここにいるのか」





81 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:42:50.66 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……ま、マジか?!」

透「もう、言わないと……私が殺されちゃうしさ」

ルカ「……え?」


浅倉透は少し後退り、指で斜め下をさした。
その指先、さっきまで美琴の影と重なっていた部分に私たちも視線を落とす。


ルカ「……美琴!?」


そこには、刃渡り三十センチほどのサバイバルナイフがあった。
美琴は問い詰めるために詰め寄ったんじゃない、あのナイフを腹に当てて脅していたんだ。
逃げ場はない、話さないとここで殺す……と。


美琴「……」

(み、美琴……)


そして、浅倉透は語り出した。
静かに、ゆっくりと、瞳を閉じて。
自分自身のことだというのに、まるで昔話を語るような不思議なほどに穏やかな語り口だった。

82 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:43:48.05 ID:HvMz0mwZ0


透「私は、みんなの知ってる浅倉透とおんなじだけど違うんだ」


透「みんなが覚えてる浅倉透が今の『私』」


透「みんなの知らない浅倉透が写真の『私』」


透「……写真の『私』の過去の私が、今の『私』」



『私』という言葉を何度も繰り返す。
ただの一人称だったはずのその言葉はブランコのように理解と非理解との間を往復し、
言葉が本来持っていたはずの意味合いはやがて脱色していき不透明な物体へと移り変わる。


そして、そのモヤモヤしただけの物質をかき集めて浅倉透は、それを口にした。

83 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:45:13.34 ID:HvMz0mwZ0





透「『浅倉透』のある部分までの記憶と人格とをコピーして作られたのが、『私』なんだよ」





84 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:46:15.22 ID:HvMz0mwZ0



ルカ「…………………………………………………………は?」




一体いつから私はSF映画を見ていたんだ?
つい昨日まで言葉を交わしていた相手は一晩のうちにアンドロイドに作り替えられ、更に別の相手は自分の正体はコピーだと自白。
もうこれは小説や漫画の中の世界じゃないと説明がつかない。
浅倉透の口にした言葉は右から左へ私の中を通過して、通り掛けに脳の神経回路の隅々までをショートさせてしまった。

85 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:47:25.44 ID:HvMz0mwZ0

透「だから、みんながこれまで接してきた『浅倉透』とはちょっとだけ違うんだ」

透「その記憶も感触も、覚えてるんだ。でも、私の身体はそれを知らない」

透「……この体で経験してないことばっかり、覚えてる」


何もわからない。
こいつの口から出る言葉も、私の前に立っているこいつの正体も。
私の視界の中にいる『浅倉透』という人間に黒塗りがされてしまったように、もはやこいつの姿すらも視認できなくなった。


雛菜「意味、わかんない……意味わかんない……」

雛菜「透先輩が、何言ってるのか……わかんないよ……」


幼馴染でさえも、それを受け止めきれなかった。
わなわなと震えながら、両腕で自分の体を抱きとめてなんとか立っている。


86 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:48:43.62 ID:HvMz0mwZ0

美琴「……あなたがこのコロシアイのことを何も知らないって言うのは」

透「……私はきっと、このコロシアイより前の記憶で作られたコピー。なんじゃないかな」

美琴「……」

透「……『私』がもう既に死んでたなんて、今の今まで知らなかったんだ。ごめん」


ちょっと前、いやかなり前だったかもしれない。
晩飯を一人で食べながら、BGM代わりにつけた番組で生命だの倫理だので議論を交わす、おおよそ正気とは思い難い番組をちらりと見たことがあった。
そこで議題に上がっていたのはクローンという存在。
全く持って同じ遺伝子情報の持つ生命体を人間の手で生み出すことは許されるのか、否か。
私はくだらないとぶった切ってカップ麺を啜り上げていたはずだ。
自分と全く同じ存在がもう一つあったからと言ってなんになるんだ。今自分の持っている記憶がある限り、その生命体が同一であると見なされることはない。
例え遺伝子の一つまで同一だとしても、人を人たらしめるのはそういう条理の世界だと思っていた。

……なら、今私の目の前に立っている『これ』はなんだ?
『浅倉透』と全く同じ見た目、声、思考、そして記憶。
更に、こいつのオリジナルであった本物の『浅倉透』はおそらく……死んでいる。



『これ』はそんな状況下では……何に当たるのだろうか。



87 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:49:56.88 ID:HvMz0mwZ0

あさひ「……全然、気づかなかったっすよ。事務所で過ごしてきたときと、透ちゃんおんなじ喋り方だったし、雰囲気も変わんなかったっす」

透「人格も同じ、だから」

恋鐘「そがんことが……あり得るばい?」

冬優子「コピー……そんなの、信じられるわけないじゃないの……!」

智代子「でも、夏葉ちゃんのこともあるし……」

夏葉「……ええ、記憶・人格の移植自体は可能だと思うわ。私も実際アンドロイドの体に挿げ変わっているわけなのだし」

あさひ「わたしたちの時代の技術を、はるかに超えてるっすよ……」

透「うちらが知らないだけでさ、あったんだよ。そういう技術。国とかが、隠してたりで」

雛菜「……」


浅倉透の説明に当惑するばかりの私たちは、何度も何度も言葉をなぞって咀嚼しようと試みた。
でも、どれだけ繰り返そうとも一向に先には進まない。
呆然とその言葉を眺めることしかできない中、あいつだけは一歩先に立ち、吐き捨てるようにして言った。
88 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:51:18.15 ID:HvMz0mwZ0





美琴「……くだらない」





89 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:52:35.32 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「み、美琴……?」

美琴「言い訳にしても酷すぎる。……そんな世迷言、私は信じられないな」

透「全部、本当だよ。私のこと、全部話したから」

美琴「あなたは浅倉透。それ以外の何者でもない……この目で、この肌で感じてきたものに間違いはないと思うの」

雛菜「……!」

美琴「黒幕と通じているあなたは、死んだと見せかけて生かされていたんだよね。今の今まで。それで平然と何もなかったように装って、記憶がないとかコピーだとか適当な言い訳を並べて」



美琴「……許せないかな」


ギリリと奥歯を噛んだ。口角はいやに吊り上がり、眉もそれに連動して動いた。
虫唾が走る、というのは今の美琴のような表情のことを指すのだろう。
きっと美琴にはもう浅倉透の言葉は届かないんだろうと思った。
整合性だとか論理性だとか、そういうものは感情の前では無力だ。
迷い戸惑う私たちとは別に、美琴はより一層その僧念の炎を猛らせる。


ルカ「……美琴!」



____凶刃が、舞う。



90 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:54:51.93 ID:HvMz0mwZ0



キィィィィィィン……!!



91 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:55:45.68 ID:HvMz0mwZ0



美琴「……なんで、あなたが」



それを制したのは、鋼鉄の体をもつ有栖川夏葉だった。


夏葉「間一髪、ね。体に改造を受けていて助かったわ。いくら鍛えていても、本来の肉体ならナイフの前には無力だったもの」


浅倉透の首元を狙った一振りはメカ女の掌底にぶつかり甲高い衝突音を立ててから地面に落下した。
その衝撃に美琴の肘がビリビリと痺れる。


夏葉「美琴……少し冷静になりましょう。透の今の話……たしかに鵜呑みにできるものではないけれど、はなから否定して殺意衝動に変えてしまうのは早まった決断よ」

夏葉「にちかの遺志を尊重したい。あなたのその気持ちは痛いほどに理解できる。ただ……あなたの中でその形は少し歪んでいないかしら。にちかはあなたに手を汚させることを良しとしないと思うの」

美琴「……ッ!」

ルカ「あっ! おい、美琴……!」


メカ女の説得にも耳を貸さず、美琴はそのままよろけながらその場を後にしてしまった。

92 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:58:09.82 ID:HvMz0mwZ0

残された私たちの元に、再び『コピー』というおおよそ許容し難い現実が戻ってくる。


透「……あのさ」

透「今、言ってもしゃーないかもだけど。コピーだとしても、浅倉透の偽物だとしても、味方だってのは変わんない」

透「モノクマの仲間なんかじゃない。信じて欲しいんだ」

ルカ「……」


きっと、嘘はついていないんだろうと思った。
あの病院で話した時と同じ、自分のことを分かってもらおうと真正面から向き合う態度、眼差し。
ただ、手放しで受け入れるにはあまりに情報量が多くて、酷な内容だったのだ。

私ですら突然突きつけられた現実にたじろいでいる。
『こいつ』のそれは、私の想像を絶する。

93 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:00:16.38 ID:HvMz0mwZ0

雛菜「……あなたは、雛菜の知ってる『透先輩』ではないんですよね〜」

透「雛菜」


市川雛菜と浅倉透は幼なじみだ。283プロ内でも勿論、芸能界でもそうそうそこまで長い時間を共に過ごしてきたアイドルはいない。
もはや心の根幹にも等しい人間が本当は別人だった、なんて世界そのものが揺らいでしまうほどの衝撃だろう。


雛菜「薄々、感じてたんだ〜……透先輩、嘘とか隠し事とかすっごく下手な癖に……雛菜に全然何も喋ってくれないんだもん〜……」

透「……!」


そんな揺らぎの最中、市川雛菜の表情はある種達観したものがあった。


雛菜「雛菜の大好きな透先輩と、なんだか違うなって場面が時々あって……」

雛菜「今、話を聞いて……意外とすっきりしてるんですよね〜」

智代子「雛菜ちゃん……」

雛菜「……そっか〜」


目を瞑って、今一度噛み締める。
次に瞼を上げた時、その瞳には先程まではなかった光が宿っていた。
94 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:01:45.63 ID:HvMz0mwZ0





雛菜「じゃ、今度から『透ちゃん』って呼ぶね〜!」





95 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:03:00.16 ID:HvMz0mwZ0

透「えっ」

雛菜「あなたは雛菜がずっと同じ時間を過ごしてきた透先輩ではないけど、この島で一緒に過ごしてきたのは変わらないでしょ〜?」

雛菜「雛菜は透ちゃんと変わらず仲良くしたいから! それでいいよね〜?」


「自分がどうしたいか」を優先した答え。
感情を整合性よりも先にして殺意に呑まれた美琴と、その文脈は似通っていた。

しかし至る所は全くもって違う。奔流に飲まれて自分すら見失った美琴と対照的に、そこには確固たる自我がある。
どんな状況でも、自分を見失わないこいつだからこそ出来た清々しいまでの答え。

どこか子供っぽさすら感じさせるその言葉は、私たちの胸に心地よい風を走らせた。
96 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:04:39.56 ID:HvMz0mwZ0


恋鐘「雛菜の言う通りばい! うちの知ってる透じゃなくとも、こん透だって島に来てからうち達と過ごしてきた時間は嘘じゃなかもん!」


冬優子「……そうね、これまで過ごしてきた時間は確かなんだし、その上でどう接するべきかは決めていけばいいのかもしれないわね」


あさひ「よくわかんないっすけど、透ちゃんが何か変わるわけじゃないんっすよね? それなら別にいいっす」


夏葉「透、よく話してくれたわね。あなたの抱え込んでいた秘密は、まだ飲み込み切れないけれど……あなたがそれを話してくれた、その勇気は信じてみたいと思うわ」


透「……ありがと。嬉しい、めっちゃ」


97 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:06:50.45 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……まあ、浅倉透のことに関してはそれで一旦受け入れるとしてもだ。実際……お前らはどうすんだよ、このファイルに書いてある出来事」

智代子「そうだよね……向き合わなくちゃ、いけないんだよね」

夏葉「……正直なところ、これまでにも何度も検討してきた可能性ではあったの。それがこうして具体的な形となって目の前に現れたけど……まだ飲み込めてはいないわね」

冬優子「……これが事実なら、283プロダクションのアイドルはここにいるメンバーしか残っていないことになるわ」

雛菜「……雛菜たちも、もう雛菜しかいないんだよね〜」

透「……ごめんね、雛菜」

雛菜「透ちゃんが謝ることは何もないよ〜?」

恋鐘「でも、まだこれが本当だって決まったわけでもなかよ! モノクマが提示したファイル、偽造の可能性だって全然あるばい!」

あさひ「これが本当かどうか、確かめてみる必要があるっす」

智代子「で、でも……どうやって?」

あさひ「生きてこの島を出て、確かめるっす。みんなで生き残って、それで自分の目で確かめるほか無いっすよ」

(……お前がそれを言うのか)

98 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:08:59.21 ID:HvMz0mwZ0

夏葉「……ひとまずは解散しましょうか。今日は色々とありすぎたわ」

智代子「夏葉ちゃんがアンドロイドになっちゃったことが半分くらい霞んじゃってるもんね……今日は濃すぎだよ……」

ルカ「……美琴のこと、私もどうにか出来ないか考えてみる。浅倉透、てめェにも協力してもらう場面があるかもしれない。覚悟しとけ」

透「うん、もちろん」

雛菜「雛菜もお手伝いしてもいいよ〜?」

恋鐘「それじゃあ今日は一旦かいさ〜ん!!」


私たちはジェットコースターをようやく後にした。
ファイルを開いてから、かなり長い時間を……いや、一瞬だったのかもしれない。
ともかく時間の感覚を失うほどの衝撃を受けてしまったのはたしかだ。

それぞれが胸にモヤモヤとしたものを抱えながら、目を向けたく無い答えを半目半目で見つめながら、自分たちのコテージへと帰っていった。
99 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:10:59.86 ID:HvMz0mwZ0
-------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


「ああクソ、うぜェ……」


その罵倒の先にあるのは、自分だ。
ちょっとばかし交流していたからといって、連中のお仲間が死んでいたことに少なからずショックを受けている自分。
仕事先でたまに見かける程度の繋がりしかない相手が死んでいたから、なんだ。
私はそんな感傷的な人間だったか?
カミサマはもっと傲慢不遜で、独善的な……ぶくぶくと膨れ上がった自尊心の塊みたいな存在だったはずだ。
千雪をはじめとした283の連中にすっかり絆されてしまって、見る影もない。


「マジで、意味わかんねえっての……」


そうなると、自分の中に湧き上がる不安に目を向けざるを得なかった。
過去にあったコロシアイ、それと同じ状況にある自分。
そして、私を取り囲む人間たちの諸々。


「……はぁ」


記憶を失った生存者、浅倉透のコピー、そして美琴の暴走。


「病むっての、こんなの」


私も動かないといけない、解決しないといけないことが山積だ。
それは頭ではわかっていたが、今夜ばかりは体が言うことを聞かなかった。
ベッドに乱暴に自分の身体を叩きつけるようにして、そのまま目をつむった。



……何も、考えたくはなかった。

100 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:12:31.96 ID:HvMz0mwZ0
____
______
________

=========
≪island life:day 17≫
=========
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


「……あ」


目を覚まして、まず最初に自分の右手を見た。
指の長さ、皺、関節……どれも私自身、斑鳩ルカのものだ。
どうしてこんなことをしたかというと、それは眠っているときに見た夢に起因する。

私の隣に立っていた人間が突然自分の皮をはいで、そのグロテスクな正体を曝け出すという胸糞悪い夢。
その原因が分かり切っている。

私たちは、あいつを『浅倉透』のコピーであるということを理解したうえで受け入れると決めた。
本人ではないことを踏まえたうえでの承認。少々歪な体制ではある。
それは、倫理だとか論理だとか、諸々の面倒な思考に蓋をするためのその場しのぎの対策法だともいえる。
……それに、今更口出ししたとて仕方ないが。


「……ざけんなよ」


考えたって時間の無駄だ。
私は適当に支度を終えて、早足でレストランへと向かった。
101 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:14:45.67 ID:HvMz0mwZ0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】

雛菜「あ、おはようございます〜」

ルカ「……なんかすげえ変な感じだな」

夏葉「今朝は珍しく雛菜が一番乗りだったのよ」


つい昨日の出来事がどう作用したのかは分からない。
だが、やけに素直な笑顔を浮かべている様子からして『吹っ切れた』という言葉を使うのが適切なんだろうと思った。


智代子「なんだか、今日はちょっと食欲が……」

恋鐘「あ、あれ……なんか変な味がせんね……塩とお味噌、間違えてしもうとる……?」


他の連中はどうにも調子が悪そうで、対照的だ。
私も例に漏れずそっち側、特に言葉を交わすこともせず、美琴の隣……本来七草にちかが座っていた席に腰掛けた。


冬優子「……緋田美琴は、やっぱり来ないのね」

ルカ「……ああ、悪い。あの後私もすぐに寝ちまった」

冬優子「まあ……昨日は仕方ないわよ。ふゆだってそう。あさひなんか考え込んじゃって動かないんだから、ふゆが引きずってここまで連れてきたわ」

あさひ「……」

ルカ「まあ……あいつはそうなるだろうな」

(……あいつもあいつで、目をつけてなきゃいけないんだけどな)
102 :申し訳ない……眠気がすさまじいのでやっぱり今夜は安価を出すところまでで…… ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:16:17.95 ID:HvMz0mwZ0
◆◇◆◇◆◇◆◇


冬優子「……まだ色々と飲み込めてないだろうけど、ふゆたちがやるべきことは変わらない。むしろ出ていく理由が明確にできた今、脱出の方法を見つけ出すことに全力を尽くさないといけないわ」

夏葉「ええ、冬優子の言う通りね。真実を自分たちの目で確かめるためにも、全員が生きてこの島を出ていく術を見出す必要があるわ」

智代子「うん……私たちの前に現れた謎、その答えを知るまでは死ぬに死ねないよね……!」

恋鐘「摩美々に咲耶に霧子……うちらん前のコロシアイでは何があったとやろ……」

ルカ「情報の一端だけ毎度毎度小出しにしてきやがって、黒幕ってやつはよっぽど性格が悪いよな」

冬優子「まあ、今更よ」

あさひ「夏葉さん、最後のモノケモノはいつ倒せそうっすか?」

夏葉「ロケットパンチね。そうね、エネルギーの充填はまだしも燃料の確保が厳しいの……スーパーにあるオイルを借りているけれど必要量の半分と少ししかないわ」

夏葉「パンチを打つこと自体はできてもモノケモノを吹き飛ばすほどの火力には、少し足りていないわ」

雛菜「空港のジェット機に積まれてたりしないですか〜?」

智代子「雛菜ちゃん、あのジェット機はハリボテなんだ……」

103 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:17:18.84 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「チッ……せっかくの機能も使えなきゃかたなしだな」

夏葉「あら、失礼ね。まるで私が木偶の坊みたいな言い回しではないかしら」

ルカ「いや、そこまで言ってねえけど……」

夏葉「ふふっ……そんなルカの鼻を明かしてみせようかしら」

智代子「夏葉ちゃん?」

あさひ「もしかして……何か他の機能があるっすか?!」

夏葉「ええ、あれからまた自分の体を少し研究してみたのだけど……また新しい機能を発見したわ!」

ルカ「マジか……脱出に使えんのか?!」

夏葉「刮目なさい! これが私の体に隠された新機能よ!」


そう高らかに宣言すると、メカ女は自分の両方の耳たぶを同時に捻った。
それがトリガーになって……次の瞬間。

764.73 KB Speed:1.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む

スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)