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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/04/14(木) 14:31:44.71 ID:MGFedzGj0
蘭子がイリナメラに連れられてやってきたのは赤いビロードがかかった神秘的な部屋であった。薄暗かったので香炉の沈香が焚かれているのがよく見えた。部屋の中央ではあらゆる儀式に流用可能な円卓があり、これを囲むのは“サターンの椅子”のような黒檀で、あたかもここだけ近世ヨーロッパの王族の家であるかのようだった。
イリナメラがその一脚に座る。そして彼女は別の一脚に彼女の着席を促した。
蘭子は恐縮しながら腰を埋める。イリナメラが口を開いた。
「まずは本魔導院におけるニオファイト相当の技術の習得に向けて監督してゆくのですが、その前に、殆ど初めて神秘に触れる者に教えねばならぬ連願があります。いいですね?」
「は、はい」
蘭子は緊張してこわばった面持ちで返す。
「一つ、埋蔵金発掘や個人的な復讐など俗世の欲に基づく低俗な目的で魔術は使わないこと。二つ、魔術師は常に知識や技術を習得する事での全能感、己の心と戦い続けながら清廉に生きること」
「紀元前28年ダッジャールはこれを破ったものに逃れえぬ破滅が訪れることを予言し、以降そのようになりました。そういうわけで、この二つの諫言は遍く神秘主義の法となり、それは魔術界で最も高位と考えられているイプシシマスの行使者も例外ではない」
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