安価でSSを書かせて頂きます

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 16:22:53.13 ID:K7oSWg9M0
タイトル>>2

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1649402572
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/08(金) 16:28:41.87 ID:TEWgcXfu0
蘭子「混沌電波最終章(ちゃおラジ最終回)!」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/08(金) 16:30:00.84 ID:IMfx5Rgt0
だるまさんはころばない
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 16:37:23.59 ID:K7oSWg9M0
何の作品であるか寡聞にして知りませんので強引にいきます!

蘭子は高鳴る心臓を理性でもって鎮めようと努力していた。あの彼女はエネテレビ七階へ向けたエレベーターの中を、一人深呼吸を吐いて備えている。
大の大人が子供のように憔悴し、汗まで浮かべる要件となれば、これは尋常ではない。
蘭子は“ちゃおラジ”最終回のMCを勤めていた。
混沌電波最終章__“ちゃおラジ”
その任とはすなわち横溢する情報を一つにまとめ上げ、確かな情報のみを選別する情報番組である。
彼女はその進行役という大役を担っていたのだ。

そんな彼女にトラブル!? いったい何が!? >>4 
無効安価は下にスライドします
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 16:58:34.27 ID:K7oSWg9M0
訂正 ×あの彼女は 〇彼女は

無効安価とはスレ主が自らの安価を踏みにじるという愚行を犯した際にも適用されます。

一応再安価は >>6

Speedが100にまで低下したら安価なしで書き始めます。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 17:24:22.96 ID:K7oSWg9M0
低落したので今から書かせて頂きます

そしてようやくその試みが結実しそうになったころ、ふとエレベーターを大きな揺れが襲った。
お世辞にも広いとは言えない昇降機内部を、縦横、あらゆる方向からの振動が襲う。
その余りの動揺に蘭子は内壁に手を付き、寄りかからずにはいられなかった。
「これは……まずい!」
震度は六強といったところだろうか。いずれにせよ、強勢であることには違いなかった。
蘭子は激しい故揺れに見舞われながらエレベーターの緊急停止ボタンを押す。階数表示板が5Fを指示した時に、昇降は止まった。乗場戸が左右に開くと、彼女は信じられないものを目の当たりにする。

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 17:35:18.23 ID:K7oSWg9M0
ゾンビであった。
エネテレビ5階のフロアを、夥しい数のゾンビが闊歩している。
ある者はTVマンそのものの恰好で、しかし脇腹から腸を露出したままによたよたと歩いている。ある者は私服のままに、耳、目、口……あらゆる部位から明らかに致命傷と思しき血を垂れ流して、やはり彼もそれを意にも介さず歩き__ある女はレディースのダークスーツを尚の事赤く染め上げ、顔を血化粧で台無しにしながら、その死者たちの列に加わっていた。
皆が。
皆が赤かった。
そして血生臭く、腸からこぼれ出た汚物に晒されている。
蘭子は生存本能に導かれエレベーターのボタンを連打した。
階層は7階。
かつて混沌電波最終章“ちゃおラジ最終回”が執り行われたはずの階層である。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 17:50:28.93 ID:K7oSWg9M0
意図したものではなかった。
本来なら、こうした鉄火場においては、ゾンビがいないことを祈りながら__先ほどまでは確かに正常だったはずの最下層はロビーに再来するか、最上階の屋上で、眼下に放浪するゾンビを眺めつつ、一人救助を待ち続けるか、という賭けがあったのにも関わらず……
それを、知りながら向かってしまったのは、その余りの惨状に、災厄に、あの輝かしい日々を思い出してしまったからだろう。
桜蘭、明佳……混沌電波の番組で、共に競い合い、共に励まし合った竹馬の友人たち。
涙もあった。怒りもあった。しかし確かに彼らとは友だったのだ。
まだ言いたいこともある。告げたい思いもある! その願いが、こんな殺戮で、悲嘆で、終わって良いものか!
……そんな身を焼くような激情も素知らぬ顔で、現実は終焉を告げる。
7階についた。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 18:08:20.30 ID:K7oSWg9M0
……ああ、現実とは、どうしてこんなにも理不尽なのだろう。
乗場戸がなんの躊躇もなく開け放たれた時、彼女はそんな弱みを言ちずにはいられなかった。
眼前には、よもや数えるのも馬鹿らしい無数のゾンビが蠢いている。
こちらのゾンビは、どうやら先ほどのようにみすみすと逃亡を看過してはくれないらしい。
今や無数のゾンビが歩みを止め、こちらを捉えていた。
古く忌々しい“狩人”の視線にうちすくめられ、蘭子の精神は限界に達するのだった。
生存本能は白旗を挙げ、誰にも制御されなくなった肉体は力を失い、尻餅をつき、豊かな奥処からは小便が漏れる。そして蘭子は確信するのだった。
今から私が迎える死にざまは、人間のものではないだろう。
あたかも野獣が非捕食者にするように、汚らしく食い散らかされるのだ。
彼らの血に染まった頬が示している。
あれは“食事”なのだ。
そして堰を切ったように殺到するゾンビの群れを前に、蘭子は目を瞑り__愛すべき友人たちの面影を前にして開かれる。
(桜蘭、明佳……!)
彼らも、ゾンビになっていたのだ。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 18:18:11.35 ID:K7oSWg9M0
蘭子は、これはそのためなのか、と思った。
こんな末世に、藤條蘭子という女が、何の役にたつだろうか?
いずれ来る残酷な運命を前には、蘭子は真綿で首を締めるように苦しみ抜いたうえ、惨たらしい末路を迎えるに違いない。
そのことについて思いを巡らせれば、いっそ早いうちに友人たちの手で殺された方が、ずっと幸せな最期であることだろう。
そう思ったから蘭子は死を受け入れ……だが、友人たちの顔が悲痛に歪んでいるのを見て、あの感情を思い起こさるを得ない。
現実とは、どうしてこんなにも……
魔の手が鼻の先を掠め、肩を掴まれ、首筋を犬歯で貫かれ、そうしてその情動がピークに達した瞬間__
世界が崩壊する。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 18:24:51.51 ID:K7oSWg9M0
時間軸はメビウスの輪を描き、空間は捻じれ狂い、あらゆる質量は逆転する。
星系は加速し、恒星は抹消され、宇宙のどこかで新しい知的生命体が誕生した。
死は遠のき、熱は冷め、命は回転し、蘭子は寝台に横たわっていた。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 18:31:31.48 ID:K7oSWg9M0
(……?)
蘭子は解離した面持ちで周囲を見渡す。
ここはあの世にしては親しみやすすぎる。
あの世とは、異界とは、もっと超越的で、犯しがたいものであるべきではないのか。
そういう意識の遊離に、彼女は5分浸っていた。
蘭子は目を擦った。
ここは自宅に似ている。
私はいつも寝起きしている寝台で、すっかり見慣れた自室で、寝間着を着て意識を働かせている。
これは馬鹿げている。
まるで時間が巻き戻ったようではないか。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/08(金) 18:50:40.48 ID:Uj9ojJOJ0
クッソ読みづれえわ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 18:54:01.26 ID:K7oSWg9M0
蘭子は少女趣味ではない。
御年で23歳にもなって、まだまだ働き盛りである反面、落ち着きも出てきた。
故に、自室は、一見男の部屋と見分けがつかない。
淡い藍のカーテンから、うっすらと光が漏れている。
室内は仄暗いけれども、そこからの光が朝であることを教えていた。
サイドテーブルにはノートパソコンが置かれており、マホガニーのクローゼットは固く閉ざされている。
その脇にある化粧台は、ここが女の自室である絶好の証明と言えるだろう……
寸分たがわない、蘭子の自室だ。
それは寸分たがわないからこそ、不可解極まりなかった。
なぜ私は自室にいる? 自宅にいる? 
そんな疑問を抱いて蘭子は身支度を整える。
下地を整え、ファンデーションを塗り、アイブロウを書き加える。アイシャドウはほどほどに、アイライナーで輪郭を整えると完成だ。
彼女はパンプスを履くと、玄関からマンション8階の廊下へと躍り出る。
褥聖都はこれまで何年も繰り返されていただろうごく普通の日常を今日も再演している。
それがいつも通りすぎるように思われて、蘭子はたもとのスマートフォンからニュースをチェックした。
いつもは通勤の電車内で確認するのだが……

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/08(金) 18:56:06.83 ID:QPQsB1xWO
毒を以て毒を制す
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 19:08:38.50 ID:K7oSWg9M0
スマートフォンのホーム画面、そのステータスバーを見る。
(8月9日……。)
立秋、暑くもなければ寒くもない、過ごしやすい秋の日々を指し示している。
しかしこれは“今日だった”はずだ。
そこで蘭子は自身が極度の混乱状態に陥っていることを自覚した。
遡って考えてみれば、蘭子が“おぞましい悪夢”として遇したあの死と絶望の感覚は、果たして幻想の産物で済ませられるものなのだろうか。
蘭子はつい先ほどのように、ありありと、手で肩を掴まれるあのおそろしい握力を、首筋に牙が突き刺さる激痛を、思い起こすことができるのだから。
夢とはフロイトの時代から現代に至るまで、原則、感じたり、触ったりできるものではないとされる。
夢である範囲は見たり、移動したり、動けなくなったりが精々で、それは断じて、苦痛を伴うものではない。
蘭子は、精神病なのだな、と思った。
蘭子はおのれが既に通院が必要な段階にまで病状が進行していることを悟った。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 19:11:09.15 ID:K7oSWg9M0
ある自覚が芽生えた蘭子。さて、どうしようか…… >>18
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 19:21:44.11 ID:K7oSWg9M0
これではなんと言えば良いかわからないでしょうから、安価にてこをいれます。タイミングを同じく前の安価の回答が来たら、この安価は無効となり、前の安価が採用されます。重ね重ねすみません。

蘭子「ここは>>19しよう」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 19:42:44.01 ID:K7oSWg9M0
こないようなので独自に書かせて頂きます。

蘭子は広い世界、一人取り残されたような気がした。
これほどまでにおのれを孤独と感じたことなど、一度としてなかった。
ゆえに病院にいかねばならないのだ。とにかく病院なのだ……
彼女は日付を調べるために取り出したスマートフォンでもって、そのまま最適な病院について調べようとしたが……
(まてよ、もし“あれ”が現実だったら……どうする?)
蘭子の理性は、すぐさまこの妄想に批判的な意見をもってぶちのめそうとしたが、それを他ならぬ蘭子自身の感性がねじ伏せるのだった。
(あれは確かに現実だった。私はそれを“受けた”んだから……)
蘭子の背筋がにわかに痙攣する。
あの冒涜的な記憶に怯えているのだ。
ともかく、彼女はあの突然として現れた終末を恐れていた。
あれに比べれば、自身が病に侵されているかどうかなんて、どうでもいいことだ。
蘭子は仕事先に欠勤を素早く告げると、一旦、自宅に舞い戻る。
だから、蘭子は生き延びる方策を準備することに決めた。
まずは月並みに、ホームセンターにでも行ってみようか……
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 20:03:51.48 ID:K7oSWg9M0
眠くて文章が荒れてきたので一人称に変えてみます。それと展開を加速します。

私は自室に戻ると、いずれ来るだろう終末に備えて様々な手を打った。
まず服装を一新した。
緩いブラウスとか、スカートにストッキングとか、そういう身を賑やわす粉飾の類は全て脱ぎ捨てる。
代わりに選んだのは、最も機能的な装いである。遠い昔、引っ越しに荷物を取り持つ必要のあった時に、気まぐれに購入した登山用ザックに非常用の食料品を詰め込み、次にジーンズを身に付けた。近頃使われているファッション用のものではない。遠い昔、アメリカの開拓者たちが身に付けていたような銘革である。上衣については悩んだ結果、通気性に優れたポリエステルの__
と、色々工夫してみたが、終末に耐えられるとは思えない、心もとない品ばかりが目立つ。
唯一信頼できるのは、少し前に番組の軍事特集で譲り受けた軍靴のみである。
しょうがないので外出し、ゆきゆく人々に怪訝な目を受けながら、私はホームセンターに到着した……

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/08(金) 20:10:20.58 ID:SX+Ob4Z30
人に読ませることを考慮してないごちゃごちゃした文字の羅列って意味では再現度高いよ
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 20:32:32.93 ID:K7oSWg9M0
思えばゾンビのようなものが見えたのでホームセンターにいこう、というのは、かなり短絡的な結論がもしれない。
多くの場合人々がホームセンターにいくのは、既に町中をゾンビが練りまわっていて、手詰まりになった時ではないだろうか。
そういう事を思いながらマチェット、革製のライダージャケット、缶詰、レトルト、サバイバル本などを購入してみる。
そうこうする内に、馬鹿らしくなってくる。
猛烈な不安に耐えきれず、仕事を欠勤して、こんな馬鹿げた用意に憑りつかれている。
しかし、と蘭子は思う。
これは悪くない。
ゾンビが猖獗を奮った日に向けて準備するのは悪くない。

とっくに狂ってしまったのかもしれなかった。
私は、あのエレテレビ七階のエレベーターで狂ってしまったのだ。
そんなことを思いながら厚着をする。
例え鋭い牙が突き刺さろうと、貫通しないように……

私は重くなったバックと、反面軽くなった財布を引っ提げバイクに跨った。
カワサキZ900RS。東京モーターサイクルショーでも展示され、一躍有名になったカワサキ社2000年代度の名機である。
ブレーキペダルを踏みながらメインキーを回すと、心地よい振動と共に爆発めいたエンジン音が辺り一辺に轟いた。
私はヘルメットを目深に被り、クラッチレバーを離すと、バイクが走り出す……

目的はエレテレビ本社だった。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 21:00:19.32 ID:K7oSWg9M0
思い返すほどあれは奇妙なものだ。
きっかけは地震と思われる。
蘭子がこれまで体験したことがないほどの強い揺れを感じた後、あれは現れた。
答えが出ない。

私は信号待ちの車線で腕時計を確認すると、そこには12時7分とあった。
いつもならとっくの昔に仕事に従事しはじめている時間だ。
例の地震までは、およそ5時間も猶予がある。
そこから電気屋店頭のテレビで、再三物騒なニュースがないか確認してみたり、コンビニで食料品を買い足したりと道草をくいながら移動し、ついたころには30分を廻っていた。

私はエレテレビ本社を見上げる。前12階、モルタルと鉄筋コンクリートの現代建築で、著しい地震にもビクともしない堅牢な建築物である。
防犯についても手が入っていて、警備室のモニタールームには常時3人が入っており、彼らは12階全ての防火扉の開閉、警察への通報などの多くの権限を持っている……

この偉容を前に、私は私の頭がかなりおかしくなっている旨を受け入れようとしていた。
私は踵を返すが、ふとひっくり返るほどの激震を体躯に感じる。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 21:16:04.91 ID:K7oSWg9M0
それはかつて私が感じた振動だった。
横に、縦に、もはや地震というより、空間そのものが前後しているような感覚。
肉体を臓腑からかき乱すようなそれに、私はとうとう転げた。
アスファルトの舗装道路が割れる。どこかで高く悲鳴が聞こえた。どこからか落ちてきたガラスが私のすぐ脇に落ち、砕ける。
その一片が私の頬を掠めた。

もはやなりふり構ってはいられなかった。
終末などいっている暇もなく、とにかく今生きることに全力を注がなければならない。
すぐそばにあった立体駐車場がよかった。
そこなら落下物に気を病む必要はない。
揺れが収まるまで、身を守ることができる。
しばらくすると収まってきた。
それと同時に私は絶望を感じる。
あの悪夢が、懸念が、現実となってしまった、という絶望。
決して立証されてはならない仮説が立証されてしまった……
蹲る私の耳に、尋常ならざる大音声が飛び込んできた。
断末魔に似ている。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 21:46:05.71 ID:K7oSWg9M0
「なんだ……今の声は」
ふと低く男の声が鳴った。となりである。見ると、線の細い、中庸な男が床に手を付いていた。アイボリーのパーカー、ジーンズ、ウエストバッグを着ている。
「なんでしょうか」
とりあえず返事をしてみたら、思いのほか深刻な声がでた。のどがからからに乾いて、冷や汗が止まらない。自分でもそうとわかるのだから、傍から見れば相当なのではないか。とにかく、私は追い詰められていた。
この後、正しければ……
「見てきます」
男はそう言って立ち上がると、脇目もふらず歩いて行った。
私はそれを半ば茫然と見ているが、恐ろしくなって付いて行く。
男はETCバーを潜って外に出る。そして足を止めた。
私は男に並び立ち、同じ光景を見る。

大通りは荒廃していた。想像以上に揺れによる被害が大きい。舗装路は余すところなくひび割れており、ところどころは亀裂が深い。どこからか落ちたコンクリートが粉々になって散乱していて、それがかなり大きいので、もう車が通ることはできないだろう。遠くに漫画喫茶のアパートがあるのだが、そこにかけられていた看板が落ちて、クレーンは奇妙にねじ曲がった上、垂れており、見る影もない。

それすら霞む光景がある。
人が人を喰っていた。
大学生と思しき女性を、カーディガンを返り血に染めた大柄な男性が食べている。

どこかでけたたましいサイレン音が鳴った。

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 22:11:07.25 ID:K7oSWg9M0
サイレン音、叫び声、何かが激しく落下する音。
突然街は喧騒に包まれた。
入り組んだ路地の一本から主婦らしい女が走り出る。
全力疾走だ。後ろから無数の人間が__
__もう、きっとそうなのだろう。無数のゾンビ共が、群れを成して女を追いかけまわしている。バイクに乗っている時間はない。
「逃げましょう!」
私は言うや否や既に走り出していた。
男も私に追従している。
「くそ! なんなんだ、これは!」
男が悪態をつく。
主婦がどうやら人間らしい。私たち目掛けて走り続けている。
擦り付ける気なのだ。
「二手に分かれましょう!」
私は叫んだ。そうしてから声がやつらをおびき寄せる可能性に気付いた。
「私は右に!」
男が右指を前方に指し示す。
そこには住宅街へ続く一本と、郊外の港湾地帯に続く三叉路があり、男は住宅街の方へと向かうらしかった。
「左に行きます!」
明確な目的があれば話は早い。そうして加速していくにつれ、先のことを考え出す。
状況は最悪に近い。
何が起こっているのかてんでわかっていない。そもそも生き残れるかも怪しい。しかし__
__山。
あそこに行けば、やつらの数も少なくなるのではないだろうか。
そんな取り留めもない思索を巡らしていると、前方の道に幾匹かのゾンビが見えた。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/08(金) 22:25:44.87 ID:K7oSWg9M0
睡眠します。

蘭子「これは>>28で打開するしかない……!」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/04/09(土) 00:05:31.65 ID:DRNAenx/0
とにかく駆け抜ける。もし危なくなったらマチェットで応戦。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/09(土) 09:09:25.32 ID:MLTq+wt20
既に賽は投げられている。後方に無数のゾンビ。前方に少数のゾンビとなれば、どちらに生還の望みがあるかは天秤にかけるまでもない。今から速度を殺して別の道に進もうとすれば、その隙に追いつかれるかもわからない。
私は腰に佩いたマチェットの柄を握り込む。
ハイカーボン鋼バロンマチェット。500グラム。切っ先片刃、鋭い。
重さが足りないかも知れなかった。
女性の細腕にも扱えて、取り回しの易さに殺傷能力まで備わっている。確かに逸品には違いないが、終末の世でゾンビ相手に一騎駆けるには些か心もとないだろう。元より致命傷を負って動き回っている個体も存在するのだ。
痛みに怯むとは思い難かった。
そんな後悔も、逡巡も、今や意味を為さない。
私は全ての謎を振り切って進んだ。
正面に1匹のゾンビが臨まれる。
杖でもついていそうな老人のゾンビだった。
非力そうな外見とは裏腹に、機敏な動作でこちらへ跳びかかってくる。
私は体を低くたわめると、地面を力強く蹴り、ゾンビの懐に飛び込んだ。
重心をずらされ、転倒してもなお伸ばされる両腕を振り払って走る。
アドレナリンの奔流が身を焼くようだった。
全身の細胞が太古の狩猟を思い出している。
心臓は狂ったように早鐘を打ち鳴らす。
両脇に2匹のゾンビがいた。
私は通りすがりに右手のマチェットを振り抜く。
ぼおっと天を仰ぐ青年ゾンビの首が奇妙な方向に折れ曲がった。
血漿が間欠泉のように噴出する。
……もはや私を阻む者は誰もいなかった。
後方ではゾンビは遥か遠くなっており、一部は諦めたのか、引き返して去ってゆく。見渡す限りゾンビの姿は認められない。
生き延びたのだ。
凄まじいアドレナリンの奔流に圧倒された私は映画“プラトーン”の有名なポスターのように、麗らかな陽ざしに身を晒す。
雲一つない晴天だった。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/09(土) 09:14:34.99 ID:MLTq+wt20
訂正 ×凄まじいアドレナリンの奔流に圧倒された私は 〇私は極限状態から解放された虚脱感と、死線を切り抜けた達成感でいっぱいになり、
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/09(土) 09:18:34.07 ID:ZDahLyB80
年度始めの忙しい時期に貴重な週末を
こんなんで潰すとかどんだけ暇なんだよ
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/09(土) 10:18:37.17 ID:MLTq+wt20
筆が止まったので安価出します!!!

喫緊の危殆を切り抜けた蘭子に、ある出会いが訪れる……!

蘭子が出会った“何か”とは!?>>33
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