ダンテ「学園都市か」前時代史(仮)

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302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/03/22(火) 13:42:36.71 ID:XVB8s0iW0

その後、会合では様々な細事が話し合われた。

スパーダは人間界に在留する際、
天界および魔女賢者による常時監視を認めること。

人間界内におけるスパーダの武力行使は、
人間に危害を及ぼしうる悪魔のみを対象とすること。
天界と人間界内の情勢に対して、中立と不介入を貫く等々。

そして今後の魔界動向についての意見交換と、
諸状況における対応の確認、様々な案の相談もなされた。
それら案の中でも特に議論が交わされたのは、
スパーダが提示した魔界を封印するという構想である。

これは文字通り魔界と人間界の間を遮断し、
根本的な面からの悪魔侵入の抑制を図るものであった。

もちろん魔女に協力する悪魔のための隙間は残さねばならず、
また「網」にかかりにくい弱き悪魔の侵入までは構造的に防ぎきれなかったが、
それでも強大な悪魔の侵入を
ほぼ抑えられる画期的な案であることは間違いなかった。

諸勢力は好意的に受け取り、また魔女側も
「網」の管理が魔女と共同で行われることを条件に賛同し、
可能なかぎり早く実現することが決定された。
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/03/22(火) 13:43:03.14 ID:XVB8s0iW0

そうして会合は終わった。

こうしてスパーダは人間界に受け入れられ、
真に帰るべき世界を得たのである。
ただ、まさしく彼にとって新たな人生の始まりであったが、
一方で離別の時でもあった。

会合の終わりにおいて、
スパーダとエヴァの最後の会話が許された。
言葉数は少なかった。
互いに手を軽くとり、ささやかな言霊で愛を確認。
そしてエヴァがこう口にした。

あなたが最強の魔剣士であるかぎり、
そして私がアンブラの魔女であるかぎり、と。

それ以上は続けなかった。
だがお互い、その後に続く言葉や、
そこから広がる話の意味は理解していた。

お互い現状のままでは、一緒になることは許されない。
だが、もしも力と身分を捨てることができたら、と。
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/03/22(火) 13:43:50.85 ID:XVB8s0iW0

魔帝を倒したとはいえ、世はいまだ脅威に溢れている。

覇王や、その他にも恐るべき強者は多くいる。
それらを排除できたとしても、魔界自体が暴虐と闘争のゆりかごであり、
新たな脅威は未来永劫に現れ得る。
それに天界と人間界、主神派と賢者と魔女らも、今は協調しながらも、
潜在的には解消が難しい対立を抱えている。

その中でスパーダとエヴァのような者が、武力や才能、
そして何よりも献身の心を捨て去るなど、困難と言うほかなかった。
世の災厄を無視して、守れる存在を見捨てて、戦いから離れるなんて。


だが現実がどうであろうと、それを重々理解していようとも、
スパーダは望みを捨てられなかった。
なぜなら愛しているから。
不可能であろうと、愛する人と一緒になりたいという願望は消えない。
抑制はできても、その夢は捨てられない。


ささやかな希望をこめて、スパーダは別れを告げた。

「さようなら、愛する人よ。また巡り逢える日まで」

そうして二人は手を離し、
別々の人生を歩み始めていった。
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/03/22(火) 13:44:28.11 ID:XVB8s0iW0



スパーダは会合の後、後世においては新大陸と呼ばれる地にて、
ある二つの刃を鍛えた。

それは魔剣スパーダと同様、彼の分身たる刃、
だが前者とは籠められた象徴も意志も全く異なっていた。

魔剣スパーダは破壊者、すなわち「侵犯者スパーダ」の象徴であった。
だが新たな二つの刃が象徴するのは、現在の「新しいスパーダ」
「魔との離別」と、「人と魔の融合」である。

彼はその二つの刃、もとい分身を創り出すことで、
今のスパーダが何者であるかを改めて再確認し、意志を形にした。
もう魔界に寄り添うことはない。
今後は「人の心」に従い、己の信ずる道を進むと。
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/03/22(火) 13:45:14.31 ID:XVB8s0iW0

こうしてスパーダは伝説となったが、
彼の戦いが終わることは無かった。
むしろそれからの戦いは、彼の生涯において
もっとも苦悩に満ち、そして初めての無力感をも味わわせるものとなった。

対魔帝戦のごとき「巨悪を倒せば済む」、という単純な構図ではなく、
その戦いの真の相手は、そもそもスパーダの刃では断ち切れないものだった。

それは竜王による騒乱から撒き散らされた「負の種」。
人間界を覆い、さらには天界にまで伝染した、
拭いがたい疑念、嫌悪、憎悪、憤怒そのもの。

その「負の種」は魔帝という共通脅威によって
しばらく寝静まっていたものの、
スパーダの勝利によって状況は変わった。

天界と人間界の諸勢力は、
今のところは協調路線を維持しようとしていたものの、
対魔帝という最大の動機は無くなってしまった。
そして諸勢力が対魔帝のために準備した莫大な武力は、無傷で残存。

いまや「負の種」が開花するには絶好の条件がととのっていた。

三位一体世界のすべてを巻き込んで、
人間界はこれより自滅の道を転がり落ちることとなる。
再燃した不和によって留まることを知らず、
天対人、そして人対人という恐るべき未来へ。

スパーダにとっては「守るべき存在」同士が殺し合う、
未曽有の苦難の時代へ。



「負の種」の主、ロプトの望むがままに。



―――
307 : ◆tSIkT/4rTL3o [sage saga]:2022/03/22(火) 13:46:02.38 ID:XVB8s0iW0
おわりです。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/24(木) 11:26:42.48 ID:dz9KEzXxO
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/25(金) 06:45:21.96 ID:Gry+iFqo0
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/29(火) 13:28:55.94 ID:wt3MHN8qO
学園都市かも完結してもう10年経つのか・・・早いな…新作は書くんですか?
311 : ◆tSIkT/4rTL3o [sage saga]:2022/03/29(火) 19:23:16.76 ID:cq8s6iSN0
>>310
具体的な予定はないです
ぼんやりと考えてるのは色々ありますが、実際に書くかは未定です
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/06(金) 01:02:59.32 ID:gFShh7b2O
なっっつかしいなぁ
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/06(金) 18:04:40.90 ID:rYV+b3N9O
SS避難所
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